シンジとアスカの同棲生活at EVA
シンジとアスカの同棲生活 - 暇つぶし2ch1:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/04/02 17:16:32
学園エヴァで同棲生活

2:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/04/02 17:27:51 r9xtgiu2
セックスは花見の後にこっそりやるもんだぜ

3:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/04/02 20:59:25
糞スレ

4:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/04/02 21:13:14
糞スレ

5:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/04/03 03:00:43
LAS人だが、新スレはいらんだろと思います

6:シンジ
07/04/04 04:04:17
乳首チュウチュウチュウ

7:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/04/16 08:40:38
使わないの?

8:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/04/16 13:11:47
本スレの過疎も止められないんだ

9:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/04/16 18:27:15
前スレなんてあった?

10:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/04/26 22:32:16
保守ってみる

11:課長代行(若大将) ◆KACHOGgMKg
07/05/05 04:02:39 8gyDMon3
ここでアスカは、
 こ う 言 い ま し た !!

12:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/05/05 04:13:01
(´・ω・`)今日はあの日だから無理なの。

13: ◆PERIODfpts
07/05/05 11:26:08
バカシンジのくせにぃ~ッ!! (///

14:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/05/05 23:14:01 YSvJ5raf
ちょっとバカシンジ!?私の肩、揉みなさいよ!!

15:課長代行(若大将) ◆KACHOGgMKg
07/05/06 18:46:52 dOWaqjAv
お兄ちゃん、らめええええええええ!!><

16:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/05/17 11:32:25 6+biB4Q8

最終警告迷惑だ。   最終警告迷惑だ。   全ては宇宙人の行為だ。
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私を超能力扱いする。  こんなはずでは!!迷惑だ。  こんなはずでは!!迷惑だ。
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全ては宇宙人の行為だ。   私を超能力扱いする。   私を超能力扱いする。
Haku  Haku  白政則

17:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/05/17 12:13:59 6+biB4Q8

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18:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/05/17 17:03:31
おいおい大丈夫か↑のやつ。母親殺したりしねーだろーな

19:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/05/18 02:05:25 I4S4IcMJ

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20:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/06/02 00:22:22
あげ

21:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/06/13 02:50:15

あれほどしたかった同棲生活。
正直言えばアタシはアイツに幻想を抱いていたのかもしれない。

同棲から数ヵ月。
シンジと登校。
シンジと食事。
シンジと買い物。
そのどれもが楽しく、満たされた生活。
だけど、アタシの中には。ある感情が芽生えていた。

あまりにシンジは料理や家事をしなかった。
家庭科の実技は良かったのに。アタシは本気で、『シンジは筋がいい!』と思った。だけど……。
朝もそう。
自分ではけして起きない。

その総てがアタシに頼りきった生活。

そしてアタシは、ある決断を下した。



続かない。





22:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/06/13 02:51:51
寧ろシンジに家事頼りっぱなしだとオモワレ

23:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/06/13 02:58:49
学園だから~としたいんだろうけど、もの凄くピンとこないネタだなw

24:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/06/17 02:31:31
眠りの中から僅かに意識が戻るころ、一番にアスカの耳には不規則な雨音が飛び込む。
週に一度の休日を迎える朝、彼女は外出を拒もうとする天の采配に憤りを覚えながら、
カーテンのすぐ下に九時過ぎを告げるデジタル時計を確認した。

時間が惜しいと感じたのかアスカは起き上がる。 重い上半身を、右手の力だけでゆっくりと起こす。
身体を包んでいた布団が重力のままに滑り落ちる。少し寒さを覚えながら、左手で目元をこすりボヤける
視界を修復するアスカ。 次に目をやったのは、自分のすぐ隣で同じ布団に未だ包まれたままの同居人だった。
碇 シンジは、身体をアスカの方へ向けたままいまだ眠りの中にいた。

幼さの残る端正な顔の無邪気さが引き立つ寝顔を、すでに何度も見ていながらも
堪能してしまうアスカ。 この男が眠ったままではアスカの一日も始まらない。
しかし、それでも彼の眠りを妨げる気が起きない。 アスカはこれを自分の悪癖だと自覚していた。

25:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/06/17 02:32:25
かつて所属していた組織が解体され、自身を縛り続けた任から解かれたアスカは
この国に留まる道を選んだ。 その時の己の心の中にあった小さな慕情に、彼女自身は
まだ、気付いていない。
それでも無意識下にその心に沿おうとする彼女は、進学と同時に独り立ちを決めた
同僚との暮らしを望み、また彼もそれを快く受け入れた。

一年が経ち、二人の関係は以前よりも深いものになりつつあった。
だが、アスカにとってのシンジは、最も必要とする異性であると同時に
組織の中では目の上の瘤でもあった。 その思いが今でも尾を引き
本心で望む進展を遮っている感は否めなかった。 そうした同棲の上に起こりうる
亀裂を防いでいたのは、シンジの純粋さであることをアスカは認めている。


雨音の中、姉のようにシンジを見つめるアスカの瞳はこの一年で手に入れた色をしていた。

26:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/06/17 10:55:12 f2VTt0FL
エヴァの限定500のオーディオが・・・・
出品されてる^^;

27:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/06/17 18:37:08
>>24-25
そこで終わり?

28:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/06/19 05:40:59
君には続きを書く義務がある
存分にやりたまえ
ってか、やれ

29:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/06/25 20:23:15
あげ

30:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/06/28 05:07:22
age

31:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/07/03 06:18:46
ほしゅ

32:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/07/11 16:17:56 mWiDjMd5


33:21
07/07/12 16:48:00
続いても良いですか?

汚名返上良いですか?

10時間の間には投下します宜しく。

34:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/07/12 19:27:55


35:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/07/12 19:46:25
綾波の方が良いのに

36:21
07/07/12 22:04:44

「だぁ~!どうしてアンタはそうトロイのよぉー!」
「そんな事言ったってしょうがないだろ!」

アタシとシンジの同棲部屋に響く怒号。
休みの日にこんなに騒いだら迷惑じゃないかと頭を霞めるけど、怒鳴らずにはいられなかった。

「だからなんでアンタは包丁の使い方がド下手なのよ!」
「しかたないだろ!あまりやったことないんだから!」

そう、とにかくコイツは包丁の使い方がまるでなっていない。
“猫の手”は知らないし、切ったら切ったでネギの数珠繋ぎだし……。
本当にもうどうしようもない。
味付けとか鍋の煮込み加減とかは完璧なんだけど。

「だから指先は猫の手にしろって言ってんでしょぉー!」

シンジはブスッとして答える。

「いいじゃないか……切れるんだから……。」

アタシはシンジの切ったネギの数珠をかざして言い放つ。

「アンタバカぁ~?これのどこが切れてるって言うのよ!」
「食べれば同じじゃないか……。」


37:21
07/07/12 22:07:28

その言葉に、アタシは溜め息を吐きながら椅子に崩れた。

「サイッテー……。」

沈黙が部屋を支配する。

何か……少しおかしい……。
いつもなら言い返してくる筈の、シンジの声が聞こえない。
そう思った矢先に、急にシンジの声が部屋に響いた。

「じゃあ出ていけばいいだろ?」

この言葉に、冷め始めていたアタシの頭は再び沸騰する。

「なによ!アタシが全部悪いってワケぇ?」

バッと俯いていた顔を上げてヤツの眸を睨みつける。
アイツは『しまった』って顔をしていたけど、たとえ間違いでも、アタシは許せない。

「なによ!アンタ一人じゃ家事の一つも出来ない癖に!」

あとは売り言葉に買い言葉。

それでアタシは公園でぶらぶらしてる。


38:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/07/12 22:09:01

シンジへの憤りと後悔のジレンマ。

歩き疲れて、アタシはベンチに座った。

時間はもう昼過ぎ。
休みの日だと言うのに会社員が多い。
休日出勤なのだろう。

持参の弁当を食べる者、買ったパンやおにぎりを頬張る者と様々だ。

ボンヤリとその光景を見つめていると、ふと太陽光が遮られ、暗く陰を落とす。

ハッと見上げる。
そこにいたのは……。

「なにをしている。」
「ゲンドウ叔父様……。」

左手に可愛いい熊の包みをぶら下げたシンジのお父さんだった。


今、アタシの隣には熊の包みから取り出した弁当を食べる叔父様がいる。
アタシの独白を聞きながら。


39:21
07/07/12 22:11:48

全て話した。
普段のシンジ。
家事が駄目なシンジ。
アタシに出ていけばいいと言ったシンジ。

その話しが終わる頃には、叔父様の食事は終わっていた。

「そうか……まったく、バカなヤツだ。」

アタシは黙っていた。
いつもなら誰かれ構わず、シンジにそんな事を言えばつっかかって行っていたアタシが、沈黙していた。
叔父様の口がゆっくりと開く。

「君の言い分ももっともだ、しかしな……。」

叔父様は傍らの弁当箱を一撫ですると鼻でフンッと笑った。

「こんな弁当だが、私の様なヤツにとっては堪らなく嬉しい物だ。」

アタシはその時、弁当を撫でる叔父様の目が優しさに満ちている事に気が付いた。

叔父様はすくっと立ち上がる。

「どうだ?今日は煩い冬月もいない。研究所によっていくか?」


40:21
07/07/12 22:16:13

うん、シンジやゲンドウのキャラがおかしいって人がいるだろうね。
まあ、シンジのキャラについては貞シンっぽく変えました。学園だしまぁいいかなぁ~なんて。
ゲンドウだしたのもなんか加持出すのやだなぁなんて好みで決めてしまっただけです。


41:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/07/12 22:43:30
アスカの息くさそう

42:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/07/13 17:47:02
学園シンジか・・・多少違和感あるが
まあ職人乙
人そんなにいないみたいだし自由にやっちゃって

43:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/07/13 19:22:35
ここも夫婦スレのまとめに載っけるの?
夫婦じゃないけど

44:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/07/14 23:16:04
別にいいんでね?

45:21
07/07/15 21:44:50

アタシは無言で立ち上がると、叔父様について歩き出した。


ネルフの研究所は地下にある。
地下の天然洞窟を利用して作られたらしい。
その空洞の真ん中に有るのはピラミッド型の研究棟だ。

叔父様に連れてこられたのはオフィスのような部屋。
表には名前が書いてあったから恐らく叔父様のだろう。

連れてこられてから、ゆうに30分は経っている。
唐突に扉が開く。

長身の叔父様がノッソリと現れて少し驚く。
だけど、アタシの目はその後ろに向いていた。

「誰よそれ?」

思わず素の口調で喋ってしまう。
だけどそうせずにはいられなかった。
後ろにいたのは、叔父様にはちっとも似合わない少女だったからだ。
青い髪で白い肌。赤い瞳でムスッとしている。
笑えばさぞ可愛いいだろうが、無表情ではその顔の魅力も半減している。




46:21
07/07/15 21:50:09

その少女は叔父様に促されてやっと挨拶をした。

「綾波レイ……。」

呟くような自己紹介に気分が少し悪くなる。

叔父様も溜め息を吐いているようだ。

そして、声が聞こえる。

「しばらくレイと同居してみんか?」

沈黙が降りる。

「えぇぇえぇぇええ!?」

アタシの悲鳴がオフィス内に木霊した。

続く

遅筆の上に短いorz
家の魔窟を片付けたりしてたんで


47:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/07/22 18:51:28


48:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/07/26 04:20:20 YIsTcxke
過疎スレだな

49:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/07/26 06:57:30
アゲんな屑

50:名無しさん@そうだ選挙に行こう
07/07/29 18:58:09
はやく続きを

51:21
07/08/01 19:28:53

「へぇ~、結構やるのね、アンタ。」

アタシの目の前には美味しそうな料理が並んでいた。

「そう……。」

折角誉めているのに相手の反応は薄い。
それがどこか舐められている様で腹が立つ。

しかし、アタシは仕方ないと諦める。
感情が乏しい娘だから。


シンジへの軽い当て付けのようなものも手伝って、 アタシは綾波との同居をとりあえず、承諾した。
アタシは綾波との同居部屋に着くと、直ぐに彼女に命令を下す。

「もうこんな時間?ほら、夕ご飯作るわよ。」

昼ご飯もろくに取って居なかったアタシのお腹は空腹に哭いていたからこの選択はしごく当然の事だった。
アタシがキッチンへ向かおうと席を立つと、綾波は既にキッチンに立っていて、料理を始めている。
部屋からは地下の洞窟が一望でき、アタシはそれをただボンヤリと見つめて料理を待っていた。

やがて部屋の中には美味しそうな匂いが漂い、アタシの鼻孔から脳中枢を刺激した。

完成した料理を無表情な綾波がテーブルへ運ぶ。


52:21
07/08/01 19:31:32

アタシが手伝うまでもなく作られた食事は基本的な日本料理で、中々の出来栄えでだった。

「まあ美味いわね。でも、アタシ的にはシンジの味付けの方が好きだけど……。」

思わずシンジの事を漏らしてしまう。

「誰?」

口に出すつもりは無かったのだ。
心の中にはシンジへの意地があったから。
しかし言ってしまったものはしょうがない。
アタシは渋々、箸を置いて説明を始めた。

「ああ、碇シンジ。叔父様……じゃない碇主任の息子よ。」

言うと決めるとアタシの口はヤツの事を聞きもしないのにベラベラと喋りだす。

「どうしようもなくトロくて情無いヤツなんだけど、まあそこが母性本能くすぐるっていうか……なんか側にいると落ち着くのよね……。」

彼女は暫くアタシの言うことをやっぱり無表情で聞いていて、アタシが語るのを止めると黙り込んで俯いていた。
そして唐突に口を開く。

「貴方。その人の事が好きなのね。」



53:21
07/08/01 19:34:02

「え?あ……ええ?そ、そ、そんな事な、な、なんで思うのよ!」

ああ、駄目だ。思いっ切り動揺してしまった。
これでは肯定しているのと同じではないか。
いや、それよりも何故解ったのか。感付かれたのかと慌てた。

「だって貴方。その碇君の事を話す時、凄く楽しそうに話しているもの……。」

思わず顔に手をやる。
自分の顔が綻んでいたのに気が付く。

「そ、そんな事……。」

無い。とは言え無かった。
恋心を抱き、ママや叔父様に無理を言って同居した事は事実なのだから。

「解ったわよ!白状するわ!同居もしてるし、好きよ、好き!さあ!これで満足かしら!?」

言ってから気付く。
しまった、と。

「そう、同棲しているのね。」

同居を知られた挙句、それを同棲と脳内変換されたアタシは激しく動揺する。



54:21
07/08/01 19:38:55

「あ゛……。」

慌てて口を塞ぐ。
動揺した上に変な声まで出してしまったアタシの顔は真っ赤に上気している。
綾波を見てみると、どこか目を輝かせてアタシを見ている気がする。

「な、なによぉ~。」

アタシは少し凄んでみせるが、コイツはちっとも怯まない。
「貴方はどうしてここにいるの?」
「なによそれ?」

少しムッときた。
アタシがここに居て、何か悪いと言うのか。
しかし違った。

「彼の事が好きなら、何故貴方はここにいるの?」
的を射た言葉だった。
だけどアタシは、それを意地張って認めようとしないで。

「それは……。アイツがトロくて……駄目なヤツだから……。」

何時の間にかここにいる理由を探すアタシがいる。

「貴方が好きで同棲、しているのなら彼も貴方の事が好きなのではないの?」


55:21
07/08/01 19:40:06

確かにそうだ。
いくら何でも好きではない人と同棲出来る程アイツは図太くない。むしろ繊細な方だ。
ならば、やっぱりアタシの事を好きでいてくれるのだろうか?
頭の中でフラッシュバックが起こる。シンジが冷たく言い放った言葉。
『じゃあ、出ていけばいいだろ。』
いや、最初にアイツへ酷い言葉を吐いたのはアタシだ。
『サイッテー。』
アタシが最低だ。
シンジだって苛ついていた筈なのに……。
出来ない自分と、煩いアタシに。
アタシだって悪いんじゃないの?
頭の中で自答する。

「悪いわね……。やっぱアタシ帰るわ。」
「そう……。」

決めた。
アタシは帰る。
あの部屋へ。
そう、アタシはアイツが好きなんだ。

ありがとう。
レイ。

「また来るわよ。今度はシンジも連れてくるから、待ってなさいよ!」
「……ええ……さよなら……。」



56:21
07/08/01 19:43:09

シンジと会わせたらどうなるだろうか。
もしかして略奪愛とかならないでしょうね?

会わせてあげる。
きっと気が合う筈だ。


エアロックを開ける。

「ただいまぁ……。」

返事は無く、室内は沈黙している。
時刻は既に午後の10時を回っていた。
靴を脱ぎ捨て、ダイニングへ向かう。
シンジはいるのか?
いたならばどんな言葉を掛ければいいのだろうか?

ダイニングと廊下を隔てるドアをゆっくりと開ける。
そこにシンジは居なかった。
代わりにあったのは……。

「野菜炒め……。」

テーブルの上には雑に切られて炒められた野菜があった。
まさかシンジが作ってくれたのだろうか?
アタシは考える前に行動していた。



57:21
07/08/01 19:45:17

廊下に飛び出すと、シンジの部屋へ駆ける。

部屋の中で一呼吸すると、ドアノブをゆっくり回して扉を開けた。
恐る恐る中へ入る。
暗い室内。
ベッドの方から聞こえてくるのは規則正しい寝息。
アタシはベッドの傍らに膝を突いてシンジの寝顔を眺めた。
安らかな寝顔。

ふと、手を見てみる。
コイツ……。
アタシは内心で呟く。

シンジの指には沢山の絆創膏が貼ってあって、怪我をしたのだと解る。
もしかしたらここまでしてあの料理を作ったのだろうか?

アタシは目を細め、慈しむようにシンジの手を包み込んだ。

「無理しちゃって……。」






58:21
07/08/01 19:47:50

ラストの方がちょっとクサいかな~と思う今日この頃。

59:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/08/02 01:54:54
いいんじゃん?乙華麗

60:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/08/02 20:32:55
また書けよ

できるだけはやくな

61:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/08/03 23:47:35
良かったよ。
はい置きますよ
つGJ

62:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/08/06 00:16:56
新作まだー??

63:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/08/09 13:39:38
この二人、結婚生活より
同棲生活の方が似合ってるような気がする

64:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/08/09 17:04:16
同棲ってか共同生活が似合ってんじゃないか?

アスカとシンジは兄弟設定のほうが似合ってたりしないか?


65:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/08/13 13:04:11
捕手

66:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/08/19 04:33:59


67:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/08/22 16:34:01
保守

68:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/08/22 18:41:38
明日香「ねぇ…しよぅ…」
しんじ「また…?」

やっべたまらね

69:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/08/26 17:30:02


70:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/09/01 01:27:33
保守

71:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/09/04 01:57:49
保守

72:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/09/06 00:29:32


73:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/09/07 03:18:09
ho

74:Promise ◆Yqu9Ucevto
07/09/08 04:13:31
あの長い様で短かった夏の日に別れを告げて1年余りが経った。
時折あの頃に戻った錯覚を起こすけど、概ねアタシ達は新しい生活と新しい関係を受け入れている。
まだ戸惑う事も多いのは、それはそれで仕方ない事。
夢か現実か、天国か地獄か、生か死か、創造か破壊か、どう喩えたら良いのかは判らないけど。
そして、サードインパクトを乗り越え戻って来た人々が口にした事は一致している。
その最中の内容を正確に覚えていると言う人は、誰一人居ないと言う事。
第3新東京市付近に居た人の証言に限れば、もっと特殊な状況だったと判った。
至る所に破壊された戦闘の形跡があるのに、何事も無かった様に無傷で倒れていたらしい。
ネルフ本部内にしても、戦自と量産機の攻撃により酷い有様だったみたい。
アタシ達はホテルで何事も無くライフラインを使っていたから、それを管理するMAGIが無事なのは知っていた。
次々と皆が意識を取り戻す中、それに逸早く気付いたのがネルフ側だったのが幸いしたのだと思う。
指揮系統が混乱し、戦意を失いつつある戦自に先手を打てたのも、全てMAGIのお陰だから。

75:Promise ◆Yqu9Ucevto
07/09/08 04:16:19
だけど、アタシ達にとっては全く蚊帳の外の出来事だった。
何故ならその頃アタシ達は二人共、ジオフロントの奥深くに居たから。
全てが始まった立ち入り禁止地区に。
アタシはそこであった事に関して全くと言っていい程知らない。
奥へ奥へと進むシンジの背を追っただけに過ぎない。
シンジが何を考えていたのか、アタシは知りたいと思わなかったし、聞きもしなかった。
整理が付いたらきっと、アタシには打ち明けてくれると思っていたから。
立ち入り禁止の扉の向こうに入る事は適わなかったけど、そこに行く事自体がシンジにとって大きな意味があったのだと思う。
扉の前で佇んで居るシンジの背中を、アタシは少し下がった位置から眺めてた。
初めて会った頃はアタシが前を歩き、シンジがアタシの背中を追っていたと思っていたのに。
少しだけアタシを追い越した背、心持広くなった背中……逆になったのは何時からだろうと、ずっと考えながら。
アタシを振り返った時の顔は何だか憑き物が落ちた様だけど、浮かべた笑みは穏やかだったと思う。
その後地上に戻ろうとした途中、LCLに融けた人達が戻り、ネルフ側が戦自を巻き返している現場に遭遇する。
始めは夢じゃないかと二人共混乱した。
アタシ達がジオフロントに足を踏み入れた時は、間違いなく誰も居なかった。
あちこちに残る戦闘の傷跡を目の当たりにし、LCL溜まりと脱ぎ散らかされた服の隙間を縫って奥に進んだのだから。
それが夢でも幻でもないと確信出来たのは、アタシ達が無事だった事をみんなが祝福してくれた時。
アタシ達は心の奥底に抱えていた物が少しだけ軽くなった気がした。
今にして振り返れば、これが全て動き出した始まりだったのだと思う。

76:Promise ◆Yqu9Ucevto
07/09/08 04:18:01
その直後、アタシ達は二人纏めて医療部に引き渡され、延々と精密検査を受ける羽目になる。
結果は日常生活に関しては今の所は問題無いと知らされた。
その代わり今迄の精神的な負荷が予想以上に大きく、どういう影響が出るのか気に掛かるが、と付け加えられたけど。
結局、それ以外の事は何も判らなかった。
栄養失調気味で体力も落ち、軽い衰弱を起こしていた事もあって、検査が終わっても暫くの間は入院生活が続いた。
地上は戦闘で新市街地が丸々吹き飛んだ事もあり、復旧には時間が掛かるかも知れないと人伝えに聞いた。
LCLに融けた人もまだ全員戻って来た訳じゃないみたいで、ミサトの行方は全く攫めなかった。
人材も資材も足りない中、アタシ達の入院生活を穏やかな物にしてくれたのは、意外な事に司令だったらしい。
ジオフロントの最深部で発見されてから、寝食を惜しみ身を削りながら、日本政府と戦自との折衝に動いてる。
それもあってかシンジとは病室が別だったけれど、眠る時と検査と診察以外はほぼずっと一緒に過ごす日々。
副司令はまだ行方が判らないらしい。
それがどういう影響を及ぼすのか、アタシ達には全く解らない。
ただ、今のアタシ達は無力な子供として保護されているのだけは判った。
直接知っている職員で、行方が判らないのはミサトと副司令と日向さんとマヤ。
リツコは司令と一緒に発見されたよと、小まめに様子を見に来てくれる青葉さんが教えてくれた。
毎日少しずつだけどLCLから戻って来た人が増えているそうだ。
どれだけ時間がかかるか判らないけど、世界中に人々が戻り以前の様に活気付くのも夢じゃない。
レイの事は誰も触れようとはしなかった。
彼女がどうなったのか憶えてはいなくても、薄々感じているのだと思う。
アタシ達は知っているけど口にする事は無かった。
彼女もそれを望んでいないと思ったし、それで良いんだと思う事にした。
彼女の想いはアタシ達が確かに受け取ったから。

77:Promise ◆Yqu9Ucevto
07/09/08 04:19:05
アタシ達以外の周りが急激に変化していく。
以前はそれに付いていけずに、アタシもシンジも流されるまま心を壊していった。
自分以外の他人を傷つける事しか出来なかったアタシ。
自分以外の他人への恐怖に心を閉ざしていくしかなかったシンジ。
でも、もう大丈夫。
他人と向き合う事によって、自分を認める事が出来る。
あやふやで確かな物ではないけれど、アタシ達はお互いを認め、手を取り合い共に歩む事が出来る事を知ったから。
そんな中、日本政府と戦自との折衝が落ち着いた後、極僅かの内輪にだけ知らせる形で司令とリツコが入籍したという報せ。
勿論、アタシは素直に祝福する事が出来た。
二人に対して蟠りもあるけれど、結婚は純粋に喜ばしい事だもの。
シンジにとっては少々複雑な思いもあったけど、祝福する事は出来たみたい。
だからなのか退院後の司令とリツコの同居の申し出を保留し、アタシとの同居を選んだのも自然な流れかも知れない。
そして、アタシはドイツには戻らなかった。
ドイツ支部がサードインパクト直前の戦闘で敵対していた事もあったけど、アタシの両親の無事を確認出来なかったから。

78:Promise ◆Yqu9Ucevto
07/09/08 04:20:06
復興途中の第3新東京市で、アタシ達は新しい世界の扉を開く。
退院後二人での生活を始めようとした頃、ようやくドイツに居る両親の無事が確認された。
アタシはちょっとだけ、ぎくしゃくしていた両親との関係を改善する事が出来た。
シンジもちょっとだけ、司令と話す時間が増えた。
表面上は殆ど変わらないかも知れないけど、アタシ達にとっては大きな意味があったと思う。
その証拠に新しい住居は司令とリツコの新居の隣。
絶たれていた縁を結び直す切欠になったのだから。
避難先から戻って来た人々。
新しく移住して来た人々。
復興後、再開された学校でのクラスメートとの再会と新しいクラスメートとの出会い。
LCLから戻って来た人々との再会。
小さな輪が少しずつ、大きな輪になり、世界が広がるのを感じる。
二人だけの輪が大きくなっていく。
以前は拒否したかも知れないけど、今のアタシ達なら受け入れられる。
他人と触れ合う事の恐怖を乗り越える事が出来たから。
二人でなら大丈夫、きっと。

79:Promise ◆Yqu9Ucevto
07/09/08 04:22:20
パイロットだったのが予備役に変わっただけで、以前と然程変わらない毎日。
少しだけネルフに篭る時間が減った分、普通の中学生としての時間が増えた。
サードインパクトの影響なのか、セカンドインパクト以前の四季が戻りつつあるらしい。
廻る季節を感じながら、思い出を積み重ねる事が純粋に楽しく思える。
何気ない会話がこんなに大切に感じるなんて思いもしなかった。
偶に喧嘩もするけれど、それすらスパイスみたいな物かも知れない。
愛情を育む事がどういう事か理解出来た気がする。
ただ求めるだけじゃなくて、与える事も必要なんだって事が。
サードインパクト直後の二人で過ごしたあの日々は、思えば一方的に求めるだけ。
それ以前も見返りを得る為じゃないけれど、ただ周囲に愛情を求めただけで与える事は無かった。
気付かなかったからこそ、アタシ達は狂った様に肌を合わせ、快楽に溺れ、傷を抉る事になったのだと思う。
今とは正反対。
無理に肌を合わせなくても、解り合えるって気付いたから。
ままごとみたいな生活かも知れないけど、シンジと一緒に暮らす日々を愛しく思えるアタシは幸せ。

80:Promise ◆Yqu9Ucevto
07/09/08 04:24:01
アタシはドイツで体験していたけど、シンジにとっては初めての冬。
まだ完全に季節が戻った訳じゃなかったから、少し肌寒いだけの冬。
アタシの誕生日はネルフの喫茶室で一緒にケーキセットを食べた。
ショートケーキじゃなくてミルクレープしかメニューに無かったのは残念。
「おめでとう、アスカ」って飾り気も何も無かったけど、シンジからのその言葉が一番のプレゼント。
それだけでも嬉しい。
クリスマスも雪は降らなかった。
まだ完全に落ち着いた訳じゃなかったから、特に何かする事も無く普段と変わらない日。
その頃再開した学校もまだ生徒が少なくて、見知った顔も疎ら。
付き合いがあった中で一番最初に再会出来たのは相田だった。
以前、シンジとの間に何があったのかは知らない。
けど、溝があったのは知ってる。
その溝を埋められるかどうか心配だったけど、取り越し苦労で済んだみたい。
再会後にどういう話をしたのか、アタシは聞かなかった。
それでもお互いぎこちない笑みで握手をしていたから、大丈夫だったんじゃないかな。
男と男の友情なんて解らないけど、多分一つの区切りが付いたんだと思う。
でも、アタシに向かって相田が言っていた事の意味は何だったんだろう?
「良かったな、惣流」って何が良かったのかしら?
深くは考えない事にした。

81:Promise ◆Yqu9Ucevto
07/09/08 04:29:07
年も明けた頃、戻って来たのが確認されたのはミサトだった。
ケージ直通の廃棄予定地区で倒れていたのを、巡回調査中の職員によって発見されたそうだ。
アタシはちょっと複雑。
使徒との戦いの最後の方は、アタシ達の共同生活は破綻していたから。
シンジとの間に何かがあった事もアタシは何となく気付いてる。
でも、あの頃は誰もが何処かで狂っていたと思うしか出来ないから、アタシは何も言えなかった。
意識を失くしてICUに入っている彼女の意識は、まだあのLCLの中から戻って来ていないのかも知れない。
見舞いを終えて病院から部屋に戻った後、塞ぎこんだシンジは部屋に閉じ篭ってしまった。
アタシには何も出来ない。
これはシンジとミサトの間の問題だから。
苦しい時は何時だってアタシが聞いてあげるから、話せる時が来たら話して欲しい。
そんな事を思いながら食事の用意をする。
病院から戻る時の様子を聞いたリツコや、青葉さんが心配して電話をくれた。
夜遅くには司令からも電話があった。
何だかんだ言って、やっぱり司令も父親してると思う。
本当にどうでも良ければ心配して電話なんか掛けて来ない筈だもの。
アタシだけじゃない、他にもこんなに心配してくれる人が居るのよ?
アタシの作ったご飯じゃ余り美味しくないかも知れないけど一緒に食べようよ、シンジ?

82:Promise ◆Yqu9Ucevto
07/09/08 04:31:15
もうすぐバレンタインデー。
多分、アタシの人生で初めての出来事。
本当に好きな人にチョコレートを贈る事。
加持さんに向けられていた気持ちは、子供の頃パパに甘える事が出来なかった分の裏返し。
愛情と言うよりは憧れや、パパの面影を求めていたのだと、今なら理解出来る。
手作りチョコを渡したくても、アタシの今の料理の腕じゃお菓子作りはとてもじゃないけど無理。
相談するにも相手が居ない。
ヒカリの消息もまだ分からないし、リツコは仕事が忙しいのもあるけど主婦って柄じゃない。
渋々市販品のチョコにする事にした。
その代わり、チェロのCDをリツコに頼んで手配して貰った。
シンジにはチョコとCD。
一応チョコは将来義理のパパになるかも知れない司令と、仕事の合間を縫ってはアタシ達を気に掛けてくれる青葉さんの分。
後、おまけで相田の分も用意した。
学校での他の女子への牽制のサポートのお礼の予定。
アタシ達が二人だけで一緒に暮らしていて、付き合ってるのが判っていても、ちらほらとアプローチを仕掛ける人が居る。
去年はお互いの気持ちが判っていなかったけど、今年からは違うもの。
シンジの一番大切な人はアタシなんだって、解らせてあげなきゃ。
絶対他の女子なんか一掃してやるんだからねっ!

83:Promise ◆Yqu9Ucevto
07/09/08 04:33:02
春。
ホントは卒業して高校に進学する筈だった。
でも今年はサードインパクトの影響でもう1年、特別措置で日本は全学生が留年する事に。
欧米みたいに9月が新学期なら良かったんだけど。
これだけ世界中が混乱してる状態じゃ無理も無いかも。
だからアタシ達はもう一度中学3年生。
新しい制服になるかと思っていただけにちょっぴり残念。
でも、その分嬉しい事があった。
ヒカリと鈴原に再会する事が出来たから。
また一緒のクラスで学生生活を送る事が出来る。
3バカトリオの再結成?
それはやっぱりまだ早いかな…。
でも参号機の事故以来、シンジと鈴原は顔を合わせて居ない筈。
気になったけど、アタシが口出しする事も出来ない。
ヒカリにしても、シンジに対しては少し複雑だと思う。
だって、ヒカリの好きな人は鈴原だもの。
ただ見守る事しか出来ないのが歯痒い。
ヒカリが足を引き摺る鈴原の介添えをしていたのを見て、怪我の具合がどうなったのか聞いていないのを思い出した。
後でヒカリに聞いてみよう。
アタシ達に手伝える事もあるかも知れない。
あの時アタシはやられちゃったけど、一歩間違えばアタシがシンジの立場だっただろうし。
ごめんね、ヒカリ。
ごめんね、鈴原。
シンジの事が好きだから、シンジの事を理解して欲しいって思ってる訳じゃないの。
シンジにとってもアタシにとっても、二人は数少ない友達だと言える人だから。
だからこれ以上友達は失くしたくないの……。
今はぎくしゃくしてるかも知れないけど、少しずつ解り合えるよね?
以前みたいにバカな話をして、笑いあえる友達にまたなれるよね?
レイ、なんでアンタが一緒じゃないのよ……思い出しちゃったじゃないの、バカ!

84:Promise ◆Yqu9Ucevto
07/09/08 04:34:57
6月6日、シンジの誕生日。
今日でシンジは16歳、アタシより半年だけお兄さん。
1年前は同じ位の身長だったのにすっかり追い抜かされちゃった。
夕方から5人でシンジの誕生日パーティ。
まだぎこちないけど、シンジと鈴原の仲もちょっとずつ解れて来たみたい。
ヒカリは気にしないでって言ってくれるけど、シンジは「はい、そうですか」って開き直れる性格じゃない。
気になるならさっさと仲直りすれば良いのに、出来ない所があの二人らしいと言うか何と言うか。
相田も苦労するよね、これじゃ。
まぁ、アタシとヒカリにもそれは当てはまるか…。
料理のメインディッシュはシンジが担当、アタシは付け合わせ担当。
ケーキはミルクレープにした。
お店で買って来ても良かったんだけど、アタシの誕生日の事を思い出したから。
ネルフの喫茶室に特別に頼んでホールでキープして貰った。
ヒカリに怒られながら、余ったケーキを全部食べた鈴原。
バッチリ怒られてる所を相田に撮られる。
去年はこんな事をする所か、誕生日すら忘れてた。
シンジには悪い事しちゃったな…。
でも今年からは違うから。
この先も、毎年一緒に誕生日を祝ってあげられればと思う。
アタシからのプレゼントは新しいチェロの楽譜。
弾ける様になったら一番にアタシに聴かせてね、シンジ。
それにしてもプレゼントを渡す段になって、鈴原も相田もなんて事言い出すのかしら?!
プレゼントはア・タ・シ♪なんて事は絶対に無いんだからっ!
それに……それはもう済ませちゃった様な物だし。
そんな事、絶対ヒカリには話せない…「不潔よーっ!」って騒がれるのがオチね。
因みに鈴原とヒカリからはエプロンが2枚、何故かお揃い。
相田からはまだアタシ達が心を壊す前のスナップのパネル。
何時の間にこんな物撮ってたの?
昼食を食べた後に屋上で飛行機雲を見上げるアタシとシンジ、それを眺めるレイ。
ずっとあの頃のままが良かったなんて言わない。
でも出来れば今、一緒にこの写真を見たかったわ……レイ。

85:Promise ◆Yqu9Ucevto
07/09/08 04:36:44
夏。
サードインパクトから1年。
日向さんもマヤも、発令所に倒れていたのを発見された。
お見舞いに行ったら二人共結構元気だった。
ちょっと衰弱して記憶に混乱があったみたいだけど、大した事無いみたい。
また一緒に仕事が出来るって青葉さんが嬉しそうに話してくれた。
アタシ達が直接知ってる職員で、まだ戻って来てないのはこれで副司令だけ。
ミサトはまだ意識が回復してない。
ただ眠っているだけ。
ミサト、アンタはLCLの中でどんな夢を見てるの?
リツコもアンタが目覚めるのを待ってるのよ?
司令だって、辛そうにしてるリツコを見てるのが苦しそうだもの。
アタシもシンジも待ってるのよ?
アンタが戻って来ないと、シンジはずっと苦しむ事になる。
そんなシンジを見ているとアタシも苦しいの。
第一アンタが戻って来ないと、アタシ達の事自慢出来ないじゃない…。
憎み合い、傷付け合ったけど、解り合えて、一番大切だって思える様になったのよ?
色々言いたい事もあるけど、アタシとシンジを引き合わせてくれた事は感謝してるんだから。
だから早く目を覚ましてよ、ミサト。

86:Promise ◆Yqu9Ucevto
07/09/08 04:38:42
秋。
大体寒さは去年の冬と同じ位。
日本は四季の美しい国だって聞いていたけど、こんなに綺麗だとは思わなかった。
セカンドインパクト前、とても美しい紅葉が見ることの出来ると言われていた場所の一つが、第3だったなんて信じられない。
ただ暑いだけで山に囲まれただけのつまらない街だと思ってたから。
休日にシンジと二人で箱根山に出掛けた。
遊歩道を歩くと紅葉のトンネルを歩いているみたい。
落ち葉もとても綺麗なのね。
紅葉狩りって表す風習も趣きがあって素敵だと思う。
何枚か持って帰って栞にして、ドイツの両親への手紙の中に同封する。
パパ、ママ、アタシは元気です。
日本と言う美しい四季が廻る国で暮らせる事が出来て、幸せです。
キョウコママが死んじゃってからは、辛い事の方が多かったけど、エヴァが無ければ日本に来る事も無かったから。
やっと2ndチルドレンじゃない、ただの女の子としてのアタシで居られるから。
キョウコママのもう一つの祖国で、アタシは宝物を見付ける事が出来たから。
シンジっていう一番大切な人に出逢えたから。
だから、キョウコママにも伝えて。
アスカは今、とても幸せですって。

87:Promise ◆Yqu9Ucevto
07/09/08 04:40:34
「何してたの?」
「ん? 日記読み返してたの。もうすぐ二人で暮らし始めて1年でしょ? 色んな事があったなぁって」
一緒に暮らし始めてもうすぐ1年近くになる。
誕生日が来たら、アタシもシンジと同い年。
「早いね、もうそんなになるのか…」
「やぁね、この間司令とリツコの結婚記念日過ぎた所じゃない」
「そうだっけ?」
「実の父親の結婚記念日忘れる訳? そんな事じゃ薄情だって司令が気を落とすわよ?」
「そういう訳じゃないよ…僕よりもアスカの方が父さんと仲が良いみたいだからさ。よく覚えてるなぁって思って」
「あっきれたぁ…」
「隣同士で住んでるけど、やっぱりちょっとね…以前よりはマシだけど苦手な部分の方がまだ多いよ」
ティーポットにお湯を注ぎながら、シンジは隣の部屋の方向の壁を見つめる。
毎日顔を合わせる訳じゃないけど、仮にも隣同士に住んでいるというのに。
シンジも司令も親子揃って不器用なんだから。
まぁ、その分アタシとリツコが間に入って苦労する事になるのよね。
「でもホント、この1年色々あったよ…父さんと隣同士で住む事なんて考えもしなかったし」
「それはアタシだって同じよ。てっきり親子で住むものだと思ってたし、アタシも寮に入るつもりにしてたから」
「はい、紅茶入ったよ」
「ありがと」

88:Promise ◆Yqu9Ucevto
07/09/08 04:42:15
ふと、窓の外を見ればちらちらと雪が舞っている。
「…見て、雪よ。冷える筈だわ」
「これが…雪?」
「今年初めてだから初雪ね。シンジは初めてだったっけ?」
「うん、実物は初めてだ…セカンドインパクト前の記録映像でしか見た事無かったよ」
「どう? ご感想は?」
「氷とはまた別なんだね、見た感じもふわふわしてる気がする」
「積もるともっとふわふわしてるのが判るわよ。クリスマス迄には積もるかしら…」
去年は結局何もせずに終わってしまった。
今年が実質、二人で初めて過ごすクリスマス。
「積もると良いね…」
「うん…積もったら何しようか?」
「雪ダルマに雪兎、かまくらも良いな。みんなで作ろうよ」
「良いわね、それ…でも雪兎は解るんだけど、雪ダルマとかまくらって何?」
「えっとね、雪ダルマは…英語のスノーマンの事。かまくらはテントが一番近いかも知れない」
「雪でテント作るの?」
「喩えだよ、ただの。僕も資料でしか見た事無いけどさ」
ドイツに居た頃は、雪が降ると憂鬱だった。
吹雪いて外に出れないし、太陽の光さえ射す事が稀な事すらあった。
セカンドインパクトの影響で常冬に近い気候だったのも、憂鬱さに拍車を掛けていたかも知れない。
でも、今年はそうじゃないのが嬉しくて。

89:Promise ◆Yqu9Ucevto
07/09/08 04:44:56
このまま時が止まってしまえば良いのに。
ずっと、ずっと、二人だけで居たい。
でも、それは決して望んではいけない事。
シンジがLCLの中で選択した事を無にしてしまうから。
そして、ミサトの回復を望まない事に繋がってしまうから。
それでもそう思ってしまう程、時折心細くなる。
「ね、シンジ…来年のクリスマスも一緒に居られるかな?」
「急にどうしたの?」
「時々ね、不安になるの」
「あ…えっと…僕、何か拙い事しちゃった?」
「シンジの所為じゃないわ。 ただ、人の気持ちって移ろい易いって言うじゃない。アタシ達もそうなってしまうのかなって…」
「それは人それぞれじゃないかな…」
「でも、気持ちが変わってしまうかも知れないって考えたら、このまま時間が止まれば良いって思ってしまうのが嫌になるの」
「どうして?」
「止まっちゃったら…ミサトは目覚めないままになるわ。副司令みたいに戻ってきていない人だってそのままになる。
 何だか自分の幸せだけ考えてるみたいで、折角シンジの選んだ事なのに全部無駄にしてしまう気がしてきて…。
 でもそんな事を考えてしまう自分も嫌……」
とんでもないエゴだと思う。
あの夏の日々が、それだけでは人は生きていけないって気付かせてくれたというのに。

90:Promise ◆Yqu9Ucevto
07/09/08 04:46:09
「大丈夫だよ、きっと。僕が起こしてしまった事は決して赦される事じゃないけど、得た物も少なからずあると思うんだ。
 勿論、失った物もあると思う。人は一人では生きてはいけないから、常に誰かと一緒に居たいって思うんじゃないかな?
 融け合うんじゃなくて、他人という形でね。それに気付いた人がLCLの中から自分の姿を思い出してる。
 だから今でも戻って来る人が絶えないんだと思う…僕にとって一番身近だった他人がアスカだったみたいに。
 アスカが思ってる事は、多分大事な人が居る人なら誰だって考える事じゃないかな。僕だって同じさ」
「シンジも?」
「いつかは僕から離れて行くんじゃないかって、そう考えると怖くなる事も時々あるよ。ずっとこのままで居たいって。
 それでアスカが幸せになれるのなら仕方ない事だけどさ。でも、僕自身の気持ちはあの時から変わってないから。
 出来れば一緒に居たいって思ってる」
バカみたい。
二人揃って同じ様な事で悩んでいたなんて。
でも嬉しい。
お互いの気持ちが通じ合ってる証拠だから。
「だから、来年のクリスマスも二人で居られるって信じてるよ。あ、でも来年の話をすると鬼が笑うって言うし…困ったな」
「どういう事?」
「未知な事を幾ら述べても意味が無いって諺だよ」
「未知だなんて、アタシ達の気持ちってそんなに薄っぺらな物だって思うの?」
「誰もそんな事思ってないよ…だから困ったって言ってるんじゃないか」

91:Promise ◆Yqu9Ucevto
07/09/08 04:48:55
「未来の事を心配するよりは、今こうして居られる時間の方を大事にしたいな」
シンジは2杯目の紅茶を淹れて、今度はミルクティにして手渡してくれた。
こんな何気ない日常生活が夢の様に感じる。
アタシ達が子供の頃は望んでも手に入れる事が出来なかった物が、今目の前にあるという幸せ。
「そうね、その通りだわ。一緒に居られるんだものね」
「この先辛い事もあるかも知れないけど、一緒に年を取って、たくさん思い出を作っていきたいな。
 父さんやリツコさん、ミサトさん、トウジ、ケンスケ、委員長…他の人達といつかは笑って話せる様な思い出をね。
 勿論、アスカとの思い出は一番たくさん作っていきたい。ちょっと高望みし過ぎかな?」
「あら、アンタはそれ位我侭で丁度良いのよ? 普段から不器用な上に控えめ過ぎる位だもの」
「そうかな?」
「そうよ、アタシの方がずっと普段は我侭だと思うもの」
「僕は別にそれでも良いけどね。アスカが色々言ってくれるのは嬉しいし」
「じゃあ、これ以上無い位の我侭言って良い?」
「僕に出来る事なら」
「なら約束して? アタシよりも1秒でも良いから、長く生きていて欲しいの」
「うーん…善処してみるよ」
「善処じゃダメ。アタシよりも長生きして、アタシの事離さないって約束してよ。してくれないの?」

―――約束の返事は、ほんのりとミルクティの味がした。

92:Promise ◆Yqu9Ucevto
07/09/08 04:53:36
保守がてら投下。
某スレ投下中の続編役1年半後の後日談、姉妹スレ投下済分?年前の前日談。

投下中に某スレに誤爆しちまいました((;゚Д゚)ガクガクブルブル

こちらのスレも活気付く事を祈って…。

93:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/09/08 05:50:06
期待した甲斐があった

つ乙

94:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/09/08 18:33:38
乙!

95:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/09/08 20:06:59
全力でGJ!

96:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/09/10 22:48:23
保守

97:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/09/12 23:06:34
保守

98:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/09/18 10:46:12
保守

99:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/09/22 11:29:02
99get

100:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/09/25 11:48:11
100ゲト保守

101:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/01 16:04:03
下がり過ぎ保守上げ

102:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/06 22:29:33
ホッシュ

103:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/10 16:59:11
過疎だね、もう誰もいないのかねぇ……


104:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/12 11:20:16
いる。
でもSS書けないからマッタリ待ってる

105:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/13 01:24:11
ここにもいるけど…。
ちょっとニッチなところを狙いすぎたのかもね。
大好きだスレにも夫婦生活スレにも少しずつかぶるわけだし…。

106:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/13 03:41:11
ネタはある
ネタはあるが時間がないorz
時間出来たら書いてみる

107:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/13 15:07:02
それを待つ いつまでも

108:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/15 00:33:22
もう同棲なら学園だろうと本編だろうとなんでもいいわい!

109:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/15 15:24:35
二人並んで歩く影が長く伸び、
今が夕刻だということを認識させた。
汗ばんだ体を優しい風が吹き抜け、それをきっかけに
彼女は口を開いた。
「あんたとはここでさよならね。」
「そんな…」
「あんたは黙って言うとおりにすりゃぁいいの!じゃぁね」

二人の前に広がる道はもう決して交わることはなく、
それぞれの道を歩んでいく。
彼女は振り返ることもなく、駆けていった。
シンジはその背中を見つめながら小さく溜息をついた。
彼に与えられた道は長く険しい。
「…、ま、いっか。これでアスカが喜ぶなら。」
大きな荷物を抱え、歩みを進めた。

 一人には少し広すぎるリビングが、
彼女に孤独を感じさせた。
だが、これから起こる未来への期待が
それに打ち勝つことは容易かった。
 手早く支度を済ませ、部屋の電気を消す。
「これで完了。今日から新しいアタシ。
さよなら、昨日までのアタシ。」

110:続き
07/10/15 15:49:10
プシュー。
「…ただいま」
漆黒に包まれた部屋に彼の声は吸い込まれ、
人気の感じられない空間に呼応する言葉もない。
いい知れぬ不安がずしりと心を沈ませ、
両のてに持つ買い物袋が指に食い込んだ。
明かりをつける気力もなく、暗がりの中奥へ進む。
リビングの扉へ手をかけたその刹那、
部屋の明かりが彼を包みこみ、突然の眩しさに顔をしかめた。

パン!パン!
乾いた音がこだまする。
「おかえり、アナタ」

クラッカーを手に微笑むのは先刻別れたばかりのアスカだ。
その笑顔は清楚な中にもすっかり大人の色香を帯び、
彼の疲れを優しく癒した。
 二人は今日、入籍を済ませささやかなお祝いをするため
買出しにでかけたのだ。
帰路の途中、アスカはシンジに遠回りを強要させ、
彼が戻る前に急いで部屋の飾りつけをし、
真新しい白のワンピースに身を包んで
暗闇のリビングで身を潜めていたのだった。


111:続き
07/10/15 15:50:40


「しっかし、アンタおっそいわねー。」
「し、仕方ないだろ!アスカが遠回りして帰って来いっていうから…」
「待ちくたびれておなかペコペコよ!どうしてくれんのよ!」
「…わかったよ。」
どっさり買い込まれたアスカの好物をテーブルに置いて、
エプロンを手に夕飯の支度をするシンジ。

「だってさー、新婚初日くらい別々に帰って
『おかえりなさい、あ・な・た。ご飯にする?お風呂にする?
それとも、あ・た・し?』って迎えてみたいじゃん。」
「(…、でもそれ全部僕がやるんだよね)ハァ…、え、い、今なんて?」
「ぶぁーか!アタシに触れようなんて100万年はやいのよ!」
「…、ですよね。ハァ。。。」

結婚しても、二人の生活に変化はない。
愛もまた不変である。

112:おまけ
07/10/15 15:52:54
ちゃぽん。
浴槽に身を沈め、一人つぶやく。
「…、碇アスカ…か。」
新しい名前。昨日とは違う自分。
必死に自分が自分であることを守ってきた。
その自分を捨て、他人の苗字を冠する。
アタシはアタシ。でも何か違う。
この違和感、でも、それも悪くない。
それはシンジだから。シンジだけだから。
「しーんじぃ~!」
浴室から、皿洗いをしているシンジに呼びかける。
「え?何?シャンプー足りないの?」
「…、あ、アンタも一緒に入ったら?」
カシャーン。ばたっ。
スポンジを握り締めたまま倒れるシンジ。
砕け散った皿と流れる鼻血が彼の動揺を端的に表現していた。


同棲生活じゃないwごめんなさいw

113:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/15 15:54:56
惜しい…夫婦生活スレだな、これ
でも良かった
リアルタイムGJ

114:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/15 16:57:27
>>113
ありがとうございます。
同棲ネタって難しいですね。
同居とも結婚とも違う、誰にもしばられないけど、
好きなだけじゃ続かない。
愛の深さが必要ってことですかねぇw

115:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/15 17:26:39
>>114
いや、ここは恋人期間のネタスレで結婚直前は夫婦スレでの住み分けになってる
そう言う意味で夫婦生活スレだなとw
確かに同棲ネタは難しいよね
ただ甘いだけじゃないからネタ探すのに苦労するよ

116:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/15 17:42:38
おお…確かに夫婦生活な感じだが


俺はとろけた
とろけたぞぉおお!!!!!!!!

117:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/17 09:26:20
保守

118:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/17 11:45:53 Qbz2WE6S
シンジは間違いなく…

サルだな。


119:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/17 12:48:00
いや、アスカもそうなる
加持とミサトみたいになる

120:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/17 14:17:52
>>118
シンジは、まったり抱き合うのがすきそう。
アスカは技を磨きそうw

121:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/17 15:06:39
シンジは…

早漏な気がする。

122:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/17 15:13:37
おまいらエロネタになったからって急にkskすんなよwww

とりあえずネタ湧いてきたから近い内に投下する

123:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/17 15:34:13
>>122
wktk

124:連投スマソ
07/10/18 07:37:43
アスカ 「シンジィ~っ、朝だぞ~っ、起きなさ~い!」

シンジ 「ん・・・アスカ・・・おはよう・・・」

アスカ 「あれあれぇ、まだ寝たままじゃない、さっさと起きてよぅ~」

シンジ 「起きてる・・・けど・・・?」

アスカ 「さっさと起きないとぉ~、口とか手とか、使っちゃうぞぉ~っ!」

シンジ 「・・・どこに話しかけてんのさ・・・」

125:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/18 16:01:55
想像したら 興奮して死んだ

アスカかわいい

126:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/18 16:50:52
おお、こちらでも良い仕事です!

127:連投スマソ
07/10/18 17:41:51
シンジ 「ねぇアスカ・・・なんで僕のTシャツばっかり普段着にするの?」

アスカ 「あらぁ、たいして面白くも無い理由だけど、聞きたいの?」

シンジ 「教えてくれるなら・・・」

アスカ 「あんたのTシャツ、洗ったばっかりでもね、ほのかにあんたの匂いがするのよ。あんたの匂いに包まれて、
      あんたに抱かれてる感じがしてね、とっても落ち着くの。あんたが夜遅く帰っても、あんたが朝早く出てっても、
      あんたが居ない間、私をね、しっかり抱き止めてくれるのよ・・・ 『アスカ、いつも側にいるよ』ってね・・・
      ね、たいして面白くもない理由でしょ?」

シンジ 「・・・もしかして・・・今穿いてる僕のトランクスも、同じ理由なのかな?」

アスカ 「聞くまでもない事よ」

シンジ 「今、アスカを猛烈に抱きしめたいけど、そのTシャツとトランクスがあれば、君はもう満足・・・なのかな?」

アスカ 「フフ・・・素直に”脱いで欲しい”って言えばいいのに・・・」



シンジ 「アスカには・・・かなわないや」

128:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/18 18:00:01
うぐぅぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぅぅぅ! GJ!
危うく死ぬところだった

129:\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\
07/10/18 18:05:58
エレメンタルエナジーエラーインパクト&神殺しの力&宇宙空間次元破壊崩壊消滅兵器超高度休校線物理攻撃使用

130:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/18 18:06:41
こんな糞スレあげんじゃねぇよ氏ね

131:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/18 19:33:39 MP0WXv6E
LAS

132:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/18 23:20:34
【セカンド】エヴァンゲリオン【インパクト】
スレリンク(lovesaloon板)


133:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/19 00:09:03
>>127
俺なら病院に連れていくな

134:ビニールのない傘 ◆Yqu9Ucevto
07/10/20 23:06:06
「調子はどう?」
「特に……変わりは無いと思います」
「そう、なら良いわ。でも少しでも気付いた事があったら、何でも教えて頂戴。今は大丈夫でも将来的な話となると別だから」
「はい、覚えておきます。有難うございました」
「じゃあ、また次の診察でね」

退院直前の診察は、実にあっけないやり取りで終わったと思う。
終わってしまえば、そんなものかと思える程度だった。
尤も、専門家に言わせれば他愛ないやり取りでも重要なのかも知れないけれど。
僕にとっては診察すら日常生活の延長にしか過ぎない。
第2で居た頃だって散々診察に通った。
治療の効果はあったんだか無かったんだか、僕には判らない。
その結果手の中に残った物は、先生の奨めもあって惰性で続けたチェロだけだ。
寧ろ1年強の第3での生活の方が、これ迄の人生の中では非日常と言える。
その要因は数え上げれば切りが無いし、数えるのも正直面倒だ。
でもその分、此処に来なければ得る事が出来なかった物の方が多かったんだろうと思う。
……失った物も多かったけれど。
今なら父さんに感謝しても良いと思える、ほんの少しだけ。
あの手紙が無ければ、こうして此処に居る事も無かっただろうから。

135:ビニールのない傘 ◆Yqu9Ucevto
07/10/20 23:07:59
「終わった?」
「うん、終わったよ。アスカは?」
「アタシはこれから。問題無ければ手続済ませて無事退院よ」
診察室前の待合では、既に入院服から真新しい私服に着替えたアスカが座っていた。
ここ暫くは入院服の姿、その前はプラグスーツ姿が多かったから少し別人の様に見える。
「もう着替えたんだ」
「いい加減飽きちゃったもの。別に内診じゃないんだから、私服で充分よ」
そう言って、手にしていた新聞をラックに吊るした。
「何か目新しい事でも載ってたの?」
「特に無いわ。日本政府と戦自への国連の対応が少しだけ。……嘘ばっかりね」
「もう、僕達には関係無いよ。青葉さんも言ってたじゃないか」
「やぁね、関係無いのは解ってるのよ。入院中は大した情報も入らないから、世間に取り残される感じがして癪だったの」
特に娯楽も無く、休憩や仕事の合間に顔を見せてくれる青葉さんの話が全ての情報源に近かった入院生活。
病室にはTVも無かったし、偶に中庭に散歩に出たけど他の入院患者に会った事が無い。
朝から夕方迄診察と精密検査に追われて、睡眠時間以外はアスカと一緒に話をする位しかする事が無かった。
考えれば世間から隔離されていると言ってもいい位だ。
「要は待合時間の暇潰しを兼ねた情報収集?」
「あら、アンタにしちゃ冴えてるのね」

136:ビニールのない傘 ◆Yqu9Ucevto
07/10/20 23:09:20
病室に戻り、入院服から私服に着替える。
出来れば二度とこんな物は着たくない、今回で最後にしたい。
こっちに来てから何度着る羽目になったんだろう?
退院準備と言っても元々荷物なんてあって無い様な物、数枚の下着とタオル類、それに洗面用具だけ。
それらをデイバックに詰めて、脱いだ入院服を畳み、ベットの上を軽く整える。
後は退院手続を済ませて迎えが来るのを待つだけだ。
多分、父さんは来ない。
一度だけリツコさんに引っ張られて顔を見せたけど、問題無いと一言漏らして直ぐに帰った気がする。
あれでも一応ネルフ総司令だから忙しいだろうし。
いや、一応父親と言った方がいいのか。
遺伝学上の父親だと言う事は理解出来るけど、それ以上の実感が無い。
所属する組織の長である事位の認識しか無いし、どっちにしても僕の日常の中での接点は無いに等しかった。
今更顔を合わせても、何を話して良いのか判らない。
それでも退院したら一度は話さないと駄目だろうな。
「けじめ…みたいな物か…」
バックを肩に背負いベッドに背を向ける。
窓から射す日差しがこの病室で過ごした時よりも、やけに無機質に感じた。

137:ビニールのない傘 ◆Yqu9Ucevto
07/10/20 23:11:26
病室を後にし、階下の入退院窓口に向かう。
聞き違いが無ければ青葉さんが迎えに来てくれる筈だ。
副司令がまだ行方不明だから現在の直属の上司は父さんになる。
あの父さんの直属で仕事をしている上に勤務時間中だ、迎えに来て貰うのも何だか申し訳ない。
新しく用意された部屋もどうせ初めて此処に来た時に入る予定だった所の筈。
ジオフロント内なら案内用のフロアマップを見れば事足りるし、一人でも部屋に行けるのに。
時間も時間だし、廊下ですれ違う人は医療部所属の人だ。
皆戻って来た頃は多少職員が入院したり、通院で治療に来ていたのか、もう少し騒がしかった気もする。
今では足音が聞こえる事も稀かも知れない。
そんな所が余計に僕の目には色が失せて映る。
多分、今の僕はそれを不快だと感じているんだろう、窓硝子に映った表情はどことなく顰めっ面だ。
「人と会うのに、こんな事じゃ駄目だなぁ……」
何時の事だったか、咎められたのは。
あの時はその言葉に含まれた意図迄読み取る事はせず、ただ上辺だけしか受け止めなかった。
恐らくそれ以前もそう言う事が多々あったんだ。
ただ、僕が気付こうとしなかっただけで。
その癖、好意から来る物であってもそれが信じられなかったりして。
自分でも厄介だと思うけどね、そういう性分なんだから仕方ない。
結局突き詰めていけば、自分でも自分の気持ちが判らないだけの話だ。
だから他人の事も、その気持ちも解らない。
向けられた言葉をそのまま額面通り受け止め、そっくりそのまま自分の感情として跳ね返す。
それでも最近は少しマシになったのだと思わなければ。
自分の感情を不快感とは言え、自分の表情から読み取る事が出来る様になって来たみたいだから。
かと言って、こんな顔のままじゃ青葉さんに悪い。
辺りを見回すと誰も居ない、今だ。
窓硝子に向かい映っている顔を確かめながら、顰めている顔の筋肉を両手で掴み、強張っているのを解してやる。
すると突然、後ろから頭を小突かれた。

138: ◆Yqu9Ucevto
07/10/20 23:17:52
以前投下したPromiseの補完話、シンジ視点。

何回か続きます、申し訳ないです。
同時進行で書いてるので投下スピードは亀になりそうなんで先に謝っときますorz


139:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/20 23:54:19
かまわない
俺合わせて3人ほどしかいないしな

140:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/21 00:20:55
いやいや俺もいるぜ
>>138、相変わらずいい仕事!
待ち続けるから頑張れ!

141:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/21 01:25:32
乙!ここも活性化してきたなw
wktk

142:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/22 07:37:22



143:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/24 20:22:37
お疲れ様

144:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/29 20:27:11
スレタイ見てたらかぐや姫の神田川思い出したwwwww
漏れヤバスwwwww

145:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/10/30 22:05:50

続きを…



146:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/03 17:05:23


147:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/09 19:22:43


148:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/13 17:54:40
マッチ

149:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/19 02:31:31
「「け、けっこん!!??」」
見事なユニゾンで驚きの声をあげるシンジとアスカ。

「そ。加治とは色々あったけど、結婚することになったからよろしくねん♪」

ミサトは呑気にビール片手にそう言った。

「じゃあ加治さんもここに住むんですか?」

「んー。そのことなんだけど、やっぱり此処に4人で住むのはちょっち狭いし厳しいと思うのよ。だからこれからはアナタ達2人で住んでくれない?あ、お金のことなら心配しないで。全部ネルフが出すから」
さらりとミサトが言う。

「・・・・・・」
長い沈黙。そして

「じ、冗談じゃないわよ!私達まだ高校生よ!!」

「あらいいじゃない。アナタ達、もうそーゆう関係なんでしょ?」

ミサトがいつものように二人をからかう。途端に二人共顔が赤くなる。

「そ、そんな…。僕達はそんな関係じゃ…」

「そうよ!私達は全然なんでもないんだから!」

必至に照れを隠す二人。
そう。二人は一緒に学校に登下校したり、一緒に買い物に行くなど、周りから見れば恋人同然のことをしているのに恋人ではない。相手のことが嫌いな訳ではない。むしろ好きな方だ。いや、かなり好きだ。ただ単に告白する機会がなく、なんとなく今に至ってしまっている。

「ま、とりあえず頑張ってねん♪」
またまた呑気にミサトがそう言うと自分の部屋に戻っていった。

こうして微妙な関係の二人の同棲生活が始まった。

150:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/19 03:33:55
GJだが一つだけ文句言わせて。
キャラ名調べてから書いてくれ・・・。
キャラ名間違えられると萎える。

151:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/19 08:24:21
>>150
すみません。加持でしたね…orz

152:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/19 21:46:39
こうして彼はまた一つ職人への階段を登ったのであった。


つ乙 よかったぜ

153:k
07/11/20 12:44:38 6lZIqpbS
実話の恋愛物語!ブログ『4.5畳の恋人。』が連載を再開!
URLリンク(news.ameba.jp)

154:149
07/11/20 22:54:04
三日後、二人は新居にいた。
その家にはすでに生活に必要最低限の家具や電化製品が用意されていた。ネルフが用意した物だろう。ミサトが気を利かせて前の家より学校に近くなっていた。

「まったくミサトったら、いくら早く新婚生活を楽しみたいからってこんなに早く私達を追い出すことはないんじゃない?」

「う、うん、そうだね」

シンジは戸惑っていた。
三人で暮らしていた時もこうして二人きりの時間は多かったのに、アスカと二人で同棲という決して邪魔者がはいらないという状況になった途端、何故かよそよそしくなってしまう。
それにあんな妄想やこんな妄想が頭から離れない。
「なに?アンタなんかヤラしいこと考えてるんじゃないてしょうね?」

「え!?そ、そんなこと考えてないよ!全然!全く!」
シンジは多少顔を赤らめながら両手を大袈裟に振る。
確かに高校生になったシンジがアスカを無理やり押し倒すことは簡単だろう。しかしアスカはこの臆病者のシンジがそんなことをできないのを知っていて、こうしてからかうのを楽しんでいる。

「どーだか。
まあいいわ。それより早く御飯作って。私お腹空いちゃった」

「うん、すぐに作るよ!」
そう言ってシンジはキッチンへ向かった。

この時すでにアスカは決意していた。
この状況を利用してなんとしてもシンジを自分に告白させて恋人になってやると。

155:ビニールのない傘 ◆Yqu9Ucevto
07/11/21 02:49:00
窓硝子を確認してみると、眉を顰めたアスカが仁王立ちしているのが写っている。
「鏡のつもり? 身嗜み整えるなら整えるで、人の目に付かない所でやりなさいよ」
「ぁ……いや、そういう訳じゃないんだけど」
「じゃあどういうつもりよ?」
そう言われても困る。
単に強張った顔の筋肉を解していただけだし。
「もぅ、人が話掛けてんのよ? こっち向きなさいってば!」
強引に体の向きを180度回転させられた。
勢いが付きすぎて少しよろけてしまう。
肩に背負ったバックのお陰で重心が後ろに傾き、背中を軽く窓にぶつけた。
「……ごめん、力入れすぎちゃった」
「いや、いいよ。痛くなかったから大丈夫だし」
変わったな、と思った。
以前のアスカなら多分、トロいだのぼんやりしてるからだの、一言小言が先に付いてきた。
事実だから否定はしないけど。
「ホントに?」
「うん。それより診察は終わったの?」
「終わったわよ。これから病室に荷物取りに行く所」
「どうだった?」
「さぁ? また次の診察でねって話しただけよ。特に何も言われなかったわ」
診察内容は僕と余り変わらないのか、それとも形式だけの物か……退院出来るのは間違いないみたいだ。
「じゃあ、ここで待ってるから荷物取っておいでよ。窓口迄一緒に行こう?」
「ん、解った。そこ動くんじゃないわよ」
ペタペタとスリッパの足音を鳴らしながら、アスカは廊下を走っていく。
「あっ、ダメだよ! まだ病院内なんだから走っちゃ!」
曲がり角の影から顔だけ覗かせて、あっかんべーしてる。
誰からこういうの習ったんだろう?

156:ビニールのない傘 ◆Yqu9Ucevto
07/11/21 02:50:00
「お待たせ」
「だから、病院内は走っちゃダメだって」
靴に履き替えてあるから足音が変わってる。
ヒールよりは少し鈍いけど、コツコツって硬くて軽い音。
入院中はスリッパの音ばかりだったから、こういう音を聞くと退院するんだという実感が沸く気がする。
「そりゃそうだけど……こんなトコ早く出たかったのよ」
「気持ちは解るけど、他の患者さんが居たら迷惑になるよ?」
患者なんてそんなに居ないのは判ってる、聞こえる足音やすれ違う人は医療部の人が殆どだから。
それでも浮き足立って転んだりしたら病室に逆戻りだ。
僕の本音としてはこっちの方で心配して言っている訳じゃない。
ここに運ばれた時、僕達は自分の体の状態を理解してなかった。
見た目よりもずっと体力も落ちていて精神的にも衰弱していた。
大した怪我もしていなかった僕でさえ、他の人から見ても明らかに弱っていた。
量産機との戦闘での強いフィードバックを受けたアスカの状態なんか僕の比にならない。
自宅療養出来る状態になったとは言え、まだまだ完全に体力が回復した訳じゃないし。
あくまでも、これ以上検査をして入院を続けても大した効果は無いって判断が出ただけ。
これで転んだりしたら、まだ退院するのは早いとか言われかねない。
「解ったわよ、もう走らないから。じゃ、行きましょ? お迎えの人来るんでしょ?」
アスカは軽い足取りで先に進んでいく。
入院の始めの頃が嘘の様だ。
病室に入って直ぐ、2~3日の間はまだ良かったんだ。
自力で歩く事も食事を摂る事も出来た。
でも衰えていた体力は容赦してくれなくて、それまでの疲れが一度に溢れた。
僕の方は長く微熱が続いたし、アスカの方は高熱を出して一時は面会謝絶になった位だ。
「青葉さんが来てくれるって聞いてるけど、まだかも知れないよ」
「それなら先に退院手続済ませる方が良さそうね」
総合案内のあるエリアに直通のエレベーターを確認する。
下手に広い病院だと、エレベーターの位置に拠って遠回りする羽目になるからだ。
下の階へのボタンを押し病棟に止まるのを待つ間に、バックのサイドポケットからIDカードを取り出しておく。

157:ビニールのない傘 ◆Yqu9Ucevto
07/11/21 02:52:08
「あれ?」
「何だ、2人共下りる所だったのか」
止まったエレベーターの中に居たのは青葉さんだった。
「荷物持ちのつもりで病棟まで来たんだがなぁ……荷物は他に無いのかい?」
「はい、洗面用具と下着位ですから」
僕の荷物は肩に掛けたデイバックだけだし、アスカの荷物もボストンバック一つきりだ。
アスカは青葉さんへの返事の代わりに、胸の位置までバックを持ちあげた。
「なら、このまま下りようか。乗った乗った」
ああ、そっか。
開ボタンを押したままで僕達が乗るのを待ってくれてるんだ。
「はーい。ほら、ボケっと突っ立ってないで乗んなさいよ」
アスカに背中を押される。
「そんなに急かさなくても大丈夫だから。段差で転んだりしたら事だぞ?」
背中を押されながらエレベーターに乗り込む。
アスカが乗り込んだ所でドアが閉まったのか、背後から空気が圧縮される音が微かに聞こえた。
「えーっと……俺の車は地下駐車場だから……」
「僕達まだ退院手続取ってないですよ?」
「あれ? 聞いてなかったのかい? 手続なら赤木博士が今取りに行ってる筈なんだけど」
初耳だ。
僕は青葉さんが迎えに来る事しか聞いてない。
「お迎えは青葉さんじゃないの?」
アスカも首を傾げている。
僕の保護者は一応父さんだから、直属の部下の青葉さんが代理で来るのは解らないでもない。
でもどうしてリツコさんが来るんだろう?
嫌な予感がする。
エレベーター内の僅かな気圧の変化が、粘ったL.C.Lの中に放り込まれた感触に思えてきた。

158: ◆Yqu9Ucevto
07/11/21 02:57:22
続き投下。
亀ですまんです。
暫く鬱々とした展開やも知れませぬ。
甘い展開期待してる人には申し訳無い、もう暫く待って下され。

>>149>>154
萌えました(*´д`*)
続きwktkして待ってます。

159:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/21 03:02:36
おう、神が二人も!www

二人とも乙&GJ!
続き、楽しみにしてるよ!

160:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/21 10:16:02
コイツはたまらねぇ

つ乙乙乙乙乙

161:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/21 17:37:10 WdfSym3Q
乙乙乙乙!!!!

162:149
07/11/23 11:52:19
「なんや?センセはまた惣流とデートかいな?」
いつもの帰り道と違う道に行こうとしている二人を見てトウジが冷やかす。
「あ、そういえば僕達、昨日から二人だけで一緒にごふぇ!」

「そ、そうなのよ。今日もシンジとショッピングなのー。あははー。」

シンジに見事なリバーブローをいれつつ、ごまかすアスカ。

さすがに同棲してるなんてことがバレたら、何を言われるかわかんないじゃない!この馬鹿シンジ!

それを見ていたヒカリが
「アスカったらまた惚気ちゃって。それよりトウジ、今日は何処に行く?」

「そうやなぁ、今日はお好み焼きなんかどうや?」

「『今日は』じゃなくて『今日も』でしょ?トウジったら本当にお好み焼きが好きなんだから」

「ええやないか。ヒカリだっていっつもワシのお好み焼きを焼いてくれるやないかい。ワシはヒカリが焼いてくれたお好み焼きが一番好きやで」

「もうトウジったら…」

また始まったよ、この二人…
呆れた顔で見ているアスカと、先刻の一撃で青い顔のシンジ。

163:149
07/11/23 11:53:47
「碇君。今日は私と遊びましょ?」
どこからともなく紅い瞳の少女が出てくる。

「わっ!ビックリした…ってレイ!シンジは私とショッピングに行くって言ってるでしょ!?」

綾波レイ。昔は一緒に戦った戦友。そして今は親友。でも事あるごとにシンジを誘惑してくる。昔はこんなに積極的じゃなかったんだけどなぁ。人って変わるもんね。

「そう、それは残念ね。
じゃ碇君また明日」

「まったくレイったらまたシンジを誘惑して…。
いいシンジ?あの女の誘惑に乗っちゃ駄目よ?アンタはアタシだけを見てればいいんだから!」

「う、うん。わかったよ」

アスカはよくこんな恥ずかしいことを言えるなぁと顔を赤くしながら、自分の三歩前を大股で歩くアスカに付いて二人の家へ向かうシンジであった。

164:149
07/11/23 12:07:19
>>158
ありがとうございます。
自分も楽しみに待ってます!

165:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/24 07:42:39
乙です

166:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/01 02:50:39
保守

167:149
07/12/04 02:05:55
今日はシンジが学校から帰ってきてから何か変だ。ずっとそわそわしてるし、時々ぶつぶつと独り言を言ってる。いつも一緒のソファでテレビを見ているのに今日は顔を赤くして自分の部屋に行ってしまった。私なんか変なこと言ったかな?

そして夜の11時半頃になって急にシンジが「今日も暑いから近くの公園にでも涼みに行こうよ」なんて言い出した。
さすがに一年中夏の暑さだけど、この時間になるとさすがに外に涼みに行くほど暑くない。第一、部屋にはエアコンがある。
そんなことを私が言うとアイツは「いいから、いいから」なんて言って、ほとんど無理やりに私を外に連れ出した。
もう、一体何なのよ?

そうして私たちは近くの公園にやってきた。
公園のベンチに二人で座る。それでもシンジは何も言わない。でもさっきらチラチラと腕時計を気にしている。私はシンジが一体何を考えているのかわからなかった。
すると突然シンジが口を開いた。

「ア、アスカ…」

「何よ」

「誕生日おめでとう」

「え?」

168:149
07/12/04 02:07:29
私は一瞬なんのことかわからなかった。するとシンジが自分の腕時計を私に見せてきた。時間は0時ジャスト。

「今日はアスカの誕生日だよ」

「そういえばそうだったわね。でもなんでこんな事…」

「誰よりも先にアスカにおめでとうって言いたかったから…。それと誕生日プレゼントなんだけど、喜んでもらえるかわからないけど今から言うから…」

誕生日プレゼントを言う?この時、私の頭の上には「?」が出ていただろう。

「僕はずっと前から…、多分出会った時からアスカのことが…」

え!?嘘!?ついに!ついに待ちに待ったこの時がきたの?

「アスカのことが…、す、すk」

その時二人の耳に聞き慣れた車のエンジン音が。
時間は0時を過ぎているというのに、物凄い爆音を響かせてミサトが自慢の愛車で颯爽と登場した。

「あれ?なんで二人共こんな所にいるの?
そんなことよりアスカ!今日はアナタの誕生日よ!今からウチで誕生日パーティーするわよ!」

「ち、ちょっと、今大事な所…」

有無を言わさず二人を車に連れ込むミサト。

もう!ミサトったら大事な所で邪魔するんだから…。でもまあいいわ。シンジの気持ちは伝わったし…。ま、焦らずじっくりとね♪

その日、二人はミサトにベロベロになるまで飲まされ、その日の学校では完全に沈黙してしまった二人だった。

169:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/04 02:55:12
おつ!

170:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/04 02:58:28
めぞん一刻ばりにもどかしいぜ……


171:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/04 09:14:16
ミサトさんってKY?(笑)

172:名無しが氏んでもかわりはいるもの
07/12/07 13:39:08 vVafTI8v
>>171
2chでは空気嫁を使うのだ。

173:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/09 00:36:51
>>172
取り敢えずsageを覚えようか。

174:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/09 23:57:44
149氏、乙と言っておこう!

175:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/12 02:21:38
職人降臨待ち


176:149
07/12/13 16:55:39
日も傾いてきた頃、リビングのソファーに寝転がりながら雑誌を見ているアスカ。そこに怖ず怖ずとシンジが近づいてくる。

「あのぉ…、アスカ?」

「なによ?」

シンジの初っ端から弱腰な態度に多少いらつきながら返事をする。
男ならもっとしゃきっとしてほしいと思うアスカだったが、こんなシンジも好きなのだから何も言えなくなるだが。

「そろそろお腹が空いたなぁなんて…」

「ハァ!?このアタシに作れっていうの?」

「だって最初ここに来た時に当番を決めたじゃないか」

そう、二人はここに引越しをしてきた時にいつの日かミサトとシンジがやったように家事の当番表を作ったのだ。もちろんそれはアスカが将来少しでも家事がうまくなれば僕も楽になるかなぁ、という自分のささやかな期待を込めてシンジから提案したのだ。
結果は勿論あの時と同じようにシンジがアスカの威圧に負けてアスカ担当の日が一週間に一回ほどしかないという、まるでデジャヴを見ているようなことになったのだが…。

「うるさいわねぇ!今日は疲れてるからアンタがやって!!」

そして先日まで一緒に暮らしていた保護者と同じような発言をするアスカ。

177:149
07/12/13 16:56:40
「はあ…、そんなんじゃあ、お嫁に行けないよ?」

するとアスカはすぐさま言葉を返す。
「将来、家事はシンジがやればいいでしょ?私が仕事から帰ってきたらご飯とお風呂の準備はちゃんとしておいてよね!」

「アスカ…、それって…」

急に顔が紅くなるシンジを見て、ようやく自分の言っていたことの意味を理解するアスカ。

ヤバッ。ついつい本音が出ちゃった…。

「き、今日は私がご飯作るからシンジはここで待ってなさいよ!」

恥ずかしさで早くリビングから逃げだそうとバタバタと走り去るアスカを呆然と見ていたシンジは、先程のアスカの発言を思い出してだらし無い笑みを浮かべてしまう。

あれってアスカがこれからも僕と一緒に住んでくれるってことなのかなぁ?そうだったら嬉しいなあ。

そんなことを考えながら上機嫌でアスカの料理を待つシンジ。
しかし一時間後に出てきたアスカの料理はお世辞にも美味しいとは言えない料理だった。勿論簡単な料理くらいはアスカにだって出来るのだが、今回は料理よりも自分の心を落ち着かせることに手一杯だったのだ。
結局アスカの命令で晩御飯を作ることになったシンジは今度は一緒に作ってみようかな?とひそかに思うのだった。

数日後、顔を少し赤らめたアスカと、隣で嬉しそうな顔をしたシンジが仲良くキッチンで夕飯の支度をしていたとさ。

178:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/13 22:01:13
(*´Д`)乙

179:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/13 23:23:17
おつ!

180:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/13 23:52:01
乙です~

181:ビニールのない傘 ◆Yqu9Ucevto
07/12/15 16:38:47
「一応はまだE計画は続いている事になってるからね。責任者としては主治医の先生に聞きたい事もあるんじゃないかな?」
青葉さんはそう説明してくれたけれど、僕は何故か納得が行かなかった。
入院中に父さんを引っ張って来た時のリツコさんの視線が、前と変わっていた気がしたから。
何処が変わったのかと言われると、僕のボキャブラリーじゃ上手く説明は出来ないけれど。
「そりゃそうよねぇ……Childrenの健康管理も責任者としては把握しないとダメだもんね」
「その上で今後のE計画の方針が決まると思うよ。俺の仕事内容もそれに拠って変更はあるだろうな」
E計画……母さんが提唱したらしい計画。
いや、どうだったっけ?
母さんが初号機のコアの中に消えた原因の計画。
うん、僕の認識としてはそれ位だ。
何処までもコイツが僕に付き纏うのかと思うと、正直気が滅入る。
もしも、だ。
E計画が無ければどうなっていたんだろう?
母さんがコアの中に消える事が無かったのなら、父さんは僕を捨てる事なんか無かったのかな?
僕がエヴァに乗る事も無くて、サードインパクトも無くって……それ以前に、セカンドインパクトも無かったのかな?
だとしたら、だとしたら……僕はどうなっていたんだろう?
母さんが居て、父さんが居て、僕は一人っ子じゃなかったかも知れない。
ここに住んでなかったかも知れない。
僕が生まれていない可能性だってある。
「退院出来るんだから大した話も無いだろうし。診断書の受取が関の山さ、心配する程の事じゃないよ」
「……本当に、そう思います?」
もしもの事なんか考えても切りが無いのは解ってる。
でも、もしE計画が無かったらって考えてしまうんだ。
だって、僕はあの碇ユイと碇ゲンドウの息子なんだから。
痛い。
またアスカに頭を小突かれた。
「どうしてそうアンタは物事を小難しく考える訳? 一々そんなに考えすぎちゃ身が持たないわよ」
別にそういう訳じゃないんだけど。
やっぱり顔に出てるのかな?

182:ビニールのない傘 ◆Yqu9Ucevto
07/12/15 16:39:48
「眉間に皺作って口までヘの字じゃない。ほら、もうちょっと愛想良くしなさいよ!」
「いっ、痛いってば、止めてアスカ」
「アンタにはちょっと痛い位で丁度良いの! 痛いのが嫌なら擽ってあげよっか?」
両頬をアスカに引っ張られた。
多分、愛想笑い位作れって事なんだろう。
だからってワザと痛くしなくても良いと思うけど、アスカなりに心配してくれているのかも知れない。
「まぁまぁ、アスカちゃんもその辺で勘弁してあげなよ。シンジ君もそんなに固くならなくても大丈夫だって」
青葉さんが頭を撫でてくれたけど、何だかクシャクシャと擬音が付きそうな感じがする。
髪の毛の根元が動く感触がする位だから、結構力入ってるのかな。
「やだっ、折角梳いてセットしたのにっ! 青葉さんもアタシに迄しなくてもいいじゃないのっ!」
アスカの頭の天辺が青葉さんの手で撫でられて髪が所々逆立ってる。
「……ったく、手間掛けさせるのだけは一人前なのネ?」
「何が?」
二人が僕の顔を見てるのに気付いた。
顔に何か付いてるのかな?
でも、さっき窓硝子に顔を映した時は何も付いてなかった筈なんだけど。
「シンジ、アンタ今笑ってるわよ」
「えっ?」
「少し肩の力が抜けたみたいだな。うん、その方が良い」
「ほら、アタシよりも頭ボサボサになってるじゃないの……青葉さんも加減しないしぃ……ん、これで良いわ」
アスカが手櫛で髪を整えてくれた。
って僕、今笑ってたの?
「入院してて笑い方忘れたなんて笑えないわよ?」
「久々に病院から出るんだから、緊張もするだろうさ。何にせよ気にしない事、気楽にする事、いいね?」
やっぱり、僕はダメだな。
ちょっとでも気になる事を耳にしたら、直ぐにその場でも考え込んでしまう。
周囲に気を使わせてばかりだ。
けど、何だか無性に嬉しかった。

183:ビニールのない傘 ◆Yqu9Ucevto
07/12/15 16:40:49
地下駐車場に下りると、前とは違って少し肌寒かった。
サードインパクトで地軸が戻った影響が出ているのが少し身近に感じられる。
少しずつだけど季節が戻って来てるらしいのは聞いていたけど、病棟内は空調が効いていて余り実感が無かった。
サードインパクトが起きる前は常夏の気候って奴で、地下に入ると涼しくてちょっとホッとする位だったのに。
「これ、冷房なんて入ってないのよね?」
「多分……やっぱり季節が戻って来てる証拠なのかな?」
幾ら長袖の服を着ていても、肌に触れる空気はひんやりとしていて、今迄馴染みの無い感触には違いないと思う。
クーラーと違って自然な冷たさと言うか。
「俺が子供の頃はこれが普通だったんだがなぁ……二人共こっちだよ」
青葉さんの後に付いて歩いていると気付いた事がある。
空気の流れがゆっくりで、所々に水溜りが見える。
コンクリートの壁を見るとあちこち細かいヒビが入っていて、そこから染み出した水が水溜りを作っているのが判った。
地上での戦闘の影響なんだと思う。
かなり地下深い本部のケージからでも、上空からの戦自の爆撃の振動で衝撃の強さが凄まじかった事は判ったから。
あれだけの衝撃なら、多少離れた場所だとしても同じ市内ならこういう小さな被害があるって事か。
それから思ったよりも停まっている車が多い事。
「一般車両ばっかりだ……」
「復興が始まってから戦闘で吹っ飛んだ施設の代替として、無事だった所は一般開放してるんだよ。ここもその一つになるね」
「その割に入院患者は少なかったわよ?」
「初めは職員しか居なかったからさ。今は復興工事や何やらで入って来た人達が外来に診察に来たりしてるんだよ」
「工事に怪我人は付き物って事?」
「そんな所だね。さぁ、午後から忙しいんだから乗った乗った。昼飯食って、その後は買物もあるんだぞ?」
青葉さんが開けてくれた小さな軽自動車の後部座席に、アスカと二人で乗り込んだ。
車の窓から差し込む光が、地下駐車場の薄明かりの電灯から太陽の光に変わった瞬間、僕達の入院生活はピリオドを打つ。
でもこの時はまだ、エレベーターに乗った時の嫌な予感が、現実になるなんて僕は思いもしなかった。

184: ◆Yqu9Ucevto
07/12/15 16:47:11
続き投下。
今回はちょっと+微糖?
取り合えず鬱々とした後は甘くする予定。

>>162-163
>>167-168
>>176-177

甘々で萌えまくってます(*´д`)b
もっと糖分増えても(・∀・)イイ!!



185:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/15 19:53:49
乙!

186:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/17 21:33:12


187: ◆8CG3/fgH3E
07/12/18 18:20:15

空気を読まずにイタモノ投下


僕とアスカが同棲を始めてどのくらい経ったのだろうか。
もう僕は正確な時期を忘れてしまった。
アスカは覚えているのだろうか。
ねぇアスカ……。


     裏切り


     1


外では雨が降っている。今、僕の視界に映るのはアスカの買ってきた鉄器の風鈴(東北地方のある地域に伝わる鉄器らしい)と、部屋と外を隔てる窓だけだ。
僕は床に敷かれた赤いカーペットの上に座っていた。背後には簡易テーブルが置いてあり、僕はそれに目をやる。
テーブルの上には冷めた紅茶があるが、僕は既に、それを飲む気がまったく失せていた。
僕はそのカップをキッチンへ持っていく。そのカップはアスカの物とペアだった。僕は流しに紅茶を捨てた。
雨の降り注ぐ音に、ダダダダと紅茶がシンクを叩く音も加わる。しかしその音も紅茶と共に空虚へと儚く消えてしまった。
僕は、空になったカップを調理台の上に乗せる。優しく、愛でる様にそれを見つめる。半ば舐め回す様に、しつこく、固執して。

その白いカップを暫く見ていた僕は、思い出した様にそれを手に取った。少し移動して、逡巡する。アスカの顔を思い浮かべ、アスカの罪を考えた。
そして僕は、玄関のコンクリートにそれを叩き付けて粉々にした。
僕はそれで、アスカへの想いを断ち切ったのだ。


188: ◆8CG3/fgH3E
07/12/18 18:22:17

少なくとも、僕はその時だけはそう思っていた。



アスカが僕を裏切ったのは一週間前の事だった。
いや、そのずっと前からアスカにその兆候はあったのだ。

僕らが同棲を始めたのは何時だったか? 正確な時期は分からなかったが、確かアスカの十八回目の誕生日が終わった後だったような気がする。
僕らは小さいころからの幼馴染みだった。それも飛びきり仲の良い幼馴染みだった。同年代の幼馴染みと比べてみても、僕らの親密さは抜きん出ていた。
そして一番身近な異性として至極当然の様に惹かれ合い、至極当たり前の様に互いの体を重ねた。
そして中学三年の八月に僕とアスカは付き合いだした。その年の内に、体も重ねた。
僕達が初めて交わった場所は、近所にある小高い丘だった。更に詳しく言えば、その奥にある林の中だった。
その日はクリスマスイブだった。僕はアスカに誘われて花火のよく見える丘に行ったのだ。
そして、僕達が丁度山頂に着いた八時頃に上がった花火。僕はその全てを、今でも鮮明に覚えている。
僕は花火の下でいつもするキスとはまったく違う濃厚な物をアスカにした。それで二人の仲にひとつの合意のような物が出来た。
僕はアスカの体を横たえ、体中をまさぐった。そして情事を交した。

僕はアスカの体にしっかりと、極めて念入りな前戯を施した。アスカを弄び、一頻り喘がせた。そして僕は、その熱り立つモノをアスカの中へと、ゆっくり慎重に侵入させたのだ。
その動きは自分でも呆れる程にゆっくりだった。アスカの痛みを少しでも緩和させようとしたのだ。
しかし、当然の如くアスカは痛がった。だから僕は、酷い悪態を吐かれたり、さして厚くない胸板に爪を立てられたりした。
そしてその夜が、アスカの涙を初めて見た時だった。それが痛みからなのか、ヴァージンを喪った喪失感からなのかは、今でも解らない。
今思えば、僕はその時からアスカと最後に会った日まで、一度もアスカの涙を見た覚えがなかった。

そして、僕らは同棲を始めた。
どちらから言い出したのかは憶えていない。ただ僕らは大学に入る前頃に、両親の住むマンションから幾分離れたアパートに住み始めた。ただそれだけだ。


189: ◆8CG3/fgH3E
07/12/18 18:23:22

大学に上がってから、僕とアスカの距離は更に近付いた。僕達は、時に学校を休んでまで交わり、体液を交換しあった。
しかし、そこまでだった。

アスカはアルバイトを始めた。僕らは両の親から十分な金銭的支援を受けていたので、金がないという事はなかった。別段、バイトなどする必要はなかったのだ。多分アスカの気質がさせたのだろう。
アスカが、外で働くようになったからだろうか、その頃から僕とアスカの距離は次第に遠くなっていった。アスカのバイトへ行く時の化粧は段々濃くなり、服装も派手で露出の多い物になった。
しかしそれは未だ良かった。許せる範囲だった。それに、アスカは未だ僕と十分過ぎる程のスキンシップを取ってくれていた。
“事”だってしていた。

しかし、三週間前の日曜。
アスカのお母さんが、死んだ。
交通事故だった。
アスカは悲しみ、嘆いた筈だろう。しかし添い寝までしていた僕や、親にすら、一滴も涙を見せず気丈に振る舞っていた。
そんな独りで悲しみに堪えるアスカに、僕は声を掛けて慰める事さえ出来なかった。しない方がよいと思ったのだ。

それからだ。
アスカは変わった。
朝帰りがザラになる。煙草の匂いが漂い、酔って帰る様になった。
僕の諫めは、全く意味を持たなかった。どうして僕と同棲しているのかさえ不明瞭になり、理由や実体も消えていった。
それが、二週間前のアスカと僕との関係。。
そして一週間前。アスカは僕を裏切った。

その日、僕は大学の講義を早めに切り上げ、何時もより早く我が家に戻った。
それは勿論、アスカと話し合う為だった。
自宅のドアに鍵を挿した時、僕は違和感を感じた。
鍵が、開いていた。


190: ◆8CG3/fgH3E
07/12/18 18:26:36

確かに閉めて出てきた筈だ。しかし、扉が開いている。アスカが帰って居るのかと想像しつつ、僕は扉を開けて恐る恐る玄関に入った。
僕のアパートの間取りはあまり広くはない。1DKの小さい部屋だ。だから、玄関からは僕らの生活空間が見通せてしまう。
そこには僕が想像すらしていなかった光景が広がっていた。僕はそれから目を反らす事が出来なかった。
そこには無造作に敷かれた敷布団と、無機質に稼働する扇風機。そして敷布団の上に拡がったシーツの下に蠢く二つの人影。
一人は全く知らない男だったが、もう一人は良く知る女だった。
「……アス……カ?」
何故か僕の声は酷く擦れていた。
僕に気付いたのか、男に組み敷かれて喘いでいたアスカは首を擡げて驚いた様に目を見開いた。
彼女は僕を見る。
そしてアスカの上に被さっていた男は、後ろを向く様にして僕を見た。僕とはさして変わらない顔立ちの、優男に分類される風貌をした男だった。
無意識に、本当に無意識の内に、僕は男に向かって何かしらを叫んでいた。
多分「出ていけ!」とか、そんな系統の言葉を叫んでいたと思う。男は驚いた様に呆然として、急いで身なりを整えた。そして帰りがけにアスカの耳元で「またね……。」と囁き、僕の横を通って部屋から出て行った。
僕はその時、男になんのアクションも起こさなかった事を、今でも後悔している。
僕は酷く憤り、激怒していた。
アスカはシーツで体を隠し、僕を見ようとはせずに背を向けていた。
僕は靴も脱がずに部屋へ上がった。直もアスカは、僕の方を向こうとはしなかった。
「どうして……こんな……。」
そう呟くと、僕は歯噛みして視線を落とした。アスカのした事が、信じられなかったからだ。
これは浮気だ! アスカの裏切りだ!
何時の間にか、僕の頭の中では見知らぬ男への怒りが、アスカへの怒りにすり替わっていた。
いくら混乱していたとはいえ、今思えば僕は酷く浅はかだった。
「なんで……。なんでなんだよ……。」
アスカからの返答は無い。部屋には、扇風機の羽音だけが虚しく響いていた。
「なにもしてくれなかったクセに……。」
たしか、こんな事をアスカは言ったのだろう。それは微かな、呟くような小さい声だった。


191: ◆8CG3/fgH3E
07/12/18 18:29:25

アスカは床に散らばった衣服を急いで着けた。着け終わると、顔を伏せながら早足で僕の横をすり抜けて行った。
何故か僕の体は動かなかった。アスカを引き留めたい脳の思考に反して、動いてはくれなかったのだ。情けない事に、僕は離れていくアスカに声さえも、かける事が出来なかった。
僕は件の男に負けた。
僕はアスカを失った。



玄関にはカップの破片が散乱したままだった。僕は納戸から、箒と塵取りを取り出して、散らばった陶器片を掻き集める。
集まった陶器片を、塵取りから茶色い紙の袋に入れて処理する。
僕はそれを玄関の隅に置かれたごみ袋の側に置いた。
取り敢えず、これを捨てるのは三日後の燃えないゴミの日にしよう。
そして僕は、三日前に買った食材とご飯を炒めて取り敢えずの食事を作った。出来上がると、その簡易チャーハンを居間運んだ。
そこは僕の寝所にも使われていて、端には畳まれた布団があった。
今、そこには折り畳み式の簡易テーブルがある。そのテーブルは、アスカと一緒に選んだ物だった。
気分が悪くなる。吐気がし、寒気まで込み上げる。まるでスモッグが天から落ちてきて、僕を急速に飲み込んでしまう様に。
僕はそのテーブルを渾身の力で蹴り上げた。
そしてチャーハンを床に置くと、蹴り上げて無惨に裏返ったテーブルを、窓から裏手の汚い運河へ放り捨てた。
バシャンと派手な音を立ててテーブルは運河に落ちた。
それは暫く、しぶとく浮かんでいたけれど、やがて沈んだ。そのくらい暗い泥濘の漂う運河の中へ。
僕はたったそれだけの運動で切れた息を整えながら、少しずつ沈むテーブルを暫く見ていた。
テーブルから千切れた二本の足が、その淀みに浮かんでいる。
僕は暫くそれを見ていたけど、やがてそれも飽きて、床に座って食事を始めた。
食べ始めた時は、一人で食べる食事など何時もと変わりないのだと高をくくっていた。
しかしそれは違った。その食事は普段と変わりない普通の食事なのに、実際に口の中で咀嚼してみると酷く味けなかった。まるで砂で出来た食事のようだった。



192: ◆8CG3/fgH3E
07/12/18 18:35:29

僕はその一口で食事をする気をまったく無くしてしまった。
そしてその殆んど手付かずのままチャーハンが残った皿を片手に持って立ち上がり、キッチンへ向かった。
僕は、その出来のいいチャーハンを生ゴミの袋にぶちこみ、皿をシンクに入れる。
水道の蛇口をキュッと絞ると水が勢いよく流れだして、皿をその塩素が混ざった水道水で満たした。
僕はスボンジを手に取り、洗剤を染み込ませて皿を洗った。
涙が流れるのも気にせずに。



僕がカップを割ってから三週間が過ぎた。
すべては何事もなく過ぎた。と言っても厳密に言えばなにも無かったとは言えなかった。
僕がカップを割った日からしばらく過ぎた頃、カップの破片を捨てる筈だった日。
アスカの父親がこの部屋に怒鳴りこんで来た。彼は、アスカの居場所を僕から聞き出そうとしていた。
その時僕は殴られたのだが、僕だってアスカの居所は知らないし、アスカが浮気して出ていったと言っても信じてくれる気配は無かった。
だから、僕は黙って二、三発殴られた。
今でも、頬はガーゼで覆わなければいけないほど腫れているし、痛みも多分にある。
かなり重い拳だったので、もしかしたら頬骨に皹でも入っているかも知れない。しかし、僕は病院に行く気は無かったし、自分で施したこの治療で十分だと思っていた。
今日は、カップを割った日から二十五日経った十二月二十日だ。思えばアスカのいない内に、彼女の誕生日はとっくに過ぎ去ってしまった。
僕はその日、久し振りに外出らしい外出をした。
この二十日間、僕は殆んど外の土を踏んではいなかった。勿論大学へもだ。まるで天岩戸に篭ったアマテラスの様に戸を閉めて。
何故外出する気になったかと聞かれても、別に僕は美しい歌声を聴いた訳でも、祭りを聞き付けた訳でもない。世の中が闇になった訳でもない。
良くは分からなかった。しかし、敢えて言うとすれば、ただ外の空気を吸って酒に溺れたかっただけだ。
顔を洗い、風呂で体を洗った僕は、ジーパンとティーシャツ、そんな適当な服を着て、二万円ほどを無作法に右ポケットへ捻じ込んだ。
アパートのドアから出てみると、外は相変わらず焼け付くような暑さだった。



193: ◆8CG3/fgH3E
07/12/18 18:38:35
◆Yqu9Ucevto
gj


194:キョーコ
07/12/19 21:01:20
好物キタコレgj

195:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/20 22:24:50
という夢を見た

196:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/27 00:35:05
保守

197: ◆8CG3/fgH3E
07/12/27 15:09:28

アパートを出て、アスファルトの反射熱を全身に浴びながら駅へ向かう。
途中、開発途上の空き地群を眺めながら駅に着いた僕は、第三新東京の中心へ向かう電車に乗り込んだ。
十分程で、電車は町の繁華街にあたる地区の最寄り駅に停まった。
僕は電車から降りると空を見上げた。
するとそこには、もう十七時だと言うのに、ぎらぎらと僕を刺し貫くような光を放つ太陽が輝いていた。
昔はこの日本にも四季があったというが、セカンドインパクト以降に生まれた僕には当然、まったく実感がなかった。
日が長いのも、年柄年中夏なのも、すべて僕にとっては至極当然の事で、周りにもその事を気にする友人はいない。
そんな事もあって僕は時々、四季のあった時代に生きた父さんや母さん達が無性に羨ましくなる。

見た所、繁華街には仕事帰りの会社員や水の道の人とかが多くいた。
日が高いというのに、街にはネオンが瞬き、どの店にも暖簾が架って営業を示している。
中には既に客引を始めた、客引女達の嬌声まで聞こえていた。
営業準備を始めたらしい風俗や、映画館を横目に見ながら歩く。
こんな時、僕は少々困る事があった。
何故か(認めたくはないが、恐らく童顔だからだろう)僕の顔は大学生に見られないのだ。
大学三年生でありながら、未成年扱いされて酒を出して貰えない事も屡々あったほどだ。
そんな訳で僕は普段、いつも身分証明書を持ち歩いて、店員に見せなければならなくなった。
しかし運の悪い事に、暫くぶりの外出とあってすっかり身分証明書を持ってくることを忘れてしまっていた。



198: ◆8CG3/fgH3E
07/12/27 15:12:20

そしてこの街の酒場は、この喧騒に不釣り合いなほど未成年かどうかに敏感なのだ。
それは数年前に当局が、未成年の飲酒問題を足掛かりに行った未成年者一斉検挙が原因(その捜査の過程で、黙認されていたいかがわしい風俗なども巻き添えに検挙された)だった。
そんな背景もあり、この繁華街に店を出す経営者達は薮蛇をつつかない様。あるいは未成年者の追い出しで、見返りの形で当局に風俗を黙認させている。
そんな裏事情がこの混沌にはあるのだ。
アスカの様な、一目で大学生以上だとわかる者と一緒ならば身分証明書など要らないのだが、生憎彼女はいないし、こうなった原因も彼女なのだ。
そして、諦めて帰ろうかとした時だった。
「あれ?碇くんじゃない?」
声が聞こえた方向を見遣わすと、そこには一人の少女が立っていた。彼女は、いわゆるアルビノ形質だった。
「綾波?」
「憶えててくれたんだぁ。」
駅の方向から駆け寄って来た綾波レイは、僕の前までくると嬉しそうに僕の手を取った。
彼女は真っ白なブラウスを着て、下には淡いブルーのスカートを穿いていた。
「忘れる筈ないよ……。それより、綾波はなんでこんな所に?」
そんな僕の問いに彼女は答えず、半ば強引に僕の手を引っ張って繁華街を歩いた。やがて彼女は適当な居酒屋を見付けて僕を連れこんだ。
彼女は、奥のテーブル席まで僕を連れて行くと、僕を入り口側に座らせ、自身は僕の向かいに腰を下ろした。
綾波は店員にビールとツマミを注文して、ようやく僕の事を見た。
「で。どうして私がここにいるのかって?」
強引に事を運ぶのは昔と変わらないようだと、僕は思った。
僕は頷いた。
「バイトの帰りなのよ。大学のウサ晴らしと、バイトのストレス発散。これにはアルコールが一番なのよ。」と綾波は答えた。
しかし、少なくとも僕の記憶には彼女が大学に受かったという話しを聞いた覚えがなかった。


199: ◆8CG3/fgH3E
07/12/27 15:14:57

「落ちたんじゃなかったの?入試。」と僕が訊くと、彼女は店員の持ってきたおしぼりで手を拭いながら答えた。
「ねぇ、碇くん? 世の中には浪人生って言葉があるのよ? 高校出てからもう二年以上経ってるんだから。」
彼女はそう言って、上目使いをして僕を見た。
「ごめん……。」
僕がそう謝ると、綾波は溜め息を一つ吐いておしぼりを神経質に畳み、テーブルに置いた。
「貴方、高校の時となんにも変わっちゃいないのね?」
「そんな事ないよ……。」
僕は自信なく言った。
「そんな事ない……。」
そんな僕の事を、綾波は暫く疑いの目で見ていた。だがビールが運ばれてきた途端に、彼女の瞳は輝いて興味は僕からビールに移った。
「お酒、いつからそんなに好きになったの?」
僕は、ビールジョッキを傾けて琥珀色の液体を啜る綾波に訊いた。
ビールを半分まで飲んだ彼女は、口許をハンカチで軽く拭ってから答える。ビールジョッキの縁には彼女の口紅が付いていた。
「いつからって……多分、う~ん恐らく高二の時くらいかな……?」
彼女は人差し指を顎に当てて、少し考えるような仕草をしてから綾波は答えた。その綾波の答えに、僕は軽く溜め息を吐いた。よく補導されなかったな、と。
「はい、ここで私からの質問!」
唐突に綾波は人差し指を立てた。


200: ◆8CG3/fgH3E
07/12/27 15:16:56

「質問一!
碇くんは今何処に住んでいるのでしょうか?」
早くも酔いが回ったのかと思ったが、見る所彼女はまだ酔ってはいないようだった。
「ここから下りのJRで二駅目、駅から徒歩十分のボロアパート。」
取り敢えず僕は答える事にした。

中学の時からそうだった。彼女が話し、僕が相槌を打っているとアスカが話に乱入し、揃って競いあう様に喋りまくる。そんな二人を前に、僕は相槌を打ったり軽い意見を述べたりして微笑むのだ。
「それでは質問二!
顔のガーゼはなんなんでしょう?」
綾波はひょいっと、ピースするように、人差し指と中指を上げて、数字の二を示した。
「居酒屋で絡まれた時殴られた。」と僕は父さんの武勇伝を引用して言った。
「……冗談でしょ?」と真剣そうな面持ちで綾波は訊いた。
「うん。」
僕があっさりと冗談だと認めると、綾波は腕を組んで憤慨したように迎け反って言う。
「もうっ、私は本気で訊いてるのにぃ!」
腹を立てているような声色で彼女は言った。
しかし、僕が「ごめん、ごめん。」と言ってビールの追加を頼むと、彼女は直ぐに機嫌を直して「まぁいいわ。ビールに免じて許してあげる。」と言った。
綾波は半分まで減ったビールを一気に飲み干し、新しく運ばれてきたビールをまた半分ほど飲んで一息ついた。そしてまたハンカチで口許を軽く拭った。
彼女が置いたジョッキには、やはりピンクに近い系統色の口紅が付着していた。
「では、ここで質問三に移りまーす。」


201: ◆8CG3/fgH3E
07/12/27 15:19:55

僕は、頬が赤みざして大分酔いの回ってきたらしい彼女を見て「はいはい、どうぞご自由に。」と言った。
そして泡の消え掛けたビールを一口啜った。
綾波は人差し指と中指に、親指を加えて計三本の立てた指を僕に示した。
「碇くんは今付き合っている人はいるの?」
僕は否定した。“今”付き合っている人はいない。
しかし綾波は、怪訝そうに首を傾げた。
「……アスカは?」と綾波は訊いた。
「僕は捨てられたんだよ。」
僕の声は微かに震えていた。
他人からアスカの名前を聞かされてしまうと、望む望まないに関わらず、僕の意思とは全く関係する事なくアスカの姿が脳裏に蘇った。
それは同棲を始めて一、二ヶ月ほどたってから出掛けた海で目にしたワンピース姿のアスカだった。
僕は数あるアスカの姿の中で、その姿が一番好きだった。
僕は綾波の顔をジッと、しかしどこかぼんやりと見つめていた。
そして僕は、知らず知らずの内に、涙が頬を伝っているのを感じる。
それからは、まさに関を切ったように、それこそ暴れ川の堤を切った様に、感情の濁流が押し寄せて、それに僕は浚われていった。
僕は木のテーブルに突っ伏して、涙どころか涎まで締まりなく垂れ流して酷く泣いた。
僕の向かいの席で綾波がおろおろとしているのが、僕にははっきりと解る。
「ちょっと! 落ち着いてよ! こんなとこでこんなことしてたらおかしく見られるわ。私がなにか悪いこと言ったなら謝るから、ね?」
僕は何度か、ごめん大丈夫。
と言ってその高振りを治めようとおしぼりに顔を押し付けた。そしてその高振りは、試合の終わった野球場から観客が引き揚げる様に、ゆっくりと治まっていった。




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