サバイバルTRPG:寝台特急からの脱出at CHARANETA2
サバイバルTRPG:寝台特急からの脱出 - 暇つぶし2ch196:MOBS ◆wRQwHnp5OOVI
10/06/09 18:58:51 0
>>193

「……マスターキーと無線機ねえ。このドデケえ列車の中から鍵一本を見つけ出すたあ、ドエラいこったぜ?
 無線機にしたってそんな大きなモンでもねェだろうしよお」

金髪は表情を顰めながら、頭を掻き毟る。
それから諦観の温度を孕んだ、溜息を一つ。
非常用の明りや蝋燭の頼りない火が、不穏な空気を示唆するように、揺れる。

「とは言え、手当たり次第行くしかねェか。他に手もねえしなあ。
 オイテメェら、動ける奴は探しに出やがれ。出たくねえってなら……まあ別に強制したりはしねーけどよ。
 食い扶持ががっつり減るくれーは覚悟しろよ。働かざる者、だ」

周囲を見回し、金髪は入念に脅しの言葉を振り撒く。
曲りなりにもヤクザである彼は、政治の大切さを認識しているのだ。
無法の集団であるからこそ、『圧制』する『圧政』が必要なのだと。

彼の言葉に、立ち上がる者は居なかった。
動く事の出来るだけの体力と、気概を持ち合わせた者は、既にこの場にいないと言うのが、道理か。

「……そうかよ。まあ別に構いやしねえが。これだけは覚えとけよ。
 働きもしねえのに勝手に飯を持ち出したり、食い散らした奴は……食ったモン全部吐き出して
 血ヘド吐くまでボコってやるから覚悟しとけ。飯の分配は……あのポリ共が出しゃばるだろ」

無法を無法で抑圧し、封殺するのは、彼が担う。
その土壌の上に法を敷くのは、より適任がいるが故に、彼が出張る必要は無い。
言葉に皮肉を交えるのが随分と得手のようであった眼鏡の刑事は、
探索から帰ってくれば、自分の敷いた圧政に対して、人道と正道を介して諫言を零すだろう。
金髪は、そう踏んでいた。
際しては、自分は適度に食い下がった後に、引こうとも、定めていた。
そうする事で、あの刑事の肩に『圧政を敷く暴君を退けた識者』の銘を、刻む事が出来る。
その後は小奇麗な法では防げない―強引に対処しようものなら刑事の肩書きに瑕疵を付けかねない―
暴挙や理不尽の対応を、適時金髪が担えばいい。

一通りの展望を、壁で揺らぐ自分の影に見出していた彼は、しかしふと、
視界の端に歴とした人影を認めた。自分以外の殆ど

「……何だ、ねーちゃん。アンタはやる気あんのか? だったら、あの刑事共とは反対方向を頼むぜ。
 勿論従う必要はねえし、力仕事が必要だってなら付いてってやる。
 ……やましい腹積もりなんかはねえが、信用ならねえってなら、まあそりゃ当然だ。無理にゃ言わねえさ」



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