10/03/24 16:08:20 0
蝉は羽化して約七日後に死んでしまいます。一週間しか生きられない
あなたはそんな蝉だったとします。あと一週間しか生きられない
それは確かなことで覆せない。そう、自然の摂理とかいうやつです
羽化したあなたは『誰か』から告げられます。『誰か』が何かはあなたの想像にお任せします
「惜しかったね。今から八日後に、とても輝かしい希望があるのに。幸せがあるのに――」
あと八日後の幸せ。けれども、その世界にあなたはいません。七日後に死んでいるのですから
あとちょっと、本当にちょっとだけのところであなたには届かない未来
あなたには掴めない明日。それが八日目
一日経って、一日遅れで、あなたの前で別の蝉が羽化します
ああ、何ということでしょう
あいつは八日目に居られるのにあなたにはそれができない
あなたは思う「どうして? どうして? あいつと自分の間の差って???」
憎いですか? 妬ましいですか? それとも嬉しい気持ちですか?
けれどあなたはどうしようもない
八日目の世界には皆が欲しがる幸福がある
八日目の世界には一際輝く希望がある
あと六日、ないて過ごすのもいいでしょう
あと六日、仲間を殺して回るのも……ありかもしれませんね
あと六日、その六日に幸せを見出すのもいいでしょう
あと六日、八日目を迎えようと必死になるのもいいでしょう
あなたがあなたを生きられる、それこそが一番大切なのです