10/06/04 18:56:32 0
目の前には何台も積み重なった車体の山。
対象を完全に見失ってしまった。
「磁力ですか……やられましたね、私とのダンスはお気に召さなかったですか」
気配を探ってはみるがうまく隠されているのか全く感じることが出来なかった。
遼太郎は踵を返して新開発区域から立ち去ろうと歩き出すが、すぐ歩みを止め後ろを振り返る。
「一つ言っておきますが、貴方が私達を追っているとしてもそこらの下っ端からではなんの情報も得られませんよ。
私くらいのレベルでなければ何も知らないでしょう」
これは勿論はったりで遼太郎も機関の何かを知っているという訳ではない。
実際に戦い、遼太郎の強さを感じた相手からすれば信憑性のある情報になるであろう。
それだけ言うと遼太郎は再び背を向け歩き始める。
(お腹が空きましたね、何か食べに行きましょうか)
行き先を大通りに決め、少し早い昼食を取ることにする。
遼太郎はジャンクフードと呼ばれるもの全般があまり好きではない。
しかし、そんな我が儘を言っていられるほど財布に余裕があるわけでもないので仕方なくファーストフード店に入る。
「さて、これからどうしましょうか……さっきの獲物を取り逃がしたのは痛手でした」
そう呟くが遼太郎に選べる選択肢は多くない。
何にせよ狩りを続けなければならないのだ。
全く肉汁のない固い肉の入ったハンバーガーを平らげると、遼太郎は静かに席を立った。
そしてまた当てもなく街を彷徨い始める。
【棗遼太郎:再び街に繰り出す】