エヴァの主人公が真ゲッターの竜馬だったら~5号機at EVA
エヴァの主人公が真ゲッターの竜馬だったら~5号機 - 暇つぶし2ch536:第七話1
08/10/25 21:56:32
今回は割合マジメパートに相当してしまいました。ハイ

「…現在の復旧率は60%というところです。が、やはり安定しません。戦闘に使うには厳しいでしょうな」
「構わん。業務に支障がない限り続けたまえ」
 いつものやりとりだ。だが珍しく神君が「私用がある」という。
「ご覧下さい。これがジオフロント。ネルフ本部区画内のゲッター値です」
「ほう」
 神君の持ってきたパーソナル・コンピュータを覗き込む。うむ。聞いた事があるぞ。
「知っているのか冬月?」
 知らんワケがないだろう碇。
「うむ。ゲッターロボの動力源であるゲッター線の量を示した数値のコトだな」
「その通りです冬月副指令。ゲッター学科に転向なさっては如何です?」
「老人をおだてるものではないよ。神君」
 ゲッター光線。つまりゲッターエネルギーとは、かつて日本の科学者、早乙女博士が発見した光線だ。
 宇宙から少量ながら地上に降り注ぐ光線…しかし微量でもエネルギーとして莫大な力を発揮した。
 無公害にして無限のエネルギーとして騒がれ、研究が急がれたものだ。
「そうです。しかし三つの悲劇が起きた」
「うむ。一つはセカンドインパクト」
 南極に眠っていた第一使徒アダムの発見。その時ゼーレは「神」を見つけたと喜んで手を伸ばし、そして…破滅が起きた。
 アダム覚醒は葛城探検隊がロンギヌスの槍で防いだが、覚醒の余波は世界を一度完膚なきまで破壊した。

537:第七話2
08/10/25 21:57:13
「当時は酷いものだった。世界各地が崩壊したのみならず、モラルまでも崩壊した」
「ええ。昨日までの隣人が今日の敵。そんな時代でしたな」
 セカンドインパクトによる被害は全世界に及んだ。特に日本は島国ゆえ特に水害が酷かった。
 が、島国ゆえ水害に手馴れた対処を施すことが出来た。何より…重機やロボットなどの研究に秀でていたから再建は割合早かったのだが…。 
「それゆえに戦火が起きた」
「そうだな。二つ目にして最大の悲劇。日本海戦争。資本と技術。それを喉から手が出るほど欲しがった国が群がるように日本を襲った…」
 同様にロボット工学に秀で、それを応用した重機技術に優れた西側諸国はむしろ懐柔するように手を伸ばした。
 が。それとは他に、もっと直接的に手を伸ばしてきた国もあった。
「まさに、戦争の時代だったな」
「…話がすっかり逸れましたね。それよりコイツを見てください」
「うむ。…106?」
「100がゲッター線濃度の通常値と思っていただければ結構です」
 ふむ。つまりジオフロント内のゲッター線濃度は通常より若干高いのか?
「…そしてこれが本日日本標準時0700時時点での地上のゲッター線値です」
「172?」
 何かおかしくないか神君?
「そう。おかしいのです。明らかにおかしい」
「ゲッター値が増えている…だと?」
「そうです。およそ十五年前。ちょうどセカンドインパクトのその時から、徐々にゲッター値が増しているのですよ」
 言って軽く一礼すると、神君は懐からタバコを取り出し一服の紫煙を味わった…沈黙が場に落ちる。
「…そしてその勢いは、第三の悲劇である浅間山事件後、更に拡大傾向にあるようです」

538:第七話3
08/10/25 21:57:58
「ブフフフ。では予定通りに。失礼します。行こうスティンガー君」
「そ、そうだね。行こう、こ、コーウェン君」
 暗闇の会議席。それは今は誰も座るものが無いハズの会議席である。
 だが今、議席には暗闇に浮かぶ七体の石柱が着席し、そして座席に着かぬ二人の男を見送った。
『槍の確保に成功した』
『忌々しくも恐ろしきはゲッター。ゲッターGシリーズ。あの生産性でこうも高い戦果をもたらすとはな』
『左様。ならば戦争だ』
『我らゼーレが再建も、彼らが前大戦時のプラントを発掘提供してくれなければこうもうまくはいかなかった』
『だが現状で使徒に通じるとは限らん。未だ数が揃わぬ今、槍を手に入れた我らにとっては保険に過ぎぬ』
 彼らの名はゼーレ。
 旧世紀以前に人類が作り上げた結社であり、人の世を影から動かしていた存在であり、そして十三年前、神隼人の手により失われたはずの結社であった。
 石柱に模した立体映像には、同時に強面の老人達の顔がゆらゆらと浮かんでいる…。
『いずれにせよゲッターなど文書<シナリオ>に無い存在に過ぎん。使徒は碇が殲滅を果たすであろう』
『我らの手で為したいところではあるが、な…』
『だが当面追加予算は見込めぬ』
『左様。当面襲えるだけの銀行は全て襲った』
『何より問題は、今、エヴァが全て奴の手にある事のコトだ』
『だが既にエヴァの製造ノウハウ、そして根本たるアダム細胞も我々は確保しておる』
『しかし研究施設たるネルフドイツは碇の手で解体された』
 雰囲気に似つかわしくない重低音が響く。
 腹に響くような連続音。会議場中央に据えつけられた石柱へ、ゼーレ全員が発砲した音であった。
 もちろん石柱には碇ゲンドウ、そして神隼人の顔写真が貼り付けられている。

539:第七話4
08/10/25 21:58:34
『忌々しきは碇、そして神隼人か……』
『左様。もはや戦争しかあるまい』
『落ち着け諸君。だがイレギュラーにはイレギュラーだ。既に巴武蔵、そして流竜馬の排除には成功している』
『それもあの二人の手柄かと思えば忌々しいがな』
『だが我々は時計の針を進める力を手に入れた』
『人類補完計画の鍵。その多くは既に我らの手にある』
『裏死海文書。槍。ゲッター。だが全ては本当のエヴァの完成を待たねばならぬか』
『左様。その時こそ戦争だ』
『しかし最後のカギは我々の手にある』
『鍵たる者よ』
『タブリスよ。君に聞きたい事がある』
 見つめる先に浮かぶのはLCLで満たされたカプセルである。
 その中には白い人影が浮かんでいたが、彼らの中に『彼』が人であると思う者は居なかった。
 彼の名は、タブリス。最後のシ者であり、また最初の使徒である…

540:第七話5
08/10/25 22:00:24
■特務機関ネルフ/司令室
 第3使徒『サキエル』、第4使徒『シャムシェル』、第5使徒『ラミエル』、第7使徒『ガギエル』。
 そして第8の使徒である『イスラフェル』を撃破……使徒殲滅は順調に進んでいる。が。
「ゲッター線の異常増大か。全く厄介ごとばかり起きるな」
 神君はセカンドインパクト…アダム爆砕の現場に、ゲッターロボがあったコトが何らかの影響を与えているのではないか
 という大胆な仮説を立てていた。確かにアダム絡みなら不思議現象などお手の物だが…。
 しかしその影響が読めん。
「ともあれ碇。次のシナリオはどうなっている?」
「見ての通りだ」
「またか……」
 碇が呈示したシナリオは丁度虫食いになった部分だった。
 使徒が現れるのか、それとも何か事件があるのか。いずれにせよ何かが起こる。しかし我々には知る由も無い。
 我々にとって重要ではない事件であることを祈るばかりだ。

 我々が『シナリオ』と呼ぶ裏死海文書。
 これは本来ゼーレが持つ石版の事なのだが、残念なコトに我々はその一部を失っているのだ。
 まあそれも当然。我々ネルフは本来ゼーレの「E<エヴァ建造>計画」及び「人類補完計画」実行機関でしか無いのだから。
 いわば現場専門の出先機関に過ぎず、碇が非合法手段によって得ていなければ本来ならこのシナリオさえ持ちうるハズが無いのだ。
 だがこの「シナリオ」があるおかげで、ゼーレ無き今も「我々の」人類補完計画は遂行へと向かいつつある。
 多少欠けていたとしても文句など言えた義理ではない。

 とはいえ警戒をするに越したことは無い。パイロットの位置だけでも把握しておくかね。
 チルドレン達の提示連絡映像を確認する。そういえば碇。お前の息子はようやく退院したのだったな。
「…いや待て碇。お前の首に首輪がついている気がするのは気のせいかね」
「問題ない。おそらくはそういうプレイだ」
 最近の若い者は解らんな。これでも年の割りに理解はある方だと思っておったのだが
「では先生、性教育学科へ転向なさってはいかがです?」
 だが断る。

541:第七話6
08/10/25 22:01:20
■第三新東京市/碇シンジ病室
 第三新東京市に来てから、僕は色々あってずっと入院していた。でもようやく退院できた。
 当然だけど、父さんに呼び出されてココに来た僕には家なんて無いから個室が用意されることになったんだ。
 ミサトさんは『一人でいいの?』『申請すればお父さんと一緒に暮らすことも出来るわよ』って気遣ってくれたけれど
 でも僕は一人でいいと思った。気楽だと思ったから。でもそれを正直に言ってしまったのがいけなかった……。
『もー。無理しちゃって。親子なんだから一緒の方が』
 と明るく言ってきたミサトさんに
『ミサトさんには関係ないでしょ。ほっといてください!』
 ……言わなければ良かった。

『暗い……暗すぎる……その性格あたしがなおしたる!』
 あれよあれよという間にミサトさんと同居する事になり
『ミサトぉ、何よシンジも一緒に住むの!? まあいいわ。どうせシンジはあたしの下僕なんだしィ』
 既にミサトさんと同居していたアスカとも一緒に。
『肉。嫌いだから』
 綾波。引っ越し祝いありがとう。でも誰に聞いたの?
『転校生。ワイはお前の引っ越し祝いをせにゃならん!』
『よ、碇』
 トウジとケンスケも。
『引越しおめでとう。これ差し入れのスイカな』
 加持さんも。でもホントに誰が言って回ってるんだろう……
『わ、私じゃないわよ?』
 リツコさん。別に何も事言ってませんよ。
『不潔です』
 え?
『シンジ。時間が空いたらアジテーションのやり方とバリケードの造り方を教えてやろう』
 ハヤトさん……その、いえ。何でもありません。

542:第七話/ゼーレダイナミックス(終)
08/10/25 22:04:22
 こうして何故か期せずしてミサトさんの……いや、僕らの家に集まり、そのまま宴会になった。
 僕は、こうして大勢で集まって騒ぐのは生まれて初めてだった
 こんなに、楽しいと感じたのも初めてだった…でも。「こんなに楽しいことは長くは続かない」「すぐに苦しみはやってくるだろう」と
 心の隅では、そう思っていた。
 
 他方。「シンジ退院祝い」と書かれた風呂敷包みが転がる司令室。
 勇んで第三新東京市へ出かけようとした所を、保安部にとっ捕まった碇司令が無言でカキフライを食べている。
「碇。いい歳なのだからヤケ食いは止めろ。だいたいお前は一応司令なんだぞ?」
「問題ない。続ける」
「今回の件は多めに見よう。だが解っているハズだ。そろそろ覚悟を決めろ」
 お前がお前の計画を続ける限り、お前は最期の時まで息子と解り合える事は決してないのだ。
 いや、むしろお前は息子を傷つけなければならぬのだよ。碇。
 それが我らの補完計画に必要な事なのだから…。          次回第八話「静止してくれない闇の中で」に続く。

という事で今回お開き。前回たくさんのご支援、反響をマコトにありがとうございました
それを励みに次回はノリがいつものパターンに戻ります。多分。

543:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/10/25 22:21:20
乙です~

しかしどこも予算は厳しいんだな・・・お前らまで銀行襲うなよwww

544:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/10/25 22:46:55
竜馬死んだん!?
虚無った後ってことか?

545:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/10/25 23:07:12
ゼーレの貧乏っぷりに全俺が笑死したwww


そうか、竜馬も武蔵も……所で弁慶は?

546:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/10/25 23:56:19
でも連中なら殺したと思っても安心できない。
十三年後にタイムワープした例もあるし、賢ワールドなら火力偏重サイボーグになって復活も十二分にあり得る。

547:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/10/26 00:24:29
>>546
そりゃ武蔵違いw

548:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/10/26 01:21:57
貧乏ネルフに貧乏ゼーレ…そしてゼーレがなんかいろいろと変になってるwwww
シリアスパートらしいけど、それでもツッコミが追いつかないとはwwwww

549:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/10/26 01:28:24
左様のおじいちゃんすっかりボケちゃって・・・

550:>>540一部訂正
08/10/26 01:37:21
「…いや待て碇。お前の息子の首だがな、首輪がついている気がするのは気のせいかね」
「問題ない。おそらくはそういうプレイだ」
 最近の若い者は解らんな。これでも年の割りに理解はある方だと思っておったのだが
「では先生、性教育学科へ転向なさってはいかがです?」
 だが断る。

言葉の意味が完全に変わっている部分があったので訂正。首輪つけてるのはシンジ君です。決してゲンドウおぢさんではありませんよムォォ
色は…………………ファンの人に怒られたら困るのでとりあえず白と赤のツートンカラーというコトでひとつ

551:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/10/26 01:44:58
竜馬・弁慶・武蔵の話については3~4話以内に作中に出ますので今回はご勘弁を
なお武蔵坊弁慶は本場所休場となっております。またの虚無をお待ちくださいますようお願い申し上げます

552:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/10/26 02:00:11
>>546
ていうかその火力偏中サイボーグにパワーアップしても結局死んだじゃねえかw

553:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/10/26 07:54:53
>>550
いや、誰でも良い。あのヒゲめがねに首輪を付けてつないでおけ。

554:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/10/26 14:39:44
あーよかった
弁慶の出番はネオゲ並かと思ったよ


555:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/10/27 17:36:21
ここは燃えたり萌えたり笑い死んだりドワオしたり
忙しすぎるスレですね><

556:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/10/27 18:14:44
なあにかえって予算不足になる

557:第八話:静止しそうにもない闇の中で
08/10/27 20:32:38
 闇の中に七体の石柱が浮かぶ…。
『資金源については一考しよう。現地マフィアと手を結び米国首脳<ホワイトハウス>への道は確保しつつある』
『南極での一件が効いたな。米国政府はネルフ本部と日本に嫌疑を抱きつつある』
『ネルフ米国支部取り込みも近い』
『まあその分、苦労も増えたがね』
『左様。もう抗争にも飽き飽きだよ』
 見れば石柱達の足元には血の池が出来ていた。石柱…ゼーレらを狙った暗殺者達……で、あったモノらである。
『マフィア共は年がら年中抗争しかおらぬからな』
『打ちのめし合わねば力量も理解できぬとは。全く罪深く愚かな者共も居たものだ』
『だが地にうごめく者には仕方の無き事でもある』
『害は無論我らにも来よう。問題は使えぬ護衛共のコトだ』
 言ったその時、石柱の一体へと無数の投げナイフが飛来する。
 しかし石柱からも「ぬっ…」とバルカン砲が顔を出したものだから、ナイフは投げた本人もろとも粉微塵となる。
 別の石柱へはマシンガンが差し向けられたが、やはり石柱は無言でドワオドワオと砲火を放って先手必勝の言葉を実行する。
 しばらくは爆音が轟いていたが唐突に静寂が落ち、そして硝煙と血のニオイだけが場に残った。
『このアジトも、もう使えぬか』
『全く。無駄でいかんね』
 頭目と思しき石柱が一言発する。するとガタンと音がして石柱達が沈み込んでいくではないか。
 沈む床から死体が弾かれ血は洗い流されてゆき、次のアジトへの移動が始まる。
 神隼人とネルフに潰されたゼーレは、こうして地下を生き延び、
 いつしかそれが日常となっていた…。

『さて諸君。依然、第8使徒サンダルフォンの発生は確認できぬ』
『ネルフ側が極秘裏に処理した可能性は?』
『場が問題だ。日本にはあの地がある』
『浅間山かね? だがあの地にまだ何が残っているというのか』
『やはりタブリスの調整を急がねばならぬか』

558:第八話2
08/10/27 20:34:45
 それは少し前のコトだ。彼らが保有する人型使徒「タブリス」。彼に対して質問を投げかけた時の事だ…
『タブリス。君に聞きたいことがある』
『歌はいい……ねえ…』
『それは聞いておらん。聞きたいのは…』
『サンダルフォン……第8使徒……浅間山……喰わ……』
『何?』
『未だ出現しないのでは……ない………サンダルフォンは……触れてはならぬ……場所…へ…』
『何だ、何を言いたいタブリス?』
 タブリスと呼ばれた少年は、瞑目するように瞳を閉じたまま、ただ壊れたラジオのように繰り返した。
『喰われた……!』

『喰われた、か』
『タブリスの調整はまだ終わらぬのか?』
『十五年がかりの調整だ。一朝一夕に終わるものでもなかろう』
『とにかく碇につけた鈴は未だ鳴っておらぬ』
『左様。ならば戦争だ』
『しかし裏死海文書に書かれた使徒が現れぬなどありえるのかね?』
『シナリオの修正が必要か』
『否。出ぬならばそれは越したことは無かろう』
『左様。もはや戦争しかあるまい』
『まずは鈴の音を確認する事より始めよう』
 議員たちは口々に疑問を投げるが決着は付かぬ。議場たる石柱「キール・ローレンツ」は締め括るように発言した。
 すると円をなす石柱達の中央に、立体映像がゆらゆらと浮かびだしたではないか。
『君が賢い男である事は我々も知っているつもりだ。では報告を聞こう』
 会議が招聘した男。「鈴」と呼ばれている男は、呆れたように口を開く。
「ハハハそれがですね……」

559:第八話3
08/10/27 20:36:34
 やあ皆元気かな?
 僕は日向マコト二尉。ネルフの発令区オペレーターの一人さ。
 え? 誰だかわからないって? ええとほら、眼鏡のオペレータで「パターン青、使徒です」の人だよ。ハハハ。
 ああたまに勘違いしてる人もいるけど「パターン青」は僕の台詞だよ。
 もう一人の彼は名前が青○ってだけで、台詞は違うんだ。プルルル
「電話?」
『もしもし。パターン青葉シゲル。俺です』
「ハハハ黙ってろロン毛」
 笑って携帯を切る。今日は久々に平和だったんだよ。でもまあネルフだものね。
 当然だけど使徒が来た。
 問題は停電の時にソイツが来たってコトだね。
 これは豆知識だけど、ネルフ本部のシステムは上層の第三新東京市に至るまでカバーしてるんだ。
 僕は丁度「上」に用事に出てたんだけど、本部が停電を起こしたから帰れなくなってしまったという訳。困ったよね。
 そこに、使徒が来た。
 いやあ凄い騒ぎだったよ。だって使徒を追いかけて国連軍が突入してきてさあ
『ネルフの連中はどしたァ!』
『やっぱり返事がありませんぜ!』
『なら俺たちがふっとばしてやるしかないよなあ~』
 とかスピーカー鳴らしっぱなしの爆撃しっぱなしで突っ込んでくるんだもの。
 おかげで街のあちこちは吹っ飛ぶし、人も蜘蛛の子を散らすように逃げていった。まあ当然だね。
 まあ例によって使徒のフィールドの前には無力。でもあいかわらずネルフは停電で沈黙したまま。こりゃ気付いてないね。
 放っておいたら使徒と国連軍のダブルパンチというか、国連軍に街が吹き飛ばされかねない。

 だから慌てた僕は、丁度近くを走っていた選挙カーをとっつかまえたんだ。
 知ってるかい? ネルフの権限を使えば選挙カーの一台くらいならラクに徴発できるんだ。
 でも良い子はまねしちゃダメだよ? 悪い子ならまねしていいけど、やりすぎると碇司令みたいになっちゃうからね?
 まあ僕の場合も、結論から言っちゃうとこれがいけなかったんだ。
 後はネルフ発令区まで突っ走るだけ。ってアクセル吹かしたら、いきなり横手からはねられてね……。
 あれ、もしかしてアレって作戦部の…

560:第八話4
08/10/27 20:37:41
『……ではこちら側の工作員がしかけるより先に、ネルフ側のシステムが勝手に落ちたと?』
『正・副・予備の3電源がいっぺんにかね!?』
「はい。どうも施設運用に回す予算が不足しているようです」
 鈴は飄々とした顔で応える。
 ヒトとしての感情が妙によみがえるのを感じた。久々の事だ。心底呆れたコトなど久方ぶりだ……。
『感心している場合かね。だが復旧ルートから本部の構造を解析する手はずはどうなった?』
 男はいつもの軽い調子で、しかしやや疲れた顔で答えた。
「それがですね……」

 日向二尉が気絶してしまったので後を引き継ぎます。
 私は綾波レイ。特務機関ネルフ、汎用人型決戦兵器試作実験型改実戦仕様エヴァンゲリオン零号機パイロット。
 年齢は……。
 そう。そういう記録じゃ、ないのね。
 突然学校へ迎えが来た。私、碇君、セカンドの3人。迎えに来たのは神隼人大佐。
 神隼人。強い人。とても強い人。とてもとても強い人。この人が何故私たちを直に迎えに着たのか。
 それはネルフ本部施設に通じるルートが全て不通になっていたから。そして外に使徒が近づいてきていたから。
 だから、まずパイロットの保護を優先したのだという。
 端的で正確だと思った。
 そんなヒトだからてきぱきと行動していた。
 学校前にさっそうとロボット兵器<ビィートT32>で現れ、拳銃を空へ向けて数発発砲。
 驚いて窓から顔を出した私たちの間近へ発砲。携帯でいいじゃないですかって碇君が言ったら「このほうが早い」って返していた。
 そう。早いのね。
 てきぱきと私たちをビィートT32に乗せてハンドルを握り、最短ルートでネルフへ直行する。
 逆さまにしたお椀に、4つ足が付いたようなビィートT32だけど、走るスピードはそれなりに速い。
 途中何台か車をはねとばしたって碇君が言ってたけど「この程度の事で死ぬなら今死なせてやった方が親切だ」って。
 そう。親切なのね。

561:第八話5
08/10/27 20:39:51
「でもハヤトさん、この機体でどうやってエヴァのところまで行くんですか?」
 碇君が不安そうに聞いた。だから私は答えた。
「神大佐。私が道を知っています」
「なんでそんな道しってんのよ!」
 セカンドがつっかかってきたけど。なんでつっかかってくるのかが解らない。
「体が覚えているもの」
 セカンドは「そりゃあたしはこっちにきて日が浅いけどさぁ……」とか呟いてるけど気にしない。
「そういえば神さんって、なんでネルフで働いているんですか?」
 セカンドの話題が変わった。彼女の話はよく切り替わる。彼女の表情と同じくらい。
「聞きたいか? 聞きたいならその内話してやろう。…だが今は口を閉じろ」
 舌をかむぞ、と神大佐が言った途端、ガクンとビィートが揺れた。
 工作機械用の開口だから急傾斜。むしろ直滑降。四足のビィートは風のように走ってゆく。でも途中いくつか隔壁があった。
「ど、どうするんですかぁ~!?」
 壁があっという間に近づいてくる。神大佐が笑う。
「このビィートT32には、たった一つ。とんでもないとりえがあってな」
 言うなりレバーを引き上げる。ビィートの四足と頭部が胴体に格納され、半円上の形態に変わる。
 でも中の私達には判らない。でも何かが起こるのはわかる。
「適当なトコロに掴まっていろ!」
 私とセカンドが碇君にしがみつく。碇君の顔が何故か青くなった。
「行くぜ地獄行きのエレベーターだ!」
 ビィートが回転を始める。勿論中の私達も一緒に。それからのコトはちょっと記憶が途切れている。
 おぼろげに憶えているのは、高速回転するビィートが次々と隔壁を突き破り、地下へと下っていったコト。
 そして運転中の神さんがとても楽しそうだったコト。
 そう。楽しいのね。
 楽しいのね。
 楽し…

562:第八話6(終)
08/10/27 20:42:18
『使徒か』
「ええ。ですがネルフ側も既にエヴァが3機稼動状態。バッテリーもありましたから出撃後は苦も無く殲滅したようです」
『だが君がネルフの構造を探れなかった理由とはならんぞ』
『左様。使徒迎撃が終了すれば後は復旧に移ったハズ』
「それがそうはならなかったんですよ」

 当時のネルフ発令区
「使徒の殲滅、完了した模様です」
「よし。安全が確保され次第ダメコン(施設補修)部隊を回せ」
「それが……」

 再びゼーレ
『今何と言った?』
「システムトラブルではなく、電気供給元の第二東京電力から電力を切られていたようです』
『…………』
「電気料金の滞納が原因だそうで」
 思わず沈黙する石柱達。
 確かにゼーレとネルフが袂を分けたのは発電施設の実装前であったが。
「対策として、次から第二東京電力、中部電力、中国電力で、正・副・予備の3電源を別途に……」
『それはもう良い。ならば電源復旧を待って再度諜報員を』
「難しいでしょう。今回送り込んだ諜報員の大半を捕らえられました」
『今、なんと言った?』
「停電後、間を空けたのが致命的でした。連中もバカじゃありません。網を張っていたんですよ」
『また奴か』
「ええ。神隼人。あの男です」
 まったく。電力会社もまともに懐柔できん組織の癖に…。しかしキールの頭には疑問が残る。
 そんなに予算が不足することなどありえるのか? と。
「裏切り者を処理するのは大得意だとは言ってましたよ」
 そう言って、ゼーレの諜報員は……加持リョウジは、疲れた笑いを浮かべるのだった。
『まったく…どうしたもんだかな。葛城』

本日これまで。なお筆者が途中で虚無ったら、それは多分ゼーレに暗殺されたも…え、誰だこんな夜更ドワオ!

563:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/10/27 20:45:20
乙w
今回も面白かったwあと個人的にビィートが好きなんで活躍してくれたのは嬉しい

虚無ったら転生仏すればいいじゃない

564:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/10/27 20:50:43
正直「ビィート大回転で地獄へのエレベーター」がやりたくてビィートを用意した。今は転生している

565:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/10/27 23:18:00
GJ! なんでこのネルフはこんなに予算がないのか気になってきた。
しかしそれが判る前に水道とガスも止まるなw

566:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/10/27 23:48:21
ああそうか、携帯もいつ止められるかわからないから緊急時は使わないんだな
納得

567:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/10/28 00:18:40
今回も笑い過ぎて腹筋が死に掛けたwww


しかし、サンダルフォンを喰ったのは……まさか真ドr(ドワオ!

568:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/10/28 07:52:52
ビィートの手足が格納されたとき、UFO軌道で空を飛ぶのかと思った


569:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/10/28 19:20:56
そして天井で頭を打ってどこともしれず落ちていく訳ですね。解ります

570:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/10/28 22:04:17
誰も突っ込まないのであえて言おう。
ゼーレのマフィア抱込み計画=ゼーレのデス・ドロップマフィア化=極道兵器参戦フラグか?

571:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/10/28 22:42:26
あっちまで参入してきたら本当に全部壊れちゃうビクンビクン
しかしゼーレと将造の仁義なき戦い日本死闘篇エヴァが
勝手に歩けるいうなら歩いてみいやはちょっと見てみたい。

572:第九話:奇跡の姿は
08/10/28 23:51:24
>>570-571よ。全てを説明しようとしても無理なのだよ。おそらく全てを理解するのに永劫の時が流れてしまうのだ
我々にわかっていることは、読んでくださっている方がいるかぎり、その為だけにでも書き続けるというコトだ!
…って三丁目の角で早乙女博士が言ってましたよ

『国軍…日本海を埋め尽くしている……ザザ…海が3分、敵が7分だ…』
『ハヤト、さらば…後のコトは頼むよ……』
 スピーカーがけたたましく音を立て、そしてそれっきりノイズ以外流れなくなった。友が死んだ。
 だがその犠牲で戦争を止めるコトが出来た。そう俺は俺に言い聞かせて涙を止めた。
『アバヨ、ダチ公!』
『後は…!』
 黒い海が広がる……また、友が消えた。だが涙を流している暇は無い。だから俺は戦った。
『早乙女研究所に命ずる。ゲッターロボは我々が預かる!』
「汚い手でそいつに触れるんじゃあね~~~~~~~ッ!」
 そして俺は、作業場の汚い寝床で目を覚ました。黒い姿が俺に影を落とす。
 自分で自分の叫びで目を覚ます、か。
「…子供か、俺は…」
 暗闇の中、神隼人は自嘲するように呟いていた。

573:第九話2
08/10/28 23:52:07
「…相変わらず常識外れな姿だな」
 さてネルフには今日も今日とて使徒が迫っている。例によって一風代わった使徒であった。
 モニターに浮かんでいたのは巨大な三つ目の化け物と言うか、3つ目しかない巨大なオレンジ色のアメーバである。
 その姿も問題だが、最大の問題は、遥か頭上も頭上、衛星軌道上に存在するというコトだ。現在、使徒は自身の一部を切り離し
 ATフィールドで包んで質量爆弾として落下させている。その一撃は海を蒸発させ大地をえぐりとるほど。
 国連軍も新型のN2航空爆雷で攻撃を加えるものの、やはりATフィールドの前には無力である。
 その落下位置は…落下のたびに、確実にネルフ本部へと近づきつつあった。
「以前出現した第五使徒は「圧倒的な防御力」と「超射程かつ高火力」を持っていました。
 しかし今回の使徒は衛星軌道上という距離こそが防御力であり、衛星軌道上という距離が武器ともなっているようです」
「使徒のATフィールドがジャミングとなり、現在電波探索が行えない状態です。しかし」
 まあ順当に考えて次あたりはネルフ本部に落ちてくるな。
 使徒も毎度毎度アプローチを変えて来るが、さてどうしたものか。
「……」
 おかしい。いつもの伝ならそろそろ碇が
『レイ。ドグマに降りてプログレッシブ・バットを使え』
『シンジ。落ちてくる使徒をホームランしろ。でなければ帰れ』
 とか無茶を言い出す頃合だが…そうか。そういえば入院しておったな。

574:第九話3
08/10/28 23:52:44
 数日前。司令室。
「…来るべき時が来たのだ。私にとって試練の時が…」
 先日ドイツから空輸させた第一使徒『アダム』。爆散し魂を失い、胎児まで還ったその本体を呑み込み取り込むコト。
 これが碇の、そうゼーレではなく「碇の人類補完計画」の重要事項であった。が。
「落ち着いていないでご飯だ。ご飯を飲み込むのだ碇」
 丸呑みにしたアダムを喉に詰まらせるとはこのうっかり者め。せめて油で一晩漬け込めば喉に詰まりにくくなったろうに。
「先生、後は頼みます」
 こんなコトで諦めるな碇。
 大体私に貴様と関節キスをしろというのかね

「…まったく。老体にジャイアントスイングまでさせおって…そういえば発令区要員が足りんようだが」
「葛城一尉と日向三尉でしたら、先日の停電事件の際に事故に遭って…」
 そういえばそうだったな。国連軍の暴走車両にひかれたそうだ。全く連中ロクは事をせん。
「なら特殊作戦課の神君はどうした? なに碇の用足しで留守?」
 このタイミングでか。全く碇の奴もロクな事をせん。
 やむをえん。私が作戦を考えねばならんか。

575:第九話4
08/10/28 23:53:20
「…以上の3点にエヴァを配置した。使徒の落下予測地点は以上だ。諸君らのエヴァの手で使徒を受け止めて欲しい」
「使徒のジャミングが続いている為、正確な位置は予測できません。サポートは逐次MAGIで行います」
 無茶な作戦に対し当然のように少年たちが反論する。当然だ。無茶を言って本当に済まない。
 しかしだ。相手がATフィールドで電波妨害をかけている以上、コアを正確に打ち抜く必要がある狙撃作戦はもっと無茶だ。
 そして相手がATで防衛を行っている以上、的を絞らず広範囲を攻める作戦では火力が追いつかなくなる。
 また相手が衛星高度に居る以上、AT中和領域での格闘戦に持ち込むには…他に手が無いのだ。
 ロケットでエヴァを打ち上げる手もあるが、今度はエヴァを回収する手段が無い。
 己の無力さを痛感するとしか言いようが無いが、もはや猶予も無い。
 不在の碇に代わり、作戦を宣言する。
「スーパーキャッチ作戦開始!」

576:第九話5
08/10/28 23:55:03
「了解。スーパーキャッチ作戦、開始します」
 不在の碇司令及び葛城作戦部長に代わり冬月副指令が宣言する。使徒の落下は既に始まっているのだ。が。
 その第三新東京市に一足早い激震が響いた。
「…エヴァ全機、給電<アンビリカル>ケーブル切断に失敗! 全機転倒!」
 見るとエヴァ全機が顔から地面に突っ込む形で地面に半ば突き刺さっている。
「パターン足。足ズッコケです!」
「何? いかん。各機、急いで体勢を立て直せ!」
『動いて、動いて、動いてよッ!』
『何どうなってんの!?』
『これは涙? 痛いと感じているの、私?』
 一瞬発令区も暗くなり、通信機から悲痛な叫びがこだまする。
 各機は立ち直るとエヴァ自らの手でアンビリカルプラグを取り外し、遅れたスタートを切る。
「各機再起動。使徒へ向かいます」
「メインコンピュータMAGI及びエヴァ3機のフル稼働によりブレーカーが作動したのが原因のようです」
「このタイミングでかね」
 冬月の「おのれ第二東京電力め、まだ3ヶ月分しか滞納しておらんというのに」という呟きが皆に聞こえたかどうか。
 数秒遅れでエヴァ全機が発進するが、既に頭上には迫り来る使徒の姿がある。

577:第九話6
08/10/28 23:55:51
『間・に・合・ええええええええええええええええええええええええええええッ!』
 使徒は市街からやや離れた場所へと落下して行く。だが、その落下の衝撃はジオンフロントまでも抉るハズだ。
 パイロットの、いやネルフ職員全員の叫びが唱和する。
 いや、一人、一人違う叫びを上げる者が居た。
「目標付近、ち、地下に高エネルギー反応!?」
「何!?」
 郊外へと落下する使徒。その地下から突如轟音が響き渡り、飛び出した影がある。腕に巨大なドリルを持つ人型である。
 飛び出した影は一旦3つに分かたれ、そして一つへ結ばれた。
『チェンジ・ドラゴン! スイッチオン!!』
 それはまさしく先日エヴァンゲリオン初号機と対峙し、N2爆雷によって爆破処理されたハズのゲッターロボの姿であった。
『今の声…』
『ハヤトさん!?』
「神君か!」
『急げ三人とも。こっちはガラクタだ。そんなにもちそうもないぜ』
 回線が開く。コクピットに居たのは作業服姿の男。紛れも無き神隼人その人である。
 ゲッタードラゴンは目玉状の使徒へ取り付くが、ATフィールドに押されて次々と指がもげ、装甲も推進装置も悲鳴を上げる。が

578:第九話7
08/10/28 23:57:10
「「う、受け止めた!!」」
 発令区のリツコが、青葉が、マヤが歓声を上げる。
 使徒を受け止めるゲッターロボの腕が崩壊をはじめ、脚部も潰れてゆく。だがそれでもゲッターは使徒を支え続けた。
『フッ…機体が保つかどうか』
『フィールド全開ッ!』
『弐号機、フィールド全開!』
『やってるわよッ!』
 三機がかりで使徒を押さえ、弐号機がトドメのプログレッシブ・ナイフをコアへと見舞う。
 全ての衝撃をATフィールドで抑えていた巨大な使徒は、コアを失いフィールドを張れなくなった事でそのまま爆砕する。
「やれやれ切り札のハズだったのだがな……だが使徒のジャミングで国連軍共に悟られなかっただけマシかね…」
 ゲッターGの回収を命じ、発令区は使徒殲滅により沸き返った。
 しかし冬月副指令はゆっくりと頭を振り、また技術本部長である赤木リツコ女史は、無言で発令区を後にするのだった。

 さて一方。突然の停電でネルフ機能の一部はマヒしていた。
 地下都市の停電とはすなわち闇である。その闇、ネルフ本部の闇、ネルフ本部最下層「ターミナルドグマ」に二つの影があった。
「特務機関ネルフ特殊監察部所属 加持リョウジ。同時に日本政府内務省調査部所属加持リョウジでもある訳ね」
「バレバレか…葛城、お前入院してたんじゃなかったか?」
「ネルフを甘く見ないことね」

579:第九話8
08/10/28 23:57:52
 葛城ミサトに銃を突きつけられたまま、それでも加持リョウジは飄々としていた。
 ありていに言うと、彼は「司令直属の特使」という役割を負いながら、日本政府のスパイとしての役割も隠し持っていたのである。
 更に言うなら「葛城ミサト」はまだ気付いていないが、彼は更にゼーレのスパイとしても活動していた。
 特に機密情報を扱う部署でのスパイであるからその罪は重い…が。

「まだいけるさ。碇司令は俺の正体に気付きながらも利用している…だけど葛城に隠し事をしていたのは謝るよ」
「謝られても嬉しくないわよ!」
 その一言に飄々とした加持の顔が一瞬だけ曇る。
 もっとも銃を突きつけるミサトからはその表情は見えないが。
「じゃあ良いことを教えてやろう。司令もリっちゃんも君に隠し事をしている。それが…これさ」
 本部最下層施設ターミナル・ドグマへの扉が開き、白い巨人めいたものが闇の中に見えた。
「これ…」
『最下層ターミナルドグマには、十五年前の元凶と同質の使徒「リリス」が存在する』
 当然ミサトは、いやネルフ職員全員はその存在については聞かされていた。
『リリスと使徒との接触はセカンドインパクトの再来をもたらす。それを未然に防ぐのがネルフの役目だ』
 そう。それは知っていた。資料としてその姿も知っていた。だが
「これ……」
 ミサトが地下空間に見たもの。
 それは十五年前の南極同様の赤い海。彼女が全てを失う場となった原風景であった……

580:第九話9
08/10/28 23:58:29
「よく、頑張ってくれたな」
 操作盤を撫で、隼人は誰にともなく呟く。
「お前も立派なゲッターロボだ…こないだは悪かったな」
 一方通信回線からはにぎやかな声が聞こえ始めている。
『バカシンジ』
『なんだよアスカ』
『アンビリカルケーブルを外すタイミング、コンマ2秒遅かったわよ』
『そういうセカンドはフィールドの展開にズレがあったわ』
 一旦。適当な電源ビルでアンビリカルケーブルを再接続し、ゆっくりと歩くエヴァ3機。 
 その眼前にあるのは、各坐したゲッタードラゴンの姿である…。
『ハヤトさん、無事ですか?』
「ああ…ムチャをさせたな………聞きたいか?」
 敢えて「何を」とは言わなかった。シンジ達はしばし待ったが、好奇心が勝った。
『はい』
「後で話してやろう…お前達もこれだけエヴァを乗りこなせるようになったのだ…話してやろう…」
 通信を切りコクピットから立ち上がる。もはやこの機体は指一本動かぬのだから、後は回収班に任せるほかあるまい。
 しかしコクピットの外には立ちはだかる影があった。

581:第九話10(終)
08/10/29 00:02:30
「神大佐。少々……お話をお伺いしたいのですが」
 そこに待っていたのは、未知の科学に対しきらきらと少女のように瞳をきらめかせた赤木リツコ女史その人。
「…構いませんよ。俺はボインちゃんが好きですからね」
 神隼人。この男は重い状況ほど軽口で受け流す…そんな男だ。だが今回の苦境はその軽口に始まったといっても過言ではない。
 その後、彼は目を輝かせる赤木女史へ延々ゲッター技術論を語らされる破目に陥ったのだから。
 そう。眠る間もなく軽く五日五晩ほど、だ。

本日これまで。半分くらいで切ればよかった気もします。
なおゲッターチーム及び早乙女研の行方については今回はただのフラグ立てなので、詳しくは次回。

582:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/10/29 00:11:58
ゲッターを愛でる隼人。ボインちゃんをこよなく愛す隼人

583:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/10/29 00:17:42
外ン道をジャイアントスイングする冬月・・・・

584:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/10/29 00:23:51
GJ!隼人がかっこよすぎる!!

・・・しかしゲンドウは飲み込み損ねたアダムをどうしたんだろう?

585:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/10/29 00:36:15
1.手に押し当てて無理やり(原作どおり)手にくっ付けた
2.冬月の言うとおり一晩調味油に漬けてマリネ風で美味しく頂いた
3.こんにゃくゼリーで固めて飲み込んだ
4.真実は君と共にある。迷わず進んでくれ

さあどれだ

586:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/10/29 00:38:20
>>585
ジャイアントスイングで口から飛び出てそのまま保存。後日に食す

587:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/10/29 00:45:16
いわゆる保存食である

588:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/10/29 02:08:38
しっかり噛めば喉に詰まったりしないよ!

しないよ!

589:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/10/29 06:21:22
噛んじゃっていいもんなのかあれはw

590:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/10/29 10:23:49
硬化ベークライトで固められても成長を続けるようなブツだぞ……噛んだら歯のほうが壊れるだろ、常考。

591:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/10/29 11:37:46
使徒をバットでホームランしろとか言っちゃうような人だから気にせず噛んじゃうよ!
前歯全部へしおれたよ!

592:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/10/30 22:14:54
なんか22レス分にも及ぶクソ長い話になりました。が、要するに世界観解説的な話です。
読み飛ばしても良いかもしれません。その場合「第十話」をNGワードすればよいと思われます。

またお読みになった場合、ゲッター読者だと違和感を感じる部分が出ると思われます。
ネタバレにならない部分は話が終わった次のレス、おそらく>>515-517辺りで言い訳をさせてください

ネタバレになる部分は11レス目のメール欄にネタバレを入れておきますので
もしメル欄が見える設定になっている場合はご注意くださいませ

10分後くらいに投下させてください。
投下量多すぎてスレ荒しともいえますが、どうかお願いいたします。

593:第十話/ゲッター・ロボ ◆ALOGETTERk
08/10/30 22:25:49
 使徒迎撃武装都市たる第三新東京市にも夕焼けだけは普通に来る。
 いや朝焼けも普通に来るが、まあそれはおいといて、だ。
「アスカ、隼人さんは?」
「まだ寝てるわよ」
 シンジの問いにあごをやって応えるアスカ。客間の端に毛布を被った大男…もちろん神隼人…が横になっていた。
「まったく神さんともあろう人が情けないわね」
『後で話してやろう…』
 そうハヤトが言っていたのはもう6日も前の事ではあるが…
「そうは言ってもここ5日間、ずっとリツコさんと討論してたんでしょ」
「討論ねえ。まあシンジじゃ解るものも解んないか」
「悪かったね」
 言いつつごぼうをササガキに切るシンジ。今夜は鶏鍋である。
 前使徒との激戦の後、ズタズタのゲッターをケイジに格納したハヤトは「ちょいと野暮用でな」と言ったきりしばらく帰ってこなかった。
 帰ってきたのは昨日の夜も夜、深夜二時を回った頃。いつもスーツか、或いは軍服をピシっと着こなしている伊達男が
 よれよれのヨイヨイになって帰ってきたのだ。

『フッ……俺が保つかどうか』
 そう言って鉛のように居間に倒れこんで、それっきりだ。
 とりあえず毛布をかけて電気を消し、翌朝の朝食時に声をかけたが「…チェーンジ! ゲッター2!」としか返事が無い。
 仕方ないのでそのまま学校に行って帰ってひと風呂入ったその後も、やはりハヤトはそのままだった。
「一体なにを話してきたんだか」
「ミサトさんもこないだからネルフにこもりっきりだしねえ」
「葛城一尉ならあいさつ回りと書類仕事でビッチリだ」
「わ」
 ぬっと背後に現れるハヤト。シンジに水を入れてもらい美味そうに飲み干す。
「ハヤトさん大丈夫なんですか?」
「心配いらん。それより何か腹にたまるものを頼む」

594:第十話2 ◆ALOGETTERk
08/10/30 22:26:23
 さてこちらは毎度おなじみネルフ司令室である。
「碇、アダムはどうした? 早めに呑まないと成長を続けてますます呑み込みにくくなるぞ」
「カプセルに詰めさせて無事飲み込んだ。問題ない」
 何故かやや背が低く団子鼻でヒゲで元配管工で頭文字がMのイタリア人が頭に浮かんだが、まあ良しとしよう。
「…とにかくゲッターGは修復不能なのだな?」
「まあN2爆雷の直撃を喰らった機体だからな。無理も言えんよ」
 以前、ゼーレが神隼人を潰さんと派遣してきたゲッターG。神君が不意をつきN2爆雷にて処理を行ったハズだったが
 なんと機体は原形をとどめていた。そこでネルフが秘密裏に回収していた、という訳だ。
 神君がゲッターの駆動系に関する知識を持っていたのが幸いだったな。
『ゲッターGの前身にあたる初期型ゲッターも、水爆級の爆撃に耐えた実績があります』
 とは神君の弁だが、いやはやATフィールドも無しにムチャな機体だ。

「修復中に無茶をさせすぎたか」
「どうせゲッター線収集施設は造れん。機体、いや炉心だけでは長く使えんよ」
「ああ。炉心、そして収集施設を建造できたのは今は亡き早乙女博士だけだからな。要らぬ期待だったか」
 ゲッターロボに用いられるゲッター炉心は、無限と言われる可能性を秘めたエネルギーシステムだ。
 電気代に悩む現ネルフにとってはノドから手が出るほど欲しいが…。
「暴走でネルフ本部が丸ごと消失するようなコトになれば手に負えん」
「そうだな。よく解らぬモノを無理して使うほどに事態は切迫してはおらん」

595:第十話3 ◆ALOGETTERk
08/10/30 22:27:00
「前回の使徒についても減速が間に合わぬほどでは無かった。神大佐も無駄なスタンドプレーに過ぎん」
 どこへ行く碇?
「ドグマだ。ダミーシステムの完成を急がせる」
「待て碇……赤木君なら当分手が離せんぞ」
「何?」
「先日ゲッターシステムを見せてしまったろう? 興味深々の態で研究室に篭ってしまったよ」
 碇は憮然と鼻を鳴らす。赤木君も奴にとっては飼い犬に過ぎんハズだからな。だが
「赤木君から伝言だ。『後二日だけお願いします』とな。まあ当然だろう。研究者として心が躍らぬハズがない」
「冬月」
「もう一つ伝言だ。『もし研究の邪魔をするなら36と1通りの方法で例のアレを暴露させて頂きます』とな」
 碇は一瞬だけ真顔になると、踵を返して地下へと降りていった。まったく…誰も彼も元気がよすぎるな。
「碇。ダミーシステムも良いが、正規のエヴァシステムも今少し充実させねば勝機は無いぞ」
 使徒に対しても、ヒトに対しても、な。

596:第十話4 ◆ALOGETTERk
08/10/30 22:27:53
「いや~やっぱり食事は生命の源よね~」
 と鶏鍋をがっついているのは葛城ミサト女史である。隣では冷酒をちびちび舐めながらハヤトが砂肝を齧っている。
「ほう。シンジにも意外な特技があったな」
「だってハヤトさんもミサトさんもアスカも料理しないじゃないですか…」
「なんであたしだけさん付けじゃないのよ」
 以前「レトルト料理ばかりで困る…」と発令区メンバーに相談した際に、冬月副指令が教えてくれた料理だった。
 鶏肉とごぼうを出し汁で煮るだけの簡単な鍋だが、調味液…出し汁に酒、味噌、醤油を加えたもの…の具合次第で良い味が出せる。
『秘伝の味付けという奴だ。君が憶えていておいてくれると嬉しい』
 副司令が好々爺のように笑っていたのを憶えている。
 他にも簡単なレシピをいくつかプリントアウトして渡してくれた。

「冬月副指令がねえ…」
 ミサトからすれば、碇司令と並ぶ「はぐれネルフ陰謀派」の片割れである。まあそもそも目の前の少年からして碇司令の息子なのだが。
 小皿に残った出し汁を傾け、ついでぐぃっと缶ビールを飲み干す。
「おなかぱんぱんご馳走様! じゃ、おやすみ~」
 立ち上がった腕を引っ張られた。
「…何?」
「どうです葛城一尉。あなたも昔話を聞いていきませんか」
 ハヤトのどうという事のない一言だった。しかしその眼に宿る光を見て、ミサトは座りなおす。
 昔語りが、始まった。

597:第十話5 ◆ALOGETTERk
08/10/30 22:28:29
 セカンド・インパクト。
 葛城探検隊が見つけた南極の巨人。すなわち「アダム」が起こした、巨大な…そう「波」だ。それは世界を嘗め尽くし、破壊した。
 そんな中、比較的素早く復興を遂げつつある国があった。
 日本である。
 耐震建築と対水害の技術を積み上げた島国は、酷い被害を負いながらも手馴れたようにそれから復興を始めた。
 技術は、それだけではない。
 日本独自の技術。そうロボット工学だ。
 いかなる荒地をも走破可能な二本の足と巨大な腕を備えた巨人達は、復興の為の大きな「力」となった。
 その結実の一つ。
 その最高峰として知られていたロボットがあった。
 それが当時最新のエネルギー機関を搭載し、地形に応じた3つの形態へと可変可能なロボット…ゲッター・ロボである。
「憶えているわ…父は常々言っていたもの。"この世紀の探検が出来たのも、ゲッターロボのおかげだ”って」
「ふぅん。要するにゲッターロボが無ければ葛城探検隊は最初の使徒を見つけられなかった」
 想い出に耽ったミサトへアスカが容赦なく言う。
「だからゲッターロボは悲劇の原因。悪者ってワケ?」
「アスカ!」
「だってそうじゃないのよ! ………まあセカンドインパクトが無ければ今の私も無い訳だけどね」
「………」
 ミサトは応えない。一応アスカ流のフォローのつもりではあったようだが。
 だいたいアスカにしてみれば、彼女が「選ばれた子供」となれた遠因…恩人でもあるのだ。ミサトの父親は。

598:第十話6 ◆ALOGETTERk
08/10/30 22:29:07
「話を戻すぞ」
 当然世界各国はそれらの技術を、特に無限エネルギー機関「ゲッター炉心」の技術を欲しがった。
 しかし当然ながら日本はそれを拒否した。
「勿論利権もある。日本が官民を挙げて馬鹿馬鹿しいほど金をつぎ込んでようやく得た技術なのだからな」
「まあ、ボランティアじゃあ無いものね」
 それに当時から既に資源が無い「技術のみで生きる」国だったのだ。
 その技術を(限りなく無償で)解放しろ、というのは、死ねと言われるに等しい。
「だが話はそれだけではない。考えてもみろ「無公害で無限のエネルギー」などという都合の良いモノがあると思うか?」
「無かったの?」
「さあな」
 結局、発見者にして第一人者であった早乙女博士その人でさえ、その全てを知るコトは無かった。
 彼はとある偶然から見つけたこのエネルギーを「人類がサルから人間へ進化する為の一因となった」という大胆な仮説を立てて発表したが
 当然、学会では冷笑されるばかりだった。転換期となったのはこれがエネルギーとして計り知れない価値があると解ってからだ……。
「進化の一因になった?」
「俺も知らんよ。ともかくエネルギーとして価値があるコトが判った後もしばらく冷遇は続いた」
 その扱いがあまりにデリケートだったからだ。
 だが博士は諦めなかった。
「その執念の形がゲッターロボ、か」
「そうだな。そしてセカンドインパクトが更なる転換期となった…悪い意味のな」

599:第十話7 ◆ALOGETTERk
08/10/30 22:29:57
 その執念が実るまでどれだけの労苦が続いたか。そんなもの、他人からすれば意味は無い。
 結局ロボット製造技術は、その多くが様々な経路で流出していった。
 しかしゲッターロボだけはそうはならなかった。
 さっき言ったように非常にデリケートな、運用不安が多い機体に過ぎないからだ。
 葛城探検隊に貸し出したのも、逆に言えばそれだけ葛城探検隊の成功率が低かった。というコトが言える。
 だが他国からすれば、大事なコトは「あらゆる領域で活動可能な」「新型機関をもつロボットを」「日本が所有している」コトだけだ。
 遂にとある国が暴発し、日本との戦争状態に入った。
 
「それが日本海戦争」
 そう、第二の悲劇だ。
 その戦争で俺は友をひとり失った。
 お前達も見ただろう? ゲッターロボは3機に分離する機能を持っている。
 1機につき1人のパイロットが必要なんだ。本来はな。
「あ。それ知ってる。私が日本を離れようとした当時アニメにもなってたのよね「3つの心が一つになれ~ば~♪」ってテーマの」
 葛城一尉も、随分気恥ずかしい事を憶えていますな。まあいわゆるプロパガンダアニメの一種だったんですが、ね。
 ともかく3つの力を1つに束ねる。それが俺達ゲッターチームのチームワークだった。
 ゲッターロボはこの戦争に駆りだされ、そりゃあ大変な武勲をあげたさ。
 その時の俺達は、まさしく英雄だった。
 が…1人が死んだ。
 特攻、だった。

600:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/10/30 22:30:43
しえん

601:第十話8 ◆ALOGETTERk
08/10/30 22:30:50
「巴武蔵。ちょいと頭は悪いが良い男だったよ」
 ゲッターは圧倒的な強さを誇ったが所詮寡兵に過ぎん。
 度重なる攻撃にゲッターは傷つけられ、ついにでくの坊にされちまった。
 早乙女博士は新型のゲッターを開発中だったが、完成まであと僅かな時間が必要だったんだ。
 兵の絶対数に劣る日本は劣勢に追い込まれ、奴は独り、でくの坊と化したゲッターロボと共に出撃し、そして特攻した。
 ゲッター炉心の人為暴走…だがそれが悲劇となった。

『国軍…日本海を埋め尽くしている……ザザ…海が3分、敵が7分だ…』
『クソッタレども! 俺たちをなめるなよ!』
 ゲットマシンが出撃してゆく。俺も竜馬も乗っていないのに。
「やめろ! やめろ弁慶! 一人で行ってなんになる! 死ぬだけだ、戻れ、戻れ!』
「行かせてやれ。隼人君」
「博士、じゃああなたがムサシを一人で行かせたのですか…なんで俺も一緒に誘ってくれない! 何故俺も一緒に」
「甘ったれるな! 君たちにはもっと残酷な未来がある! その為にムサシ君は行ったのだよ!」
 そのとき俺は、博士が何を言ってるのかすら解らなかった。ただ、ムサシが死にに行くコトだけは理解できた。
 何故、俺も死なせてくれなかったのか、と、それだけを考えていた
『リョウ、ハヤト、さらば…後のコトは頼むよ……』
 …爆発。

602:第十話9 ◆ALOGETTERk
08/10/30 22:31:33
 炉心の暴走は、それが地上なら地図に書かなきゃいけないくらい巨大なクレーターを造っちまった。
 あくまで奴は時間稼ぎのつもりだった。完成間際の新型ゲッター完成までのな。だがその特攻は戦争そのものを終わらせるほどだった。
 第一人者であるハズの早乙女博士にすら予想外の、絶大な威力だったよ。
 それからが大変だった。
 ゲッターは一夜で世界最悪の爆薬扱いになっちまったのさ。
 幸い、この特攻で戦争は事実上終わったとはいえ、日本政府は『犯人を捕らえよ』と必死になった。
 国際社会って奴に舞い戻る為にいけにえが必要だった。
 
『アバヨ、ダチ公!』
『先輩、後は頼みます!』
 日本政府だけじゃない。
 国連軍が「調停」と言って、ゲッターロボを止める為に一体の試作兵器を派遣した。
 実際、そいつは強かったが大した敵じゃなかった。新型ゲッターが予想を超えるほどの化け物だったからな。
 だがそいつは自爆を始めやがった。
 黒い海が広がり、ゲッターさえ飲み込まれそうになった時…奴らは言いやがった。
『お前はこの後の時代の為に必要な人間だ……』とな!
 なにがアバヨだ! バカ竜馬が!
 ハヤトが拳で壁を叩く。さして古くもないハズのマンションの壁が、とうきび細工のように崩落した。

603:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/10/30 22:38:39
しえん

604:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/10/30 22:44:00
まさかのさるさん?

605:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/10/30 22:45:42
ゲッター支援!

606:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/10/30 23:15:14
どぉぉぉぉすんだよぉぉぉぉぉぉぉぉ

607:第十話10 ◆ALOGETTERk
08/10/30 23:40:17
 今でも昨日の事より鮮明に思い出せる。最強だと思ったハズの機体が黒い海に呑まれたあの時を
『ヤバイぜリョウ! ゲッターの出力が上がらねえ!』
『へ、さっきまであんなにご機嫌だったくせに何ヘソまげてんだコイツは!』
『先輩、もうこ、腰……アーまで…』
『おいベンケイ! やべえリョウ、これじゃ新入りが持たねえぞ!』
 既にゲッターは腰まで黒い海に呑まれ…徐々に、徐々に、沈みこみ始めていた。
『…ハヤト、手に乗り移れ』
 ゲッターの手が、中央にあるゲットマシン2号機コクピットへと掌を伸ばす。
『もう胴から下は…駄目だ。上半身だけ離脱する』
『それじゃリョウマ、テメェ新入りを、ベンケイをどうするつもりだ!』
『手前が先に乗らなきゃ3号機に手がやれねえだろ!?』
『そ、そうです、先輩、い、急いで』
『ベンケイ!?』
 急遽ムサシの代役として選ばれた男、3号機パイロット車弁慶の声が聞こえる。
『こういうのは年齢順ってね…さ、は、早く』
『ベンケイ、てめえ!』
『もういいから黙ってやがれハヤト!』
『ウホッ!?』
 ゲッターが自らの腹部に拳をブチ当てる。さすがの衝撃にハヤトも意識が遠くなりかけた…その隙にだ
 ゲットマシン1号機が遠隔操作で2号機のハッチを解放。
 ハヤトを、掴み出す。
『て、て、め、え、ら』
『…へ。悪いがお前はこの後の時代の為に必要な人間だ……』
 拳がゲッターの顔まで持ち上がる。薄れ行くハヤトの意識に、コクピットの男の顔が、見えた気がした。
『バカな……俺を、俺を置いていく…つもり、か……』
 コクピットの先の、笑顔までもが見えた、気がした。
『アバヨ、ダチ公!』
『先輩、後は頼みます!』
 ゲッターが隼人を放り投げた瞬間、黒い海が爆発的に広がり…そして唐突にゲッターロボと共に姿を消した。
 遥か彼方に放り投げられた隼人と、そして…崖の上から一部始終を見ていた二つの影を残して。
 彼らは、消えた。

608:第十話11 ◆ALOGETTERk
08/10/30 23:41:45
>>603-606様
済みませんこれに引っかかってました URLリンク(info.2ch.net)

「…なにが、アバヨ、だ…」
「そして最後にようやく首謀者が現れた。それがゼーレだ」
 男が、隼人の言葉を継ぐ。
「…ふん。ようやく来たか」
「加持さん!」
「げ。加持」
 ビールを片手に現れたのは、ネルフ所属であり日本政府の密偵であり、そしてゼーレの走狗でもある男…加持リョウジであった。
 
「ゼーレが直接乗り出したのが、そもそも失敗だったのだろう」
 誰も居ない司令室で、冬月はひとりごちる。
「だが思わずそうしたくなるほどに、それほどまでに強烈なモノがゲッターロボには、ゲッター線にはあったのだろうな」
 手元の古い記録を辿るたびそう思う。それはゼーレとネルフが結びついていた頃の最後の記録だ。
「早乙女研を追い詰め、その手足を一本ずつもぎとっていった…その最後の仕上げの場面か」
 流竜馬とゲッターから弾き出されたその足で駆け戻った神君の目の前で、早乙女研究所は消失したという。
 最後を悟った早乙女研は侵攻してきたゼーレの手勢諸共に研究所の炉心を暴走させた。
 まさに「地獄の釜のフタが開いた」としか、言いようが無い光景だったと聞く。

 しかしそれはゼーレにとっても地獄の釜のフタだった。
 その後一年を待たずして復讐鬼と化した神君がゼーレの中枢を探り、その事如くを叩き潰したのだからな。

 そもそもゼーレと言う組織は、国連の更に上位の組織、影の組織だ。
 その正体どころか名前すら知るものは少なく、多少なりとも知るだけで「戦おう」と考えるほど馬鹿馬鹿しい権力があった。
 だが神君の怒りはそれすらも凌駕したのだ。つくづく人間とは底知れぬ生き物だと思うよ。
 現に今も、そうやって組織を完全に破壊されたハズのゼーレが我々の前に立ちはだかっているのだから。
 彼らもまた復讐心に燃えているだろう事は想像に難くない。

609:第十話12 ◆ALOGETTERk
08/10/30 23:44:51
「ゼーレって…」
「“使徒がネルフ地下のリリスに触れる時、サードインパクトが発生する”。シンジ君も聞いたろう?」
 言ったのは加持だ。
 リリスを守る為の特務機関がネルフ。そしてその支配者であり資金源となっていたのがゼーレである。
「もっともゼーレは十三年前に彼が滅ぼしてしまったがね」
 言って加持はハヤトを見やる。彼は黙って紫煙をくゆらせていた。
「だが疑問に思ったことは無いかな? 何故“サードインパクトのコト”をネルフが知っているか」
 それはセカンドインパクトの真実、ネルフが語るその先の真実をもネルフが知っているからだ。
 セカンドインパクトも、使徒も、リリスも、エヴァも、すべては誰かのシナリオに描かれた存在だからだ。
「まさか」
「使徒、エヴァ、ゲッター。既になんでもありの状況だ。その状況すら予言していた書物があったのさ」
 ま、ゲッターだけはシナリオの外らしいがね。とは加持の談だ。
「そのシナリオが裏死海文書。ネルフもゼーレもそれに従って行動している。だからどんな突飛な事態に対しても対応している」
「ちょ、ちょっと待ってよ加持、ならあたしの父さんは…」
「葛城。悪いが少し待て」
 加持はいきりたつミサトを押しとどめ、シンジへと目線を向ける。

610:第十話13 ◆ALOGETTERk
08/10/30 23:45:57
「そんなコト…なんで僕が、知らなきゃいけないんですか」
「それは君がこのネルフを統べる碇ゲンドウの息子であり、またエヴァ開発者である碇ユイの息子だからだ」
「か、母さんは…」
 確かに母は研究者だった。そして研究中の事故で死んだ。
「君は、全てを知る権利、いや義務がある」
「待ってよ加持さん! じゃ、じゃあ、あたしは…」
 置いていかれた状態のアスカが、たまったものじゃないというように声を上げた。
「アスカ。君も当然知っておいた方がいい。いずれエヴァは狙われるからな」
「し、使徒に?」
「違う。ゼーレにだ。老人達は生きている」
「全く…ゴキブリのような連中だ」
 ポケットから煙草を取り出しながら、吐き捨てるように隼人は呟く。
「老人達の支配から解かれた碇司令は“誰かのシナリオ”を自分に都合よく利用するコトを考えている」
「その望みは解らない。だがゼーレと敵対している」
「今の碇ゲンドウはゼーレの敵だ。だから俺はここにいる」
 紫煙を吐き、ハヤトは呟くように告げるのだった。

611:第十話14 ◆ALOGETTERk
08/10/30 23:47:32
 一方こちらは馴染みの闇。ゼーレの集会所である
『左様。もはや戦争しかあるまい』
 七体の石柱の一つに映る姿。
 車椅子に座る黒衣の老人がぶつぶつと呟くが、ゼーレの元老たちはいつものように無視する。
『神隼人によるゼーレの崩壊、そして碇の公然たる反逆』
『諸君、冬月先生のコトを忘れておらんかね』
『碇のオプションがどうかしたか』
『とにかくシナリオは順調に進んでおる』
『ふふ……身体が軽い。確かに往年の力こそ我らには無い。だがこうやって地獄に落とされたせいかな?』
『そうだ。身体が、いや、魂が若返ったように思えるよ。今の我らに為せぬコトなどなかろう』
『エヴァ量産型の設計は順調だ。S2機関搭載型としてね』
『S2? サンプルは手に入れたのかね?』
『碇が米国支部へ送った物がある』
『やれやれ。ただの機動兵器として建造するならゲッター炉心を積めば良いが』
『儀式に使う機体だ。S2以外の何者にも代用は出来ぬよ』
『ではそのように進めよう』

612:第十話15 ◆ALOGETTERk
08/10/30 23:49:24
『碇とてシナリオを逸脱する事はできぬ。奴にしても使徒は怖かろう。己の全てが徒労に帰するなど怖かろう』
『奴の目的は知れておる。亡き妻に妄執するなど』
『全ての生命を地獄に落としてでも、か』
『だが使徒を排除せぬまま補完を行うこと。その危険性は奴も承知していると見える』
『ならば未だ時は残されていると見るべきだ』
『そして我らにはシナリオを決めるカギが残されている』
 石柱達は次々と言葉を吐く。その言葉は人類全てを愚か者と断じ、そして哀れむ声であった。
『人類は贖罪せねばならぬ』
『争い、戦う』
『敵対する種族のみならず、同族のみでも戦いあい罵りあう。いや己自身の中でさえ罵りを行う』
『哀しいではないか。あまつさえその戦いが、ヒトをより強く強く進化させてきたなど』
『哀れではないか。その進化に喜びを感じてしまうコトなど』
『それが我らが原罪であると?』
『それが生まれもった罪ならば変えられぬ。だが生まれそのものを変える手段を我らは手にした』
『これもまた罪かもしれぬ。だが罪を罪と自覚し、変えるべく行動する我らがココにあるコトは』
『それもまた意思なのだ。何者かの意思なのだ』
『故に我らは意思に従う。ヒトの罪を消滅させるこの意思に従う』
『例えそれが世界最後の夜明けへと繋がるとしてもだ』

613:第十話16(終) ◆ALOGETTERk
08/10/30 23:54:28
「…ろ、老人達はやっぱりバカだよね。コーウェン君?」
 甲高い声が上がり、暗がりに反響してゆく。
「よ、より強くあれ。より強く進化せよ。そ、それが人の意義、ゲッター線の意思であると解らぬ者達でもあるまいに」
「ブフフ…ゲッター線は彼らの神ではないからねぇ。だからといって神の声を無視するなど預言者失格だよね」
 野太い声が、朋友の甲高い声にあわせるように釣りあがる。
「ね? そうだろう? スティンガーくゥん?」
「う、うん。コーウェン君」
 ゼーレとは別の暗闇に二人は居た。
「預言者失格だよ。よりにもよって神にも近いこの存在さえ、たかがプラント扱いだしねえ」
 だが彼らは聞いていた。ゼーレの声を、いや全ての声を聞いていたと言ってもいいかも知れない。彼らもまた、人間ではないのだから。
 彼らに応えるように暗闇に呻き声が低く遠く響く。それもまた人間の声では無かった。
「早乙女博士はゲッター理論において我々の一歩も二歩も先を行っていた…」
「だが、まさかコレを完成させるに至るとは」
「「己の犠牲すら進化の糧とするとは、まさにゲッター線の使者に相応しき男であった!」」
 二人の唱和が闇に響く。彼らでさえ近づけぬ存在が闇に、潜む…。
「その犠牲を我々は完成させなければならない。そうだよね。ね、スティンガーくゥん?」
「け、研究は発表されなければ報われないものね。ね、コーウェン君」
「その為には役者に揃ってもらわなければならぬ」
「その為には舞台を整えねばならぬ」
「「そう、全ては世界最後の日を迎える為に!!」」
 闇へ響く。
 それは日本地区浅間山の地下、悲劇の現場となった早乙女研救所の遥かな地下……。
 闇を喰らい、鉄を喰らい、己を生んだ者達を喰らい、使徒をも喰らって目覚めの時を待つ巨人。
 真・ゲッタードラゴン。そう呼ばれる異形の巨人の声であった…。

614:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/10/31 00:03:24
終わり?乙でした

615: ◆ALOGETTERk
08/10/31 00:16:07
気付いておられた方もいらしたと思いますが、本作では鬼やインベーダーの襲来は発生していません。
竜馬達は(ゼーレに裏から操られていたとはいえ)「人間」と戦っていたのです。加えて早乙女研が敗北した、
というように話が流れています。問題だと感じられた方、筆者の力量不足ゆえです。誠に申し訳ございません。
なおムサシもやはり戦死です。ネオゲよりも少ないです。申し訳ない。
次回は通常運転に戻ります。

しかし今思い起こしてみると偽桜田版(冒険王版)グレートマジンガーみたいな話でしたね…。

616:第十一話/使徒、驚愕 ◆ALOGETTERk
08/10/31 22:34:00
 来るべき近未来。
 今、人は第二の滅び「セカンド・インパクト」を乗り越え、たくましき活況の中にある
 だが、その闇に潜み、激しくぶつかりあう二つの力があった。
 生命消失を策謀する謎の生命体「使徒」。
 かたや、彼らに対抗すべく世界各国より集められた正義のエキスパート集団「NERV<ネルフ>」
 …そしてその中に、史上最強の汎用人型決戦兵器エヴァンゲリオンを操縦する一人の少年の姿があった。
 名を、碇シンジ!
『砕け! エヴァンゲリオン!』
「………」
 勇ましいテーマと共に使徒を薙ぎ倒すエヴァ初号機が駆け、そして緊張に包まれたネルフ発令区へとシーンが移ってゆく。
 ちなみにシンジの発言はすべて吹き替えで勇ましい発言に変わっているが…。
「冬月。この動画を公開しようと考えている」
「黙れ碇。そもそもこんなモノをつくる暇があったら仕事をしろと言っているだろう」
 だいたいネルフは国連直属の非公開組織だろう。と、冬月は碇ゲンドウへと苦言を呈した。
「だが予算が足りん。そして、既に度重なる使徒襲来によってネルフの存在は半ば公然の秘密となりつつある」
「だからと言ってこれで国民の機嫌がとれるとでも思っているのかお前は」
「ふ…問題ない。全ては脚本通りだ」
「それは洒落で言っているのか碇」
「ですが冬月先生」
「…確かに。十三年前に同じ手が通じたことは事実だがな」
『だがあれはセカンドインパクト直後で娯楽が少なかったが故ではないのか?』
 そう冬月が口にしようとしたその時、流しっぱなしの動画が急に乱れる。
 やがて使徒襲来を告げるサイレンが鳴り響いた。

617:第十一話2
08/10/31 22:35:07
「状況はどうなっている?」
「パターン青、使徒です」
「極性サイズの使徒が、シグマユニットの第87蛋白壁の一部に混入・偽装して侵入した模様」
「蛋白壁より侵食が進んでいます。爆発的なスピードです!」
 まさか使徒に侵入されたというのか? いかん。いかんぞ
「セントラルドグマを物理隔離だ。急げ!」
「エヴァへの汚染を防げ。初号機を最優先で地上へ射出。他二機は破棄しても構わん」
 碇がまた無茶な指示を出す。だがエヴァ初号機なくばそもそも我らの補完計画は意味を成さぬ。止むをえんか。
「汚染が進めば最後だ。急がせろ!」
「了解。セントラルドグマ物理閉鎖。及び初号機を地上へ射出。開始します」
 使徒によるドグマの占拠は敗北と同意だ。これで王手は避けられたが、さてエヴァ無しでどう攻める。碇?

「彼らはマイクロマシン、細菌サイズの使徒と思われます」
 ゲッター線研究で篭りきりだった赤木リツコ博士を叩き起こし、使徒対策に当たらせる。
 要はウィルスのようなモノのようだが、同時にコンピュータ・ウィルスにもなれるらしい。まるで一昔前の冗談のようだな。 
 だがその侵攻速度は冗談ではなく、既にネルフメインコンピュータ「MAGI」の一角に侵入しつつある…。

 第七世代有機コンピュータ「MAGI」
 人類が開発した初の人格移植OSで動作し、ヒトの思考を模して思考する。
 メルキオール、バルタザール、カスパーと名付けられた三機のコンピュータで構成され、合議制を行うのである。 
 なお人格提供者は、今は亡き同開発者「赤木ナオコ」博士…現開発部部長赤木リツコ博士の母である…。
「死ぬ前に母さんが言ってたわ。MAGIは三人の自分なんだって」
「科学者としての自分、母としての自分、女としての自分。その3人がせめぎあってるのが、MAGIなのよ」

618:第十一話3
08/10/31 22:36:34
「止められません! MAGI-メルキオールが使徒に乗っ取られました!」
「MAGI-メルキオールより本部施設自律爆破、自爆指令が提訴されています」
「賛成1・却下2、自律自爆却下されてました…使徒は今度はMAGI-バルタザールへ侵入を開始!?」
 早い。使徒のハッキング速度は人間業ではない。さすが人間でないだけのコトはあるな。
 これに対し作戦部は「MAGIの物理除去」つまり破壊を提案する。
 即決即断で定評がある葛城君らしい提案である。
 その背後では既に神君以下、特殊作戦課が嬉々として大量の爆薬とドリルを運びこみつつある。
 だがMAGIが無くなれば、第三新東京市の迎撃機能どころかエヴァの運用さえままならなくなるだろう。
 それだけではない。我々の補完計画を進める上での研究もまだ終わっては居ない。
 MAGIの破棄は本部破棄と同意であり、そして碇の計画の破棄でもあるのだ…。
「目標がコンピューターそのものなら、CASPERを使徒に直結、逆ハックを仕掛けて、自滅促進プログラムを送り込むことができます」
 そう。まだメルキオールの大半とカスパーが残されておる。
 カスパーで逆ハッキングをしかけるという訳だな。
 俺はこちらを支持するが、どうだ碇?
「冬月、3行で説明を頼む」
 碇。もういいから黙っていろ。

619:第十一話4
08/10/31 22:38:22
「暇ね……」
 発令区要員の殆どがMAGI内部への直接接触作業へ移行してしまったので、発令区ががらんとしてしまった。
 でもすぐ慣れると思う。だから心配するなよド…いやもとい。オペレーターの一部と手持ち無沙汰の作戦部がたむろする程度だ。
 阻止に失敗すればジオフロント・エリアが丸ごと吹き飛ぶ。逃げる時間も無いので現実感も無い。
 ただ死…あるいは生へのカウントダウンが他人の仕事で進むだけである。
「………」
 正面スクリーン上では「メルキオール・バルタザール・カスパー」の侵攻状態を示す画像が呈示されるばかりだ。
 既にメルキオールとバルタザールは「使徒侵攻」で真っ赤。カスパーの半分程度が青いだけである。
「……3つの心、か」
 ふと葛城君が呟く。
 うむ。何か心に響くフレーズだな。さて何だったか…

「ガン! ガン! ガン! ガン! 若い命が 真ッ赤に燃え~て~♪」
 突如、静寂を破って葛城君が拳を固めて叫び、いや歌いだした。これは、これは確か…
「葛城君。どうしたかね?」
「ゲッタースパぁーク~空高く~・・・・あ。いえその、なんていうか」
「発令区でバカ騒ぎを始めるとは。申し開きはあるかね?」
 碇が叱責を始める。しかし
「「見たか合体! ゲッターロボだ!」」
 その背後で作戦部要員も歌だした。この曲はまさしくイサオ=ササオの名曲「ゲッターロボ!」か。
「いやその、なんていうか皆緊張しちゃってるので緊張をほぐそうかな~と」
「葛城君。減俸3ヶ月だ」
 容赦ないな碇。だが作戦部の歌は止まらない。むしろヤケを起こしたように唱和が、始まった。
 死を伴った緊張に、さすがに誰も彼も耐えられなくなってきたらしい。
「「「「ガッツ! ガッツ! ゲッター・ガッツ!!!」」」」
 一人、神君だけが離れて苦笑していた

620:第十一話5
08/10/31 22:38:55
『『『『ガッツ! ガッツ! ゲッター・ガッツ!!!』』』』
 歌声は、遥か下で作業を続ける技術開発部チームまで響いてくる。
「先輩、この歌って…なんでしたっけ」
 ぽやっとした調子で言ったのは技術開発部の秘蔵っ子 伊吹マヤ二尉である。
「ゲッターロボ! ね。なんだか懐かしいわ」
 先輩と呼ばれた女性、技術開発部赤木リツコ女史がキー操作を止めずに応える。
『『『三つの心がひとつになれば~ 一つの正義は・百万パワー♪』』』
「母さんもよく聞いていたもの」
「お母様って……もしかしてMAGIシステム開発者の赤木ナオコ博士ですか?」
「そうね」
「コンピュータ開発の世界的権威がロボットアニメって、なんだか意外ですね」
「あら、先端化学者…特にロボット開発者がロボットアニメ好きだった、なんて話は結構あるのよ?」
 モニタから目を離さず、一瞬もキーを止めず、それでも懐かしげにリツコは語る。
「母さんね、あれで結構子供っぽいところがある人だったから…子供というか、のめり込みやすいというか
 だから、なんの気なしに見たロボット・アニメに妙にハマっちゃったらしいわ。早乙女研でサイン貰ったって喜んでたもの」

 ゲッターロボ。それはセカンドインパクト後の荒廃期にNSHKが作成した連続テレビアニメで
 3人のヒーローが乗り込む3体合体ロボット「ゲッター・ロボ」と、地下から現れた「恐竜帝国」との戦いを描いた物語であった。
 …当時、ゲッターロボの広告活動の一環として作成されたテレビアニメだが、そのコミカルながら熱い熱気を放つ物語は
 老若男女問わず評価が高く、特に放映時がセカンドインパクトから間が無く娯楽に乏しい時期だった事もあり
 現実のゲッターロボが「核以上の脅威」として遠ざけられるまで、視聴率上位に居続けたという。

「母は研究一筋の人で、私はずっと祖母と暮らしていたわ…だから、たまに逢ったときの印象は強く残っているのかもしれないわね」
 珍しく饒舌になるリツコ。しかし表情が一変する。
「え……? メルキオールが…?」
「バルタザール及びカスパーも同調しています! 先輩!?」

621:第十一話6
08/10/31 22:40:08
 さてこちらは発令区スクリーン。
 使徒に汚染され、赤一色に染まっていたハズの「MAGI」に僅かに青が生じ始める。
「「「悪を許すなゲッターパンチ! ゲット! ゲット! ゲッタ~ゲッター・ロボ!♪」」」
「いよっし青くなってきたわ!」
「続いて2番!」
 発令区要員も作戦部要員も、手の空いている者達は手を組み肩を組み、既に発令区は合唱コンクールの様相を呈している。
 葛城君にいたっては、どこから持ち出したのかガクランを羽織ってハチマキを巻き、扇子で音頭を取っている程だ。
 神君のみ一人やや気恥ずかしげだが、作戦部一同で中央にがっちり羽交い絞めである。
 彼も大変だな。
 しかし。
「碇、何か動きが早すぎやしないか?」
 確か二時間程度処理にかかると言っていたハズだが、まだ一時間少ししか経っていない。
「ガンガンガンガン………あ、ああ何だ冬月」
「……もういいからお前も合唱に加わって来い」

『『『ガン! ガン! ガン! ガン! 若い怒りが一直線~に~~~♪』』』
「嘘、勝手に自己修復プログラムが走り出した?」
 わ、私入力して無いわよ!?
「先輩、カスパーだけじゃありません! 汚染されたはずのメルキオールとバルタザールまで自己修復プログラムを!?」
「カスパー、メルキオール、バルタザールが同時実行という事?」
 妙だわ。プログラムの打ち込みはまだ終わっていないのに。
 まるで進化する使徒の侵攻に対して、MAGIが自らを…自らを進化させている?
 それだけじゃない。3つのMAGIが一心不乱にただ一度に同じ様に考えている!? 自ら使徒を隔離し再生を始めている?
 母さんの3つの心が一つになっているとでも言うの!?
「先輩、メルキオールが!」
 母さん、MAGIは、貴女の心は……いや、これは、これは?

622:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/10/31 22:41:28
しえん

623:第十一話7(終)
08/10/31 22:42:32
 スピーカーからも突然「ゲッターロボ!」が流れ出し、更に全モニターで一斉にゲッターロボ(アニメ版)の動画が流れる。
「何の冗談かね」
「何よコレ、リツコの差し金かしら…何にしても燃えるわね!」
「「「「若い怒りが一直線に~♪ ゲッター・チェンジ、ぶちかませ!」」」
 葛城君以下、もはや完全にカラオケの調子で歌っている。
 碇、お前も歌いたいなら行っていいんだぞ?
「ああ…ああ」
 と碇をからかっていると、発令区最上部、つまりココにエレベータが上がってきた。
 乗っているのは…金髪。赤木君……だと?
「赤木君、処理はどうなっているのかね!?」
「……」
 心ここにあらずの碇はさておき、思わず私は声を荒げた。だがリツコ君は力なく首を振る。
 何? MAGIが自己再生を始めた?
「MAGI第4の人格が目覚めました……もう、手を施す必要はありません」
「第4の、人格?」
「はい。科学者としての母でも、母親としての母でも、女としての母でもない……一心不乱にただ一つに打ち込む人格です」
 珍しく赤木君が口ごもる…が、やがて意を決したように告げた。
「は、母の……お、オタクの、心です」
 私が思わず足からズッコケてしまった時、丁度MAGIは3台とも青パターンを取り戻す。つまりは使徒消滅と自律自爆解除である…。
 遠ざかる意識に「3つの心が一つになれば」という歌詞が遠くエコーするのだった。

 なお後ほど伊吹君に聞いたところ、その後作戦部主導でネルフ一同カラオケに繰り出したらしい。
 まったく。気絶した老人をほうっておいて出かけるとは敬老の精神が足りんと思う。
 それだけではない。
 カラオケなら駅前にある「ネオ・アトラン」の常連割引券を私が持っていたというのに…。

本日ここまで。某動画のワンシーンを見ていたら自然とこんな話になっていた。
今は反省している(youtube) URLリンク(jp.youtube.com)

624:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/10/31 22:48:02
592
今ふと思ったが「第 十話をNG」すると十一話以降も見えなくなるな

625:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/10/31 22:54:32
ちょwww
原作のこの回好きだったのに180度ぐらいかわっとるwww
こんなしょうもない手段で使途倒すなw
GJです

626:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/11/01 00:23:01
いろいろ楽しい回だったwwww
エヴァの歌における重要性と三位一体のゲッターが合わさったいい話だ。胸躍るね

しかし、毎回超速の投下凄いね。もうちょっとゆっくりでもかまわないんだぜ。ありがたいからj問題は無いけど
乙でした

627:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/11/01 11:43:58
乙です。ROMばっかで申し訳ありませんが今回も楽しませてもらいました

>某動画
古くから居る人なら知っているかもしれないけど、それ初代スレでここの支援用に作ったMADっす
こんな形で反映されようとはw

628:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/11/01 14:22:01
魂が受け継がれた瞬間に我々は立ち会っているんですね

629:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/11/01 21:11:27
>>627
ムオオそうだったのか……

630:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/11/01 22:30:53
>>626
それがですな。
連続で書かないとどうも勢いがだんだん無くなる感じがするんですよ。
生き物でいうとマグロみたいな感じで(マグロは泳いでないと呼吸できなくて死ぬそうな)。

>>627
そんな素晴らしいモノで妙な話を作って申し訳ない。ていうかいいですよこの動画。ホント

631:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/11/01 22:32:07
時を超えたか

632:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/11/01 22:49:15
やるじゃねぇか!じじい!

633:第11話/蘇る生命、そして
08/11/02 20:12:57
 色々あったが使徒殲滅には成功した。というか実質MAGIが取り込んでしまったようなモノだが大丈夫なのだろうか?
 赤木君に聞くと「問題ありません」と碇ばりの対応をされてしまった。
 見た目には以前のMAGIと変わらんようだが…。
「しかしMAGIにこんな機能があったとはな」
「3つの心をひとつにし、同時にひとつの事に当たる。多数決で合議を行うMAGIシステムを有る意味で根本から否定するシステムです。
 仕様書から見てMAGIコピーには含まれておりません……いわばオリジナルMAGI専用の裏コードのようなモノのようです」
 ふむ。まあゼーレに報告する義務は無いのだし放って置いても構わんか。
 こういう時には独立のメリットを強く感じるな。というか今回の件を、もしゼーレに説明する破目になっていたらと思うと脂汗が出る。
 おそらくキール議長の粘着質な追求と碇の得意の陰謀術数の板ばさみだったに違いない。
 やはりサンドイッチが一番怖いな。

 と思ったらまたシナリオに無い事態が発生した。
 ネルフ北米第二支部が、S2機関修復及びエヴァ4号機への搭載実験中に「消滅」したのだ。
 ちなみにS2機関とは正式名称をスーパー・ソレノイド機関といい、あの使徒の動力源と思われている謎の物体である。
 以前碇の息子(と同乗したセカンドチルドレン)が洋上にて撃破した使徒から回収し、比較的予算に余裕がある
 ネルフ北米、その第2支部にて修復実験を行っていた。

 が。これで、終わりか。
 せっかくネルフ本部の発電機関として期待しておったというのに……第二東京電力に菓子折りでも包んでおくかね
 なに? 水道代と電話代だと? そこはろ過装置と狼煙と糸電話でなんとかしておるよ。
 これでも年の割には頑丈なのでね。

634:訂正;第12話2
08/11/02 20:14:06
 さて一応データは北米第一支部に残っているそうだが、正直、敬遠させてもらいたいとしか言いようが無い。
 やんわりと断ったが、今度は第一支部で建造中のエヴァ3号機をこちらに回すと言ってきた。
 4機目のエヴァだと? 正直、3機あれば戦力は足りるし導入時の重量税や運用時の維持費用も馬鹿にならん。
 丁重に『おことわりします』と返信しようとしたが、米国支部長がお中元をセットで付けると言ってきたので碇が受け入れを決めてしまった。
 支部長はなかなか日本文化に堪能なようだな。要チェックしておこう。
 それと碇。お前の今日の昼食はカキフライ抜きだ…さて。
『司令、ご執務中申し訳ありませんが』
 碇へ緊急通信が入った。うむ。まあいつものパターンだな。
 だが今にして思えば、これがトドメのシナリオクラッシャーとなった。

「パターン・オレンジ。ATフィールド反応無し」
「観測所は探知できず。直上にいきなり現れました」
「新種の使徒かね?」
 発令区に移動すると青葉君から「おはようございました」と挨拶が来た。
「碇」
「ああ……問題ない。減給だ」
 硬直した青葉君を放置し状況を確認する。ATフィールド反応が無いだと? だがあの外見は…

635:訂正;第12話3
08/11/02 20:14:39
「どう見ても使徒……ですよね」
 マヤ君。私もまったく同意見だよ。
 その外観は「浮遊する黒い球体」である。また全体に白いラインが縦横に入っている。
 まあそれだけならマーブルチョコのようなモノなのだが、サイズは明らかにそこらのビルより巨大だ。
 オマケにふわふわと落ち着き無く浮遊している。明らかにどこからどう見ても確定的に使徒としか言いようが無い。
『みんな聞こえる? 目標のデータは送った通り。今はそれだけしか分からないわ。
 慎重に接近して反応をうかがい可能であれば市街地上空外への誘導も行う。先行する一機を残りが援護。よろしい?』
 作戦は以上。
『戦いは男の仕事ッ!』
『…まて! シンジ、そいつに不用意に攻』
 珍しく血気にはやる碇の息子、そしてこれまた珍しい焦った声の神君……やがて悲劇が起こった。
 碇の息子が駆る初号機が、使徒の黒い影、いや「黒い海」に飲み込まれたのだ。

 それからが大変だった。
 ここまで使徒殲滅作戦の主力であった初号機とそのチルドレンの消失である。
 まず葛城君が口から盛大にビールを吹き、それを吹きかけられた伊吹君が昏倒。加持君は操作盤にポテトチップをこぼし
 青葉君がここぞとエアギターを奏で日向君はパターン青を連呼。赤木君はMAGIに向かってゲッターロボのテーマを熱唱開始である。
 レイの零号機はN2爆雷をそっと取り出し、アスカ君の弐号機はぼろぼろの野戦コートに目一杯武装を詰め込み
 碇の貧乏ゆすりで発令区に地震が起きるわ始末であった。

636:訂正;第12話4(終)
08/11/02 20:16:39
 どうやらあの使徒の球体部分は「影」に過ぎず、
 影に見えた地上の黒い平面こそが「本体」だったらしい。
 直径680メートル、厚さ約3ナノメートル。その極薄の「本体」を、内向きのA.T.フィールドで支えている。
 …と赤木君が説明を始めると同時に亀裂が走る。
「初号機の、暴走か…?」
「ああ。勝ったな」
 解ったから碇。貧乏ゆすりを止めろ。
 それとお前が心配していたのは初号機か、それとも…
「いや…待て冬月」
 地上に降り立ったのは使徒の体液に塗れた初号機。
 そして見知らぬ、しかし強力そうな、凶悪そうな、力に満ち溢れるような……悪魔の翼を持つ、赤い、巨人。

 今度は赤木君が口から派手にコーヒーを吹き、吹きかけられた伊吹君は何やら満たされた表情。
 葛城君はここぞとビールの一気飲みを始め加持君はスイカを切り分けて振舞いだし、日向君と青葉君はコントを始める
 レイとアスカ君は川辺に移動して殴り合い、いよいよ碇の貧乏ゆすりで発令区に亀裂が入り始める。
 何だ、いや見覚えがある。
 神君が、叫ぶ。
「ゲッター…まさか真・ゲッターだと!?」

 スクリーンが切り替わり、獣のような叫びが轟く。
『どうなっていやがる! おい! ここは日本か!?』
 叫んでいるのは明らかに日本人の容貌である。見覚えのある顔だ。確か十三年前に見た顔だ…
『お、落ち着いてください…えーとえーと』
『お、落ち着いてください先輩!』
『黙れ! 誰か俺に解るように説明しろォーーーーーーーーーッ!!!!!』
 ネルフ発令区を震撼させるその声は、まさしく元ゲッターチーム・リーダーの流 竜馬の声<ボイス>であった。

ようやく出せました…本日これまでで。皆様のご支援がエネルギーです。はい。

637:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/11/02 21:39:32
おおおおお遂に!?

638:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/11/02 22:38:40
ネルフの面々が混乱しすぎだwwwwwww
ゲッターに乗ってるのは竜馬と弁慶と…他にいたっけ?
とにかく乙でした

639:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/11/02 22:59:25
リョオオオオオマアアアアア!!
ついに主役が登場しやがったぜーッ

640:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/11/02 23:07:55
>>638
シンジのつもりで書いたがキャラ付け甘くて誰か解らなくなっていた。今は反省している

641:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/11/03 00:02:22
ゲンドウの貧乏揺すりで揺れるとかどんだけ安普請なんだよとか思ったのも束の間、
みんな待ってた流竜馬と真ゲッターと車弁慶!分かるように説明しろも何も説明自体まだしてねーっつーの。

642:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/11/03 00:49:36
アイツらが帰ってきやがった、しかも真ゲッターと共にwww

だが、この貧乏&駄目駄目なネルフで真・ゲッターのメンテが
出来るかどうか、それが一番心配だ……

643:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/11/03 01:29:40
ネルフだけではない。ここの場合、隼人も寝言でゲッター2って叫んだり嬉々としてドリルを運び込んだり
ラミエルのドリルを羨ましそうに眺めたりする仕様だから・・・・・・・
つまり何が言いたいかというと竜馬もダメ人ドワオ!

644:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/11/04 23:02:04
まて!こいつは罠だ!!

645:第13話「沈黙と顛末」
08/11/05 00:13:56
『黙れ! 誰か、誰か俺に解るように説明しろォーーーーーーーーーッ!!!!!』
『ォーしろォォォォーーーーーしろォォォーー!』
 さて嵐のような一夜が明けた。
 説明を要する。と叫び、斧を片手に大暴れを始めた真・ゲッターにより第三新東京市の被害は甚大。
 説明を行え、と叫ぶのは構わん。
 だがこちらの説明を聞かないというのはどういう事だろうか。
「俺がバカだった!」
 いいから神君、君もちゃんと説明してあげたまえ。

 大暴れするゲッターロボに対し、第三新東京市は捕獲ネット・爆撃・砲撃・放電・落とし穴・膝カックンとあらゆる手段で対抗したが
 それでも真ゲッターの勢いはとどまるところを知らぬ。

 結局、元ゲッターチームである神隼人君自らビィートT32で直接通信を試みることでなんとか事態の沈静化に成功。
 しかし被害を受けた市街地が直るわけではない。ゲッターを建造した早乙女研も今は亡い。この損害はどこに請求すれば良いのだろう。

 何? 更に追い討ちをかけるようにパイロットが生身で大暴れ?
 安全の為に武装解除を命じ、保安要員をさしむけたのが気に障ったらしい。
『俺はやってない! 俺じゃない! 俺じゃないぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃッ!』
 と叫んでこれまた大立ち回りである。なにかトラウマにでも触っただろうか。
保安要員がダース単位で吹き飛び、ならばと神君が生身で立ち向かったが、やはりその巻き添えで保安要員がダース単位で入院となる。
 葛城君。ビール呑みながら観戦している暇があったら君も確保に向かいたまえ。
 それと碇。私も入院してきていいか?
「ああ。問題ある」
 そうか。

「…流竜馬二尉、及び車弁慶三尉はどうしている?」
「とりあえず私の宿舎につれていき事情を聞かせました。今は落ち着いています」
 とは神君の弁だ。しかしあの野獣のような男が落ち着いている姿など想像も出来んが…
「時を越えた、などと聞かされればおとなしくもなりますよ」

646:第13話2
08/11/05 00:15:15
■葛城ミサトのアパート兼碇シンジ他自宅
「そうか……」
「まさかそんなことになっていたとはな…」
 ボロボロの作業着にも似た制服の男が二人、うなだれる。
「まったく心配かけやがって。お前らは世間的に死んでいたんだ」
 しかし神隼人は容赦の無い言葉を投げかけた。彼らしいといえば彼らしい言葉である。
「死んでいた、か」
「どのくらいだ?」
「ああ。十三年だ」
 隼人の一言に、思わず男たちは気色ばむ。
 二人とも同じように制服……旧早乙女研究所制服に身を包み、同じように短く刈った黒髪に黒い瞳、濃い眉の日本人である。
 だが印象はそれぞれに違う。
 
「そんなバカな」
 片や、すこしばかり余裕のある体躯にしもぶくれ気味の顔。
 それだけならただのメタボリックだが、まるでオタマジャクシのような太い眉毛の下の瞳に宿る力が、それだけで男を精悍に見せている。
 …元ゲッターパイロット候補生であり最後のゲッター3パイロット「車弁慶」が彼の名だ。

「俺達が夢でも見ていたってのか?」
 片やこれまた巨漢だが、格闘家特有の引き締まった体躯がそれを感じさせない。
 短く刈った髪に、ヘの字を造るこれまた厚い眉毛。そして口元まで届こうかという力強いモミアゲが特徴となる。
 引き結ばれた口元と釣り目気味な目も相まって、いかにも意思が強そうな男である。
 冬月副司令は「野獣のような…」と称したが、決して醜男という訳ではない。
 …元ゲッター1パイロット「流 竜馬」。これが彼の名だ。

647:第13話3
08/11/05 00:15:52
「そうは言ってねえ」
 と言ったのは元同僚。神隼人。
 彼は「ゲッターが黒い海に飲み込まれ、その後早乙女研が壊滅。そして早13年の時が流れた」と説明したばかりである。
 二人の生還者は、僅か数時間で13歳も年を取った元同僚の前で、今は神妙に話を聞いている。

「だが俺たちにしてみれば長くて1・2秒のコトだったんだ」
「黒い海に飲み込まれたときの事。全ての感触がまだ体の中に残っているぜ…」
 じっと、手を見る。
 セカンド・インパクト後の戦争。日本を守る防衛線にて「黒い海」に消えたはずの彼らが、突如、乗機「真ゲッター・ロボ」と共に帰還した。
 彼らを飲み込んだ黒い海「ディラックの海」と呼ばれる虚数空間からの帰還である。
 その間、驚いたコトに彼らにとっては全く時が流れていなかったらしい。
「物理法則もなにもあったもんじゃねえな」
「お前らの戸籍も抹消済みだ。しかも元英雄で顔が割れすぎてる」
「当面ここで軟禁ってコトですか」
「バカ。その前にやることがあるだろうが」
 体躯に似合わずおずおずと言った弁慶に、後ろ頭で手を組んだ竜馬が軽い調子で言った。
「そのゼーレとやらにお礼をしにいかなきゃならねえだろ?」

648:第13話4
08/11/05 00:17:09
『………今なんと言ったかね』
『左様。冗談は止したまえ』
 他方こちらはそのゼーレである。真ゲッター生存の報はいちはやく彼らにも届いていた……。
 なお、聞いた途端、闇に冷然と浮かぶ七つの石柱<モノリス>がドミノ倒しを起こしたのは君と我々との秘密である。
『間違いないのか…』
 言った途端、頭目である「議長」キール・ローレンツが頭を抱えてうずくまった。
『議長……』
『無論、憶えておる。憶えておるぞ……』
『左様。思い出したくもありませんでしたがな』
 連鎖反応的に神隼人との交戦を思い出し、議員全員が暗闇で頭を抱えるのだった。

「そのゼーレとやらにお礼をしにいかなきゃならねえだろ?」
「無理だ。リョウ」
 間髪いれずに言ったのは隼人である。
「何を!? 日和ったかハヤト!」
 気色ばむ竜馬に対し、隼人は淡々と告げる。
「お前はゲッターに乗っていたくせに気付いてなかったのか?」
「なに…?」
「真ゲッターのエネルギー、もう残ってねえぜ?」
 隼人の発言に、思わず硬直する竜馬であった。

649:第13話5
08/11/05 00:18:02
「まあ失踪から十三年。機体が生きていただけでも儲けものだがな」
「だから、俺たちにとっては1・2秒のコトだったった言ってるだろハヤト」
「つーかですよ。俺たちゃゲッターのオマケですか、先輩」
「実際似たようなモノだな」
「おい」
 ネルフ地下ケイジへと続く通路を連れ立って歩きつつ軽口を叩くゲッター・チーム。
 実際、竜馬も弁慶も一切歳は取っていないように見え、肉体的にも20台相当のままと言っていい。
 一人残された隼人だけは13年余計に歳を刻んでしまったが、肉体の冴えは決して20台にも決して劣らない様子なので問題ない。
 実に、問題ない。

「まあ十三年前にも話したが、このゲッターはゲッター・エネルギーを最大に活かす為に建造された試作機だ」
「だからメチャメチャに強いが…」
「エネルギーもメチャメチャに喰う、んでしたよね」
「そういう事だ…おーい! どうなってる!?」
 メンテ班に問いかける隼人。
 以下技術的な話が続くので体育会系なりにわかりやすく科学的に解説すると「機体の破損は殆ど無いが、エネルギーが殆ど無い」とのコト。
 しかしエネルギーの調達。これが問題だった。

650:第13話6(前半パート終了)
08/11/05 00:26:11
「なによゲッターロボって無限エネルギーで動くんじゃなかったの?」
「違うよアスカ。確かゲッター線収集装置だか何かが必要だったんじゃ」
「それも違うわ碇君。真・ゲッターには独自の収集・増幅機関であるゲッター炉があるハズよ」
「誰だお前ら」
「「うわッ!?」」
 ケイジでひそひそと話していたのはエヴァパイロット「チルドレン」、碇シンジ、綾波レイ、惣流・アスカ・ラングレーの三人である。
「ああ。お前さんたちが噂の」
 ゆったりとした口調と動作で、弁慶が自己紹介した。
「俺はゲッター3パイロット。車弁慶ってんだ。よろしくな」
「どうも、エヴァ初号機パイロット、碇シンジです」
「零号機の綾波レイ」
「惣流・アスカ・ラングレーよ。ま、憶えておけば?」
「ほう。若いのに凄えんだな」
 挨拶を返す三人に感心したように弁慶が笑う。
 背丈が文字通り大人と子供の違いだが、約一名、物怖じしないのが混ざっている。
「若さなんて関係ないわよ。何せエヴァには最新の技術がたっぷり詰め込まれているんだから」
「あ、アスカ」
 アスカは言外にゲッターを旧式の遺物だとでも言いたげだが、弁慶はおっとりと応える。
「そうか。やっぱ十三年も経つと色々違うのかなあ」
「そりゃそうよなんてったって…」
 以下、アスカの自慢とそれをおろおろたしなめるシンジの声がしばらく続く。
 それを弁慶がいかにも面白そうに聞くので、ついついアスカの声も途切れず続いてしまうのだった。

続く。
竜馬達の年齢やキャラは読者の方のイメージによって変わると思いますが
一応筆者のイメージでは、竜馬は漫画ゲッターロボサーガ中の、真・ゲッターロボ編辺りのイメージ。
弁慶も同様に考えていたんですが、結局OVA真ゲッターのイメージで書いていたりします

651:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/11/05 02:02:17
いや、イメージがどうこうさておいて冒頭で三人ともダメすぎるww毎度毎度あんたはwwGJ

652:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/11/05 11:07:32
笑えばいいのか、感動すればいいのか、俺にはもうさっぱりだwww

653:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/11/05 12:09:49
何気に左様のおじいちゃんが痴呆から回復しとるな

654:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/11/05 20:26:12
>捕獲ネット・爆撃・砲撃・放電
ここまではいい。努力の程はよーっく判った。
しかし
>落とし穴・膝カックン
ちょwwwwwおwwwwwまwwwww

655:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/11/05 20:55:20
>>653
左様

656:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/11/05 22:16:18
>>654
落とし穴はありだと思った俺はこのダメ人間集合体ことネルフ職員と同レベルなのか?

657:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/11/05 22:43:23
第3新東京で落とし穴使っちゃらめええええええええ

658:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/11/05 22:58:58
ゲッターが落とし穴に落ちたら黒い月を踏み抜いて
びっくりサード・インパクトが起きちゃううぅぅぅぅぅ

659:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/11/05 23:09:21
>>656
左様

660:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/11/05 23:15:25
>>659
左様って…

661:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/11/05 23:30:54
>>660
さ‐よう〔‐ヤウ〕【▽然様/左様】

[形動][ナリ]そのよう。そのとおり。「―なことはございません」「はい、―でございます」
[感]相手の言ったことを肯定したり、自分の思い出したことにうなずいて話し出したりするときに発する語。そう。「―、あれは去年の暮れのことであった」
[名詞]人類補完委員会(及びゼーレ)所属の、某老議員の渾名。由来はその口癖から
[類語] そんな

俺のゲッター線収集装置はこのように受信したが

662:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/11/05 23:35:42
>>660
  V /  / _,, ァ=ニニ:}       _
   .V  /,.ィ"f= <r'ニ三{        |_    ┐   _l_ l
    'vf^<''"  弋z.ミ'テtフ       |_ Х □_ 匚 L | У
    〉!ト _ i{ ´ ̄r' =|'
   ./ェ゙‐ェi.    、__`_ヤ     ( その通りでございます )
   ./iュ.Hヽ.、   ゙,ニ/
  -^ ー'-.、,i._`ヽ,.仁リ
  ー - .、     /、

663:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/11/05 23:58:08
>>660
つーか有り得ぬだろ

664:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/11/06 11:10:06
とりあえずツッコミポイントが多すぎるのは本能的に判ったwww

665:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/11/06 11:14:29
>>664
左様

666:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/11/06 11:47:44
  ┌┬───┐  
  |::::|::          | このスレはゼーレに監視されています
  |::::|::.   01   |  
  |(ノ::.. SOUND  |)  
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667:第13話「沈黙と顛末」その7
08/11/06 22:02:17
落とし穴と聞いて「穴があったら(以下略)」を真っ先に連想した私は破廉恥な男かもしれん…

 さてゲッターの帰還。それに関心を示した者は、無論彼らだけでは、ない。
「流竜馬、車弁慶」
「「そして早乙女の遺産 真・ゲッターロボ!」」
 歓喜の声を、上げる。
「(いよいよ時が近づきつつある、という事だね。ね、スティンガーくゥん?)」
「(そ、そうだね。いよいよだねコーウェン君)」
「「全ては…」」
 歓喜の声をあげる、コーウェン博士、そしてスティンガー博士。だったが。

『もはや猶予は無い』
『そうだ。戦争だ! 流竜馬が来る。竜馬が来るぞ……!』
『もはやエヴァも待てぬ。Gだ。ゲッターGを用意せよ。補完計画の前に倒すべき相手だ。倒さねばならぬ相手だ!』
 それ以上に喚起された集団があった。そう。老人、ゼーレの議会である。

『銃を持て。砲弾を込めよ。戦争だ。戦争だ!』
 石柱の立体映像を解き、各々に獲物を取り、仕込んだ火器をチェックする。
 かつてゼーレを滅ぼした神隼人。
 いや、神隼人と共に、ゲッターロボと共に、ゼーレが動かした数万にも及ぶ軍勢に立ち向かった男らが蘇ったのである。
 老人達は戦慄した。
 昔日の力を持たぬ己らに、果たして彼らが倒せるのか、と。

668:第13話8
08/11/06 22:03:43
 いやそうではない。
 老人達は知らぬうちに歓喜していた。ゼーレを滅ぼされ、権力を失い、地下に潜り、十三年に渡って戦い続けた肉体は歓喜していた。
 権謀術数のみではなく、文字通り己の力で生きてきた年月は、彼らに紛れも無い「若さ」と「熱気」を与えていたのだ。

『偽りの生まれを持つが故に、愚かな生き物として進化せざるを得なかった我ら人類!』
『無節操に産み増やし、お互いを理解できぬまま憎しみあい!』
『そしてお互いを理解できぬがゆえに傷つけあうことしか出来ぬ愚かな人類!』
『行き詰った我々に未来は無い!』
『故に我らは、その罪を払い新たな未来を産まねばならぬ!』
『その為に!』
 人類の原罪を払う。
 その野望<ゆめ>みた最後の明日を必ずその手に掴まえるが為に! 人間たる己らを振り向くコトなく、冷たき夜を過ごしてきたのだから。
 その為に! その為に!

『いまこそ、銃を突きつける時である!』
『戦争を。戦争を!』 
「「……」」 
 それこそ「人間らしい感情」など持たぬはずの、コーウェン・スティンガー両博士が「引く」ほどに燃え上がるゼーレであった。

669:第13話9
08/11/06 22:04:44
 …などと老人達が燃え上がっているなどと露知らぬネルフ本部。
「ま。とにかく真ゲッターは動かせんよ。だが切り札としては充分だ」
 隼人いわく、ゲッター炉による収集と増幅は可能だがエネルギーの許容量と消費量が桁違いに高い為
 エネルギーを自然に満タンにする為には3年はかかってしまうのではないか、という事。
 また残されたエネルギーでは、数分と持たずガス欠である。
「そういえば早乙女博士もそんなコト言ってたな」
「ゲッター線研究の上で、課題の一つだったからな」
 竜馬にしてみればわずか一日足らず前の出来事だった。早乙女博士の声まで思い出せるようだ。
「それを数分で済ますには…」
「ふむ」
 顔を、つきあわせる。

「まあ当面はここで食客でもやって、機会を待つほか無いな」
 言いつつ、スコップを放ってよこす隼人。
「なんだよこれ」
「とりあえずお前らが壊した施設の復旧を手伝って来い。ゲッタービームで空けた穴があるだろう?」
 あれを対使徒用プログレッシブ落とし穴に改造する手伝いが待ってるぞ。
 と、隼人。
「参ったね…」
『その代わり、機体はこちらで提供させて頂きます』
 地下施設に反響音が響く。タラップを軽快に鳴らして降りてきたのは、ネルフの科学者 赤木リツコ女史であった。

670:第13話10
08/11/06 22:05:35
「初めまして流二尉。お会いできて光栄ですわ」
「あ、ああこちらこそ初めまして」
 白衣に作業着姿ながら、大人の色気漂うリツコに思わずどぎまぎする竜馬である。
「つうか階級でよばれるとなんかしっくりこねえな」
「では流さん、と及びしましょうか?」
「あ…あ」
 にっこりと笑う。普段の赤木リツコ女史を知る者からすれば想像も付かないほどの「笑顔」だ。
 実際リツコの隣ではマヤ嬢が硬直し、周囲で一斉に作業員がスパナやレンチやドリルを取り落としてひと騒ぎになっている。

「しかし赤木女史」
「なんでしょう神大佐?」
 にこにこしたリツコに、何故かハヤトも冷や汗が出ている。しかしそれでも聞いた。
「今日は、ご友人の結婚式で休暇を取られると聞いていましたが…」
「パスしましたわ。どうせもう二人の友人が行くことですし」
 遥か遠くでくしゃみする加持とミサトである。
「それより機体でしたね? ビィートのカスタム改造を進めていますからどうぞこちらへ」
「え、ええ」
「…いい女<ひと>じゃあないか。ん? どうしたハヤト?」
「あ、ああ」
 その「いい女」の瞳に、なにか尋常ならない光…いや「渦」が見えた気がするのは気のせいだろうか?
 リツコに竜馬に生返事を返しながら、妙な汗が止まらないハヤトであった。

671:第13話11
08/11/06 22:06:40
 その後
「あの赤い奴が良いな。カラーリングも気に入ったし、それにトマホークもあるじゃないか」
「あれはあたしのよ! それにあれは試作スマッシュホークなの!」
 と竜馬とアスカが言い合い
「黄色いのは…ねえのか」
「ごめんなさい。先日まではあったけれど、青く、塗りなおしたの」
「そっか。いやまあ独り言だから。気にすんな」
 と弁慶がぽんぽんとレイの頭を軽くなで
「なあ隼人、そういえばお前は何に乗ってるんだ?」
「ビィートだ」
 と、隼人。
「そうかビィートか……苦労したんだな」
「ああ。そうだな」
「何せドリルが小さいからな」
「ああ」 
 なんて竜馬と隼人のやりとりを横目に眺めながら
「へえ…」
 シンジがリツコが持ってきた完全変形ゲッターロボで遊んでいたのだったりするが
 それがリツコの母の遺品であり、また現在の持ち主が彼の父、碇ゲンドウその人であったりするから世の中わからないものである。

 さて。その夜の事であるが…
「出ました。賛成1・条件付賛成2です」
 深夜、暗闇に満ちたネルフ発令区。
 電源をすべて落とされた中で、メインモニターだけが光を放っている。
「条件付ですが、MAGIは先輩の推論を支持すると言っています」
「そう…」
 二つの影。言うまでも無くネルフ本部技術研究部部長 赤木リツコ女史と、その弟子 伊吹マヤ嬢である。
 モニターには、彼女らの問いに答えるMAGIの返答が踊っている。

672:第13話12
08/11/06 22:07:55
『落ち着きたまえ諸君』
 他方、それとは異なる闇。時ならぬ熱気に湧きかえったゼーレ本部に、冷水のようなキール議長の声が響く。
『落ち着きたまえ諸君。我らがなすべき計画は人類補完計画のみ。瑣末な事象に囚われすぎてはおらぬか』
『左様』
 うなずいたのは鷲鼻の老議員である。
『左様。アレは確かに脅威かもしれぬ。だが補完計画の準備さえ終わっておらぬ我らが、今、表に出るのは如何か?』
 その場に落ちた沈黙は、肯定か、それとも…
 約一名のみ、うめくように
『お主が言うかね…』
 と言ったとか言わないとか。
『ともかくゲッターロボなど所詮シナリオに無いイレギュラーに過ぎぬ。今は待て』
『左様。加えて相手は未知なる存在。勝てるかも解らぬ戦にあえてこちらから飛び込むなどまさに愚の骨頂』
 やはり議員が一斉に何かを言いかけたので、キールがコホンと咳払いして場を整える。
『確かに……今の我らならば勝てるやもしれぬが、な』

『体が、軽い』
『他人の考えが手に取るように解るように思える』
『体調もすこぶるよろしい』
『いやあ最近食事が美味くてな』
『うむ…身体だけではない…心が軽い……魂が若返ったというのか』
『我らが神が…アダムらを我らに使わした神が近づいておられるのだろうか』
 議員らが声を揃え、キール議長は深く頷く。
『だが……まだだ。まだ足りぬ』
『左様。全ては死海文書の導きのままにあらねばならぬ』
『全ては人の罪を購う為に』
『全ては人の心の垣根を払う為に』
『全ては世界最後の夜明けを迎える為に…!』

673:第13話13
08/11/06 22:08:45
「ゲッター線の異常活性化反応、ですよね」
 華奢な顎に指を当て、マヤが首を傾げる。
「でも先輩、ゲッター線が人類の誕生に影響を与えたって論文は私も読みましたけど」
 ゲッター線の先駆者、故・早乙女博士が残した「異端の」論文である。
 だがリツコの推論は更に斜め上を走っていた。
「今、現在の人類もゲッター線に影響されつつあるか否かなんて……」
「そうね。少し前の私なら鼻で笑っていたと思うわ」
 それがリツコの推論であり、今回問うた事例である。
「でも、ね。マヤ」
 リツコが語りかけたその時である。発令区の扉が開き、一人の老人の声が響いた。

「こら赤木君。伊吹君! 時間外の使用は許可を取りたまえとあれほど言っているだろう!」
「あ…」
 …夜回りをしていた冬月コウゾウ副司令である。
 副司令は電気代の節約の大事さについて一通り述べた後、しかし重要な要件であれば許可は出すという事
 そしていざモニターを扱う時は、体を悪くしないよう、発令区を明るくして離れて見るように。
 と、一通りの説教をして去って行く。
「え……と。先輩?」
「いいわ…続きはまたにしましょう」
 すっかり毒気を抜かれてしまったリツコとマヤであった。

674:第13話「顛末と沈黙」その13(終)
08/11/06 22:10:38
「ゲッター線の異常活性化反応、ですよね」
 華奢な顎に指を当て、マヤが首を傾げる。
「でも先輩、ゲッター線が人類の誕生に影響を与えたって論文は私も読みましたけど」
 ゲッター線の先駆者、故・早乙女博士が残した「異端の」論文である。
 だがリツコの推論は更に斜め上を走っていた。
「今、現在の人類もゲッター線に影響されつつあるか否かなんて……」
「そうね。少し前の私なら鼻で笑っていたと思うわ」
 それがリツコの推論であり、今回問うた事例である。
「でも、ね。マヤ」
 リツコが語りかけたその時である。発令区の扉が開き、一人の老人の声が響いた。

「こら赤木君。伊吹君! 時間外の使用は許可を取りたまえとあれほど言っているだろう!」
「あ…」
 …夜回りをしていた冬月コウゾウ副司令である。
 副司令は電気代の節約の大事さについて一通り述べた後、しかし重要な要件であれば許可は出すという事
 そしていざモニターを扱う時は、体を悪くしないよう、発令区を明るくして離れて見るように。
 と、一通りの説教をして去って行く。
「え……と。先輩?」
「いいわ…続きはまたにしましょう」
 すっかり毒気を抜かれてしまったリツコとマヤであった。

左様と落とし穴が大人気とは想像もしなかった。今は転生している


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