10/05/20 19:20:40 0
「やあ御機嫌よう。突然ですが、貴方は何処のクラスのお部屋ですかな?
何? S? A? なぁるほど……まあ悪くはないのでしょうが……実は私はSSの部屋が当たりましてね。
やはり私のような高貴な人間となると、相応の幸運が付いて回るんでしょうなあ」
夕食会に集まった面々を手当たり次第に回ってはそれとなく
―あくまで本人はそのつもりで自慢して回る男がいた。
恰幅のいいと言うよりは、肥満気味の薄毛な中年と表した方が適切だろう。
彼は先程から名も名乗らず、また相手方の名を尋ねる事もなく、ひたすら自慢話を飛ばしていた。
「……んだぁアノ野郎! 畜生、こんな列車の中じゃブン殴ってやるってのによお!
オイ、酒があるだろ! ドギツイ奴をボトルで寄越しやがれ! あぁ!? 早くしろってんだよ!」
肥満中年の自慢を受けた面々は誰も良い顔はしなかったが、その中でも一等難色を示す人間がいた。
彼は食堂車の隅にある簡易バーで、荒れに荒れている。
俗に言うヤクザの末端であるチンピラである彼は、ガサついた金の長髪を振り、怒気を余さず横溢している。
けれども根の部分ではそれなりの知性を備えているのか、当たるのはバーテンダーのみとしているようだった。
無論、この手の手合いには慣れているとは言え、バーテンダーはそれなりに困った様子ではいたが。
―夕食が終り、乗客同士での歓談が始まる。
先程の肥満中年は旧態依然と自慢話ばかりで疎まれ、
金髪チンピラは群れるのを忌避しているのか、先と変わらず酒に浸っていた。
ともあれ乗客達は、各位各様に夕食後の休憩時間を過ごしているようだった。
しかし突如として、列車が横合いから殴り付けられたように揺れる。
否、揺動しているのは列車だけでは無かった。
周囲の大地も、丁度差し掛かっていたトンネルも、轟き震えている。
暫し轟音が続き―不意に、殊更に大きな激音が響いた。
列車の外から聞こえてきたそれは、何が起きたかは分からないまでも明らかに不吉の音律を含有していた。
【参加します。よろしくお願いします。地震に関してはそれなりに先の出来事として起こしました。
夕食と歓談時間は好きなように過ごして下さいです】