10/05/25 06:34:08 0
地震直後。崩れた壁の埃が舞う食堂車。
御剣怜侍は、その隅、机の下で、うずくまって震えていた。
身体を丸め、頭を抱え。目の焦点は合わず、ともすれば過呼吸を引き起こしそうな程に荒い息を吐いていた。
そこには、検事局始まって以来の天才、などと呼ばれた面影は、全くなかった。
ただ子供のように、内に秘めたトラウマに怯える事しか出来ない男が、いるだけだった。
―地震と、エレベータ。
御剣はその二つを、大の苦手としていた。
幼い頃に巻き込まれた事件の傷痕が、今も心に根深く残っている。
かつては毎晩、その事件の悪夢に苦しんだ事もあったが、今は悪夢の方は落ち着いていた。
しかし。こうして突発的な強い揺れに襲われると、その悪夢が再び蘇ってしまう。
時にはそのまま気を失ってしまう事もあるが、今回は意識を断つ事はなかった。
意識を断つ事なく、悪夢の残滓に震えつづけるしか、なかった。
【食堂車にて、トラウマモード中】