09/01/11 01:41:38 J3MTPCA+0
―私が病室で目を覚ました時、すでに次の冬季オリンピックは終わっていた。
もう大学生になっていた岸谷が、ハンスが金、天津が銀メダルだったと教えてくれた。
・・・あの事故の時、私が女である事がバレてしまったそうだ。
だが、逆にそのせいで女子ジャンパーの実力が見直され、それが世界的な運動に発展し、
ついに次回のオリンピックから正式種目になる事が決まったという。
「・・・文字通り、ケガの功名ってやつだな、ははは」
器用にむいたリンゴを差し出しながら笑う岸谷を眺めながら、
(・・・なんか大人っぽくなって・・・かっこよくなったな・・・)
とぼんやり考えている自分に気づいて、顔が赤くなった。
「ノリ・・・野々宮ものんびりしてられないぞ。実は青鹿の寺ノ内も女だったんだ。
それにハンスの指導でジャンプを始めたうみちゃんも今や世界的ジャンパーだ。
簡単には金メダルは手に入らないぜ?」
―そう、お父さんと悠太のために、私は必ず金メダルを獲ってみせる。
「―ノノよ」
「えっ?」
「野々宮ノノ。私の本当の名前は、野々宮ノノ」
「・・・ノノ・・・ちゃん」
「・・・岸谷君、・・・あなたの名前も教えて?」
私の戦いは、まだ始まったばかりだ―
~完~