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>>41>>44
角鵜野市中央区から少し南に外れた場所にある小さな公園。
そこに、二人の人物がいた。
一人は無地の野球帽を被った長身の女性に、
もう一人は日本人らしい黒髪を短く切りそろえた同じく女性である。
二人とも年齢は10代後半といったところだろうか、とにかく若い。
先程から何かについて夢中で話し込んでいる様子だが、
どうやらその内容は、年頃の女性が嬉々とするような、世間話や雑談の類ではないらしい。
そう、雰囲気からすれば、むしろ神妙な、深刻な話の類であるようだ。
だが、会話に熱中するあまりか、二人はまだ気が付いていなかった。
その話以上に深刻な事態が自らに差し迫っていたことに……。
「お話はすんだかしら?」
突然の声に、そしてその声の方向を振り返ってみて、二人は驚いただろう。
何せ二人のいるベンチから僅か数メートル後ろという位置に、
いつから居たのか、一人の女性が腕を組みながら二人をじっと見据えていたのだから。
何を隠そうこの女性こそ氷室 霞美。
そして彼女ら二人こそ、氷室のスキャナーが捉えた異能者であった。
氷室のスキャナーが自動的に二人にセットされ忙しく詳細データを導き出していく。
「異能値(オーラレベル)50に65……」
異能値とは体外に放出されたオーラの量を計測し数値化した値である。
中級クラスの異能者の場合でも、全力時に纏う異能値は平均しておよそ400程度、
通常時でも200前後と言われているから、二人のその値は驚くほど低いものだ。
それこそ偶然放出し体に纏うに至った一般人と見られても仕方がない。
それを狙って敢えてオーラを抑えているのだとしたら実に巧妙であるが、
それも見た目の数値に相手が騙されればの話であって、
氷室のようにその目で直に確かめようとする人間には、通用しないのだ。
「さて、本当にこの数値の通りかどうか確かめなきゃね。
力を隠し持ってるなら出し惜しみはしない方がいい。実力を出し切れないまま死にたくないだろ?」
鋭い眼光を二人に叩きつけながら、氷室はゆっくりと一歩、また一歩と歩み寄る。
【氷室 霞美:海部ヶ崎らと接触】