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「赤月 怜……漆黒の鉄血鬼……か。なるほど、話を聞く分だとそれなりに有名らしい。
実際、そうなっておかしくはない程の力はあるようだし、確かな洞察力もある。
─あの爪弾の雨の中、右手の違和感を感じ取っていたみたいだからね」
彼女は僕が何かを感じていた右手を振って答える。
だがその手はもう先程の何かは無い。唯の手
あの違和感は何処へ行った。
「これ以上、互いに離れて闘っても、恐らく埒があかない。
決着を着けるには、やはり接近戦(これ)しかないだろう……」
出来れば生かしておきたかったが此処までの強さだ、殺した方が割が良い。
そう考えた瞬間もう一度彼女は氷を放って来た。
そしてまた先程と変わらない戦闘。
あえて違うところを言えば僕が彼女の指を折ったという所だけ。
「─私の動きについてこれる奴はこれまでにも何人かいたけど、
あのタイミングからカウンターを放ち、私の指を折った奴はいなかったよ。
まさか敵に傷を負わせようとして私が負傷するなんてね」
僕も此処までの人とは有った事は無いよ。
そう心の底で溜息を吐く。
氷室の余裕のある笑み、それを見た瞬間また氷室が飛び出してくる
防げず斬られた。
先ほどとは段違いな速度に怜は顔を歪める。
そしてまた氷室の攻撃が迫る。腰を捻ってよけようとするが胸板が斬られた。
「─『急に奴のスピードが増した。今までのは本気じゃなかったのか?』─
何て思ってるんだとしたら、それは大きな間違いだよ。
戦闘に夢中で気がつかなかったと思うけど、よぉーく周りを見てみなよ。何か気付かないか?」
そう喋る氷室を見た怜は悟る。先程のはコレか。
「今の気温は氷点下さ。体温の低下は思考を鈍らせ、筋肉の柔軟性を失わせる。
私のスピードが増したからついていけないんじゃない。
お前の身体機能が低下したからついていけなくなったのさ」
マズイ。
このままじゃ逃げる事が出来ないだろう。
でもそれ以上に
「残念だよ、君の血が飲めそうにない。」
そう言った怜は右手を前に付きだす。
その右手から生まれたのは先程までの刀や杭ではない。
もっと原始的。
固め、造形するでも無い。
唯ぶつける為に放ったモノ。
怜の腕から出た影の様なモノ、実際はオーラを変質させた物だが。
それを固めて飛ばすでもなくゲル状のモノを放つ。
だが今回の『ソレ』は常軌を逸している。
まるで大津波の様な巨大さがある。だが津波と違うのは色が赤黒い事とその量。
上にも長いがそれ以上に波の様に壁になるのではなくまるでポンプの亀裂から噴き出す水の様に勢い良く溢れ出る。
冷気でも凍らない。凍る前に後ろから新たに跳び出す【シャドウ・ブラッド】に押され前へ進む
逃げ場など与えない。右にも左にも上にも【シャドウ・ブラッド】によって逃げ場は無い。
「【シャドウ・ブラッド】」
さぁ生きて見せろ。
この戦場の全てを蹂躙する津波から。
【赤月怜:オーラのほぼ全てを使って巨大津波を発生。】