GS美神世界の、三流GSのスレat CHARANETA2
GS美神世界の、三流GSのスレ - 暇つぶし2ch200:カフェ ◇YNbEhcUF/I
10/01/29 11:32:50 0
>196
>「失礼しました…人違いです。」
「いや、間違えておらぬ。妾は秋葉原流GSのカフェでこっちは妾の師範じゃ」
>『簡易測定・開始・シマス・60.39…・70…・此ノ方達・GSノ・可能性・確率97.28%・デス』
「霊的機械人形……すごいのう!」

>「ここで除霊した分は別料金としてお支払い致しますが…如何でしょうか?」
「話は後じゃ。まずはこの状況をどうにかせねば」
「敵役だから負け続けなければいけないなんて誰が決めたでござる!
正義の味方になりたいでござる!」
そうしている間にも、負け続けなければならない運命に疑問を感じテロを起こした怪人が魂の叫びをあげている。
はて、最近似たような話をどこかで聞いたような。
「あーっ! テロ魔族に操られてるのではないか?」
カフェが師範に小声で尋ね、師範が対処法を分析する。
「直接操られてるわけではなさそうにゃ。
あの着ぐるみはきっと本当はヒーローをやりたいのに怪人しか出来にゃい事に不満を抱いていた……。
それがテロ魔族の思念の影響を微妙に受けて悪霊みたいになった可能性はあるにゃ」

>199
気づくと、牧街ヨガレッドが手際よく怪人の羽をもぎ取っていた。
「よし、あの手でやってみるとしようぞ。名づけて鞭の後に飴作戦!」
要するに痛めつけて力の差を見せ付けた後に優しい言葉をかける作戦。
「ヨガホワイトロリータ参上!」
良く分からないヒーロー名を叫びながらステージに躍り出て、怪人に語りかける。
「誰でござる! お前も拙者を痛めつけるでござるか!?」
「お兄ちゃん……いっつも負けなければいけないなんて辛かったよね……」
魅了の術はヲタ属性持ちか妹属性持ちにしか効かないことになっているが
ヒーローショーの出演者をやっているぐらいだから
ヲタク方面に少しは興味があるだろうと思っての賭けである。
「うるさいでござる。お前に何が分かるで候!」
突っぱねているように見えるが、明らかに動揺している。
続いて、ボロ雑巾のようになって倒れている当初のヨガレッドに目を向ける。
「お兄ちゃん、怪人さんの話を聞いてあげて。
話し合えば怪人とだって分かりあえるかもしれないじゃない!」
「なんだって……? 怪人と分かりあえるなんてそんなことが……」
こちらにも魅了の術が少しは効いたようで、しばし見つめ合うヨガレッドとどくろハムスター。
なんともいえない空気が場を支配し、観客が息をのんで見守る。



201:藤津木 織羽 ◆Olha/49Xgc
10/01/29 22:34:55 0
わけありマート駐車場では、織羽も観客の中に混じってヒーローショーの様子を眺めていた。
その傍ら、時折手元のノートパソコンに目を落として魔族に関わりそうな情報を探す。
「ビンゴ…これね。でも何で…こんな大事なのに誰も何も言ってなかったのはどうして?
一度、本社に問い合わせる必要があるわね………。」
携帯電話を開き、藤津木グループ本社の電話番号を打ち込む。

その頃、ステージでは偽レッド(牧街)にブチリと羽を千切られて弱った怪人と、ヨガレッドが見つめ合っていた。
しばしの迷いの後、意を決したように怪人に駆け寄って手を差し伸べるヨガレッド。
『どくろハムスター、もし正義を求めるならオレたちとお前は仲間…いや、友になれるんじゃないのか?
全てを戦いで解決していたら報復の連鎖は終わらない。それにPTAからも苦情が来る。』

差し伸べられた手を取るどくろハムスター。
背中の羽が千切られたことによって怪人の力が失われたのか、カフェが掛けた魅了の術も効果は抜群だ。
『ヨガレッド…拙者は…拙者はただ…。』
『もう良い、何も言うな………わけありマート駐車場で、僕と握手!』
レッドと固く握手すると、怪人の体から邪気が抜けてゆく。
かくしてヨガレンジャーとダグロムの怪人の和解は成った。

『ざわざわ…ざわざわ…。』
今まで固唾を飲む人々で静まり返っていた観客席の沈黙はざわめきに変わり、やがてそれは怒号へと変わる。
『ええー!』
『テレビとちがーう!』
『怪人は、ちゃんとヤラレロー!』
子どもたちのブーイングと投げられる無数の空き缶がステージ上を飛び交う。
除霊は成功したものの、どうやらヒーローショー的には失敗だったようだ。

本社への通話を終えて携帯電話をパチンと閉じた織羽は、ステージ裏に移動してカフェと牧街に声を掛けた。
「合格…ね。ヒーロー役、お見事でした。カフェさんに…まだ名前を窺っていませんが、そちらの助手…の方?
先程の護衛の件ですが、今度は本物の悪の組織と戦ってみませんか?
メルクリウス貿易――という名に聞き覚えはあるでしょうか。
前々から盗掘された物品を密輸しているという黒い噂の絶えない貿易会社です。
今年もエジプトから発掘したオーパーツを日本に運んだとか…。」

言葉を切って声をひそめ、緊張した面持ちで話を続ける。
「それで…実は藤津木の研究者が一人、メルクリウス貿易に拉致された可能性がありまして。
先日、発信器を兼ねた社員証の反応がメルクリウス貿易で消失したのです。
なぜ貿易会社が研究者を誘拐したのかは解りませんが、大事な社員は奪還したいものです。
ですが、メルクリウス貿易の社長は経歴不明の怪しい人物で、
調査では、黒魔術で魔ぞ…こほんっ…何やら悪霊…の様なものを使役するとの噂もあります。
本来はオカルトGメンに頼むような案件かもしれませんが、事を荒立てて藤津木の評判を落とすわけにはいきません。
それで…私がアナスタシヤに強襲させて弊社の社員を奪還したいのですが、その護衛をお願い頂けるでしょうか?」

織羽は、魔族に遭遇する可能性と言う点を伏せて、GSに再度の依頼を出す。

202: ◆Olha/49Xgc
10/01/29 22:36:55 0
東京都港区に聳える双色の電波塔、東京タワー。
この鉄塔は、国内海外を問わず大勢の観光客が訪れる都のシンボル的な建造物。
今日、タワーの地上施設フットタウンでは、エレベーターや階段の前で絶え間無く観光客の不満声が聞こえる。
「ええっ…せっかく来たのにぃ。」
「何も休日にやるこたないのになー。」
階段とエレベーターの前には『本日はメンテナンスの為、展望台を休業いたします』と張り紙による告知。
それを見たタワーの観光客たちは不満を述べながらも踵を返し、その場を立ち去ってゆく。
しかし、もし観光客の中に魔術の知識や霊力や秀でた者が一人でも居たならば、
告知の張り紙を見て一目でその異様さに気づいた事だろう。
そう…紙が魔力の込められた護符であり、張り紙のデザインに見える模様は人払いを意味する異国の言葉である事に。

地上250mに位置する東京タワーの特別展望室では、都内の全景を四方に一望できる。
メンテナンスの告知によって、今は無人となった特別展望室に何者かの声が響く。
「やれやれ、東京が悪霊都市として生まれ変わる記念の日になると思ったのにね。」

漫画表現での未登場の悪役の如く、フード付きの黒いマントで全身を覆った男が地上を見渡す。
あれ…人が居るのなら無人じゃないよね、という突っ込みは無用に願いたい。
都内を眼下に睥睨する彼は、人と呼ばれる存在では無いのだから。

そして無人は、タワービル5階の送信機室も同様。
今日は、メンテナンスの作業員の代わりに蝋人形たちが働いていた。
ちなみにこの蝋人形たち、当然ながら日本電波塔株式会社の職員でも電力会社の人間でも無い。
蝋人形館の人形数体が、魔術によってマリオネットの様に操られているだけである。

「しかしラルヴァ・システムによる邪霊波送信も成果が薄いね。
やっぱり核となる霊体制御装置が無ければ、駄目って事か。
まったく…せっかちなのが僕の悪いところだよね………クックック。
ああ…マリオネットたち、残業手当は出ないけど、まだまだ休んじゃだめだよ?」

特別展望室の何者かが、クスクスと笑う。
命令を受けた蝋人形たちは、怪しげな装置に取り付き、調整を始める。
今日、この電波塔で行われていたのは告知されているメンテナンスなどでは無い。

行われていたのは――魔族による放送実験。

203:牧街 ◆GwyfLokZWa7/
10/01/30 21:05:24 0
>>200
牧街の作戦は成功し、怪人は劇中どおり戦闘能力を失った
さあ、ここから悪霊怪人を颯爽とやっつけて藤津木嬢の信頼を勝ち取るぞ!
と言う所で、突如カフェがステージに現れ、突然の事に困惑する牧街の前で怪人を説得し、成仏させてしまった
「えぇ……!?ぁ…し…しまった…」
その出来事に、牧街は冷や汗を流す
今回の依頼は牧街の所属する恐山の道場に来た物で、本来なら牧街は戦うべき相手だった
なので、カフェ等は例の魔族を警戒し、慈善事業でついて来てくれた物だと思っていたが、不意打ち的に手柄をかっさらわれてしまった
この場合、牧街は報酬を貰うわけにはいかない
道場関係者ではないカフェやカフェの師匠が悪霊を倒したのでは、恐山流除霊道場が悪霊を倒しましたとはいえないからだ
その上、怪人戦滅に失敗したのが牧街除霊事務所ならば良かったが、今回失敗したのは恐山流除霊道場だ
師匠の顔に泥を塗ったので、帰った後どんな目に合うか、想像するのも恐ろしい

更に、悪い事は続く
「ぁ…ちゃぁー………」
「あちゃーじゃないよ!君!どうしてくれるんだ!」
ステージ袖近くで呆然としていた牧街を袖から伸びた手が引っつかみ、舞台裏へと引っ張り込んだ後、演出家が怒声を浴びせてきた
「ぅ…その…申し訳ありません」
「申し訳ありませんじゃないよ!君の作戦なら私のショーを台無しにする事は無いと思ったから君の交戦と着ぐるみの破損を認めたんだ!怪人を舞台袖に誘導し、そこで中のバイト君を救出して、抜け殻になった怪人を倒すんじゃなかったのかね?それをあんな風に…」
「いぇ…確かに、アレは想定外でしたが、しかし、悪霊の殲滅は早急に行う必要がありまして」
「そんな事はわかってるんだ!私が言っているのは、何故途中でこちらに通達無しに突然作戦を変更したのかって事だよ!見たまえ!あの子供達を!」
ショーの方へ目を向ければ、子供達は親に「あんなヨガレッドと握手したくない」だとか「もう帰る!」などと言って、次々とつまらなそうな顔で帰っていっている
「ああ言う道徳的な終わり方はショーにすると派手さもないし、あの年頃の子供達には受けないんだよ!大体何、あの女の子!部外者を除霊させたのかね?え?君それでもプロか?君は子供達を裏切ったんだぞ!君は社会人として恥ずかしく無いのか?」
「申し訳ありません、彼女はあの…GS資格者でして…その…こちらの不手際で…」
一気にまくし立ててくる演出家に、牧街はしどろもどろにしか答えられず、それがかえって演出家の激昂に触れたようだ
「君じゃ話しにならない!上の者を呼ぶか、でなければ君の事務所を訴えさせてもらう!」
「そんな!親は!親とかは関係ないんで!それだけは勘弁してください!」
「まぁまぁ、君落ち着きたまえ」
怒る演出家に牧街が万引きした小学生みたいな事をほざいたその時、演出家の後ろから別の人物が現れた
「主任…」
どうやら、ショーの責任者の様である
彼の登場に、息を荒げていた演出家も、多少落ち着いた
「お客様から怪我人が出る事を考えたら、悪霊が倒れただけ良かったじゃないか」
責任者の言葉にそう言われて、演出家も「まぁ…責任者がそういうなら」と黙らずにはいられない

結局、その場はショー責任者の寛大な処置で、牧街が訴えられる事無く済むのだった
ショー責任者の主任が起訴を取り消したのは、裁判沙汰になってスーパーの黒い所を探られたくなかったというのが本当の所なのだろうが
助かってほっとしている牧街には、その辺りはどうでもいい

204:牧街 ◆GwyfLokZWa7/
10/01/30 21:45:40 0
さて何とかショーの方も丸く治まり、はーっと一息ついた牧街は、舞台裏にカフェを呼び出していた
「あの…カフェさん、今回、助けていただいたのは大変嬉しかったのですが、その…」
>「合格…ね。ヒーロー役、お見事でした。
牧街がカフェに一言何か言おうと(その割にはめちゃくちゃ弱気だったが)したその時、タイミングよく藤津木嬢がその場にやってきて、牧街の言葉は肝心のところで途切れてしまう
しかし、褒められたので、あ、一応信頼は取れたのかなぁと喜ぼうとした所
>カフェさんに…まだ名前を窺っていませんが、そちらの助手…の方?
しっかり活躍も手柄も持っていかれた事がわかり、牧街は体の力が抜けてずるっとすっこけた

だが、藤津木嬢の話しの続きに、牧街の目の色が変わった
>私がアナスタシヤに強襲させて弊社の社員を奪還したいのですが、その護衛をお願い頂けるでしょうか?」
(……明らかに犯罪の臭いがするじゃん)
すなわち、恐怖と怯えの色に…

(え?そ…そういう誘拐されたとかって警察に頼むべきで…と言うか、他人の会社をロボで襲撃したら犯罪だよ…な?
あ、そうか、向こうも犯罪やってるから…
でも、これ俺関わると間違いなくイザという時トカゲの尻尾きりで人生終わらせられるよな…?
だけど断って帰ると道場に泥塗っておめおめ帰ってきたって事で師匠にえらい目に合わされるだろうし…
ヤバイ!色々ヤバイ!ってか断ると帰り道で黒服にさらわれそうだし…
アカン!マジアカン!に…逃げなければ…
駄目だ!どっちからも逃げる自信が無い
………どうすれば…どうすれば生き残る事ができる……)

戦いが始まる前から絶体絶命の大ピンチに陥った牧街はふっとある事に気がつくと、がしっとカフェの師匠の手を取り、藤津木から見えないところまで引っ張って行き、言った
「今回の事件は大事の予感がします!できれば、大勢の人の平和と安息のために、力を貸してください!無論、報酬は山分けで!」

牧街のライフセーブプランはこうだ
まず、カフェとカフェの師匠の力を借りて藤津木の依頼に挑む
こうすれば、消される時は皆一緒なので、お互い協力せざる得なくなるだろう
そして、もしそんな風に消されそうになる事無く無事依頼を達成できれば、師範への汚名返上もできて、人生は安泰だ
更に、カフェ等の協力があれば、本来の依頼の方の達成率も格段に上がる

まぁ、要するに危ない目に一人で合うの嫌なのでカフェ等を巻き込もうという人としてどうかと思う行為なので、カフェ等が納得してついてきてくれるかは怪しい
報酬は山分けどころか9;1でも構わんだろう

205:カフェ ◇YNbEhcUF/I
10/01/31 23:27:58 0
>201 >203-204
>「えぇ……!?ぁ…し…しまった…」
「なにがしまったのじゃ?」
>『ええー!』
>『テレビとちがーう!』
>『怪人は、ちゃんとヤラレロー!』
飛んできた無数の空き缶が当たる。
「あいた! あいたたたたた!!」

逃げるようにステージから降りてきたカフェを師範が出迎える。
「よくやったにゃ!」
「全く……あれで怒るとは最近の子どもは分かりやすい勧善懲悪しか知らぬのか!
そんな世の中だからテロ魔族も出てくるのだ」
「まあまあ。今は分からなくてもきっと将来分かってくれるにゃ。
ショーの主催者も怪我人が出ずに済んで感謝しているはずにゃ。
牧街くんは今頃裏で感謝状の一枚でももらっているにゃ」
二人には、牧街が理不尽な大目玉をくらっていることなんて知る由も無い。

しばらくして牧街が出てきた。
ちなみに、秋葉原流の師範は、まともなGS流派達の縄張り争い等等とは無縁の位置にいるので
決して自分が除霊したと主張して報酬を横取りしようとか深い事を考えている訳ではない。
考えていたとしても手伝い賃をちょっと分けてもらえたら嬉しいかなー程度なので
よもや牧街が何に怯えているかに気付くはずもないのであった。
>「あの…カフェさん、今回、助けていただいたのは大変嬉しかったのですが、その…」
「うむ。なんじゃ?」
>「合格…ね。ヒーロー役、お見事でした。」

思いもしなかった織羽の依頼に、目を輝かせる。
「悪の組織と戦うじゃと!?」
「すごいにゃー!」
ヲタクは悪の巨大企業に潜入して奪還作戦とか社長が黒魔術師とかいう設定だけでご飯三杯はいけてしまうのです。
が、隣で怯えている牧街を見て、さすがに現実に引き戻される。
「でもこれってタイーホされる可能性も……」
そう思っていると、牧街が師匠の手をとってどこかに連れていく。

>「今回の事件は大事の予感がします!できれば、大勢の人の平和と安息のために、力を貸してください!無論、報酬は山分けで!」
「もちろんにゃ! 世界の平和と安全のために共に頑張ろうにゃ!」
牧街の心配とは裏腹に、師匠はあっさり承諾した。
まあ色んな意味で俗世を超越したこの師匠ならそう言うだろう。

「はて、なにしに行ったのかのう」
その時、カフェの携帯が鳴った。
カフェの母「ちょっと! お父さんが借金して1000万もする怪しげな壺を買ってきたんだけど!」
「うむ。そうか」
カフェの母「このままじゃ店が潰れちゃう! 大きい依頼でドカーンと稼ぎなさい!」
カフェの父は要するに初期から登場している喫茶店のマスター。
そして怪しげな壺はこの人の持ちネタなのだ。
事務所は店の二階であるからして借金で店が潰れたら事務所も潰れることになるだろう。

「うーむ、なんでまた……」
もしかしたら邪霊波の影響を受けて「奥さんの尻に敷かれた亭主は嫌でござる。好きな物を買うでござる!」と
つい羽目をはずしてしまったのかもしれないが、そんなことは知る由もない。
そこに師範が戻ってくる。
「ぼくちん達も協力することになったにゃ。もちろんカフェも受けてくれるにゃ?」
「もちろんじゃ! 必ずや成功させようぞ!」


206:藤津木 織羽 ◆Olha/49Xgc
10/02/02 21:06:02 0
依頼内容を聞いて表情を変えた牧街が、慌てて秋葉原道場の師範を引っ張って袖口に消えた。
何事かをヒソヒソと…でなく割と大声で相談しているので声が漏れ聞こえてくる。

>牧街「できれば、大勢の人の平和と安息のために、力を貸してください!」
>師範「もちろんにゃ! 世界の平和と安全のために共に頑張ろうにゃ!」

んー…何か、かなりの気合が入ってるみたいね。
こんなに燃えている所に護衛だけを任せるっていうのは、かえって悪いかしら…?
それはそうと内緒話をする時に!を付けるのは、わたしも気を付けた方が良さそうね…。
などと思っていると引っ込んだ牧街たちが帰ってきて、師範とカフェが力強く依頼を承諾する。
「――話も纏まったようですね。詳しい説明は移動中に致しますので、まずは車にお乗りください。」
と言い放つと、彼らを連れて駐車場に向かい、ベンツのドアを開けてサッと乗り込む。
ベンツの車内は広く、向かい合った前部と後部の座席には軽く7~8人は乗れそうだ。

――しばらく車が走った所で織羽は口を開く。
「メルクリウス貿易本社は“隙間区”にあるそうですが…ええと、隙間区…ニュースなどで御存じですよね?
今年になって東京23区に新しく加わった区域です。
昨年の事業仕分けで行政が土地開発の計画を見直した所、書類に不備が多くて無駄な土地が割と余っていたそうなので、
思い切って区画整理をしてみたら一区画出来てしまったとか…。
ちなみに最近新たに造られた区域なので、まだネットなどにも正確な地図はありません。」

そして手元のノートパソコンを全員に見えるようにクルリと動かす。
「まずは奪還すべき研究員のデータをお見せしておきますね。」
画面には長い黒髪をオールバックに撫で付けた男の顔。その下には略歴が映し出される。
俣旅ゼルダ(またたび ぜるだ)32才、日本人男性。藤津木に入社して10年のベテランで独身。

「次にメルクリウス貿易社長のデータなのですが…防犯上の理由なのでしょうか?
神田呑任太(かみだのみ まかせた)との名前くらいしか分かっていません。
vistaの性能テストを兼ねていなければ、手っ取り早く眉毛の太いスナイパーに依頼をするのですが…。
………あ、もう隙間区内に入ったようですね。
襲撃は夜間に行いますので、偵察や逃走ルートの確保などは今のうちに済ませておきましょう。
備えあれば憂いなしと言いますし…アナスタシヤ、メルクリウス貿易はどこ?」
『メルクリウス貿易ノ・地図データ・ウェブ内ニ・登録・サレテ・イマセン』
「運転者、カーナビは?」

黙って首を振る運転手――この所作が指し示す答えは一つ。
「どうやら道に迷った様ですね。」

207:藤津木 織羽 ◆Olha/49Xgc
10/02/02 21:07:59 0
窓の外、隙間区はビジネス街として数多くのビルが所狭しと林立する。
隙間産業センター・レギオンビル・FO倉庫・隙間セントラルタワー・神藤デルタホテル………et cetera。

ベンツがグルグルと何度も同じ道を往復していると、
突然車の下からチュン…パスッ!と微かに音がして、座席に軽い衝撃。
即座にブレーキを掛けた運転手が、車を降りて車体の下を覗き込むとタイヤのパンクを告げる。

「こんな時に間が悪いったらないわね………済みません、タイヤがパンクしたようです。」
運転手は車を動かして路肩に止めると、トランクを開けて工具を取り出す。

タイヤの修理って何分くらいかかるのかしら…。
あ…そういえばお昼まだ食べてなかった…。
でも、仮にも仕事の最中にご飯食べに行きましょうか、なんて言えないし…ここは…。

「どうでしょう…今のうちに偵察を兼ねて周囲の地理を把握して置くというのは?
襲撃は夜間とはいえ、ここでただ修理を待ってるというのも時間の無駄だと思いますし。」
努めて冷静を装い、織羽は手分けしての付近の探索を提案する。
ぞろぞろ連れ立って歩くには、若干目立つメンバーであるから…との理由で。

まあ、別行動の真の目的は探索などではないのだが。

ベンツを止めた道路の近くには、ビルの間を縫うように作られた細長い公園。
公園入り口のプレートには、隙間風公園と刻まれている。
「…そうですね。一時間後にここに合流するという事で宜しいでしょうか?
もし携帯電話の持ち合わせが無いようでしたら、こちらで連絡用の物をお貸しできますが?」

【現在地・隙間風公園前】

208:名無しになりきれ
10/02/04 02:09:45 0
通りを歩いていると"ホシュ"と書かれた看板があって、店構えは何やらレストランっぽい。
ホシュとはウイグル語で乾杯の意味だからして、おそらくウイグル料理の店であろう。

209:牧街 ◆GwyfLokZWa7/
10/02/05 15:45:28 0
カフェ及びカフェの師匠は、快く牧街の協力要請に答えてくれた
しかも!あの腹黒い成瀬とは違い、その応答からは全く邪気を感じさせない
(う…な…何か……すっっっっごく罪悪感が……)
今からでも遅くないからやっぱりいいですと言おうか言うまいか
牧街がおろおろと迷おうとする前に、藤津木が出発を促してしまった

敗色濃厚な中最前線に弾除けに行かされる兵士のような表情で車に乗り込んだ牧街が、ふと顔を上げると、向かいの席にあのアナスタシヤが座っていた
今までの状況も忘れて思わずドキっとして少し赤くなる牧街
(…い…いやいや、ロボなんだって、彼女)
しかし今度は相手が機械だとわかっているので、今まで程うろたえず
冷静になった所で、全員が乗り込んだので車が走り出した

(しかし…よくできてるなぁ…………)
走る車の中で、アナスタシヤをしげしげと見つめる牧街
肌は柔らかそうで白く、髪はさらさらと流れ、牧街の好みジャストミートの顔にはどこか……
(………何か…成世っぽい雰囲気が……)
ここで牧街は、現在はタローや神藤の様に激務に追われているのだろう最近連絡の取れない同期のGSにして、生きた仮面、牧街が雄一タメ口で話す女性、成世阿弥の事を思い出す
成世は無機物であったが、あの免許更新事件のために体が大破するまで、生身の人間と変わらない、しかしどこか変わった雰囲気をしていた
彼女からは、そのどこか変わった雰囲気の部分だけがする
しかし、そのどこか変わった雰囲気と言うのは、決して助手時代に師範について除霊に行った会社の地下で見た人間そっくりのロボット、すなわち人の形をした無機物とは違う
言うならば…作られた魂の雰囲気、とでも言うのだろうか……
(………//////い、いや、まさか、ね、んなわけないって、ええ)
そんな事を考えながらアナスタシヤを見ていた牧街は、何だか照れくさくなり、視線をアナスタシヤからそらした
本人は気づいていないが、牧街は明瞭快活で面倒見の良い成世に魅かれている所がある
確かに成世は多少金に汚かったり人使いが荒かったりするが、基本的には牧街にちょくちょく世話をやいてくれる良い姉貴分であり
だからこそこの小心者でへたれの牧街がタメ口で話す事ができる数少ない人物なのだ
しかし、まだまだ若い牧街はそれが何だか照れくさかったのだろう
その辺りの感情と、アナスタシヤの美しさが相成って、牧街をアナスタシヤから視線を外させたのである

210:牧街 ◆GwyfLokZWa7/
10/02/05 16:19:24 0
そんな風に牧街はアナスタシヤに戸惑っていると、そろそろ目的地が近いのか、藤津木が仕事の話を出してきた


……素直に言おう、受けるんじゃなかった!と
(ふ…太い眉毛の方に頼まなけりゃならないんじゃ100%犯罪じゃねえか!や…ヤバイ!どうする?ここで逃げようとしてもあの美人ロボが俺を殺しにくるだろうし…。成功したとしてもその場で八つ裂きにされてしまう)
一瞬カフェの師匠なら互角に戦えるのではとも考えたが、武装した美女アンドロイドと小学生の姿した猫仙人ではどちらが強そうかは明白だ(個人差はあるかもしれないが)
ゆっくりと人生に幕が下ろされようとしていたその時、天の神が牧街に味方した

車のタイヤがパンクし、1時間の休憩と相成ったのだ!
藤津木は1時間後に近くの隙間公園で落ち合う事を告げ、携帯電話の貸し出しを呼びかける
依然牧街は携帯を持っていないのでここで名乗り出るべきなのだが、牧街はそこで首を横に振った
「あ、俺の携帯の番号は………」
要は1時間後にここに戻って来ていればよいのだから、ここで教える番号は何でもいい
そう思った牧街は、親友、阿湖野青年の携帯の番号をつげ、携帯を受け取らなかった
携帯に発信機とかついてるとまずい!
そう思ってビビッて浅はかな考えでついた嘘なのだが…
……色々まずい+阿湖野まで巻き込んでいると史上最悪の行為である
(そ…そうだ、それはそうとして、これからどうしよう……そうだ!一度道場へ戻ろう!カフェさんの師匠のあの魔法のタクシーを借りれば道場まで10分以内につくだろうから往復20分。首が飛ぶ覚悟で師匠の武器を失敬してくれば今回の戦いを行きぬく事だって…)
しかし、本人はどんどん泥沼に沈んでいっているとも知らず、更に泥沼に沈むような事を考えていく
良い子の皆はこんな時、すぐに交番に駆け込んで助けてもらおう

211:カフェ ◇YNbEhcUF/I
10/02/06 01:32:12 0
>206
>俣旅ゼルダ(またたび ぜるだ)32才、日本人男性。
誘拐された研究員のデータを見た師範の表情が変わる。
「マタタビ……もしかしていやまさか……!」
「知り合いなのか!?」
カフェが問いかけるが、師範はそれ以上は語らなった。

「眉毛の太いスナイパーはさすがにまずかろう。勢い余って殺してしまうからな」
「サックリ暗殺して終わりにゃんて許さんにゃ! 締め上げて悪事を白状させるにゃ!」
こころなしか師範のやる気度数がアップしたのは気のせいだろうか。

>209
(惚れておる……ロボ娘に惚れておる……!)
(ロボ萌え属性があるみたいにゃ……!)

>207 >210
「はっ。まさかメルクリウス貿易の工作員が道路にマキビシを巻いたのやも。
我々が動いているのがもうバレておるのかもしれぬ。ゆめゆめ侮るなかれ!」

>「あ、俺の携帯の番号は………」
「おお、ついに牧街殿も携帯を買ったか」

師範は公園に入って、ニボシをまきながら野良猫達と話している。
「にゃー、にゃにゃにゃーにゃー」
「にゃにゃにゃんにゃん」
ニボシによって偵察の任を引き受けた野良猫達は隙間区内に散って行った。

>208
偵察に出ると、変わったレストランらしきものがある。
「美味しそうじゃ! 入るか?」
「んにゃ。腹が減っては戦はできぬというからにゃ」
師弟はいそいそと入っていってしまった。侮るなかれと自分で言っておきながら警戒心皆無な人達である。




212:藤津木 織羽 ◆Olha/49Xgc
10/02/06 19:09:15 0
牧街とカフェの電話番号を控えると、偵察の名を借りたお昼時間を開始。
こういった時にバラバラになって行動するのは、通常死亡フラグであるのだが。
アナスタシヤを連れて歩道を進むと、目の前にエキゾチックな感じの店構え。
店内から仄かに漏れてくるスパイシーな香りが、織羽の足を半強制的に止めさせた。
「ここで良いわね…ウイグル料理って聞いた事も無いけど、今から他の店を探す時間も無いし…。」

看板からすると、ここはウイグル料理のレストランのようである。
ウイグルとは現在のトルキスタン地域東部。
シルクロード交易の中心地として栄えた土地で、料理にも東西の味が入り混じる。
店内を覗くと写実的なタペストリの数々が壁を飾っていた。
偶像崇拝を禁じるイスラム圏の客層が多いのかもしれない。
『ホシュ!! イラッシャイマーセー!』
フレンドリーな店員に案内されて席に着くと、メニューを見ながら注文を出す。
「えーと、このスープにミートパイとサラダを。」
『そちらのお客様は?』
『充電器・オ願イ・シマス』
程なく店員が料理を乗せた器と律義に充電器を手に持ってくる。

「まずはミートパイから…あひゅい!」
サクサクしたパイ生地を噛み砕くごとに鼻孔をくすぐる芳香が、肉体の奥底からさらなる食欲を喚起する。
そしてパイ生地に閉じ込められていた熱くスパイシーなラム肉は、一噛みごとに口の中に浸み渡ってゆく。
「あふっあふっ…。」

「何かスープが赤いんだけど…これ、辛いのかしら?」
赤いスープはトマトベース。
鮮やかな赤色から、辛みを思わせるものの意外にサッパリとした味。
深紅の海を泳ぐ白鯨にも見えるのは羊肉をくるんだ小さいワンタンたち。
スパイスを効かせて絶妙な味付けをされたワンタンはスープと共に口中に入る事により、
薄味のスープの刺激的なアクセントとなって舌の充足を満たす。
「ふーん、これもなかなか良い感じゃない。」

「サラダはイタリアンっぽいわね…。」
レタスと胡瓜、トマトで構成されたサラダの森に粉チーズの雪が降り積もる。
日本人好みに味付けされたドレッシングは、サラダに美しい味の調和を齎していた。
「うん…悪くない…やっぱり野菜もとらないと。」

――どうやら、一話につき一回は食事シーンを入れないと気が済まない様である。

そこでドアの鈴がカランと鳴ると店内に入って来る猫耳ショタとゴスロリ。
「こほっ…けほっ…うっがっぐっむっ!」
偵察に行ったはずのGSの姿を確認して、驚嘆のあまり飲んでいたスープが気管へと進路変更。
「カ、カフェさんに秋葉原師範…こんな所へ何をしに!?」
ハンカチで口元を拭いながら二人に問いかける。

213:牧街 ◆GwyfLokZWa7/
10/02/07 15:52:02 0
(そうだ!小笠原だ、小笠原諸島まで漁船を借りて逃げていこう!そしてどこかの島で島雄一のゴーストスイーパーであり、若い力として第二の人生を送ろう
そこで平凡に暮していれば追っ手も手を引くかも出し…
いや、駄目だ、師匠なら追いかけてきかねない
それならどっかの田舎の山中に逃げ込んで……駄目だ、山で生活するなんて流石に…
いや、死ぬよりましだ!15年間逃げれば時効が成立して助かるはずだ…)
公園のブランコで、これからの事をぶつぶつ言いながら考える牧街
何だか犯罪を犯して自責の念に駆られているように見えなくない
(………何にしても、まず一度帰って準備を整えよう、そのためにカフェさんの師匠にタクシーを…)
色々考えていた牧街だったが、とりあえず行動しない事には始まらないと立ち上がり、カフェの師匠を呼ぼうとした



「アレ?カフェさん達は?」
ぐだぐだと泥沼思考を働かせてる間に、皆どこかへ行ってしまった
(ゲゲ!み…皆どこへ行ったんだ!?さ…探さなければ、探さなければ死……まてよ…)

************

藤津木「1時間たっても戻ってこない所を見ると、牧街さんは逃げたようですね」
カフェ師匠「僕等を裏切ったにゃ!ゆるさんにゃ!」
カフェ「牧街殿…性根までヘタレておったか…」
藤津木「アナスタシヤ、テスト内容を変更、1時間以内に機密保持のために牧街を抹殺しなさい」
アナスタシヤ「了解」

必死に逃げる牧街の後ろから飛んできて、目の前に着陸するアナスタシヤ
牧街「ひっ……助けてくれえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
アナスタシヤ「対象補足、証拠を残さないために完全に消滅させます。人体溶解ガス噴射」
牧街「ギャアアアアアアアアアアアアアア」
アナスタシヤの口から放たれた緑色のガスがかかり、苦しみ悶えて倒れ付し、どろどろに溶けていく牧街……

************

「ぁ…ぁ…ぁ……」
いろいろな意味で恐ろしい想像にガタガタ足を震わせ、硬直する牧街
(だ…駄目だ、制限時間内にここに戻って来れない可能性のある「探しに行く」は駄目だ…)
最早絶望、牧街の瞳から一筋の涙が零れ落ちようとした、その時

(!!)

ある事を感じた牧街は、電気が走ったようにその場でブルりとと一つ震え、そして、ぼそりと呟いた
「……トイレ行こう」
風のふく中でぼーっとしていたために体が冷え、尿意を感じた牧街は、そそくさとトイレへと向かう
何と言うか……とことん運命とかそういうものに対して無力な男である

214:牧街 ◆GwyfLokZWa7/
10/02/07 16:44:05 0
「ふぃ~~」
男子用トイレで立小便をしながら、幸せそうな表情をする牧街
「寒いところでたまった小便を排出するのは何ともいえないなぁ~」
よっぽど気持ちが良かったのか、先程までの絶望はどこへやら幸せそうな表情を浮かべた牧街は、溜まった尿を出し終え、洗面所へと向かう
「ふぅー……」
鏡で身だしなみを一度確認し、水を出して手をぬらし、石鹸をつけて泡立て、水で石鹸を落す
簡単に言うと手を洗い、水を手を軽く振って飛ばし、「洗面所が濡れ無いように、水を飛ばすのは排水溝にもっと手を近づけてしろ」おっと失礼最もだ、水が周りに飛ばないように気をつけて水を飛ばし、ハンカチで手を拭く
さて、これからどうしよう
と顔を上げ

牧街は恐怖に固まった

鏡の中、牧街の後ろに、真っ黒いフードを目深に被った髪の長い女性が立っていたのだ
その存在を知った瞬間、牧街の足ががくがくがくがくと振るえ、汗がだらだらとながれ、喉が痙攣して動かなくなる
「……やっぱり事前に報告なんかすべきでは無い、不必要に怖がらせるだけだ…」
恐れおののき今にも泣きそうな牧街を見据え、フードの女はぼそりと呟いた
「ぁ…ぁ……ぁわわ…わ…」
わけのわからない女の台詞に、しかし、牧街は恐怖のあまり気にしている余裕が無い
「…私が怖いか?」
女の問いかけに、牧街は震えながらとりあえず素直に頷く
「そうか……、だが」
そう言って、フードの中に手を入れた女は、中から掌程の大きさで、うごめいている蜘蛛に似た蟲を取り出した
「これから君が体験するのはもっと恐ろしい恐怖だ。これから君にこの蟲を寄生させる。
コレに寄生されれば寄生される直前の記憶を失い、外部からでは神族でもこの蟲を発見する事はできない」
そう言って、蟲を近づけてくる女、尻餅をついて後ずさる牧街
「そ…そそそそそそそそん………そんんんんーーーんーーーん」
「そんな蟲を俺に取り付かせてどうすると言いたいのか?我々の役に立ってもらうに決まっているだろう。周囲に悟られる事無く寄生させるには今しかチャンスが無い。速く終わらせる。激痛が走るから歯を覚悟を決めろ」
女が一気に距離を詰め、素早く牧街の上着の首筋を引っ張って、中に蟲を入れた
「ひぎ…」

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」
すさまじい絶叫がトイレから響き渡るが近くを通る散歩中の男性も、車を治しているのだろう運転手も、その叫びに反応しない
恐らく、あのフードの女が何か特殊な音響壁を張ったのだろう

やがて、トイレの中から再びこれからどのように逃げるかを必死に考える先程と何ら変わらない牧街が出てきた

215:カフェ ◇YNbEhcUF/I
10/02/09 20:30:15 0
>212
「んにゃ。変わった店だから偵察に入ってみたにゃ」
偵察といいながらいそいそと織羽&アナスタシヤの隣に座る師弟。
「なんといっても悪の巨大企業。
出来たばかりの区を丸ごと支配しておらんとも限らぬ。念のために毒見をせねば」
とかなんとか言いながら“今日のお勧め”を注文。

すぐに料理が運ばれてきて、お食事タイムが始まるが、唐突に事件は起こった!
「美味しいにゃー」
「うむ。美味しいのう……なぬう!?」
師範が猫化しつつあった。
「師匠、あまりの美味しさに正体が現れ始めておるぞ!」
「きゃふーっ!」
師範は興奮状態に陥っている。不審に思ったカフェは、師範の料理をのぞきこんだ。
「いかん、マタタビじゃ! 落ち着け!」
ただのマタタビではなく化け猫の正体を現す霊力付きのマタタビなのかもしれない。
騒いでいると、辺りがもくもくと煙幕に包まれる。
「なんじゃこりゃー!?」
煙の中でパニックになっている間にドタバタと慌ただしい音が聞こえたが何が起こったのかは分からない。

思ったより早く煙幕は晴れた。
「げほっ、げほっ。一体なんだというんじゃ……!」
なぜか周囲の客は平然と食事を続けている。
「何かありましたか?」
「どうもこうもないわ。のう、師匠……師匠がいない!」
なんと、師範が忽然と姿を消していた。慌てて店員につめよる。
「妾と一緒に入った猫耳美少年を知らんか!?」
「ナニモヘンナコトオコッテマセンヨー。ワタシナニモシリマセンヨー!」
フレンドリーな店員の答えは非情だった!


216:藤津木 織羽 ◆Olha/49Xgc
10/02/10 20:13:46 0
>215
>師範「んにゃ。変わった店だから偵察に入ってみたにゃ」
「そ、そうですか…確かにウイグル料理店は珍しいかもしれないですけど…。」
彼らも普通に食事を始める。
「ところでメルクリウス貿易本社への侵入ルートですが、か――ッ!」
隣席の秋葉原師範に、今後の作戦について話しかけようとして絶句。
師範の顔は白毛に覆われた異貌。目は大きく見開かれている。
織羽は動転しながらも、咄嗟にテーブルから飛び退って距離を取った。

織羽は師範が化け猫である事は聞いておらず、今まで妖怪や変化の類に遭遇した事も無い。
また、ゴーストスイーパーにダンピールやら化け猫やら人外の者たちが居る事などは夢想だにしていない。
従って、変化しかけている秋葉原師範に対する織羽の認識は――魔物。

>師範「師匠、あまりの美味しさに正体が現れ始めておるぞ!」
>カフェ「きゃふーっ!」

「アニャ…!」
即座にアナスタシヤに化け猫への攻撃命令を下そうとする………のだが不意の目眩で気が遠くなった。
一瞬の朦朧から晴れると、目の前にいたはずの化け猫の姿が忽然と消えている。
店内を見回しても平然と食事を続ける来客の姿が有るだけで、師範の姿も化け猫の姿も無い。
「ええと…い、今のは………師範様はいったいどちらに!? それに猫の魔物が!」
どうやら織羽は、他の来客同様に謎の煙を認識しなかったようである。

>カフェ「妾と一緒に入った猫耳美少年を知らんか!?」
何が起こったのか訳が分からず問いかけるも、逆にカフェは店員に師範の行方を問いかけている始末。

「もうどうなってるの! アナスタシヤ…霊圧センサーを起動してっ!」
『特殊霊圧感知・周囲5km・255箇所デ・同時発生・個々ノ・特定ハ・不可能・デス』
「255って…何がそんなにいるっていうの!?」
『回答不可・データ・ガ・足リマセン』
「あ…そう…分析とかはしてくれないのね…。」

仕方ないので、自分で推理。

まずは…ええと何でいきなり師範が猫に?
訳分からない……いや待って、もしかしたら別行動をしている間に秋葉原師範がさっきの猫魔物にすり替わった…?
そういえば、さっきカフェさんが正体が現れ始めるてるとか言ったような…。
と言う事は……あの師範は猫の魔物が化けていた偽物だったっていう事なの?
なら――それを知っていたカフェさんも本物じゃない…。

「なるほど、そういう事ね……フリーズ! アナスタシヤ、こっちへ。」
織羽は冷静かつ透徹した状況判断で正確な分析結果を出すと、強い語調でカフェに制止の警告を出す。

217:アナスタシヤ ◆1D.Vistars
10/02/10 20:17:07 0
『アナスタシヤ、極力周囲に被害の出ないように制圧を。目標カフェ。』
「了解・マスター」

織羽はカフェを警戒しつつも、登録した牧街の電話番号に電話を掛けていた。
『牧街さんですか…こちら藤津木です。すぐにこちら…ええと、正確な住所は…。』
『ジュウショ? カクカクシカジカネー!』
フレンドリーな店員がフレンドリーに、しかも簡潔に店の住所を答える。
『可及的速やかに隙間区42丁目、隙間風通りのレストラン“ホシュ”まで来て下さい!』
『あ~、それは良いけど僕は牧』
織羽は了解の確認が取れた瞬間に電話を切って、警戒態勢に入った。

「ターゲット・捕捉」
アナスタシヤは、コートの内側に収納されていた制圧用ネットガンを0.5秒で取り出してカフェに向ける。
次の瞬間、カフェの視界いっぱいに、迫り来る網目模様が広がった。

この捕縛用の兵器は空気圧で射出され、強化金属糸の網が五メートル四方に一気に広がり、
約五メートル先までの相手を捕捉するのだ。
金属製の網は重く、捕縛した対象の動きを容易に封じる。
一旦、囚われれば自力で抜け出すのは困難であろう。

【戦闘ターンは、アナスタシヤ◆1D.Vistarsが担当】

アナスタシヤの後ろから織羽が声を掛ける。
『貴方は本物のカフェさんじゃないわね。 秋葉原師範に化けていた猫型の魔物の仲間…そうでしょ?
違うって言うなら、そうね…ここに来る前にわけあ―シスターマックスの駐車場で起こった事を言えますか?』

218:カフェ ◇YNbEhcUF/I
10/02/12 00:45:06 0
「知らないはずはないぞ。料理に特殊なマタタビを入れたであろう!」
「ワタシナニモシラナイネー」
フレンドリーな店員と押し問答していても埒があかない。
それに師範の追跡が先だ。今すぐ追いかければ追いつけるはず。
「師範は誘拐されたようじゃ! 今すぐ追わ……」

>217
>『アナスタシヤ、極力周囲に被害の出ないように制圧を。目標カフェ。』
「ほげえええええええ!?」
アナスタシヤが制圧にかかってきた。
フレンドリーな店員は相変わらずフレンドリーな笑みを浮かべながら見ている。
「待て、いくらなんでもおかしいとは思わんか! ほら、この店員とか!」
>「ターゲット・捕捉」
ぽすっ。カフェは捕らわれた!

>『貴方は本物のカフェさんじゃないわね。 秋葉原師範に化けていた猫型の魔物の仲間…そうでしょ? 』
「逆逆! 化け猫が秋葉原師範をやっておるのじゃ!」
といっても、にわかには信じられまい。
『違うって言うなら、そうね…ここに来る前にわけあ―シスターマックスの駐車場で起こった事を言えますか?』
「あばばばば。怪人の気ぐるみが悪霊化して暴れておったので牧街殿が羽をもぎ取った所を
妾が説得して除霊を……そうだ、牧街殿が来れば師匠が化け猫だと証言してくれるはずじゃ!」
そんな中。入口のドアに野良猫が張り付いてだんだんだん!と叩く。
師範によって偵察を依頼された猫の中の一匹だ。
「ウルサイネー、アッチイクネー」
フレンドリーな店員がドアを開けて追い払おうとした瞬間。
猫が店内に滑り込み、素晴らしい瞬発力で店員の頭部に猫パンチを放った。
すると店員の髪の毛……というかカツラが宙を舞う。
「コラー」
カツラを飛ばされた店員は怒っているようだがいまいち棒読みである。
そして、頭は禿げ頭ではなく、金属的なトサカのようなものがある!
カフェはそれを見逃さなかった。
「あれを見い、機械人形じゃッ!」
「タダノ猫ダト思ッテ油断シテイタネ。バレテシマッテハ仕方ガナイネ。ジュワッ!」
元フレンドリーな店員は怪しげな掛け声と共に、片腕を直角に立て、もう片手を肘のあたりにあてる独特なポーズをとる。
某特撮系ヒーローに似ているぞ!
「セブンよ、カルシウム光線はいかああんん!!」

――――――――――
>214
逃げる方法を必死に算段している牧街に野良猫がまとわりつく。
ただの猫にしては妙に勘が良くて気が効いているが
師範にやとわれた複数の野良猫の中には将来化け猫になる素質のある者もいたのだろう。
「にゃにゃにゃんにゃん!」
猫は猫語で必死で訴えながら、牧街を料理店の方に連れて行こうとする。


219:牧街 ◆GwyfLokZWa7/
10/02/12 06:01:41 0
>>217
藤津木からの連絡を受けた阿湖野青年だったは、ため息一つつくと、リダイアルのボタンを押した
(ま~~た牧街か……)
と内心呆れ果てながら……

しかし、電話は藤津木の携帯に繋がる事無く、呼び出し中にもならずに切れてしまった
(……何かあったな…)
そう思った阿湖野青年は、今度は恐山流除霊道場へとかけてみる
「はい、こちら恐山流除霊道場アジア本部でございます」
「阿湖野です、そちらに牧街は?」
恐山流除霊道場の面々とは今に始まった中ではない阿湖野青年がいつもの事と言った調子で訪ねると、電話の向こうの白川訓練生はあ、電話の事ですねと即座に応対する
「牧街あてにかかってきた電話の件でしたら、こちらで把握してありますので、ほっといて構いませんよ」
その言葉に、あー大丈夫なんだなと思った阿湖野青年は、お礼を言うと、電話を切った
幾度と無くためらい無く自分を巻き込んでくる親友に、深い深いため息をつきながら
>>218
(俺はパスポートは持っていない…だから国外逃亡は難しいな…ならやっぱ山の中を…)
「にゃにゃにゃんにゃん!」
(やっぱレンタカーをぱくって……いや、警察にまで追われるのは…)
「にゃーにゃーにゃんにゃんにゃん!」
(…そういえば藤津木財閥が俺の実家に手を伸ばさないとは限らないよな…。じゃまず実家に戻ってチハル達を連れて…)
「にゃー!にゃー!」
(…何か猫が集まってきて五月蝿いな……ここで集会か何かやるのか?)
自分の近くに集まってくる猫達に、何か邪魔になってるのかなぁ?と思った牧街は
座っていたブランコから立って、公園の敷地の外まで歩み出た
が、猫はついてくる
(何だ?餌が欲しいのか?………いや、体から妖気を感じる…カフェさんの師匠の使い魔か何かか?じゃあ、あの人達に何かが!!)
猫の必死な姿から、カフェの師匠達のピンチを察した牧街は、公園を離れようとする、が
(あ…そうだ、けど公園から離れると藤津木さん等来るかもだし……)
待ち合わせの件を心配した牧街の肩を、誰かが叩く
「何やってんだ?お前?」
「……やぁ…阿湖野、何故ここに?」
振り向くと、そこには例の大きなマスクをした阿湖野青年が、完全に呆れきった表情で立っている
「何か携帯にお前を呼ぶ電話があったんだけど、アレ、何?」
ジト目で尋ねてくる阿湖野青年に、うっと声を漏らして後づさる牧街
「えーと…その……あの…」
「……とりあえずこの先にあるレストラン「ホシュ」へ行けとさ。ここに何か用があるなら俺がここにいてやるよ」
素晴らしく物分りがいい阿湖野青年に、牧街の顔がぱっと明るくなる
「阿湖野~~~~心の友よ~~~~~~~」
「あ~~~うっとおしい」
言って、阿湖野に抱きつこうとして、片手で止められ…牧街の顔が一瞬きょとんとした
(…阿湖野の奴、石鹸でも変えたのか?妙に肌がすべすべだな……)
「…どうした?」
「いや、別に、んじゃちょっくら行って…何これ」
我に返り、ホシュへと走っていこうとした牧街に、阿湖野青年が収納された状態の特殊警棒の様な物を差し出している
「お前、見たとこ丸腰だから、よ。来る時お前の師匠のとこでレンタルしてきたんだ、責任はお前が取れよ」
思わず目元が潤む牧街
「阿湖野!!結婚してくれえええええ」
「…ヴァカ!さっさと行け!!木っ恥ずかしい!!」
何故か多少顔が赤くなった阿湖野青年から神通棍を受け取った牧街は、猫達に先導され一路ホシュへと走っていく

220:牧街 ◆GwyfLokZWa7/
10/02/12 06:17:42 0
走り去る牧街を見送った阿湖野青年は、そのまま男子便所へと入って行き
懐から無線機を取り出した
「こちらスパイダー、牧街は何とかホシュへ向かいました」
そう、あのフードの女の声で告げる阿湖野青年、いや謎の女、スパイダー
「了解した、引き続き監視しろ、我々も用件が住み次第急行する」
「了解」
何者かとの通信を終えたスパイダーは、無線をしまうと、ふぅーとため息をついた
「……結婚してくれ、か……」
先程の牧街の叫びを小声で呟いたスパイダーは、自重するように微笑んだ

「ホシュ」へと到着した牧街は、中の様子をそーっと確認し
一目散に逃げ出した
後ろで猫達がにゃーにゃー非難の声を浴びせているが、相手にしている余裕は無い!
(ワ…ワ●ドショット!●イドショットぶっぱなそうとしてる●ブンがおった!セブ●が!あんなもん市街地でぶっ放したらこの辺焼け野原じゃあああああああ)
本編のセ●ンの戦闘能力を知っている牧街は、そのロボが放とうとしている技が艦も戦車も一ひねりな威力があるんじゃないかと思い、慌てふためいて全力疾走でその場から逃げようとする
中に、藤津木やカフェもいたようだが、命の危機の前に完全に霞んで消えていた

221:藤津木 織羽 ◆Olha/49Xgc
10/02/12 21:32:15 0
>218
>カフェ「あばばばば。怪人の気ぐるみが悪霊化して暴れておったので―」

カフェの言っている事は合っている…のだが、店の名前については動転しているのかスルー。
小賢しくもブラフとしてわけありマートではなく、
別のディスカウントストアの名前を出してしまったのが裏目に出て、余計に正確な判断がつかない。

ええと、もしかしたら本物のカフェさん………だった?
或いは本物かもしれない…ような。
その可能性は低くない…ような。
むしろ本物っぽい…ような。
「えっと…アナスタシヤ、とりあえずカフェさんの網を外した方が良い…ような?」
『命令・明確ニ・オ願イ・シマス』

不毛な問答の最中、店に入りこんだ猫。
飛び跳ねた猫は店員の頭を勢い良く剥いで、その正体を暴く。
「こ、今度は何? えっ、機械人形って?」
カフェの声に店員を見ると、立っていたのは奇怪な銀色鶏冠男。
謎の鶏冠男は腕をL字の構えに組むと、奇怪な光線を放った!

>220
目も眩む閃光。
ウイグル料理店内から放たれた一筋の熱線が、歩道に立つコンクリート製の電柱に浴びせられる。
高熱に溶かされて炎熱する石柱は、道路を横断して倒壊。
店外から響く轟音を聞きながら、織羽は指示を出す。
「何なの!この非常識な化け物は!これが魔族なの!?
このままじゃ民間人に被害が出るわ。アナスタシヤ、とりあえず銀色鶏冠男を店外に追い出して!」
『イエス・マスター』
アナスタシヤがコートの下から取り出した棒は、組み立て式の対魔用近接武器“辰砂槍”。
日本には武器の所持を禁じる法律があるために、こういった物はおおっぴらには持ち歩けないのだ。
穂先は古来より魔除けに使われている辰砂を塗り込めた金属の刃のため、魔族へのダメージも期待が出来る。

『標的ヲ・対象空間・カラ・排除・シマス』
アナスタシヤは、即座に鶏冠男の胸をズンと槍で突き刺す。
そのまま鶏冠男をぶら下げたまま、辰砂槍を投げ槍のように店のガラス窓に投擲。

砕け散った硝子の窓が乾いた悲鳴を上げた。
鶏冠男を貫いたまま、辰砂槍はオリンピックの槍投げなら銅メダルは堅いであろう距離を飛び、
牧街の行く手を塞ぐかのように地面へと突き刺さる。
モズの早贄の如く、串刺しになった鶏冠男がジタバタ暴れると、周囲にピコンピコンと不吉な音が鳴り始める。
鶏冠男の額に付けられていた謎のランプが、いつの間にか謎の明滅を始めていた。
そして音は何かを告げるように次第に間隔を狭めてゆく。

222:カフェ ◆YNbEhcUF/I
10/02/13 00:23:52 0
>221
>『命令・明確ニ・オ願イ・シマス』
「悩まずに外すと良かろう」
が、アタスタシヤは明確な命令を受ける前にトサカ男との戦闘に突入。

「おーい、出してくれ~」
網の中でもがいていたところを、猫軍団が店に突入して協力して網を外す。
一般客達は相変わらず平然としている。
「平然としすぎであろう。全員サクラであるな!」
「サ、サササクラだなんて滅相もありませんよ!」
一般客たちはそそくさと店を出ていこうとする!

223:牧街 ◆GwyfLokZWa7/
10/02/14 08:40:18 0
後ろで起こった熱線の熱に、その場にがばりと伏せる牧街
光線は周囲のコンクリートを融解させ、電信柱を簡単に圧し折ってしまった
「こ…これ、GSの仕事じゃねえ!明らかに間違いなくGSの仕事じゃねえ!こんなのウルトラ特捜隊とかそういうのが…」
冷や汗流し伏せたままその光景を見つめる牧街の前で、ホシュの窓ガラスが叩き割れ、中から先程のメカ●ブンが串刺しにされた状態で飛んでくる
「ぁ……あわわわわわわわ……」
口元を引きつらせてビビル牧街の上空を通過し、槍は牧街の後ろに着弾
串刺しになったニセセ●ンがそのままばたばたともがき苦しむ
「何!?何!?何が起こったの?何が…」
腰を抜かしたような姿勢でかさかさと地面を後ずさり、距離をとる牧街
完全に成すすべがない
(……よし、逃げよう!!)
余りの事態に完全に自分の出る幕ではない事を悟った牧街は、素早くニセ●ブンの横をすり抜け、ぴゅーんとか言う音をさせて車も追い越すようなすさまじい速度で公園へと逃亡するのだった

224:藤津木 織羽 ◆Olha/49Xgc
10/02/14 14:29:20 0
まずは状況の確認と整理ね。
ウイグル料理店で食事をしていたら、秋葉原師範とカフェさんが入店。
師範は、化け猫に変身して失踪?
レストランの店員は、謎の光線を発する銀色鶏冠男になる…と。

………何これ、全然整理できないんだけど。

>カフェ「平然としすぎであろう。全員サクラであるな!」
カフェの声に無益な沈思黙考から引き戻された。
はっと気付くと、目の前を慌てて横切るバーコード頭をした中年男。
思わず彼の背広の首根っこを掴む。
「ちょっと聞きたい事があるんだけど………良いかしら?
貴方はこの近くの会社員に見えるけど、この店にはよく来るの? あの店員は以前から居た?」
『私は只のサラリーマンです。はい。何も知りません。はい。』
バーコードの中年男は織羽の詰問にも、あっしは何の関わりもござんせんとばかりに素知らぬ顔で嘯く。

直感が告げる――この男は何か隠してる。

「仕方ないわね…この手はあんまり使いたくないんだけど…。」
ペシンという音。
織羽は懐から札束を取り出して、疲れ切った会社員を思わせる中年サラリーマンの頬を叩く。
「これでどう?」
『どうと申されましても。はい。』
「これで落ちないなんて、なかなかしぶといわね…。」

織羽が札束を二つに増やして攻撃力を増加しようと画策した時、
鶏冠男が串刺しにされて暴れている店外では、
体長1mにも達そうという大蟻がマンホールの蓋を跳ね上げて飛び出す。
大蟻は銀色の鶏冠男の額のランプをガリガリ噛み砕き始めると、そこに蟻酸らしき謎の液体を吹きつけた!

「え…へぷぅぁっ………たふっ!」
突然の閃光と衝撃にたたらを踏む。
轟音と共に噴き上がったオレンジ色の炎が弾けて消える。
鶏冠男が爆発して四散。
たちまち辺りを覆う灰色の煙と粉塵。
塞がれてゆく視界の中で、影が地べたを這うように慌てて離れてゆく。
すでに掴んでいた男は離してしまっていた。

『なになに撮影?』
『警察に通報しますた。』
『こちらアント…証拠の抹消を完了。』
逃げる者、近づく者、取り巻く者、騒ぐ者。遠くから聞こえるサイレン。
魔物を繋ぎとめていた槍は爆発の衝撃で半ばからへし折られ、熱で変色した道路を転がっていた。

225:カフェ ◆YNbEhcUF/I
10/02/15 23:04:09 0
>224
ちゅどーん!!
どうやら外でトサカ男が大爆発を起こしたようだ。

爆煙がおさまったころ。
今まで平然としてどことなく怪しい素振りだった一般客達がにわかに騒ぎ始めた。
「うをおおお!? あれはなんだ!?」
「私は誰!? ここはどこ!?」
「ぎゃああああ! ガラスが割れとる!」
そしてバーコードの男が今までとは違う様子でうろたえだす。
「……はっ! 一体何が起こったんだ!? 私の店があああああああ!!
やっと開店した念願のウイグル料理店があああああああああ!!」
バーコードの男はこの店の店長だったようだ。
「気持ちを察して余りあるぞ……。少し前の妾の父上を見ているようじゃ」
この人達はトサカ男が爆発すると同時に記憶が抹消されるようにされていたのだろう。
これ以上聞いても情報を聞き出せそうにない。
そこで現場検証をすることにした。
「少し厨房を見せてもらうぞ」

厨房には、変わった食材に混じって、霊力をまとったマタタビが残されていた。

「証拠品発見! おそらく化け猫の正常な判断能力を無くするためのアイテムじゃ!
そういえば誘拐された人の苗字もマタタビ! もしや……!?
そろそろ車の修理も終わっておるはずじゃ。急ごうぞ!」
が、重大な問題が一つある。メルクリウス貿易の場所が分からない!
そこに、微妙に妖気をまとった猫が何かを言いたそうにまとわりついてきた。
「にゃーにゃにゃー!」
「……。動物的本能で役に立つかもしれぬ。連れていこう」

226:牧街 ◆GwyfLokZWa7/
10/02/16 00:11:13 0
必死になって公園まで逃亡してきた牧街を、どこか呆れた表情の阿湖野青年が出迎える
「…早かったな」
全てを見通したような阿湖野の目に一瞬怯む牧街
「あー…えーその…大した用事じゃ無くて…あー…」
「さっき向こうから爆音が轟いたようだったが?」
「それは…あー…店の人が…ボヤを起こして…」
「………」
咎めるような視線で自分をじーーっと見つめる阿湖野の視線に耐え切れず、視線をそらし、牧街は数歩後ずさる
そんな牧街を阿湖野…スパイダーはしばらくじーーーっと見つめていたが、やがてため息を一つすると、用が済んだなら、俺行くからとさっさとその場を後にするのだった
「あー…ほ…本当に助かったわ、ありがとな…」
苦し紛れに言った牧街のお礼の言葉に答えず、阿湖野の姿は路地の向こうへ消えていく

「…こちらスパイダー、牧街とのコンタクトを終えました…予想通り、逃げてきましたよ…あの馬鹿者は…」
人気の無い路地裏に入った阿湖野の姿のスパイダーは、再び無線機を取り出し、どこかへ報告を始める
『……了解…まぁ、奴の言う通り、いた所で何ができるわけでもないしな』
無線の向こうからの言葉に、反応するスパイダー
「体を探ってわかりましたが並の事件なら解決能力を持っている男です、彼が歯が立たないと?」
『全く戦力にならなかっただろう。ホッパーからの連絡では謎の魔物も出現したらしい』
「……魔物?ロボットの他に、ですか?」
『そこからは俺が話す』
無線機からの声が、低い中年の声から、若々しい男の声に変わった

ホシュの騒ぎが下に見える5階建てのビルの屋上に、マフラーをなびかせたサングラスの男が格子に手をかけて下の光景を眺めている
「例の女のロボットが敵ロボットを粉砕、その後その敵ロボットを出現した謎の魔物が破壊した。恐らく証拠隠滅だろう。見た感じ天然の妖怪ではないから…」
『…何者かが送り込んだ…』
「…相手はメリクリウスか…はたまたその後ろか……だが恐らくそう簡単にテロ魔族は尻尾を見せないだろう。そう考えれば相手は特定できる」
『流石は、魔族が隠れ蓑にするだけある…と言うわけか…』
妙に感心した様なスパイダーの声に、ホッパーが苦笑する
「おいおい、現場で戦う牧街ちゃんの身にもなってみろよ。恐ろしくて恐ろしくて、逃げる算段の一つもしたくなるだろうぜ」
『………もうしていた、一つ所か五つ以上…な……』
その言葉に、ホッパーが噴出し、中年が深いため息をつく
「あひゃひゃひゃひゃひゃ…あ…もう…逃げる準備、万端と来たもんだ…」
『……あい…変わらず……全く…………』
『…藤津木等が牧街と合流しようとしている』
愉快なムードになろうとした一同を、スパイダーの鋭い一言が制し、二人は再び心を引き締める
「……師範よぉ、やっぱり今から俺達が出てった方がいいんじゃねえの?」
今までのチャラけた態度と違い、真剣なホッパーの言葉に、しかし、無線の向こうの中年、恐山断弦師範は反対した
『何度も言うように、相手が強力なGSではテロ魔族も迂闊に尻尾を出したりはしないだろう。悪魔で恐山特殊部隊三人衆は牧街を介して影から見守れ。
この程度で死ぬようならば、牧街には未来は無い』
『ホッパー…任務に従え』
師範の声の後に、スパイダーとは別の、かなり低く、ぼそぼそとした男の声が続いた
二人の言葉に、ホッパーは不承不承了解の声を出し、無線機を切る
「……死ぬなよ」
懐からタバコを取り出し、火をつけ、遠くに見える隙間公園を眺めながら、ホッパーはボソリと呟いた

227:牧街 ◆GwyfLokZWa7/
10/02/16 00:47:33 0
路地裏の暗がりの中、本来の長い髪の女性の姿のスパイダーが、再びどこかへコールを送る
彼女は牧街の中の式神を介して周囲の状況を把握しているため、直接牧街等を監視する必要が無いのだ
やがてコールに答えた誰かが、通信を返してくる
『こちらコブラ…』
「スパイダーだ、念のために確認したい。現時点で注意すべき人物はわかっているな?」
あの低くぼそぼそとした声の男、コブラに、きびきびとした声で尋ねるスパイダー
ソレに対し、コブラは変わらぬ調子で応答する
『あの車の運転手だ』
「理由を」
『トラップである「ホシュ」に近いあの場所で都合よくパンクしている。調べたが道に車をパンクさせるような物は存在しなかった。恐らく運転手が念力の類でタイヤをパンクさせたのだろう』
「店主がトラップを仕掛けていた可能性がある」
『GS達にメリクリウス貿易の位置を知っている人間がいた可能性を考慮すると、その可能性は低い。もしGSの中にメリクリウス貿易の場所を知っている者がいても、彼ならばあそこへいざなえる』
「……間違い無さそうだな」
『警戒を続ける…以上だ』
牧街等をいつでも助けに入れる位置から監視しているコブラが、しっかりと危険人物を把握している事に安心したスパイダーは、わずかに唇とほころばせる
少なくとも、メリクリウス貿易に侵入するまで、どうやら牧街等の身の安全は保障されているようであるな、と思ったからだ
コブラやホッパーの実力ならば、並の魔物ならば対応できるので相手が暴走しても戦う事ができるだろうし、援軍も手配済みである
たとえ相手が自暴自棄になって暴れても、魔族を逃す事になるが、全員の命を守る事はできる

問題は貿易の建物内、すなわち魔族の監視下に入った後だ
こうなると幾ら隠密能力に優れたコブラやホッパーでも見つかるリスクは格段に高くなるので直接牧街達を守る事ができない
無理に守ったとしても、魔族に気づかれて逃げられるばかりか、コブラやホッパーが孤立させられ、各個撃破される可能性も高いからだ
そこで、牧街にあらかじめスパイダーが自分の下僕を侵入させ、彼を介して中の状況を探り、危機に陥ったり、魔族の決定的な何かを抑えられるような状況になった所で全員で突入しよう
と言う作戦をとっているのである
これならば見つかる可能性はかなり低いだろうが、いざと言う時牧街等をすぐに助ける事ができない
ホッパーやスパイダーは人命を尊重し、上記の直接護衛を申し出たのだが、師範が頑として首を縦に振らなかった
ゴーストスイーパーはそう簡単にやられはしない
そう言って

228:藤津木 織羽 ◆Olha/49Xgc
10/02/16 21:18:10 0
「どういう事…あの爆発は何!?」
ウイグル料理店店長に詰問するも、錯乱した店長は頭を柱に打ち付ける作業で忙しいようだ。
ゴンゴンという鈍い音に混じってローンがまだ!とか、保険に入っておけば!とか血を吐くような呻きが聞こえてくる。

「ええと…あんまり頭を柱にぶつけると頭を痛めます………よ?」
鬼気迫る店長の様子に思わず後ずさり。
掛ける声も遠慮がちになろうというもの。

でも、何でみんないきなり別人みたいに………来客全員で今まで演技してたって感じもしないし。
これはもしかして何かに操られていたって奴…なの?
薬か催眠術で洗脳されてた…?って誰に?何のために?
じゃなければ悪霊が取り付いてた…ならGSのカフェさんが気づくでしょうし…。

>カフェ「証拠品発見!――そういえば誘拐された人の苗字もマタタビ! もしや……!?」
すでに厨房で現場検証をしていたカフェの声が聞こえてくる。
「失踪したうちの社員が師範の料理に細工を? それは………どうかしら?
それはカフェさんの師匠が化け猫である事を知っていて、さらにここに来る事までを想定していないと難しいんじゃない?
私たちがここに来たのは偶然だし、秋葉原師範と会ったのも数時間前。少し考えにくいわね…。
それに…それだと俣旅ゼルダが元々メルクリウス貿易側の人間で、藤津木にスパイとして入りこんでいたって事になるわ。」

カフェの推理に一般人の発想で答える。
悲しいかな、元々霊能力が皆無なので予知や魔術での誘導といった超常の力を前提とした発想は出ない。

>カフェ「そろそろ車の修理も終わっておるはずじゃ。急ごうぞ!」
「ええ……その前にまずは情報収集からね。
これだけ人が集まれば、一人ぐらいはメルクリウス貿易の場所を知ってる人も居るでしょうし。
――店長さん、メルクリウス貿易本社の住所は知りませんか?」

『知ってるよ…(ゴツッ)…そこの社員もうちに食事に来るからね…(ゴンッ)…明日からどうすれば…(ガンッ)』
店長はビル群の合間から覗く中層ビルを指し示す。
壊れた窓からは、メルクリウス貿易の本社として機能するレギオンビルの姿が見えた。
メルクリウス貿易も裏では何をしているか分からないものの、秘密結社というわけでは無いのであっさり所在地が判明した。

「近い…ここから直線距離にして500mも無いわね。有り難う。
それとご馳走様、スープの味は中々だったわ。
お会計はここに置いて行くわね………あ、お釣りはいらないから。」

手にした束をレジの上に置き、店外へ出ると群衆を見渡す。
「牧街さんは居ないわね………連絡は入れたからこちらには向かってるはずなのに。」

道に迷っているとしか考えられないので、携帯で牧街の番号に連絡を入れるも今度は圏外の表示。
「仕方ないわね。じゃ、まずは車を取りに隙間風公園まで行きましょうか。」
ぶち折れた辰砂槍はもう使い物にはならないと諦めて、猫を連れたカフェと共に急ぎ足で隙間風公園に向かった。

229:藤津木 織羽 ◆Olha/49Xgc
10/02/16 21:23:30 0
隙間風公園へ戻り、牧街の姿を確認するとつかつかと近寄る。

「牧街さん…? ええと、ホシュに来て下さいって連絡を入れましたよね?」
咎めるような口調。意思疎通や連絡の不備は当然ながら望ましくない。
何が有ったのか、一通りの詰問を始める。

………(詰問中)。

……(尋問中)。

…(審問中)。

「はぁっ…これ以上こうして居ても無駄に時間が過ぎるだけ、ね。
メルクリウス貿易の所在地は分かったし、さっさと目的地に向かうわよ。」
いつの間にか、牧街に掛ける言葉から敬語が消えていた。
公園前の路肩では車の修理が終わったようで、運転手はシートに座って雑誌を読み耽っている。
念の為に注記すると、この辺りは駐車禁止区域では無いので、5分以上車を止めても差し支えない。

「そうね…まずは車でレギオンビルの周囲を一回りして。」
命じられた運転手は車を走らせ、周囲より頭一つ高いビルの周りをグルリと回る。
周囲を緑地に囲まれたレギオンビルは、20階建ての中層ビルであり、川の近くに建てられていた。
位置的に、下水からの侵入は不可能ではなさそうだ。

最近は東京の川も綺麗になったって聞くけど、アナスタシヤに防水機能はないから無理ね。
周囲のビルからは、かなりの距離………屋上からはどこにも逃げ場が無さそう。
まさか気球やハンググライダーを持って行くわけにもいかないし…。
それにしても木に囲まれてるせいで敷地の様子が分かりにくいわね……。

正面口には普通に警備員の姿。
裏口には誰も居ないようである。
敷地の緑地帯はよく分からない。
「侵入口は正面玄関、裏口、敷地に入って窓から、下水道の四か所といった所ね。
近くにここより高い建物は無いから、屋上からロープを伝ってってのは無理。
下水はアナスタシヤが入れないから無しね。
色々あって営業時間の6時は過ぎてるから正面突破も可能、と。
でも救出も目的に入ってるし、まずは裏口か敷地内の窓から潜入。
気付かれたら強行って、柔軟に切り替えるのが良いと思うけど…カフェさんはどう思う?」

作戦の立案などには自信は無いので、意見を問う。

230:カフェ ◆YNbEhcUF/I
10/02/18 00:04:56 0
>228
「目的地意外と近ッ!」
そしてホシュはメルクリウス貿易の社員も御用達の店だった。
それなら潜入して細工もしやすいし、この騒動はメルクリウス貿易の仕業の可能性が高いだろう。
「だがどうして我々がここに来ると分かったのであろうな。
タイヤがパンクしたのも偶然ならここに来たのも偶然……」
まさか運転手が怪しいとは思わないのであった。

>229
公園で牧街を発見。
「牧街殿は脚が早いからのう。
一回来てトサカ男を安全な場所までおびき寄せようとして走り過ぎたのであろう」

車に乗ってレギオンビルの周囲を偵察。
「フーッ!」
連れてきた猫は、なぜか運転手を気に入らないようだ。
動物はいい人と悪い人の区別が本能的につくとも言うが……。
「ンなアホな。これ、大人しくせい!」

>気付かれたら強行って、柔軟に切り替えるのが良いと思うけど…カフェさんはどう思う?」
「うむ。それで行こう。裏口は……警備員が一人もいないのが逆に怪しいぞ
窓から行こうではないか」

231:藤津木 織羽 ◆Olha/49Xgc
10/02/18 19:56:36 0
車を降りて、街路樹が立ち並ぶ道路から人通りの無い道へ。
きょろきょろと辺りを窺う姿は完全に不審者。
背後は川で、高い堤防が周囲の視界を遮る。

緑地帯の周囲には、人の高さほどの柵を巡らせてあった。
柵は杭状にもなってなければ、鉄条網でもない。
本気で侵入者を防ぐつもりの物々しい障壁ではなく、おそらく敷地内である事を示すためだけの物。

「まさかとは思うけど、高圧電流なんかを流してないでしょうね…?」
牧街の後ろに回り、ドンと柵の方へ押してみる。

「なーんてね、冗談よ。街中の施設に高圧電流なんて流してたら警察沙汰になるでしょ?」
柵に足を掛けて乗り越え、敷地内に足を踏み入れる。
瞬間――車の走行音、雑踏の喧騒、風の音が遠のいた。
密やかに異世界へと紛れこんだような違和感。

緑の下生えを踏みしめて歩きながら、声を潜めて聞く。
「アナスタシヤ、霊的異常は?」
『不明・デス』
「分からないって…どういう事?」
『レギオンビル・内部ハ・センサー・妨害・サレテマス』
「そう…中に入ってみないと分からないってわけね。」

灰色の外壁には幾つもの窓。
その一つに近づく。
窓の隅から頭を出して中の様子を窺うと、内装からは事務所フロアのように見えた。
中にはまだ人の姿があり、デスク上のパソコンに向かって忙しく作業をしている。
ビジネス街では何の変哲もない、ごく普通の風景。

「ここは駄目ね、スネーク………じゃなくて、アナスタシヤ。」
諦めて他を当たると、小さい曇りガラスの窓。
鍵は掛かってないものの、開くのは上部の十数センチだけで人が入れる程ではない。
中は明るいタイル張りで幾つかの個室が整然と並ぶ。
入口付近には、手洗いと鏡が備え付けられている――要するにトイレだ。

「ここは無人のようね………アナスタシヤ、窓枠を外せる?」
『イエス・マスター』
アナスタシヤが窓枠に手を掛けると、ギリギリと金属の軋む音。
次の瞬間、ボキッと割と大きな音がして窓枠が外れた。

「じゃっ、行きましょう。」
織羽はタイルの床に降りたつと、足音を消すでもなくスタスタと廊下に出る。
特に異常な気配は感じない――それを感じる能力も無かったのだが。

232:藤津木 織羽 ◆Olha/49Xgc
10/02/18 19:57:37 0
廊下を横切ると広いロビー。
ニ基のエレベーターがあり、傍にはビルの案内板が設置されていた。


地階B1【機関室・空調室・倉庫】

低層階1-4F【エントランス・ロビー・エレベーター・非常階段・管理事務室・トイレ】

中層階5-9F【オフィススペース・来客スペース・給湯室・更衣室・資料室・大会議室・トイレ】

高層階10-15F【重役室・役員会議室・社長室・応接間・トイレ・屋上】


他にも案内板に書かれていない秘密の場所が有るかも知れない。

「管理事務室には何も無さそうだったし、エレベーターか非常階段で上か下ね…。」

233:牧街 ◆GwyfLokZWa7/
10/02/19 19:29:17 0
阿湖野が去り、一息ついた牧街は、ふと、何故自分があんな危ない場所へ行こうとしていたのかを考え…
顔面が蒼白になった
(やべぇ…い…一応戻らねば…)
そう思い、ホシュへと戻ろうとする牧街だったが
時既に遅く、藤津木等が公園へと戻ってきていた

「はい、一応…ホシュへはいったんですけれど…そのぉ…」
「えぇ、はい、まぁ…そうです!トサカ男を誘き寄せようと…」
「いや…確かに…説得力無いですけど…けれど私は一応できるだけの事を……いえ、思ってません、無理だと思って即逃げるのは一応できることの範囲に入っている何て」
「あぁ!すいません!すいません!契約解消だけはご勘弁くだせぇ!!」
「…えぇ、そうです、携帯の番号は友人の物です、見栄はってました……」
「はい……申しません、えぇ……すみません」

>「はぁっ…これ以上こうして居ても無駄に時間が過ぎるだけ、ね。
>メルクリウス貿易の所在地は分かったし、さっさと目的地に向かうわよ。」
「お…おー」
年下の少女による説教で牧街が半泣きになった所で、哀れに思ったのか、それとも心底呆れたのか
藤津木嬢がメリクリウス貿易への出発を促した
味方のGSから生きた盾へと降格した牧街は、弱気な声でそれに合わせる
かんっぜんに主導権を年下に奪われている情けない大人のいい見本だ

さて、いよいよたどりついたメリクリウス貿易のビル
その大きさに、牧街の頬が引きつる
(こ…こげな…こげなやばげな所…無理…ち…直視しただけで緊張してしまう…)
牧街が一人びびりまくっている横で、藤津木がカフェと作戦立案を行っていた
>「侵入口は正面玄関、裏口、敷地に入って窓から、下水道の四か所といった所ね。
>カフェさんはどう思う?」
牧街に意見を聞かない辺り彼がアテにされていない事がわかる

それはともかく、カフェの提案で窓からの侵入が決まり、まず柵を越える事になったのだが…
>「まさかとは思うけど、高圧電流なんかを流してないでしょうね…?」
お嬢様がおっかない事を言う
(あ…悪の組織だからなぁ……そん位…ん?)
気がつくと、何者かに背中を押され、柵に触れていた
「っ~~~~~~~」
思わず息を呑む牧街に、お嬢様が人を見下した目で冗談である事を告げる
情けないやら悔しいやら怖かったやらで再び涙目になる牧街
最早完全に苛められっこだ

さて藤津木に続いて敷地内へと入っていった牧街は、へたれ特有の危機感地能力の高さで、すぐに空気の変化を感じ取った
(……い…いるな…こりゃ……魔族が…マジで…)
敷地内に潜む魔族の存在を察知した牧街は、即、後戻りしようとするが、後ろから柵を越えてきたカフェに押しつぶされる
急に後ろに下がるので、既にと柵を越えようとしていたカフェには避ける事ができなかったのだ
「うぅ…魔族怖い…行きたくない~…」
カフェの足の下、弱弱しい声でそう言った牧街だったが窓枠を怪力で外すアナスタシヤを見て、そういや逃げ切れるわけ無いなと頭を垂れ、がっくりとうなだれるのであった

さて、戦わずに心身共にボロボロになった牧街だったが、ようやくメリクリウス貿易ビル内へと入る事ができた
トイレから入り、案内板の前で、藤津木がどこへ向かうかを模索し始める
>エレベーターか非常階段で上か下ね…。」
「あ、だったらまず下っすね。倉庫と空調室、見てみましょう」
真剣に悩む藤津木の横からひょいと頭を出して案内板を見ながら、牧街は言った
なぜに?と顔を向ける藤津木に、牧街は人差し指を立てて解説モードになる
「第一に、この2部屋は普段あんまり人が入らないので監禁するのに向いてると思うんです
第二に、地下一階は警備が薄そうですが、上の階は警備が厳重そうです、即ち、上の階を先に探すと、見つかる可能性が高いので、後で下を探す事はできなくなる可能性は高いですが、下ならたとえいなくても見つからない可能性が高いのでまた上を捜索しなおす事もできます」
(第三に、近い所にいた方がこの仕事が早く終わるからです)
とは勿論言わない

234:カフェ ◆YNbEhcUF/I
10/02/20 23:15:12 0
>231-233
「おお、すまぬ」
と、牧街を押し潰したりしながら建物内に潜入。
>「うぅ…魔族怖い…行きたくない~…」
弱弱しい声ではあるが牧街は魔族と言った。
彼の危険感知能力はかなりのものである。時々多少鋭敏過ぎるが。
連れてきた猫はというと、尋常ではない様子で毛を逆立てている。
(まさか本当に魔族が……!)

>「あ、だったらまず下っすね。倉庫と空調室、見てみましょう」
>「第一に、この2部屋は普段あんまり人が入らないので監禁するのに向いてると思うんです
第二に、地下一階は警備が薄そうですが、上の階は警備が厳重そうです、即ち、上の階を先に探すと、見つかる可能性が高いので、後で下を探す事はできなくなる可能性は高いですが、下ならたとえいなくても見つからない可能性が高いのでまた上を捜索しなおす事もできます」
「なるほどなるほど……」
牧街の的確な判断に感心するカフェ。第三の理由はもちろん聞こえない。
「ではエレベーターは密室で何が起こるか分からぬ故念のため階段で地下に降りるぞ」

【B1:倉庫】
倉庫に広がっていたのは、見るからに怪しげな壺が一面に並ぶ光景だった。
「……」
(騙して売りつけてもうけているのかのう)
いや、まさか大企業がそんなショボい事をしないだろう。
たとえ悪の大企業であっても、いや悪の大企業なら尚更そんな小市民的な悪事には手を出さない、と思いたい。
某国民的RPGなら一個ずつ持ちあげて叩き割ることによって中のアイテムを手に入れるのがお約束だが、もちろんそんな事はしない。
「特に怪しいものはないか。無論別の意味で怪しいが……ん?」
猫が一つの壺に寄って引っかくようなしぐさをしている。
その壺の中をのぞいてみると、霊力付きのお茶が入っていた。
「師匠が持っていたものじゃ……!」
こんな経緯が思い浮かぶ。
師範誘拐→持ち物検査→こんな物持ってました→没収→とりあえず倉庫に放り込んどけ
わざわざ没収するぐらいだから、とてつもなく重要な物なのかもしれないし
倉庫に無造作に放り込んでおくぐらいだから大した意味はない物かもしれないが
とにかく謎のお茶を再入手したのであった。

235:藤津木 織羽 ◆Olha/49Xgc
10/02/21 19:23:27 0
「へぇ…。」
捜索は下からにすべきと提案する牧街に思わず感嘆の声が漏れる。

なんて言うか只のダメな人じゃなかったのね。
でも、いざって時には力を出せないタイプっぽいような…。
そういえば、うちのクラスにもいるわね…テストの直前になるとお腹が痛くなる子が。

まずは牧街の提案通りに一面に壺が並ぶ倉庫の中へ。
壺は霊的な物品などを保管するために各地から集められた物であった。
GSなら鎮座する壺には、どれも例外無く呪的な装飾が施されている事が分かるかも知れない。
「壺ばっかりね…骨董品の類? 一応、センサーを掛けて…ってセンサーは妨害されてたんだっけ?」
『イエス・マスター』
「そう、それじゃ虱潰しに…。」
>カフェ「師匠が持っていたものじゃ……!」

カフェが霊力を帯びた茶葉を発見。
「これで秋葉原師範を誘拐したのは、メルクリウス貿易で確定になるわね。
でも何のために………師範を誘拐するメリット………。
他の壺の中にも何か手掛かりは残ってないかしら?」

無数の壺の中に入っていたのは、奇妙なオブジェクトや石ころや悪霊だけで人の姿は無い。
『ククク、バカな人間め…よくぞ、我を長き封印から解いてく』
「これ以上は無駄ね。空調室の方を探しましょう。」
蓋を上げた瞬間に一瞬、壺から何かが出かかったが、出る前に織羽は即座に壺の蓋を閉めてしまう。
そして霊能力も無いので壺の中の声も聞こえなかったし、異常にも気付かなかった。

倉庫を出て廊下に戻り、空調室と書かれた扉を開ける。

【B1:空調室】
空調室の中は、幾つかの空調機にダクトや配管が並ぶだけの殺風景な灰色の風景。
ざっと見、ここにも人の気配は無い。
「ここも外れね…見事に空調設備だけ。監禁は地下じゃなかったみたいね。
わたしは、やっぱり社長室が一番怪しい気がするんだけど?
秋葉原師範の誘拐は、おそらく社長の指示。
社長は黒魔術師らしいし、生贄にする目的で攫ったって可能性が考えられるわ。
そんな儀式を行うのは一般人の出入りする場所じゃないでしょ?
下じゃなかったった事は一番上の社長室!そこに師範もいる可能性が高いはずよ。」

と、冴えわたる自らの頭脳に半ば酔いしれながら意気揚々と階段へ向かう。
「………それにしても、地下室って何か狭く感じない?
倉庫と廊下を合わせても一階の面積の10分の1も無いって気がするけど…。
まあ広くする必要も無いでしょうし、どこもこんなものかしら………。」

236:藤津木 織羽 ◆Olha/49Xgc
10/02/21 19:24:20 0
【とある一室】
ビル内の何処かに隠された一室では、謎のコンセントを鼻に差しこまれた秋葉原師範が眠っていた。
師範の鼻に差されたコンセントから伸びるコードの先では、精緻な工芸品が光を放っている。

「ええい、増幅器の充電はまだなんか!このままでは納品の時間に間に合わん…何とかせいや!」
叱咤する禿げ頭の男はメルクリウス貿易の社長、神田呑任太。
「落ち着くでアリます。これだけの霊力の持ち主なら一時間も掛からないでアリましょう。」
「そうでアリます…社長。それに霊力の補充なら充電でなく充霊でアリます。」
神田呑社長に次々に励ましの声を掛ける社員たち。
彼らの顔は一様に蟻を思わせる頭部で、明らかに人外の者。
背広を着た等身大の蟻というのも中々にシュールな光景である。
この蟻人間たちの正体は、社長が魔族に提供してもらった蟻人ミュルミドン。
メルクリウス貿易発展の影には極限までの人件費削減と、働きアリの如く無償労働する彼らの力があった。

「そんな事はどうでええ!魔族の連中の信用を失ったらわしはお終いや!分かっとんのかっ!」
ミュルミドンたちに激昂の怒声をぶつけつつ、神田呑社長は充霊の完了を今か今かと待ち受けていた。

この部屋がどこなのかは分からないが、案外近くかもしれないし、遠くなのかもしれない。


【高層階:社長室】
最上階の社長室には、重厚な椅子に深々と腰掛ける禿頭の男。
それは、レギオンビル内に存在する二人目の神田呑社長の姿であった。
どちらが本物かは、そっくり過ぎてナレーションの人にも分からない。
「攫った奴らを取り返しに侵入者が来たか…おそらく奴らは真っ先にここに来る。必ず来る。そうに決まってる。
小賢しい人間どもの考えなど俺には手に取るように分かるのだからなぁ…ギシシィ。
どうせ社長は社長室に居るはずだなどと、安易に考えているのであろうなぁ…ギシシッ。
しかぁし、ここに侵入すれば“地獄の蟻塚作戦”で退路を断って駆除するまでよ…さぁ早く来い、ギシシィッ!」

何となく悪の怪人っぽい台詞を吐きながら、神田呑社長はワイングラスを手に侵入者を待ち受けていた。

237:牧街 ◆GwyfLokZWa7/
10/02/21 21:18:29 0
一面に並ぶ壺に、牧街はさりげなーくアナスタシヤの後ろに隠れる
彼は過去一度、壺に食われた経験から、明らかに何か起こりそうな雰囲気を放つ壺群に腰が引けていた
>「師匠が持っていたものじゃ……!」
そして、カフェがカフェの師匠が持っていた例のお茶を見つける
(く…食われて消化されたんじゃねぇだろうな……)
牧街が冷や汗を流した、その時
>『ククク、バカな人間め…よくぞ、我を長き封印から解いてく』
「!!??」
早速出た悪霊に、牧街がびびったその時
>「これ以上は無駄ね。空調室の方を探しましょう。」
霊能力者でも何でもない藤津木嬢が悪霊を再封印してしまった
(……ナイス)
心の中でその功績を称え、さりげなくぐっとサインを出す
無論本人、その偉大な功績に気づいていない

続いて入ってみた空調室にも、特に何も無い
「…やっぱそー簡単に見つかっちゃくれないか、えぇ」
やっぱり一筋縄では行きそうに無い事件に、牧街はまたため息をつく

>下じゃなかったって事は一番上の社長室!そこに師範もいる可能性が高いはずよ。」
(やっぱしそーいう展開になるんだな~…)
上の階で悪霊と戦うのならまだ仕事なのでそこそこ覚悟もできているが
一般の社員や警備員に呼び止められたらどうしようかと心配しながら階段へ向かった時、藤津木が思い出した様に口を開く
>「………それにしても、地下室って何か狭く感じない?
そう言われて、そういえばそうかな~とも思ったが、すぐに別に大した事無いなと結論に至る
「上の階がでかいからじゃないですか。地下は広くしすぎると土台がもろくなりそうだし」
適当なもっともらしい事を言って、藤津木に続いて階段を登って行こうとした時、ふと…車の中でカフェから聞いたホシュでおきた事件の事を思い出した
(…蟻は地底に巣を作るんだよ…な?……いや、式神なら関係無いか)
だが、特に気に止めず、社長室へ向かって階段を進んでいく

238:牧街 ◆GwyfLokZWa7/
10/02/22 10:33:44 0
階段を登りながら、牧街はある事に気づき、「あっ」と声を上げた
「別に社長がいる間に社長室探さなくてもいいじゃないですか、社長が出社した後社長室探せばいいんですよ。悪霊だったらまだいいけど、普通の社長だったら通報されるだろうし」
そういえば夜中に探索する予定で来たのに、ホシュで昼食とった後即座にこっちに来ている
ノリと言う奴は恐ろしい

239:名無しになりきれ
10/02/23 11:10:07 O
ホシュ

240:カフェ ◆YNbEhcUF/I
10/02/23 13:45:27 0
>235
>「下じゃなかったった事は一番上の社長室!そこに師範もいる可能性が高いはずよ。」
「うむ。社長室へ行くぞ!」

>238
>「別に社長がいる間に社長室探さなくてもいいじゃないですか、社長が出社した後社長室探せばいいんですよ。悪霊だったらまだいいけど、普通の社長だったら通報されるだろうし」
今日の牧街はなんだか冴えているぞ!
しかし師範の命がかかっているかもしれない緊急事態である。カフェは一刻も早く社長室に行こうとする……と思いきや。
「……。確かに普通に考えると社長室に真っ先に行きそうだから
もっと捻った隠し部屋などに監禁しておる可能性が高いやもしれぬ!」
社長室の社長が「何!? 社長室に来んだと……!? 小賢しい奴らめ」と言ったとか言わなかったとか。
「では中層階に行ってみようぞ。
来客スペースもある階層なら見つかってもつまみ出されはしないだろう
社長が黒魔術師なら普段から変わった来客も来ておるであろう」

―中層階
中層階では、まるで働きアリのようによく働きそうな社員達がせかせかと歩いている。
「こんにちはー、来客の方ですかー?」
社員にフレンドリーに声をかけられてしまった。ホシュでの騒動からして、フレンドリーには要注意だ。
「うむ。まあそのような者じゃ」
つまみ出されたらいけないのでそういう事にしておく。
「ではこちらへどうぞー」
と、来客スペースへ案内される流れになってしまう。

241:藤津木 織羽 ◆Olha/49Xgc
10/02/24 19:51:52 0
> 牧街「あっ」
階段を上り、地下階を出ようという時に牧街が声を上げる。
「何? どうかしたの?」

> 牧街「別に社長がいる間に社長室探さなくてもいいじゃないですか、
社長が出社した後社長室探せばいいんですよ。悪霊だったらまだいいけど、普通の社長だったら通報されるだろうし」

「どうかしら…誘拐までする企業のトップが普通の社長っていうのも、少し考えにくいわね。
それにうちの技術者や秋葉原師範の誘拐には、何らかの目的があるでしょう?
なら社長の出社は“事が終わった”のを意味するかも…。」

>カフェ「……。確かに普通に考えると社長室に真っ先に行きそうだから
もっと捻った隠し部屋などに監禁しておる可能性が高いやもしれぬ!」

「隠し部屋………そうね、わたしなら何処かの一フロアを丸ごと隔離階にするわ。
ほら、ホラー映画なんかにはよくあるでしょ? 縁起を担いで存在しないはずの13階とか。
でも隠しフロアなら、階段やエレベーターで直接行けないかも…。
不自然に階段に間隔があるような階は、特に注意した方が良いわね。」

議論の末、カフェの意見が採用されて中層階へ。
普通は隠し部屋の発想が閃いた時点で、地下階を捜索し直すのではという突っ込みは受け付けない。

時刻は、お昼のヒーローショー、隙間区への移動、遅いお昼と銀色鶏冠男との戦い、牧街への詰問。
諸々あって、すでに6時を過ぎて(>229)いる。
従って終業時間も過ぎたと思っていたのだが、オフィスでは普通に営業をしていた。

そう――残業である。

…って、何でまだ社員がこんなにいるの! 定時過ぎたら帰りなさいよ!

フロアのそこかしこで手持ち無沙汰にしている体格の良い社員たちと、せかせか働く小柄な社員たち。
働いている方の社員の一人がこちらに気づいて、つかつかと近寄って来た。
即座に攻撃命令を掛けられるよう、数歩下がってアナスタシヤの後ろ斜めに陣取りつつ視界を確保。

>「こんにちはー、来客の方ですかー?」
しかし、意に反して社員はフレンドリーな応対で来客スペースに案内し、カフェが付いて行ってしまう。

………不審に思われて………無い? もしかして末端の社員は何も知らないって事?

「ところで………あの人たちは何してるのかしら……?」
暇そうな軍人やサムライめいた社員を眺めながら牧街に囁き声。
普通の社員を働きアリに例えるなら、彼らはさしずめ軍隊アリやサムライアリを思わせる。
何となく傍に近寄りたくない気持ちは否めない。

242:藤津木 織羽 ◆Olha/49Xgc
10/02/24 19:53:18 0
【来客スペース】

流れに逆らえず織羽も来客スペースへ。
部屋の内装は、グレーのモザイクカーペットに白く塗られた壁。
広々としたスペースに程良く設置された大テーブルにクッションの敷かれたパイプチェア。
扉は学校の教室のように前と後ろに二つ設置。
植木鉢に入った観葉植物ドラセナマッサンギアナが、緑の匂いを発散して柔らかに部屋中に運ぶ。
窓の外を見れば、白色蛍光灯の光に包まれる室内とは対照的に藍と茜の入り混じった暮色。

…見た感じは普通の来客スペースね…。
何か…本当に普通の企業のような気がしてきたんだけど…。

『私、有田と申しますです。ささ、お茶をどうぞでアリます。』
「あ、お構いなく…。」
『それで弊社への御用件は何でアリましょうか?』
「え………用件? あぇ、う…えと…オーパーツを」
『オーパーツ!? オーパーツでありますか!?』

咄嗟に出てしまったオーパーツのワードに有田さんの表情が豹変。
テーブルをドンと叩き、目を剥きだして身を乗り出す!
「あぅ…えと、オーパーツ…じゃなくて…おーぱー…おっぱ………こほんっ、失礼しました!
そう! 実は私どもは衣料品を扱っているのですが、此の度バストが大きく見える北欧製の下着を輸入したいと思いまして!
世評と実績から鑑みれば、ここは是非メルクリウス貿易様に御依頼できないものかとっ…!
それで、こちらは当社の専属モデルのカフェさんにアナスタシヤさん。部下の牧街です!」
『私・アナスタシヤ・デス』
『そうでアリましたか。では詳しいお話をお伺いするでアリます。』

苦しくとも何とか乗り切った………乗り切ったと信じたい。
一つの嘘を吐くと、それを隠すために新たな嘘を吐かねばならなくなるという至言が頭に浮かびはしたが。

「牧街…こっちは怪しまれてないみたいだし、今のうちに隠し扉や隠し階段の類が無いか捜索してきて。」
商談してる間に、牧街にトイレなどと偽って隠し部屋を探すように命じようとして、はたと気づく。
彼を一人にすると、そのまま帰ってこない可能性に。
「…カフェさんと一緒に。」

【オフィススペース】

『エマージェンシーコールは、まだでアリますかね?』
『侵入者が高層階に足を踏み入れたら発動するようでアリ。』
『ここに侵入するなんて、どんな馬鹿でアリますかね。』
『まったく顔が見たいでアリ。それまでゆっくりしてるでアリ。』
人に化けた蟻人間ミュルミドンのひしめく中層階。
しかし、彼らは事態に柔軟な対応をする事ができないのか、ただ無為に待機を続けていた。

243: ◆Olha/49Xgc
10/02/24 19:54:51 0
「ニャーオ!」
そんな中、カフェと一緒に着いてきた猫が、何かに感づいたかのように髭を震わせて呻る。
軽快な動きでカフェの腕をスルリと抜けた黒猫は、真っ黒な足の裏を覗かせて走り始めた。
中国では全身真っ黒な猫は、瑞猫と呼ばれ幸運のシンボルとされるが、この猫は見事に真っ黒だ。
猫は廊下を走って端まで来ると、まるで開けてくれとでもいうように近くのドアに爪を立てた。


>239
【こちら迅速な保守が困難なため、保守に感謝!】

244:カフェ ◆YNbEhcUF/I
10/02/26 00:44:40 0
>242
>「それで、こちらは当社の専属モデルのカフェさんにアナスタシヤさん。部下の牧街です!」
>『私・アナスタシヤ・デス』
「カフェでーす。アナスタシヤさんと対照的に妹系モデルでーす」
婆口調はモデルとしてはマニアックすぎるので、一応今時のギャル口調(?)で取り繕う。

>「牧街…こっちは怪しまれてないみたいだし、今のうちに隠し扉や隠し階段の類が無いか捜索してきて。」
>「…カフェさんと一緒に。」
(了解!)
二人同時にトイレとか言うと怪しまれそうなので少し捻る。
「車にケータイ忘れちゃったー。牧街、取りに行くから着いて来てー」
ケータイを一時も手放せない今時のギャルを演じつつ、牧街を引っ張って部屋から出る。

「よし、怪しい場所がないか探すぞ」

>243
「む!? なにかあるのか!?」
ドアを開けようとするが、鍵がかかっているようで開かない!
ガチャガチャやっていると、内側からドアが開いて禿げ頭の男が出てきた。
「騒がしいのう、静かにせい!」
どう見ても神田呑社長(もしくは彼にそっくりの姿をした何者か)だ。
が、神田呑社長についての情報は名前しかわかっていないので、カフェ達はこれが社長だと気付かない。
実は社長は内心焦りまくっていた。
(ど、どないせーっちゅーんじゃ! なんでここに来るんや!
こいつらは真っ先に社長室に向かってコテンパンになる予定やなかったんかい!)
蟻人間だけではなく、いつも神頼みばかりしている社長も事態に柔軟な対応ができないようだ。
カフェはぺこりと頭をさげる。
「あ、すみません」
(焦っておる……? だがさすがにこんな隠し部屋でもない普通の部屋で怪しい事はやっておらんか)
こんな風に人間達が逡巡している一瞬の間に、猫は素早く部屋のなかにすべりこんだ。
直後、室内から叫び声。
「あー! 猫がコンセント引っこ抜いたでアリます!!」

245:牧街 ◆GwyfLokZWa7/
10/02/26 16:06:37 0
牧街の言葉に、藤津木は反対する
>なら社長の出社は“事が終わった”のを意味するかも…。」
「いや…例え社長が怪人でも、すぐに正体現してよく来たなGS諸君とか言ってくれればいいですけれど通報されたら正体暴く術が無いだけに…」
>もっと捻った隠し部屋などに監禁しておる可能性が高いやもしれぬ!」
「んなもんあったとしても人が大勢いる間じゃまず見つからないんじゃ…」
>不自然に階段に間隔があるような階は、特に注意した方が良いわね。」
「も…もしもーし…ちょっと話を聞いてくれると嬉しいかなー何て…」
>来客スペースもある階層なら見つかってもつまみ出されはしないだろう
>社長が黒魔術師なら普段から変わった来客も来ておるであろう」
「余計人が来そうじゃないですか!ってかそれ魔族と即効で相対する可能性あるじゃ…ちょ!待って!ねぇ!」
中階層への移動が決定した

さて、場面変わって中階層
牧街の危惧したとおり、あっさり発見されてしまった



>「こんにちはー、来客の方ですかー?」
>「うむ。まあそのような者じゃ」
>「ではこちらへどうぞー」
(あ…あっさり通されてもうた…)
拍子抜けするほどあっさり通されてしまった
お客様は神様だの精神が行き届いてんだな~っと牧街が妙な感心をしていると、お嬢様が横から声をかけてきた
>「ところで………あの人たちは何してるのかしら……?」
その言葉に視線の先を見てみると、そこには物騒な物を持ってそうであからさまには持っていない方々の姿が……
「きっと…そ…倉庫の…荷物運びのバイトの方々ですよ……え…えぇ……」
…青ざめながら、一応質問に答えておく
おっかない、帰りたさマキシマムコレダーだ

さて、やってきた来客スペースで
いつボロが出てつおっかない人達に東京湾クルーズへの片道切符を渡されるかとびくびくしていたが
藤津木の柔軟な対応でとりあえずは大丈夫そうである
緊張と恐怖でガチガッチに固まっていると、不意にお嬢様がこちらに声をかけてきた
>「牧街…こっちは怪しまれてないみたいだし、今のうちに隠し扉や隠し階段の類が無いか捜索してきて。」
「へ?あ…ぁばばばば…」
突然の事にどう返していいかわからず口からわけのわからない言葉が飛び出す…情け無い
ついでに、最早「さん」をつけてもらえていない
>「…カフェさんと一緒に。」
>「車にケータイ忘れちゃったー。牧街、取りに行くから着いて来てー」
その余りに情けない態度からか
はたまたこいつだけでは役にたたんという諦めからか
カフェの同行が決まり、二人は来客室を後にした

246:牧街 ◆GwyfLokZWa7/
10/02/26 16:57:57 0
しかし、んな物どこにあるのかなどまるっきりわからない
途方にくれていた所で例の猫が一枚のドアの前にとっとと走って行き、かりかりとドアを引っかきはじめた
(こ…この馬鹿猫!何やってんだ!!)
ドアに傷がついたらどうするんだ後で責任取るの俺だぞと腹の中で怒鳴る牧街だったが、小心者の彼は勿論声には出せない
慌ててとっ捕まえようとするが、先にカフェさんがドアにとりつき、ガチャガチャノブを回してしまった
>「騒がしいのう、静かにせい!」
たちまち中から出てくるおっかないおじさん
数歩後ずさり、固まる牧街
(あ…あわわわわわわわわわわわ……東京湾の…東京湾の波の音が…波の…な…)
ビビリまくる牧街の目の前で、猫は室内へと侵入してしまった……
そして…

>「あー! 猫がコンセント引っこ抜いたでアリます!!」

データが大量に入ったコンピューターのサーバーが飛んだ時、どれだけ莫大な損害賠償を請求されるのだろうか…
真っ白になっていく思考の中で一瞬そんな事を考えた牧街は

「ごのやろおおおおおおおおおお!!よくも!!よぉおおおくもとんでもねえ事してくれやがったなぁああああああああ!」

今までたまりに溜まった鬱憤やら恐怖やらを吐き出すように怒鳴りながら、猫をぶち殺さんと神通棍を片手に室内に突入し…
余りの牧街の剣幕にちょっとビビッて固まったため人間への変身が遅れた蟻人間と、眠ったまんまのカフェの師匠と鉢合わせた

神通棍を構えたまま固まる牧街と、猫を追っかけようとする姿勢のまま固まる蟻人間
1~2秒して
「「あああああああああああああああああああああああああああああ」」
両者大声を上げた
「蟻…蟻蟻蟻!蟻星人!インベーダぁあああああ~~~~~~!!地球防衛軍!地球防衛軍に連絡!!」
「いや!自分は魔物でアリます!」
「親切に名のらんでええ名刺も渡すな!!!!え~~~いバレてしもては仕方ない!出会えぇええええ物共出会えぇええええええええ」
混乱して妙な事を口走る牧街(ちなみにアニメ版美神だと地球防衛軍が登場します、確か)と、同じく混乱して律儀に自分の正体を明かして名刺なぞ渡そうとするミュルミドンAに一括し社長が叫ぶと、そこらからぞろぞろと武装したミュルミドンが現れてきた
「この物共を切ってす……!!」
社長が命令を下す前に、素早く社長の背後に回った牧街が、社長の首にチョークスリーパーをかけ背中に神通棍を拳銃の変わりに突きつける
「こいつの命が惜しかったら動くなぁ!!今すぐ現金3億円と逃走用のヘリを用意しろぉおお!!」
人質をとってミュルミドン達が怯んだのを見た牧街は、後ろのカフェに、顎と目線で早く師匠を起こしてくれとうったえた
できれば、このまま成功して現金三億円とヘリで海外に高飛びしたかったが
そんなの上手くいく分けない事位、馬鹿な牧街でもわかっていた

247:牧街 ◆GwyfLokZWa7/
10/02/26 17:00:28 0
×社長の首にチョークスリーパーをかけ背中に神通棍を拳銃の変わりに突きつける
○社長の首を押さえつけ、背中に拳銃の変わりに神通棍を突きつける

248: ◆Olha/49Xgc
10/02/27 00:36:01 0
「な、なんじゃい!? げ、現金3億とヘリ? 糞餓鬼、無茶言うなや!
せめて、五千万とクルーザーぐらいにまからんのか!?」
牧街に首を抑えつけられて苦しそうにも関わらず、神田呑社長はしっかりと値切りに入る。

「社長が捕まったでアリます!」
「若者! 郷里のお袋さんが悲しむような、馬鹿な真似は止めるでアリ!」
「地味に見えても堅実地道に働くのが一番でアリよ!」
ミュルミドンたちも口々に牧街の暴挙を諫める。

人外による説得の最中、背中に堅いものが当たった社長の顔が見る間に引き攣ってゆく。
牧街が持つのは銃や刃物では無いのだが、背後に回られている社長には知る由も無い。
「ま、待て! 分かった…金は用意する! 社長室に金庫があるんや!
頼むから、そない物騒なもんは撃たんでぇな!
何事も命有っての物種やからな………ほら、道を開けい!お前たち!」
脅えた口調の社長命令に従い、ミュルミドンたちが左右に分かれて牧街らに道を譲る。

【社長室】

「よく来たなGS諸君………待ちくたびれたぞ。」
葉巻を燻らせて、重厚な椅子から立ち上がる神田呑社長。

「しかぁし…ギシシィ…残念だったな! ここまで来たのが運の尽きよ!
すでにお前たちの退路はどこにも無い。
侵入者たちがここに来れば、下に潜んでいたミュルミドンの集団が、
エレベーターと階段を塞ぎながら上階に殺到する手筈になっているのだからな!」

まぁ、ミュルミドンたちは潜まずに普通に残業をしていたのだが。
それはさて置き、社長室に居た方の社長はバリバリと人間の貌と体を突き破り、
巨大な異形の黒蟻へと姿を変えた!

「神田呑………何をしている?」
「ヘルゴティス、金庫を開けたってぇな! わしの命が危ないんや!」
「人質を取った………だと!? ギギィ…卑劣な!」
牧街に捕らわれた神田呑を見て、ヘルゴティスと呼ばれた黒蟻の魔物はギチギチと歯を鳴らす。
しばらく牧街を忌々しげに睨みつけていた蟻の魔物は、金庫に近寄ってダイヤルを回し始める。
金庫はカチリという小気味良い音を鳴らして開き、優に三億はあろう現金の山を覗かせた。

249: ◆Olha/49Xgc
10/02/27 00:37:19 0
【魔物データ】
名称:ヘルゴティス
体長:2m
知性:人間並み
備考:神田呑社長に召喚された蟻型の下級悪魔。
黒い甲冑の如き体皮と強靭な顎を備えたミュルミドンたちの親玉。
ギリシア語で“働く者”の意を持ち、召喚者に忠実。
労働者などという名前の所為か、人間にも魔族にも使われがち。


【魔物データ】
名称:ミュルミドン
体長:150cm~2m
知性:人間並みだが、上の命令を絶対厳守する
備考:働き者のアリ人間。性質もアリに準じて勤勉。
アーミーアント、ファイアーアントなどの戦闘に特化した種もいる様子。

250:藤津木 織羽 ◆Olha/49Xgc
10/02/27 00:41:31 0
>社長「親切に名のらんでええ名刺も渡すな!!!!え~~~いバレてしもては仕方ない!
出会えぇええええ物共出会えぇええええええええ」

廊下の端の部屋から、ミュルミドンたちを呼び寄せる神田呑社長の声が響いた。
命令を受けた大勢の体格の良い社員たちは、本性を現して続々オフィスルームから去ってゆく。
その異様な足音や気配は、否が応にも来客スペースに伝わってくる。
「何か…動きがあったみたいですね?」
『不審者が現れたので警備班が出動したようでアリます。』

………不審者?

A・師範が自力で逃げた。
B・偶然強盗か何かが。
C・牧街とカフェがやっちゃった。

「………ミッションを潜入から強襲に変更。アナスタシヤ、速やかに障害の排除を。」
『イエス・マスター』

踊るようなステップで、素早く有田さんの背後に回りこんだアナスタシヤが手刀を振り下ろす。
『な、何をするでアリますか!』
――骨を叩くような堅い音。
床に倒れて気絶した有田さんは、蟻の頭部を持った魔物の正体を現した。

「えっ…魔物?」
魔物とは分かって無くてやったのだが、結果オーライ。
ちなみにアナスタシヤの渾身の一撃を受けたのが常人であれば、殺人事件に発展していた所だ。

「ここの社員が魔物が化けていたって事は………まさかオフィスに居たのも全部!?」
織羽がアナスタシヤを伴って廊下に出ると、そこには武装ミュルミドンたちがひしめいていた。

251:カフェ ◆YNbEhcUF/I
10/02/27 23:06:44 0
>246 >248
>「ごのやろおおおおおおおおおお!!よくも!!よぉおおおくもとんでもねえ事してくれやがったなぁああああああああ!」
威勢よく突入した牧街に続くと、蟻人間と、気絶させられた師範の姿が!

牧街がアリ軍団とコントをして時間を稼いでくれている間に師範を揺り起こす。
「起きるのじゃ師匠!」
「……にゃ?」

>「こいつの命が惜しかったら動くなぁ!!今すぐ現金3億円と逃走用のヘリを用意しろぉおお!!」
>「な、なんじゃい!? げ、現金3億とヘリ? 糞餓鬼、無茶言うなや!
せめて、五千万とクルーザーぐらいにまからんのか!?」

「今日はとても牧街君が頼もしく見えるにゃ!」
「そうじゃのう」
なし崩し的にそのまま社長室に行く事になった。

>「よく来たなGS諸君………待ちくたびれたぞ。」
「社長が二人!? ……てええええええええ!?」
社長室にいた方の社長はアリの親玉みたいなのになった!

>「人質を取った………だと!? ギギィ…卑劣な!」
襲いかかってくるかと思いきや知能は高いようで、金庫を開け始める。
「はて、ここに来た目的は金品強奪であったか……?」
「違うようにゃ気が……思い出した! 誘拐された社員の奪還にゃ!」
「おお、そうじゃ! 俣旅ゼルダの居場所を教えてくれぬか?」
が、その時にはもう金庫は開けられつつあった。
そして金庫の中から覗いたのは、現金の山と、いかにも誘拐された人っぽく縛られた人物の姿だった!

252:牧街 ◆GwyfLokZWa7/
10/02/28 14:26:29 0
>「社長が捕まったでアリます!」
>「若者! 郷里のお袋さんが悲しむような、馬鹿な真似は止めるでアリ!」
>「地味に見えても堅実地道に働くのが一番でアリよ!」
「うるせぇ!うるせぇええ!!要求を飲むのか!否か!はっきりしろぉ!!」
勢いで社長を人質に取り、ブレーキが利かなくなった牧街はフルスロットルで悪党の道を突き進んでいく
周囲を化け物に囲まれた極限状態で、ビビったり怖がったりする域を突破し何かが切れたらしい

牧街の剣幕と追い詰められたネズミ特有の何かやらかすオーラに怯えた社長は、マジで三億円を出すために牧街を社長室へと案内する
一瞬、ヤバイ警察呼ばれるか?とも思ったが、良く考えてみれば向こうが正体明かしている今、警察が来れば向こうの方が損害が大きいので、すぐにその考えを打ち消す

そして、社長室で牧街等を待っていたのは親切に自分の計画を暴露する蟻の怪物の親玉の姿だった
鬼モドキや合体悪霊に匹敵する怪物の登場に、牧街は一瞬腰が抜けかけるが
それでも先程よりしっかり社長の首を絞め、必死にヘルゴディスにビビッているのを悟られまいとする

それが功を成し、本当に金を用意し始めるヘルゴディス
更にカフェの言葉に答えるように、俣旅ゼルダまでそこにいる
(……おかしい、呆気なすぎる。罠だ!!)
余りに呆気のない展開に、ビビリ特有の慎重さで危機を悟った牧街は、カフェ等を制し、社長の首を締め上げる
「ベタベタなトラップはやめてもらおう!!お前等の召喚主がどうなってもいいのか!!」
牧街の脅しに、怯むミュルミドン達
「皆この部屋から出ろ!!出るんだ!!」
次に牧街は社長を盾にしてカフェ、カフェの師匠を除く全ての人物を社長室の外に出す
更に、牧街は声を少し、低くし、社長の背に突きつける人通棍を背骨に突き立てながら問いただした
「社長、これだけの悪魔をどうやって用意した!あんただけの力だと思えない、お前のバックにいる奴は誰だ!!」
ギリギリと背骨に苦痛を上げながら厳しい口調で問う牧街に、いつものヘタレさは感じられない
人間、追い詰められれば結構中々強くなるものなのである

253: ◆Olha/49Xgc
10/02/28 23:12:11 0
凶悪犯牧街の要求で社長室からカフェと師範、人質の神田呑社長以外の人物が出される。
すなわち蟻魔ヘルゴティス、蟻人間ミュルミドン、縛られて猿轡を噛まされた俣旅ゼルダ。
俣旅は首を振りながら「ん~ん~」言っているが、牧街の読み通りにトラップで演技なのかも知れない。

>牧街「社長、これだけの悪魔をどうやって用意した!あんただけの力だと思えない、お前のバックにいる奴は誰だ!!」

「バックにいる奴…そ、それは…ウググ…わ、分かった言う! そない絞めんといてや…!
何年か前の事や…会社が倒産寸前だったわしは、藁にもすがる思いで色んな神さんに商売繁盛を願っとった…。
そしたら、あいつが現れたんや…なんや真っ赤な奴で蘇芳と名乗っとった。
そいつが魔族の為に働けば、世界一の金持ちにしてやる言うてな………魔術書をくれたんや。
わしに魔族と繋がりが出来たんはそれからやった。」

神田呑社長は冷や汗を流しながら聞かれてない事まで、悪事の顛末をペラペラ喋り始める。
やはり、小者の悪党はこうでなくては。

「で…その蘇芳から、オーパーツをある魔族に届けるように言われたんやが…オーパーツが動かん。
魔族に故障品なんぞ持っていったら、わしの身もどうなるか分からんやろ?
と言っても機械の故障なんぞ、わしらではどうにもならん。
それで藤津木から技術者を誘拐して調べさせたら、原因は単なる霊力切れと分かったんや。
オーパーツの充電には、霊力の高い奴を電池にせなあかん。
どうしたもんかと思っとったら蘇芳から、魔族の息が掛かった店に霊力の高い奴らを誘導させるゆう連絡があってな。
何でも、霊力マタタビとか特殊な具材の料理で人間を操る実験をしていた料理店だとかで…そう、ホシュって店や!
それで急いで蟻たちを派遣して、店の中で一番霊力の高いもんを攫わせたというわけや………。」

どうやらホシュの店長も知らぬうちに魔族に操られていたらしい。
そして充電の終わったオーパーツは、今夜12時までに東京タワーに運ぶ手筈になっていたとの事。
「魔族を裏切れば殺されるに決まっとるし、自首しても下手をすれば死刑になるやも知れんしな…。
わしも途中から抜けるに抜けられなくなってたんや…。」

語り終えると、神田呑社長は深く息を吐き、憑き物の落ちたような顔になった。
すぐに恐れ入ってしまったのは、元々魔族との付き合いに嫌気でも指していたのかもしれない。

ところで、ヘルゴティスやミュルミドン達はどこに行ったのだろう?
室外で静かに待機でもいるのだろうか。
いや、大人しくしていれば良いのだが。全く。

254:アナスタシヤ ◆1D.Vistars
10/02/28 23:15:36 0
『アナスタシヤ…アリアリアリアリ…こ、攻撃!攻撃!敵よ!』
「イエス・攻撃目標・蟻型人間・標的数・13」

突き出す両腕の中ほどに黒い光沢。
機械人形の腕部から潜望鏡の如く現れた銃身は、威嚇や警告の一つも無く、けたたましい音を上げて火を吹いた。
銃撃の反動で金の前髪が何度も揺れる。
ばら撒かれた弾丸は、床を柱を天井を削って弾痕を刻み、残りはミュルミドン達の強靭な体皮に突き刺さった。
床のタイルに蟻人間たちの透明な体液が流れ、花火の煙にも似た硝煙臭がフロアの空気に混じってゆく。
出会いがしらの奇襲で幾匹かの蟻人間が倒れると、残るミュルミドン達が一斉に身構える。

『敵が出現したアリ!』
『排除するでアリます!』
当然だが、問答無用の攻撃はミュルミドンたちに敵意を抱かせるには充分だったようだ。
彼らは整然と、かつ迅速に十字型に隊列を組む。

『良いか有山? 我々はインペリアルクロスという陣形で戦うアリ。
防御力の高い有村が後衛、両脇を有間と有藤が固めるでアリ。
お前は私の前に立つアリ。お前のポジションが一番危険でアリ。覚悟して戦うアリよ。』
眼前で仲間を倒されたにも関わらず、蟻人間たちは畏れる様子も無く毅然とした統率の元に襲いかかってきた。

再銃撃は肉の壁と化した有山を即座に沈めるも、直後に勢い良く金属を叩く衝撃音。
アナスタシヤは、有山の背後に控えていた黒いミュルミドンの警棒の一撃を右手で受けていた。
さらにその横から噛みつかんと、首を伸ばしてきた赤みを帯びたミュルミドンの頸椎を左手で締め上げる。
しかし、三体目のミュルミドンの攻撃は防げない。
噛みつかれたアナスタシヤの右腕に二つの孔が開いた。

『右腕・小規模破損・損壊率2%』
アナスタシヤが正面を蹴り上げると、ミュルミドンが体勢を崩して数歩退く。
左腕の銃が音を立てて、赤いミュルミドンを吹っ飛ばす。
自由になった左腕が、今だ右腕に噛みついたままのミュルミドンの頭を握り潰した。

『右腕・損壊率5%・右腕装備・使用不可・デス』
背後の織羽はピクリとも動かない。
初めての戦闘らしい戦闘に竦んだかのように。


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