10/05/28 18:19:10 0
事務所から当てもなく歩いて数分、未だにお目当てのモノが見つからない。
人通りの多い大通りの方を歩いてみるが一向に見つかる気配が無い。
(おかしいですね、もう少し居ても良さそうですのに……。 尤も私が探れない程の能力者しかいないという事もあり得ますが)
遼太郎のような異能者はオーラという独特の気を身に纏っている、この気は普通隠せるものではないが、使い手であればあるほど上手く気を隠すことが出来る。
だから自分より強い異能者を見つける時には戦っている時以外は分からないのだ。
何か情報が無いかと、他の戦闘員に連絡を付けようと携帯電話を開く。
すると、視界の隅に慌ただしく駆けているスーツの男が映る、僅かだがオーラを感じなくもない、確実とは言えないが異能者だろう。
遼太郎はその男が向かう先に何かがあると踏んで、後をつけていくことにする。
次第に人通りが減っていく、新開発地区へ向かっているようだ、あの場所はまだ空き家が多いため戦うにはもってこいの場所だと言える。
(私の読みは当たっていましたか)
戦闘員らしき男と一人の女性が戦っている、まだ幼さを残した美しい顔つきの女性。
その容姿には似合わず、黒い野球帽、黒いタンクトップ、ジーンズという男の様な格好をしている。
勝負と言っていいのか分からないが、その勝負の決着は一瞬でついた。
電信柱に垂直に立ちながら長い刀を男の喉もとに突付ける女性、そして男を盾にしながら屋根に飛び移る。
(強い、私でも戦えばただではすみそうにありませんね)
遼太郎は彼女が立っている屋根の近くにある電信柱の影の上に立つ、その影は屋根の上、彼女の真後ろまで伸びている。
遼太郎の身体が影に溶ける、刹那、遼太郎の身体は女性の後ろに現われる。
「物騒ですね、そんなものを持っていては可愛らしい顔が台無しですよ、お嬢さん」
男の喉もとに突きつけられていた刀を手でやんわりとどかす。
そして、男の身体を蹴り飛ばす、鈍い音とともに男は吹き飛び屋根から転げ落ちていった。
すぐさま遼太郎と距離を取る女性。
「初めまして私は棗 遼太郎、貴女のお名前は何ですか? いや、そんなに睨まないで下さい、私は美しい花を摘み取ったりはしません。 もし花に棘でもあれば話は別ですが」
遼太郎は微笑むと手を胸の前に持っていき仰々しくお辞儀をした。
【棗遼太郎: 海部ヶ崎の名前を聞く、出方によっては戦闘意思あり】