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あれから、どれほどの時が流れたのだろう。
といっても地震自体は数十秒、それから数分も経っていないのだが、御剣には那由他の時に感じられた。
地震そのものの衝撃は勿論の事、引き出された過去の記憶が脳裏を蹂躙し続け、ショックが尾を引いていたのだ。
御剣は、漸く顔をあげた。悪夢の隙間から、誰かが自分を呼ぶ声が聞こえた気がしたのだ。
まだ少し頭がぼうっとする。指の先が痺れている気がする。それでも、先ほどよりはずっと正常な精神状態に近づいていた。
自分を呼んだのは、二人。
一人は、先ほどから大声で喚き散らしていた金髪のチンピラだった。タンスの下敷きになってしまっている。
そして、もう一人。先ほど会った、銀縁メガネの男……杉下右京その人であった。
「ム……あ、あぁ。うム……大丈夫、だ……」
御剣は掠れた声でそう答えると、テーブルの下から這い出し、ズボンの埃を払った。
見ると右京の隣には、屈強な印象の男が立っている。話の流れを聞くに、どうやら彼も刑事のようだった。
御剣はポケットから検事バッジを取り出すと、自身の身柄を明らかにし、
「……一先ず、そこにいる男性を助けたい……と思うのですが。力を、貸していただけますか」
そう言って、下敷きにされているチンピラを指した。