07/07/04 23:22:25
「ねえ、敦賀さん?」
「ん?」
角度的には左下にあたる方向―声の主に目を向けた蓮は、その上目遣いの瞳をぱちくりとさせる恋人に甘い笑顔を返す。
いつもの呼びかけに、いつもの返答。
たったこれだけのやり取りにすら、蓮はいつも胸の高鳴りと共に心が満たされていくのを感じていた。
手に入れたいと心の底から願った存在が、隣りにある。
おまけに上目遣いで(これはあくまでキョーコにとっては身長差から当たり前の無意識の行為なのだが)名前を呼び、返事をすると頬を赤らめる。
蓮の頬の肉が落ちそうに緩むのも当然のことだろう。
一方でキョーコが顔を赤くするのは蓮がとろけんばかりの輝かしくも甘い顔で微笑むせいなのだが、自分のことに疎いのは蓮もまた同じわけで。
このやりとりをもし彼のマネージャーが目にしたら、見せ付けるのはもういい加減にしてくれとまた巨大なため息をついたかもしれない。
いつまで経ってもこの甘い微笑みに慣れない心臓を内心恨みながら、キョーコは慌てて目を逸らし、
代わりに繋いだ手にぎゅっと力を込めて、ここ最近ずっと気になっていた疑念を勇気を出して口にしてみることにした。
「あのですね、私、ずっと疑問だったんですけど」
「なに?」
「どうしてバレないんでしょうか、私たちの関係」
「え?」