■ダークファンタジーTRPGスレ 3■at CHARANETA2
■ダークファンタジーTRPGスレ 3■ - 暇つぶし2ch2:名無しになりきれ
09/10/30 23:06:00 O
落ちるの早いな

3:ミア ◆JJ6qDFyzCY
09/10/31 03:56:22 P
ゆったりと近づく【鍵】の少女。
底の無い瞳に引き寄せられるように、ふらりと足が前に


ぽすん。

「………ぁ」

額に走った小さな衝撃の原因は、視界を塞ぐ大きな背中が物語る。
堂々と宣戦布告する獣人の背後で、ミアは叱られた子供のようにびくりと身を震わせた。
彼は“ゲーティア”に関わる者なのだ。“ミア”は別人と割り切り、逃げ出したって構わないというのに―

「……どうして?」

冷えた体を、軽々と水晶の腕が攫っていった。
穏やかとすら聞こえるシモンの言葉は彼女の混乱に拍車をかける。
死んじゃったんでしょ? 私と関わったせいなんでしょ?
なぜそんな晴れやかな顔をしているの?
彼は利害でしか結ばれなかったはずの男。―それだけだったはずなのに。

「……どうして、皆…“人間”を選ぶの?」

流れ弾であろう巨大な炎の塊が飛び来る。盾となった水晶の体に吹き散らされる。
その方向に目を向ければ、剣を止めて口を開こうとするのはあの女性。
魔に堕ちてなお、魔を刈る業から離れない女性。

「月…綺麗じゃ無いの…?」

それが“門”としての魂が惹かれる気持ちでしか無いと、薄々は感じていても。

「どうして………わからない……。私……何も無いから」

やりたいこと好きなもの欲しいもの守りたい者―何も無いのだ。
世界を命がけで守った“ゲーティア”の目には鮮やかに色づいて見えたに違いない景色は、ミアには全て遠く灰色の存在だった。
七年かけて世界を見て、結局何の思いも手に入らなかった。

「どうして残してくれなかったの…アルテミシアぁっ!」

こうして叫んでいる時点で、決して真に空ではありえない証拠ではないか―そんな簡単なことすら今は気づけず。
ミアは背の杖をゆっくりと抜き取った。
震える唇に呟きを乗せる。

「―知りたい」

刹那、普段なら自殺行為にしかならない大量の術式がミアの体を覆う。
ミアは自分の魂を探り、“ゲーティア”の記憶を―抱いた思いを知ろうとしていた。
心が忘れていても、死が間を隔てても、魂に刻まれた情報なら接触できる。

―ズキン。頭頂から鉄針を撃ち込まれるような酷い痛みを感じる。
即興で編み上げた術式は高度かつ非効率。瞬く間に魔力の過剰使用が体を蝕む。
ミアは辺りに満ちる瘴気を人間の使える魔力に“変換”、不足を補った。
それは無意識に行使した、門としての能力だった。

そして少しずつ見えて来たのは―

『私だけでいい。狂気に呑まれるのは私だけで良いの。貴女はどうか真っ白でいて―ミア』

(……え?)

4:ミア ◆JJ6qDFyzCY
09/10/31 04:00:47 P
それは、アルテミシアが自らの命を失う寸前の心の呟き。
同時にいくつかの情報が流れ込んでくる。

地獄は、古の時代にアルテミシアが己の魂を切り開いて内に構築した疑似世界だということ。
非力な人間たちが繁栄できるよう、そこに魔の大軍勢を封じ込めたこと。
地獄を抱えた魂は隔離空間に封じられたこと。
アルテミシアの精神は“閂”として門に寄り添い、眠りについていたこと。
そうして安寧が訪れ―共通の敵を無くした人の世に内紛の火が生まれ、再び混迷が世界を覆ったこと。
―世界に絶望し、“この世ではないどこか”に救いを求めた人々の集合意識が地獄を求め始めたこと。

集合意識は、アルテミシアの魂を輪廻の道に引き戻した。
そして彼女の魂を受け継いだミアが生まれる。
集合意識は現世に降りて終焉の月を誘惑し、手足とした。
それを利用して貴女を捕縛し、魂の欠片を取り込んで“鍵”として完成した。

『閂だった私はミアの精神を上書きしてその肉体に召喚され、守護していた地獄の扉から隔離された。
可哀想なことをしたと思った―……それが、今は幸いね』

教団は末法の世を説き、アルテミシアに封印の解除を迫った。
首を横に振りつづける彼女に、教団は苦痛を与え続けた。
人を憎み、世界を恐れ、人間の世に執着心など持たぬよう。

『ギルのおかげで……踏みとどまれた……けれど、もう限界。
空に浮かぶ赤い月に誘われて、このままだと私は地獄を降臨させてしまう。
不思議。彼のいるこの世界を守りたい気持ちと、刷り込まれた世界への恐れが矛盾なく両立してしまうの。
好きと嫌いが同時に頭に浮かぶの。……いえ。
本当は世界が好きよ―なのに、歪んだ何かが思考の流れを捉えて離さない。
よくよく考えれば「好き」なのに、反射の叫びが「嫌い」になる。
きっとこれが狂気なのね。教団の思い通りになってしまったわ―
……ミア。貴女には、このような思いはさせない。
奴らに刻まれた恐怖ごと、私の思いは出来る限り空に帰しましょう。私の精神と共に。
貴女は何も持たない。……けど、きっと大丈夫。
貴女は真っ白だから―いくらでも色を塗れるわ。』

ミアは気づいた。
それがいつの間にか情報の再生ではなく、優しい呼びかけへと移り変わっていることに。

『……素敵な世界であるはずなの。頭では、わかっていたわ』

「……どうして」

『世界をお願いね―……』

*  *  *
 
―長い沈黙の後。

「……知りたい」

ミアは、もう一度小さく呟いた。

「まだ……見ていたい」

【鍵】を睨み、手を掲げる。
この場で戦う者たちは、己の体にわき出るように魔力が満ちていくのを感じるだろう。

その意識は既に空に浮かぶ赤い月を捉えていなかった。

5:ディーバダッタ ◆Boz/6.SDro
09/11/01 22:45:28 0
門との間にギルバートとシモン。
少女の姿をした鍵から見れば途方もない巨体が二つ並んでいる。
にも拘らず。
鍵は二人を見上げながらその目は完全に見下していた。
まるで地を這う虫けらを見るかのように。

>「そこから一歩でも進みたけりゃ、俺を倒してバラバラに引き裂いてからにしろってこった。
> 気をつけな、手負いの狼は喉首に噛み付いて死んでも離さねぇって言うぜ」
「負け犬が虚勢を張っても滑稽だな。
昔のお前なら口に出す前に攻撃を仕掛けていたはずだが?」
嘲笑うかのように応え、更に一歩踏み出したとき、ギルバートよりはやくシモンが動く。
ミアを背に乗せ両腕から緋色の槍を繰り出し、その先から閃光を放ったのだ。
その行動に鍵の形相が歪む。

「あの馬鹿の不手際のお陰で・・・!
合の刻は運命の糸の集約点。何が起こっても不思議ではないが・・・。」
ギリギリと歯軋りをしながら呟く。
思えば全てはシモンが基点となっていた。
魔法陣発動のために必要な尖塔を一つ崩された為に擬似的な地獄をヴィフティアに再現し切れていない。
お陰で魔の降りたものの中にも人間を保つものもいる。
挙句に聖処女の血を吸い完全復活を遂げるはずだったものが、それが出来ないでいる。
そして今、心臓を取り込んだままクリスタルと融合したシモンは己に牙を剥いたのだ。

「我が力のお零れを得て慢心したか!!」
咆哮と共に放たれた閃光を横薙ぎの拳で殴り飛ばす。
閃光はまるで飛沫のように飛び散り、周囲へと飛び散り、コクハやオルフェノーク、そして瓦礫に埋もれたヴェノキサスにも降り注ぐ。
咆哮は大気を震わせシモンとギルバートに衝撃波として襲い掛かる。

怒りの形相となった鍵は石畳を踏み砕きながら一歩一歩近づいていく。
ゆっくりとであるはずなのに、その接近を許したのは鍵の発する瘴気の為だろうか?
「お前の力など!我が力のほんの一部でしかない!
盾になる?黙って跪いておれ!!」
鍵の少女はシモンの前足を掴むと、無造作にねじ切った。
そのままシモンの背に乗るミアに視線を向ける。

「なんだこれは?お前はなぜ私を否定する!
私たちは合一し、世界が求めた地獄を生み出すために生まれたというのに!!
その証拠にお前には何も無いはずだ!
この世界に対する執着も!希望も!」
ここに来て始めて能動的に己を拒否し、その力を振るうミアに鍵の少女が怒声を浴びせる。


6:ハスタ ◇BsVisfL7IQ
09/11/01 22:45:47 0
>「お待たせしました。そしてご助勢感謝いたします。」
「それ程待っちゃいないけどな。さすがは聖騎士腕がいい。」

で、どうやって退散願おうか・・・と言うより早くその騎士が切りかかってやがる。
その剣先には・・・・・・
「ちっ!」

快音。
ルキフェルが避けたフィオナの剣はその軌道を途中で白い槍に妨げられていた。
それによって少年の首は飛ばずに済んでいる。

「つくづく外道な連中だな・・・!!ムカつく奴を思い出させてくれた礼だ、縊り殺してやる」
フィオナの剣を遮っていた槍の他、更に三本の槍が暴徒との間を遮るように地に突き立っている。
ルキフェルの哄笑をバックに槍を振り回して暴徒の一人が突っ込んでくる、が

「素人が勝てる訳ないだろが。数に物を言わせれば勝てるとでも?」
地に立つ槍の一本を根元から蹴りつける、両端に刃を持った槍はぐるりと旋回すると
突っ込んできた暴徒の無防備な首筋にその刃を突き立てた。
その隙にホルダーから3枚の符を取り出し、気を入れてゆく。

「三元鎮守!」
放った符は眼前で三角形の頂点となり、互いを青光で結び盾となる。
先ほど剣を止める為に槍は一本だけ遠い地点に投げてしまったが、三本もあれば十分。
「そこの聖騎士!アンタじゃ暴徒相手に殺すのは抵抗があるだろうからオレが殺るぞ?」

槍を手に持って突き、あるいは蹴って宙を舞わせ、薙ぐ。
合わせて六の刃を持つ三本の槍を同時に操り、符術の盾を以って
オレは暴徒の群れを押し返し始めた。

7:レクスト ◆N/wTSkX0q6
09/11/02 10:02:56 0
闇の帳をたゆたっていた。レクストはどちらが天でどちらが地かも把握できす、ただ棒を飲んだように直立不動で浮遊する。
間断なく行使されているフィオナの治癒術式によって肉体こそ生を繋いではいるものの、魔剣の呪力は確実にレクストの命まで届いていた。

(こりゃ本格的にヤベぇかもな……意識ははっきりしてんのに目覚める気配が全くねぇ)

まるで、抜け落ちた魂のように。レクストは一寸先すら光なき空間で凝然と立ち尽くしていた。
小さな箱にでも閉じ込められた心持ちである。身体は動かず、外を見ることすら叶わない。

『……よう、《俺》。調子はどうだ?』

不意に呼びかける声が聞こえた。ぎょっとしてそちらに視線を這わす、反響するその声色は―紛れもなく、自分。
目の前に煙の如く出現したのは、やはり自分だった。但し、従士服は着ていないし、背丈も低い。年のころは12歳程だろうか。
―帝都に行く前の、自分。母親を喪う前の、自分。

「見りゃ分かんだろ?―死に掛けだ」
『っは、だろうな。情けねぇ』

自嘲するように、レクストとレクストは互いに互いを笑った。ひとしきり嘲笑して、レクストはレクストに言った。

「昔の俺とご対面か。走馬灯みたいなモンだとするなら……俺もう完璧に死んでね?臨終じゃね?」
『俺にしちゃわりかし的を得た指摘だな。《俺》の生命力はもう殆ど残ってない。文字通りの死に体だな』

魔剣の呪いは生命を直に蝕むものだったらしく、こればかりは如何な治癒術式とて防げるものではない。
死にたくなかったはずなのに、やらねばならないことが山積みなのに、呪いがそうさせるのか、レクストの内心に抗いは生まれない。

「しっかし、今際の際に出てくるしちゃ芸のない選択だぜ。どうせなら死んだ母さんとかが出てくるべきだろ。迎えにな!」
『死んだ人間に会えるわけねぇだろ?あくまで俺は《俺》の深層意識―まぁ、マジ死にするまでの暇潰し兼走馬灯だな!』

えらく調子っぱずれに、幼いレクストは言った。その口調は七年後と何も変わらない。変わらないように七年間、努力してきた。
楽天的な悦楽主義者というレクストの属性は、この暗澹の時代において自分を鼓舞するための唯一解だった。

「七年前か……昔は良かったなぁ、何の憂いも苦しみもなくて、ただ笑うだけで生きていられた」
『七年後の《俺》はそう思うだろ?でもな、七年前の俺も"昔は良かった"って思ってるんだぜ。十歳越えた辺りから家業に引っ張り出されたしな』

「あれ?なにそれ右肩下がりっぱなしじゃん俺の人生!」
『別に歳重ねて悪いことばっかってわけでもないだろ?身体はでかくなったし力も強くなった。何より、やりたいことだって叶えたろ』

庶民を護る、従士。ヴァフティアを飛び出してから七年、それだけを目標に駆け抜けてきた。
レクストが言い、レクストが答える。それは自問自答であり、忘れていたことへの再確認。

『悪かろうが辛かろうが今現在の自分を全否定すんな。今だから選べるカードだってあるはずだぜ?』

勿論このまま死んじまうこともカードのうちだ、と幼きレクストはそう付け加えた。全てを諦め、楽になること。
レクストを覆うように蝕む魔剣の呪いに身を委ねれば、それは簡単に達成されるだろう。精神まで蝕まれていないのは、むしろ暁光だった。
否、抗うように差し込む光は、フィオナの治癒術式の成果だろうか―

「決まってる。俺が道を選ぶときにはな、必ず他の選択肢は潰しておくんだ。後戻りできない、後戻り『しない』ようにな!」

光によって呪いの勢いが若干弱まる。凝り固まるように拘束する呪いの靄をほぼ気合で振りぬき、レクストは背中に手を回す。
そこにあるのは間違いなくバイアネット。レクストが従士である証。残しておいた唯一の選択肢。

「『庶民を護る』―七年前から俺が見てるのは、この道だけだ。そこにぶれも迷いもねぇ―ッ!!」

抜き放ったバイアネットをそのまま砲身展開し、見果てぬ闇の帳へ向けて、確実に一回、引き金を引いた。
鋼の咆哮は極彩色の魔力光を伴なって顕現し、黒の靄を切り裂くように矢の如く飛んでいく。
光が描いたその軌跡を起点にして、レクストを閉じ込めていた昏き空間が崩壊していく。同時に、身体に活力が戻り始めた。

『わかってんじゃねぇか―なら行こうぜ、俺達の在るべき大地へ!!』
崩壊した空間のひび割れから眩い光が噴出し、レクストを包んでいく。光の帳が彼に吸い込まれるようにして、収まったとき。
レクスト=リフレクティアは、自分の身体に帰還した。

8:レクスト ◆N/wTSkX0q6
09/11/02 11:17:11 0
目が覚めたらそこは戦場だった。跳ねるように起き上がったレクストに、周囲の市民達が一斉に声を挙げた。

「おお、目が覚めたか!」
「お?お?なんだこれ、どういう状況?」

目を白黒させながらレクストは辺りを見回す。剣を振るったばかりのフィオナと、なにやら巨大な十字架を掲げた少年。
二人が対峙する先に立つのは、痩身長躯の眼鏡男。その衣服にはやはり『月』の紋章があった。

(新手―!!しかもただの教団員じゃねえな)

市民が掻い摘んで現在の状況を説明する。レクストが魔剣で刺された傷を、供物の少女の血で癒したこと。
十字架の少年が空から降ってきたこと。対峙する眼鏡の男が守備隊を一瞬で屠り、我々の前に立ちはだかったこと。
と、箒に括られているはずの元黒衣が自由になっていることに気付いた。

「おいおいありがたいぜ元黒衣。全部終わったら一杯奢らせろよ―それでチャラにしようぜ」
「ふ、それまで互いに生きていたらな……無論、私は生き残る所存だが」
「言うじゃねぇか。なら俺の生存は俺に任せろ。―必ず奢りに行ってやるよ、っと!」

勢いをつけて跳ね起きると、身体の各所を回し、伸ばして挙動を確認。澱みはない。問題もない。
いざ参戦しようと対峙する連中のほうへ視線を向けると、十字架使いが十字架と符術を用いて暴徒と化した市民を屠っていた。

「待て、殺すなよ!そいつらは『まだ』人間なんだ、混乱さえ解けばやり直せる!!」

もちろん、十字架使いを非難するいわれはなにもない。そうしなければ彼が殺される。正当防衛だ。
それでも、だからこそ、レクストは駆け、彼等の間に割って入るようにして暴徒達を押さえ込んだ。

槍や剣が四肢に突き刺さるが、流血もそこそこに高速で傷が塞がり始める。どうやらフィオナの治癒術は呪いによって停滞していただけで、
その効力自体は今もレクストの身体に内在しているらしい。つまりは、幾回分もの治癒術式を身体中に溜め込んでいる状態なのだった。

「……つっても、流石に痛むぜこりゃあ……でもよ……死ぬよかマシで、死なせるよかずっとマシだ」

魔剣にさえ気をつければそうそう死なない身体である。少なくとも注ぎ込まれた治癒術以上のダメージを受けなければ。
だからこそ、暴徒に対する交渉においては最適な身体だ。無傷で無殺を貫けるのだから。

「俺はレクスト=リフレクティア。庶民を護る従士様だ。十字架、こいつらは俺に任せろ。あの眼鏡野朗に専念してくれ」

刃をシースに納めたままのバイアネットを振りぬいて、壁を作るように打ち下ろす。

「騎士の姉ちゃん、待たせたな。おかげ助かったし、今からもっと助かる」

言って、レクストは踏み出した。傷をものともしない気迫に、暴徒達が総じて一歩退がる。

(出来ればこいつら押さえ込んで、さっさと揺り篭通りに行きてぇけど……そう簡単に通してくれねぇか)
フィオナ達が対峙する眼鏡の幹部を見遣る。その身から溢れるのは魔力というより瘴気。僧侶と同じ、異能の眷属。

(ありゃ幹部クラス、だよな……くそ、こんなとこでこんな奴、最悪な組み合わせだ)
目を背けるようにして暴徒達を見据える。何れにせよ、ここを押さえたらあちらにも加勢が必要だろう。

「さて、俺もそんなに時間があるわけじゃあない。手短にはじめようぜ―話し合いをな!」
うろたえる暴徒達に、レクストはつとめて尊大にそう言い放った。


【レクスト復帰。ハスタと暴徒の間に割り込み暴徒の説得を申し出る】
【フィオナのかけまくった治癒術式が呪いで止められてた分身体に溜まってるので、素の回復力が上昇している状態】

9:ルキフェル ◆7zZan2bB7s
09/11/03 03:02:42 0
>>6
フィオナの眼前にルキフェルが音もなく現れる。
倒れた暴徒の剣を奪いその首元を狙うもそれは阻まれた。
「では、さようなら。おや…邪魔が入りましたか。」

>「つくづく外道な連中だな・・・!!ムカつく奴を思い出させてくれた礼だ、縊り殺してやる」

1人の戦士が現れ暴徒達へ向っていく。
必死の形相で喰らい付く暴徒を難なく撃破するその姿に
満足そうに微笑む。
「それでいいのです。生き残る為には他者を斬り捨てる。
それが人間というもの。いや、生きる者全ての理ですからねぇ。
貴方は正しい。そして、用済みのゴミは処分します。」
切り裂かれた暴徒の首が吹き飛ぶ。
ルキフェルの右腕が鞭のようにしなり、そして肉片を空へ巻き上げる。
何が起こったのかは目視する事は出来ないが。

「「た、助けてくれ!お、俺は…死にたくねぇ!!」」
暴徒の中で正気に目覚めた一部の者達が懇願するように尻餅を付き叫ぶ。
レクストの言葉が彼らの正気を取り戻させたのかもしれない。
ルキフェルは落胆したような素振りを見せ、男の背後へ回り込む。

「貴方にはガッカリしました。しかし、最後のチャンスをあげましょう。」
男の胸を手で突き破り禍々しい”闇”を植え込む。
男は首を掻き毟りながら血反吐を吐き、そして目を真っ赤に染めた。
「ウギャァァァァァァァァ」
歓喜の声と共に暴徒の体を突き破り蝿のような姿をした魔物へと変貌した。

「少しばかり、私の力を分け与えました。まぁ、”月の幹部”としての
力の範疇は超えてしまいましたがね。」
魔物をハスタへ差し向けると今度はレクストという名前の戦士を見る。

「なるほど…傷が回復していく。これは面白い。
しかし、どれだけ耐えられるか。」

周囲に砂埃を撒き散らし、レクストの元へ瞬時に迫る。
難なくレクストの真横で回り込むと右手を振り上げ手刀を
繰り出す。
鎧を通り越し肉を捲り上げるようなかつてない威力の連撃が
レクストを襲う。

「あぁ、貴方もどうです?お仲間に入られますか?」

レクストを攻撃しているとはいえ、その目はフィオナをも
捉えて放さないでいる。




10:オルフェーノク ◆O6C0C9pKcx1S
09/11/03 17:39:21 0
「戯れが過ぎたか…」
コクハの休戦の誘いに返答することなく、オルフェーノクはその歩を進める
その向かう先は、正しく人外たちの戦闘の真っただ中であった
他には目もくれず、真っ直ぐにゆっくりと歩いて行く

「我は、幾星霜もの年月を生き永らえてきた
 本来の肉体は朽ち果て、記憶までも虚無の彼方に失せた
 魂のみの虚ろな存在として、動くことも考えることも出来ず、ただ生き永らえてきた
 古代の民より与えられたこの傀儡を得て、動く体と考える脳を手に入れた
 我は今問う…
 我が何者で、何のために生まれてきた存在なのかを…」
放たれた閃光がオルフェーノクにも直撃するが、それを意に介する様子はない
尚も歩を進め、赤い月を眼前に捉えると両腕を広げて見上げた
白銀のボディには、赤い月とその輝きが鮮やかに美しく映し出されている
すると、赤い蛍のようなマナがオルフェーノクの全身から湧き上がり始めた

「あれが彼の赤い月…
 かつて、我に傀儡の体を与えた魔法文明の民が予言した終焉…
 その力、今こそ我が悲願のために!」
その場に跪くと、鎧の胸部が突如展開を始めた
頭部は後ろに折れ、胸部が完全に開き切ると内部の魔法機械システムが露わになった
その中央には、一際明るく輝く巨大な魔石が秘められていた
魔石は赤い月に共鳴するように、その輝きを青から赤へと変えていった


11:コクハ ◆SmH1iQ.5b2
09/11/03 19:03:48 0
>>10
戯れか・・・
肩をすくめ、巨大なロボットが歩いていく先を見つめた。
10代の位の全裸の少女が少女を抱えている黒装束の男に向かって何かをつぶやいている。
何を言っているかはよく分からないが、「我が力のお零れを得て慢心したか」という言葉だけははっきりと聞こえてきた。
それと同時に無数の光の弾がこちらや巨大なロボットに向かってくる。
巨大なロボットは相当ぶ厚い装甲でもあるのかびくともしないが、こちらはそうではない。
羽を起用に動かし、右に左に回避すると、巨大なロボットが突然歩みをとめた。
見ると、胴体の部分が二つに割れ、頭が後方に倒れている。
内部には機械が詰め込まれており、その隙間から青い光が見えた。
あれが動力部らしい。
いったい、何をするつもりなのか?
ロボットの意図することが分からず首を傾げるしかなかった。


12:名無しになりきれ
09/11/03 20:50:50 0
ロボットとか言っちゃダメだろおい……

13:コクハ ◆SmH1iQ.5b2
09/11/03 21:54:49 0
>>11
訂正
× ロボット
○ 鎧

14:名無しになりきれ
09/11/03 22:26:53 0
巨大なロボットwww

15:名無しになりきれ
09/11/04 21:46:44 0
保守

16:名無しになりきれ
09/11/05 19:27:10 0
保守

17:フィオナ ◆tPyzcD89bA
09/11/06 03:39:46 0
駆ける足は軽く踏み込みは重く。
暴徒達を横目にルキフェルとの間合いを一瞬で殺し、今まで幾度と振るってきた剣は会心の一振りをもって迫る。
しかし刃圏へと捉えた男は気負う様子も無く眼鏡を拭いている。

「お姉ちゃん!!」
響く悲鳴。ルキフェルの傍らにはフィオナを姉と慕う孤児の男の子。
「イル君っ!?」
ぞくり、とフィオナの背筋が凍る。描く剣筋では諸共両断するのは間違いない。
体を捻り、腕を突っ張らせ何とか逸らそうとするが勢いのついた剣は無情にもイルへと吸い込まれていく。

―ガキンッ
後僅かという所で投げ放たれた白い槍に剣が弾かれ、その軌道は無人の地面へと叩き込まれ甲高い音を響かせた。
(助かった……)
安堵するのもそこそこに再び間合いを開けルキフェルを睨む。
幻術の類かと疑ったが魔術を使った気配は無かった。
どういう手段を使ったのか不明だが捕らえられているのは間違いなく本物のイルなのだろう。

『どうしましたか?…あぁ、これは私の玩具です。
気になさらず。』
嘲る様なルキフェルの挑発。それに無言で返すとフィオナは盾を捨てる。
左足を前に出しスタンスを大きくとった半身になると、切っ先をルキフェルへと向け、剣を顔の横まで持ち上げる。
相手の行動の後の先を取る"オクス"と呼ばれる騎士剣技の型の一つ。
僅かでも隙を見せれば即座に攻撃に移るという意思表示。

しかし膠着した状況は暴徒達の行動を促した。
一時は希望を見出しかに思えた市民達もこちらが手詰まりと見るや、包囲の輪を狭め武器を手に襲い掛かる。
「それ以上動けば貴方達から―」
『素人が勝てる訳ないだろが。数に物を言わせれば勝てるとでも?』
フィオナの静止を遮る様にハスタの声が被せられると、槍と符術を駆使して暴徒達を薙ぎ倒していく。

『そこの聖騎士!アンタじゃ暴徒相手に殺すのは抵抗があるだろうからオレが殺るぞ?』
正当防衛とはいえ殺す気満々である。
「そ、そこを昏倒くらいでなんとかっ!」
ルキフェルへの狙いは外さずにフィオナも無茶な注文を返す。
その声が届いたのかは判らないが灰色の外套を翻しハスタは暴徒達を押し返し始めた。

18:フィオナ ◆tPyzcD89bA
09/11/06 03:44:14 0
ハスタが三槍六刃の武器と符術の青い光を閃かせ暴徒を打ち倒す。
何名か死者は出ているようだがそれでも対峙した者全てを屠っているというわけでは無さそうだ。

『待て、殺すなよ!そいつらは『まだ』人間なんだ、混乱さえ解けばやり直せる!!』
力強い声と共にレクストが戦線へと復帰。
幾度となく注いだ"治癒"の効果かその身に刃を突き立てられても即座に傷を復元しているようだ。
これも聖女の血のなせる奇跡なのか思わぬ功名である。

暴徒の説得をレクストへ任せたハスタがこちらに加わり数の上では二対一だが相手は人質を捕っている。
イルをなんとか救出しないことには攻勢へ転じることは出来ない。

「「た、助けてくれ!お、俺は…死にたくねぇ!!」」
レクストの交渉が功を奏したのか一人また一人とルキフェルへと縋る。

『貴方にはガッカリしました。しかし、最後のチャンスをあげましょう。』
心底落胆したかのように呟くと貫き手で懇願する男の胸を突き徹すルキフェル。
直後、男は絶望とも歓喜ともとれる絶叫を上げ巨大な蝿の魔物へと変貌しハスタへと襲い掛かった。

次いで標的をレクストへと定めたルキフェルは瞬時に移動を終えると手刀を打ち下ろす。
攻撃の手は苛烈さを増す一方だ。
右手はレクストを打ち据え、左手はイルを捕らえている。

(チャンスは今しかないっ)
此方へ視線を配っているのは判っているがこのまま隙を伺っていても劣勢になるばかりだ。
「主よっ!不浄を裁く光を我が剣に!」
"聖剣"の光を宿した刃を構え猛然とルキフェルへと突撃するフィオナ。
ルキフェルはイルを此方へと差し出してくる。

「それを―」
寸前で身を縮め続く一歩で体を捻り剣を振り上げる。

「――待ってましたっ!」
イルごと突き出された腕をかわし、振り上げた剣から片手を離しルキフェルの手首を掴んだ。
そのまま見た目から想像できない豪腕で引き寄せると剣の柄をルキフェルへと叩きつける。
"聖剣"の奇跡はフェイク。あくまで狙いはイルの奪還である。

体勢を崩したルキフェルからイルを手繰り寄せ胸に?き抱くフィオナ。
ルキフェルへと剣を突き付け警戒しつつ、自警団達へとイルを預けるとレクストへと駆け寄る。
レクストを背にルキフェルと対峙しながら小声で話しかける。

「レクストさん此処で戦っても戦況は覆せません。
魔を前に退くのは業腹ですけど一旦退いて体勢を立て直さないと、最悪全員魔物にされます。
私達三人であの男"ルキフェル"を引き付けて、その間に何処か拠点になりそうな所に他の人たちを逃がしましょう。
神殿へ行ければ良いのですけど此処からだと遠すぎます。何処か良い場所ありませんか?」

19:コクハ ◇SmH1iQ.5b2の代理投稿
09/11/06 23:35:32 0
巨大な鎧が動きを停止してからしばし経った。
鎧の中央にあるクリスタルから青色の成分が抜けていき、
それと言われ変わるように赤色の成分が増えていく。
これを見てるのも悪くない。
周りは戦闘中なのを気にもせず、地面に座り込んだ。
羽が地面に触れる音がする。
R:0,G:0,B:255
R:1,G:0,B:254
R:2,G:0,B:253
R:3,G:0,B:252

   :
R:128,G:0,B:128
赤の成分と青の成分がつりあったところで立ち上がった。
どうも退屈だ。
クリスタルでも壊して、スクラップにでもしてしまおうかと思ったが、
動けない相手を攻撃するのも趣が悪い。
地面をトンと蹴り、鍵と門がいる方向とは正反対の方角へ飛んで行った。


空に相変わらず赤い目玉が浮かんでいる。
前見たときと一緒だ。
外気が気持ちいい。
このまま飛んでいたいと思ったが、声が邪魔をした。
>「レクストさん此処で戦っても戦況は覆せません。
>魔を前に退くのは業腹ですけど一旦退いて体勢を立て直さないと、最悪全員魔物にされます。
>私達三人であの男"ルキフェル"を引き付けて、その間に何処か拠点になりそうな所に他の人たちを逃がしましょう。
>神殿へ行ければ良いのですけど此処からだと遠すぎます。何処か良い場所ありませんか?」
声がした方を見ると、無数の暴徒達と3人の人間が対峙していた。
3人の人間のうち一人は聖騎士で、子供をその手に抱えている。
残りは槍をもった人間と銃剣を持った人間がいた。
対する暴徒達言うと混乱しているものとおびえているものに分かれていた。
おびえているものの戦闘には魔物がいて、その近くには男がいる。
その男は銃剣を持った人間に接近し、手刀を繰り出している。
数の上では3人の人間のほうが圧倒的に不利だ。

戦いは対等なものこそ美しい。
今目の前で繰り広げられている光景は誠に持って趣にかけている。

「助太刀いたす!」
手に持っている剣に光を集め、最前線にいる魔物に向かって空中から斬りかかった。

20:コクハ ◆b9hCaqglWQ
09/11/07 01:45:46 0
だが、ふと思った。
私は魔物だ。
魔物が魔物を切るというのも裏切っているみたいで気分が悪い。
それに聖騎士たちの人数は3人。
暴徒達は使い物にならないと決まっているから、事実上一人で相手にしてることになる。
暴徒が返信した魔物もしょせんは雑魚だ。
おそらく一発で沈む。
だとすると不利なのはあの男のほうだ。

とはいえ、行動は変えられない。

「狙う対象を間違えた。魔物の君よ。死にたくなければよけろ!」
あらん限りの声を出し、対象がよけることを祈るほかなかった。


21:名無しになりきれ
09/11/07 01:57:44 0
トリップが違う。騙りですな

22:コクハ ◆b9hCaqglWQ
09/11/07 01:58:50 0
追記:トリップをばらしてしまったので変えます。


23:名無しになりきれ
09/11/07 02:04:12 O
都合よく規制が解除されたんだな

24:名無しになりきれ
09/11/07 02:11:35 0
お前とりあえず避難所来い。なな板のほうでいいから

25:ハスタ ◆fmAKADpWIqWy
09/11/07 16:55:16 0
>8>9>17>18
>『待て、殺すなよ!そいつらは『まだ』人間なんだ、混乱さえ解けばやり直せる!!』
>「そ、そこを昏倒くらいでなんとかっ!」
群がる群衆の足元を薙ぎ、浮いた胴体を防御の符と蹴り足で押し退ける。
躊躇なく殺意を持って襲い掛かってくる相手には相応に刃を見舞う。
そうして暴徒達を押し返す最中に、咎めるような二人分の声。

つくづく甘すぎる、そう言い返そうとした所に更に復活した男の方が告げる。
>「俺はレクスト=リフレクティア。庶民を護る従士様だ。十字架、こいつらは俺に任せろ。あの眼鏡野朗に専念してくれ」
>「少しばかり、私の力を分け与えました。まぁ、”月の幹部”としての力の範疇は超えてしまいましたがね。」

そして、ソレに答えるより先に眼前の暴徒の一人が凄まじい変貌を遂げる。
眼前に立ち塞がった<従士様>の脇をすり抜けるようにして走り、蝿の魔物が体勢を整えるより早く
暴徒も聖騎士もいない方向へ切り込んで追い立てる。
「さすがにそこの親玉と殺りあう余裕もそんなになさそうだ・・・し、そっちの暴徒も任せるが
 油断するなよ?己の生命の前で他人なんて塵ほども障害にされない。」

背後でルキフェルと呼ばれた男や聖騎士が戦う物音が聞こえるが、こっちも油断はできない。
元が所詮一般人であるとしても、魔物と化した事によるパワーは人間を容易く凌駕する。
防御の符は三枚共がその力の前に打ち砕かれ、宙を飛ぶ翅が鬱陶しい。

三本の槍のうち二つを十字に組み投擲、手裏剣と化した槍がホバリングする蝿に向けて飛翔・・・・・・が、あっさりと回避。
不気味な牙をガシャガシャと鳴らしてこちらを嘲笑うように一直線に飛来。
残る槍を水平に保持して牙を辛うじて防ぐ・・・・・・が、じわじわと石畳にめり込んだ足が押されてゆく。
「やっぱり単純な力じゃ、敵わないよな・・・・・・でもな。」

ふ、と若干力を抜いて右手側に槍を引いて逸らす。当然前進せんとしていた蝿の体は無様に自分の力で転がる羽目に。
そこに持った槍の先端を振りぬくと、それに追従するように4本の白い刃が蝿の体に突き刺さる。
追撃に残った槍を、走りこんで蝿の頭部目掛けて突き刺す。
合わせて5箇所の傷から緑色の体液が吹き出し、街路に悪臭を撒き散らす。
「単純に自分の獲物を投げ放す訳が無い事ぐらい、その少ない頭じゃ分からなかったか。」

魔力によってリンクされた槍の刃が空中で手裏剣の状態から分解し、手元の槍の動きに引かれて突き刺さったという訳だ。
蝿の死骸から槍を引き抜き、結合して三本の槍に戻すと背を向けて歩く。
向かう先では黒い翼の魔物?が急降下していく光景。走り出そうとした瞬間後ろから圧力。
「まだ生きて・・・?!」

咄嗟に二本の槍を斜に地に突き立てて、死に掛けの蝿の突撃を地面で受け止めさせ
足元に潜り込むようにして下から槍で突き刺す・・・そして、全力で前方へ力を込める!
「ふっ・・・き飛べぇぇぇぇぇ!!!」
突撃のベクトルを逸らされた瀕死の魔物は、発条のような勢いで黒翼の魔物へとすっとんで行く。


【蝿の魔物を瀕死にすると、最後の体当たりを受け流してコクハ&ルキフェル目掛けてぶっ飛ばす】

26:アラバス ◆hBr/9.Ve8Q
09/11/07 20:58:19 0
名前:アラバス・バラバス
年齢:?歳(外見年齢80代後半)
性別:男
種族:人間
体型:ヨボヨボのガリガリ→筋骨隆々
服装:杖を突いて歩き、上半身裸、下半身にズボンのみ
能力:外見に似合わず、動きが俊敏で身体能力に優れ、暗器の扱いも得意
    物理攻撃や魔法すら耐える鋼の肉体を持つ巨漢へと変身する
所持品:杖
簡易説明:一見すると、杖を突いて歩くヨボヨボガリガリの乞食爺さんにしか見えない
       だが、その正体は裏世界では名の知れた殺し屋で、本名や経歴は一切不明
       アラバス・バラバスも適当に名乗っているだけの偽名に過ぎない

27:レクスト ◆N/wTSkX0q6
09/11/08 02:43:51 0
困惑する暴徒達へ説得を開始する。
レクストは両腕を広げた。右手には鞘に納めたままのバイアネットを、左手には何も持たずに指の先まで力を込める。
身振り手振りを大げさに挙動するのは相手に自分の言葉を強く印象付ける、交渉術の基礎にして奥義だ。

「まず聞かせてくれ。アンタ達はなんで俺達を襲う?―それはあの眼鏡の『月』と関係あるのか?」
「……君を殺せば、家族の安全を保証するといわれた。いつ魔物に襲われるかも解らないこの街で家族を護るには、それしかなかったんだ」

レクストの問いに、彼に魔剣を突き立てた市民が重々しく口を開いた。
助かったとはいえ、レクストを殺そうとした男である。罪の意識はあるのか、目を合わせようとしない。

男は訥々と語り始めた。あの眼鏡の男がヴァフティアで発生した魔物を一瞬で屠り去ったこと。
レクスト達が魔の眷属だと教えられ、彼等を殺せば家族に危険が及ばないようにしてくれると、武器を与えられたこと。

「本当にすまないと思ってる!でも……俺達はそれ以外に家族を魔から護る方法を知らない!だから―」

暴徒は頬に涙の川をつくりながら陳謝する。そうして、再び武器をレクストに向けて構えた。
聖人の血によって破壊された魔剣はもうないが、新たに取り出した普通の剣の切っ先はレクストの喉元を捉えている。

「赦してくれ―!」
悲痛な叫びは突進を伴なってレクストへと肉迫した。対するレクストは、躱す素振りさえみせず、あろうことか一歩踏み出した。
肉を貫き骨を穿つ鈍い音。地面には赤の雫が雨のように落ちていく。暴徒の突き出した長剣は、その先端をレクストの肩口へと埋めていた。

「な、何を……!?」

がしり、と自らに突き刺さった刃の根元を握り、さらに一歩。刀身はさらにレクストの体内を進み、ついには彼の肩を貫通して背面へ飛び出した。
血に濡れた剣の先は、もう動かない。傷口から溢れた血液が雫となって刃を伝い暴徒の手元から地面へ血溜まりを作る。

「……アンタ達は、よ。その言葉を信じて、今こうして俺を殺してるんだよな。
 ここで俺や俺の仲間に反撃を受けて死んじまったとしても、家族だけは護るつもりで殺しにきたんだよな。オーケー、それなら話は簡単だ」

レクストは近くなった彼我の距離を埋めるように、両手を前に出し、暴徒の両肩をがっちりと掴んで、そして言った。

「―今から俺を信じろ。アンタの家族は、俺が絶対護るから……あの眼鏡野朗じゃない、俺を信じてくれ!」

面食らったのは暴徒のほうだった。一体この青年は何を言っているのか。自分を傷つけた、それも殺しかけた相手に信じろなどと。
「そ、そんなこと……できるわけがないだろう!やっと掴んだ希望なんだぞ!!そう簡単に諦められるわけが―」
「うるせぇ!!」

遮るようにレクストは怒号を挙げた。呼応するようにこぽ、と血塊が口から吐き出されて吐瀉音を立てるが、彼は目を逸らさない。
血の垂れた口端をぐっと吊り上げ、無理やりに強く笑顔を作って、搾り出すように言う。

「……ま、も、ら、せ、ろ―!!」
「な、な―?」
「アンタ等あいつを信じれたんだろ!?家族を護るためならなんだってやる覚悟で、あの眼鏡野朗を信じれたんだろ!
 なら何故俺を信じない!!奴と俺の違いはなんだ?家族の為なら特攻して死んでもいいってのか?ふざけんじゃねぇ。ふざけんじゃねぇぞ……!」

握り締めた剣がミシミシと不吉な音を立て始める。やがてそれは亀裂という現象として刀身に現れ、

「俺が両方護ってやる!アンタ達も、その家族も!だから、俺がアンタを護るのを、―邪魔するな!!」

鋼鉄で鍛造されているはずの長剣が、名伏しがたき音を立てて砕け散った。
ふらりと倒れそうになるのを気力で踏み止め、レクストは身体に埋まった剣の欠片を引き抜き、それもまた、手の中で握り潰す。
拉げた金属片と成り果てたそれが地面に乾いた音を立てる頃には、彼の肩口にぼっかりと空いた刺創は既に治癒した肉で塞がっていた。

「あ……ああ…………!!」

暴徒は柄だけとなった長剣を取り落とし、さながら前後不覚の様相を呈しながら、その場にへたり込んだ。
涙を止め処なく溢れさせながら、仁王立ちのレクストを見上げ、震える声で、呟いた。

「た、助けてくれ……!お、俺は―死にたくねぇ。家族と一緒に、元の家に、帰りたい……!」

28:レクスト ◆N/wTSkX0q6
09/11/08 03:24:47 0
暴徒が、初めて自分の命を渇望した。それは同時に戦意の喪失であり、レクストへの懇願でもあった。
一番槍を切った男が陥落したことで最早暴徒達は暴徒でなくなり、烏合の衆は次々と剣や槍を手放していく。

「護ってくれ……こんなやり方じゃなく、誰も傷付かない方法があるなら、俺に君を信じさせてくれ……!」
「―任せろよ、この糞ったれた地獄絵図を、俺色に染め替えてやるぜ!」

そうしてレクストはへたり込んだままの男に手を差し伸べた。
男は躊躇しながらもその手を強く掴み、立ち上がるようにひっぱり挙げられる。

「頼ん―だ?」
男が何かを言いかけて、しかし言い切ることが出来なかった。自分の胸から黒い何かが生えていることに気付いたからだ。

「あ……?」
レクストは思考が停止していた。突然男の背後に『眼鏡野朗』が現れ、その手刀で男の胸を突き破ったのを見たからだ。

「貴方にはガッカリしました。しかし、最後のチャンスをあげましょう。」
冒涜的なまでに昏い声色が何かを呟き、"魔力ではない何か"を空いた胸の穴に注入していく。
男は絶望的なまでに赫い声色の悲鳴を挙げ、その姿を人外のものへと変貌させていく。

出来上がったのは、巨大な蠅だった。

「少しばかり、私の力を分け与えました。まぁ、”月の幹部”としての力の範疇は超えてしまいましたがね。」
レクストが何か思うより先に、灰色の風が脇を駆け抜ける。白の刃を握ったそれは蠅の魔物へと踏み込み、切り結び始めた。

「さすがにそこの親玉と殺りあう余裕もそんなになさそうだ・・・し、そっちの暴徒も任せるが
 油断するなよ?己の生命の前で他人なんて塵ほども障害にされない。」

護られたのだ。わかっている。そんなことは、等々承知だ。
だが。

「―てめえええええええええええええええええ!!!」

バイアネットではなかった。ただ純粋に握った拳が、目の前の外道を打ち倒せと吼える。
踏み込み脚も、引き絞る腕も、屈伸を力に変える関節各部も、赫怒と怨嗟を燃料に、付和雷同に頷いた。

だが、当たらない。感情のままに振りぬいた拳は、しかし敵を捉えない。
視界から消えるように動いた眼鏡の男はレクストの真横に回りこみ、その手刀を打ち下ろした。

「―がぁあああッ!!」
無手のはずの一撃は、魔導装甲を難なく切り裂き、レクストの背を穿った。抉り取られた肉体が、しかし間隙をおかず再生する。

「なるほど…傷が回復していく。これは面白い。しかし、どれだけ耐えられるか。」
一撃ごとに空間ごと削り取るような威力は、確実にレクストの余剰回復術式を奪い去っていく。

「あぁ、貴方もどうです?お仲間に入られますか?」
その言葉がレクストの琴線に触れた。護れるはずだった命、目の前で魔物に変えられた元暴徒。
記憶の中でそれが母親の姿と重なり、レクストのトサカが沸騰を始める。

「約束、したんだ……!必ず護るって……!!それなのにっ!てめえは!!」

怒りのあまり獲物を鞘から抜き放つことも忘れたレクストが力任せの攻勢に出ようと踏み込みかけたとき、
その前に飛び出してくる陰があった。レクストと眼鏡の男の間に立つように加勢するのはフィオナ。

「レクストさん此処で戦っても戦況は覆せません。
 魔を前に退くのは業腹ですけど一旦退いて体勢を立て直さないと、最悪全員魔物にされます。
 私達三人であの男"ルキフェル"を引き付けて、その間に何処か拠点になりそうな所に他の人たちを逃がしましょう。
 神殿へ行ければ良いのですけど此処からだと遠すぎます。何処か良い場所ありませんか?」

レクストの知らない間に人質の救出・確保を一人でやってのけた神殿騎士が、彼を背にしながら提言する。

29:レクスト ◆N/wTSkX0q6
09/11/08 04:48:19 0
(―!!……そうだ、熱くなってどうする。突っ込んでってどうにかなる敵じゃねぇ!)

戦闘のプロたる従士が情けない、と教導院の教官ならば叱咤しただろう。
あろうことか、仲間に身を挺して止められるまで彼我の実力差に気付かないとは。

(状況が悪すぎる……相応の準備をもって迎え撃つぐらいのつもりでいかねぇと)

「ああ、それなら……」

フィオナへ返答しかけて、思案する。どこへ匿おうか。
ここは東区の小広場。確かに神殿には遠すぎるし、近くに目立った建物もない。
ならば、魔物に対抗できる戦力のある場所へ避難させるのが最善だろう。この場所の近くでそれを満たしているのは―

「―北区の『揺り篭通り』!居住区のここなら祭に乗じた犯罪対策のために守備隊が増員されてたはずだ!」

レクストは背後を振り向き、まんじりともせず観戦していた元黒衣の姿を認めると、眼鏡の男に聴こえないくらいの声量で指示を出す。
「お前戦えるだろ?守備隊の連中とお前とで、揺り篭通りまでの血路を拓いてくれ!ここの連中を逃がす!」

「私に先陣を切らせるつもりか?」

「報酬は後で言い値をくれてやる。だから、頼むぜ……!」

返事を聞くより先に、巨大な羽音が空から響いた。どうやら上空から新たな魔物が降りてきている。
新手から目を離さないようにレクストは踵を返すとフィオナの隣に歩み出る。

「悪いな、俺としたことが柄にもなくトサカに来ちまってたみたいだ。もう大丈夫。大丈夫だとも―稼ぐぜ時間!」

踏み込みは一瞬。震脚は裂帛。踏み出すと同時にレクストはブーツに刻み込んである術式陣を発動させる。
術式は『噴射』。靴底の魔法陣は注がれた魔力を推進力に変換し、ブーストさせることで跳躍を超えた機動を可能にする。
彼がヴァフティアに来る際遭遇した賊の集団との戦いで使った移動術も、この『噴射』を利用したものだ。

踏み込んだ瞬間、彼の姿がその場の全員の視界から消え失せる。

誰もが彼を見失った刹那、風と石畳を割る音と共に眼鏡の男の傍にレクストが姿を現した。

石の地面に突き立てたバイアネットはブレーキ代わり。つんのめる勢いを利用して体勢を変え敵を捉える。
『噴射』によって得た推進力は容易にレクストを眼鏡の男の背後まで運び、さらに攻撃する隙まで用意してくれる。

「てめえが俺より速く動けるなら!小細工しまくってそれを上回ってやるぜ!!」

右足を鞭のようにしならせ、眼鏡の男の脇腹目がけて渾身の回し蹴りを叩き込む。
そして、それだけでは終わらない。男の腹のめり込んだ蹴り足を包むブーツの噴射術式にさらに火を入れる。

「俺流奥義、"ジェット蹴り"―ブっ飛べクソ野朗……!」

大人一人を軽々跳ばす噴射力が、蹴りの威力に追加され、眼鏡の男をそのまま吹っ飛ばすように圧して行く。
上空からの魔物は何故か眼鏡の男を斬りつけようとしているが、敵であることに違いない以上は考慮しない。

十字架使いが受け流した蠅型魔物の突進と交差するように、レクストは渾身の力で蹴り抜いた。


【行動:市民を『揺り篭通り』へ避難させるための時間稼ぎ。避難が完了次第自分達も撤退します】
【状況:靴に仕込んだ噴射術式でルキフェルの背後まで跳び、噴射の推進力を利用した蹴りで蠅とかち合うように蹴り飛ばす】

30:ルキフェル ◆7zZan2bB7s
09/11/08 11:39:33 O
>>18
玩具を片手にレクストを強襲するルキフェル。
その前に再びフィオナが現れ、聖剣を突き出した。
「主よっ!不浄を裁く光を我が剣に!」
フィオナの叫び声を嘲笑うように首を回すルキフェル。
「では、その剣でこの子を殺しますか?」
玩具である子供を前に差し出す。
しかし、フィオナはその子を切り裂く事はなかった。
>「それを―」
寸前で身を縮め続く一歩で体を捻り剣を振り上げる。
>「――待ってましたっ!」

ルキフェルの行動を読み、フィオナは見事にイルを救出した。
女性とは思えない剛の力でルキフェルの腹へ剣の柄を叩き付ける。
腹を押さえ悶絶するルキフェル。地面を転げ周り呻く様に声を漏らす。
―「ゥ・・・…ウフ…フフフ…フハハハハハハハ!!!!フゥ…」

その声はやがて笑い声に変わり、一瞬で地面から空中へ一回転し立ち上がる
ルキフェルがそこにいた。
「情が深くて、強い女か。嫌いじゃあ…ありませんねぇ。」
口元を歪ませながら自警団に守られたイルを見つめるルキフェル。
彼の興味はこの子供の生死などではなかった。
ただ、これからこの子がどう生きるか楽しみでならないのだ。
(親を目の前で殺され、孤児院に預けられ…そして今度は
孤児院の保母や仲間を殺され…てと。
見えるぞ…あの子の目に深い闇が。まだ芽でしかないが。
楽しみだ…とても。)

「貴方のような女は八つ裂きにしてあげたくなります。その甘美なる肉体を
切り刻んで差し上げましょう。」
口に滲む血の味を楽しみながらルキフェルは喉を鳴らした。


31:アラバス ◆hBr/9.Ve8Q
09/11/08 11:55:32 0
アラバス「ひぃっ…!
      お、お助けえぇっ!」
市民「爺さん、こっちだ!」

揺り篭通りの方面へと逃げて行く市民たちに、どこからともなく現れた杖の老人が合流した
怯えた表情と必死の形相で、フラフラとしながら走ってきたのだ
もっとも、走ると言ってもその速度は常人の歩く速度よりも遅く感じられる
一人の若い男が、その老人に肩を貸して一緒に走り出した

アラバス「す、すまんのぅ…」
市民「困った時はお互い様だ
    さあ、死にたくないなら早く!」
アラバス「………」

老人は一瞬、冷めたような表情と目でチラリとフィオナたちの方を見た
そして、ニヤリと笑うとそのまま男に連れられて揺り篭通りの方面へと消えて行った

32:ルキフェル ◆7zZan2bB7s
09/11/08 12:14:02 O
>>27
「どうです?貴方もお仲間に…」
ルキフェルの言葉に激昂したレクストが叫ぶ。
>「約束、したんだ……!必ず護るって……!!それなのにっ!てめえは!!」

その言葉にルキフェルは思わず笑みを浮かべてしまう。
愉快で堪らない、とでも言いたげにだ。
「守る…か。くだらない。あんな連中を守って何になりますか?
いいか、”文明的な人間”なんざ自分達が平穏でいる時だけの言い訳。
自分達の足元が脅かされればそんなものはすぐに”ポイ”と捨ててしまう。
奴らのいう”良識”や”善意”なんてものは所詮は脆いルールに過ぎない。
…だから、”お前”も。」

声色を変えてレクストの耳元で囁いた後、近付いてきたフィオナを見つめる。
「あぁ、失礼…少し言葉使いが汚かったですね。」

>「―北区の『揺り篭通り』!居住区のここなら祭に乗じた犯罪対策のために守備隊が増員されてたはずだ!」
なるほど、とルキフェルは2人が話していた内容を承知する。
彼らは一旦体勢を立て直すつもりのようだ。
>「悪いな、俺としたことが柄にもなくトサカに来ちまってたみたいだ。もう大丈夫。大丈夫だとも―稼ぐぜ時間!」



33:ルキフェル ◆7zZan2bB7s
09/11/08 12:15:34 O
「…!?こんな時に…」
ルキフェルの動きが止まる。
手は奮え、顔に血管が浮き出ている。目が赤く、いや黄金色に混じった不可解な色を
浮かべ息も荒くなっているようだ。
懐から薬を取り出し震える手でそれをガラス管の器具で腕元へ差し込もうとするが―

>「てめえが俺より速く動けるなら!小細工しまくってそれを上回ってやるぜ!!」
凄まじい速さでルキフェルの脇腹にレクストの蹴りがめり込む。
「…なっ…」
薬を地面へ叩き落され、空中へ吹き飛ぶルキフェル。
腹を押さえながら地面へ叩きつけられる。
背後から蝿の魔物がルキフェルに覆いかぶさるように降っている。
>>25ハスタが撃破した瀕死の魔物だ。
皮肉にもルキフェルが放った刺客が彼自身を襲う結果になってしまった。
魔物に押しつぶされたルキフェル。辺りを沈黙が包む。

「グギャァァァ!!」
沈黙から一転、叫び声を上げ、血飛沫を上げる魔物。
瀕死だったそれは絶命の声を上げると黒いミミズのような
塊となって地面へ染み込んでいく。
怪物の屍の中から現れたのはルキフェル。
目を真っ赤に染め、レクストを睨む。

「―いいでしょう。5分だけ相手をします。
その間に逃げれるのならば逃げなさい。
しかしまぁ…そこそこの性能です。
”陛下”にも素晴らしい報告が出来そうだ。」

ルキフェルが指を鳴らすと同時に周囲の石や
落ちた剣がふわりと浮かぶ。
浮かんだと同時に強烈な推進力を持ってそれが
レクスト目掛け飛んでいく。
眼前で幾つもの石がまるでダイナマイトのように爆発しながら破片をレクストへと飛ばしながら迫る。


34:名無しになりきれ
09/11/08 17:40:25 O
揺りかご通りでは魔となったリフィルがパパを犯しながら貪っていた!

35:シモン ◆71GpdeA2Rk
09/11/08 20:02:31 0
「……どうして、皆…“人間”を選ぶの?」
ミアがどこからともなく問いかける。
シモンは僅かに引き出した意識から、ミアのその言葉を受け止めた。
(俺は…確かにかつては人間である事すら捨てた男だ。だが…ここの連中に出会って気づいた。
人間の姿をしている以上、運命のようなもんだろう。俺は自然に人の温もりを求めていた。
だから…ミア。俺はこうしてお前らのためにオマケの命を使ってるんじゃないか…!)
そんな叫びも結局クリスタルの意識に飲まれ、最後まで口から言葉を紡ぐことはなかった。
ただ、ミアは、座っているクリスタルナイトの背中が、僅かに温かいような気がしたことだろう。

「我が力のお零れを得て慢心したか!!」
シモンの攻撃を鍵の少女が拳で弾く。それは赤い飛沫となってシモンはおろか周囲を巻き込んだ。
ブワッ
それの殆どを受け止めたのは…シモン―クリスタルナイトの背中から生えた水晶の翼だった。
「お前の力など!我が力のほんの一部でしかない! 盾になる?黙って跪いておれ!!」
クリスタルナイトの前足に少女の光輝く拳が直撃した。
「グオォォ…!!」
圧倒的な魔力の塊は、あっさりと彼の前足を粉砕してしまった。
続いてもう一撃。両の前足は破片となって周囲に飛び散り、ちょうど
跪くような格好になった。

「グゥゥ…」
飛び散った破片がシモンの肉体に刺さり、あちこちに傷を作っている。
「なんだこれは?お前はなぜ私を否定する!
私たちは合一し、世界が求めた地獄を生み出すために生まれたというのに!!
その証拠にお前には何も無いはずだ! この世界に対する執着も!希望も!」
再びの激しい攻撃。シモンはギルバートの善戦により辛うじて止めを免れていた。
(俺は…無力なのか? ほんの一部の力…? そうか…
それならば…)
『ほんの一部の力、見せてやろう』
シモンの声なのか、クリスタルの声なのかは定かではないが、そういう声が響いた。
傷ついたクリスタルナイトの翼が淡い光を放ち、その後ろの方向にゆっくりとミアを降ろす。

途端、閃光が起こったと思うと、クリスタルナイトは翼と後ろ足を使って跳躍し、
蹄の先から二本のランスを突き出して少女に一撃を浴びせると、そのまま
垂直上昇し、赤い月を見上げるヴァフティアの空へと向かっていった。

36:シモン ◆71GpdeA2Rk
09/11/08 20:38:02 0
ヴァフティアの上空を、瀕死のクリスタルナイトが駆けていった。
一羽ばたきする毎に、膨大な魔力が消費されていく。シモンに連動するクリスタルたちから、
まだ僅かに力が分け与えられていた。
薄れゆく意識の中、シモンは街中の阿鼻叫喚を目にした。
そこでは魔物と化した人々と”まだ無事な”人々が、絶望的な争いを繰り広げ、
それを必死に食い止めようとするレクスト、フィオナらの姿があった。

レクストは重傷を負っている。そこに新たに巨大な怪物が出現した。…ピラルであった。
シモンは右の後ろ足を突き出すと、レクストの後ろから猛スピードで迫るそれにめがけて
一撃を放った。何とそれは切り離された後ろ足だった。強力な力を纏い、槍のように尖ったそれは、
瞬く間にピラルの”コア”を貫通させ、大爆発を起こさせた。
かつての宿敵のあっけない最期を一瞥すると、シモンは一気に城門の外へと羽ばたいた。

(これまで…か。”至高の財宝”クリスタルを抱いて死ねるたぁ、
何とも皮肉な人生だったな… さて、と…
確かに俺たちはてめえから見れば”ほんの一部”なのかもしれねえ。
だがよ…俺らだって必死に生きてんだ…それだけは心に刻んどけよ…)
シモンの最後の脚に膨大な魔力が集まる。意識が壊れることを覚悟で、
彼はめいっぱいクリスタルから魔力を吸い込んだ。魔力の塊となった脚が切り離され、
ゆっくりと郊外の平原へと落下していく。
(じゃあな…)

そして、シモンは翼を数回小刻みに羽ばたかせてホバリングし、脚に狙いを付けると、
急降下して魔力の塊めがけてダイブした。
大爆発―

それと同時だった。
クリスタルの一つが壊れ、魔力が大量に消費されたことにより、
ヴァフティアを覆う禍々しい魔力が急激に減少した。
魔物化した市民たちも、軽度な者は人の姿に戻り、重度の者も比較的経度に落ち着いていった…

月は一時的にとはいえ、みるみるうちに元の姿を取り戻し、
街に優しい乳白色の光を照らしはじめたのである。
人々の絶望が、希望へと変わった瞬間であった。

37:ギルバート ◆.0XEPHJZ1s
09/11/08 21:18:13 0
「負け犬が虚勢を張っても滑稽だな。
昔のお前なら口に出す前に攻撃を仕掛けていたはずだが?」
「その負け犬なら首に綱付けて囲っちまったよ。
 生憎と俺は紳士なんでね。馬上名乗りを上げて正面からぶちのめす方が楽しいんだよ」

言いつつその馬鹿馬鹿しさに自分でくつくつ笑い出す。
その背に聞き覚えのある声が落ちてきた。

「…待ってくれ。その前にこいつを乗せるのが先だ」
「おい、シモン。悪いが――!?」

ちらりと向けた視線が固まり、ついで信じられないといった様子で向き直る。
おいおいおい誰・・・ってか何だよこいつは?いや、でもこの声――

「…ギルバート。俺はどうやら死んじまったらしい…
 情けねえ。ようやく自分がどういう人間か分かったと思ったらコレだ。」
「おい、ちょっと待て――」
「…だが、俺は最後にお前らと関われただけでも幸せだったと思う。仲間ってのは良いもんだな…」
「待てよ、お前何訳わかんねぇ事――」
「さあ行け!俺はしばらくミアの盾になってやる。お前は死ぬなよ」
「おい!ふざけんな!」

怒声を上げ、シモンの胸倉を掴もうとする。が、掴む胸倉が無かった。
手に伝わるのは人間を感じさせない、水晶の冷たさだけ。

「ふざけんじゃねぇ!何が死んだだよ、だってお前・・・生きてるだろーが!喋ってるだろ?生きてるんだろ!?
 一人だけカッコつけて消えるなんざ許さねーぞ!クソッ、ふざけんなよ、おい」

認められない。認められる訳が無い。
そもそも死んだって何だよ。死んでも生きてた奴だっていたじゃねーか。
歯を食いしばり、拳で冷たく硬い水晶を殴りつけた。

「・・・てめーには干し肉一枚分借りがある。
 貸したままで消えるなんざ絶対に許さねぇぞ!分かったな!くそっ」

言いたい事はまだ風呂桶10杯分はあったが、状況はそれを許さない。
悔しそうにシモンを睨むと、首のロケットの鎖を引きちぎり、シモンの背に乗ったミアに投げ渡す。

「そいつは預けたぜ。あと、シモンのふざけたケツを蹴飛ばしてやってくれ。
 ・・・なぁ、ミア――あいつは頼まれた事でもないのに、身の丈以上の事をやろうとした。
 始末は俺たちで付けようぜ。果てしなく長い物語にも、結末は必要だ。だろ?」

言い切って歯を見せて笑うと、背を向けて少女に向き直る。

38:ギルバート ◆.0XEPHJZ1s
09/11/08 21:19:19 0
「なんだこれは?お前はなぜ私を否定する!
私たちは合一し、世界が求めた地獄を生み出すために生まれたというのに!!」

少女が初めて怒りをあらわにしていた。
その怒りに任せ、人ならざる力を振るってシモンに襲い掛かる。
素早くその腕を蹴飛ばして外し、次いで腕を地面すれすれに伸ばす。

「待てっつーんだよお嬢さんよ。てめぇの相手はこの俺だ。
 言っただろ?俺は紳士だから――」

下げた腕を振り上げる。そこここで地面が割れ、赤く光る魔力線が大量に出現した。

「――てめぇみたいな見た目女の子でも手加減しねぇ」

それまでに予め伸ばしていたのだろう、きらきらと赤く光る糸が次々に巻きつき鎖と化し、
一瞬で少女に何重にも絡み付くと、その動きを拘束した。
少女の動きに一瞬間に合わなかったが振るった拳は外れ、シモンの片足を砕いた。

「ちっ」

一つ舌打ちし、一回転して裏拳を叩き込む。あっさりと止められた。
こいつ、なんつー馬鹿力だ・・・!さらに次の一撃がシモンの足をもう一本砕く。

「てめぇの相手は俺だって言ってるだろーがこのクソ化けモンが――!!!」

咆哮したギルバートの身体がねじれ――銀色の狼へと変異する。
しかしその瞳は怒りに燃えていても狂気は無く、もう一つ咆哮すると、少女に向かって破城槌のごとく突進した。

―負けられねぇ、負ける気がしねぇ――!

「おおらああぁぁぁぁああああッ!!!!」

少女の振るった腕が狼を突き飛ばすと、ギルバートが空中でくるくると回転しつつ人へと戻り、
そのまま魔力の鎖を振り回すと少女を地に叩きつける。
まるで大鎚を叩き付けたかのように瓦礫が飛び、砂塵が舞った。
お互いに致命的な一撃を与える隙を伺いつつ、闘いの場は大通りへと動いてゆく。


その時、世界が白く染まった。


一瞬空も街も全てが白い光に包まれ、誰もが視線を街の中心へと向ける。
その閃光が収まった時、空からは赤い目玉が消え失せ、月がその姿を取り戻していた。

「おい、一体どういう――まさか――シモンか?」

唖然として呟き、はっと気付く。シモン、それに一緒にいたミアはどうした?

39:名無しになりきれ
09/11/10 20:29:55 0
保守

40:ミア ◆JJ6qDFyzCY
09/11/10 21:28:48 P
>「おい、一体どういう――まさか――シモンか?」

再訪した薄闇の中、耳に届くのは林立する建造物に反響する咆喉と絶叫のみ。
二人がいた場所は無音だ。光をなくした貴石が散乱しているだけで、誰もいない。
―不意に発生する、小刻みで軽い振動音。
音源は【鍵】の少女の周囲に散乱する石畳の破片だった。跳ねるように震えている。

「“石謡”」

刹那、石片が浮上。無数の打撃音、風を切る音。互いを弾き合って不規則な軌道を得たそれらが少女を裂く。
呪文はギルバートのすぐ後ろからだった。気流の操作で気配を誤魔化しただけだ。

「ええ、彼よ」
悲鳴なような音に紛れて微かな返答をこぼす。

「……馬鹿な人」
その呟きは吐き捨てるように。

「…本当に馬鹿。欲深くて、色好みで、先走って、無謀で―見ず知らずの小汚い女、利用するつもりだった癖に結局」
その先を口にしようとして、一瞬の抵抗。それでも吐かずにはいられなかった。

「結局それで…死ん……で…
なのに―少しだって後悔してない、馬鹿な人………嫌いよ。大嫌い……あんな……人…」

言葉に反して流れた滴を、人差し指ですくう。何年ぶりだろう。
その手を眺めていると、有り難く、苦く、奇妙な程あっさりと実感できた。
(どうしたって…私、人間ね)

――"真に哀れなるは、かのモノがどうしようもなく人であった事――"

「―【鍵】。私は希望も執着も無い。でもそれは私が門だからではないの。
私に希望が無いのは、私の未来を祈ってくれた人のいた証なの」
魔力を切らした石塊が次々と落下する中、止まらない涙を持て余すような静けさを纏って【鍵】を見据える。

「取り替えたキャンバスには、望むように色を塗れ、って。
……私、どんな絵の具を集めればいいのかわからないわ。知らないもの。―でも見てみたい」
彼女はまだ気づかない。それを人は希望と呼ぶと。
指を鳴らす。瞬間、石塊が髪の毛一本ほどの動きも止める。

「だから、戦う」

もう一度指を鳴らす。石が爆ぜる。付与した式は一斉に消滅した。
だが彼女は編み上げる直前で待機させた術式をまだ幾種類も保っている。
今だからこそできる、コストパフォーマンスを無視した力技だった。

そして次いだ言葉はギルバートに宛てたもの。

「―5分」
相も変わらず理解しにくい言葉で精一杯言葉を紡ぐ。
「シモンの背中にいる間、出来る限りの術を編んだ。
今から5分。貴方を全力で援護できる」

(死なせない)

「……大怪我したら、返してあげないから」
預かった胸元のロケットを指した、笑っていないようで笑っているような、冗談に見えないな―そんな表情の冗談を付け加え、

「今なら鍵の力も弱まっているはず。
―終わらせましょう。また新たに始めるために」

41:コクハ ◇b9hCaqglWQの代理投稿
09/11/10 21:33:05 P
ルキフェルに刃が触れようとした瞬間、ルキフェルが突然吹き飛ばされ、剣が空を切った。
目の前にはレクストが立っている。
どうやらレクストがルキフェルを突き飛ばしたらしい。
>ルキフェルが指を鳴らすと同時に周囲の石や
>落ちた剣がふわりと浮かぶ。
>浮かんだと同時に強烈な推進力を持ってそれが
>レクスト目掛け飛んでいく。
>眼前で幾つもの石がまるでダイナマイトのように爆発しながら破片をレクストへと飛ばしながら迫る。
背後から爆音が聞こえてきた。
おまけに魔力のようなものも感じる。
何を使うのかは分からないが、このままレクストの目の前に立っていれば巻き添えになるのは確実だ。
人間離れした跳躍力で地面をけり、大空に舞い上がった。
【レクストとルキフェルの間に着地。ルキフェルが攻撃を開始した直後に跳躍開始】

42:ルキフェル ◆7zZan2bB7s
09/11/10 22:11:47 O
レクストと対峙する中、一陣の風のような存在がルキフェルの眼前に迫る。
>「助太刀いたす!」

声の方向を見ると、魔物か人か。
どちらとでも見受けられるような1人の戦士がいる。
こちらの攻撃に巻き込まれないように地面を蹴り付け空へ飛び去っていく。
「蝿…ですか。目障りになる前に潰しておくのもいいですね…」
ルキフェルの目が赤色に染まり空の一部が黒くなる。
空へ舞い上がろうとする戦士に、上空を切り裂くように黒い空間が出現し何本もの鋭い”何か”が降り注ぐ。
それは人間の屍。無数の屍が垂直に串刺しにされたまま、刃先を向けている。
それは高速の矢のように羽ばたこうとする戦士目掛け突撃する。
その顔、その容姿に暴徒だった民たちは驚愕する。
自分達が殺すはずだった兵士や、騎士。この街を守っていた者達であったからだ。

ルキフェルは首を回しながら小さく鼻で笑った。
暴徒だった彼らの逃げ惑う姿を拝見しながら。
「やはり他人は信用できません。自分である程度はやっておいて
正解だ。」

>>36
魔都と化していたヴァフティアの空に白い光が何かを齎した。
それが希望という名の夜明けに近付くものであることは
ルキフェルにも理解できた。
「チッ…この光。もう少しこの余韻を楽しみたかったものですが―」
言いかけたそれを止めて、ルキフェルはスキップするようにレクストと
コクハの動きを翻弄する。
「確かに、これで魔物への変異は収まっていくでしょう。
しかし…そんなものは一時的なものでしかない。
闇は、人が生まれ持って得た芽です。
魔術や言葉ですら、人の心の闇は消せやしない…そうでしょう?」

逃げ惑う民達の中で、イルだけがルキフェルを睨んだまま動かない。
憎しみに染まった赤い色の目が、ルキフェルだけをただ見つめている。

「絶望が希望に変わっても、人は変わりません。
この先も、ずっと。それを証明してくれたのは何者でもない。
貴方達自身だった。どんな者にも闇はあると。」
民達を指差しニヤりと笑う。
それぞれが後ろめたい心に駆られその場を去っていく。
誰もがその心に黒い闇に気付いたかのように。





43:ディーバダッタ ◆Boz/6.SDro
09/11/10 23:19:15 0
重厚なカーテンが幾重にも掛けられた広間にて、老占い師が一心不乱に水晶を覗き込む。
大量の脂汗をかきながら翳していた手を止め、重々しく声を発する。
「・・・陛下。赤き月が消失しました・・・」
「ん~~。予定より早いな。世界の反発力とやらが勝った、という事か?」
「恐らくは・・・」
水晶球からの光は赤から白に変っている。
その光は弱々しく、部屋の大きさを推し量る事はできない。
ぼんやりとした光の中、老占い師と陛下と呼ばれた者の足元だけを闇の中に浮かび上がらせていた。
「プランBだ。明朝には軍を出す。将軍に伝えておけ。」
「は・・・。」
帝国領の隅にありながら有数の都市でもあるヴィフティア。
その規模と魔法都市と言われるほどの機能は帝国の支配力が強くは及ばない。
だからこそ、ヴィフティアだったのだ。
終焉の月教団を御子を使い動かし、鍵を作り上げ、ヴィフティアを実験場とした。
結界能力の強いヴィフティアならば地獄化を都市内に限定できる。
また実験が失敗してもヴィフティアは無事ではすまない。
異常現象災害の為の救助という大義名分で堂々と兵を送り込めるのだから。
「それまでは・・・ヴィフティアの地獄をもう少し見物しようか。」
闇の中ぼんやりと浮かび上がるその者は愉悦の笑みを浮かべながら水晶球へと視線を送る。

##########################################

ギルバートに叩きつけられ、粉塵の中、鍵はゆっくりと立ち上がる。
「・・・この程度か?」
凄まじい勢いで叩きつけられたにも拘らず鍵には傷一つない。
体に巻きつく鎖を鬱陶しそうに眺めると、鎖を掴み無造作に引いた。
鎖は鍵の体に食い込み、肉を切り裂き、骨を断つ。
だが・・・切り裂かれた肉は、断たれた骨は鎖が通り過ぎた瞬間に再生する。
「儀式を経て蘇った我が肉体は不滅!
貴様如きがどう足掻こうと滅びはせぬわ!!!」
恐るべき方法で鎖の戒めを解くと、握った手に力を込める。
そこから発せられるは黒い雷!
黒い雷は鎖を伝いギルバートを焼き尽くさんと走る。

「そして!赤き月とヴィフティアの八本の尖塔から無限のエネルギーを受ける私は無敵だ!!」
残った手を振るえばそこからいくつもの竜巻が生まれ、周囲の建物を粉砕し瓦礫が降り注ぐ。
そこから発生した真空の刃が周囲に巨大な爪あとをつける。




44:ディーバダッタ ◆Boz/6.SDro
09/11/10 23:19:26 0

圧倒的な力を見せる鍵はギルバートを見ていなかった。
既に眼中にないのだ。
鍵の視線はクリスタルナイトと化したシモンを探していた。
が、既に時は遅かった。
ヴィフティア全体を揺るがす大爆発が起こったのだ。
「ば・・・ばかな!!!!!」
絶叫と共に鍵の口から大量の血が溢れ出る。
それが何を意味するか、鍵は見えずとも、教えられずとも判っていた。
シモンの死。
それはクリスタルの破壊を意味し、同時に鍵の心臓の破壊を意味しているのだから。

シモンの力は確かに鍵の力の一部でしかない。
しかしそれは致命的な一部。
聖処女の血を浴び復活したほかの部分とは違い、心臓は魔に落ちたシモンの血を吸って復活した。
即ち不滅の力が宿っていなかったのだ。
だからこそ、シモンを一撃で殺さず足をもぎ無力化しようとしていたのだ。
だがそれも最早無駄に終わったといえよう。

更にクリスタルの一つが壊れたことにより魔法陣が崩れ、エネルギーの供給が止まる。
それを顕すかのように鍵の体には細かいヒビが無数に入り始める。
強大な力を維持するエネルギーが足りなくなり、体を保てなくなりつつあるのだ。

>「―【鍵】。私は希望も執着も無い。でもそれは私が門だからではないの。
>私に希望が無いのは、私の未来を祈ってくれた人のいた証なの」
「・・・・!
何を馬鹿なことを・・・!
お前はその存在自体が門だ!お前の人格など・・・門という器に張り付いたラベルでしかない!
絶望しろ!そして世界の絶望と同調し、私を受け入れ地獄を呼べ!!」
一瞬の絶句の後、鍵は血走った目で叫ぶ。
だがミアの決意を、そしてその心を揺るがす事はできなかった。
ミアは力強くギルバートに語りかける。
>「今なら鍵の力も弱まっているはず。
>―終わらせましょう。また新たに始めるために」
「な・め・る・な・よ!!!!!!
例え心臓が潰れようとも!体を維持できなくとも!あの男を殺し貴様を侵す力と時間くらい無いと思うてか!!!」
狂乱しながら腕を振り下ろすと、それは不可視の力となってギルバートに襲い掛かる。
まるで巨大な岩を落とされたかのようにギルバートを中心にオルフェーノクとヴェノサキスも巻き込み地面が陥没する。

45:コクハ ◇b9hCaqglWQの代理投稿
09/11/11 00:45:03 P
>「蝿…ですか。目障りになる前に潰しておくのもいいですね…」
「助けに来たというのにその仕打ちはないでしょうが…」
なんか知らないがものすごく悲しい。
レクストからは敵と認識され、ルキフェルからも厄介者扱いされている。
>「やはり他人は信用できません。自分である程度はやっておいて正解だ。」
「同じ魔物なんですから。そんなこと言わずね」
半ば泣きそうな顔でルキフェルの方へ視線をやり、指をはじいた。
空から降ってきた無数の躯の軌道がそれ、それた躯たちはレクストたちのほうへ降り出した。

>>36
その直後、白い光があたりを包み込んだ。
でも、すぐに白い光が消えた。
民たちは蜘蛛の子を散らすように逃げまどい。辺りは騒然としている。
そんな中、イルがルキフェルのことをにらんでるのに気付いた。
その瞳は赤く冷たい。
きゅっと握られたこぶしは震え、怒りの深さを現している。
でも、それを実行に移すことはない。
憎しみをぶつけるだけの力がないから。
不憫だ。
ただ一方的に蹂躙され、肉親の愛情にも恵まれず一人っきりで生きていかねばならない。
とてもじゃないが見ていられない。
だから、言葉を発した。
「憎い?憎いのならかかってきなさい。我々を殺したいんでしょ?」
そして、もっている剣をイルの目の前に向かって放り投げた。

46:フィオナ ◇tPyzcD89bAの代理
09/11/11 07:35:25 0
『―北区の『揺り篭通り』!居住区のここなら祭に乗じた犯罪対策のために守備隊が増員されてたはずだ!』
フィオナの問いに対するレクストからの返答。守備隊員も同様のことを言っていたことを思い出す。
「揺り篭通り……。」
祭でほぼ無人となった居住区に配備された守備隊。つまりは現状で最も被害の少ない戦力といえる。
さらには揺り篭通り特有の住宅が連なることで構成される複雑に絡み合った通路。
これも魔物の巨躯ではそのアドバンテージを生かせず対して此方には地の利となるだろう。

「この上無いですね!」
フィオナは短く肯定を返すと元黒衣の男へ指示を出すレクストを隠すようにルキフェルへ正対した。
嘲笑を伴い立ち上がるルキフェルへと間髪居れず打ち込むこと数合。
しかしその全てが高速の体捌きを捉えられず虚しく空を斬る。

『悪いな、俺としたことが柄にもなくトサカに来ちまってたみたいだ。もう大丈夫。大丈夫だとも―稼ぐぜ時間!』
だが本来の役割は果たせたようだ。指示を終えたレクストが気合に満ちた声で告げる。
長靴へと仕込まれた術式を開放し神速で跳躍、不意に動きを止めたルキフェルを蹴り飛ばす。
狙ったのかその先ではハスタにいなされた蝿の魔物と交差する。

――激突。
絶叫と共に爆ぜる蝿の魔物。
屍を踏み越え現れるのは真紅の双眸で睨め付けるルキフェル。
さらには交差の直後に上空から現れた漆黒の剣を携えた黒ずくめの堕天使。

『―いいでしょう。5分だけ相手をします。』
地の底から染み出すような声でそう宣言するとルキフェルはパチンッと指を鳴らす。
直後周囲の石や持ち主を失った武器がゆっくりと浮かび上がり爆発的な推進力で此方へと飛来する。
射線上にいる味方であろう魔物にもお構いなしである。
堕天使は翼をはためかせ回避。残るのは強力な一撃の代償か体制を崩しているレクストだけだ。

「させません!」
フィオナはレクストの前へと躍り出ると正眼に構えた剣を振るい弾丸の様に迫るそれらを叩き落し、あるいは弾いて軌道を逸らす。
次弾に備え再び剣を正眼へと戻すと眼前では中空に逃れた魔物を攻撃するルキフェルの姿。
どういうことなのか、味方同士というわけではないのだろうか。
堕天使の方は助けに来たと言っていた気がするのだが。

47:フィオナ ◇tPyzcD89bAの代理
09/11/11 07:35:53 0
思案すること数瞬。
それを断ち切るように遠方より響く轟音。
次いで膨れ上がる白い光。
また異変かと危惧するも、その光が消えた後に感じるのは魔素の減少。
ヴァフティアを覆う息苦しいまでの瘴気が霞んでいくのが判る。

期せずして訪れた好転。
そして先刻から展開されているルキフェルと堕天使の攻防も同じなのではないだろうか。
二体の強大な魔を相手取るのは不可能だがそれが一対一対三なら話は変わってくる。
ルキフェルの注意が堕天使へと向いている今なら出し抜くことも可能かもしれない。
蝿の魔物の相手をしていたハスタも今はフリーな筈だ。

「レクストさん。敵は完全に仲間同士とは言えないようです。
そして今ならルキフェルの虚をつけるかもしれません。」
フィオナは傍らのレクストへと耳打ちする。

「私が正面から斬り込みますからその隙を突いてください。」
しかし、と心配そうなレクストへと笑みを返し―

「―大丈夫です。こう見えて結構頑丈なんですよ?」
得意げに告げる。

「それでは。お願いします!」
言葉と同時にルキフェルへと駆け出す。
脇に構えた剣先を地面を擦る寸前まで落とし一直線に間合いを詰める。
ルキフェルの攻撃を堕天使が此方へと弾き飛ばしてくるが怯むことなく走り抜ける。
彼我の距離後数歩という所で大地を蹴りそれまでの直線的な動きを弧を描く軌道へと変える。
地を這うかのような低姿勢で数歩を踏破すると体ごと剣を大上段へと振り上げ叩き付けた。




48:アラバス ◆hBr/9.Ve8Q
09/11/11 13:02:18 0
アラバス「おお…くわばらくわばら…」
市民「爺さん、大丈夫か?」

揺り篭通りには、避難中の市民が続々と集まっていた
空が元に戻ったが、それでも危険極まりない状態であることに変わりはない
老人は体を抱え、恐怖に身を震わせていた
老人に肩を貸した若い男は、その背中をさすって心配そうに見つめていた

アラバス「あんたのお陰で助かったよ
       わしゃ杖が無いと立つこともままならなかったんじゃ…」
市民「困った時はお互い様だと言ったろう
    この揺り篭通りなら安全らしい
    それに、あの人たちが守ってくれるよ」

老人は涙を流しながらお礼を言い、若い男は笑みを浮かべながら応対する
周囲では、家族や友人の無事を確かめ合う者、一時の安堵に胸を撫で下ろす者などが居た
まだ不安と恐怖におののいている者も居り、混沌とした状態であった

アラバス「………」
市民「どうしたんだ、爺さん?」
アラバス「お主、本当にそう思うか?」
市民「へ?」
アラバス「本当にそう思うのかと聞いておるんじゃよ」

いきなり老人の雰囲気が変わり、酷く冷たい目で若い男を見上げる
さっきまでのひ弱な感じは消え去り、圧倒的なまでの威圧感に見下ろす男の方が気圧された
よく見れば、辺りは人気のない裏路地であった
そして、杖が無ければ満足に立つことも出来ないはずの老人が綺麗に2本足で立っている

市民「い、いや…、この揺り篭通りは道が狭くて入り組んでいるから…
    そ、それに、あの人たちが守って…」
アラバス「そういう目先の理屈は聞いておらんよ」
市民「いや、そもそもあんたなにも…
    ヴゲッ!?」

言い終わる前に喉を針で刺し貫かれ、若い男がその場に倒れ込む
白目を剥いて口から涎を垂れ流したまま、事切れて動かなくなってしまった
それを冷たい目で見下ろす老人の冷たい笑み
その手には、透明の毒液に濡れた異様に細長い針が数本握られていた

アラバス「脅威は何も目の前にだけ現れるものではない
       わしのような者も居るのではないか、ということじゃ」

慣れた手付きで男の死体を裏路地の奥に引っ張っていくと、布を被せて隠してしまう
老人は小柄でひ弱な体型だったが、特に苦もなく運んでしまった
この男こそ、裏の世界で名の知れた老齢の殺し屋である
とりあえず「アラバス・バラバス」と名乗っているが、もちろん本名ではない

アラバス「あの男が派手にやってくれたおかげで何の苦もなく潜入できた
       …さあてと、希望の光とやらを消しに行くかの」

先ほどと同様に杖を持ち直すと、腰の折れたヨボヨボ爺さんに戻ってフラフラと歩き出す
誰もそのみすぼらしい老人を希望への刺客とは思いもしなかった
       

49:名無しになりきれ
09/11/11 14:35:25 O
標的以外を殺す殺し屋は三流以下

50:名無しになりきれ
09/11/11 20:23:08 O
>>48
張任「この雑魚がぁぁぁ!!!」

51:ハスタ ◇BsVisfL7IQの代理投稿
09/11/12 19:27:01 0

【名前】ハスタ ◆BsVisfL7IQ

【本文】
>41>42>45-47
蠅の魔物を受け流すのは思ったよりも腕に負担がかかったらしく、だるい。
だがそうも言っていられない。こっちは揺り篭通りに人々を避難させなきゃならない。
既に女騎士が突貫しに行ったが・・・ふと、一人の少年と魔物の姿が目に入った。

>「助けに来たというのにその仕打ちはないでしょうが…」
「いや、どう見てもさっき追撃しにかかってただろうが。」
なんとなくその魔物の呟きに反射的に返してしまう。だが、こいつは紛れも無く敵だ。
少年諸共に目掛けて降ってくる亡骸どもを、白い槍で弾く。
亡骸を貫くソレは弾かれる事でわずかに角度を変え、また別の亡骸を逸らし連鎖的に僅かな空間を作り出す。
そこをもう一方の腕に持った槍で弾く事で少年やそのそばの市民への攻撃を防ぐ。

>「絶望が希望に変わっても、人は変わりません。この先も、ずっと。それを証明してくれたのは何者でもない。
>貴方達自身だった。どんな者にも闇はあると。」
怒りか、怨念か。驚きはしても尚少年が動かない。
なので、その眼前に立って魔物達との視線を遮る。
>「憎い?憎いのならかかってきなさい。我々を殺したいんでしょ?」
黒翼の魔物の言葉と共に降ってきた剣を、手にとらぬように槍でそのまま打ち返す。
「闇?はっ、闇なんぞあって当たり前だろう。闇があるという事実は絶望になんぞなりはしない。
 闇の存在はそれを照らす光を証明するだけだ。」


俺は、白い4本の槍を周囲に突き立てて、黒翼の魔物を睨み付ける。
「そこのお前・・・外見から察するにベースは人間みたいだが、心まで魔に呑まれかけてるみたいだな。
 多少力を持っていれば例え同じ魔物でも襲い掛かり、敵意があれば無力な者にも争いを挑む事実がそれを示しているよ。
 普段なら狩ってる所だけど、今は相手をしている暇がないんでね・・・踊ってろ!『仁針双克』!」

横目に従士達が眼鏡の男に攻撃を仕掛けるのを見て、こっちはこいつを引き受けるのが役目だと判断。
抜き打ちで放った二枚の符は、青い光の弾丸となって黒翼を追尾して空を翔ける。
一つは空中で打ち返した剣に追いついて炸裂。その爆炎を隠れ蓑に回り込んで頭上からもう一つの光弾が襲い掛かる。
「(符の残りは13枚、これ以上は乱発は難しいな・・・・・・。)」

青の光弾が魔物を襲っている間に、俺は『四瑞』を手に裏をかく方法を思案する。
【イルを庇うようにコクハの前に立ち塞がる。軽く挑発してから符術による攻撃。】




52: ◆N/wTSkX0q6
09/11/12 20:32:49 0
「守備隊、それから戦闘経験のあるものから順に俺に続け。北区まで突っ切るぞ」

元黒衣はハンドサインで進軍を促しながら、避難者達の一番槍を担っていく。
続くのは守備隊の生き残り、従軍経験者、退役守備隊員達。各々の得物を掲げ、力なき者達を庇うようにして進む。

ふと見回せば、降魔術の影響は民家にまでは及んでいないらしい。
建築物用の結界は都市防衛結界とは別の魔導回路で動いているため、地獄化を免れているようだ。

降魔されるのは、往来に出ていた市民達。
そのために住人達が皆外に出てくるラウル=ラジーノの前夜祭を決行日に選んだのだ。

「この地獄に私も一枚噛んでいたと思うと、我ながらあまり気分の良いものではない、が」

別に、こうなることを知らされていなかったわけではない。敬虔なる教団員である彼にとって教義は絶対。
人の命も、自分の命すらも、二の次である。それは離反という形となった今では何の意味もなさない形骸だが。

(終末思想……真なる救いを得るには一度全てを無に帰さねばならない。この街はその先駆けだ)

全てを破壊する、そのための下地。都市防衛結界をインターセプトし、降魔の外法を用いて地獄化の為の力場を生成する。
現在街中で起こっている無差別な降魔術は、あくまでその副産物。炊き出しに混入した魔導薬の誘導性により、少しばかり降魔率を上げたに過ぎない。
全てがつつがなく完了すれば、この街そのものが、正確には結界に護られた領域全てが現世から切り離されるはずだった。

「貴様、ジルド―!裏切ったか……!」

元黒衣達が向かう前方に三人の男が躍り出た。全員が黒衣に身を包み、全員が武装している。
元黒衣をジルドと呼ぶ彼等は、その外見が示す通りの出自を持っていた。すなわち、『深淵の月』の教団員。

「その紋章、第5分隊―降魔兵団の連中か。小間使いの私を知っているとは光栄だな」

「降魔を施術せずに武装小隊長まで上り詰めた貴様を我らが知らぬ訳があるか―!」

パチリ。と音がすると同時、三人の男達の体躯が隆起し劇的な変貌を始めた。
黒衣の下に収まっていた肉体は見る間に人外の、異形のそれへと形を変えていく。

「残念だジルド。貴様が何故住民共を率いているかは聞かぬ。裏切りの因子は今ここで喰らい尽くす―!」

左から―虎、熊、獅子。三人の黒衣達はそれぞれが巨大な猛獣へと変身していた。

教団の外法、降魔制御術。予め降魔オーブに施術した術式によって異形化を制御し、積極的な戦闘力へと変える術。
魔物となってもその意識は人のままであり、また人間への立ち戻りも自在。路地裏でピラルが用いていた術だった。


53: ◆N/wTSkX0q6
09/11/12 20:59:09 0
「そうか。聞かずとも語ってやろう―未来には、それが必要だ」

元黒衣、もといジルドは三人の降魔化が完了する前から駆けていた。武闘派の運動能力を存分に駆使し、彼我の差を無にする。
同時に懐から取り出したるは黒曜石の短剣。斬撃戦には不向きなそれを、ジルドは胸の前に翳し、術式を発動する。

「『顕刃』―!!」

黒曜剣に注がれた魔力は刀身に刻まれた術式回路によって一つの指向性を得る。
刃の顕現。黒曜石の刃の先から、魔力によって構成された擬似的な刀身が現れ、刃長不足と耐久性を補う。
すなわち、ジルドの手にあるのはもはや短剣ではなく、一振りの長剣。半透明に淡く輝く刀身は、鋭く、強い。

「この街は既に破壊された―!」

まず仕留めるは熊。中央の要を潰せば隊形に乱れを起こし、硬直を誘うことが出来る。
横薙ぎの豪腕を屈むことで回避し、追撃の逆腕を長剣で斬り飛ばす。飛んだ腕を熊の急所―鼻面へと蹴り込み、怯ませる。

「破壊したのが我々ならば―創り直すのも我々だ!ならば私は資産たる市民を殺さない。新たなる世界の再建のために!」

無論その硬直を見逃さない。叩きつけた腕ごと貫通するように長剣を突き刺し、熊の頭部を穿ち、貫き、破壊する。
仕留めた。あとは両端の―どちらを先に潰すか、その逡巡の間隙に、ジルドは脚が何者かによって固定されていることに気付いた。

「詭弁だ……人間が残っていては真なる白紙は完成しない……!全て消えるべきなのだ……!!」

「――なっ!!?」

熊だった。熊が残った腕で、ジルドの脚をがっちりと掴んでいる。頭を潰され最早瀕死の身体で、最期のあがきだった。
気付いたところで離脱の機は逸された。視界の両端で虎と獅子が同時に爪をジルドへ打ち下ろしているのがスローで見える。

やられた。初めから中央を捨てて確実に命をとる算段か。ジルドの教団での戦法を熟知している、元同僚だからこそできる芸当だ。
もとより自己の命に対する観念が薄い(そういった、使命のためならば簡単に命を投げ出せる人間性も敬虔な教徒そのものだ)
ジルドは目を閉じた。どうせなら、目には見えぬ神に祈って死ぬのも悪くない。割りと本気でジルドはそう思った。

肉を穿つ音。

同時に、後ろから声が挙がった。一人ではない、誰かと誰かが、付和雷同に言い放った。

「「人外共が……人の世界を人間抜きで語るなよ―!!」」

果たして、覚悟していた死は訪れなかった。目を開けると左右の異形たちはその身体にそれぞれ剣と槍を生やして絶命している。
ジルドの後をついてきた守備隊の面々が、その得物で虎と獅子を斃していた。見事に急所を狙って一撃で仕留めているのは流石である。

「―ジルドとやら、アンタは『月』だったんだろう?何故仲間を斃してまで、俺達を助ける」

まだ若い、しかし頬に塩の線を刻んだ守備隊員が、獅子から剣を抜きながら言う。
足元の熊が力尽きたのか、ジルドの脚も自由になっていた。

「別に他意はない。ただ、私は知っているんだ」

―『俺が両方護ってやる!アンタ達も、その家族も!だから、俺がアンタを護るのを、―邪魔するな!!』

「博愛主義者の綺麗事だが、それを誰かが美談に変えてやることもできる」

言って、ジルドは再び道を拓き始めた。いつのまにか空の眼球は消え、降魔騒ぎも沈静へ向かっているようだ。
誰かの思惑があり、それを害した誰かがいる。今はその事実だけで、充分だった。

揺り篭通りが見えてきた。そうして避難者達の行軍は、一先ずの落着を得た。


【避難者サイド:揺り篭通り到着。避難完了】
【レクストサイドのレスも近いうちに書きますので、今しばらくお待ち下さい】

54:コクハ ◆b9hCaqglWQ
09/11/12 21:38:53 0
>「闇?はっ、闇なんぞあって当たり前だろう。闇があるという事実は絶望になんぞなりはしない。
> 闇の存在はそれを照らす光を証明するだけだ。」
「それは違うわ。光と闇はともに存在する。光がなければ影も生まれないし、影がなければ光りも生まれない。光と闇が生まれた時から一心同体なのよ。あなたのその考え間違ってるわ」
どこかの世界では光すら届かない闇があるようだが、少なくともここでは違う。
槍ではじき返された剣がこちらに向かってくる。
なぜか知らないが異様に動きが遅い。
「だから、必要がなければ、あなたたちと争うつもりはない。でも、闇の同胞達を傷つけるなら容赦はしない」
ハスタが槍越しに睨みつけるのと同じように睨みつけた。
>「そこのお前・・・外見から察するにベースは人間みたいだが、心まで魔に呑まれかけてるみたいだな。
> 多少力を持っていれば例え同じ魔物でも襲い掛かり、敵意があれば無力な者にも争いを挑む事実がそれを示しているよ。 」
「闇に飲まれた?何を言ってるの?私の心は初めから闇よ。同胞たちを殺す意図があるのなら、避けろ!なんて叫びはしない。街を守るために同胞である市民を殺したあなたたちと一緒にしないでほしい」
光の弾が二つ打ち出された。
そのうち一つがスローペースで進んでいる剣に炸裂し、爆発。
視界が爆炎に覆われ見えなくなった。
これじゃあ、剣を取りに行く暇もない。
異様に動きの遅い剣のことを恨みたい気分だ。
でも、まあ、そんなことを言っていても仕方ない。
「酸素によって生み出されたものよ。我が体に集い、炎を防ぐ盾となれ」
呪文によって生じた赤い光が全身のいたるところからわきあがっているのを確認することなく爆炎に突っ込み、剣を手に取った。
そして、そのまま、勢いを利用し、ハスタに向かって下から上に切りかかった。


55:レクスト ◆N/wTSkX0q6
09/11/14 01:11:18 0
「―いいでしょう。5分だけ相手をします。その間に逃げれるのならば逃げなさい。
 しかしまぁ…そこそこの性能です。”陛下”にも素晴らしい報告が出来そうだ。」

(陛下―だと?)

恐らくは黒幕の名前だろう、ルキフェルの呟きにレクストが眉を顰める。この国で陛下と呼称を受ける人間は一人をおいて他にない。
ときの皇帝―レクストが属する帝都王立従士隊が守護する皇帝陛下そのひとである。

(どういうこった……?なんであの眼鏡野朗の口から『陛下』なんて呼び名が出る?なんかの暗示か?)

思索と逡巡は臨戦の脳内を埋めるがしかしルキフェルの猛攻は結論を待たない。
彼がパチリと指を鳴らすと、まるで糸に吊られたように周囲に散乱していた剣や瓦礫が浮かび、レクストへと飛来する。
風を切る速さは弾速。そして何よりも特筆すべきは―

(―術式の気配がまったくなかったぞ!?)

速度に差こそあれ、術そのものはレクストの兄が使用する浮導術とさして変わらない。
しかし今のルキフェルからは術式を組む挙動も、予め陣を敷いていた様子もない。式を破棄してこの威力は常軌を逸している。

「やっべ―!」
通常の術式ならば遅れをとることはなかっただろう。加えてレクストは『噴射』を使った渾身の蹴りを放った直後である。
軸足一本では慣性を殺しきれず、硬直は免れない。致命的な隙に、致命的な威力を持った瓦礫の散弾が叩き込まれる―!

「させません!」

短く叫んで、フィオナがレクストの前に躍り出た。彼の眼前で展開される光景は、さながら鉄火場の鎚合奏。
一つ一つが容易く命を奪えるであろう飛来物を、フィオナは剣で正確に捌いていく。弾き、逸らし、叩き落し、連続する金属音。
それら全てが沈黙する頃には、ルキフェルは既に上空へ現れた黒翼の魔物を迎撃し始めている。仲間じゃなかったのかあいつら。

「あっぶねええええええええええええ―た、助かった!面目ないぜぇ!!」

フィオナに感謝しながら体勢を立て直し安堵するレクストだったが、危難はまだ去っていなかった。
背後から触手の魔物が襲い掛からんとしていることに、レクストはおろかフィオナすら気付いていない。
ピラルである。触手を効果的に用いて挙動の音を消し、しかし充分な速さをもってレクストへと迫る!

果たしてピラルの強襲は、叶わなかった。矢のように上空から落ちてきた棒状の物体が、彼の降魔オーブを貫いたのだ。
魔力の尾を引くそれが馬のような生物の脚だとピラルが理解するころには、耐久限界を超えたオーブが爆発を起こしていた。

「おわっ!?今度は何だ!」
轟音が響き、レクストの後ろ髪が爆風に煽られる。慌てて後ろを振り向くと、そこには最早何者もおらず、
ただ爆発の余韻と塵になって名残のように風に浚われる魔物の残骸のみ。とうとうレクストはピラルの存在に最後まで気付かなかった。

次の瞬間。爆発と同時、否、それを凌駕する大爆発が尖塔のほうで起こり、強風が街を吹きぬけた。
思わず瞑った眼が視力を取り戻すと、街の様相が一変していた。目に見える変化ではないが、街に満ちていた魔の気配が散逸し、
それに伴なって徘徊していた魔物の中には再び人の姿を取り戻すものまでいた。何よりも、月が元に戻っている。

「街を覆う魔法陣の一部が壊されたんだ!この糞忌々しい降魔結界が薄れてくぞ!!」

レクストは知らない。尖塔付近で起こった大爆発の真相を。『誰が大爆発したのか』ということを。
ただ事実を事実として受け止め、前を向くのみである。

シモンという男の死を、

仲間の死を、彼は知らない。

56:レクスト ◆N/wTSkX0q6
09/11/14 02:06:21 0
「レクストさん。敵は完全に仲間同士とは言えないようです。そして今ならルキフェルの虚をつけるかもしれません。」

状況に好機を見出したのか、フィオナが駆け寄って耳打ちしてきた。
確かに、突如現れた黒翼は最初ルキフェルに斬りかかっていた。そしてルキフェルもまた、黒翼ごとレクストを狙っていた。
そして今、連中は地対空の人外決戦をやらかしている最中だ。隙はある。充分創り出せる。

「私が正面から斬り込みますからその隙を突いてください。」
「お、おい―あの超絶人外バトルの中に真正面から突っ込むってのかよ?命足りてねえぞ!」

常人の立ち入れる領域なのだろうか、いう疑問。
それから、そんな危険な役目を彼女にやらせるという躊躇。

「―大丈夫です。こう見えて結構頑丈なんですよ?」

そんなレクストの懸念を感じ取ったのか、フィオナは柔らかく、しかし強かな笑みで告げる。
なんて強い女だ、とレクストは思う。その強固な意志の前に、反論すら憚られるようで二の句を継げない。

「―それでは。お願いします!」
「―ああ。任せてくれ」

同時、フィオナは跳んだ。疾り、駆ける。疾駆。姿勢の低いその構えは、相手のアドバンテージを無にする効果的な方策だ。
迎撃の散弾は彼女の頭上を通過していく。たまに来る低い弾道の瓦礫はレクストが援護砲撃で粉砕する。
フィオナが剣を振り上げ、両者を分断するように斬撃。それを受けた黒翼は十字架使いの方へと飛んで行った。

「絶望が希望に変わっても、人は変わりません。この先も、ずっと。
 それを証明してくれたのは何者でもない。貴方達自身だった。どんな者にも闇はあると。」

フィオナの剣を受けながらルキフェルが訥々と語る。体調が思わしくないのか、どこか顔色に難がある。
それも含めた、好機―!!

「そりゃ誰にだって後ろ暗いとこはあるだろうさ―俺にだってある。後悔だって沢山してきた」

レクストの声。しかしフィオナの後ろに控えていたはずの彼は、そこにいない。
どこにもいない。

「お前の言ってることもよくわかる―わかってやれる。でもな、でもだ……」

連続して魔導弾が飛んできた。ルキフェル目がけて、純粋に『攻撃』の属性を付与した魔力の光が着弾する。
それはルキフェルにとってさしたる障害にはなり得ないだろう。しかし。

「人間の悪いとこばっかあげつらって解ったようなツラしてんじゃねえ―!!人間にあるのは闇だけじゃねえだろ!
 光だってある!そんなショボい闇なんかよりよっぽど尊い光が人にはある―俺が護りたい"ヒト"ってのは、そうあるべきで、実際そうなんだよ!!」

フィオナが命懸けで拓いた道に、その僅かな間隙にレクストは己が命運を力任せにねじ込む。
彼は、下にいた。フィオナが剣を叩き込む、その寸毫が如き時間差の活用を―『噴射』の機動力が実現する。

「お前のその能力、異能、人知を超えた力か―そういうの、嫌いじゃねえ。むしろ心躍るね。大好きだ」
だが。でも。しかし。

レクストは圧縮された時間の中でゆっくりと正確に、バイアネット構える。
自己の中に脈打つ回復術式の残滓、治癒聖句の余剰分―それら余った生命力を魔力へと変換し、還元する。
体感で組み上げる術式は攻性魔術。バイアネットの刀身に描かれた紋章は破壊力特化の豪斬撃。

息を吸い、言う―
「―お前のことは大嫌いだけどなぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!!!」

横薙ぎの一閃。一閃というにはあまりにも甚大な威力を秘めた一撃が、ルキフェルの胴へとぶち込まれた。

【フィオナが作ったルキフェルの隙へバイアネットをフルスイング】
【このターンでルキフェルが退けば揺り篭通りへ。退かなければ戦闘続行】

57:ルキフェル ◆7zZan2bB7s
09/11/14 14:28:38 0
>>45
>「同じ魔物なんですから。そんなこと言わずね」

上で羽を生やした魔物が声をかける。
ルキフェルは首を横に振りながら溜息を吐いた。
「同じ魔物…ですか。人間であった貴方が私と同じだと?
フフ…くだらない。実に、くだらない。」
地上に降り立った魔物はイルに向け剣を放り投げた。
しかし、イルはそれを掴もうとせずにいる。
「「僕は、お前が憎い。憎いけど…でも、僕は嫌なんだ。
これ以上、誰かを傷付けたりするのは。」」
まだ幼い少年の思わぬ言葉に、思わずルキフェルの笑みが消え去る。
イルは憎しみを宿してはいるものの、それでも何か大切なものを
無くしていないとでもいうようにただルキフェルを睨みつけている。

「…ほぅ…素晴らしい子ですねぇ」

苛立ちながらイルに向け歩き出す。しかし、それを1つの声が阻んだ。
>「闇?はっ、闇なんぞあって当たり前だろう。闇があるという事実は絶望になんぞなりはしない。
>闇の存在はそれを照らす光を証明するだけだ。」

「貴方ですか…まぁ、任せましたよ。ね?仲間…なんでしょ?私達は。」

ルキフェルは背後の魔物に目線を向け、ハスタとイルの前より姿を消す。


58:ルキフェル ◆7zZan2bB7s
09/11/14 14:44:11 0
>>47>>55
ハスタとコクハから逃れたルキフェルの前に現れたのはフィオナ。
華奢な女性とは思えないスピードで眼前に現れる。


―「させません!」

素早い弾丸をものともせず次々に叩き落していく。
その軌道は標的のレクストから逸れ、地面に爆発し
風穴を空けていく。
>「それでは。お願いします!」

声と共にフィオナが凄まじい勢いでルキフェルへ向け
剣を振り下ろした。
「…くだらない。その程度で…私を倒せるつもりですか…。」
その剣をルキフェルは片腕で白羽取りする。
剣先がびくともしないほどの強力で完全にフィオナの動きを掌握した。
腕の血管は浮き出ていおり、息も荒い。
「あの薬を落とされたのは計算外でした…アレが無ければ
彼を押さえつけれない。私もどうなるか分かりませんしね…!!」

”俺をもっと笑顔にしてくれよ”
その時、フィオナには確かに聞こえた。
ここへ向う前に聞こえたそれと同じ声を。
深い闇からの叫びを。
ルキフェルは明らかに疲労している様子だがそれでも尚、もう一方の
腕を突き出しフィオナに衝撃波を放つ。
凄まじい勢いで放たれたそれはフィオナの鎧すら吹き飛ばして見せた。

「…ハァハァ…終わりです。これで…!!」
更にフィオナへ追撃を放とうとした時、背後より声。

―「そりゃ誰にだって後ろ暗いとこはあるだろうさ―俺にだってある。後悔だって沢山してきた」

59:ルキフェル ◆7zZan2bB7s
09/11/14 15:05:27 0
「…な…!?」

ルキフェルは振り返る。
しかし、声の主は何処にもいない。
見えたのは”光”。彼が最も忌み嫌う物がルキフェルの全身を叩いた。
光の弾を全身に受けながら片膝を付く。
「…グ…あと、少し…時間を…」
胸を押さえつけもがき苦しむルキフェル。顔が蒼白に変わり息も
上がり始める。

―「人間の悪いとこばっかあげつらって解ったようなツラしてんじゃねえ―!!人間にあるのは闇だけじゃねえだろ!
 光だってある!そんなショボい闇なんかよりよっぽど尊い光が人にはある―俺が護りたい"ヒト"ってのは、そうあるべきで、実際そうなんだよ!!」 ―

閃光と共にレクストが迫る。身動きの取れないルキフェルにそれを避ける余力は残っていなかった。
しかしルキフェルは笑う。自嘲なのか、嘲笑なのか。
分からないまでも逆に追い詰められた男は笑った。

―「―お前のことは大嫌いだけどなぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!!!」

一閃。光と共に放たれたそれはルキフェルの体に強烈な一撃を与え
地面へと叩き付ける。
その衝撃で眼鏡は吹き飛び木っ端微塵。
ルキフェルはうつ伏せのまま地面にめり込んでいる。
「…フフ…最高だ。やはりニンゲンは…面白い。」
乾いた笑い声を上げて、ルキフェルは目を閉じた。

―数分後―

目を覚ましたルキフェルは何事もなかったかのように立ち上がる。
その傍にいるのは赤い服を着た美しい女性。
胸に白い紋章を刻んでいる。少なくとも教団のそれではない。
―「究極の闇が齎される日も近いな。」―
女は立ち上がったルキフェルに薬を渡し、無表情のまま言った。
そしてルキフェルの手に金色の破片を渡す。
「見つかったんだね。」
子供のような笑みを浮かべ破片を自らの体へ吸い込んでいく。
空を曇り空が包む。雨が降り始め、晴れたはずの光は
再び闇へ落ちていった。



60:名無しになりきれ
09/11/15 23:04:04 0
保守

61:ハスタ ◇fmAKADpWIqWy
09/11/16 21:59:21 0
>54>58
>「それは違うわ。光と闇はともに存在する。光がなければ影も生まれないし、影がなければ光りも生まれない。
>光と闇が生まれた時から一心同体なのよ。あなたのその考え間違ってるわ」
「そうか?光と闇しか存在しなかったら間に人間の人格がいなくなるとオレは思ってるんだけどね。」
左手を後ろに回し、槍の一本を引き抜いてコクハに向けて突きつけるように構える。

>「闇に飲まれた?何を言ってるの?私の心は初めから闇よ。同胞たちを殺す意図があるのなら、避けろ!
>なんて叫びはしない。街を守るために同胞である市民を殺したあなたたちと一緒にしないでほしい」
「だったら、お前は最初っから人間じゃないってことだな。それに・・・・・・人間が人間を殺すのはごく自然だろ?『人間は共食いをする生き物だ。』」

その瞬間、抑え切れない悪意が冷徹な声の形を取る。
爆炎の向こうから飛来する黒翼の死神が振り上げる剣を、右手に握った槍で受ける。
炎を突き破った直後にコクハは ぞわり 、と不快感を全身に感じるだろう。
元々戦士であった上に魔物化により強化された力は当然片手で受けきれるものではない。
それでもなぜ受け止めているのか・・・それは剣と槍の間に張り巡らされた白い糸のようなものだ。

「さて、ここで問題。オレの槍の残り三本はどこにいったでしょう?・・・なんて言うまでも無いわな。」
とてつもなく細く、糸と化した『四瑞』。それが、剣の威力を殺しまたコクハの全身に纏わりついてきている。
その『糸』は周囲の構造物などを巻き込む事で巧みに力を殺している。

「・・・・・・で、その仲間がいなくなってアンタはどうするんだろう・・・ねッ!」
視線だけでルキフェルがいなくなった方向を示し、相手の意識が逸れた隙を狙い左手を引く。
コクハの全身に絡みついた糸につながっているのではなく、コクハのその翼に纏わりついた『糸』。
左手の力が滑車代わりの各建造物を巻き込み、普通の人間の腕力を超える力でコクハの翼をずたずたにせんと引き絞られる!

【『糸』の罠にコクハを嵌めて、翼に攻撃。】

62:コクハ ◆b9hCaqglWQ
09/11/17 03:46:47 0
>「だったら、お前は最初っから人間じゃないってことだな。それに・・・・・・人間が人間を殺すのはごく自然だろ?『人間は共食いをする生き物だ。』」
「そう…なら永遠に食べあって死ねがいいわ」
剣が槍によってたやすく受け止められた。
人間がこの剣を受け止められることはまずない。
だとすると目の前にいる人間は本当人間か?
>「さて、ここで問題。オレの槍の残り三本はどこにいったでしょう?・・・なんて言うまでも無いわな。」
そんなことを疑問に感じていたが、答えは別のところにあった。
翼のあたりを見てみると、糸が左の翼に何本からからみついていた。
剣で切りつけた瞬間に糸で翼をからめとられ、勢いが殺されたのだろう。
糸が建物の周りで輪を描き、その先はハスタの左腕のほうへと延びている。
どうやら、この人物が糸を張り巡らせたのは間違いなさそうだ。
発言から推測するに槍を糸に変化させて、実現させたらしい。
>「・・・・・・で、その仲間がいなくなってアンタはどうするんだろう・・・ねッ!」
フェイクだ。
ハスタの言葉を無視し、剣で糸を切ろうとした。
だが、それよりも早く左手が引かれ左の翼が糸によって切断された。
「ぐっ…ぎゃあぁぁ」
支えを失ったからだが、地面に向かって落下しだした。
反射的に残っている翼をはばたかせる。
揚力が残っている翼に生じ、体の片方が持ち上がり、落下しようとする力が弱まった。
とりあえずこれで直撃という事態は免れた。
片方の翼をはばたかせ、地面に着地。
「槍を糸に変えるなんて面白いことをするじゃない。まさかトラップを仕掛けてあるなんて思いもしなかったわ。でも、一つ重要なことを忘れてない?」
地面に向かっている糸を手でつかみ、呪文を唱えた。
「光と対をなし、命ある時から存在しているものよ。その名は闇。その名において力をお与えください」
黒く染まった魔法陣が手の甲に現れ、指先が黒く染まる。
「体に触れることさえできれば、いくらでも武器を無力化できることをね」
指先を染めた黒は少しずつではあるけど糸を侵食し、糸と化したハスタの槍を真っ黒に染めだした。
【糸により羽が切断された。落下したコクハは着地すると同時に糸をつかみ、糸を闇属性に変え始めた(侵食されれば、使い物にならなくなります)】


63:名無しになりきれ
09/11/18 01:52:30 O
保守

64:名無しになりきれ
09/11/19 00:52:27 0
保守

65:フィオナ ◆tPyzcD89bA
09/11/19 03:42:08 0
気合一閃。
地を蹴り大上段へと振り上げた剣を雷光の如く叩き降ろす。

『…くだらない。その程度で…私を倒せるつもりですか…。』
速度、威力ともに最高に達した斬撃をルキフェルは事も無げに片手で掴み止めた。
「くっ……。」
押せども引けども微動だにせず動きを封じられる。
フィオナを睨み付けるルキフェルの双眸は爛々と朱を放ち、剣を繋ぎ止める腕は異様な程血管を浮き立たせている。

『あの薬を落とされたのは計算外でした…アレが無ければ
彼を押さえつけれない。私もどうなるか分かりませんしね…!!』

”俺 を も っ と 笑 顔 に し て く れ よ ”

朗々と響くルキフェルの声。しかしそれ以上にフィオナの意識へと叩きつけられる異質な声。
初めて対峙した時に聞いた底知れぬ深淵よりの呼び声。
硬直したフィオナの腹部にぴたり、とルキフェルの手が添えられる。
ぞくり―と背を走る悪寒。

ドンッ!

フィオナが身を捩るのとほぼ同時、凄まじい勢いで衝撃波が放たれた。

「あ……くっ……。」
わき腹を掠めた衝撃波はサーコートとその下の鎖帷子を引き千切り素肌が外気に晒される。
剣を保持するのも不可能な程揺さぶられ、たたらを踏んで後退。
掠めただけだというのに意識が飛びそうになった。直撃を受けていたら命は無かっただろう。

『…ハァハァ…終わりです。これで…!!』
ルキフェルは追撃の構え。対するフィオナは笑みを浮かべ―

「―そうですね。こちらの……勝ちです!」
炸裂する光。全てを灼く様なそれを浴びルキフェルの動きが止まる。
そして閃光を?き分け迫るレクスト。

『―お前のことは大嫌いだけどなぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!!!』
裂帛の気合とともに叩き込まれるバイアネット。
不意を討たれたルキフェルは吹き飛び、大地へと叩きつけられる。
うつ伏せに伏したまま笑うかのように暫く体を震わせ、がくりと糸の切れた人形の様にその動きを止めた。

「あ痛た……、助かりました。こちらは何とかなりましたね。」
フィオナはわき腹を抑えつつレクストに話しかけると、剣と盾を拾い上げもう一方の戦いへと目を向けた。

66:ハスタ ◆fmAKADpWIqWy
09/11/19 18:20:50 0
>62
>「槍を糸に変えるなんて面白いことをするじゃない。まさかトラップを仕掛けてあるなんて思いもしなかったわ。
> でも、一つ重要なことを忘れてない?」
「あん?」

コクハの唱える呪文が完成すると、指先からどんどんと糸が漆黒に染まってゆく。
>「体に触れることさえできれば、いくらでも武器を無力化できることをね」
「いや待て、そんなの一度も聞いてねぇぞ?!畜生!・・・・・・なんて言うとでも思ったか?」

にやり、と笑みを返すオレの黒瞳には今恐らく薄っすらと青が混ざってきているだろう。
浸食されつつある物も含めて、糸と槍の全ての輪郭がぐんにゃりと歪む。
元の形から開放されたそれらは、オレの両手に集い一抱えも二抱えもある球体を形作る。
それは形を失った薄青の魔力の塊。そのところどころが闇の黒に染まっているのだが・・・それもだんだんと青に還元されて球が肥大化する。
「確かにその方法だと『四瑞』じゃあんたにダメージは与えられなくなるが・・・この『四霊』ならどうだ?!」

回転。両手を中心に集った魔力塊は、下方からのゴルフスイングのような軌道を描く途中で姿を変える。
無形の魔力は所有者の意思に応え、その意志を体現する。それは巨大なウォーハンマー。
「無属性の魔力の槌を、受けられるもんならなぁ!!」
ほぼ0距離から放たれた一撃はコクハへ接触する瞬間に無音・無色の爆発をもって更なる追撃を与える!

振り切った後、再び形を失った球体は元の白い板に姿を変えて手元に収まる。
至近距離からの一撃、その結末を見ることなくオレは聖騎士と従士の二人の方を振り返る。
「とっととずらかるぞ!これ以上相手をしている時間が惜しい。し、これで死ぬとも思えない。
 途中で連中が妨害を受けてたらそっちも手伝ってやらなきゃいけないしな。」

そう声をかけて、揺り篭通りへの道を走り出す。


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