10/06/14 20:34:12 0
「貴方はこの街が好きなら何もしない方が良いでしょう。
それでも何かを探るのでしたら・・・・・・」
回り込まれた、その事を認識する。そして、放たれる鋭い蹴り。
生身での防御は間に合わず、反射的に夕護は体の周りに障壁を張った。
速く、そして重い衝撃。
障壁に受けたダメージ量から、戦わずに去れるような甘い相手では無いことを読み取る。
「消しますよ、って言おうと思ったのですが・・・これじゃあかっこつきませんね」
そして、反撃の隙も無く身を引くという、徹底した戦い方。
夕護は解る者にしか解らない僅かな苛立ちの色を見せる。
本来なら、この段階で能力を悟られるようなヒントは出さなかった。
しかし、能力を発動「させられた」のだ。
「正当防衛はするのですか?」
その問いに。
「…しなければ、此処から帰れそうに無い、な。…『纏拳』」
苦々しく答えると同時に、薄青の光が彼の体を包み込んだ。
踏み込み、開いた距離を詰める。
一歩ごとに足元のアスファルトが弾けて散る。
「それに私に攻撃するならば、戦わぬ理由も無いだろう」
片手を引き、拳を開く。
押し出すような動作で、前に突き出す。
「まずは蹴りのお返しだ、―『衝打』ッ!」
小細工無し。ただただ真っ直ぐな攻撃を繰り出す。
青い光に包まれた掌が、棗を弾き飛ばそうと迫る。