10/02/28 23:15:36 0
『アナスタシヤ…アリアリアリアリ…こ、攻撃!攻撃!敵よ!』
「イエス・攻撃目標・蟻型人間・標的数・13」
突き出す両腕の中ほどに黒い光沢。
機械人形の腕部から潜望鏡の如く現れた銃身は、威嚇や警告の一つも無く、けたたましい音を上げて火を吹いた。
銃撃の反動で金の前髪が何度も揺れる。
ばら撒かれた弾丸は、床を柱を天井を削って弾痕を刻み、残りはミュルミドン達の強靭な体皮に突き刺さった。
床のタイルに蟻人間たちの透明な体液が流れ、花火の煙にも似た硝煙臭がフロアの空気に混じってゆく。
出会いがしらの奇襲で幾匹かの蟻人間が倒れると、残るミュルミドン達が一斉に身構える。
『敵が出現したアリ!』
『排除するでアリます!』
当然だが、問答無用の攻撃はミュルミドンたちに敵意を抱かせるには充分だったようだ。
彼らは整然と、かつ迅速に十字型に隊列を組む。
『良いか有山? 我々はインペリアルクロスという陣形で戦うアリ。
防御力の高い有村が後衛、両脇を有間と有藤が固めるでアリ。
お前は私の前に立つアリ。お前のポジションが一番危険でアリ。覚悟して戦うアリよ。』
眼前で仲間を倒されたにも関わらず、蟻人間たちは畏れる様子も無く毅然とした統率の元に襲いかかってきた。
再銃撃は肉の壁と化した有山を即座に沈めるも、直後に勢い良く金属を叩く衝撃音。
アナスタシヤは、有山の背後に控えていた黒いミュルミドンの警棒の一撃を右手で受けていた。
さらにその横から噛みつかんと、首を伸ばしてきた赤みを帯びたミュルミドンの頸椎を左手で締め上げる。
しかし、三体目のミュルミドンの攻撃は防げない。
噛みつかれたアナスタシヤの右腕に二つの孔が開いた。
『右腕・小規模破損・損壊率2%』
アナスタシヤが正面を蹴り上げると、ミュルミドンが体勢を崩して数歩退く。
左腕の銃が音を立てて、赤いミュルミドンを吹っ飛ばす。
自由になった左腕が、今だ右腕に噛みついたままのミュルミドンの頭を握り潰した。
『右腕・損壊率5%・右腕装備・使用不可・デス』
背後の織羽はピクリとも動かない。
初めての戦闘らしい戦闘に竦んだかのように。
255:カフェ ◆YNbEhcUF/I
10/03/04 00:42:32 0
>252-253
「ぼくちんには分かる、あれは本物にゃ。ゼルダ姫、助けに参りましたにゃー!」
俣旅ゼルダに駆け寄ろうとする師範をカフェが後ろから捕まえる。
「何をいっておるのじゃ? どう見ても男であろう!
さては霊力を吸い取られて寝ぼけておるな」
>「魔族を裏切れば殺されるに決まっとるし、自首しても下手をすれば死刑になるやも知れんしな…。
わしも途中から抜けるに抜けられなくなってたんや…。」
「そうであったのか……。魔族め、人の弱みにつけいるとはなんて卑劣なのだ!」
カフェは今にもエンディングに突入しそうなオーラを出している。
師範はカフェの腕の中でもがいている。
「雰囲気に流されて終わったらダメにゃ! 早く追わにゃいと!」
そう思っているのは師範だけではないようで、連れてきた黒猫が一行をせかすように社長室のドアを引っかいている。
――――――――
一方、社長室の外。ミュルミドンの一人がヘルゴティスに指示を仰いだ。
「どうするでアリます?」
「うーーむ……。我々は召喚者に忠実な一族。召喚者たる神田呑が戦意喪失したとなれば……」
「となれば?」
ヘルゴティスは重々しく宣言した。
「……俣旅ゼルダを解放した後撤退!!」
「召喚者のために忠義をつくして戦うんじゃないでアリますか!?」
とずっこけつつも、ミュルミドンが俣旅ゼルダの縄を解こうとした時。
俣旅ゼルダは一瞬猫の姿になり、拘束していたものが全てはらりと落ちる。
さらに次の瞬間には、猫耳の美少女がそこにいた。
「30代男がいきなり美少女になったでアリます!」
「独身30代男は世を忍ぶ仮の姿ニャ! どさくさに紛れてさわるんじゃニャい!」
ゼルダがミュルミドンに猫パンチを放ち、吹っ飛んだミュルミドンが社長室の扉にぶち当たって扉が開く。
――――――――
「神田呑、御苦労だったニャ。こうにゃるのも全て計画通りニャ。
ちなみにボクは俣旅ゼルダニャ」
「な、なんじゃあ!? ただの30男ちがうかったんかい!」
どうやらバックにいる魔族は、神田呑社長にも計画の全貌を教えていたわけではないようだ。
というよりいいように利用されて踊らされていたのである。ああ、悲しき小悪党。
「俣旅ゼルダは化け猫だったのか……!」
「ゼルダ、どうしてにゃ……!? 人間と共存してこその猫じゃにゃいのか!?」
「数百年前はそれが通用したニャ。でも近頃人間は調子に乗り過ぎニャ。
このままでは動物が住めなくなってしまうニャ……。
魔族は、人間が我がもの顔ではびこる原因はデタントが崩れているからといっていたニャ。
崩れたデタントを何百年もかけて戻していては間に合わニャいとも!
ボクはオーパーツをある場所に届けるニャ……! 止めれるものなら止めてみるニャ!」
そう言ってゼルダは目にも止まらぬ早さで階下に降りていく。
「なんてことにゃ……きっと魔族にそそのかされたんだにゃ!」
「オーパーツは師匠がコンセント刺されておったあれか!
満タンではないにしてもかなりの霊力が溜まっておるに違いない……急ごうぞ!」
256:藤津木 織羽 ◆Olha/49Xgc
10/03/05 03:17:31 0
【社長室前】
『もうたくさんや………もう、魔族もアリも知らん! どうにでもなれい!』
神田呑社長が自棄になったように叫び、大の字になって寝転ぶ。
『その言葉、契約放棄と見なす。そういう事なら我はこれにて………ギシシィ!』
己の棲み家たる魔界に帰ったのであろうか。
魁偉な容貌の蟻魔ヘルゴティスは、レギオンビルの空気に溶けるように消えた。
同時に今までビル全体から感じていた圧迫感が薄らいでゆく。
『我々も帰るでアリます。』
『次の雇い先は、ブラックな企業ではないと良いのでアリますが。』
ミュルミドンたちも消えた。
次元移動能力を持たぬ故に駆け足で階段を下りて。
【中層階廊下】
「え…何?」
それまで死兵の様相で対していたミュルミドンたちが、後退を始めて一目散に去ってゆく。
彼らの突然の撤退は、アナスタシヤの攻撃によって戦意を喪失したからではない。
神田呑の契約放棄でヘルゴティスが去った事により、ミュルミドンたちの下請け契約も消滅したのだ。
もはや、彼らに戦闘を続ける意味は無い。
遁走する彼らの行き先は、レギオンビル地階のさらに下に存在する地底世界。
深い地の底には人間の常識など及びもしない未知の世界が広がっている。
そこには妖怪、モーロック、恐竜人、蟻人間のコミュニティ………何が存在していても不思議ではあるまい。
「あ、そういえば…。」
織羽は何かに思い至った様な顔になると、懐から携帯電話を取り出してカフェに連絡を入れた。
こうすれば簡単に二人の現在位置が分かる事に気付いたのだ………ようやくにして。
「カフェさん? 今どちらに?」
伝えられるのは切迫した現状。
「ええと………要するにメルクリウス貿易の社長は、魔族と組んでたけど単なる下っ端で、
実は化け猫の一族で師範の知り合いだった俣旅ゼルダが、オーパーツを持ってこっちに来る…?」
257:藤津木 織羽 ◆Olha/49Xgc
10/03/05 03:24:21 0
【階段】
社員が去って静かになったレギオンビルにタン…タン…と響く、軽やかな着地音。
上階から飛び降りるように猫耳の少女が跳ねてくる。
「アナスタシヤ…その猫耳を捕まえてっ!」
『イエス・対象捕捉』
待ち受けていたアナスタシヤが強化ネットを発射。
階段の幅いっぱいに広がった網からは何者も逃れる術はない。
『猫変化ニャ!』
しかして、猫耳の少女――ゼルダは透明な物体に姿を変えて強化ネットをヌルリと抜ける。
その透明なゲル状の麺は紛う事無きトコロテン。
そしてトコロテンは、捕縛から華麗に抜け出すと再び猫耳少女の姿に戻った。
アナスタシヤを見るゼルダの口元は花のように綻ぶ。
『ボクは木偶人形なんかに捕まらないニャ!』
『再補足・シマス』
ゼルダは機械人形の接近を跳躍で躱し、そのまま天井を蹴った勢いで階下の踊り場に着地。
「ちょっ、ちょっと…待ちなさい!」
織羽が悪足掻きとばかりに振り向きざまに胸ポケットの万年筆を投擲。
しかし投擲物は標的に当たらず、踊り場に落ちて虚しく割れた。
流れ出たインクは、踊り場のタイルに黒い模様を描くだけ。
『どこ狙ってるニャ! ヘタクソ!』
嘲りの声を残しながら猫耳の少女は階下に姿を消し、ほどなくGSたちも上の階から降りてくる。
「ごめんなさい…ゼルダに逃げられたわ。
そもそもあの変身能力があるんじゃ、普通の方法で捕まえるのは難しそうね。
………それにしても蟻人間に化け猫…人外の存在が、
こんなに人間社会に浸透してるなんて、ちょっとしたカルチャーショックね…。」
化け猫って…そういえば…。
「あっ…ひょっとして、ホシュにあった霊力マタタビがあれば、化け猫の変身能力を無力化できそうじゃない?」
258:牧街 ◆GwyfLokZWa7/
10/03/05 22:55:43 0
俣旅ゼルダは化け猫だった!!
東京タワーにて謎の計画が!!
ミュルミドン、帰宅!!
次々と起こる大事件の中で、牧街は……
大の字でばたりと倒れている神田社長が横を見ると、そこにはつい先程まで物凄い迫力で自分を脅してきていた若者が、吹っ飛ばされた扉に潰されている姿があった
この男は意識がはっきりしなくなると存在感が無くなるらしい
「…うぉ!!き…君、まだおったんか!!」
驚いた神田社長の声で、うーん、とか言って牧街が起きる
「ぁたた…えーと…何がどうなったんでしたっけ?」
周囲が落ち着いたため、追い詰められたネズミモードが解除され、ぼけぼけした雰囲気で尋ねる牧街に
しかし先程までの凶悪犯な雰囲気の牧街しか知らない神田社長はびくびくしながら、一応返事をする
「き…君の仲間、何か猫耳娘追いかけてったで」
「猫耳…あ、そーだ、そーだ、ゼルダさん妖怪だったんだ」
そう言って、牧街はぽんっと手を叩くと、社長の手を引き、二人で立ち上がった
「…?何?わしにまだ何か用事があるんか?」
おどおどして牧街を怖がる社長に牧街は指を立てて再び解説モードになる
「いえ、何か起きる前に二人でさっさと逃げましょう、えぇ!」
固まる社長
「ちょ!!君、仲間まだ戦っとるんよ!薄情とちゃうんかそれ!」
思わず尋ねる神田社長の手を引き、さっさとエレベーターへ向かう牧街
「いや、もう依頼達成しましたし…、後は警察の仕事かなーって……」
正義の味方じゃない台詞に、思わずうっと怯む社長
「けど…ほら、何かオーパーツを東京タワーに云々と…」
「オカルトGメンにタワーの方を攻撃してもらえば万事解決ですよ、えぇ。第一俺の脚じゃ猫に追いつけそうにないし」
「君、それ職務怠慢言う奴やで」
「えぇ!?けど…俺…依頼は達成しましたよ」
段々弱気になっていく牧街と、段々説教口調になっていく神田社長
「依頼者との間で良好な関係築くんに必要なんは言われた事だけやるんとちゃうやろ?ちゃうか?」
「そうっすけど…こっち命かかった仕事ですし…」
「好きでやった仕事やろが!命の危険のある無しは問題とちゃうんやないの?ん?」
パワーバランスが逆転してきた…
「けど…ほら、俺、追いつけないし…」
「そこは君が知恵を振り絞るとことちゃうんか?はよ世界守り!」
神田社長に叱られ、背中ばんっとはたかれ、しょんぼりとしながら部屋を出ようとした牧街は、ふと、ある事に気がついた
「社長さん、ちょっと思いついたんですけど…」
259:牧街 ◆GwyfLokZWa7/
10/03/05 23:26:18 0
『我はヘルゴティス!!人間よ、我に……ってまたこの会社か!!』
蟻魔、ヘルゴティスは思わず叫んだ
その光景をびくびくしながら、召喚者、牧街が見つめている
「真に申し訳ありません…えぇ…あ…あはは…」
牧街が思いついた作戦、それは神田が使った魔道書を使い、再びヘルゴティスを呼び出して手伝ってもらうという物だった
召喚しておきながら、本当に申し訳なさそうな態度でそう言う牧街に、ヘルゴティスは多少面倒くさげに、尋ねてくる
『それで、何のようだ?我々は召喚者の能力で強くも弱くもなる、貴様なら神田の時以上に我々は働けるぞ』
「あ…えーと…いいんすかね?頼んでも」
牧街の返答に、多少怯むヘルゴティス
長い事この仕事をしてきたヘルゴティスだったが、召喚者に頼んでいいんですかなどと尋ねられた事など一度も無かったからだ
『…遠慮する事はない、言ってみろ』
「んじゃ…その……」
地下から再びミュルミドンの集団が現れる
彼等も牧街が呼び出した事でパワーアップしているのだろう
全員が黒いボディスーツに防弾チョッキ姿の特殊部隊ルックである
「A小隊はゲートの閉鎖、B小隊、C小隊は通気口を塞げ!D、E、F小隊はワームを攻撃する!」
「「「「「了解」」」」」
金色のラインの入ったボディスーツを着たミュルミドンルーパーの指揮の下、心なしか口調まで変わったミュルミドン達は1階のシャッターを閉鎖し、通気口を板で塞ぐなど、出口の閉鎖を行っていく
「あ!いたぞ!」
「とっ捕まえろ!!」
上の階へ駆け上がっていったミュルミドン達が、今しもオーパーツを回収せんとしているゼルダと対面し、一斉に虫取り網やさす又で襲い掛かる
「にゃ!?お前等!どういうつもりにゃ!」
「我々は牧街司令官の指揮下に入った!貴様を捕獲する!大人しくしろ!」
「ふんっ!お前等ごときにボクを倒せると思ってるのかニャ?」
ゼルダは目にも止まらぬ速度で飛びはねてミュルミドンルーパー達の攻撃を簡単にかわし、次々と彼等を殲滅していく
「ク…クロックア…」
余計な事を言おうとしたミュルミドンルーパーがまた一人、吹っ飛ばされてしまう
「あ!」
作戦会議をしていたカフェ等の元に、ゼルダ捕獲に向かっているミュルミドンルーパーの一団が遭遇した
すぐさま発砲するアナスタシヤの攻撃を受け2体程蜂の巣になってしまうが、残ったミュルミドン達は素早く遮蔽物に隠れ、武器を捨て、藤津木等に呼びかける
「待て!我々は牧街司令官の指揮下の部隊だアリ!ゼルダ、コードネーム、ワームの捕獲に協力する!撃つな!!」
260: ◆GwyfLokZWa7/
10/03/05 23:49:50 0
東京タワーに程近いビルの谷間に、ホッパーと、スーツ姿のがたいがよく目つきの悪い中年男性、コブラが待機している
そこに、ビルの上から音も無くスパイダーが降り立ってきた
「…あっちはもういいのかい?」
腕を組み、壁に寄りかかりながら尋ねてきたホッパーに、スパイダーは頷く
「ああ、問題無い」
「そうか…、んじゃ、もう俺達は向こうに回る必要無いな。後は師範を…」
待つだけだな…、そう言おうとして、ホッパーはふっと息を吐いた
いつの間にか、師範が路地裏の奥に目つきの鋭い男と、女の様な美男子の二人のスーツ姿の男と共に立っている
「Gメンの方は手が空いていないらしいので応援は来ない、我々と応援に来てくださったお二人でテロ魔族を殲滅する」
「僕等だけでも十二分、精々君達が足を引っ張らない事だけが心配だよ」
そうスパイダー等に報告する師範に、スーツ姿の美男子の方が髪をとかしながら言った
ホッパーはムッとして何か言い返そうとするが、スパイダーが手でソレを制する
「逃げられるとまずい、さっさとカタをつけよう」
「そのつもりさ…ヒヒ」
鋭い目つきの男が、不気味な笑みを浮かべながら言った
その笑みの中に、自分達への嘲りを感じ取ったスパイダーもわずかに眉をひそめる
「…では、行きましょう」
これ以上険悪な雰囲気になっては面倒くさいと思った師範が、一同に出発を促し、一同はタワーへと歩いていく
極力霊力を潜め、本来ならば人が溢れているはずだが、今日は人がまばらなタワー内へと入った彼等は、階段にて上階へと歩いていった
階段には、最早人の姿は無い
恐らく催眠術の一種で徐々に人がタワーから出て行っているのだろう
261:カフェ ◆YNbEhcUF/I
10/03/06 23:44:59 0
>256
>「カフェさん? 今どちらに?」
「落ち着いて聞くのじゃ。
俣旅ゼルダが実は化け猫で師範と知り合いらしいのだが魔族の手中に入っておったらしい!
猫耳美少女になってそっちの階層にオーパーツの回収に向かっておる! 取り押さえてくれ!」
社長との契約が切れたのか、アリ人間達が撤退していく。
一方その間、師範は、黒猫と猫語で会話していた。
「にゃにゃんにゃにゃー!」
「にゃにゃにゃ? にゃんと……! 運転手が怪しい!?」
そして電話をかけて猫タクシーを呼ぶ。
「念のために猫タクシーを召喚するにゃ! もしもし、至急ここまで来てほしいにゃ!」
>257 >259
>「あっ…ひょっとして、ホシュにあった霊力マタタビがあれば、化け猫の変身能力を無力化できそうじゃない?」
「あれなら証拠品として持ってきておるぞ!」
霊力マタタビを取り出したその時。
>「あ!」
アリ軍団が再びあらわれた!
「撤退したのではなかったのか!?」
一悶着の後、ミュルミドン達は武器を捨てて呼び掛け始める。
>「待て!我々は牧街司令官の指揮下の部隊だアリ!ゼルダ、コードネーム、ワームの捕獲に協力する!撃つな!!」
「何……!? 牧街殿が!?」
誤解は解けたものの、一悶着したことで時間をロスしてしまった。
それでも、ミュルミドン達の足止めもあってオーパーツを回収済みの俣旅ゼルダの後ろ姿に追いつく事が出来た。
「食らえそりゃあ!」
霊力マタタビを投げる。
「ニャー!」
思わず飛びつく俣旅ゼルダ。
彼女はマタタビを咥えたまま猫の姿に戻り、オーパーツが手を離れる!
「よっしゃ!」
が、オーパーツに見覚えのある男性の手が伸びる。
ここに来る時に乗っていた車の運転手である。
「おお運転手さん、心配して来てくれたのか。
それは重要なものゆえこっちに渡してはくれぬか?」
運転手の返答は非情だった!
「だが断る」
運転手はオーパーツを持ったままついでに猫状態の俣旅ゼルダも抱き上げ、出口に向かって走り始めた!
262:藤津木 織羽 ◆Olha/49Xgc
10/03/07 15:15:35 0
軍靴を響かせて、階下から武装したミュルミドンの集団が駆け昇ってくる。
「蟻人間たちが武装してる…? アナスタシヤ、迎撃。」
無意識的に体が下がるのは、先程経験したミュルミドンとの戦闘ゆえにか。
>「待て!我々は牧街司令官の指揮下の部隊だアリ!ゼルダ、コードネーム、ワームの捕獲に協力する!撃つな!!」
「待ってアナスタシヤ、攻撃停止! 牧街…司令官? って…ええと…どういう事?」
『牧街司令官がヘルゴティス様と契約したので、下請けの我々も牧街司令官の麾下に入ったでアリ。』
続くミュルミドンルーパーの説明を聞く織羽の顔は渋い。
「そう…。」
返答の声にも、いささか冷めた色が乗る。
当初の織羽の目的は、vistaの戦闘テストと技術者の救出。
もっと正確に言えば功績を上げ、一族内での立ち位置を確保する事。
ゼルダが離反した今、技術者救出には意味が無く。
戦闘テストを続行しようにもアナスタシヤが万全の状態とは言えない。
神田呑社長が操っていた魔族も牧街が押さえてしまった以上、戦闘テストも延期が妥当に思われる。
さらにゼルダの目的たるデタントの早急な修復とやらに至っては、全く理解の範疇を越えてしまっていた。
辛うじて、某過激派動物愛護団体と同様の主張部分が分かっただけである。
「…動機はともかく、とりあえず俣旅ゼルダだけは確保して、
どれくらい藤津木の内部情報が漏れてるのかを調べなくちゃいけないわね…。」
とりあえず、理解不能な事を卑近な目的に置き換えてゼルダ追跡に入った。
牧街麾下のミュルミドンによってビルの各所が封鎖され、
統制された蟻部隊の働きがゼルダを追い詰める。
しかし…部隊のターゲットは織羽らをここまで運んできた運転手に強奪されてしまった。
「え…ちょ、ちょっと! 運転手! ………藤津木にはいったい何人スパイが入り込んでるのよっ!」
織羽の叫びを背に残して、黒塗りのベンツがメルクリウス貿易の敷地内から消えた。
263:藤津木 織羽 ◆Olha/49Xgc
10/03/07 15:17:13 0
肌寒い宵の空気を切り裂いて、一台の車がメルクリウス貿易の敷地に突入してくる。
闇に光るヘッドライトは猫の双眸。
アスファルトを駆けるタイヤは獣の四足。
車は全くスピードを緩めることなくエントランスの硝子を割って、ホール内に侵入した。
猫タクシーは秋葉原師範の「もしもし、至急ここまで来てほしいにゃ!」 に正確に応えたようだ。
「今度は敵なの!? 味方なの!?」
『僕ちんが呼んだ猫タクシーにゃ。』
「………タクシー?」
絶句せざるを得ないが、巨大な猫かタクシーか分からないものの脇腹には窓が嵌められており、
内部にタクシーらしき座席が備え付けられているのが見える。
「な、何だったかしら…これと似たようなもの…昔、何かの映画で見たような…。」
『それより、みんな早く乗るにゃ! ゼルダを乗せた車が逃げるにゃー!』
了解したとばかりに何匹かのミュルミドンがトランクに潜り込み、屋根にしがみ付く。
師範の剣幕に押されて、織羽も猫タクシーに乗り込んだ。
そして、乗員を過剰満載して道路に出た猫タクシーを迎えたのは…。
「帰宅ラッシュの渋滞………これじゃ追いつくのは無理、ね。」
『歩道が広いにゃ。』
「歩道…って、深夜ならともかく、まだ人がいるでしょ?」
『関係無い。行くにゃ。』
秋葉原師範の指示で、進路を歩道に変更した猫タクシーが街を駆け抜ける。
歩道上では驚愕する通行人が立ちすくみ、或いは慌てて飛び退く。
人の波を俊敏なる動きで巧みに躱し切った猫タクシーは、ついにベンツを射程圏内に捉えた。
屋根にしがみ付いていたミュルミドンは、何匹か姿が見えなくなっていたが。
「………妖怪に交通法規を周知徹底させる事を真剣に検討する必要がありそうね…。
それは後で良いとして、まずは車の動きを止めなくちゃ…アナスタシヤ、ベンツのタイヤを狙える?」
『イエス・命中確率・78%・攻撃開始』
織羽の指示にアナスタシヤが窓から左腕の銃口を突き出して、散弾をばら撒いた。
銃撃の雨を受けたタイヤは破裂し、道路を削るアルミホイールが耳障りな騒音を撒き散らす。
バランスを失った黒塗りのベンツは、惰性で数十メートルもスピンして、灰色の街並みへと激突した。
「………まさか、死んでないでしょうね?」
織羽はアナスタシヤを連れて猫タクシーを降りると、ブスブスと煙を上げる車に近づいた。
264:牧街 ◆GwyfLokZWa7/
10/03/07 20:45:15 0
『…うむっ、ミュルミドンとGSがオーパーツを追い詰めたぞ』
「無事、事件解決ですね、えぇ」
社長室の応接セット
ヘルゴディスと牧街、社長の三人が、ミュルミドンの持つ通信鬼から送られてくる情報を報告するヘルゴティスの言葉に聞き入っている
どうやら、オーパーツは無事、回収されそうである
「いや、一時はどうなる事かと思いましたね」
『ふふふ、そうだね、想定内で終わりそうだよ』
『無事、終わりそうで何よりだ』
「まぁ…とんでもない事にならんかっただけ良かったかな…うん」
事件解決の兆しに「4人」が各々が力なく笑う
そう、「4人」が
「…ア……レ?」
それに気づいた牧街が声を出し、ヘルゴティスが牧街を守ろうと手を伸ばして何者かと牧街の間に割ってはいる
「ひ…ひぃいいいいいいいいい」
突然の来訪者の出現に、社長は素っ頓狂な声を上げて、社長室の外に逃げ出した
「やぁ、君とは、始めましてだね、牧街君」
真っ黒いタキシードに身を包み、笑みを浮かべた仮面を身につけたその人物は、ヘルゴティスを全く恐れず、距離をとった牧街へ近づいてくる
「な…な…何?何君は」
「前回は黒幕、今回は協力者、かな?」
わけのわからない事を言ったその男は、拳をふるって迎撃したヘルゴティスの攻撃を跳躍してかわし
上空から剣を投げつけ、牧街の腹に深々と突き刺した
「え?ぁ……が……!?」
突然の事に反応できず、血を吐き、崩れた牧街の手から、その怪人は魔道書をもぎ取り、ヘルゴティスに振り返った
「さて……じゃ、言う事を聞いてもらおっかな?」
大量に出血し、動かなくなった牧街を足の下に踏みつけながら、怪人物は明るい声で、そう言った
265:牧街 ◆GwyfLokZWa7/
10/03/07 21:05:59 0
『……任務……了解…………破壊…破壊…キキキキキキキ』
『ギニャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア』
ベンツに注目する藤津木等の背後から、突如、猫の悲鳴が轟いた
見ると、真っ赤な目に変わったミュルミドンルーパー達が猫タクシーに群がり、鋭いキバで喰らいついている
驚く間も無く、藤津木の背後に立っていたミュルミドンルーパーが彼女に抱きつき、彼女の首を食いちぎらんと喰らいついてきた
『キキキ……キ……』
更に近くのマンホールの蓋が飛び上がり、中からあの巨大蟻や真っ赤な目のミュルミドンが次々と現れ、カフェや師範らに襲い掛かっていく
ベンツの窓を叩き割り、ロックを外したミュルミドンが、気絶しているゼルダを邪魔だとばかりにコンクリートの地面に投げつけ、叩きつけてどかし、オーパーツを回収したミュルミドンは、東京タワーへと走る
「フニャアアアアアアアア」
「フーーーー!!」
と、東京タワーへと向かうミュルミドンの前に、猫の一団が立ち塞がった
恐らく、カフェの師匠に加勢するために片付けたのだろう
毛を逆立て、ミュルミドンを威嚇する猫達
しかし、赤めのミュルミドンは怯まず、顎を開くと、そこから強酸を噴射した
「ニャギーーーー」
「ギャーーーーーー」
たちまち悲鳴が上がる猫等を踏みつけ、蹴散らし、飛び掛る猫を拳で撃墜し、ミュルミドンはさっさと東京タワーへ向かう
後を追わんとするカフェ等の前にもミュルミドンが立ち塞がり、キバで襲い掛かってきた
特にカフェの師範には例の巨大蟻が三匹ほど襲いかかり、三方から酸やキバで攻撃し、変身のチャンスを与えまいとする
凶暴化しても、巧みなフォーメーションは健在なのだ
266: ◆GwyfLokZWa7/
10/03/07 21:14:45 0
襲い来る操られた蝋人形達を蹴散らし、展望室の扉の前へとたどりついた恐山師範達
と、言っても、師範やホッパー等はほとんど何もしていない
後からやってきた例の二人が、いともたやすく蝋人形達を蹴散らして行ったのだ
恐山師範等は確かに「人間の中では」強力なグループに入っていたが、彼等の前では、所詮露払い程度しかできない
そして、その程度の実力では、魔族どうしの戦いに恐山流GS達が足手まといなのは、明白だった
「ここから先は我々だけで行かせて貰うよ」
師範等を馬鹿にした美青年の魔族正規軍の軍人が、ドアノブに手をかけながら言った
「……」
それに対し、恐山等は何も答えない
それをよしととった美青年魔族は、もう一人の魔族を促し、展望室へと突入する
恐山師範等には最早、言葉も無かった
267:名無しになりきれ
10/03/08 14:06:51 0
多分?
268:名無しになりきれ
10/03/08 15:55:01 O
ミュルミドンの酸で全身の皮膚が焼け爛れた瀕死の猫Aは口を半開きにして冷たいアスファルトに横たわっていた。ほとんど呼吸もしていない。目も半開きのまま虚ろで、かつてどんな暗闇の中でも獲物を捕らえることのできたその目も機能を完全に失っていた。
徐々に身体が硬直し始めるなか猫は過去のことを思いだしていた。ノラネコ時代にお腹が空いて辛かったこと、優しい人間たちに沢山のエサをもらって嬉しかったこと。
そして最後に母猫のこと。それは遠くうすぼんやりとした記憶だったが意識が遠退いていく猫にはそれが不思議と近づいて来るような気持ちがした。
ごろごろと微かに喉を鳴らし猫Aは絶命した。
269:カフェ ◆YNbEhcUF/I
10/03/10 00:18:26 0
>263
ベンツと猫タクシーによるカーチェイスが繰り広げられ、ついに追い詰めた。
「堪忍せい!」
織羽やアナスタシヤと同じく、ベンツに駆け寄る。
>265 >268
>『……任務……了解…………破壊…破壊…キキキキキキキ』
>『ギニャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア』
「のわあああああ!?」
ミュルミドンがいきなり凶暴化して襲いかかってきた!
無我夢中で傘を振りまわしながら追い払う。
「まずいぞ! 牧街殿ではない誰かの管轄に入ったようじゃ……!」
オーパーツを追おうとすると、さらに軍をなして襲いかかってくる。
師範に至っては取り囲まれている。
「ぎにゃーー!!」
「師匠!」
師範は霊力を吸い取られた直後のため、いつもの出力を発揮できない!
今のところ懸命に猫パンチで対抗しているが、いつまで持つか。
一方、運転手が壊れたベンツから這い出て来た。
オーパーツを持って走り去ったミュルミドンには目もくれず、地面に転がっているゼルダに駆け寄る。
「ゼルダ様……しっかり!」
激しい乱闘のさなか、目の前で名も無き猫が絶命する。カフェは叫んだ。
「俣旅ゼルダとその仲間よ! これがお主らの望んだことか!?」
ゼルダは倒れていく猫達を見ながら、力なく呟いた。
「こんなの違うニャ……ただ懐かしかっただけなのかもしれニャい……
あの風渡る霊原が懐かしかっただけ……」
運転手も悲痛な表情をうかべて語りかける。
「ゼルダ様……。魔族は私達を最初から仲間だなんて思ってなかったんですね」
その様子を察したカフェは必死で協力を請うた。
「ならば手を貸してくれ!」
ゼルダと運転手は逡巡している様子。
すぐには気持ちを切り替えられないのかもしれないし、あまりの敵の勢いに圧倒されているのかもしれない。
270:カフェ ◆YNbEhcUF/I
10/03/10 00:22:40 0
そんな中、ミュルミドンの攻撃がカフェを鞄をかすり、持ち物が散乱する。
茶筒に入ったお茶が地面を転がり、ゼルダと運転手の元に行きつく。
「あ……」
茶筒を見たゼルダの脳裏に、昔昔の思い出が鮮やかによみがえる。
ゼルダは猫耳少女の姿になって茶筒を力強く掴み、運転手に命じた。
「今すぐ噴射口がスプレー状のポットに化けるニャ!」
変わった命令だが、ゼルダの瞳には強い意志の光が宿っている。
「は……はい!」
運転手は命じられるままにスプレーポットに化けた。
幸い、運転手とゼルダはまだ攻撃対象に入っていない様子だ。
ゼルダはお茶っぱを取り出し、スプレーポットの中に入れる。
そしてミュルミドン達にお茶を噴射し始めた!
ミュルミドン達は明らかにひるんだ様子を見せ、後退する。
「どういうことじゃ……!?」
お茶にはカテキンという殺菌成分が含まれている。
古来より殺菌作用と対魔作用は強い相関性があるので、対魔の霊力茶があっても不思議ではない!
が、それだけではなかった。お茶スプレーを辺り一面に撒きながらゼルダが語り始めた。
「昔々、秋葉原は猫の霊原だったのニャ。秋になると強力な霊力茶が取れていたニャ。
このお茶は友好の証として当時の化け猫の長が化け狸の長に贈ったものニャ。
きっと数百年霊山に置かれていたことによって霊力が増したんだニャ」
「秋葉原の秋葉はお茶のことか……しかしそんな事聞いたこともないぞ」
「表向きの歴史からは抹消されているから当然ニャ」
語っている間にも周囲はお茶の霧まみれになり、ミュルミドン達は撤退していく。
「オーパーツは……もう行ってしまったか」
「そんなことより牧街くんが危ないにゃ!」
アリの猛攻でボロボロになった師範が訴える。
その言葉に、カフェはとんでもない事に思い至って顔色を変えた。
「牧街殿から命令権を奪取した上これ程までにミュルミドンの力を引き出す存在……魔族か!?」
271:藤津木 織羽 ◆Olha/49Xgc
10/03/10 19:02:29 0
態度を変貌させたミュルミドンが、背後から織羽に抱きついて締め上げる。
魔物の怪力は、織羽の骨をミシ…ミシ…と軋ませ嫌な音を上げさせた。
酸素を求めて口を開けるも、圧迫された肺ではほとんど息が出来ない。
「く…はっ…あぁ!」
口腔をカッと開いて顔を近づけたミュルミドンが、織羽の首筋に冷たい牙を当てる。
『マスター・防衛・シマス・ミュルミドン・再攻撃対象』
苦痛と恐怖に意識を失い掛けた時、生温かい飛沫が頬に浴びせられた。
同時に織羽を絞めつけていたミュルミドンが、腕を緩めて倒れる。
膝を付いて荒く息を吐くと、背後からベシャッと濡れた物を叩きつける音。
「げほげほ…けほっ…!」
へたりこんでいたためにアナスタシヤがミュルミドンの頭部から手刀を引き抜く瞬間が、
目に入らなかったのは幸いだったかも知れない。
「何…この匂い…?」
不意に魔虫の臭気を駆逐する馥郁たる芳香が辺りを包む。
それは霊原の葉が醸し出す、魔をも退ける清浄な空気。
吸い込む度に体の中から悪いものが押し流されてゆく気がする。
取り囲んでいた蟻人間たちは、ゼルダの手によって退けられていた。
>カフェ「牧街殿から命令権を奪取した上これ程までにミュルミドンの力を引き出す存在……魔族か!?」
カフェの口から敵として求めた魔族の名が挙がる。
しかし、牧街の危機を聞いてもレギオンビルに戻ろうという意思が湧いてこない。
足の筋肉は収縮を忘れたように動かなかった。
自らが直接攻撃に晒された事によって、ついに恐怖が心を占めてしまったのだ。
そして織羽は、それを克服するだけの強靭な精神力や使命感を持ち合わせていない。
「わたしは…行かない………もう一族の厄介者でもいいわ…。
所詮霊力の無いわたしがいくら足掻いたって、貴方たちと対等にはなれない…。
牧街を助けるなら貴方たちだけで行って…。アナスタシヤくらいは貸してあげるから…。」
折れた心で吐き出した言葉は、凍てつく夜の大気に力無く消えた。
【すみません…出涸らしになってきてしまいました。具体的には八番煎じのお茶ぐらいです。
あまり大きな動きは出来ないかも…】
272:李珠 ◆rdfEGE/BGM
10/03/10 19:04:52 0
展望室の床には、どす黒い血で五芒星が描かれていた。
その模様の中に無数の悪霊の群れを纏わりつかせた黒い影が佇む。
悪霊はこの地に眠る霊魂であった。
東京タワーは建設時に増上寺から墓地の一部を土地として提供されている。
増上寺が現在の場に移った慶長3年から、東京タワー建設の昭和33年まで360年近く。
取り壊された墓地に葬られていた霊は優に数千を超えよう。
それら全てが一つに集まり、無数の苦悶に満ちた顔を持つ悪霊の塊と化していた。
陰火を立ち上らせた黒いローブの人物は、歌うような楽しげな声で室内に侵入した二人の魔族に語る。
「やあ、よくここが分かったね。でも少し遅かったかな…?
ちょっと小用が出来たんで、ここはアルバイトの人に任せちゃったんだ。
まあ、せっかく大物を二人も派遣したってのに手ぶらで帰すのも悪いしね。
僕の玩具で少し遊んで行くといいよ。」
今の言葉は、乗り移った何かが言わせていたのだろうか。
黒いローブの人物が先程とは異なる声で伸べる。
「フフ…そういうことですか…。
どうやら貴方がたは偽撃転殺の計に掛かったようですね…。
この鉄塔が貴方がたの墓標です…貴方も行きなさい…化け狸よ…。」
そして袂から取り出した竹筒を投げつけた。
竹筒からは見るからに凶暴そうな狸の亡霊が現れ、生けとし生ける者たちに牙を剥く!
『うわぁ! なんでこんな~!』
【モンスターデータ】
レギオン:無数の霊をネクロマンシーで一つに寄り集め、邪霊波で強引に悪霊化した複合霊。
謎の黒いローブの人物:テロ魔族に操られたスカポンタン、正体は一切の謎に包まれている。
謎の化け狸:謎の人物が使役する謎の動物霊、正体は一切の謎に~以下同文。
273: ◆GwyfLokZWa7/
10/03/12 19:14:49 0
「ヒヒヒヒヒ……舐めたまねを!!」
鋭い目の魔族が、レギオン目掛け強力な光弾を放った
すさまじい威力のエネルギーはレギオンに命中し、一気に数体を消し飛ばすが、レギオンの勢いは止まらない
「無駄だよ、キリが無い」
近づくレギオンを手刀で叩ききりながら、美形の方が言う
「こういう時は、ね」
狸の動物霊の攻撃を鮮やかにかわし、美形魔族は黒フードの李…もとい謎の人物を指差す
「操っている奴を潰すんだ!」
その言葉と共に、謎の人物の体が燃え始める
念動発火、いわゆる人体発火現象だ
「少し遅かったって事はもう何かしろ始まっているって事か?」
「だとすると、それが行われているのはここじゃない、一体…」
群がるレギオンの攻撃を受け止め、弾きながら謎の男の口から放たれた言葉を反芻する二人の魔族
「まさか……メリクリウス貿易の方が敵の本当の目的地だったんじゃなかろうな?」
「頭は使ってこそ意味があるんだ…、明らかにこのタワーのどこかなんだ!ただ、ここじゃない!なら……」
何かに勘付いた美形魔族が、はっとなる
「……頂上、か?」
同じ頃、オーパーツを抱えたミュルミドンが、タワーの外壁を登っていた
東京タワーの頂上を目指して…
一方、魔族と謎の男が戦う展望台のドア一枚隔てた先の階段では、牧街の状況を式神を通じて感じていたスパイダーが驚きの表情を浮かべていた
「牧街が……やられた」
その一言に、コブラを除く2人がぎょっとなる
「どういう事だ!?奴等、もうあのビルに用は無いはずじゃ」
「ずっと隠れ潜んで様子を見ていた奴がいたらしい!糞!迂闊だった!!そいつが牧街から魔道書を奪ってヘルゴティスとミュルミドンを操ってる!」
「糞っ、師範!どうしま……師範!?」
突然の事態に師範の指示を仰ごうとホッパーが視線を向けると、そこには最早師範の姿は無かった
>>271
カフェも、師範も、アナスタシヤもいなくなった路上に、藤津木織羽が一人、ぽつんと立ちすくんでいる
周囲を歩く人の姿は無い、先ほどのミュルミドンの攻撃で逃げてしまったのだろう
警察も道が込んでいるためか、まだ到着していない
絶望に打ちひしがれているだろう、織羽は気づかなかった
お茶の臭いがもうかなり薄れてしまっている事に
「破壊……殺…戮」
マンホールから、先ほどで損ねたのだろう新たなミュルミドンが一体、現れた
ミュルミドンは織羽を見つけると、襲い掛かるべく近づいてくる
逃げようとする織羽の元に跳躍し、飛び掛かったミュルミドンは、しかしどこからか流星のごとくすさまじい速度で現れた影に、顔面を蹴られ、吹き飛ばされた
「が…ギ…」
吹っ飛ばされて路上で苦しむミュルミドンに背中を向けて、蹴った主、サングラスに胴着姿の恐山断弦師匠が立っていた
「……藤津木織羽さん…だね?君、こんなとこで何しとるんだい?」
師範は膝をつき、織羽に呼びかける
274:牧街 ◆GwyfLokZWa7/
10/03/12 19:30:51 0
「こんなもん…かな?」
オーパーツが無事目的地へ到着しそうな事を確認したタキシードに笑顔の面の怪人は、腹に剣を突き刺したままぴくりとも動かない牧街を無視し、ヘルゴティスへ視線を向ける
「後は君に任せるよ。ここへ来た連中は皆殺し、追って蘇芳から指示があるかもしれないから、その時はそれに従ってくれ」
そう言って、ヘルゴティスが頷いたのを確認した怪人はわずかに微笑む
「さあ、お膳立てはした…楽しいイベントにしてくれよ、蘇芳」
そう言うと、怪人は社長室の窓ガラスを開け、空へと飛び去っていった
後には動かない牧街と、それに近づく者に容赦なく襲い掛かるよう指示されたヘルゴティス
そして、金庫の中に現金に埋もれて隠された魔道書だけが残るのだった
275:カフェ ◆YNbEhcUF/I
10/03/13 23:06:18 0
>271
>「わたしは…行かない………もう一族の厄介者でもいいわ…。
所詮霊力の無いわたしがいくら足掻いたって、貴方たちと対等にはなれない…。
牧街を助けるなら貴方たちだけで行って…。アナスタシヤくらいは貸してあげるから…。」
「何!? 霊力が無いとな」
師範は織羽の肩にぽんっと手を置いて言った。
「大器晩成にゃ」
「うむ。基本魔法さえ使えない落ちこぼれが実は伝説系統の魔法の使い手だったという話はよくあるな」
慰めているのかもしれないし、秋葉原民だけあって本当にそう思っているのかもしれない。
「では少しの間アナスタシヤ殿をお借りする!」
「必ず後で返すから待っててにゃー」
「早く行って猫の敵テロ魔族をやっつけるニャ!」
一行はレギオンビルへと向かう。
【レギオンビル】
お茶スプレーを掲げた俣旅ゼルダが作戦を確認する。
「突入次第お茶で退魔フィールドを作成しひるんだところで一斉攻撃してハチの巣にするニャ」
「突入―!」
なんともシンプルな作戦で突入してしまう命知らずの秋葉原民達。
といってもちゃっかりアナスタシヤを盾にしてるように見えるのは気のせいではない。
>274
お茶スプレーが噴射される中、剣を突き刺されて倒れている牧街の姿が目に飛び込んできた。
「なんてことを……!」
「と、とにかくアリを迎撃にゃー!」
「イエス」
襲いかかってくるヘルゴティスに向かってアナスタシヤが銃弾を連射する。
276:藤津木 織羽 ◆Olha/49Xgc
10/03/14 17:54:33 0
>273 >275
慰めの言葉を掛けたカフェと秋葉原師範が去り、周囲には雑踏の静けさ。
どのくらいの間、その場に佇んでいたのだろう。
織羽を現実に引き戻したのは、マンホールが開くゴトリと言う音だった。
開いた穴から這い出して来たのは、複眼を紅色に澱ませたミュルミドンの頭部。
「わたしはもう…関係無いの…。放っておいて!」
織羽の叫びにも関わらず、蟻人間は歩みを止めずにこちらに近づいてくる。
助かる唯一の方法は、鈍る足を動かしての逃走しかあるまい。
しかし、背を向けて駆ける足は数歩で止まった………死神の甘い囁きで。
――もういいかな…どうせ、わたしなんて誰も必要としてないんだし――。
心が諦めに満たされそうになった時、烈風が吹いた。
空を薙ぐ風切り音に耳元の死神が払われる。
直後の激突音に弾かれたように振り向くと、ミュルミドンの前にはサングラスに胴着姿の人物。
>恐山断弦「……藤津木織羽さん…だね?君、こんなとこで何しとるんだい?」
「貴方は…。」
恐山断弦に今までに起きた事を順を追って話す。
メルクリウス貿易の異変。カフェと秋葉原師範が向かった事。
そして…それら全てを放棄した事と、霊力を持たぬ劣等感が事を始めた原因である事を。
『ふっ………実にくだらん。』
しかし、打ち明けた悩みを恐山師範は一笑に付した。
「くだらん…って、わたしが今までどれほど肩身の狭い思いをしたか…!」
頭に血が上り、頬には朱が差す。
『では問う? 貴女は霊力を得るのに死ぬほどの努力はされたのかな?』
「え? ええ、もちろんよ。でも…わたしには才能が無いからいくら努力しても無駄って…。」
『温い…! 才能が無いなんて戯言は血反吐を吐く程までに己を限界まで苛め抜き、
それでも得られなかった者だけが吐ける台詞。若者の台詞ではない。
あの牧街も只の根性無しに見えるかも知れんが、死ぬ程の鍛練なら腐るほど積ませている。
まあ…勢い余って三途の川には、何度も渡し掛けたものだが…。
いや、実際私の門下生なら心臓が止まったぐらいの些末事。2、3回は経験しているぞ?
貴女が恐山流の修練を受けて、尚微塵の霊力すら得られなければ、私も才能が無いとの言葉を受け入れようが。
そもそも霊力の獲得など只のプロセス――それで何をするかの、な。』
277:藤津木 織羽 ◆Olha/49Xgc
10/03/14 17:55:44 0
『貴女は、もし霊力を得たら何をされるおつもりか? 見せつけて満足するために使われるのですかな?』
断弦の言葉に沈黙する。
もし凄い霊力なんて得たら、わたしは何をする…?
>「大器晩成にゃ」
>「うむ。基本魔法さえ使えない落ちこぼれが実は伝説系統の魔法の使い手だったという話はよくあるな」
秋葉原師範とカフェに受けた言葉を思い出して描く。
誰よりも強い霊力を持った自分を。
先程、殺されそうになった蟻の怪物を打ち倒す。
見えざる気の塊で。生みだした炎で。手にした光の剣で。
力に酔う。弟妹に見せつけて優越に浸る。どう? わたしの方が凄いでしょ?
わたしを見て。わたしを褒めて。わたしを認めて。
――想像の世界で、霊力は見事なまでに誇示の道具にしかならなかった。
「あはは…薄っぺらい………わたし。」
『御自分でそう思われたのなら、そうなのでしょうな。』
「わたし…どうしたら…このまま藤津木で肩身狭く生きていけばいいの…。」
『私は、除霊師ではあるが宗教の教祖じゃない。
“これが答えです”などと何かを指し示すつもりは微塵も無し!』
俯く織羽に断弦は慰めの言葉を掛けなかった。
『ふん…では一つ言おう。私は自分で決めた事すら守れん奴には反吐が出るのでな。
貴女は、どの道を歩くかを確個たる信念で選んだわけではない。
ただ逃げ、ふてくされているだけ………違うかな?
だが、藤津木に居ればGSにも悪霊にも、魔族にさえ否が応でも関わることになる。
自分の信念で選んだのならGSと関わりない道であろうが構わん。
が…半端な覚悟なら今ここですっぱり断った方が今後の為であろう。
魔族も悪霊もGSもよりどりみどりの今こそ、進路を選ぶのには絶好の機会ではないかな?
御自分の目で“こちら”の道を確かめる気があれば、私に付いてくるが良かろう………まだ足が動けば、だが。』
冷厳な言葉の意は、逃げるなら藤津木を捨てろという事だろうか。
客観的、かつ常識的に考えれば、断弦の言葉に乗ってこれ以上、魔族との関わりに身を置くのは危険。
恐怖も消えていない。しかし退けられなかった。断弦の言葉には退けられない強さがあった。
織羽は歩く――断弦の背中を追って
278:李珠 ◆rdfEGE/BGM
10/03/14 17:57:29 0
【展望台内部】
「フフ…火計ですか。しかし、それも全て私の計算通り…。」
燃え盛るローブを投げ放ち、漢服に白羽扇のコスプレ道士…李珠が正体を露わす。
その不気味な笑みからは、何を計算していたのかを窺い知る事は全く出来ない。
李珠は紅蓮の炎に包まれたにもかかわらず、少し焦げただけのように見えた。
理不尽だがギャグ値の高い人物は、容易く致命傷を受けないのだ。
下手をすると、爆発に巻き込まれても髪がアフロになるだけという事もありうる。
「ここは、すでに死地…さあ…時が来ました…。」
李珠の言葉に床全体に描かれた黒い五芒星からプラズマが立ち上った。
床から迸る雷柱が二人の魔族を貫き、展望台内部が眩くスパークする。
この五芒星は、発動すると生体エネルギーを純エネルギーに転化させる作用を持つ魔法陣。
神田呑社長がレギオンビルで行っていたオーパーツの霊力補充が成功しなかった場合、
ここで霊力の補充が行われる予定であったのだ。
即席で罠へと転用された魔法陣はレベル10の魔族には10、50の魔族には50というように、
強力な霊圧を備えた魔族ほどそれに応じたダメージを与える。
二人の魔族には、如何ほどのダメージになろうか?
「これは計算外でしたね…かはぁっ…!」
ついでに李珠もダメージを受けていた。
生体エネルギーを持たぬレギオンと惣介は無傷だったが。
『ああっ、もうっ、どうしたらこうしたら!』
右往左往する惣介を余所にレギオンから湧き出る無数の死霊が一斉に魔族に取り付いた。
死霊の群れは魔族の全身に絡みついて、漏れ出る力を余さず啜らんと肉を噛む。
悪霊もまた取り巻く雷柱に身を焼かれるが、ダメージなどは意に介さないようだ。
雷に消滅するそばから、際限なく別の死霊がレギオンから湧き出て魔族に襲いかかる。
そんな中、展望台内部のスパーク音に混じって鉄骨を叩きつける微かな音。
タワー上部には外壁を攀じ登るミュルミドン。
無論、放っておけば間もなく頂上に達するであろう。
蟻人間の気配には、タワー階段部で待機する三人組の中で最も実力の高いものなら簡単に気付くはずである。
279: ◆GwyfLokZWa7/
10/03/14 23:21:03 0
「…!?耐えた!?ぼ…僕の裁きの炎に」
恐らく火達磨になる事が今まで多々あったため今更こんな攻撃は通じないのだろう李珠に
しかし美形魔族はまじめに驚く
霊圧が100マイトに満たない霊圧しか持たない相手など、勝負にならないと舐めきっていたため、心底ぎょっとする
彼等の驚きは止まらない
今度は床の五芒星が不気味な光を放ち、魔族達を襲う
「がっっっ!!???」
「んなヴぁか…なっ!!……」
相当な生命力を持っている魔族には、この攻撃はすさまじいダメージであり
二体はあっという間にボロボロになり、更にそこにレギオン達が追い討ちをかけ、二体は最早まともに反撃する術も持たない
「ぐっっ!周囲の被害なんぞ考慮に入れさえしなければ……」
「もうそんな事なんぞ言ってられん!!フッ飛ばせばいいんだ!!」
そう言って周囲目掛けすさまじい霊力波を放とうとする目つきの悪い魔族を、美形が制する
「よせっ!僕等は誇り高き魔族正規軍だ!命令には絶対服従せねばならない!!」
「な……ならどうすればいい!このままでは…」
猛攻の中傷つきながら問答する二人の頭上を
タワー清掃用のバケツ通過し、魔方陣の上に大量の水をぶちまけた
「!?」
「これは…」
「恐山流除霊道場名物…」
突然の出来事に驚く魔族の間を、コブラが素早く突破し、ダメージに耐えながら一気に魔方陣に取り付き、霊力を篭めたモップでゴシゴシとこする!!
「エレキ風呂掃除!応用ぅううううううううう!!」
先ほどまでの不気味な雰囲気はどこへやら、熱血格闘家としての本性をあらわにしたコブラは、魔方陣の攻撃に耐え、レギオンの攻撃を物ともせずにすさまじいモップさばきで、なんと魔方陣を消してしまった!
完全に魔方陣を消し去った事を確認したコブラは、その場に膝をつき、倒れこむ
「見たか!人間の底力」
満足げにそう言ったコブラの脇に二人の魔族が立ち、周囲のレギオンを消し飛ばし、更に李珠に各々の腕を向ける
「消し飛べ!外道!!」
美形の言葉と共に、強力な稲妻と火炎弾が李珠に発射された
普通死ぬが、横島忠雄は生身でバックドラフトを喰らって耐えた事がある
多分、しばらく再起不能位ですむだろう
外壁を登っていたミュルミドンは、いよいよ、遂に、頂上へと到着していた
頂上の先端に手をかけ、そこにオーパーツをおこうとしたミュルミドンが…
…「既にそこにいた男」によって蹴落とされる
「…ご苦労、次はもっと努力して、ここまで飛んできてくれ。……俺のように」
そういって、ミュルミドンを蹴落としたホッパーは、東京タワーの頂上から一つ下の展望台へと落下したミュルミドン目掛け飛び降りる
「ゴーストスイーパー!キック!!」
勇ましい叫びと共に放たれたどこかで見たような霊力満ちたキックはミュルミドンの腹に命中し、木っ端微塵にした
「……これで地球の平和は守られた…かね?」
そう言って、数十メートル飛び降りたホッパーは平然と立ち上がり、近くに落ちている例のオーパーツを拾い上げる
…ネタを明かすと、浮遊術を応用してるだけであり、決して改造人と言う分ではない
280: ◆GwyfLokZWa7/
10/03/15 00:26:33 0
五芒星が消え、ミュルミドンのオーパーツを用いる脅威も去った、が、まだレギオン達が残っている
傷つき、ほとんど動けなくなったコブラを守るように背中合わせで戦うボロボロの二人の魔族に、次々と無数の霊達が襲いかかっていく
先ほどの五芒星の攻撃が無ければ魔族達はこの程度何ら問題なかったが、今の彼等には大変危機的な状況だ
倒しても倒してもキリがない雑霊に、魔族二人が苛立ちの表情を見せた、その時
不意に、霊の数がぐっと少なくなっていった
突然の事に、しかし美形魔族が視線をめぐらすと、いつの間にか展望台のあちこちに強力な破邪札が貼られ、展望台を包む結界を構築している
「ほんの一時しのぎだ、これで周囲から霊が集まる事は防げる。それで大元は……」
そして唐突にどこからか声が響き渡ったかと思うと、霊力を帯びた糸が飛び、惣介を絡めとった
この糸は呪縛ロープと同じ効果を持っているため、最早惣介は変身して逃げる事はできない
「今から彼に絶ち方をはいてもらおう。さあ、この霊達をどうやって集めている」
冷徹な言葉と共に、スパイダーが今まで何も無かった空間からすぅっと姿を現し、指の動きで糸を操り、惣介を締め上げる
全力で織羽が走ってギリギリついてこれる速度でぶっ続け走り続ける断弦の後ろを、織羽は必死についてくる
恐らくこれまで運動とは無縁だったのだろう、ぜぇぜぇはぁはぁいいながら、しかしそれでもついてき続ける織羽に、断弦の頬が微妙に釣り上がった
なりふり構わず、断弦に自らの想いを打ち明け、そして、自ら苦難に立ち向かい、道を切り開いていこうとする若者
その姿に、彼はあるGSを被らせていた
降り注ぐ雨の中、「何故二人は助からなかったんですか」と、何度も声をからさんばかりに叫んで尋ねてきた少年がいた
少年は数日前、わずかな除霊の知識と才能がある友人に無理矢理誘われ、妹と共に、凶悪な都市伝説系妖魔、「口裂き婆」に無謀にも戦いを挑み
そして、親友と妹が無残に口を引き裂かれる様を目に焼き付けさせられていた
危機一髪断弦が駆け、口裂け婆を撃退しなければ、少年は今頃、恐らくもっと別の道を歩んでいただろう
しかし、断弦は少年の前にギリギリ間に合い、少年のみが助かった
ここで、本来ならば断弦と少年の関係は消滅するはずである
だが、少年は再び断弦の前に立ち、断弦にしがみつき、必死に「何故二人は助からなかったのですか?」と尋ねてきた
聞けば、妹が口を切り裂かれたショックから精神が崩壊し、医者に心霊治療でももう元には戻らないと言われたそうである
そんな少年に、断弦はこう言った
「貴様が自分の身を自分で守れなかったからだ」
と
ウルト○マンが怪獣にとどめをさすまでに、何人の人間が怪獣の犠牲になるだろう
仮○ライダーが怪人の野望を叩き潰すまでに、何人の人間が怪人の野望の過程に殺されるだろう
事件が起こってから警察が来るまで、20分は余裕でかかる、その間自分の身は誰が守ってくれる?
この世界は最後に確かに正義が勝つ
だが、正義が最後に勝つまで、悪は何度も小さな勝利をするのだ
即ち、世界の中の自分と言うちっぽけな存在が敗北しないために、自分を守るものは、世界ではない
自分自身なのだ!自分自身しかいないのだ!
それを忘れて何故自分は負けて痛い目にあいましたかなどと尋ねるなど、言語道断だ!と
その言葉を受け、少年は自分を、自分の守りたい世界に守れないちっぽけな物を、守るために、少年は幾多の苦難を乗り越えてその信念を固め、力を磨き
そして、数百人の中のわずか数十名しか得ることのできないGS国家資格を得て現在に至っている
少年が強くなった事は間違いない
そして、確実に、正義が勝つまでに、自分の大切な物を守れる位の力を手にした事は確かである
その証拠がGS国家資格であり
今彼がヘルゴティスの足に喰らいついている事だ
心を丸裸にして、自らの想いと進みたい道を見出した少年は今、その道を驀進している
果たしてこの少女はどうなるのか
それを想像すると断弦は笑みを浮かべずにはいられず
そして、まだまだ道を進まねばならない男の命を救うべく、多少、足を速めて走る
最早、ビルは目の前だ
281:牧街 ◆GwyfLokZWa7/
10/03/15 00:31:50 0
お茶のフィールドとアナスタシヤの銃撃を喰らってなお、ヘルゴティスは倒れない
雄叫びを上げ、拳を振り上げ、銃撃するアナスタシヤに突っ込んでいこうとして…
足が何かに突っかかり、バランスを崩した
牧街だ
牧街が意識を取り戻し、必死の形相でヘルゴティスの足首に喰らいついている
ヘルゴティスは体制を崩し、隙だらけだ!
282:カフェ ◆YNbEhcUF/I
10/03/15 22:37:07 0
>281
「なっ、もう動けるはずは……」
ヘルゴティスはおったまげている!
刺されて動かなくなっていた人が這いつくばって食らいついてきたら驚くのも無理はない。
そこに突進してくる者がいた! ロリータファッションだ!
(牧街殿……刺されて這いつくばって……いっつもいい所を持って行かれて……)
外見からして下手すりゃ戦力外勘定されていてもおかしくはないロリババアキャラが突進してくる!
(かっこ悪い……けど最高にカッコいいぞ!)
「しまっ……」
「そりゃあああああああああッ!!」
カフェは渾身の突きを放つ!
ロリータ傘、正確にはロリータ傘型神通杖がヘルゴティスを貫いた!
忘れられがちだがカフェは三流GSにしては霊圧が意外と高いのだ!
貫かれたヘルゴティスはカフェをにらみつけ呪詛の声をあげる。
「ッ! おのれ小娘……貴様のような奴に!」
「安心せい。妾はただの代理。お主を倒したのはそこの牧街殿じゃ……!」
「……ぐぎゃああああああああああ!!」
ヘルゴティスは断末魔の声をあげて消えていく。
「牧街くん!」
癒されるという噂の例の治療を施そうと、牧街に師範がかけよる。
283:藤津木 織羽 ◆Olha/49Xgc
10/03/16 22:50:28 0
血塗れになりながらも蟻魔ヘルゴティスの足元に喰らい付く牧街。
傘型の神通杖で胴体を突き破り、異界の住人を現世から消滅させるカフェ。
『ターゲット・消滅確認・全データ・保存完了』
消えゆく蟻魔を見つめるアナスタシヤの瞳は一瞬ぼうっと紅の光を放ち、すぐさま元のクリアブルーに戻った。
「あれだけ逃げてて…どうして肝心な時に逃げ遅れてるのよ…。」
最初に目に入ったのは、腹から血を流して絨毯に大きな染みを作っている牧街。
織羽がレギオンビルに辿りついた時には、すでに戦いには終止符が打たれていた。
大丈夫、牧街もGSのはず…ちょっとした怪我で気を失っただけよね…。
蒼白な顔で己に言い聞かせるが、とても軽傷には見えない。
「怪我の具合は…どう…なの…?」
『牧街モリオ・腹部刺傷・心拍低下・失血量・推定――cc』
アナスタシヤが牧街の状態を冷静に告げる。
「確か人間ってそれだけの血を失えば死………い、今すぐ救急車を…。」
失血量はすぐに輸血を行わなければ、死に至ってもおかしく無い量。
当然手にした携帯電話に119の番号を打とうとする。
しかし外の冷気にかじかんだ指は、震えてうまく動かない。
携帯電話は絨毯の上に落ち、鈍い音を立てた。
慌てて屈み、番号を入れ直して救急を呼ぶ。恐山師範も敢えて止めはしない。
もし無理にでも連れ出して居れば…もっと事件から早く手を引いていれば…。
わたしが…依頼をしなければ…彼はこんな目に会わずに済んだのではないか。
最初から関わるべきではなかったの…? それは………違う気がする。
状況判断が…いや、もっと色々な物が足りなかった…。
なら、状況を的確に分析を出来ていれば…違ったの?
ううん…根本の原因は霊力の無い劣等感を解消する為に身の程も知らず無謀な真似をした事…。
自らの心の弱さが招いたもの。なら…それを克服しなければ、きっとわたしは何度も同じ事を繰り返す…。
「わたし…もっと強くなりたい…少なくとも…一人で歩けるぐらい…。」
弱々しい、しかし意思を秘めた呟き。
それを打ち消すかのように救急車のサイレンの音が近づいてきた。
まるで終幕を告げるように。或いは間奏曲を奏でるように。
284:惣介 ◆Sl.qrwsKik
10/03/16 22:54:05 0
スパイダーにレギオンの止め方を聞かれて惣介は答えた。
「よくわからないけど、送信機室のラルヴァシステムがどうこうって言ってたような気がします…。
というより…僕は事件と全然関係ないただの善良な動物霊です!
知り合いを訪ねて東京に来たら、そこの変な人に捕まっただけなんです!」
しかし、展望台からは李珠の姿が消えていた。
窓の硬質ガラスは割れており、展望台の中まで冷たい風が入り込んでくる。
まさか。いや、まさか。いくらギャグ値が高くとも地上まで100m以上ある。普通死ぬはず。
「あれ…変な人がいない? た、助かった…? 都会は怖いよ…もう山に帰りたいなあ…。」
【送信機室】
送信機室には、幾つもの放送の為の機材が置かれているだけで動く者は無い。
その無人の部屋の中では悪意ある造形のオブジェが、自らこそが部屋の主であるかのように鎮座していた。
このラルヴァシステムと呼ばれていた機械こそ、邪なる霊波を送り、付近の霊を悪霊化している元凶。
されど意思を持たぬ無機物に過ぎないため、破壊は容易いであろう。
285:牧街 ◆GwyfLokZWa7/
10/03/19 23:12:25 0
戦いが終わった展望室にコブラと目つきの鋭い魔族を残し、スパイダーと美形魔族は送信機室へ向かった
後に残された目つきの鋭い魔族は、何気なくあの割れた窓の方へ向かう
向かいながら、そういえば下に大勢人がいたわけだから、あの黒いフードが落下したら大惨事だよなと思い至り
慌ててガラスの所まで行って、下を覗き込んだ
ギリギリ結界の内側のため、雑霊は魔族のギリギリ目前と止まっている
「これが…元凶か」
送信機室でラルヴァシステムを発見した二人、早速美形魔族が右手を向け、例の念動発火を発動し、ラルヴァシステムを燃やす
「これで全て解決…だよね?」
「結局、テロ魔族の目的はわからずじまいか…」
燃え上がったラルヴァシステムを見つめながら、スパイダーと美形魔族は言葉を交し合う
「あ、ご苦労だったな、そら、後は好きなところに行くがいい」
ふと、惣介の存在を思い出したスパイダーは、惣介の体を縛る糸を解除した
ロリショタの美少年、カフェの師匠に傷口をぺろぺろと舐めてもらっていた牧街が、救急隊の担架に乗せられ、救急病院へと運ばれていく
その顔には割と精気が戻っており、多分、命に別状など無いだろう
傷口を舐める行為はただの消毒ではない、霊的治療、いわゆるヒーリングと言う奴であり、女の様なかわいらしいロリ美少年が傷口を舐めてくれるんだから、癒されぬものなどいないだろう
「…牧街の事なら気にするな。あらかじめ奴の体には式神を寄生させていた。そいつがダメージの大半を肩代わりして自壊している、命は間違いなく助かっているだろう。…奴の回復力なら完治まで1ヶ月もかからぬかもしれんな」
そう言って牧街の事を気に病んでいるだろう、藤津木の頭に、恐山師範はその鋼鉄の様な腕をぽんっと乗せる
「強くなりたい……そう言ったな」
言いながら、師範はもう片方の手でがさごそと何かを懐から出す
「家の道場は入門料さえ払えば来る者を拒まん。去る者は地獄の底まで追っていくがな。絶対に強くなる。死んでも強くなる、そんな強い覚悟があるなら、門を叩け!」
そう言って、恐山師範はどうも手書きらしい「入門料は5万自力で稼ぐ事、破門料は100万」と書かれた入門案内のチラシを渡すと
ひょいっとおもむろに藤津木を抱き上げ「彼女を頼む」とアナスタシヤに預けると
「 総 員 警 察 が 来 る 前 に ズラかれぇえええええええええええええええええええええええ」
疾風の様な速度でビルを飛びだして行った
286:藤津木 織羽 ◆Olha/49Xgc
10/03/21 00:00:54 0
>285
恐山師範の説明は多分に理解を超える所はあったが、牧街が致命傷に至って無かったらしい事は織羽にも理解出来た。
「無事…なの…?」
安堵に思わず力が抜けた織羽に恐山師範が除霊道場の入門案内を手渡す。
達筆な字は手書きであろうか。
入門料は5万自力で稼ぐ事、破門料は100万と書かれていた。
しかし渡されたチラシに目を落とす織羽は、まだ少々放心気味。
そのまま恐山師範に抱え上げられてアナスタシヤの腕に渡る。
>恐山師範「彼女を頼む」
『イエス』
アナスタシヤがしっかり抱えたのを見て、恐山師範が叫ぶ。
>恐山師範「 総 員 警 察 が 来 る 前 に ズラかれぇえええええええええええええええええええええええ」
その雷声にようやく織羽も冷静さを取り戻した。
「警察………? あっ。」
図らずも先程の織羽の通報が、救急車以外のものも呼んでしまったであろう事に気づく。
あの刺し傷は、普通なら確実に事情聴取になるはず。
それともGS免許でどうにかなる…?
いや、恐山師範の様子からそれはなさそうだ。どうやら撤収が最良の判断らしい。
「ゼルダさんに運転手、(名前…なんだったかしら?)誘拐は無かった…。
藤津木にはそう報告するのが良いのかしら?
わたしで事を全てうまく収められるのかは分からないけど…。」
『そちらは任せたニャ。もう魔族とは手を切るニャ。』
ゼルダは織羽に答える。
「カフェさん、今回の報酬は後日事務所の方に届けるわね。
牧街への報酬は…恐山道場に持っていけばいいのかしら…?
じゃっ、アナスタシヤ…わたしたちも可及的速やかにこの場から撤収。」
『了解・迅速ニ・撤収・シマス』
命令を受けたアナスタシヤは、織羽を肩に担ぎ直して疾駆する。
「ちょ…ちょっと! も、もっとてふっ、ねう゛ぃにはぁぐびなさびぃぃ!!」
『命令・不明瞭・デス』
287:李珠 ◆rdfEGE/BGM
10/03/21 01:58:03 0
目つきの鋭い魔族が展望台から下方を見るも、目に映るのは宝石をちりばめたような街の風景だけ。
李珠が逃れたのは上。
一瞬の隙を突き、用意してあった小型の熱気球を用いて、暗天の空へと逃げおおせてていたのだ。
ちなみにこの小型熱気球は諸葛灯と呼ばれる諸葛亮が発明したといわれている代物である。
黒いマントで炎を隠せば、気球も容易に見つかりはしまい。
「この撤退は次への布石です…」
何の布石かは知らないが、突っ込む者とていない上空の世界。
思う存分己の世界に浸っている。
かくして李珠は強風を追い風に彼方へと消えた。
ここでお亡くなりになった方が世の為だった気もするが。
288:惣介 ◆Sl.qrwsKik
10/03/21 01:59:00 0
「なんだか、とっても酷い目に会ったなあ…。」
解放された惣介が東京タワーの足元でひとりごちた。
「幽霊だから普通の乗り物じゃ帰れないし、猫タクシーも都合良く現れたりしないだろうなあ。
うーん………それにしても、ここどこなんだろう? まだ東京ってとこなのかな?」
迷える浮遊霊は、どっちに行ったものかと悩みながら、何となく秋葉原の方角に漂って行った。
289:カフェ ◆YNbEhcUF/I
10/03/21 22:40:53 0
>283
「そんな顔をするな、牧街殿は簡単には死んだりせぬ!」
かけつけた織羽を慰めるように声をかけるが、単なる気休めではない。
前回の事件で牧街の生命力が半端ないことは実証されている。
>285
>「…牧街の事なら気にするな。あらかじめ奴の体には式神を寄生させていた。そいつがダメージの大半を肩代わりして自壊している、命は間違いなく助かっているだろう。…奴の回復力なら完治まで1ヶ月もかからぬかもしれんな」
牧街はいつも殺されると言って怯えているが、本当に危ない時はいつも必ず助けに来る……気がする!
「全く恐山師範はツンデレにゃ~」
「何か言ったか?」
「何も言ってないにゃ」
>286
秋葉原師範も便乗して織羽にチラシを渡す。
「独自のカリキュラムで楽しく学ぶ秋葉原流道場のチラシも一応渡しとくにゃ」
いかにも秋葉系なイラストや煽り文句が満載。
ヲタクならともかく一般人にとっては恐山流とは別の意味で危険な香りが全開だ!
織羽は、疾走するアナスタシヤに抱えられて去って行った。
「妾達も帰るぞ」
猫タクシーはアリにかまれたり色々あって先に帰ってしまったようだ。
「運転手、車で帰るニャ」
スプレー缶に化けていた運転手が元に戻って言う。
「しかし車は大破……そうか!」
運転手は化け猫。運転手自身が車に化ければいいのだ。
ゼルダは車に乗り際に言った。
「リンク……噂には聞いていたけど立派になったニャ。
キミの弟子をみてやっぱり今の秋葉原の悪く無いと思ったニャ」
「ゼルダ……君の助力がなかったらどうなっていたことかにゃ。
ぼくちんはずっと昔から君の事が……」
「早く撤退しないと警察が来るニャ。余ったお茶を返しておくニャ」
ゼルダは一方的に師範に茶筒を渡し、さっさと車に乗り込んでしまった。
「……」
「リンク? 師匠のフルネームは秋葉原リンクか!?」
「なんでもないにゃ!こっちの話にゃ」
「今日はありがとうにゃ~。将来立派な化け猫になるにゃ!」
「みゃーお」
師範が黒猫に礼を言って手を振ってから、車に化けた。
かくして2台の車は発進した。
>288
帰る途中、タヌキの浮遊霊を見かける。
「おお、惣介殿……! なかなか来ないから心配していたぞ。こんなところでどうした?」
かくかくしかじか
「それは災難だったのう! しかしその人間、只者ではないな。一体何者なのであろう」
とっさにGS免許不所持で警察に連行されていった知り合いの事を思い出したが、瞬時にそんなはずはないと思うカフェであった。
290:牧街 ◆GwyfLokZWa7/
10/03/22 23:31:58 0
戦い終わって…
パトカーのサイレン鳴り響く東京上空に、例の笑顔の仮面のタキシードが浮遊している
「いやいや、中々楽しめた…。かな」
下を眺めていた笑顔の仮面は、そういうと、夜の闇の中へと消えていく
「でも…足りないな…世界を黒へ傾けるには…さ。だから、次はもっと……ふふふ…」
不気味に笑いながら、仮面は夜の闇へと完全に溶け込んだ
「…それじゃ、助かったよ。ごめんね、馬鹿にして、さ、じゃ」
「………ありがとよ」
スパイダー、コブラ、ホッパーの前で、多少照れくさそうに美形、鋭い目両魔族が別れの言葉を述べ、すっと消える
会釈してホッパー等がそれを見送ったのと同時に、展望室に警官隊が入ってきた
しかし、ホッパー等は別段慌てない
同時に、警官等もホッパーらを逮捕しようとか、そう言った動きも無い
「東京タワーの方は」国の許可を取って戦っていたのだ
聴取やら何やらでホッパー等は数日帰れなくなるかも知れないが、逮捕されるような事は無い
特殊部隊の3人は仕事が終わった安堵のため息をつくと、警察の事後処理に協力する
魔族の野望は恐らく崩れ去った
ミッションコンプリートである
一週間後
「やっぱあの社長、逮捕されたんだな…」
一般病室のベッドの上
包帯と点滴をした牧街が、神田呑が逮捕されたニュースを阿湖野青年と共に眺めている
「当然なんだろ?平然と人殺そうとしたらしいじゃないか」
ベッドの横の阿湖野青年が手錠かけられて、しかしどこかすっきりした表情でパトカーに連行される神田呑を睨みながら尋ねた
その言葉に、難しい顔になる牧街
彼自身あの社長に命を狙われた身だが、彼の最初の雰囲気には、あの時ミュルミドン達に追い詰められ、社長を人質にとった自分と同じ物があった
しかしだからといって、私欲で始めた社長と、純粋に身を守るために行った自分とでは、立場が異なる
その辺の事を上手く説明し、形にできずうーんとうなる牧街に、阿湖野は苦笑しながら、「別にそんな考えなくていいよ」と助け舟を出す
優しい優しい大親友が、あの男にもよさを見出している事がわかっただけで、阿湖野にとっては満足だったのだ
あの後、魔族が裏で情報操作したのか、はたまた恐山師範が何かしたのか
牧街や秋葉流、藤津木の元に、今回の件について警察から聴取やらなにやらがある事は無かった
事件は魔道書が暴走して神田呑が自滅した事になり
広報のメリクリウス貿易事件には、テロ魔族はおろかゴーストスイーパーのゴの字も登場していない
(まるっきり映画や漫画の世界だなぁ…)
じゃあ、俺、行くわと忙しい中昨日集中治療室を出て、今日面会時間の開始と共に見舞いに来てくれた親友が病室を出るのを見送りながら、ぼんやりと、牧街はそんな事を考える
「…退院と同時に再入院が恒例にならなきゃいんだがねぇ…うん…」
馬鹿にならない治療費と、前回退院してすぐ今回の事件に巻き込まれ再入院するはめになった自らの身の不幸と今後に深いため息をつくと、牧街はシーツを被り…
のびのび太に勝るとも劣らぬスピードで眠りにつくのであった
【終わらせちゃったんですけど良かったっすかね…】
291:藤津木 織羽 ◆Olha/49Xgc
10/03/23 20:36:37 0
「――というのが顛末です。」
事件後、藤津木グループに戻った織羽はゼルダと運転手を
メルクリウス貿易に拉致された際、巻きこまれて死亡したと報告した。
死亡としておけば、以後捜索されることも無いだろうと考えてのことである。
…が、藤津木の総帥、頼重は織羽の報告に対しても興味なさそうに『そうか、もう下がって良い。』の一言のみ。
アナスタシヤの中には映像、音声、全てがデータとして記録に残っている。
元より織羽の報告など無用のものなので関心も無い。
織羽は孫を煩げに追い払う祖父に対し、一礼して「今までお世話になりました。」と言い添えて退出した。
後日――某総合病院にて。
牧街の病室に軽くノックの音が鳴り、織羽が入ってくる。
手に持ったバスケットには果物の詰め合わせ。
「あ…結構元気そうね。でも一応聞いておいた方がいいのかな? 具合はどうって?」
少し拍子抜けした表情をするが、声の調子は明るい。
「治療費は恐山道場に持って行っちゃったけど、振り込みの方が良かったのかしら…?」
まずは牧街の怪我の具合に報酬の話、その後はひとしきり事件についての話や、
アナスタシヤがラボに回され、さらなるバージョンアップを図るらしいとの話、
恐山流の修業の内容や恐山師範は独身なのか等といった他愛も無い話で時間が過ぎる。
「それじゃね、牧街………近々名前の後に先輩って付けるかもしれないけど。」
見舞いを終えると、くすくすと含み笑いをしながら病室を出た。
「自力で5万…ね。財布から出してもあの師範には簡単に見抜かれそうだし…。」
階下のロビーに出た織羽は、置かれていた情報誌を取るとページをパラパラ捲る。
「午後と休日土日で学生でも出来る良さそうな所…。」
秋葉原のネットカフェ"アルバイト募集"明るく楽しいふいんきの店です――と書かれているページが目に飛び込む。
なかなか条件も良さそうね………そんな事を考えながら織羽は病院を出た。
>268
事件後、東京のある小路には猫の幽霊が出るようになった。
普通の猫と同じように歩き回っていた猫が、忽然と目の前から消えるとの事。
おそらくは小路に猫の存在が染み付いてしまい、生きていた時と同じ行動を繰り返すのであろう。
超常現象の専門家がテープ記憶と呼ぶ現象であり、現れるのは害を為さぬ幽霊。
一説によれば、幽霊の90%はこうしたものであるという。
【うう…後半は完全に力尽きてウケミンに…すみませんっ。高位魔族はいつか1流の人が解決してくれるはず…】
292:カフェ ◆YNbEhcUF/I
10/03/24 20:55:05 0
こうして狸型特製フィギュアは無事に惣介が持って(憑依して)帰り
報酬は届けられ、とりあえず冥土カフェ倒産(=冥土カフェの2階にある事務所も道連れ)の危機は免れた。
冥土カフェにはなぜか新しくパソコンが配置され、性懲りもなくアルバイト募集のビラが貼ってある。
カフェママ「冥土ネカフェって新ジャンルじゃない?」
「明るく楽しい雰囲気……否、冥土のくせに意外と明るく楽しいか。
しかし大して賑わっても無いのにアルバイトなんぞ募集して大丈夫かのう」
カフェパパ「何、まだ駆け出しで賑わってないだけだ。早速今からアルバイト志望者が面接に来る」
「そうか。では妾は牧街殿の見舞いに行って来ようぞ」
道中で、織羽はあれからどうしただろうか、となんとなく考える。
当然ながら秋葉原流に来る気配はない。やはり恐山流に入門するのだろうか。
「……だとしたら前途多難じゃのう」
しみじみと呟くカフェ。
しかし、入門する前に別の意味の災難にぶちあたるフラグが立っている事になんて、知る由もなかった。
【今回の話も無事完結ですねー! 二人ともお疲れ様&ありがとう!】
293:牧街 ◆GwyfLokZWa7/
10/03/27 15:47:32 0
牧街が病室を出る織羽が残した不吉な一言「近々名前の後に先輩って付けるかもしれないけど」を気にしながら、1ヶ月の月日が立った
(もし…いや…万一……ありえない、絶対ありえない、あんな恐ろしい道場に入ろうなんて、誰が思うはず…。だが万一、いや億が一そうだったとしたら…俺はその時止めておくべきだったわけだし…)
一人の少女が明らかに道を踏み違う瞬間(?)に立ち会っておきながら何もできなかったかも知れない自分にその日も朝からぐだぐだ考えながら、牧街は大きく伸びを一つし、今まで寝ていた布団をそのままに、着替えて事務所へと出発する
怪我はとっくに感知しており、医者が奇跡だのお前改造人間だろだのと驚きまくっていたが
そこは牧街だから気にしてはいけない(何のこっちゃ)
ちなみに、既に大事をとっての一日は過ぎているため、本日から牧街GSオフィスは再び通常営業…なのだが…
「ビバ、平和」
下の恐山師匠のGS達に空きがある現状で、早々牧街GSオフィスなんぞに依頼が舞い込むはずが無い
安い椅子に座り、スチール机に向かった牧街が、そのまま授業の時間に居眠りする学生の如く眠りにつく
何度も言うが葬儀屋と警察と軍隊と消防署とGSが儲かってはいけないので、これは世の中的にはかなり正しい図なのである
【完結ありがとうございました。お二人のおかげです。 次回、ストーリーどうしませう。誰もやりたい話無いようでしたら俺が導入部作りますが…。】
294:藤津木 織羽 ◆Olha/49Xgc
10/03/27 20:19:36 0
【むぎゅう…現在脳みそがメルトダウン中ですので、しばらくお休みです。機を見て入るかもですが】
295:カフェ ◆YNbEhcUF/I
10/03/27 21:15:42 0
>293
【特に思いつかないのでお願いしますー】
>294
【乙です。そういう自分も4月はちょっとペースが落ちる時期があるかもしれません】
296:牧街 ◆GwyfLokZWa7/
10/03/29 00:45:41 0
>>294
お疲れさまです
自分のペースで無理せずなさってくださいね
>>295
ではでは、やらせてもらいます
俺もペース落ちそうなので、お互い様っす、気にせんでください
爆睡する牧街の横の電話がけたたましく鳴り響き、慌てて跳ね起きた牧街が受話器を取って、頭をぶんぶん振って眠気を覚ます
「は、はい、こちら、牧街ゴーストスイーパーオフィスです!どの様なごじょけ…んんっ、どの様なごよーけんでしょうか」
『……』
「……あの…」
『……』
「…もしもし?」
焦ってとち狂った口調になってしまった牧街が悪かったのか、はたまたいたずら電話だったのか
電話の主は無言を通している
おかしいなーと牧街が頭をこりこりとかいた、その時、電話の向こうから蚊のなく様なか細い女性の声が聞こえてきた
『…………友…達が……』
「……はい?」
『友達が…心霊スポットに……』
数分後、真っ青な顔をし、いつでも仕事に行ける装備を整えた牧街が、カフェのオフィスの中にいた
牧街はカフェに促されて数度深呼吸をすると、今回の厄介な仕事のメモを見ながら、自分の所に来た依頼の説明を始める
「ゾンビ村って呼ばれる心霊スポットの村で起こった事件なんすけど…」
牧街によると、ある若いカップルが4組、山奥の立ち入り禁止の心霊スポットの廃村に肝試しに足を踏み入れ
朝の内に村の随所にカードを置き、夜一組づつ村を回ってカードを回収し、戻ってくるという肝試しをやり
依頼者は最後の組だったのだが、先に村に入って行った2組のカップルが戻って来ず、様子を見に行った3組目も数時間たっても戻って来なかったため、依頼者の彼氏が探しに行ったのだが…
「物凄い悲鳴がして、戻って来なかったそうです、その彼氏」
そう言って、牧街はため息を一つする
「…で、依頼何ですけど、依頼人は警察にこの事を内密に、消えた3組のカップルと、依頼者の彼氏を探して欲しいそうです。あ、これ、行方不明者の写真です、パソコンのメールで送ってもらったのを、印刷してもらいました」
コピー用紙には、どこかの祭りで撮った写真に、完全にいまどきの娘が4人と、金髪でヤンチャしてそうな刺青をした青年が4人、写っていて、女の一人は顔をマジックで塗りつぶして隠してある
「……この人達は資産家のご子息らしくて……内密に事を運んで欲しいと俺のとこにきたんすけど…このゾンビ村って心霊スポットの情報が乏しくて…。何か知ってませんか?」
297:名無しになりきれ
10/03/29 03:27:48 0
メドーサとか元始風水盤とかノスフェラトゥとか
298:カフェ ◆YNbEhcUF/I
10/03/31 11:46:38 0
>296
「牧街殿、そんな顔してどうした」
かくかくしかじか
「ゾンビ村か。廃村になる前の正式名称は分らぬのか? 妙じゃのう」
メッセンジャーを起動し、秋葉原流事務所につなぐ。
カフェ:ゾンビ村という心霊スポットについての情報を調べてくれ
情報班:ラジャ
情報班とは事務所に常駐しながらにして
インターネットの検索システムグルグルを最大限に駆使して情報を集める部隊である。
窓際とか飼い殺しとか言ってはいけない。
この班に頼めば普通は出てこないような情報がなぜか出てくる……事もある。
情報班:メドーサバスターズ、大回転原始風水盤、ノスフェラトゥの館などのアトラクションがあり……
カフェ:ちょい待て、廃村にアトラクションとは!?
情報班:村といってもニュー○ーランド村的な意味の村だったみたいです。
オカルトやホラーをテーマにしているからゾンビ村ですね。
カフェ:なるほど、ゾンビ村が正式名称だったのか
要するに、一時期雨後のタケノコのように建設され不景気の波にのまれ潰れた無数のテーマパークの中の一つであるらしい。
後輩A:そうそう、また師匠がそっちに入り浸ってるんでしょう?
たまにはこっちにも戻るように言ってくださいよー。
カフェ:何を言っておる? 師匠はここ数日来ておらぬぞ? おらんのか!?
後輩B:師匠ならちょっくら山奥の村にオーパーツの発掘に行ってくるとか言って数日前に出かけたであります。
後輩A:そうだったの!?
後輩B:はい。黒歴史ノートなるものに重要な情報が隠されていたとかなんとか……。
あの人の考えている事は常人には理解できないであります。
「黒歴史ノートじゃと!?」
廃校編で成り行きで手に入れた黒歴史ノートを開いてみると……
確かに「僕の考えたオーパーツの隠し場所」のようなコーナーがあり、その中の一つにゾンビ村があった!
しかも黒歴史ノートの例に漏れず、無駄に詳細な地図まで書かれている。
「師匠め、これを見たのか!」
常識的に考えて、黒歴史ノートにそう書いてあったからといって実際にあるはずはない。
「……行って連れ戻さねばならんのう」
こうしてまたもや同行が決定したのであった。
299:名無しになりきれ
10/03/31 17:47:00 0
テーマパークのロボットに低級霊が憑依して暴れるというのはよくある話で・・・
300: ◆BFRlXDTonc
10/04/01 09:49:03 0
「トゥルルルル・・・」オフィスの電話が再び鳴りました。
「あの・・」蝿の鳴く様なガラガラとかすれた青年の声が聞こえます。
不思議な現象でした。誰も電話の受話器を取っていないのです。
「・・・あの・・・ら~めん一丁・・・」
間違い電話!?一同は不思議に思いました。でもこんな間違い電話があるのでしょうか?
誰も受話器を取っていないのです。近代機器の機能からしてに根本的に間違いすぎです。
「・・・らめ~ん・・らめ~ん・・み~そらめ~ん・・・」まだ声は聞こえます。
とっても気持ち悪かったのですがカフェが電話のまわりを調べてみると電話を乗せている台の中から声がしました。
カフェが恐る恐る傘で台を割ってみると中から玉の様な青年がぐったりと出てきました。
「トゥルルルル・・らめ~ん一丁・・・・・」青年は異様な上手さでトゥルルルルも口で言っていたのです!
牧街が青年に事の経緯を問い詰めると青年は物取りであることを白状しました。
昨日の夜、物色中に牧街が部屋に入ってきたため慌てて電話の台の中に隠れたということです。
そしてそのままでるにでれなくなってしまったのでした。
青年「ワタシオナカスキマシタ。シニソウ。イツカカンナニモタベテナイ。タスケテクダサイ。タスケテクダサイ」
何故か青年は片言で哀願しています。
青年「コノママダト、ワタシハオソラノウエカラミナサンノコトミマモルコト二ナリマスヨ!」
【とつぜんごめんなさい。参加してもいいですか?このイベントのみのゲストキャラみたいのです。】
【キャラ設定もしないで成り行きで書きなぐってしまいました。ストーリーの流れ的に邪魔だったら斬り捨ててもらってもかまいません】
301:名無しになりきれ
10/04/01 22:38:10 0
>>300
とりあえず落ち着いて牧街のレス読んで見れ、二人は今カフェのオフィスにいる事になってるから
302:カフェ ◆YNbEhcUF/I
10/04/01 23:51:04 0
【へいらっしゃい! もちろん歓迎するぞ!
(といっても妾はスレ主でも何でもない平参加者であるw)
いっつも一緒に事件を解決してるから当然同じ組織に所属してるはず……と見せかけてところがどっこい
実は牧街殿のオフィスと妾のオフィスは別なのじゃ。そして所属流派まで違う!
牧街殿は恐山流という正統派、妾は秋葉原流という読んで字の通りの代物
ちなみに妾のオフィスは秋葉原の冥土喫茶(メイド喫茶に非ず)の2階
でも大丈夫。
電話がなったのを妾のオフィスとして
牧街殿が夜中に入って来たことはさすがに無いだろうと思う故
誰かは分らない何者かが来た事にすれば無問題!
それなら単なる物取りその2だったという本当に何でもない小ネタで終わらせることもできるし
下手すりゃ牧街殿そっくりのドッペルゲンガーだったとかいう大ネタにも発展可能!】
303: ◆BFRlXDTonc
10/04/02 10:01:44 0
>301
【ごめんなさい。勘違いしていました】
>302
【カフェさんの案を採用して推敲てみますね】
夜中にカフェのオフィスに牧街が進入したというのはあまりにも出来過ぎていない嘘でした。
そんなはずはないと牧街が再び問い詰めると百村大(ももむらまさる)は言いました。
百村:「ゴメンヨ。今カンガタ嘘ダゾ。ワタシノ名前ハ百村大。百ノ村ヲ統ベルコトガ出来ル大キナ人間二ナレルヨウニト親ガ「大」ト名前ヲツケタンダゾ」
そう言うと盗人の百村大は窓を開けて飛び降りて寂しげににコンクリートジャングルの中に消えてゆきました・・とさ。
でも・・・夜中にカフェのオフィスに侵入したもう一人の人影はいったい誰だったのでしょうか?(稲川淳二風にw)
【ごめんなさい。小ネタで自己完結させていただきました。入り所を間違ってしまってすみませんでし。ゾンビ村編に関係するサブキャラか敵役か何かで、またちょこちょこ参加するかもです。皆さんがよかったらなんですけど】
304:名無しになりきれ
10/04/02 13:59:54 0
摩天楼の足音時間錯誤の罠
血迷った危ない奴らから極楽え行かせちゃうわ
305:名無しになりきれ
10/04/02 14:07:22 0
色々と誤字が多いな、おいw
「またアニメに…」のくだりのおキヌちゃんは切なかったなぁ
306:牧街 ◇0GgFQdrqrk の代理投稿
10/04/02 22:46:16 0
>>298
「なるほど、マスコットがノスフェラトゥだからゾンビ村って名前何ですね、えぇ」
ゾンビ村の資料を見せてもらった牧街が、なるほどよく調べてるんだなーと感心する
ノスフェラトゥはヴァンパイアの大ボス的存在で(ドラキュラやブラドー伯爵を赤子扱いできるレベル)
吸血した対象をいのままに動くゾンビ化させる能力を持っているのである(更にそのゾンビが噛んだ相手もゾンビと化して、次々に数が増えていく、しかも一般に吸血鬼に降下のある聖水や十字架、にんにく、太陽の光はまるで効果が無い)
知名度はイマイチだが、間違いなく滅茶苦茶実力とインパクトのある妖怪であり
現に劇場版ゴーストスイーパー美神極楽大作戦にて敵の大ボスとしてすさまじい大活躍をしている
どの様な大活躍をしたかは、DVDが出ているのでそれで確認するか、youtubeで見て欲しい(漫画版には登場しません)
「設定はノスフェラトゥが支配している魔界に近い遊園地、なるへそ、じゃ特に必ずゾンビが相手と考えない方がいいわけだ」
ふむふむと最後まで資料を読んだ牧街は、大きく安堵のため息をついた
「俺はまた九…」
別のゾンビ関連のスレの村の名前を口にしようとした牧街の頭に、どっからか飛んできた野球ボールが直撃する
バイオスレの皆様申し訳ありません、第四部頑張ってください
「つつ…何か天罰的な物を感じたな…」
ボールを外で遊んでた子供達に返してあげ、席に戻った牧街は、気を取り直そうと出されていたお茶をすすろうとして
>黒歴史ノートじゃと!?
噴いた
せーだいに噴いた
「またアイツっすか!!」
小学生の頃のアホな設定資料集を気にして成仏できなかったばかりか妖怪にたぶらかされたとはいえ人殺しまでやった馬鹿兄貴の幽霊が事件をひっかきまわす置き土産をしてきた事に、牧街は雑巾で噴いた物を掃除しながら呆れ半分怒り半分の台詞をはき捨てる
自分ひとりじゃ怖いからカフェさんを誘いに来たのに馬鹿兄貴のために断られたらどうしようか…墓の前で大声で朗読でもしてくれようかと思っていると、しかし事件は意外な方向に進展する
そう、師匠が向かった村もこれから向かうゾンビ村だったのだ!!
しかも何か何やらオーパーツもゾンビ村には隠されているらしい
「……もしかしてそのオーパーツのせいで幽霊出るようになったんじゃないでしょうね…コレ…」
どうやら廃園になった理由には幽霊は関係ないらしい事を資料から察した牧街は苦い顔になり…
ハッとなると、牧街はカフェに詰め寄る
「もしそのオーパーツとやらのせいで遊園地に悪霊が出るようになったんだとしたら、他のとこも早く何とかした方がいいっすよ!!」
これからやるネタを先手必勝でぶっつぶす様な事をほざく牧街に再び野球ボールが飛んでこようとした、その時
307:牧街 ◇0GgFQdrqrk の代理投稿
10/04/02 22:46:41 0
カフェのオフィスの電話が鳴り響き、受話器をとってもいないのに不気味な声をかなで出す
>「・・・あの・・・ら~めん一丁・・・」
突然の怪奇現象に、牧街の表情がマッハで真っ青になり、素早くカフェの後ろに飛んで隠れる
>「・・・らめ~ん・・らめ~ん・・み~そらめ~ん・・・」
「な!?何すか!?ラーメンマン?ラーメンマンの霊?それともラ・メーンだから神代剣?サソード?スコルピオ?それとも本人?」
わけのわからん事をほざいてがたがた震えるだけの完全装備の役立たずの横で、軽装備のカフェが勇敢にも電話の下の台を傘で叩き割ると…
>「トゥルルルル・・らめ~ん一丁・・・・・」
玉の様な普通の青年が出てまいりました
「……これ、驚くところっすかね?」
怪物や妖怪が出てくると確信していたため一周して逆に意外な普通の人の登場に、牧街がとりあえずカフェに尋ね…
「…もしかして知り合いか彼氏ですか?」
ふと、カフェの知り合いならあるいはこんなのもいるかも知れないと失礼な想像をした牧街は一応聞いてみる
しかし、聞いてみると普通に泥棒である事が判明した
テロ魔族の手下だったらどうしようかと内心思っていた牧街は、心から安堵し…
いや泥棒でもまずいだろと突っ込みを入れようとした時、泥棒青年は今度は牧街も夜中にカフェの事務所に侵入してきたなどとほざいてきた
自分にも罪を被せて皆やってることだからで罪を軽くするつもりか、腹が減ってるからって人の家に盗みに行くなんて駄目なんだぞ!
ホームレスに配ってる豚汁を貰いなさいと牧街が(とても弱腰ながら)抗議すると
百村青年は自らの名前の由来を高らかに説明し、窓からコンクリートジャングルへと消えていった
……しばし呆然の後
カフェに警察沙汰にしますかと多少会話して…
…話が黒歴史ノートに戻る
>摩天楼の足音時間錯誤の罠
>血迷った危ない奴らから極楽え行かせちゃうわ
「怠慢な私の技の中これでもすきなのあげる
バイバイダーリンスパイダー……あ、これ暗号じゃ無いっすね、ただの自分の考えた主題歌だ」
オーパーツの危険性を感じ取った牧街は、直ちに黒歴史ノートのコピーを送ってもらい、残りのオーパーツの行き先の手がかりを探していたが
高度に暗号化されている(笑)ため、中々読み取る事ができない
更に所々に商品化されてUFOキャッチャーの人形になった俺のキャラだのアニメ化はもう無いと確信し血涙を流す俺だのとやたら向上心の高い馬鹿兄貴の様子が書かれていて、それが暗号らしきものと関係があるのか無いのかが全くわからないなど
牧街の科学力では全く他のオーパーツの場所を解明することができなかった
「…とりあえず、ゾンビ村、行きましょう、俺、車で送りますね」
しばらく解読作業を行っていた牧街だったが、やがて頭を抱えて中断し、車を取りに事務所へと戻っていく
一筋縄ではいかない恐ろしいノートである(笑)
>>303
イラシャイマセー
歓迎しますよー
仲良くやりましょうぜ
308:カフェ ◇YNbEhcUF/Iの代理投稿
10/04/04 21:56:29 0
>306
窓から野球ボールが飛び込んできて牧街に直撃した。
「珍しいこともあるもんじゃのう」
>「……もしかしてそのオーパーツのせいで幽霊出るようになったんじゃないでしょうね…コレ…」
>「もしそのオーパーツとやらのせいで遊園地に悪霊が出るようになったんだとしたら、他のとこも早く何とかした方がいいっすよ!!」
「そうか! 黒歴史ノートの作者は霊感を持っていて何かを受信して
それが無意識のうちに黒歴史ノートに投影されたという可能性もあるな。
だとしたら大変じゃ!」
>300 >307
>「・・・あの・・・ら~めん一丁・・・」
「はて……こんなにハイテクな電話は使ってないはずじゃ」
電話の台を真っ二つにたたき割ると、中からお世辞にも元気そうではない青年が生まれました!
「もしかしてあれか? 桃太郎の類か?」
>「…もしかして知り合いか彼氏ですか?」
「知らんのう。秋葉原流にいてもおかしくない感じはするがいなかったと思うぞ」
>「コノママダト、ワタシハオソラノウエカラミナサンノコトミマモルコト二ナリマスヨ!
本当に見守るだけならまだしも祟られたら困る。
「まて、早まるな! 今注文しようぞ」
幸いここは喫茶店のニ階ということで階下に向かって叫んだ。
「味噌ラーメン一丁!」
>303
>「ゴメンヨ。今カンガタ嘘ダゾ。ワタシノ名前ハ百村大。百ノ村ヲ統ベルコトガ出来ル大キナ人間二ナレルヨウニト親ガ「大」ト名前ヲツケタンダゾ」
「そうか。桃太郎は当たらずとも遠からずじゃの」 (※ もも しか合ってない)
そう納得している間に、謎の青年はアイキャンフラーイした。
その直後、ラーメンを持った冥土カフェのマスターがやってくる。
「へいおまちー!」
「一足遅かったようじゃ……飛び降りてしもうた」
「一晩に二人泥棒とは珍しい事もあるもんじゃ。
しかしどこから入ってきたのか。鍵が壊されている様子もないし……」
しばし首をひねるが、何事もなかったかのようにゾンビ村の話題に戻るのだった。
>304-305
見れば見るほど黒歴史ノートの謎はますます深まるばかり。
>「…とりあえず、ゾンビ村、行きましょう、俺、車で送りますね」
と、いうわけで今日は秋葉原師匠がいないので久々に普通の車で出発。
「さっきの泥棒確か百の村を統べるとかどうとか言っておったのう……
まさかゾンビ村もその中に入ってたり……ンなわけないか。
あやつは侵入技能が神がかってるだけのただの人間」
そう、侵入手口こそ分らないけどただの人間なのだ、多分きっと!
309: ◆BFRlXDTonc
10/04/08 16:03:56 0
>307
歩道に『ゾンビ村』と書いてあるスケッチブックを持った青年が立っていました。
なんとヒッチハイクをしている百村でした。
>ホームレスに配ってる豚汁を貰いなさいと牧街が(とても弱腰ながら)抗議すると
『モラッテキマシタヨ。オ外デハ春ノ豚汁祭リヲシテマシタ』
とさっきの会話の続きをスケッチブックに素早く殴り書きをして見せる百村青年。
どうしますか?百村を乗せていただけますか?
>308
「乗・セ・テ」スケッチブックを見せながら百村は車と平行に走ってついてきます。
そしてカフェが乗っている側の窓をスケッチブックで叩きわりました。
風でバタバタとなびいたスケッチブックがカフェの目の前にあります。
スケッチブックには「オネガイデス☆乗セテクダサイ!」と書いてありました。
カフェとは会話できる距離なのですが百村はスケッチブックをカフェにすごい見せてきます。
とゆうかカフェの顔にスケッチブックを押し付けています。類稀なるアホのようです。
310:名無しになりきれ
10/04/09 14:29:33 0
Drカオスのマリアをコピーしたのに何故か出来たのはメカ沢
311:カフェ ◇YNbEhcUF/Iの代理投稿
10/04/09 22:53:23 0
>309
「今時ヒッチハイクか、珍しい事は続くものじゃ」
などと呑気に言っていられるのは一瞬だった。
>「乗・セ・テ」
人間が車と平行に走っている。
「いかん、変な物が見えるぞ」
目をごしごしこすってもやはり人間が車と平行に走っている。
というかそもそも人間は車と平行に走れないんじゃないのか?
そうこうしているうちにスケッチブックによって目の前の窓がたたき割られた。
「ほわああああああああ!!
ま、牧街殿はいつも金欠でヒイヒイ言っておるのじゃ! 気安く壊すでない!
ほわああああああああ!!」
>「オネガイデス☆乗セテクダサイ!」
「そんなに早く走れるなら乗る必要はないのでは……むぐぐぐぐぐ!」
>どうしますか?百村を乗せていただけますか?
乗せるも乗せないももうほとんど押し入られていて選択の余地はありません。
本当にありがとうございました。
312:牧街 ◆GwyfLokZWa7/
10/04/10 16:47:46 0
さて、牧街の車にてゾンビ村へ出発し、ほんの少し行った所に、ゾンビ村と書かれたスケッチブックを持った青年が立っていました
それに対して牧街は
>「今時ヒッチハイクか、珍しい事は続くものじゃ」
「へぇ、俺は見てませんでしたが、誰かに乗せてもらえるといいですね」
華麗にスルーを決めました
向こうがこっちに気づいていないかも知れないし大体これ仕事で行く奴だし乗せるわけには行きません
などと考えながらスルーしようとしていると
>『モラッテキマシタヨ。オ外デハ春ノ豚汁祭リヲシテマシタ』
しっかり彼はこちらに気づいていました
(……振り切るぜ!!)
それでも無視しようと牧街が仮面ライダーアクセルと、化して百村青年を追い越した、その時
本当の恐怖がまだゾンビ村についていないのに幕を開けるのでした…
>「乗・セ・テ」
「見えない!見えない見えない見えない!!」
車と並走する明らかに人間とは思えない(牧街や牧街の師匠ならできそうにも思えなく無いが)流石のカフェすら目を疑い
牧街は必死に現実逃避し、車を走らせるが、百村青年は変わらずついてくるばかりか、遂に直接攻撃に出てきた
手に持ったスケッチブックで助手席の窓ガラスを叩き割ってしまう!
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」
>ま、牧街殿はいつも金欠でヒイヒイ言っておるのじゃ! 気安く壊すでない!
全く持ってその通りである
治すのに馬鹿高い金をとられそうな愛車のダメージに、レポート3(今進んでいるのはレポート7)でワイパーをタローの投げた悪霊に折られた時よりすさまじい絶叫を上げた
ちなみにあの時の修理費は牧街が全て負担している
>「オネガイデス☆乗セテクダサイ!」
>「そんなに早く走れるなら乗る必要はないのでは……むぐぐぐぐぐ!」
そんな事考えている間に、カフェがスケッチブックを顔に押し付けられて大ピンチだ
「ひぃい!ひぃい!ひいいいいいいいいいいいい……ってかこれって…」
そこでふとある事に気づいた牧街は素早くジャケットの懐から30万円の破邪札を取り出し、百村目掛けたたきつけ、爆発させる
「こいつどーーー考えてもテロ魔族の刺客じゃないっすか!!カフェさん!オカルトGメンに連絡してください!とりあえずこのまま警視庁へ逃げ込みます!!」
あんまりにも人間離れした百村の行動の数々に、牧街は百村を妖怪か魔族の類と断定、攻撃を開始した!
そりゃ…だって…ねぇ…
…どう考えても新手の都市伝説の怪人にしか見えない行為をされればこういう対応をせざる得ないというか…
313: ◆BFRlXDTonc
10/04/11 12:09:35 0
>310
>Drカオスのマリアをコピーしたのに何故か出来たのはメカ沢
「コノ声ハ!!10年前二死ンダオジイサン!?オジイサーーーーーン!!」
号泣する百村。彼はお祖父ちゃんっこだったのです。
>311
>「ほわああああああああ!!
ま、牧街殿はいつも金欠でヒイヒイ言っておるのじゃ! 気安く壊すでない!
ほわああああああああ!!」
「ひああああああああああ!!
オジイサーーーン!聞コエテイマスカーー!?私、ワケガワカリマセン!
ホントノ貧乏人ナラ車ナンテ買エマセンヨ!牧街サンハ小金モチ☆牧街サンハ小金モチ☆
ひあああああああああああ!!」
テケテケテケテケ…
>「そんなに早く走れるなら乗る必要はないのでは……むぐぐぐぐぐ!」
「OH!カフェサン。ゴメンナサイ、興奮シスギテスケッチブックデ御顔ヲ塞イデシマイマシタ!」
そう言うと百村はカフェの顔面を慈しむように、てろんてろんと脂ののった手で撫でてあげました。
「カフェさん。実は私には2年前から記憶がないのです。名前の由来とお祖父さんの記憶が少しあるだけなのです。
ここ2年間。盗人をして生計を立ててきました。そして空腹で朦朧とした中、電話台の中であなた達の声を聞いたのです。
飛び交うゾンビ村と言うキーワードが心の中で気になりました。ゾンビ村に行かなきゃ!
そんな心に支配された私はいてもたってもいられなくなりその場を去ったのですが、ゾンビ村の場所を知らないことに気付き今ここにいるのです。
そしてさっき少しだけ記憶が戻りました。平仮名を思い出したのですよ!!」
>312
>「見えない!見えない見えない見えない!!」
「牧街サン運転二夢中ミタイデスネ!!夢中デ頑張ル君二、エルボーデス」
ガンッ!!車の窓を肘で叩くとガラスにヒビが入りました。
「エエイ~面倒デース!スケッチブックデ「ガンッ」シマース☆」
ガッシャーン!百村のスケッチブックは鋼鉄で出来ていました。
>「ひぃい!ひぃい!ひいいいいいいいいいいいい……ってかこれって…」
そこでふとある事に気づいた牧街は素早くジャケットの懐から30万円の破邪札を取り出し、百村目掛けたたきつけ、爆発させる
どかーん
「むぎゃあああああああああああああああああ!!
テロ魔族ってなんなんですか!?私は妖怪なのですか!?誰か私に記憶を、記憶をくださーい!!」
爆発で黒焦げになった百村は春なのにアフロヘアになっています。
「牧街さ…ん…カフェ…さ…ん…」
走力がなくなってゆく百村は最後の力で車の窓にしがみつきました。
314:カフェ ◆YNbEhcUF/I
10/04/12 00:05:56 0
>312-313
>「OH!カフェサン。ゴメンナサイ、興奮シスギテスケッチブックデ御顔ヲ塞イデシマイマシタ!」
スケッチブックを引っ込めたかと思うと今度は顔を撫で始めた。
「こら、何をする! ……ん? んん!?」
きらりーん。顔がつややかになった!
ただ豚汁の油が乗っただけという疑いもあるが……
「霊的エステか? 感謝するぞ」
青年は今までより少し流暢な言葉で境遇を話し始めた。
>「カフェさん。実は私には2年前から記憶がないのです。名前の由来とお祖父さんの記憶が少しあるだけなのです。
(中略)そしてさっき少しだけ記憶が戻りました。平仮名を思い出したのですよ!!」
「ほう。それは良かったのう」
>「牧街サン運転二夢中ミタイデスネ!!夢中デ頑張ル君二、エルボーデス」
「はい!?」
>「エエイ~面倒デース!スケッチブックデ「ガンッ」シマース☆」
「だから壊しちゃいかああああん!」
と叫んだときには時すでに遅く、案の定破邪札が炸裂した。
>「こいつどーーー考えてもテロ魔族の刺客じゃないっすか!!カフェさん!オカルトGメンに連絡してください!とりあえずこのまま警視庁へ逃げ込みます!!」
>「むぎゃあああああああああああああああああ!
テロ魔族ってなんなんですか!?私は妖怪なのですか!?誰か私に記憶を、記憶をくださーい!!」
妖怪なのかは知らないが、夢中で頑張る君にエルボーをお見舞いする人物を放置したら危険である。
「可哀そうじゃが人に危害を加える可能性がある以上野放しにするわけにはいかぬ」
オカルトGメンに連絡しかけて……はたと手をとめる。
器物破損こそ歩くのと同じ感覚でやっているが、その割に対人被害は出てない事はないか。
「もしやエルボーもガッツ注入的な霊的補助……!?」
>「牧街さ…ん…カフェ…さ…ん…」
「牧街殿、見てみい! こんな姿になって……」
必死にしがみついている百村。
本来なら「この人、悪い奴じゃない!」「力になってあげなきゃ!」などという感情が芽生える重要なシーンだが、アフロによって雰囲気がぶちこわれである。
「テロ魔族はこんなアホなギャグキャラを送り込んでこないのではなかろうか。
よし! この際一緒に行ってもらおうではないか。
祟られたら恐怖だが味方につければ心強い事この上ない」
手を伸ばして、壊れて無くなった窓から引っ張り込む。
やはりアホなギャグキャラ同士通じ合うものがあったようである。
315:名無しになりきれ
10/04/12 03:51:47 0
ギャグキャラとは不死の生命体
ある意味究極生命体であるそれを人工的に作り出すYOKOSIMA計画
316:牧街 ◆GwyfLokZWa7/
10/04/12 20:11:30 0
>「むぎゃあああああああああああああああああ!!
牧街必殺の破邪札が炸裂し、百村青年は沈黙した
「や…やった!!」
完全に百村青年を妖怪の類だと思ってる牧街は、よしっとガッツポーズを決める
窓ガラスよ、仇はとったぞ!と空に割れた窓ガラスを浮かべそうになった、その時
>「もしやエルボーもガッツ注入的な霊的補助……!?」
横にいた妄想少女が不吉な事を言い出した
「……あの…カフェさん、何を言って…」
気づいた時には既に遅し、カフェは攻撃されて哀れな姿になった百村青年の味方になってしまう
>「牧街殿、見てみい! こんな姿になって……」
「いやそれ自業自得じゃ…」
確かに牧街は一般人よりも莫大な収入を一回の仕事で得ているが
その莫大な収入を得る仕事にかかる経費がまた莫大であるため
プラスマイナス0、もしくはマイナスになる事が多く
故に牧街は決して裕福な分ではない(悪霊一匹倒すのに平気で数百万とかかかるため。
前回の藤月の仕事の報酬は数千万円の仕事だったが、秋葉原流と山分けし、更に師範と山分けした後、前々回鬼モドキに圧し折られた神通杖や、使いまくった破邪札の補充で既に消滅している)
その証拠に、牧街は移動手段として車は持っているが、通信手段は固定電話しかないし、車だってガソリン代節約のため事務所に置きっぱなしだ
無論、車本体も安い中古の軽自動車でコブラだの何だのでは無い
そんなギリギリGSやっている人に小金持ちだなどと言いながら明らかに人じゃない動きで襲い掛かり器物破損してくる輩に牧街が応戦してそいつがアフロになっても、それは正当防衛、最悪でも過剰防衛だ
と言うかこの世界はそんなごろごろ綾崎ハ○テみたいな身体能力もった輩がいる世界でもない、そんな能力持った奴は大抵妖怪の類だ
相手がテロ魔族や妖怪ならどんだけ過剰な防衛しても問題ない
自分から妖怪の巣に行ったとかならまだ相手に事情酌量の余地はあるが、今回の百村青年が妖怪だった場合、GSの乗った車に自分から襲い掛かり、攻撃を受けたのだ
襲い掛かった方が悪いに決まっているし、妖怪だから破邪札で攻撃しても全然OK、誰がどう見ても百村青年が悪い
>「テロ魔族はこんなアホなギャグキャラを送り込んでこないのではなかろうか。
「うっ」
しかし
百村青年刺客の妖怪説はカフェの一言であっさり崩壊してしまう
そうだ、あの恐ろしいテロ魔族がこんな牧街の一撃程度でアフロになるような貧弱な刺客を送ってくるはずが無いのだ
っつーか牧街達3流GSなんぞ狙う理由がまず無いはずである
しごくごもっともなカフェの一言に怯み、じゃあ百村青年って何だ?妙な計画で作られた究極生命体かなんかかと牧街が考える間も無く、続いてカフェはとんでもない事を言い出す
>よし! この際一緒に行ってもらおうではない~
「えぇ!?」
そう言いながら百村青年を車の中に引っ張り込んでいくカフェに、思わず牧街の口から悲鳴があがる
「ちょ…カフェさん、何言ってるんですか、えぇ。そんな…その…妖怪と見まがう様な怪しい輩を連れてったら現地で何やらかすか全く想像がつきませんよ!その人の事は…」
警察に任せて…
そういおうとして、ふと、牧街の頭の中にある想像が浮かんだ
百村青年は記憶喪失であるわけだから、当然警察もゾンビ村を調べようとするはずだ
そして、ゾンビ村を警察に調べられたら、ゾンビ村で起きた事件の件が明らかになり、極秘裏に行方不明者を探してくれと言う今回の依頼が失敗してしまう
しかも相手は政治家の娘だ、失敗してしまえば牧街GSオフィスの悪い噂をばら撒かれ、事務所再起不能になる可能性も否定できない
ここは一つ、カフェの言うとおり、連れて行くのがベストだろう
他にも色々手段はあるだろうにあんまり頭が回らない牧街はとりあえずそこまで考えると、渋々やっぱりいいですとカフェの意見を聞き入れる
「その代わり…責任もって面倒見てくださいね、えぇ」
何か小さい子供が子犬でも飼うのを許す親みたいな事を言って全責任をカフェに任せると、恐らく弁償能力を持たない百村青年からは金を取れないため、戦う前に早くも無駄な支出が出てしまった己の身の不幸を呪いつつ、ゾンビ村のあるG県を目指すのだった
317: ◆BFRlXDTonc
10/04/13 11:30:50 0
>「だから壊しちゃいかああああん!」
「カ・イ・カ・ンで~す。牧街さんの車は『やりたい放題』ってオモチャみたいで~す。
受話器とか箱ティッシュとかが一つにまとまっている幼児たちの神オモチャでーす」
きゃっきゃっきゃっきゃと屈託の無い笑顔で笑っている百村に破邪札が炸裂する。
>「牧街殿、見てみい! こんな姿になって……」
「そうですよカフェさん。もっと言ってやってください。けほ…。そして牧街さんは私を見てください。
こんな姿になってしまった私を!罪悪感を感じるでしょう?」
>「テロ魔族はこんなアホなギャグキャラを…(中略)…味方につければ心強い事この上ない」
手を伸ばして、壊れて無くなった窓から引っ張り込む。
「……」
車内に引っ張り上げられた百村は後部座席で悠然と胡坐をかくと腕を高々と上げた。勝利のポーズなのだろうか?
アフロ頭で全身黒焦げ。ボロボロに破れた服を着ているためその姿はインドのサイババにもみえる。
こねくり回される人生、いじられてなんぼ!今この瞬間。粘土型キャラ、百村大が誕生したのである。
3人を乗せた車は長閑な桜並木を走っていた。
「見てください。牧街さん。カフェさん。風に乗って桜の花びらが入ってきましたよ。
これも窓がないお陰ですね。ゾンビ村も春なのかな…」
風でアフロをたなびかせながらソワソワしている百村は座席の後ろのマガジンラックに何冊かの雑誌を見つけた。
「月刊ムー?まだあったんですか?どれどれ…私こそアベノセイメイの生まれ変わりだ!
吉田源平が語る壮絶な戦歴…。うそ臭いですね」さらにパラリとページをめくる。
>ギャグキャラとは不死の生命体ある意味究極生命体であるそれを人工的に作り出すYOKOSIMA計画
「…。なんかもうめちゃくちゃですね。編集部はネタ切れしてるんでしょうか?」
雑誌を戻し他の本を探してみると…
「こ、これは!!(自分を好きになる方法)(働く意味。喜びのみつけかた)(かたちだけの愛)!?
…牧街さん…悩んでいるんでしょうか?」雑誌をそっともとに戻す百村。
窓が壊れているため風でデコ丸出しの牧街と目が乾いてしぱしぱしているカフェの横顔をチラチラ見ながら百村はいたたまれなくなった。
「私…がんばります。なにをがんばるかはわかりませんが、がんばります!」
318:カフェ ◆YNbEhcUF/I
10/04/15 00:03:59 0
>316-317
>「その代わり…責任もって面倒見てくださいね、えぇ」
「うむ、妾に任せておけ。こやつに社会のルールというものをきっちり教え込んでやろう。
よいか? 妾が手をだしたら手をのせるのじゃ。お手!」
犬の躾と間違えている。
>317
>「見てください。牧街さん。カフェさん。風に乗って桜の花びらが入ってきましたよ。
これも窓がないお陰ですね。ゾンビ村も春なのかな…」
「綺麗じゃのう。物は考えようじゃ。この際オープンカーになったと思えば……」
>>ギャグキャラとは不死の生命体ある意味究極生命体であるそれを人工的に作り出すYOKOSIMA計画
>「…。なんかもうめちゃくちゃですね。編集部はネタ切れしてるんでしょうか?
「つまり牧街殿はギャグキャラだったのか!?」
これは厳密には間違っている。
“ギャグキャラとは不死の生命体”だとギャグキャラは必ず不死の生命体になるが
不死の生命体が必ずギャグキャラだとは限らないからだ。
最初こそオープンカーも悪くなかったが、走っているうちに飽きてくる。
「……やはりオープンカーより普通の車がいいのう」
>「私…がんばります。なにをがんばるかはわかりませんが、がんばります!」
「おう、目指すは犬大会優勝じゃ!」
エセオープンカーはしばらく走ったのち、ゾンビ村に近づいてきた。
「まだかのう……おお、見えてきたぞ!」
見えてきたのは、“ようこそゾンビ村”の文字がついた門。
そして受付のお姉さんらしき人がナチュラルに無茶ぶりをしてきた。
「いらっしゃいませー、入場券はこちらでお買い求めください」
「入場券がいるのか、ちょいと待ってくれ……お主は誰じゃ!?」
ナチュラルすぎて流されそうになったがすんでのところで踏みとどまった。