サバイバルTRPG:寝台特急からの脱出at CHARANETA2
サバイバルTRPG:寝台特急からの脱出 - 暇つぶし2ch63:御剣怜侍 ◆7h7z5ETgh6
10/05/21 23:45:07 0
どのみちこの騒がしい中で仕事をするのは、やはり難しいだろう。御剣はそう結論付けた。
時計を見ればもうすぐ7時、パンフレットに記されていた夕食の時間だった。
そのパンフレットいわく、フランス料理の好きなコースを選んで注文出来るらしい。
御剣はパソコンを座席に置くと、代わりにメニューを手に取った。
ワーカーホリックではあるが、かといって食事や休息の時間を疎かにするほど、御剣は娯楽を遠ざけているわけではなかった。

さて、何を注文しようか、と思った、その時。

>「どうも。素敵なスーツですねぇ。」

そう、声をかけてきた人間がいた。
御剣は思わず頭を上げ、声の主を見た。―あの、銀縁メガネの紳士だ。

>「黒のウェストコートにワインレッドの
スーツですか。中々、上品な着こなしでつい声を掛けてしまいました。
ご無礼をご了承ください。 」

「ム。いえ……ありがとう、ございます」
いきなり話しかけられたせいで、思わず小学生のような返答をしてしまった。
二十歳の時、あの女性に服装や口調を爆笑されたのを思い出し、御剣は内心唇を噛んだ。
しかし、今目の前にいるのは、父親に……否、他の誰かにも似た、鋭い目線を湛えた男だった。
この目線には、覚えがあった。まるで人の奥底を覗き込むような、その中の真実を暴くような―

>「貴方の着こなしがある人によく似ていたものですからねぇ。
あぁ、そうです。彼ですよ。」

彼がそう言いながら証を取り出した瞬間、御剣は納得した。
やはり、刑事。―警部。それも、只者ではない。キャリアなのは当然だ。
だがそれ以上に、もっと、こう―
そして、そんな人間が、自分の着こなしを見て思い出す《彼》といえば、もう答えは決まっている。

>「伝説的な検事、狩魔豪に似ていたものですからねぇ。
貴方も、ついそちらの方面の方かと思いまして。
彼が担当した事件はよく閲覧してたものですから。
かなり強引な方法で捜査をしたと聞いてますしねぇ。
…おや、すいません。私としたと事が。
他人のことになるとついいらない事でも言ってしまいます。」

―ああ、やはり、か。
ここで《彼》の……自分の師匠の名を聞くことになるとは、思わなかった。
恐らく、目の前の刑事は、自分の事も知っているのだろう。だからこそ、こんな会話を持ちかけたのだ。

会話を終え、男は一人食事を始め、御剣は再びメニューに目を落とした。
しかし、内容は頭に入ってこなかった。代わりに、ある人物の名を、思い出していた。
以前、話に聞いた事がある。若い頃、初めて大きな事件を担当した際に担当した捜査官が話していたのだ。

「すっごいアタマがキレるヒトがいるんだけどねー。キレすぎちゃって、ネジも一緒にトンじゃってるカンジなんだよね」

アタマがキレてネジもトンでいるその捜査官がそう表現した男こそ、杉下右京という銀縁メガネの男だったのだ。


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