08/08/16 19:29:35
僭越ながら、この流れに乗って自分も一つ筆を振らせて頂きたいです。
お目汚しでしたらスルーして下さい。批評して頂けたらありがたいです。
「綾波…ほら、捕まって?」
「……うん。」
そう言って、片手をレイに差し出すシンジ。そしてそれに応えるレイ。
事の発端は、その日の体育の授業だった。
その日の内容はサッカーだったが、運動が不得手なレイは誤って足を挫いてしまったのだ。
捻挫程度で済んだが、レイの足取りは危なく、心配になったシンジはレイを家まで送ることにした。
「碇くん…ごめんなさい。わざわざ……。」
「う、ううん、全然構わないよ。困った時はお互い様だから。」
平静を装ってはいるが、その内心は穏やかでは無いシンジ。
というのも、その原因は2人の繋いだ手にあった。
手を繋ぎながら2人きりでの下校。
端から見れば付き合ってるようにしか見えないその姿に、シンジは照れと喜びの入り交じる複雑な心境だった。
「(碇くんの手……暖かい。)」
そんなシンジとは違い、レイの心境は自分自身でも不思議な程穏やかだった。
シンジの手の温もりに、あの時のことを思い出すレイ。
自分の身を心配し、涙を流し、手を差し伸べてくれたシンジの姿を…。
自然とこみ上げてくる気持ちが、レイにとってはとても心地よかった。
気恥ずかしそうに若干頬を赤らめるシンジと、無表情ながらもどこか嬉しそうな雰囲気のレイ。
そしてそんな2人を繋ぐ手。
帰路の間、2人に会話は殆ど無く、しかしその空気はひたすら穏やかだった。
その空気も、レイのマンションに到着することで一旦途切れる。