09/10/24 13:26:58 l1J3SAmR0
国境の長いトンネルを抜けると韓国であった。夜の底が白くなった。信号所に汽車が止まった。
向側の座席から元御霊が立って来て、ナムの前のガラス窓を落した。雪の冷気が流れこんだ。
元御霊は窓いっぱいに乗り出して、遠くへ叫ぶように、
「慶太さあん、慶太さあん。」
明かりをさげてゆっくり雪を踏んで来た男は、襟巻で鼻の上まで包み、耳に帽子の毛皮を垂れていた。
もうそんな寒さかとナムは外を眺めると、鉄道の官舎らしいバラックが
山裾に寒々と散らばっているだけで、雪の色はそこまで行かぬうちに闇に呑まれていた。