08/03/17 14:25:28
待ってるお
301:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/17 18:02:18
待ってるのに・・・
302:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/18 15:10:13
>>290続き
レイからの予想外の提案に、シンジは思わず目を見開いた。
「え……と、泊まるって…僕が…綾波の部屋…に…?」
動揺しながらもなんとか聞き返すと、レイは無言でコクりと頷いた。
「この雨では、碇くんが濡れてしまうから。」
確かに、傘をさしてもこの雨では役に立たないのは一目瞭然だった。
「でも…ミサトさんに車で迎えに来て貰えるから大丈夫だよ!」
「葛城二佐、前回の使徒戦の処理で、今日は泊まり込みらしいわ。」
「え…そ、そうなの?」
ミサトは夕飯時の前にシンジへ自宅に留守電を入れていたが、
夕方には既にレイの家に上がっていたシンジはそれを知らなかった。
一方でレイは、リツコと会話した際の
『事後処理がまだまだ立て込んでてね…私とミサトも、今日は帰れそうもないわ。』
という、独り言に近い愚痴を覚えていた。
303:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/18 15:10:48
「だから、泊まっていった方がいい…。」
「で、でもそれはまずいよ!!」
「……どうして?」
「どうしてって……綾波は女の子なんだから、二人きりで泊まるなんて…やっぱりダメだよ…。」
「……それが、なぜダメなの?」
「なぜって……僕が綾波に何かしたらどうするの?」
「…………………何か、するの?」
「し、しないよ!絶対に!!」
「じゃあ、問題無いわ。」
「え……うん、まあ…そうだけ…ど…。」
頑なに拒否するシンジと、その理由がわからないレイ。
何の問題が無いことをお互いに確認できても尚、やはりシンジには異性の部屋に泊まることへの抵抗が残っていた。
シンジが思い悩んでいると、先にレイが口を開いた。
304:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/18 15:34:02
投下キタ―――
乙
305:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/18 15:57:29
「………………帰ってしまうの?」
一見いつもの無表情のレイ。
しかしその台詞と無表情の裏には、帰って欲しくないという想いが見え隠れしているのがシンジにもわかった。
「い、いや…………………じゃあ…泊まらせてもらおうかな…。」
306:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/18 17:02:43
今日のところは以上です。
今回は暇を見つけては携帯から打ってたので、遅筆&誤字脱字などが目立つかもしれませんが、ご容赦下さい。
次も、暇を見つけては携帯で書くつもりなので、投下はいつごろになるかは未定になってしまいます…。
でも今回ほど間があくようなことは無いと思います。
待っていてくれた方、申し訳ありませんでした。
また読んでくれたらありがたいです。
307:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/18 18:22:07
こっちこそありがたい
308:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/18 20:59:09
gj!です。こういうの好き。レイが本編っぽいし、何気に執着が見える。
309:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/19 21:42:10
キター!毎度乙です!
310:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/19 21:43:43
お泊まり展開wktk
311:名無し曹長 ◆BiueBUQBNg
08/03/20 01:22:47
短編で
312:名無し曹長 ◆BiueBUQBNg
08/03/20 01:23:09
「冷たい風、温かい肌」
国語の教科書に書いてある俳句とか詩とかには、冬という季節の寒い中に暖かいものに触れたり、熱い
ものを飲んだり食べたりすることがどれだけ感動することか書いてあるものが多い。暑い時にアイスキャンディー
をかじる様なものか、と想像してはみるけど、いつも冷たいものを食べているような気がする。
昔、季節の移り変わりというのがあったそうだ。いつもそこらじゅうでセミが鳴いているけど、セカンドインパクトの
前はそれは一年のうちの、ほんの2、3ヶ月の間だけだったそうだ。その後で秋という季節が訪れて、セミはみんな
死んだらしい。木の葉っぱは茶色くなったり黄色くなったりする。そして少しづつ寒くなり、葉が全部落ちた頃に
冬になる。雪というものが降る。
なんてことが教科書に書いてあっても、それがどういうものだか僕に分かるはずがない。ミサトさんに聞いたら
「ど~せ私は20世紀生まれですよーだ!!」
といって、夕食も食べずにずっと飲んだくれていた。オペレーターの人たちに聞いてみても、
「ちょっと口では表現できないな」
というばかりだ。
ヤシマ作戦で九死に一生を得て以来、綾波と少し仲良くなった…と、思う。誰とも話さないから、誰とも
仲良くなりたがらないと前は思っていた。あの時彼女の笑顔を見て、もしかしたら普通なのかもしれないと
少し思うようになった。それ以来学校とかで話しかけるようにしてはいるけど、
「そう」
とか
「そうなの」
とかしか答えてくれない。トウジやケンスケには、それが付き合っているようにしか見えないそうだ。
「一年の時に転校してきて以来、誰とも話さへんし、話しかけられても無視してばっかだったしなー。反応する
ってことは、センセに気があるっちゅうことで間違いないやろ」
委員長に至っては
「碇君は綾波さんと付き合ってるんだから、私なんかに話しかけたりしちゃダメよ。ああいう娘って意外と
嫉妬深いんだから。碇君どころか私まで逆恨みされるかもしれないし。くれぐれも、大切にしてあげなさいよ。
これは学級委員としてのお願い」
一体何を考えているんだろう。
313:名無し曹長 ◆BiueBUQBNg
08/03/20 01:23:34
朝から冷たく速い風が吹いていた。空を埋め尽くした雲の色は濃い。空気も湿っぽい匂いがする。
「雨降るかも知れないから、傘忘れないで下さいね」
「ジオフロントだから問題ないわよん」
「ああ、そうでした…僕のほうこそ、忘れないようにしないと」
「いい旦那さんになれるわよ。碇司令も、昔はこうだったのかしら」
「…ひどいことをいうんですね」
「…ゴメン、マジでゴメン」
折り畳みを一本鞄に入れて学校まで歩く。ミサトさんがそんなこというから、父さんのことを思い出した。
いつもは忘れようと努力してるのに。
…綾波が笑顔を見せたのは、僕だけだと勘違いしてた。父さんとも笑いながら話してたのに。
二人とも僕のことなんかどうでもよくて、勝手に僕だけが舞い上がってたんだ。
昼休み。たまに綾波の机まで行くこともある。いつも錠剤とかカロリーメイトとか、マシな時でもパンだけしか
食べていない綾波に弁当のおかずを分ける。最初は見向きもしなかったけど、ここ2,3日は一口か二口食べて
くれることもある。それで、僕に気があるかもって、仲良くしてくれるかもしれないって、勘違いしてたんだ。
それで今日はケンスケの机にいって、エヴァのこととか色々話しながら食事した。こういうのも楽しいかもしれ
ない。トウジも一緒で、あれこれ話が盛り上がる。
…僕は馬鹿だ。それでも未練があって綾波のほうを見てしまった。いつもと同じように黙々とパンを食べている。
やっぱり、綾波にとっては僕がいようがいまいが、関係ないんだ。
「センセ、今日は綾波とは食事せえへんのか?」
「ふぇっ!?」
ちらっと綾波の方を見た。自分が話題に上がっても、別に動じたそぶりはない。
「い、いや…。綾波と僕とは、別にそういうんじゃないから」
その事実を改めて直視するのが痛かった。
「そうやったんかい?」
「パイロット同士の友情、ってヤツだろ。お前は色々と勘繰り過ぎなんだよ」
「ふん、納得できんのう」
「ホントに、そんな想像してるようなんじゃないから」
食事を終えた綾波が立ち上がって歩き出した。僕のいる机の前を通り過ぎた。表情はいつもどおり。
314:名無し曹長 ◆BiueBUQBNg
08/03/20 01:24:01
5時間目の途中から、朝予想したとおり雨が降り出した。帰るころにはドシャ降りになっていた。傘を広げ
ながら出ようとしたら、不意に心拍数が上がった。
綾波がすれ違った。
傘も持たずに。
「傘持ってないの?」
「持ってきたわ。誰かに取られたみたい」
「だったら、止むまで待ってればいいのに」
「1430(ヒトヨンサンマル)から零号機の試験なの。今すぐいかないと間に合わないわ」
「だからって…まだ体も治りきってないんだろ?無茶しちゃいけないよ」
「碇司令が怒るわ。…どうして私の事気にするの?」
「え!?だ、だって…それは」
「私とは、 別 に そ う い う ん じ ゃ な い ん で し ょ 」
そういうと綾波は、大雨の中をずぶ濡れになりながら歩いていった。僕はその姿を見て、即座に駆け出していた。
「綾波、これ!」
「え…碇君?」
「体調悪くしたら、シンクロ率に響くよ」
そんなことを言いたかった訳じゃない。でも何が言いたいか分からなくて、変なことをいった。
強引に傘を握らせると、僕は駆け出した。泥が跳ねてズボンを汚すのも構わず、ただそこから遠ざかりたかった。
315:名無し曹長 ◆BiueBUQBNg
08/03/20 01:24:18
気が付いたら、人気のない公園の東屋にいた。雨脚は弱まってきてるけど、相変わらず強い。鞄をベンチの横に
乗せて、僕は固まったように座っていた。空の色も僕も憂鬱だ。体は濡れて冷え切っている。
不意に、後ろから声がした。
「…碇、君…」
「どうしたんだよ…さっさとネルフに行けよ、父さんが怒るんだろ!」
僕の言うことを無視して、綾波は僕に近づいた。突然、僕の手をとる。
「碇君の手、冷たい。あの時はとても温かかったのに」
「えっ?あ、あの時って…?」
言ってからヤシマ作戦の時のことを思い出した。絶望的な挑戦のあと、やっと掴んだささやかな温もり。
「あ、あのちょっと…!」
気が付いたら、綾波は僕の横に座って、もたれかかっていた。肩と腕に感じる体温が変に気持ちよかった。
「体調を悪くしたら、シンクロ率に響くわ。…もう少し、このまま」
「う、うん…」
この世で一番大切で貴重な宝物を預かっているような、誇らしくて心細い気持ちになる。綾波は目を伏せたまま
僕の肩に頭を乗せている。
彼女の華奢な肩がとても淋しそうで、腕を回したくなった。
暴走する心臓に振り回されながら迷った。意を決して腕を動かす。何もない。綾波が立ち上がった。
「上がったわ。行きましょう」
そういうと何事も無かったかのように東屋をでて、公園を横切りだした。
「遅れちゃったね。父さんに怒られない?」
「構わないわ」
振り向いた彼女の顔は、ちょっとだけ笑っていたような気がする。
僕はついさっきまで確かに感じていた温もりを思い出して、これが冬に感じる暖かさの良さなのか、と理解できた
気がした。
316:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/20 01:51:29
乙
お茶、ここに置いとくから
つ旦
317:名無し曹長 ◆BiueBUQBNg
08/03/20 02:45:58
~~旦⊂(´∀` ) オチャドモー
<つ◎` ) オチャウマー
一応、時期的には「序」の直後ってことで
318:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/20 08:23:21
乙
やっぱ序をイメージして作るってのはいいね
色々と期待に胸膨らませられる時期だし
319:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/20 19:01:28
いいね、いいね
最近スレが活性化してきたみたいで嬉しいわ
320:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/20 21:49:53
>>305続き
「そう。」
一瞬垣間見えたレイの感情が嘘だったかのように思えるほど、その答えは淡々としたものだった。
台所で向き合っていた二人に、しばしの沈黙が訪れる。
今レイに垣間見た感情はなんだったのか、自分の思い違いだったのか、そんな疑問がシンジの中を駆け巡っていると、
先にレイが口を開いた。
「シャワー。」
「え?」
「浴びてくる。」
「あ…うん、そうだね!い、いってらっしゃい!」
レイの一言で我に帰ったシンジは、自分の置かれた立場を思い出し、若干取り乱した。
そんなシンジを尻目に、脱衣所へと姿を消すレイ。
そのレイの冷静な行動に、更に胸の鼓動が高鳴るシンジ。
否応なしにあの時の出来事が思い出され、胸の鼓動は高鳴るばかりだった。
「(お、落ち着け…思い出しちゃダメだ…ッ!!)」
必死に記憶を押し戻そうとする中、脱衣所から衣擦れの音が、続いてシャワーの水音が聞こえてくる。
無意識のうちに唾を飲み込むシンジ。
「(何を考えてるんだ僕は…そ、想像しちゃダメだッ!!)」
台所を離れ、腰掛けようとするが椅子は見当たらず、ベッドに腰掛けるしかなかった。
「(ここに座ってるのはまずいかな…でも床に座るのも変だし…。)」
321:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/20 21:51:53
普段なら特に気にしないそんな些細なことも、今は神経質に気にしてしまうシンジ。
時間を忘れ、立ちながら悶々と様々な思考を巡らせていると、後ろからシャッと脱衣所のカーテンが開く音が鳴る。
シンジは思わず強いデジャヴを感じた。
そしてふと、レイはあの時と同じく何も着ていないのではないかという考えが浮かぶ。
そんな考えに捕われたシンジは、振り返ることができずにいた。
322:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/20 22:59:49
投下GJ
つ囲 練乳蜂蜜ワッフルドゾー
323:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/21 00:07:11
>>322 囲⊂(´∀` )ドモー ちょっと短かったんでもうすこしだけ…。 >>321続き
ずっと背を向けて立っているシンジを不思議に思い、顔を覗き込むレイ。
急にレイが視界に入り、驚いたシンジは目をそらそうとするが、
レイのその姿はしっかりとシャツを着ていることにすぐ気がついた。
「碇君、どうしたの?」
「い、いや、なんでもないんだ。ごめん、そんなことないよね!ハハハ…ハハ……。」
「?」
あのときは、勝手にシンジが勝手に部屋にあがり、それを知らずレイが出てきたのだ。
外に人がいるとわかっているのに、わざわざ裸体を晒すほどレイは非常識ではなかった。
そんな当たり前のことすらわからず、勝手なイメージで一人焦っていた自分をシンジは恥じた。
324:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/21 00:07:54
「碇君も入る?」
「ううん、僕はいいや。」
「そう?じゃあ、寝ましょう。」
「え、もう?綾波、いつもこんな時間に寝てるの?」
時刻は九字にさしかかろうかというところ。寝るには若干早い時間だった。
「いつもは…もう少し本を読んだりしてるけど、大体このくらい。」
レイの就寝の早さに感心しながらも、シンジは少し安堵していた。
今から二人だけで時間をつぶすとなると、一体何をして、何を話せばいいか見当がつかなかったからだ。
しかしその安堵もつかの間、次の問題に気づく。
「ところで綾波、布団とかもう一式あるかな?使わせて貰えると嬉しいんだけど…。」
「布団は…無い。ベッドがひとつだけ。」
325:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/21 00:13:34
ktkr
乙
326:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/21 00:20:20
まさかと思っていた予感が的中した。
「えッ!?じゃ、じゃあ僕は…どこに寝ればいいかな?」
見たところ、別室もソファーも、つまり寝床となるような場所が見当たらなかった。
「ベッドに。」
「あ、綾波は…?」
「私も、一緒に。」
またもシンジの予感が的中した。
「だ、ダメだよ!!それはダメだ!!」
「……………どうして?」
「だって……それなら、座布団の上で寝るよ。」
台所での問答と似たような会話を繰り返す二人。
さっきよりもハードルの高いレイの申し出に、今度は更に拒否を示すシンジ。
しかも、レイが服を着ていることに安堵したシンジだったが、冷静になれば、レイが着ているのは
下着の上にシャツ一枚という理性をくすぐるのに十分すぎる格好であるのに今更シンジは気づいた。
そんなシンジの考えなど露知らず、またもやシンジの頑なな態度を疑問に思うレイ。
既に問題が無いことがわかっていながら、再びレイの申し出をシンジが断ろうとうる理由は、
レイの中ではひとつしか思い当たらなかった。
「………………………………………私と一緒じゃ……………イヤ?」
327:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/21 00:36:32
ああ、くそぅ
いいところで区切ってある…
投下GJ
328:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/23 01:31:32
待ち遠しい
329:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/24 12:59:26
>>326続き
「そ、そんなことないよ!!」
「じゃあ…………どうして…?」
シンジは自分の取った態度を後悔していた。
レイの言葉と無表情の裏に、寂しさや悲しさといった感情が見え隠れしていたからだ。
冷静になって自分のセリフや態度を思い返せば、レイにそんな思いを抱かせてしまうのは当然だった。
自分が傷つけられる事以上に人を傷つけることを苦とし、一人の寂しさを人一倍知っているシンジ。
自分は一人では無いこと、そしてそれはレイも一緒だということを分かり合うためにここに来たのに、
自分の言葉がレイに寂しさを与えてしまったことをシンジは強く後悔していた。
申し訳なさから顔をうつむかせるシンジ。少し間を置いた後、ゆっくりと口を開いた。
「どうして…だろうね…。ごめん…僕が間違ってたんだ。本当にごめん…。」
相手を傷つけてしまうことに比べれば、自分が拘ってた恥じらいなど、とても些末なことだと思えてきた。
「イヤなんかじゃないよ。隣で寝ても…いいかな?一緒に。」
「………うん。」
レイからの申し出を、敢えて自分からも尋ねるシンジ。
できるだけ一緒にいたいという想いは自分も同じだということを、レイにわかって欲しいがための発言だった。
「じゃあ、寝ましょう。」
それだけ言うと、電気を消して早々にベッドに入り込むレイ。
例のごとく淡々と行動するレイとは対照的に、シンジは一人その場に立ちつくしていた。
330:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/24 13:00:47
「碇君、寝ないの?」
いつまでも立っているシンジを不思議に思い、レイが先に口を開いた。
「い、いや!寝るよ。じゃ、じゃあ…おじゃま…します。」
些末なこととは思えど、やはり恥じらいからくる緊張は隠せないシンジ。
ぎこちない動作でゆっくりと、レイのいるベッドに入り込んだ。
窓からの月明かりが2人を照らしている。
2人は丁度向かい合う形でベッドの中に収まっていた。
気恥ずかしさから、寝返りをうって逆を向こうとするシンジ。
しかしその行動は、そっとシンジの手を握ってきたレイによって止められた。
「あ…綾波……?」
「碇君の手…あったかい……。あの時と…同じ。」
月明かりに照らされたレイは静かに微笑んでいた。
その可憐で、母性的で、神秘的な微笑みにシンジは思わず見とれた。
「うん…僕も…暖かいよ…。」
手を取り合い、そっと寄り添う2人。
一緒にいたいと願う恋しさと愛しさをお互いの胸に抱き、
一人では無いという暖かさに包まれながら2人は静かに眠りについた。
オワリ
331:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/24 13:25:51
乙
332:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/25 00:11:30
投下GJ
333:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/25 00:43:41
予想外に長くなってしまいましたが、一応これでおわりです。
長々と待たせてしまいながらも、ここまで付き合ってくれた方々、ありがとうございました。
こうしたほうが読みやすいとか、こう工夫したほうがいい等のアドバイスがあれば是非お願いします。
それも踏まえて、もしよければこれからも投下させてもらえたらと思います。
では、失礼しました。
334:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/25 07:25:55
ああ、もつかれさま
335:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/25 09:08:06
乙かレイ!ぎこちない感じの二人が実にいい味出してましたね。良いまとまりのある作品だったと思います。
336:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/26 10:55:40
待ってるよ
ところで、このスレってどんくらいの人間が見てるんだ?
俺の予想じゃ、俺も含めて3、4人ってとこ?
もっと見る側も増えれば書く側も増える気がするけど…
まああんま増えすぎても荒れる可能性でてくるから今のマターリもいいか
337:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/26 11:40:33
>>336
<●><●>
338:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/26 12:51:01
マターリと過疎の違いについて
339:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/26 12:55:46
やっぱ先に職人さんだよな
職人さんがくれば人も増える
そんで過疎解消
そんでsageとスルーを徹底すればマターリも維持できるなきっと
340:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/26 21:05:38
>>339
同意
341:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/27 17:55:16
放課後
「碇君、そろそろネルフに…、」
「あ、ごめん綾波!今日、委員長とちょっと用事が残ってるから、先行っててくれる?」
「……………そう。」
最近、シンジとレイが一緒にいる時間は少なくなってきていた。
昼食を一緒にしたり、放課後ネルフに共に向かうこと(主にシンジから誘って)も多々あったが、
このごろそれがめっきりと少なくなってきていた。
というのも、学校の行事が近いため、責務におわれていたヒカリの仕事を
成り行きで行事が終わるまで手伝う約束をしてしまったからだった。
「………………………………。」
最初のうちは校門でシンジを待っていたレイだったが、ヒカリとシンジが二人で放課後まで仕事をしている姿をただ思い浮かべ、
二人で途中まで下校する姿を度々見るうちに、レイは校門で待つことをやめた。
一方で、二人は今日もシンジの時間ギリギリまで作業をし、二人で途中まで下校していた。
「碇君、ごめんね、いつも付き合わせちゃって……。」
「ううん、いいよ。委員長、いつも忙しそうだし、僕なんかで何か手伝えることあったらなんでも言ってよ!」
「ありがとう!でも…いいの?」
「え…何が?」
「綾波さんのこと。ちょっと前まで校門で碇君のこと待ってたのに、最近見なくなって…。」
「あ…うん、そうだね…。でも、ネルフではいつもと変わらないし、大丈夫だよ。」
「本当にそう?」
「うん……たぶん…。」
342:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/27 17:55:45
ヒカリに改めて問い詰められ、最近の自分とレイをシンジは振り返ってみた。
確かに、あまり多くなかったレイとの会話が特に少なくなっていた。
ヤシマ以降は段々と話すようになってきたのに、まるで振り出しに戻ったかのようだった。
会えば話せるようになったと言っても、話しをする機会が減ったのなら、そうなるのは必然だった。
「あの…碇君、綾波さんと付き合ってるの?」
「うーん……え?え!?僕と、綾波が!?ちがっ!!僕達は…別にそんなんじゃ!!」
思いふけっている時に唐突かつ予想外な質問をされ、シンジは目に見えて狼狽した。
「だって…よく二人一緒にいるじゃない?綾波さんがあんな風に人と話すの初めて見たし、碇君もなんだか嬉しそうだったし…。」
「いや…うん、まぁ…そうだけど…。」
照れくささを感じながらも、まわりからそう言われて悪い気はしなかった。
レイとの会話が増え、親密になりつつあることに無意識のうちに喜びを感じていたのもまた事実だったからだ。
「碇君…これからも綾波さんと接してあげてね?色々手伝わせちゃった私が言うのもなんだけど…もう忙しいのも終わりだから。」
「うん、もちろんだよ。」
「でもよかったぁ、綾波さんに碇君みたいな人ができて。私、綾波さんがずっと一人なの気にしてたんだ。
だけど、なかなか碇君みたいにうまくいかなくて…。私も、これから碇君みたいに接してみるね!」
「ありがとう、綾波もきっと喜ぶよ!」
つづく
343:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/27 20:54:29
つづき
雑談の後、シンジはヒカリと別れ、ネルフへと向かった。
そしてシンクロテストが終わった後・・・
「あ、綾波。お疲れ様。これから帰りだよね?一緒に帰ろうよ。」
更衣室の前で佇んでいたレイに声をかけるシンジ。
シンクロテストの後に一緒に帰るのは慣例となりつつあったが、今回は様子が違った。
「…………………………………。」
シンジの呼びかけに応えず、無言で俯いたまま佇んでいるレイ。
「あの…綾波?」
再度呼びかけるが、やはり無言のレイ。少し間をおいて、小さくレイは頷いた。
「あ、じゃあ…帰ろうか。」
話し掛ければ少なくとも一言は返事をしていたレイだったが、今までとは違うレイの反応にシンジは困惑した。
帰路の途中話し掛けてもせいぜい「そう。」「ええ。」といった一言返事しかされず、シンジは口篭もるしかなかった。
会話がほぼ完全に途絶えた状態のまま二人の帰路の分岐点に着く。
「じゃあ、綾波、また明日…。」
レイの今夜の態度に思い当たる節がなく、困惑したままレイに別れを告げ、レイに背を向けるシンジ。
そこで唐突に、背中に少しの重みと温もりを感じた。
344:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/27 21:07:10
「え……?」
首だけ振り返らせると、そこにはシンジの肩に両手を乗せ、体ごとぴったりと寄り添うレイの姿があった。
「あ…綾波…?」
「ごめんなさい……少しだけ……こうさせて…。」
レイの唐突な行動に、さっきまでとは別の意味で困惑するシンジ。
背中から伝わるレイの温もりと感触に鼓動は高鳴るばかりだった。
しばらくしてからそっとシンジの背中から離れるレイ。
背中の暖かさに若干未練を残しながらもシンジはレイに振り返り、ずっと疑問に思っていたことを聞いてみた。
「綾波…今日はどうしたの?なんだか…そっけなかったけど…。僕が何かしたなら謝るよ。よかったら教えてくれないかな…?」
「……ううん…碇君は…なにも…。」
345:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/28 01:15:03
「じゃあ…何かあったの?」
「わからない……わからないけど……なぜか…イヤだった…。」
「イヤって…なにが?」
今まで抱いたことのない自分の気持ちに自覚が持てず、言葉にうまく表現できないレイ。
レイは俯いたまま、おそらく自分の気持ちの原因となっていることを口にした。
「洞木さんと碇君が……ずっと……一緒にいることが……。」
「え……?あ………。」
その時シンジはヒカリとの会話を思い出した。自分の楽観的な考えに自己嫌悪した。
レイが自分の感情を言葉にすることや態度にすることが不得手なのは重々にわかっていたハズなのに、
自分が気づくべきレイのささいな行動や態度の変化を見逃していたことに今更気づいた。
それは、レイと親密になりつつあったが故に生まれた安心感から来る一時の盲目だった。
「ご、ごめん綾波!!」
「どうして碇君が謝るの?碇君は何も悪くないのに…。」
レイの言い分ももっともだった。
二人は付き合ってるわけでもなければ、昼食や下校を毎回一緒にする約束をしたわけでもなく、
ならば自由な時間をシンジの自由に、しかも人助けに使うのであれば、誰にもそれを悪く言う筋合いはなかった。
レイもそれをわかっていたからこそずっと胸にしまい続け、聞かれたからこそためらいながらも答えたのだった。
346:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/28 01:16:12
いや…でも、やっぱりごめん!」
レイと自分は似た立場だと思っていたからこそ、レイの気持ちにも気づくべきだったとシンジは反省した。
人との繋がりができたときの喜びと、それを失うかもしれないという不安。
レイにそんな不安を抱かせてしまったのではないかと、シンジは思い至った。
しかし、シンジの考えは間違いではなかったが、問題はそれだけでは無いということに本人はまだ気づいてなかった…。
「最近、綾波となかなか話せなかったよね…。
最近忙しかったけど、でも…綾波との……綾波が前に言ってた絆は、無くなることは無いよ。その…僕との…。」
これが今のシンジに言える精一杯の言葉だった。
これはレイの気持ちを完全に払拭するのに最適な言葉では無かったが、
レイ自身にはこのシンジの言葉が十分に励みとなり、喜びとなった。
「……………うん。」
「それに、やっと手伝いが落ち着いたんだ。次からは、また一緒にネルフに行こうよ。」
「ええ。」
「じゃあ、また明日。」
「あの……碇君。」
帰ろうとするシンジを再び止めるレイ。
シンジの言葉に喜びを感じながらも、まだどこか、
自分でもわからない払拭できない気持ちが残ってるが故の反射的な行動だった。
347:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/28 01:17:49
「もう一度だけ……いい?」
「え…いいって、何が?」
「さっきの。」
「さっきのって……あ……。」
さっきのレイの行動に思い当たり、思わず赤面するシンジ。
改めて頼まれると非常に照れくさくもあり、しかし断るという選択肢は無かった。
「い、いいよ…。」
動揺しながら一言だけ述べると、レイは無言でシンジの目の前に一歩近づき、そっと背中に手をまわした。
さっきとは違い、正面からの抱擁だった。
一気に心拍数があがるシンジ。
「……………碇君の匂いがする…。」
そのレイの一言に、更に心拍数が上がる。
「そ…そうかな…?」
自分も背中に手をまわすべきか…そんなことをしていいのか…などと、熱くなった頭で必死に思考を巡らせているうちに、
レイはさっきと同じくそっとシンジから離れた。
「……また、明日。」
それだけ言うと、レイはくるりと振り返り、帰路についた。
そしてその足取りは、いたって軽いものだった。
348:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/28 09:59:33
あなたは最高です
349:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/28 10:04:51
ヤキモチ妬くレイは凄く可愛いと思うんだ
委員長ええ子や…
350:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/28 12:53:27
>>347つづき
~翌日~
シンジは今朝も早くから学校に登校していた。ヒカリの仕事を手伝うためだ。
「委員長、おはよう。」
「あ、おはよう碇君!手伝ってもらうのも今朝で最後だから、頑張ろうね!」
朝の挨拶を終え、机を向かい合わせて作業を始める二人。
黙々と作業するなかで、ヒカリが口を開いた。
「碇君と綾波さん、昨日ネルフだったよね?綾波さん、何か変わったとこなかった?」
「え?あー…うん…あった…かな。」
昨日の一連の会話と行動を思い出し、申し訳なさと気恥ずかしさの入り混じった複雑な気分になるシンジ。
「綾波さん、何か言ってた?」
「えーと…僕と委員長がずっと一緒なのが…イヤ…かなって。」
351:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/28 12:54:09
率直に答えたシンジだったが、これではヒカリにまで責任を感じさせると考え、慌ててフォローを入れた。
「あ!でも委員長は何も悪くないよ!忙しいからってないがしろにしてた僕が悪いんだ…。」
「あ~…やっぱり。綾波さん、碇君にヤキモチ妬いてたのね。」
「え……ヤキ……モチ?」
ヒカリの予想外な一言に、一瞬なんのことかわからなかったシンジ。
「綾波が…僕に…?」
「うん、そう。」
「そんな!そんなことないよ!!きっと…。」
「碇君……それ、本気?」
レイのストレートな言葉を聞いてもなお、ヤキモチという考えに思い至らないシンジにヒカリは呆れた。
しかしその鈍感さもまたシンジらしさなのだと、ヒカリは思い直した。
「だって…綾波が、僕になんて…。」
「あ~もう!碇君、今日のお昼と放課後はどうするの?」
「え?昼はトウジ達とご飯食べて、一緒に帰るつもりだけど…。」
「綾波さんと一緒にいてあげて!」
352:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/28 12:54:38
シンジの中には綾波と過ごす選択肢もあったが、昨夜の気恥ずかしさがタッチの差でその選択肢を選ばせなかった。
そして今までに見たことの無いヒカリの勢いのある発言に、シンジは尻込みした。
「は、はい!」
「綾波さんだって女の子なんだから…碇君はどうなの?綾波さんと一緒じゃ、イヤ?」
「そ、そんなことないよ!僕だって、出来たら…綾波と……。」
「じゃあ、決まりね!碇君のお手伝いもこれまでだから、頑張ってね!今まで手伝ってくれてありがとう!」
さっきまでの、憤りすらも感じるようなヒカリの態度とは打って変わり、急にニコヤカになるヒカリにシンジは困惑した。
しかし、ヒカリがレイのことを、そしてシンジのことを親身に考えてくれていることは十分に伝わっていた。
「ううん、こちらこそありがとう。また何か手伝えることがあったら言ってよ!」
353:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/28 12:55:49
~昼休み~
「お~い、シンジ!!一緒に飯食わへんか?」
「あ、ご、ごめん!ちょっと今日は…。」
「なんや、まぁだ委員長のこと手伝っとるんか?物好きなやっちゃな~。」
トウジ達からの誘いを断ると、レイの隣にかけつけ、二人に聞こえないようレイに話し掛けた。
「あの…綾波、よかったら一緒にお昼食べない?久々に…。」
シンジは相変わらずヒカリの手伝いを、そうでなければトウジ達と一緒に過ごすと思っていたレイは、
シンジからの誘いは思いがけないものだった。
「うん…碇君がよければ…。」
「よかったぁ。あ…じゃあ…もしよかったら、屋上で食べないかな?」
「別に、かまわない。」
今までに教室でレイと一緒に昼食をとることは無いわけではなかったが、
トウジ達からの誘いを断ってまでという積極性がそこに加わり、体裁のために人目を避けたいがための提案だった。
そして屋上にて柵に背中をもたらせ、地面に腰を下ろす二人。
354:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/28 12:56:16
「良い天気だね…。じゃ、じゃあ食べよっか。」
まるで二人が付き合ってるかのごときシチュエーションに、緊張を隠せないシンジ。
この現場を見られたら、周りに誤解され、茶化されるのは目に見えていた。
「碇君、どうして私と一緒に…?」
「え…どうしてって?」
「久しぶりにゆっくりできる昼休みなのに、鈴原君達と一緒でなくていいの?」
「いいんだ。僕も…僕は…その………綾波と、一緒に居たかったから。」
ヒカリからの後押しがあったとはいえ、やはり言葉にするのはためらわれたシンジ。
勇気を振り絞って発した言葉に、自分の顔が熱くなるのを実感していた。
「……………うん、私も。」
更に顔の熱があがるシンジ。動悸が早くなり、嬉しさがこみ上げてくるのがわかった。
この青空の下で、レイとシンジの絆は特別なものになりつつあった…。
オワリ
355:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/28 22:31:38
なんと言う良作品。この作品は間違いなくgj。
ホント、良い感じっす。嫉妬の対象に素直に人の心配をしてくれるヒカリにしたのはすごい慧眼だったと思います。
356:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/29 06:46:46
灯火∩( ・ω・)∩ ばんじゃーい
357:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/29 19:45:24
レスと賞賛の言葉、ありがとうございます。
物凄く今後の励みとやる気に繋がります。
長くなってしまいましたが、まだまだ粗のある文を最後までよんでくれてありがたいです。
もしよければ、またネタが出来次第投下させてもらいますね。
358:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/29 23:55:40
ちょっと短編で・・・
夜、シンジは自室にて携帯を片手にベッドに横になっていた。
随時パイロットやネルフ間で連絡を取れるよう、ネルフから支給されたものだった。
「(そういえば……課題の期限、明日までってプリントに書いてあったけど、綾波ちゃんと読んだかな…。
プリント届けたの、ケンスケだったから、ポストに入れただけ…だったとしたら読んでないかも…心配だ。)」
思い立ったシンジは携帯でメールを打ち始めた。
メールの機能はあまり活用したことがなく、特にレイに送るのは初めての経験だった。
なんとか自分の心配の旨をつたない操作でメールに打ち込むと、すぐさま送信した。
「よし…と。…………………………メールって…ただ返信待つとなると妙に緊張するな…。」
メールのやり取りに慣れてないがための初々しい緊張だった。
更に、相手が同年代の異性となると、シンジの年齢を考えればそれが特に顕著に表れるのも仕方のないことだった。
「(どっか…失礼なこと書いちゃわなかったかな…そもそも余計なお世話だったかな……。)」
時間がたつにつれ、不安は募り、だんだんと神経質なことまで気にし始めるシンジ。
メール送信から五分ほど経ったところでメールが帰ってきた。
「!!(来た!!え~と…)」
【大丈夫。ちゃんと読んだ。既に鞄の中に入れてるから。】
レイらしく、端的で、文末に丸を忘れない文面。
シンジも顔文字等はまず使わないが、その文面にそっけなさというよりもレイらしさを感じ、シンジは自然と顔がゆるんでいた。
【ならよかった!ごめんね、わざわざメールして。じゃあ、また明日学校で。おやすみ!】
359:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/29 23:56:31
すぐに返信をすると、また五分ほど間を置いて今度は電話がかかってきた。
『はい、碇ですけど。』
『碇君?私…。』
『あ、綾波?わざわざ電話してきてどうしたの?』
『…………が………ったの。』
『え…何?ごめん、よく聞こえなかったな…。もう一回言ってくれる?』
呟くようなレイの声は、電話越しのシンジに届かなかった。
数秒ほどの間を置いて再びレイが喋りだす。
『……ううん。なんでも無い。……おやすみなさい。』
『? うん、おやすみ!』
プチッ
「綾波…なんだったんだろう…。でも…綾波におやすみなさいって言われるの…なんだか新鮮だな。」
最後のやり取りに不可解さを感じながらも、さほど気にせずベッドに横になるシンジ。
寝る前に聞いたレイの声を思い出しながら、携帯を枕元に起き、シンジは安らかに眠りについた。
一方、レイのマンションでは……。
「(碇君の声が……聞きたかったの……。)」
そんな想いから電話をかけたレイ。
「また…明日。」
一言、既に切れた携帯に呟くと、レイはベッドに横になった。
枕元に携帯を添えたまま、レイは安らかに眠りについた。
360:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/30 09:49:53
短編投下乙!
同じ職人さんか?
361:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/30 09:54:57
レイ可愛いな
362:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/30 14:46:12
>>360
そです
ホントは今日レイの誕生日小説書きたかったんですが、ちょっと時間の都合により難しそうです…。
誰か他の職人さん書いてくれないかな…。
363:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/31 15:19:15
「そういえば、綾波の誕生日っていつなの?」
ある日レイと一緒に下校していたシンジはふとレイに聞いてみた。
「一応…3月30日…らしいわ。」
「あれ、今日何日だっけ?」
「31日。」
「え!?綾波の誕生日、昨日だったの!?言ってくれればよかったのに…。」
「どうして?」
自分の誕生日が公称のためのものなのか、それとも本当に自分が誕生した日のものなのか、それすら曖昧なレイ。
レイにとって誕生日というものに意味はない。ただ自分が生まれた理由や目的だけが重要だった。
少なくとも今までは…。
「だって、知ってたらみんなでお祝いしたりもできたのに…。」
「別にいいの。そういうの、あまり好きじゃないから…。」
「あ…そうなんだ。実は…僕もそういうの苦手だったんだ。前までは…。」
自分がネルフに来る前のころ、来て間もないころを思い出すシンジ。
自分に自信も価値も居場所も何も見出せなく、それ故自分が祝われても誉められても実感が持てなかった。
しかしエヴァに乗ることで、正確にはそれをきっかけに多くの人と触れ合ってきたことで、シンジは確かに変わりつつあった。
364:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/31 15:19:57
「でも…やっぱり…嬉しいよ、そういうの。今まで気づかなかったけど…。」
「………そう。でも、私にはわからない……。」
「…………………………。」
一言、どこか寂しさを漂わせながらレイは呟いた。
隣を歩きながら、そんなレイをじっと見つめ、考え込むように黙り込むシンジ。
会話が途切れたまま、分かれ道に着いた。
「私、こっちだから。また明日。」
「あ…うん、またね。」
それだけ会話を交わすと、レイは自分のマンションのほうへゆっくりと歩いていった。
その後姿をしばし眺め、シンジはある決心をしたかのように自宅へ走り出した。
365:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/31 15:20:54
~夜、レイのマンションにて~
コンコン
レイの部屋のドアをノックする音が響く。
「あのー…碇だけど、綾波、いる?」
少ししてから、ガチャリとドアが開いた。
対面した二人の姿はどちらもまだ制服だった。
そしてシンジの手には袋が握られていた。
「碇君、どうしたの?」
「あ、夜分にごめんね。どうしてもこれを渡したくて。その……上がってもいいかな?」
「…ええ。」
「じゃあ、お邪魔します。」
部屋に上がると、レイに卓を出してもらい、その上に袋から出した箱を置くシンジ。
そして恒例のセリフと共にその箱を広げた。
「ハッピーバースデー綾波!おめでとう!!」
そこには、綺麗に飾り付けされた小さ目のショートケーキのホールがあった。
366:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/31 15:21:32
「え…………。」
あまりに予想外の展開に、言葉を忘れ、思わず目を丸くしてその場に立ち尽くすレイ。
「今日綾波とわかれてからすぐに材料買って作ったんだ。時間がどうしても間に合わない部分もあったから、
全部手作りってわけにはいかなかったけど…できるとこは一応全部僕が作ったんだ。
あんまりよくできなかったとこもあるけど……。」
しばらくケーキを見つめて黙っていたレイだが、少ししてから口を開いた。
「どうして…?どうして私に…こんなことしてくれるの?」
今までに一度も誕生日を祝ってもらったことのないレイ。
祝われる必要性も感じなく、これからもそんなことは無いだろうと思っていたレイにとって、
シンジの行動は思いがけないものだった。
367:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/31 15:22:38
「どうしてって……。えーと…誕生日を祝うってさ、その人が生まれてきたことを祝うことだから…かな。」
誕生日を祝うという当たり前の行為。なぜか?と、改めて聞かれると言葉につまるシンジだったが、
自分の今の気持ちと照らし合わせて考えればその答えはひとつしかなかった。
「つまり…その……僕は、綾波が生まれて……居てくれたことが、すごく嬉しかったんだ。
だからどうしても、綾波の誕生日を祝わせてもらいたかったんだ…。迷惑……だったかな?」
シンジはこのとき、ふとヤシマ作戦のことを思い出していた。
レイが生きていたことで涙を流して喜んだことを。
そしてその時のことを思い出したのは、レイも同じだった。
〔笑えばいいと思うよ……。〕
「………………ううん、嬉しい………すごく。ありがとう…。」
そう答えたレイの表情は、あのときと同じく微笑んでいた。
「綾波レイ」という存在を望み、喜んでくれる人が傍にいること。
それを教えてくれたことが、レイにとって最初で最高のプレゼントだった。
レイがここにいる理由は、レイの中で確かに変わりつつあった。
オワリ
368:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/31 21:52:33
もう何て言うかな…綾波が好きで好きで仕方なくてね
369:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/01 00:19:22
エイプリルフールネタに期待
370:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/03 20:08:47
投下待ちage
371:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/03 20:22:45
糞スレあげんな糞カプ厨ども
372:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/03 20:55:23
しばらくは投下しないほうがいいな
373:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/05 22:33:03
地平線の彼方、何処までも広がる紅い海。浜辺に打ち寄せた波が砂を浚って寂しげな音色を奏でるだけで、今や世界に溢れていた生命の息遣いは空の片隅にすら見当たらない。
人類補完計画、心の欠けた部分を補い完全な存在に昇華しようと、驕った人類が行き着いた先にあったのは後悔も絶望も何もかも失われた空虚な世界だった。
残されたのは計画の一端を担い世界を崩壊に導いた少年と、計画の過程で心も身体も壊された少女。
呆然と海を眺めていた少年がおぼつかぬ足取りで浜辺に横たわる少女のもとに向かう。しばらくの間、少年は覗き込むように彼女の顔を眺めていたが、少女の虚ろな瞳は空を彷徨うばかりで少年を捉える事はなかった。
ふと少年が顔をあげる。寂しさと悲しみが入り混じった複雑な表情を浮かべ、口の中で何かを呟いた。
ただ少年も波の音が耳に届くだけで誰からもその答えを得られない事に気付いたのだろう。再び元の無表情に戻ると少女に馬乗りになり少女の細い首を絞め始めた。
その様子を海の上から、世界と同じ色を湛えた瞳で見詰める少女の姿があったことは誰も知らない。少年の唇から洩れた嗚咽に垂れ下がっていた少女の掌が応える。
少年の頬を伝う涙が砂浜に落ちたのを合図に、海に浮かぶその姿は遠い夏に見た陽炎のようにゆらりと揺らめき―。
「……気持ち悪い」
吹き抜ける風に掻き消されていった。
374:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/05 22:34:35
レイの意識を覚醒に導く聞き慣れた音。使徒の襲来を告げる警報がネルフの長い廊下に響き渡った。ハッとなり目を開くと、緊張の面持ちで配備場所へ向かう職員が幾人もレイの前を通り過ぎていく。
どうやら休憩所でシンジを待つうちに訓練の疲れからか、少し眠っていたみたいだ。
使徒殲滅こそがチルドレンに科せられた任務であり、レイが信じる自身の存在意義。未だ待ち合わせ場所に来ないシンジの事は気になったが、優先すべき事柄は決まっている。レイは急いで発令所に向かおうと足下の鞄に手を伸ばした。
「……え?」
が、ここで在るはずの物が無い事に気付く。立ち上がりベンチの下を覗いて見ても鞄は影も形も見当たらない。緊急の連絡が入る携帯電話は愚か、身分証明のために常備が義務付けられているIDカードも全てあの中だ。
レイの表情が心なしか曇る。鞄の置いた場所を思い出そうと必死に記憶を辿っていくも、脳裏に霧が掛かったかのように手掛りとなりそうな物は何一つ見えて来ない。
そればかりか、自分がシンジを待っていた理由、先程まで行っていたはずの訓練内容、ましてや今日の日付すら思い出せないのは何故だろう。
「……う」
レイの頭に鈍い衝撃が走る。余りの激痛に座り込みそうになるが、壁に寄り掛かり何とか事なきを得た。フラッシュバック。そう呼ぶのが適切かもしれない。痛みが走り抜けた瞬間、奇妙な映像が脳裏を寄切った。
レイは軽く開いた唇から荒い息を小刻みに洩らしながら、先の映像を思い返す。
血と表しても違和感ない程紅く染まった海に、空に届く程巨大な身躯に白い羽根を生やした人型の使徒、そして幾本もの槍で両手両足を貫かれ、宙に磔となった初号機の姿。
375:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/05 22:42:03
シンジの断末魔が聞こえたような気がして、急に嘔吐感が込み上げてきた。胃液が逆流し、口内に不快な酸味が広がっていく。壁に手を付き、波が引くまでどうにか耐えようとしていたレイだったが、ついに堪えきれずしゃがみ込んでしまう。そんな時だった。
「そこで何をしてるの」
突然、背後から掛けられた声。口を押さえながら後ろを振り向くと、そこには白衣に身を包んだリツコが立っていた。その様子はいつもと変わらないように見えたが、強められた語尾に鋭く細められた眼光は、今の状況が切羽詰まったものである事を切実に物語っていた。
恐らく使徒襲来を告げる警報が発令されたにも関わらず、未だレイが休憩所で無駄な時間を過ごしていた事を咎めているのだろう。
「申し訳ありません。すぐに発令所へ向かいます」
体調管理は自身の責任。身体に起きた異変を口に出さず、レイは軽く頭を下げると、廊下を塞ぐように立つリツコの横を通り抜けようとした。
376:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/05 22:42:37
が、何処かリツコの様子がおかしい。視界の片隅に入り込んだリツコの横顔が目に見えて青冷めていることに気付き、レイは足を止めた。
「どうかしましたか?」
「……貴方は誰かしら?」
リツコはレイと顔を合わすことなく、そう呟いた。
「ファーストチルドレン、綾波レイです」
模範解答を読み上げるか如く、さも当然のようにレイは答えを返した。ここで初めてリツコの視線がレイを捉える。何かと照らし合わせるように爪先から頭までレイを眺め、リツコは感情を表に出すことなく言葉を続けた。
「……レイは起動実験における怪我で今も尚病院に収容されているわ」
白衣の内側から取り出した小型の拳銃を突き付けると、リツコは再び同じ問いをレイに投げ掛けた。
「もう一度聞くわ。貴方は、誰?」
377:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/05 22:44:01
海面に盛大な水飛沫ともに異形の生物が現れた。その姿を人型と形容出来るのであれば、漆黒の肉体から伸びる長い手足を用した二足歩行によるものではないだろうか。
ただ頭部には本来人にあるべき物はなく、その代わり胸部に鳥を思わす仮面のような装飾を身に付けている。そして決定的な違いといえば、仮面の真下で鈍い輝きを放つ紅い光球。
生物が全身を露にした直後、海岸に配備された湾岸戦車隊の砲撃がその身体目掛け降り注いだ。激しい衝撃音を伴い爆煙が巻き上がる。一撃で象をも容易く仕留める砲弾の集中砲火。並大抵の生物、いや地球上に存在する如なる生物でもこれに耐え得る事は不可能と言えよう。
しかし晴れた煙の下から現れたのは、砲撃をものともせず悠々と歩を進める生物の姿だった。
尚も戦車は砲撃を続けていたが、生物の仮面の目部分から放たれた光線によって、まるで玩具のように片っ端から吹き飛ばされていく。
その様子が大きく映し出されたモニターを眺める二人の男。背の高い初老の男が隣りに座る男に話し掛ける。
「15年振りだな」
「……ああ、間違いない使徒だ」
話し掛けられた男は感情の籠らない声で言葉を返した。色の付いた眼鏡と顔の前で組まれた手のせいでその表情からは声色以上に感情が読み取れない。
後方では自軍の誇る戦力が全く通用しない事に憤慨した政府高官が、受話器向こうの下士官を怒鳴りつけているが、二人は全く気にもとめず正面のモニターを見詰めている。そんな時、男のもとに一本の通信が入った。
378:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/05 22:45:46
「……赤木博士か」
「司令、問題が発生致しました」
「時間が無い。簡潔に言いたまえ」
「……それが不審者、いえ綾波レイと名乗る人物が現れまして」
処理は任せる、そう命じようとした男だったが、綾波レイという名を聞き、喉まで出かけたその言葉を飲み込んだ。
綾波レイはネルフにとって最重要機密事項。経歴はもちろんの事、彼女に関する情報は全て消去されており、外部に洩れる可能性は万が一にも有り得ない。その上彼女が担う役目は男を含む上層部の数人を除いては、ネルフ職員ですら知らないものだった。男は言葉を返す。
「話を続けてくれ」
「はい、対象は綾波レイと非常に酷似しております。私の見る限りでは容姿、性格ともにオリジナルとの相違は見受けられません。まさか例のシステムが……」
男は黙って聞いていたが、手元のモニターを操作し、リツコ達の現在位置に設置されたカメラに映像を切り換える。携帯片手に銃を構えたリツコと抵抗もせずに立ち尽くすレイの姿が映し出された。男の知るレイと何ら違いは見当たらない。
379:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/05 22:50:47
「使えそうなのか?」
「えっ、どういう意味でしょうか?」
「そのままだ。それが操縦者として使えるか否か聞いている」
「パーソナルデータまで酷似していれば起動に何ら支障は無いと思われますが……」
束ねた指の隙間から僅かに覗いた男の唇が醜く歪む。
「そうか。初号機にそれを乗せろ」
「しかし素性すらわからな……」
「構わん。予備が届くまでの時間を稼げればそれでいい。壊れた人形よりは役に立つだろう」
「……わかりました」
380:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/05 22:52:04
銃を下ろし何やら言葉を掛けたリツコに無言で頷くレイの様子に確信めいたものを覚えながら、男は静かに顔の前で手を組み直した。
リツコに先導されレイが画面から消えていく。それを見届けたところで、二人のやりとりを黙って聞いていたもう一人の男が口を開いた。
「分化した魂かね?」
「ああ、恐らくな」
「だが老人達が黙っていないのではないか?」
「問題ない。いざとなれば処分すれば済む事だ」
男は表情も変えずにそう言い放つと正面に視線を戻した。いつしかモニター内の戦闘は止んでいた。海は以前の落ち着きを取り戻し、鳴り響いていた轟音も今は聞こえず世界は静寂に包まれている。ただそこには戦いの爪痕が刻まれているだけで異形の生物の姿はない。
辛うじて原型を留めた戦車の残骸が海から吹き込む潮風に晒され、煙と火の粉を巻き上げる。そしてその黒い線が流れていく方角には、地割れを伴う巨大な足跡が第三新東京市に向けて伸びていた。
381:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/05 23:00:43
とりあえずここまで
レイ逆行って一度書いてみたかったんですね
矛盾があるかもしれませんが、FFだと思って流してくれると有難いです
1日書けても500文字なんで投下は一週間に一度ペースになりそうですね
では完結までよろしくお願いします
382:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/05 23:07:22
乙です
一週間に一回だろうが投下してくれるだけでありがたい
完結まで頑張って下さい
レイ逆行ものは俺もあまり読んだ事がないので楽しみです
383:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/06 01:06:19
文体が読みやすく期待しています。
ただ、改行をもう少し増やしていただけるとより読みやすくなるかと思います。
差し出がましい発言失礼しました。
384:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/06 23:20:27
>>382
>>383
レスありがとうございます
>>382
一話はもうほとんど書き上がってますので、もしかしたら一週間掛らずに投下出来るかもしれません
レイが一人で逆行するシリアス系が読みたいなと思って探すも見付からず、自分で書くに至りました
>>383
改行ですか……
実はいつも以上にしたつもりだったんですが、まだ少なかったですかね?
改行数制限があるので反映できないかもしれませんが、読みやすくなるよう頑張ってみます
385:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/07 09:05:34
投下乙です。レイがどういう状態で元に戻ったのかワクテカしてます。シンジへの思いに目覚めた状態なのか、まだ気になる仲間どまりなのか。元気な状態でいるレイの所為でシンジの選択がどうなるのかなど興味が尽きません。
386:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/08 21:15:02
これじゃまだよくわからん
投下まち
387:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/09 10:23:47
ここってイタモノもいいの?
ゲンレイ前提とか近親相姦設定とか死別ものとか。
388:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/09 10:42:43
>>387
>他のキャラとの恋愛を絡めた話を書きたいのなら、相応しいスレに
って>>1あるだろ
近親云々はともかくゲンレイ、カヲレイ要素を含むのはNG
まあイタモノもLRSの意味を考えればこのスレに投下するのはどうかと思うな
読者を選ぶ作品(内容的な意味で)はサイトなり、イタモノ限定のスレを立ててやって欲しいというのが正直な気持ちだわ
389:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/11 13:46:10
僭越ながら、職人さん達の投下の繋ぎに短編を投下…
「包丁の握り方はこうで、左手の指は丸めて…」
「こう?」
「そうそう、上手だね」
シンジのマンションの台所にてレイはシンジに料理を習っていた。
ここに至る経緯は
「綾波も自炊できるようになったほうがいいよ。安くつくし、栄養もしっかり取れるし。
もしよかったら、僕が教えようか?」
「じゃあ…お願いするわ」
シンジのこの提案がきっかけだった。
そしてレイに料理を教えるべく、道具や食材が既に揃ってるシンジのマンションに来たのだった。
「あ…それじゃちょっとうまく切れないね。包丁の引き方はこんな感じで…」
「あ……」
レイの背中から覆い被さるようにレイの右手に自分の右手を、左手に自分の左手を添え、
実際にレイに正しい所作を動かさせてみるシンジ。
普段のシンジなら躊躇うような接触も、料理を真剣に教えようと集中してる今のシンジには気にならなかった。
「真っ直ぐ縦に入れて、そして手前に引くように……って、綾波?あの…綾波も手を動かしてくれないと…」
「…………………あ……ごめんなさい」
390:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/11 13:46:38
集中力するシンジとは対照的に、集中力が散漫になるレイ。
手を動かすのも忘れ、動かしてもドギマギとぎこちない動きにしかならなかった。
「(鼓動が……早くなる……頬が熱い……なぜ?でも……心地良い……)」
「じゃあ、もう一回一人でやって見て。」
「あ……うん」
体を離したシンジにどこか名残惜しさを感じながらも、レイは作業に戻った。
しかし胸の高鳴りは収まらず、集中力は散漫のままだった。
「つッ!」
「あ、綾波!大丈夫!?」
見ると、レイの指先から血が流れていた。
「貸して!」
「……ッ!?」
咄嗟にレイの手を引き寄せるシンジ。
次の瞬間、シンジはレイの指を口に含んだ。
「あ………あの……碇君……」
シンジの行動にうろたえるレイ。
391:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/11 13:47:26
「絆創膏取ってくる!」
少ししてから口を離すと、シンジは救急箱を取りに部屋の奥へと向かった。
台所に戻ると、レイはシンジに背を向け、傷口を押さえ、うつむいていた。
「綾波、お待たせ!傷口見せて」
しかしシンジの言葉に反応せず、背を向け続けるレイ。
「あの…綾波?」
そんなレイの態度を不思議に思っていたシンジは、いきなり我に返ったように謝り始めた。
「あッ!ご、ごめん綾波!いきなりあんなことして……で、でも怪我したときはああするのが一番だし…
咄嗟のことだったから…つい…あの、本当にごめん!」
「違うの…怒ってない。」
「ほ、本当?」
相変わらずシンジに背を向け続けるレイ。
しかしレイの顔は、正面から見ると耳まで赤くなっていた。
392:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/11 13:48:05
「(胸が…鳴りやまない……碇君のほう、まともに見れない…どうして?)」
「あの…じゃあ、治療しなきゃだから…傷口見せてくれる…かな?」
気まずさから尻込みしながらもなんとか治療を申し出るシンジ。
そんなシンジに応え、レイは振り向いて手を差し出すが、依然俯いたままでその表情はシンジから見えなかった。
「あ、ありがとう…」
処置を終えた2人は料理に戻るが、2人の動きはぎこちなく、レイはどこか上の空だった。
そして出来た料理の食事も終え、帰宅するレイを見送るべく玄関へ向かうシンジ。
「碇君、今日はありがとう」
「ううん、こんなのでよかったらいつでも教えるよ!僕に教えられることがあったら遠慮無く言ってよ」
「じゃあ、また明日」
「うん、また明日」
別れを告げ、ドアが閉まってもその場に佇み続け、絆創膏が巻かれた自分の指先を見つめるレイ。
「(ありがとう……感謝の言葉……)」
レイは傷口にそっと口づけると、足取り軽く帰路についた…。
393:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/11 21:32:11
>>389
GJ
何気ない日常のワンシーンってのがいいわ
繋ぎとは言わず、もっとバシバシ書いてくれると嬉しいな
俺も週明けには続きを投下できるよう頑張るわw
394:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/12 04:45:19
>>393
レスありがとうございます
長編は書いたことないんで、短編をこれからもチマチマ投下していきますね
そちらも投下頑張って下さい、楽しみにしてます
395:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/12 18:55:18
「私は三人目だもの」
白さだけが際立つネルフ内の病院で、レイはただその事実だけをシンジに突きつけた。
「ど、どういう事だよ綾波!!」
シンジも口ではそう反論するものの、どこかぼんやりとそれは本当の事なんだろうな。と納得していた。
あの爆発─しかも爆発の中心は紛れもなくレイ本人の乗っていた零号機だということをシンジはミサトの口から聞かされていた。
あの爆発の中心にいたならば、どれだけエヴァの装甲が優れていたとしても助からないだろう事は理解していた。
だからこそ、彼女が生きていてくれたことが嬉しかったのに─
「いずれわかると思うわ。言葉の通りよ」
レイは初めてシンジと出会った時のような冷たい口調で言う。
もしもこれが初めての出会いだったのなら、シンジも深くは追求せずにいただろう。
だが違う。彼の中にはレイと培ってきた思い出が少なからずあったから。
「だからそれがどういう事かわからないよ!!」
さらに口調を強めて問い詰める。それはどこか懇願のように見えて。
声を荒げて、肩で息をするようなシンジを見たレイは、その気迫に少し押されたのか呆れたように息をついてポツポツと話し始めた。
396:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/12 18:56:33
「……私には沢山のスペアの身体があるわ。指じゃあ数えられないくらい」
─始められた説明は
「私がどれだけ酷い傷でも出撃していたのはその為。私には替えがあるもの」
─まるで、出来の悪い戯曲のようで
「魂はこれ一つだけれど、それは傷つかないし壊れない」
─それでもシンジの前に立つのは『現実』
「ならばそこにあるのは完全な生命。ならば私は死を恐れる必要はない」
─こんな悲しい物語を持つ、今にも消えてしまいそうな少女を
「するとほら、死を恐れない人間はいるかしら?それ以前に、身体のスペアがある人間は?」
─このままにしておくことができるだろうか
「だから私は、人ではないの。もう、私に構わないで」
397:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/12 18:57:00
最後にそう告げると、レイは再び廊下を歩き始めた。
歩く姿はとてもゆっくりしたものに見える。
しかし、その姿にはこれ以上言うことはない。という意思表示も含まれているように見えて、他の追随を許そうとしなかった。
「違う!!」
それでもシンジは叫んだ。ここで見送ってしまったら、二度と会えなくなる─
本当の意味で彼女に会うことが出来なくなる気がして。
そんなシンジの心の叫びが少しでも届いたのか、はたまた完膚なきまでに叩きのめそうとしたのか。
いずれにせよ、レイはシンジの声を聞いて歩みを止めた。
再びかち合う目線。
レイの目線は相変わらず冷たいままだったが、シンジにはもうさほど気にはならなかった。
「……何が違うの」
目線と同様、相変わらず口調は冷たい。
その厳しさはいかなる物をも砕いていきそうな、そんな強さをも含んでいる。
だが、その声はわずかに震えていた。
398:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/12 18:57:34
「君はさっき、自分は人じゃないと言った」
─確かにそう言った
「ならなんで君は今にも泣きそうなんだ」
─まるで懺悔をするかのように
「綾波は僕とは違う、アスカともトウジともケンスケとも委員長とも違う!!」
─何の罪を償う?君にはそんな罪は端から持ち合わせていないのに
「ミサトさんみたいにずぼらじゃないしリツコさんみたいに冷たくない」
─生まれなければよかった物なんてのはない
「それは誰だってそうなんだ!!周りと全く同じ人間なんていない!!綾波が少し特殊なだけで、全く違うことではないんだ!!」
─世界中の全ては、祝福されるために生まれるのだから
「綾波は、君はちゃんと自分を持ってるんだ。自分を持って、それを貫いて生きてる。」
─だから君もそんなに自分を蔑まないでほしい
「僕が僕であるように、君は君だ。もし世界中のみんなが君を人以外の何かと言っても、僕は君を人だと自信を持って言い続けるよ」
─そうでないと、君に惚れこんでしまっている自分が滑稽に見えるじゃないか。
399:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/12 18:58:10
廊下には静寂。
それ以外の何物もない。
シンジは荒ぶっていた呼吸をゆっくりと整え、心を落ち着けた。
感情に流されてはしまったが、それは間違いじゃなかったと思う。
時にはそれに身を任すことも必要だ。かつて母が、それに近いことを言っていたように。
ツッとレイの頬に涙が流れる。
それは本人も無意識の内に出ていたようで、それを拭おうともしなかった。
ただただこぼれ落ちていく涙。レイはそれを見たことがあった。
今の自分は知らないはずなのに、何故それを懐かしく感じるのか。
見かねたシンジがそっと頬に手をやり、涙を拭った。暖かい手、伝わる体温。
差し伸べられたその手にレイ自身の手を重ねて静かに目を閉じながら言う。
「あなた、あたたかいのね。このあたたかさも、懐かしい気がする」
ふっと風が廊下を吹き抜けた気がした。それと同時にシンジは思い出す。
以前にレイが中庭で言ったことを。
『もう一度、触れてもいい?』
この戦いに全てけりが付いたら、綾波に聞いてみよう。
五度目に触れたときは、今触れているこの時はどんな感じがした?と。
400:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/12 18:58:55
改行しまくりのせいでかなりのレスを使ってしまった。
と、言うわけでこれで終わりです。
401:380の続き
08/04/14 00:39:54
「主電源接続、全回路動力伝達、起動スタート」
「A10神経接続異常なし。初期コンタクト全て問題なし」
「双方向回線開きます」
エントリープラグ内でレイはコントロールレバーを握り締め、無言で時が過ぎるのを待っていた。表情には感情の色こそ見られないが、疑問や不安を一寸たりとも抱く事のなかった以前とは違い、その胸中は嵐に見舞われた離島のように終始ざわめいていた。
まあ無理もない。自分の管理を手掛けた人間に己の存在を否定され、その上自分がもう一人存在すると告げられては致し方ないことだろう。
まだその要因がわかれば対処の仕様もあったが、未だレイは要因どころか自分の置かれた状況すらも把握しきれていなかった。
「……の匂いがしない」
そんな呟きが何気無しにレイの口から洩れる。幸いにもリツコ達はモニターに集中していたためか、その台詞が彼女達の耳に届く事はなかった。
初号機への搭乗命令。この事がレイに状況の把握を困難にさせていた。初号機を起動可能なのはサードチルドレンの碇シンジだけにも関わらず、シンクロ率が劣る上に一度初号機に拒絶された自分を使うのは理に適わない。
そうせざるを得ないのはシンジが搭乗を拒否したのか、もしくはそれ以前にシンジ自体が搭乗不可能な状態にあるのか。
いや、機体互換試験の時に触れたシンジと何かを共有するような感覚が、今は全く無いのがすでに答えなのかもしれなかった。
「余計な事は考えないで!」
リツコの声が思考の海に沈んでいたレイの意識を現実へと引き戻す。その声につられるように顔を上げると、自分を見詰める男の姿がモニターを通してレイの目に映った。
そうだ。難しく考える必要はない。置かれた状況がどうあれ、自分は黙って与えられた使命に従えば今までのように上手くいく。レイは自分にそう言い聞かせると、目を閉じ初号機とのシンクロに全神経を傾けた。
「シンクロ率62.3%、誤差0.5%以内。いけます」
「そうね。……エヴァンゲリオン、発進!」
402:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/14 00:42:07
初号機は地上に射出されたのとほぼ同時に、肩口からブログレシッブナイフを取り出し身構えた。
発令所に向かうことなく直接格納庫へ連行されたため、レイは使徒各々が持つ特性は愚か、使徒の形状すら知らなかった。情報が少ない状態で迂濶に動くのは危険過ぎる。その上今回は単機迎撃なだけに尚更だった。
慎重な面持ちで周囲を伺っていたレイの耳に突如として轟音が鳴り響く。瞬時に音の方向に視線を定めると、崩れゆく山の合間から戦闘機を数機従えた異形の生物が姿を現した。
「何やってるの、早く距離を詰めなさい! 通常の火機では足止めにもならないわ!」
動こうとしないレイに業を煮やしたリツコから通信が入る。戦闘機は巡航ミサイルで応戦するも、リツコの言葉通り使徒の体表に傷一つ負わすことすら出来ず、一機、また一機と打ち落とされていき、最後の一機が初号機の足元付近に墜落するが、それでもレイは動かない。
いや、動けなかったと表した方が正しいのかもしれない。想定を越える事態。未知の生物である使徒を相手にする以上、それは致し方ない事であり、レイも如何なる状況にも対応出来るよう十分な教育を受けていた。しかし何事にも限度がある。
目前の標的が過去に相見えた使徒であった事までは、想定を越えるも対処可能な事態であったが、問題はその使徒の存在とレイ自身が置かれた状況の因果関係にあった。
初号機パイロットの突然の不在、起動実験を失敗した他の自分の存在、そして過去に対峙経験のある使徒の出現。それらが結び付きレイに導き出させた答えは、レイ自身が過去に戻ってしまったというもの。
有り得ない。レイは浮かんだ考えを即時に切り捨てようとするが、頭の片隅に引っ掛かった疑惑はレイの心に思考の根を張り巡らし、確実に初号機の動きを鈍らせた。
403:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/14 00:43:31
「避けて!」
リツコの声がレイに届くのとほぼ同時に、使徒の右手から放たれた光のパイルが初号機を襲った。とっさに身体をよじり致命傷は避けたが、完全に受け流すことは出来ずに、胸部を霞めたパイルは初号機の左肩に深々と突き刺さる。
「……くっ」
きつく結ばれたレイの唇から小さな声が洩れた。使徒は尚も攻撃の手を緩める事なく一気に距離を詰め、密着状態から残った左手で初号機の顔を狙う。
再び閃光が走る。顔の前で構えたナイフが弾かれたが、使徒の二撃目は初号機を捉える事なく空を裂いただけで終わった。
ただレイもやられてばかりではない。攻撃を外し前傾姿勢になった使徒の一瞬の隙をレイは見逃さなかった。
辛うじて動く右手で使徒の左手を払い除けると、腹部を蹴り上げ使徒ごと無理矢理パイルを引き抜く。そして地響きを立て後方のビルに倒れ込んだ使徒に間髪を入れず襲い掛かった。
レイの狙いは使徒の胸部にある紅球。いかなる損傷も驚異的な回復力で修復してしまう使徒に有効な攻撃手段は、コアと呼ばれるこの箇所の破壊であることをレイは今までの戦いより学んでいた。
初号機は起き上がり掛けた使徒を再び仰向けに押し倒すと、コア目掛けナイフを振り下ろした。
が、確かな手応えの代わりに伝わってきたのは金属同士がぶつかったような手の痺れと、それに伴う甲高い衝撃音。いつの間に現れたのか、全てを拒む赤い壁が初号機と使徒を隔てるようにして鈍い輝きを放っていた。
404:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/14 00:48:10
とりあえず予定の一週間が経ちましたので生存証明も兼ねて投下しました
本当は一話の最後まで投下するつもりだったんですが、予想以上に長くなり……
いつになったらシンジ出てくるんだろorz
展開が遅くてすいません
405:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/14 06:54:22
乙!これからがたのしみっす
406:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/14 20:32:30
待ち
407:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/18 07:52:12
投下町
408:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/20 23:49:19
すいません
404ですが、小説の入った携帯が壊れてしまったので投下は修理が終わる一週間後になりそうです……
申し訳ありません
409:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/21 07:35:38
まあいいさ
410:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/21 08:30:56
頑張れ
突然音信不通だけは勘弁な
411:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/23 17:58:56
日曜日まだかな・・・
412:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/26 00:06:35
DVD発売記念上げ
413:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/26 02:29:26
DVD発売記念下げ
414:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/26 10:05:21
そして投下待ち
415:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/26 23:26:37
「お邪魔します。綾波、具合どう?」
レイはここ数日、風邪で体調を崩し、家で寝込んでいた。
そんなレイのもとへシンジはできる限り見舞いに来ていたのだった。
「まだ少し、熱があるみたい…。」
ベッドに横たわったままシンジのほうを向き、レイは静かに答える。
「でも、顔色も最初より大分良くなったね。もう少しできっとよくなるよ。」
「うん。」
シンジは寝たきりのレイにプリントを届けたり、薬や氷枕などの身の回りのことを世話し、
晩ご飯を作るのがここ数日の日課となっていた。
「薬と水はここに置いておくね。あと、お粥も作っておいたよ。風邪に効くらしいから、ネギも入れておいたんだ。」
「ありがとう………。」
普段からミサトの家で家事をこなしてるシンジは実に手際がよく、気も利いていた。
しかし家事に手際のいいシンジでも、レイとの会話に努めようとしたが、如何せん会話のほうはなかなかうまくいかなかった。
「じゃあ、今日はこの辺で帰るよ。綾波、早くよくなるといいね。」
「うん…碇君のおかげで、大分楽になったから…。」
416:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/26 23:27:07
バタンと戸を閉め、シンジは帰路についた。
そんなシンジの背を、罪悪感で見送るレイ。
なぜなら、レイは嘘をついていたからだった。
本当は、熱はとうに下がり、体調も普段と変わらないくらいまで回復していたのだ。
「(私……どうして…こんなことを…。碇君に、迷惑をかけてしまってるのに…。)」
何度となく繰り返した自問の末、レイはひとつの答えにいきついた。
「(きっと…碇君に来て欲しいから…もっと傍にいて欲しいから……。碇君が帰ると、いつも苦しくなる…。
これが、寂しい…ということ?)」
今までに抱いたことのない感情に戸惑うレイ。
罪悪感を感じながらも、シンジのやさしさがそんな自分の寂しさを紛らわしてることを知り、つい甘えてしまう。
それは、レイが初めて抱いた「わがまま」だった。
「(もう少しだけ…少しだけ…このままで…。)」
いけないとわかりつつも、どうしても甘えに身を委ねてしまっていた。
~~そして翌日~~
417:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/26 23:27:28
今日も下校時刻を過ぎたころ、綾波のマンションに来訪するシンジ。
しかし、シンジは意図せず、レイの持った初めてのわがままを打ち砕く提案をしてしまう。
「綾波、もう大分顔色がよくなったね。もう熱もないと思うから、体温計で計ってみなよ。」
そういって体温計を差し出すシンジ。
「え………。」
予想外の展開に、虚をつかれるレイ。このままでは風邪が既に治っていることがバレる。
そうなれば、きっともうシンジはレイのところに来てくれない。優しくしてくれることもない。
そう考えたレイは、思わず苦し紛れにその場を取り繕うとした。
「ダメ…。まだ、熱があるから…。」
「そうなの?でも、それにしたってどのくらい熱があるのか知っといたほうがいいし、やっぱり計ろうよ。」
風邪を引いてるのにこまめに体温を測らない道理は無く、やはりごまかしきれない。
レイはおずおずと体温計を受け取ると、やはり正直に言うべきか、それともなんとか取り繕うか、そんな思索を巡らせていた。
「じゃあ、僕は台所で洗い物してるから、終わったら教えて。」
そう言ってベッドの傍らから立ち去るシンジ。
シンジの目が消えたところで、なんとか体温計をごまかそうとするレイ。
素直に測ったところで平熱にしかならず、なんとか熱のある温度を表示させようと思い至ったのが、指による摩擦だった。
しかし、それだけの温度を表示させるのはなかなか難しく、体温計をこするのに没頭するレイ。
「綾波……………なにしてるの?」
「……ッ!?」
418:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/26 23:27:54
体温計をこすることに没頭し、まわりが見えなくなっていたレイは、突然かけられたシンジの声に取り乱した。
シンジは台所から水と薬を運んできたのだった。
「碇君……違うの……これは……その………。」
シンジを納得させられる言い訳を考えつけるはずもなく、俯いて口篭もるレイ。
その姿は、悪事が母親にバレた時に怯える子供のようだった。
シンジの優しさに甘え、好意を裏切ってしまった。きっと軽蔑されるだろう。
そんなことさえ頭に浮かび、レイは急速に罪悪感と不安に苛まれていった。
「綾波…もう熱、無いんでしょ?」
シンジの言葉にビクッと体を震わせ、ゆっくりと俯いたまま頷いた。
「碇君……ごめんなさい…その…私……
「よかったぁ~、綾波が良くなって!これで安心したよ。」
聞こえるか聞こえないか程度の声で、途切れ途切れに謝罪を述べようとしてるとこを、シンジの明るい声が遮った。
「え…………?」
思いがけないシンジのセリフに、思わずキョトンとするレイ。
「風邪にしては長いから心配してたんだ。病院にいったほうがいいのかなって…。
でも、なんで治ってない振りしてたの?そんなことまでして…。」
419:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/26 23:28:43
トウジが仮病のために保健室で体温計をこすってるのを見てたシンジは、その意味を知っていた。
しかし、そんな行為をレイがやってみたという意外な事実に、多少は驚きを隠せないでいた。
「……………………………碇君に…優しくしてもらいたかったから……。」
沈黙の後、ポツリとレイはつぶやいた。それを機に、次々と自分の旨を白状する。
「碇君、優しくて…いつもお見舞いにきてくれて…だから、つい…甘えてしまって……。
でも、治ったら碇君はもう来てくれない……それが…寂しく…て……。」
ポツリポツリと言葉を紡ぐレイ。最後のほうは思わず泣き出してしまうのではないかという声色だった。
「本当に……ごめんなさい……。」
それだけ言い終わると、レイはシンジの目線から逃れるように布団を顔まで引き上げた。
「なんだ、そんなことだったら言ってくれればよかったのに。綾波さえよければいつでもまた来るよ!
一人暮らしじゃ寂しいだろうし…その…これからも度々お邪魔して…いいかな?」
420:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/26 23:29:07
「…うん。ありがとう…。」
「それに…実は、僕は嬉しかったんだ。その…綾波の部屋にお邪魔する機会が増えて。」
「本当…?」
「うん、でも綾波が体調悪いのに不謹慎だってずっと思ってたんだ…ごめん…。」
「ううん………そんなことない。私も…嬉しかったから。」
胸の内を明かしあい、素直な気持ちで語り合う二人。
日も沈みかけたころ、一通り雑務を終わらせたシンジは玄関へと向かった。
「じゃあ、綾波、また明日。今度は学校でね。」
「うん…また明日。ありがとう…。」
シンジの背中を見送るレイに罪悪感はもはや無く、その表情は静かに微笑んでいた。
421:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/26 23:30:18
予想以上に長くなってしまった割に、身の無い話でスミマセン。
こんな文章でも読んでくれたら幸いです。
こうしたら読みやすいと、こうしたほうがいいなどのアドバイスがあったら是非お願いします。
422:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/26 23:47:38
ええ話やないか
こういった小さな積み重ね(今回のね)が大きな悲劇をひっくり返すようなSSが好きでよく読んでました
423:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/26 23:57:50
>>421
本編のレイはもっとクールなイメージを感じるから、その差異を感じて仕方がない。
まーSSをどう作るかは作者の自由だから問題無し。
読みやすいし判りやすい。予想外の展開は無いけど、そのぶん安心。
424:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/27 00:07:03
指摘と感想ありがとうございます。
今後の作品の参考にさせてもらいます。
425:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/27 03:21:53
内容はいいが綾波は「うん。」 よりも「そうね。」とかの方が多い希ガス
426:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/27 03:28:55
今日は>>408に期待して寝よう
427:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/27 15:37:18
性格改変されてても相応の理由付けが書かれてれば違和感ないけどな。
数年後の話だとか。
本編のサイドエピソードだと確かに違和感ある。
428:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/28 16:17:33
>>426
あんまりプレッシャーかけないでくれw
帰り際携帯を取りに行くから夜手直しして明日の朝、もしくは明日の夜になると思われ
429:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/28 18:25:16
じゃあそれまで寝てる
投下したら起こしてね…
_,,..,,,,_ . _
./ ,' 3 / ヽ--、
l / ヽ、
/`'ー/_____/
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
430:なんとなく転載
08/04/28 19:34:54
「ただいま……」
と、シンジが買い物袋を下げて帰ってきた団地の一室。
殺風景なその部屋は脱ぎ捨てられた制服や下着が散乱していた。レイのものだ。
バスルームからかすかに水音が聞こえてくる。先に帰ってシャワーを浴びているようだ。
シンジはやれやれとつぶやきながら下着を摘んで洗濯カゴに放り込み、制服はハンガーに引っ掛ける。
そうしているとレイが体を拭きながらバスルームから現れた。
お帰りとも言わず、シンジが居ることも気にもとめるようでもなく。
シンジはタオル一枚のレイから注意深く目をそらしながら声をかけた。
「あ、あの、パスタを茹でようと思うんだけど、どうかな?」
「……うん。」
レイは適当な返事をしながら窓の側により、夜空を見上げる。
そしてシンジが鍋を取り出して料理に取り掛かっていると、レイはいきなり部屋の明かりをパチンと消した。
「ちょ、ちょっと!何を……」
抗議しようと振り向いたシンジが見たものは、月明かりに照らされた美しいレイの裸身であった。
またしても直視できずにシンジは慌てて目をそらす。
そうするにはあまりにも惜しい、美しい光景ではあるのだが。
レイはシンジの憤慨にも気付かず、あるいはシンジを誘うようでもなく……
ただただ月夜を楽しむばかりであった。
431:403の続き
08/04/30 03:37:32
「……あれはA.T.フィールド。やはり使徒も持っていたのね」
そうリツコは苦々しそうに吐き棄てた。正面モニターに映し出された状況は芳しくない。
数秒前までは優位に戦いを進めていた初号機だったが、使徒のA.T.フィールドに渾身の一撃を防がれたのを皮切りに、徐々に押し返され今では完全に防戦一方となっていた。
初号機もパイルを織り混ぜた使徒の攻撃をどうにか捌いていたが、一撃を貰うのは時間の問題だろう。
今までの突き一辺倒の攻撃から一転、縦に振り降ろされたパイルが初号機の胸部を霞め取る。
リツコは小さく舌打ちをすると、損傷の状態を確認するため、手元のモニターを覗き込んだ。
戦況を暗転させたのはA.T.フィールドの存在。けして自分達の手掛けた初号機の性能が相手に劣っていたわけではない。一時は完全に使徒を追い詰め、A.T.フィールドさえ発動されなければ殲滅も見えていた。
だが何故初号機はA.T.フィールドを展開出来ないのだろうか。理論の上では初号機も同じように使用可能であり、使い方次第では現状を打破することも不可能ではなかった。その事が余計リツコを苛立たせる。
432:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/30 03:38:08
そう、考えられる要因は一つ。リツコの脳裏にレイと名乗った少女の姿が浮かぶ。
シンクロ率、操縦技術、どちらを取ってもオリジナルより優れていたため、司令の搭乗命令を受け入れざるを得なかったが、今初号機を操るのは素性不明の少女、言わば完全なイレギュラー。
今の戦いを見る限りでは使徒がA.Tフィールドを使う以上、こちらもA.Tフィールドをもって対抗せねば勝ち目はない。
最悪の状況に陥る前に、多少リスクを背負おうともA.T.フィールドの展開が可能と思われるオリジナルを出撃させるのが最善の策と、リツコは考えた。
「目標の攻撃射程圏外まで距離を取りなさい! 一時退却よ!」
リツコは初号機内のレイに指示を出すと、横目で男の様子を伺った。発令所全体を見渡せる場所に位置する司令席で眉一つ動かすことなく、正面モニターに視線を注ぐ男。
無言ということは恐らく自分の対応にミスはないのだろう。そう判断し、リツコはマヤに退路の確保を求める。
「マヤ、初号機の回収を急いで」
「はい、わかりました! ルート192から回収……あっ!」
だが次の瞬間だった。使徒の瞳に怪しげな光が宿る。
433:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/30 03:38:49
仮面周囲の筋肉が収縮するのに呼応し、輝きを増した光は二筋の閃光に形を変え、初号機の頭部を捉えた。
一瞬、世界が静止する。対峙したまま微動だにしない使徒と初号機。
ただ、抜けるような青空に閃光が吸い込まれていったのを見届けたあと、初号機だけが大きく揺らめき、糸の切れた操り人形のように瓦礫の中に崩れ落ちた。
434:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/30 03:39:24
気が付くとレイは紅い世界にいた。紅い地平線から打ち寄せる波に足首まで浸かり、紅い空から吹き込む風に身を晒し、茫然と立ち尽くす。
ここは何処なのか。抱いて当然の疑問が頭を占める前にレイは奇妙な即視感を覚えた。休憩所で感じた僅かながら顔を覗かした記憶の先端に触れるような弱いものではなく、埋もれた記憶そのものに目に映った光景が重なり、自分はここにいると呼び掛けてくる程の強いもの。
しかしこの世界を知っている事に気付いたとしても、先ほど同様この世界と自分の関連性までは頭に霧が掛かったかのように何も思い出せない。
周囲に視線を巡らせてみようと、血を彷彿させる赤色が地平線の遥か先まで広がるだけで、手掛りとなるような物は恐らく何も見付からないだろう。
ところが海から浜辺に視線を移した時、砂の合間で見え隠れしている赤がレイの目に入る。この世界特有の深紅、人の心にじっとりと染み込んでいくような重苦しい赤色ではなく、人の心を惹き付けて離さない色鮮やかな赤色。
435:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/30 03:40:04
そのイメージにかつての同僚の姿が重なり、近くに向かい上に乗った砂を掃うと、偶然かそれは彼女の象徴とも言えるプラグスーツだった。
「……何故ここに?」
そんな疑問がレイの口から雫れた。背後では海に還る波が陸地を名残惜しむように砂を浚い、悲しげな音色を奏でている。
レイの問いもやがてそれらの音に紛れ、言葉としての意味を失っていくように思えたが、突然呟きの余韻だけを残して世界の音が止んだ。
「……覚えてないんだ」
静まり返った世界に声が響く。ハッとなり振り返るとそこにはいつの間に現れたのか、小さな女の子が立っていた。
蒼い髪に紅い瞳、自分をそのまま小さくしたような少女の容貌を見て、レイは無意識のうちに顔を強張らせたが、すぐに抑揚のない声で言葉を返す。
「あなた、誰?」
「私? 知ってるでしょ?」
少女はクスクス笑いながらレイの顔を見上げると言葉を続けた。
「私はあなた、あなたは私」
「違……」
「違わない」
否定しようと口を開いたレイの言葉を遮り、少女は強い口調で言い切った。
436:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/30 03:41:30
少女の口許から笑みが消える。それが引き鉄となったのか。唐突に目の前の少女に変化が訪れた。
目を大きく見開いたかと思うと、レイを射抜くその瞳は世界同様深紅に塗り潰され鈍い輝きを放ち始める。まるで使徒の核を顔に突き付けられたような錯覚に陥り、レイは動揺からか息を洩らすことも出来ない。
少女はそんなレイを嘲笑うかのようにさらに形を変えていく。レイの腰ほどまでしかなかった背丈はレイを遥かに上回り、ただでさえ白かった肌は色素が抜け落ち不気味な白さを釀し出す。
そして大きく仰け反ると背中から均翅目を思わす数対の羽が雫れ、その先端がレイの頬に触れた。
「あなたは私だったもの。リリンが私から奪った魂の欠片があなた」
少女だったものは鼻と鼻が触れ合う距離まで顔を近付けるとそう囁いた。耳まで裂けた唇が三日月のように歪む。
「……全て思い出させてあげる」
世界が暗転する。
437:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/30 03:42:10
男の望み。
創造主への造反。
男がレイの腹部に掌を押し当てている。徐々に自分の身体に沈み込んでいく手首をレイは無感動な目で見詰めていた。
男の唇が動く。声はない。無に還るという実感が占めるだけで他の感情が生じる隙間はレイの心の何処にもなかった。
だが突如頭に誰かの悲鳴が響く。ふと視線を下ろせば先を無くした手首を押さえ、地面に蹲る男の姿がレイの目に映った。
苦悶に顔を歪めながら男が何かを言ったようだが、音のないレイの世界では必死な男の姿も、空気を求めて喘ぐ滑稽な姿にしか見えなかった。
悲鳴を追うようにして今度は誰かの呼ぶ声が聞こえる。声の方に目を向けると、そこには磔になった白い巨人がレイを見下ろしていた。
レイは男を一瞥すると踵を返し、引き寄せられるように白い巨人向けて足を踏み出した。
「レイ、待ってくれ!」
初めて耳に届いた男の声は悲痛な叫び。だがレイは振り返ることなく口の中で何かを呟くと、白い巨人に吸い込まれていった。
暗転。
438:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/30 03:43:06
補完計画の発動。
壊された少年の自我。
異形の徒が青空を背に初号機を取り巻いている。ただ周りを徘徊しているだけではない。
その手に握られた二又の紅い槍は初号機の両掌を貫き、初号機を宙に縫い付けていた。空に展開された幾何学模様と相極まり、その姿は十字架に架けられたメシアを連想させる。
下層に広がる雲が割れた。その合間から姿を現したのは白い巨人。まるで蝶が羽化する時のように大きく反らしていた身体が、徐々に正しい傾きを取り戻すにつれ、その顔が露わになっていく。
「……あ、綾波……」
少年の呟きに応えるように、初号機を取り囲んでいた異形の徒の顔が白い巨人、もとい綾波レイの顔へと形を変えた。
少年の絶叫。巨人の落ち窪んだ目の奥で紅い瞳に鈍い光が宿る。
異形の徒が剥き出しになった自らのコアに槍を突き刺し始めた中、少年を乗せた初号機に巨人の手が伸び、再び少年の絶叫が世界に響き渡った。
暗転。
439:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/30 03:48:39
色々あって4000文字でギブアップしましたorz
もう少しでサキ戦(一話)終了します
明日早いんでおやすみなさい
440:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/30 07:45:37
おおおお、
投下GJ
441:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/30 22:39:43
gj
改行増やしてくれるとありがたいな
442:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/30 23:26:49
だいたい ID:??? のところで改行するようにすると見やすいと思います
列で言うと40列ぐらい
443:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/05/01 00:04:11
ブラウザを最大化せず読みやすい大きさにすればいいんじゃね?
444:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/05/01 03:55:21
>>440
サンクス
>>441
まだ改行少ないですか
いつも以上に改行したつもりだったんですがorz
次こそは限界目指して頑張ります
>>442
どういうことですか?
文章途中で改行するってことでしょうか?
445:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/05/01 07:29:05
句読点での改行ってことじゃね?
あと文章そのものの簡素化とか?
446:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/05/01 15:55:51
>>445
文章の簡略化とかやったら誰も読まないだろ
携帯小説(笑)ぐらいじゃないか、文章簡略化してるのは……
「ごめんなさい、こういう時どんな顔すればいいのかわからないの」
とレイは言った。
「笑えばいいと思うよ」
とシンジは返した。
レイはシンジに微笑んだ。
ヤシマ作戦はこれにて幕を閉じた。
感動できねぇwww
447:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/05/01 16:00:56
GJ
とりあえず完結してくれることを願います。
448:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/05/01 18:24:38
>>446
そういうことじゃなくてさ…
なんつーんだろ?
句切れを良くするってことと同義だと思う
まあアドバイスをするスレじゃないからさ、この辺にしとこうや
それに内容についてはどうこう言いたいわけじゃないし
449:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/05/01 19:16:58
>>448
別に小説スレなんだし問題ないと思うけど
区切れは人それぞれ感じ方が違うから何とも言えないよ
『少し考えるように首を傾げた後、ぎこちなく微笑んだ』
『少し考えるように首を傾げる。そしてぎこちなく微笑んだ』
一文でまとめた最初の方がいいか、二文に分けた二番目の方がいいか判断するのは難しいと思う
450:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/05/01 19:38:32
英文だと二文の方がいいんだけどな
451:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/05/02 00:07:03
うわぁぁぁぁぁぁぁ!
もうダメだ!
禁断症状が…。
はっ早く次を頼む!
452:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/05/02 00:27:22
本編再構成とか異世界ものの大作長編はスレ投下には向いてない気がする。
余計なお世話かもしれないが。
453:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/05/02 10:50:04
別にいいんでない?
HP作って作るのもダルイし、停滞してるLRSサイトに投下とかしても人こないだろうし
不定期連載って形でスレにFF投下は昔から定番じゃないか
454:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/05/02 11:00:27
凄いスレが伸びてるから投下ktkrと思って覗いたら……orz
書き込んだヤツはGW中に一作品投下しろよなw
455:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/05/02 11:47:44
>>442の言いたいことは多分だけど、
「読みやすい幅の右端を作ってくれ」ってことだと思う。
携帯だと短い幅で折り返してくれて読みやすいけど、
ブラウザだとウィンドウ右端まで表示されて読みにくいこともある。
もっとも、PCで読む側が適当なテキストエディタにコピペすれば
勝手に折り返してくれるようになってそれで済む問題w
あるいはウィンドウを小さくすればおk、かな。
とりあえず続きをwktkして待ってる。
456:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/05/07 13:15:09
投下待ち
457:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/05/07 13:16:26
そしてageてみる
458:初投稿(汗
08/05/07 22:33:11
ふっ、と目が覚めた。左腕が痛む。指先の感覚がない。窓の外は
まだ暗い。何時ぐらいなんだろうか。ここからでは壁の時計は
暗くてよく見えない。携帯はテーブルの充電器の上だ。時間が
分からないのは何となく不安だが、起き上がるには躊躇がある。
耳を澄ますと、左腕の辺りから微かな寝息が聞こえる。彼女は
目覚めている時も眠っている時も静かで、時々居るのか居ないのか
分からないことがある。だが今は左腕の痛みが、彼女が確かに
そこに居ることを教えてくれていた。こうして眠るのが好きだ、と
以前彼女は言っていた。僕の体温と体臭を感じながら寝ると
気持ちが落ち着くと言ってくれた。だから僕は、意地でも彼女の
眠りを妨げたくはない。しかし、それはそれとして、今の時刻は
なるべくなら知りたい。
あと何時間こうしていればいいんだろう。「腕枕は痛い」なんて
学校でもネルフでも教わらなかったな。。。【了】
459:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/05/07 23:46:19
>>458
おお、GJ!
添い寝ってシチュがかなり好きな俺にはありがたい
短い中にも趣旨がまとまってるのが良いと思いました
460:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/05/07 23:50:04
>>458
何故か長門が浮かんだ俺はLRS失格orz
どこかに髪の毛の色を入れて欲しかったw
461:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/05/08 13:26:15
ありがとう
ただいま続編執筆中です。
462:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/05/08 19:39:11
>>458続き
また、目が覚めた。結局また寝てしまったみたいだ。もう明るい。
そうして開けた僕の目の前に広がるは、水色。全てが水色の波。
そして温かいものが、僕の唇に触れる。それが何かはすぐにわかった。
もう何百回も僕の唇に触れたもの。彼女の唇だ。
頭が混乱した。胸がドキドキした。まるで初めて彼女にキスした時
みたいだ。キスなら昨夜もしたのに。
長い長いキスのあと、彼女はようやく唇を離した。彼女の顔が
遠ざかり、やがて目と目が合う。
「……!」
彼女は明らかに動揺している。僕が起きているのに気付かなかった
のかな。こっちだって動揺しまくりだ。
463:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/05/08 19:40:45
「…ごめんなさい。わたし…」
「あっあの綾波、シャワー浴びて来たら?」
「…もう浴びた」
「じゃ、じゃあ僕が浴びるよ。その間に朝食作っといてくれない?」
「…わかった」
なんとかその場を繕ってバスルームに飛び込む。彼女は相変わらず
料理はさっぱりだが、最近は、お泊りの翌朝の朝食だけは作る。
パンをトースターに入れたり、カップスープにお湯を注いだり
ぐらいなら彼女にも出来るから。今は、彼女に簡単な料理ぐらいは
作れるように仕込む計画を立てている。
シャワーを浴びながら冷静さを取り戻すと、なぜこんなに動揺する
のか情けなくなった。恋人にキスされてうろたえるなんておかしい
だろう普通。彼女のことだから「…わたしとキスするのはいや?」
なんて言い出しかねない。彼女に、キスしてくれて嬉しいと
言わなきゃ。そう決意してバスルームを出た。
464:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/05/08 19:42:26
キッチンに入って驚いた。彼女が目玉焼きを焼いていたのだ。
「これ、綾波が作ったの?」
「…うん」
「ありがとう!嬉しいよ!」
「……」
黄身が崩れて、おまけに少々焦げ気味だったけど、紛れも無く
彼女の初めての手料理だ。
「すごいや。いつ覚えたの?」
「…碇君が作るのを見ていたから」
「おいしい!おいしいよ綾波」
「……碇君が喜んでくれると、わたしも嬉しい」
朝食を終えてコーヒーを飲んでいると、後片付けを終えた彼女が
隣に座って、ぽつりと切り出す。
465:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/05/08 19:44:00
「…さっきのこと…」
「さっきって?」
「………眠ってる碇君にキスしたこと」
忘れてた。目玉焼きで舞い上がってた。
「あっ、あれね。いいんだよどんどんキスしてくれて」
「…でも碇君、驚いてた…」
「だって、綾波からキスしてくるなんて、多分初めてじゃない?」
「…目が覚めて、シャワーを浴びたの。バスルームから出たら
碇君、まだ眠ってて…だから、碇君の寝顔をずっと見ていた」
「えっ、僕の寝顔?参ったなぁ…変な顔してなかった?」
「……とてもかわいかったから。だからずっと見ていたの」
寝顔がカワイイと言われて、二十代の男はどう反応すべきだろう。
こんな時、どんな顔していいか分からないのは僕になってしまった。
466:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/05/08 19:45:45
「…そのうち、碇君にキスしたくなったの。碇君が驚くかも知れない
と思ったんだけど……でも、とてもキスしたくなったの。だから
キスしたの。…ごめんなさい」
「僕にキスしていいのは綾波だけだ。綾波にキスしていいのも
僕だけだ。だから、キスしたくなったらいつでもしていい。僕も
綾波に突然キスしちゃうからさ」
「…なら、今して」
僕は彼女を抱き寄せて、朝の彼女のキスに負けないくらい
長い長いキスをした。
やがて唇を離すと、彼女は今まで見たことがないほどの、最高の
笑顔を浮かべて言った。
「…碇君で、よかった。わたしにキスしてくれる人が、碇君で」
その笑顔を見た瞬間、炎のようなものが全身を貫いた。今か?
今なのか?碇シンジ、今なのか!?……もちろん今だ!
「綾波、僕と結婚してくれないか」
「…碇君、わたし、うれしい…」
そして、その笑顔は、永久に僕のものになった。
467:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/05/08 19:50:02
以上です。>>460さんの「髪の毛の色」にヒントを得て、
また1レスにおさまる短編を書こうと思ったら、えらく
長くなっちゃいました。以上お目汚しまで。
468:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/05/09 19:24:19
>>467
2レス目辺りで早くも死んだw
まさにこんな時どんな顔したらいいのかわからないwww
これだけ甘いと読んでる方が恥ずかしいんだが、また読みたくなるのもまた事実
次は糖質控え目、ちょっぴり大人なアールグレイでよろしくお願いします
469:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/05/09 19:29:22
>>439ですが、ここ数日忙しくて続きがまだ書けてないです
色々とアドバイスがあったんで参考にしてまた投下します
ただ小説を書くのは携帯でうってるので、文章途中で折り返し云々は恐らく無理なのでその辺りはご了承願います
土日頑張って、遅くても15日までは一話終わらして二話に突入する予定です
470:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/05/09 20:17:45
>>468
評価THXです。レイさんの場合、普通の私生活が想像できない
キャラなんで、どうしてもベタベタになっちゃいます。
またよろしく。
471:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/05/10 11:57:23
>>470
ベタベタ歓迎
ガムシロップ1㍑一気飲みぐらい胸焼けしそうなのを頼む
472:ベタ甘注意!
08/05/14 16:18:38
>>466続き
「…碇君、まだ寝てるの…?」
シャワーを浴び、バスルームを出たわたしの目に入ったのは、
わたしが抜け出した時と同じ姿で横たわる碇君。こんな時の
答えはもう知っている。「目覚めるまで待つ」
わたしはベッドの傍らで、碇君を見つめる。
かつてわたしは空虚な世界にいた。色彩のない真っ白な世界。
ずっとそこにいた。幸福も不幸も感じなかった。それが何か
さえ分からなかった。
そこに碇君が現れた。碇君の笑顔が、わたしの世界を掻き
乱した。それからわたしは碇君に関心を抱いた。
笑う碇君。泣く碇君。怒る碇君。色々な碇君に出会うたびに
心を乱された。その感情がわたしの中に入って来て、わたしの
中に「心」が生まれた。そして空虚な世界から引き出され、
この騒々しい世界に放り出された。
やがて、不思議な感情が生まれた。碇君の顔をもっと見たい、
碇君の声をもっと聞きたい、という感情。それからわたしは
碇君をずっと見ていた。そして、あの時…
碇君と彼女が話していた。あの赤い髪の少女。それを見ていた
わたしの中に、またもう一つ、知らない感情が生まれた。
碇君、彼女に笑顔を見せないで。あなたの心を与えないで。
あなたの心はわたしだけに注いで。
でも、どうすればいいか分からなかった。ただ、彼女と話す
碇君をずっと見つめていた。そして、不思議そうな顔の碇君に
言った。あなたは、ずるい。
473:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/05/14 16:20:22
あなたはわたしの中に、こんな感情を投げ込んでおいて
知らないふりをする。わたしは、あなたの顔をずっと見て
いたい。あなたの声をずっと聞いていたい。なのにあなたは
わたしに遠くから微笑むだけ。わたしは、近づいてくれない
あなたを見て苦しむだけ。あなたは、ずるい。
後で、あれは「愛の告白」だと言われた。わたしには、これが
愛なのか分からない。ただ、わたしの心を言葉にしただけ。
それから碇君は、ずっとわたしのそばにいてくれるように
なった。昼も、夜も、わたし達は一緒に過ごした。初めて
唇を重ねたとき、碇君の気持ちがわたしの中に流れ込んできた。
初めて躯を重ねたとき、碇君のいのちがわたしの中に流れ込んで
きた。碇君にキスされるたび、碇君に抱かれるたび、わたしは
ヒトになっていく。
わたしは造られたモノ。別々の魂と肉体が、一つの試験管に
投げ込まれ、わたしが生まれた。わたしの躯はただの入れ物。
でも碇君が、わたしの中の「心」を呼び覚まし、わたしの中に
「いのち」を注ぎ込んだ。碇君に抱かれるたび、わたしのこの
躯は「代わりのあるモノ」から「唯一のもの」に変わっていく。
ゆうべも碇君に抱かれた。碇君の息遣い、碇君の唇、碇君の
指先。全てをありありと思い出せる。全てがわたしの躯に
刻印されている。その刻印が増えるたび、わたしはヒトになる。
眠っている碇君をもう一度見た。その指先を。その唇を。
わたしの頭からつま先まで、その唇が触れていない場所は
ない。その指先が触れていない場所はない。愛おしい。わたしの
躯の全てに触れてくれる、その唇が愛おしい。
わたしは身を乗り出し、愛おしいその唇に、わたしの唇を重ねた…
474:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/05/14 22:08:08
投下GJ!!
プラトニックなのが多いLRSものには珍しく、こういうのもいいね
475:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/05/15 03:37:47
>>474
評価THXです。彼女なら、エロいこともサラっと語るんだろうな
と思って書いてみました。またよろしくです。
476:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/05/15 11:58:11
照れることなく性を語る綾波さん(・∀・)イイ!
477:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/05/16 00:06:08 jWhHqqe1
URLリンク(pyrenees.k-free.net)
綾波マジかわいいよ!
478:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/05/16 07:33:44
>>473
いいね。綾波は純粋だから、性的な事を語ってもいやらしくならない。
479:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/05/16 20:17:08
綾波は純粋そうに見えて実は邪心の塊ですよ
480:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/05/19 00:52:11
>>469
いつまでも待ってるお
'⌒⌒ヽ
′从 从) / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ヽゝ- -ν < zzz…(投下したら起こして…)
゚し-J゚ \______
481:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/05/24 20:37:07
待ち
482:ベタ甘注意!
08/05/25 18:45:58
投下ないから>>473続き
「綾波、僕と結婚してくれないか」
碇君がそう言った。結婚…知識としては知っている。一組の男女が、
互いに相手だけを伴侶とする契約を交わすこと。碇君と結婚…
わたしにその資格があるだろうか。わたしはヒトになったのだろうか。
何もできないわたしが、碇君を幸せにできるだろうか。
自分がヒトになったのかはわからない。わかっていることは、わたしは
碇君の愛を食べる生き物になった、ということ。
もう、あの空虚な世界には戻れない。寂しくて死んでしまうだろう。
碇君の愛を全身に浴びなければ生きられない。そんな生き物に、
わたしはなってしまった。かつて知らなかった愛を、わたしは
知ってしまった。碇君に愛される心の喜びと、碇君に抱かれる
躯の悦びを知ってしまった。もう、碇君のいない世界には生きら
れないわたしになってしまった。