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性悪論が、人間の全ての言動規範を一貫して取り仕切れるほどもの体系を持つように、
性善論もまた、人間の全ての言動規範を一貫して取り仕切れるだけの体系を持っている。
それは、悪人である者の偽善などとはまた別の、純粋かつ一概な善徳でこそあり、
存在性の根本から性分が善であるもののこと。目的のために手段を選ばないほどもの善。
見た感じ厚かましかったり腹黒かったりもして、天使のような善性のパッブリックイメージ
からは程遠かったりもするが、根本のところは常に必ず善であるもの。そのような芯から
善であるものこそは、全ての性悪論を上回るほどもの莫大な言動規範体系を構築している。
性悪論こそは、人間の全ての言動規範を一貫して取り仕切れる唯一無二の体系だと
思い込まされている現代人には、無視するしない以前に、その実在が認知されていない。
性善論自体を知らなかったり、知っていてもそれが、性悪論以上もの規範体系を
構築しているとは露ほどにもわきまえられていなかったりする。大海を知らなかったり、
知っていてもその大きさをわきまえられないままでいる、井の中の蛙であり続けている。