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>>44>>48
……そうか。彼女が求めていたのも私と同じ、父の真実だったのか。
彼女の父が機関の関係の人間ならば、あの人に聞けばなにか分かるかもしれない。
それに化身というのも気になるし、一度あの人に連絡を取ってみるか。
その旨を伝えようとしたが、お互いまだ名前も知らないことに気付いて先に自己紹介を行うことにした。
だが、それは新たな声によって阻まれる。
「お話はすんだかしら?」
振り向くと声の主は海部ヶ崎達の僅か数メートルの所に立っていた。
紫のジャージを着用し、腕を組んだ体勢でこちらを窺っている。
(ッ!! さっきの機関の男と同じで能力か何か? いや、これは違う)
単純に格が違う……今の私では確実にヤられる。それを一瞬で思い知らされた。
「異能値(オーラレベル)50に65……
さて、本当にこの数値の通りかどうか確かめなきゃね。
力を隠し持ってるなら出し惜しみはしない方がいい。実力を出し切れないまま死にたくないだろ?」
どうやらこちらがオーラを隠していることに各章は無いらしいが、“殺す”ことは決まってるらしい。
(さっきの言葉通りだと、彼女があのジャージの女性と戦うのは無理だ。逃げるとしても、先程よりキツイこの状況では……)
考えている間に一歩ずつ、一歩ずつとジャージの女性は近づいてきている。
この状況で海部ヶ崎が思い浮かんだ手段は一つしかなかった。
「数値? 力? 私にはあなたが何を言ってるのか分かりませ……」
そう言い終える前に海部ヶ崎は二つの行動に出た。
一つ、公園の周りのグリーンネットを張っている鉄の支柱、計八本を『飛花落葉』でジャージの女性に発射する。
金属製の重低音を響かせ、鉄柱は標的の周辺に突き刺さりグリーンネットのお陰もあって数秒だが視界を奪う。
二つ、背後の少女に「逃げてください。後で絶対に合流しますから」と告げてベンチごと公園の外へ『飛花落葉』で発射する。
ベンチは少女を落とさぬように少し傾きながら、低空飛行で疾走し、そのまま住宅の影へと消えた。
この二つを同時に行うことの意味は単純。少女を逃がし、その後の逃走時間を稼ぐためだ。
ジャージの女性の方に向き直ると、当然ながら簡単に鉄柱とネットの塊から脱出していた。
「……どうして機関の人間は会話の邪魔ばかりするのでしょうか…順番ぐらい守ってください。」
右肩に背負っているギターケースをぐるん、と縦に一回転させるとその一瞬でケースから抜き身の刀を取り出した。
それからギターケースの紐をタスキ掛けにすると、刀を両手で構える。
(能力使用による疲労は無いけれど、さっきの機関の男にやられた脇腹が多少痛むか。
逃げるのがよさそうだが、戦いに集中しなければ、一瞬で決まってしまう……!!)
死ぬわけにはいかない。
彼女の父への道を探してあげるまで、そして何より私の父上の真実と無間刀を取り戻すまで――
【海部ヶ崎 綺咲:阿合 哀を逃がし、氷室 霞美と対峙】