GS美神世界の、三流GSのスレat CHARANETA2
GS美神世界の、三流GSのスレ - 暇つぶし2ch168:牧街 ◆GwyfLokZWa7/
10/01/03 19:48:15 0
牧街を無残な姿に変え、惣介を返り討ちにした鬼モドキはゆっくりと立ち上がると、藁人形を横に投げ捨て、再び大狸と妖狐へと向かっていく
最早、鬼モドキの進撃を防ぐ物は何も無い
勝利を確信した鬼モドキが拳を振り上げ、妖狐の背に拳を叩き込もうとした

その時

「ま”きぃ”がい・D・クラァあ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”ッシュ!!」
渾身の力を篭めた神通杖の一撃が、鬼モドキの頭に炸裂した
「い…行かせ…ねぇぞ!」
牧街だ
牧街が口と頭部から血を滴らせながらも必死に鬼モドキに攻撃を仕掛けたのだ
どうやらカフェのポーションが効を成したようである
『グルルルル…』
しかし、元気な時でも親父幽霊を消滅させる事ができないその一撃は、鬼モドキにとってはさしたるダメージではない
鬼モドキは心底不快気な表情でゆっくりと牧街の方を振り返ると、牧街がビビる間もなく右ストレートを叩き込んだ
拳は牧街が持っていた神通杖を圧し折り、そのまま牧街の胸にもろに炸裂する
「ごば!?」
再び口から吐血し、跳ね上げられる牧街
そのまま背中から地面にノックアウトさせられてしまう
『グオーゥン!!』
しかし攻撃の手をやめない鬼モドキは、更に勢いよく牧街の腹を踏みつけた
「げばらっ」
既に白目をむいていた牧街が再度吐血し、べきべきと嫌な音が響く
『フー…』
今度こそ完全に牧街が動かなくなった事を確認した鬼モドキは、牧街の頭を持って掴み上げると、勢いよく片手で牧街をカフェ達へ投げつけた

169:牧街 ◆GwyfLokZWa7/
10/01/03 19:51:00 0
>>167
はいさ、わかりました
無理せずご自分のペースで書いてください
待っています

170:カフェ ◆YNbEhcUF/I
10/01/05 01:00:42 0
>167
呪いの人形が逆効果になって場はあっという間にトマト祭りになった。
「あばばばばばば! どどどどどうする!?」
「まさか藁人形を盾にする知能がありゅとは……!」

>168
「牧街殿――!」
牧街が痛めつけられるのを目の前に成す術もなく右往左往する。
その横で師範は後ろ宙返りを試みたり、一生懸命試行錯誤をしているようだった。
「あーでもないこーでもない」
「師匠、何をやっておるのだ!」
「なにしろ長年この姿で人間界に適応したもので化け方をど忘れしたにゃ」
「師匠――!」
そして猛スピードで飛んでくる牧街と衝突すると思われたその時!
招き猫風の巨大な猫になった師範が牧街を受け止めていた!
「思い出したにゃ!」
おそらくこれが本来の姿だろうか。
招き猫の姿をした師範は牧街を地面に置き、招くような動作をすると、鬼モドキが近づいてきた。
見た目に違わず相手を寄せ付ける能力があるようだ!
「必殺! 猫に小判!!」
師範は小判の形をした霊力弾を高速で打ち出しはじめた!

【>167
規制ご愁傷様です。焦らなくていいですからね。
でも年明けたのでもうすぐ解除されたらいいなあと希望的観測】

171:惣介 ◆Sl.qrwsKik
10/01/07 18:53:19 0
痛みは無い。
棍棒で殴ったダメージが呪いとなって跳ね返って来たのなら、只では済まないはずなんだけど…?
惣介が、こわごわ目を開ける。

――やっぱり、トマト祭りは開催されていた。

タヌキの叩きから、どろりとした真っ赤な液体が溢れて床を濡らしている。
数秒前まで惣介が居た場所に転がっているのは、潰れたトマトとしか比喩のできない肉塊。
惣介が“思いついた何か”へと変化するより、棍棒が振り下ろされる方が速かったのだ。
いや…例え変化が間に合ったとしても棍棒そのものでなく呪いの転移によるダメージなので、
無惨なトマト祭りの開催を避ける事は難しかったろう。
決して、大宇宙の大いなる意思が“次の締め切りまでに解決策を思いつけばいいよね”
と思って何も考えずにピンチに陥らせたものの、
結局何も思いつかないまま締め切りが迫って来たわけでは無い…ない…ない…(エコー)。

元小狸の肉塊からは、ほわんほわんと靄のようなものが噴き出て洞窟の宙空を漂っている。
それは寄り集まって生前の姿を思い出すように小狸の形を成した。
靄は惣介の霊魂である。
「うわぁ…僕も潰れたトマトみたいになってる…アレに変化して防御しようと思ったのに…。
アレ? アレって何だっけ…僕、何に変化しようとしたんだろう…?」
惣介は“思いついた何か”への変化を死のショックで忘れてしまったようだ。
一瞬で全てを解決するような絶妙なアイデアだったのに、披露できないのが残念である。

『ヌガアァァ!』
湿った洞窟の空気を震わせる妖魔の咆哮。
惣介が死んでいる間にも、熾烈な戦いは続いていた。
師範の掃射する小判形霊力弾は鬼モドキに突き刺さり、巌の皮膚を破って肉を削るものの、
致命的なダメージを与えるには至らない。
しかし、鬱陶しいのは間違いないようで、封印を続ける大狸と妖孤から標的を師範に変更し、
まずは霊力弾の攻撃を止めさせようと、腰を落として師範に突進してきた!

「ああっ!皆さんが危ない! でも僕、死んじゃったし…もうどうすることも…。
そうだ!幽霊になったのなら、乗り移る事が出来るかも…!」
鬼モドキの突進に追いつくためにに宙を駆けるが、霊体での動きは水を掻くようにもどかしい。
何とか鬼モドキの背中に両手を付けると、惣介はそのままズブスブと鬼モドキの中に入り込む。
そして妖魔の体の中で、核となっている霊魂らしき力の塊を掴むと力一杯踏ん張った。
『ヌ………ガ?』
突然の精神的攻撃に戸惑ったのか、鬼モドキが突進を止める。
「右上げて左上げて、右下げてつつも左下げないで、右を上げてスクワット!」
と、突然ぎこちなく腕を上げ下げしたりスクワットを始める鬼モドキ。
「どうやら…憑依に成功したようですね…皆さん僕です…惣介です。
僕は死んでしまいましたが、今は霊魂の状態になって鬼モドキに乗り移りっています。
でも…長くは持ちそうにありません…僕が動きを封じている今のうちに…止めを!」

172:牧街 ◆GwyfLokZWa7/
10/01/08 19:16:44 0
突然の惣介の憑依に自分の体の制御が利かなくなった鬼モドキは、わけもわからず混乱していたが
やがてとち狂ってボコボコと自分の頭を叩き始めた
『グワァアアアグワァアアアグワァアアアアアアア』
隙だらけ+自滅で、とどめを刺すなら今である



「で…でも……今攻撃したら惣介さんが…」
惣介が死んでるんだからコイツが死んでいないとおかしいはずの牧街が、倒れたまま顔だけ上げて呟いた
恐るべき耐久力と防御力に驚いている場合ではない
牧街の言うとおり、このまま鬼モドキを倒せば、惣介の魂まで致命的なダメージを負いかねないのだ
即ち、消滅する可能性がある
しかし、結界完成までまだ少し時間がある今、鬼モドキを倒さねば山は大変な事になってしまう

世界の平和でもなければ、日本の未来でもない、たかが田舎の人がほとんど入らない様な山の未来など、地球の、いや、日本の大多数の人にとって、どうでもいい事だ
狸や狐達だって、別の山に移って生きていく事もできるだろう
そこまで命かける程の物か、正直牧街には理解できない
「やめろ!惣介さん!やめ…」
力の限り惣介を制止し、牧街は意識を失ってしまった
流石にダメージは大きいらしい

173:カフェ ◆YNbEhcUF/I
10/01/09 23:50:25 0
>171-172
>でも…長くは持ちそうにありません…僕が動きを封じている今のうちに…止めを!」
「ぼくちんを使うにゃ!」
師範はそう言って“8t”と書かれた巨大ハンマーに化けた。
しかしカフェはそれを取ろうとしない。
>「できるわけなかろう!」
理由は重すぎて無理というのもあるがそれだけではない。
>「やめろ!惣介さん!やめ…」
「もう一回死んでるのに二回も死んで……その上消滅までしたらどうする!
もういいではないか……皆で逃げようぞ! 何か寄り代を調達して他の場所で暮らせば良い!」
「そんな事言っちゃダメ!」
少女の凛とした声が響いた。
なんと、当スレの最初あたりにある廃校編で登場した少女の霊がいる!
「僕は惣介君の気持ちよく分かるよ! 貴方達にだって守りたい場所があるでしょ!?」
そう言ったのは、思い出の学校を守るために悪霊化して暴れていた少女の兄の霊!
実際には校内に埋めた黒歴史ノートが発掘される恐怖のためだったのだが、一応思い出の学校を守るためには違いない。(>45-47参照)
なぜか暴れていた時より若返って少年の姿での登場である。
「お主ら、成仏したのではなかったのか!?」
「黄泉の門が開いてるからゲスト出演しちゃった!
そんな事よりそのハンマー裏側に“退魔専用”って書いてあるよ!」
「何!? そうだったのか!」
急いでハンマーを手に取るカフェ。が、もちろんこのままでは持ちあがるはずはない。
なぜ8tかというと、世の中そんなに甘くはないので便利な武器はそう簡単には扱えないのだ。
8tといっても実際の重さではなく莫大な霊力が必要なことの例えかもしれない。
どっちにしろ当然持ちあがらずに万事休す……はずだった。だがしかし!
「僕が力を貸すよ!」
兄の霊がカフェに憑依する! もちろんそれだけでは8tハンマーを持ち上げるには到底足りない。
そこに妹の呪文が決め手となるのだ!
「右は碧眼左は緑眼、誰もがうらやむ美貌と惑星を3秒で一周する俊足の持ち主
人ならざる者の声を聞き、聖なる力で魔を滅す! その名は……デモンスレイヤー!」
(うわぁああああああああ!!)
黒歴史ノートの一節を暗唱された兄の霊が、絶叫しながら瞬間的にありえない霊力を発する。
「うりゃああああああああ!!」
カフェは、黒歴史ノートを暗唱された者特有の気迫を放ちながら鬼モドキに突進し、渾身の一撃を放った!
魔だけを滅する8tハンマーの一撃が炸裂する!

174:惣介 ◆Sl.qrwsKik
10/01/10 16:42:00 0
>カフェ「うりゃああああああああ!!」
「うわぁぁぁっ!」
退魔専用らしいとのことだけど、やっぱり巨大なハンマーが迫ってくるのは怖い。
思わず悲鳴の一つも上げようというものだ。
退魔の鉄槌が鬼モドキを圧殺するべく振り下ろされ、肉を殴打する衝突音と、続いて石を砕く破砕音が響く。
『グオォォォォ!』
舞い上がる砂埃の中で鬼モドキの断末魔が上がる。

洞窟に濛々と舞う粉塵が晴れると――そこには惣介が立っていた。
いや、正確には幽霊状態で足が無いので浮いていた。
師範がハンマー変化を解くと、下で鬼モドキが紙切れのようにペシャンコになっている。
『まるで式神みたいにペラペラなったにゃ。』
「ついにやりましたね! 今度はエンディングテーマが聞こえてきませんけど。」
鬼モドキが倒れると封印の大岩が妖しく光り始め、大狸の表情が鬼気迫る。
『いかん…! 岩の向こうから奴の本体が来るぞ!』
「ええっ! そんな!」
『………というのは、もちろんウソじゃ。 黄泉封じの結界構築には成功しておる。』

ツッコミ待ちの大狸だが、もはや惣介にそんなものを入れる気力は無い。
むしろ脱力のあまり、体がちょっと薄くなっているくらいだ。
『惣介よ、少し見んうちに体が薄くなったのぅ…。』
「ええ…実はきっき死んじゃったんです…。」
言葉にすると改めて死んだ事を実感してしまう。
足の裏に地面を感じないのが、ひどく心許ない。
鬼モドキを倒した一時の高揚感は波が引くように去り、今はどこにもなかった。

「………奇跡が起こって生き返ったりしませんよね?」
そんな事は起こらないと百も承知しているのに口に出す。
大狸は、かろうじて"わしがディープな人工呼吸をすれば生き返るかもしれん"というボケを呑みこんだ。
さすがにこの状況では、誰もツッコミを入れないだろうと思って自重したのだ。
仕方がない…ディープな人工呼吸は後で牧街君にするとしようかの…そんな事を考えつつ。
死んでいないのなら、ディープな人工呼吸と化け狸秘伝の膏薬で牧街の蘇生は充分に可能であろう。

『うーむ…反魂の術は存在するともしないとも言われる秘術中の秘術。
術が存在したとしても使える術者が今の時代にいるかどうか………さすがに生き返るのは無理じゃの。
巫蠱術を用いる術者ならば、使役霊として現世に留める事は出来ようが…。』
「そうですかぁ………やっぱりそうですよね。」
『良かったら、貴方も私たちと一緒に成仏しませんか?』
『一緒に黄泉ライフ満喫しようぜっ!』
廃校編で登場した霊たちが慰めの言葉を掛ける。
「うーん…成仏はいつでもできると思うし、もうちょっと浮遊霊でいたいです。
鬼モドキみたいなのがいっぱいいたらやだし…。」
と、惣介は若干の黄泉生活への不安から幽霊たちに丁重に断りを入れた。

175:牧街 ◆GwyfLokZWa7/
10/01/10 22:53:58 0
「ふははははははははーーーはっはっはっはっは、これで終わりか!悪霊共ぉおおおおおおおおおお」
無数の悪霊老婆の残骸の上で、片手に機関銃を持ち、もう片手に日本刀を持った真っ白い胴着姿の恐山師範が高らかに叫んだ
その周囲では、一緒に戦っていた狸や狐や猫やオタクが多少引きながら唖然としている
「あ…悪魔だ、連邦軍の白い悪魔だ」
「いや、武器がマシンガンだからブルーディスティニーだろ…」
完全武装の恐山師範の圧倒的強さを見せ付けられたオタ等がその強さをお台場に像が建った機動戦士と被らせたその時
『ゲゲーーー!!』
『ギルルルルルル』
不気味なうめき声と共に、歩通ノ山から蝙蝠の羽を生やし、ヤギの様な角を生やした怪物が3匹飛んできた
「あ!新手だ!」
「レッサーデーモンだ!一匹で騎士団も全滅させる奴だ!」
現れた怪物に、オタ達が口々に叫ぶ
『グガーーーー!』
『ギギュオーーーーー!』
すさまじい覇気を放ちながら雄叫びを上げるレッサーデーモン
その余りの迫力に、狐や狸達は思わず後ろに下がってしまい、恐山師範の額にも一筋の汗が流れる
「よし!!」
やがて何を思ったか恐山師範は一匹の狸の後ろに回り込む
「な?何をするんですか?」
「ちょっっっとくすぐったいぞ」
「へ?ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアいてぇでぶっ」
そして何を思ったか狸の背中を思いっきり握り絞めた
余りの握力に悲鳴を上げる狸、その姿が徐々に変化し、巨大な剣へと変わる
「これぞ東洋極意、不愛成亜龍苦雷怒・武武武無礼度!」
狸が無理矢理変形させられた剣を構え、不敵な笑みを浮かべながら言う師範
その言葉に、妙に濃い顔をしたオタが反応する
「不愛成亜龍苦雷怒、聞いた事があるぞ!」
「何ー!知っているのか?寺井!」
「うむっ、不愛成亜龍苦雷怒、それは東洋に伝わる奥義の一つで…」
「あ!怪物達の様子が!」
濃い顔のオタク、寺井が師範の出した技を熱く語ろうとしたその時、レッサーデーモンと老婆達が突如透過し始め、あっという間に消えてしまった
双神山連合軍はほんの少しの間呆然としていたが、それを結界の完成だと悟り、大歓声を上げる
ただし、自分の知識を存分に披露できると活き活きしていた所を肩透かしを食らった寺井と、「早く戻してくださいよ~」と嘆く狸が変化した大剣を手に煮え切らない表情をした師範を除いて

176:牧街 ◆GwyfLokZWa7/
10/01/10 22:55:02 0
「やぁーぁやぁやぁ皆さん、おめでとう、どうやら鎮圧できたようですな、うんうん良かったおめでとう」
封印が完成し、惣介が自らの死を自覚して、場がしんみりと終結しようとした、その時
洞窟の中に、謎の声が響き渡った
声がした方を向くと、何と先程まで瀕死の重傷で意識を失っていたはずの牧街が立ち上がり、両手を広げて気取ったポーズをとっている
「あぁ、僕はこの事件の黒幕ですよ。ちょっとお体をお借りしているんですはいはい」
驚く一同に、牧街は牧街ではない人物の声でそういうと、愉快そうに微笑んでみせた
その言葉に、GSや惣介等が反応するより早く、正体不明の重圧が牧街の体から発され、カフェはもちろん、幽霊の惣介や兄妹、そしてカフェの師匠や化狸、妖狐までもを吹き飛ばし、洞窟の壁に強い力だ押し付け動けなくする
「あ、すいません、僕、五月蝿いの嫌いなんでちょっと黙って聞いてもらいますね」
すさまじい重圧で動けず、喋れずにいる一同に、体からすさまじい魔力を放出しつつ、やはり愉快そうに言う牧街(を動かしている何か)
その言葉には、嘲笑の色が含まれている
「じゃー、とりあえず順をおって話しますね。まず、今回僕があっちこっちの不完全な封印や未熟な封印をぶち壊して回っていた件から
これはね、皆も知っている例の事件で…あーそうか、あの事件はこっちじゃテロって事になっているから知らないね、君達は
とにかく大きな事件のせいで今この世界のデタントが崩壊して、白い方に傾いているんだよ」
この「例の事件」とか「大きな事件」と言われているのは、ある事情で世界中に大量の悪霊が出現した大事件の事で
世界を滅ぼせるだけの核ミサイルが消失して悪用されそうになったりととんでもないGS美神世界最大の大事件の事なのだ
その原因や真相は、GS美神本編を読んでもらいたい(読まなくても今後の進行には影響ありません)
「それで、僕は世の中をちょっと黒い方に傾けようとこうして努力してるってわけ
まぁ、魔族の上は何千何万年かかけて緩やかに元に戻したいんだろうけど、僕ちょっとそういうの待てないタチで、ね。早くバランス戻したいじゃない」
そう言って、クスクスと笑う牧街(の中の魔族)
「でも僕の他にも何か霊道を操作して世界を黒い方に傾けようとしてた奴もいた見たいだし、世界を黒い方へ少し傾けようと頑張っている奴、結構いるみたいだよ
と、話がそれたね、それで、僕がここに現れた理由だけど」
牧街の線目がゆっくりと大きく見開かれ、唇が大きく釣り上がる
「君達に…」
言いようの無い威圧感が魔族から湧き上がり、そして

「僕の宣伝をして欲しいんだよ」

あっさり消えて、牧街も線目に戻った
「君達が最初に今回の事件を鎮圧したからさ、そんな君達に僕がこれからガンガン世界を黒い方へ傾ける種を撒くって事を大勢の人々に知らせて欲しいんだ
ネットで広めて構わない、新聞なんかに載ったら最高だな
とにかく、これからもどんどんおっかない事件が起こる旨を知らせておくれよ?皆が怖がった方が、世界、黒い方に傾くから、さ」
魔族がそれだけ言うと、カフェ等を押さえつけていた重圧はふっと消え、牧街も糸が切れた人形の様にどさりとその場に倒れ付した

177:カフェ ◆YNbEhcUF/I
10/01/13 00:32:01 0
>174
「やったぞ――!」
「やったにゃ――!」
カフェと師範が手を取り合ってくるくる回る。

が、惣介が死んでしまった事を思い出し場はにわかにしんみりする。
>「うーん…成仏はいつでもできると思うし、もうちょっと浮遊霊でいたいです。
鬼モドキみたいなのがいっぱいいたらやだし…。」
現世に留まることを希望する惣介に、師範は言った。
「馬鹿弟子が変なフィギュアを出したせいでこんなことになってすまにゃかった。
憑依用の寄り代として秋葉原の職人に特性フィギュアを作らせるから勘弁してほしいにゃ。
本物そっくり、形態変化にも対応するにゃ」

「おっと、こっちの治療もせねばな」
大狸と師範は牧街の治療をしようと歩み寄ったその時。

>176
>「やぁーぁやぁやぁ皆さん、おめでとう、どうやら鎮圧できたようですな、うんうん良かったおめでとう」
「牧街殿……!? いや、違う!」
~~中略~~
>とにかく、これからもどんどんおっかない事件が起こる旨を知らせておくれよ?皆が怖がった方が、世界、黒い方に傾くから、さ」
「ちょ、おま……!」
魔族は消え、元通りになった牧街が倒れる。
「大変じゃ……早く皆に知らせなければ! だが知らせたらアイツの思う壺ではないか!
やはり上層部だけに知らせて世間一般には隠蔽しておくべきか!?」
「話は後じゃ!今は手当を!」
「にゃ!」
何はともあれ、牧街には大狸によるディープな治療と、“癒される”という噂の師範による介抱(>85参照)が施された。

178:惣介 ◆Sl.qrwsKik
10/01/13 19:34:16 0
カフェの師範から特性フィギュアの話を聞く。
「いえ、気にしなくても良いですよ。元々僕たちの山の問題だったわけですし。
カフェさんや師範が居なければ、もっとひどい事になっていたかも知れませんから。
それにこの辺りには交通事故で死んだ狸の浮遊霊も多いですから、浮遊霊ライフも全然心配無いです。」
と、努めて明るく言った。
親切に狐退治の頼みを聞いてくれたカフェや師範の所為にはしたくなかったし、
実際にも鬼モドキに油断した自分の所為であるのだから。

「牧街さん…?」
異変は、大狸と師範が牧街の治療に向かった時に起こった。
様子が一変した牧街はどこにも焦点の合わない、それでいて高みから全てを見通すような瞳で周囲を一瞥し、
高らかに神族側に傾いた天秤を魔族側に傾けるとの宣言を行うと気配を消した。
「牧街さん…目が開けられたんですね…ってこれはそんな呑気な事を言ってる場合じゃないですよ!」

『ふぅむ…それにしてもこの度の事件は、南蛮妖怪が裏で糸を引いておったか。
しかし黒いのが何だのデタントが何だのと、まるでむずがる赤ん坊のような奴だのー。
とは言え、わしらも棲みかを壊されてはかなわんし、あやつが事件を起こす前に混乱して自滅するなど御免御免。
ここらで日本妖怪たちも一致団結して対策を取る必要がありそうじゃな。』
『まったく…私のシマ(縄張り)を荒らすなんて良い度胸です。』
何やら意気投合し始める大狸と妖狐。
共通の敵が現れると、今までいがみ合っていた者が協力するのは少年誌のお約束である。
『まずは各地の霊山や霊地の者たちに連絡を送らねばならんかのー?』
「じゃあ、とりあえず双神山に戻りましょう。」

牧街の治療を終えて洞窟を出ると、びゅっと吹いた山風に体を流された。
どうやら幽霊でも風に流されるらしい。
麓近くに戻ると車の窓から猫バスの運転手が顔を出す。
『無事に終わったようだね。さあ乗った乗った。』
そのままバスに乗って双神山に戻ると、恐山師範とオタク連合軍が出迎えた。
「良かった…こっちも無事だったみたいですね。」

合流早々に大狸と妖狐、恐山師範と秋葉原師範の四者は話し合いを始める。
『此の度の怪異の原因は、秤を傾けんとする南蛮妖怪の仕業じゃった。』
『要するに魔族にゃ。』
『人間の方々にも魔族への対策をお願いできますか?』
『それは無論の事ではあるが、魔族が相手となると一筋縄ではいかんな。』

何やら喧々諤々と難しい話し合いは続き………ひとしきり語り終えると会議も終わった。
師範たちは各々魔族への対策を取りに本拠に戻るべく、カサッカやら猫バスやらに乗り込む。
「僕は今の状態では、まだ霊山を長く離れるのは難しそうですし、皆さんとはここでお別れですね…。
一日ぐらいの短い間でしたけど、皆さんには本当にお世話になりました…ありがとうございます。
あ…件の特性フィギュアはぜひともお願いしたいです。後日幽霊の体に馴れた頃に受け取りに行きますね。」
惣介はぺこりとお辞儀すると、手を振って去っていくGSたちを見送った。

179:李珠 ◆rdfEGE/BGM
10/01/13 19:42:43 0
【むむむ…どうやら体力の限界が…来てしまったようです…。
最近はモニターに向かう事、数時間も中々言葉が出てこない体たらく。
勝手ながら次章への参加は、中途からと成りそうです…相済みません…ぐふっ。】


――後日、都内某所――

「私を有らぬ罪で捕縛するなど、今の政は腐敗の極み…。
やはり一度滅ぼす必要がありますね…そして新たなる王朝を開かねばなりません…。」
背から陽炎のような陰気を立ち上らせた道士が一人、秋葉原の雑踏を歩く。
数日に及ぶ事情聴取を終えてテリトリーに戻った李珠である。
その李珠の前には、ふわふわと迷うように靄が浮いていた。
靄の正体は動物霊…それも都内では滅多に見かける事の無い狸の幽霊のようだ。
『特性フィギュアが完成したって聞いたけど、道に迷ったのかなあ…カフェさんの店はどこだったっけ?
一度来たから大丈夫だと思ったんだけどなあ…でも幽霊だから地図は持てないし…。』

「これは…釈放早々にこの大都会で百魅(妖精や妖怪の意)に遭遇するとは幸先が良いようですね…。
しかも、見た所飼い主のいない野良の動物霊。
私が捕まえたとて、どこからも文句は出ないでしょう…。
ならば今こそ中国渡来にして日本で進化した蠱術法"歩卦門"を披露する時………迷魂捕縛…!」

りしゅは きゅうこんづつを つかった! 
『うわぁっ!体が吸い込まれる…誰か助けて!』

やったー! バケダヌキを つかまえたぞ!
「バケダヌキ ゲットだぜ…ですね…フフ…。」

中に惣介の霊魂を封じた吸魂筒を拾うと李珠は雑踏の中に消えた。

180:カフェ ◆YNbEhcUF/I
10/01/15 00:20:39 0
>178
「あ…件の特性フィギュアはぜひともお願いしたいです。後日幽霊の体に馴れた頃に受け取りに行きますね。」
「待ってるから必ず来るにゃ~!」

――後日
>179
カフェの事務所には精巧な狸の置物が鎮座していた。
そしてカフェと、ここに入り浸るのが日課の師範が例によって暇を持て余している。
いや、世界の危機なのだから暇ではいけないのだが具体的に何をしたらいいのか分からないのだ。
暇じゃなくて徒然とでも言っておこう。
「師匠、惣介殿はまだかのう」
「まだかにゃあ」

そして、金の茶釜も鎮座していた。
色々あってすっかり忘れていたカフェの代わりに、師範がしっかり持ち帰っていたのだった。
「もしかしたら話のネタになるかもしれないからにゃ」
「?」

【今編もゴールまで行きつきましたね~。壮大な話になってきてwktk
>李珠さん
了解です。重要ポジションをお疲れさま&GJでした。
無理しない程度にいつでも気が向いた時に復帰してくださいね!】

181:牧街 ◆GwyfLokZWa7/
10/01/17 09:59:09 0
双神山の事件から数日
各地で破壊された封印も徐々に元通りになっていく中、どこかからジープで道場に戻ってきた恐山師範を、数名の弟子達が道場の門前で出迎えていた
「師範、ご報告作業、お疲れ様です」
「うむ」
そういって頭を下げる弟子達に、ジープから降りてすぐの場所で頷く恐山師範
彼はここ数日、GS協会を初めとした、政府主要機関や、オカルトGメン、ヴァチカンなどの関係各所に今回の事件を報告するため、各地を飛び回っていたのだ

双神山の一件で判明した魔族テロリストの起こすテロ行為に対し、GS協会は何ら有効な対応策を講じる事が現時点ではできなかった
それは第一に一部の人間を除き、魔族と人間との力の差が激しすぎる事
第二に、魔族の散発的で、しかもどのような手段で仕掛けてくるかわからない攻撃に、対応する術が無い事があり
結果として「そういった敵が確実にいる事を伝え、一般市民には内密に警戒するよう各地のGS達に呼びかける」程度しか協会にはできなかった
これでは敵の存在を宣伝し、敵の思う壺のようにも思えるが
何の立ち向かう術の無い一般市民とは違い、そういった物が現れた場合戦う事になるGS達には、あらかじめ伝えておかなければ、警戒すべきところで警戒せずにいらぬ被害を出す事もありかねない

幸いにもテロリストが直接地上に現れて暴れる事は神族や魔族上層部の監視があるためまずありえないし
神、魔族もテロリストの鎮圧に力を注いでいるらしいので、魔族側にデタントが傾きすぎる程の大事件はまず起こりえないだろう
しかし、魔族によるテロ行為を野放しにしておけば、大きな被害が出る事はまず間違いない
そして、恐らく多種多様な魔族がゲリラ的に事件を起こすため、神族や魔族上層部が一気に事件の首謀者を叩き潰す事もできないだろうはずなのでこの事態が長く続く事もまた、間違いない

要するに、これまでベテランや凄腕達が行ってきた除霊に、三流GS達が遭遇しやすくなってしまったのだ
たとえ不況でも葬儀屋と兵隊と警察特殊部隊とGSは儲かったらいけないので、これは由々しき事態である

「しかし、あれから悪霊の数もそこそこ増えて、前回の散財を取り戻せそうだな」
「そうですね、この調子で、ばしばしやっていきたい物です」
「うむ」

……由々しき事態なんだってば

182:牧街 ◆GwyfLokZWa7/
10/01/17 10:29:28 0
「すみません、牧街です」
カフェの事務所の扉をノックして、惣介の代わりに牧街がやってきた
何のようだろうと招き入れたカフェ等に、牧街は頭を下げる
「先日はどうもありがとうございました、無事、後遺症も残らず退院できたので、その旨報告しておこうと思いまして、えぇ」
そう言って、カフェの師匠に菓子折りを渡す牧街
幸い意識を失っていたので何をされたのかわからないが、大狸のディープな治療と、カフェの師匠の治療を受けた牧街だったが
念のためあの後病院に搬送され、本日まで入院していたのである
常人なら内臓破裂やら何やらでとっくにお陀仏な状況で、幾ら大狸や師匠の治療が良かったからと言って、わずか数日でもう包帯も残っていないほど回復するのはどうかと思うが
まぁ、牧街なんだからそんなもんなのだ(どんなもんやねん)

「で、何故僕ちんの頭を撫でるにゃ?」
「えぇ?あ、すいません失礼しました、えぇ」
菓子折りを渡した後、そのままカフェの師範の頭を撫でる牧街
どうやら意識を失っていたにも関わらず、癒しの技は効いていたようだ

本来人間はアレだけすさまじい目にあえばそれがトラウマになってしばらく悩まされるもんなのだろうが
その辺もカフェの師匠の癒しの技が打ち消してくれているようである

「あ、その茶釜、もって来れたんですね」
ふと、事務所にあった金の茶釜を見て、牧街が軽く驚きの声を上げた
「凄いですね、んな超重たそうなもんをもってあの糞長い石段を降りて来れるなんて…」
そして、へェ~と感心する牧街
あの茶釜を牧街が断った理由
それは別に霊的云々な理由ではない
純金製のでかくて重い茶釜を持って、急な石段を降りて無事に山を降りる自信が無かっただけだった
くだらない理由でスマソ

>>179
何だかストーリーを途中から乗っ取る感じになってしまいまことに申し訳ありません
俺も4~5時間ストーリーが浮かばない事がよくあるので、お気持ちはわからなくはないと多分思います、多分
ですので、無理せず、自分のペースで書いてくださいね

>>180
今回もご参加ありがとうございました
本当に完結できたのは皆さんのおかげです

さて、次章どうしましょう
またカフェさんがストーリー作りますか?

183:カフェ ◆YNbEhcUF/I
10/01/18 00:07:00 0
>182
>「凄いですね、んな超重たそうなもんをもってあの糞長い石段を降りて来れるなんて…」
「いやいや、猫バスがあったからにゃ。そうか、気絶してたから覚えてないんだにゃ」

――――――――――
プレレポート『恐怖!虫歯妖怪対ゴーストスイーパー』
参加者:牧街
歯医者で暴れていた虫歯妖怪を退治した。

第0話 ネカフェ編
参加者:牧街・タロー・(ネカフェのマスター)
ネカフェのマスターの依頼で、ネカフェで暴れていた悪霊を成仏させた。
牧街は報酬として怪しげな壺をもらった。

第1話 GS試験編
参加者:成世・牧街・タロー・神藤
GS免許取得&更新試験が行われました。
魔族の陰謀を打ち破り、GS試験に合格。

第2話 『ツボを抑えれば全てよし!』
参加者:牧街・タロー・(ネカフェのマスター)
怪しげな壺が人を吸い込み始めた。
大騒動の末、壺の妖怪は牧街の師匠によって倒された。

第3話 廃校編
参加者:牧街・タロー・神藤・カフェ
取り壊し間近の廃校で暴れていた悪霊&妖怪を成仏させた。

第4話 アニメの殿堂編
参加者:牧街・カフェ・李珠
没になったアニメの殿堂が妖怪の力によって出来上がってしまい、妖怪が人質をとって立てこもった。
潜入して妖怪たちと対決するが、最終的にアニメの殿堂が復活することになり、妖怪たち満足して消えて行った。

第5話 狸狐編
参加者:牧街・カフェ・惣介
狸と狐のいざこざから始まるが、開いてしまった黄泉の門を協力して閉じる事に発展。
なんとか封印に成功するが、デタントを崩そうとしている魔族の存在が明らかになった。

「今までのエピソードをまとめてみたにゃ。
こうして見るともうかなりの除霊をこなしてるんだにゃあ」
「そんな事よりそういえばまだ茶釜の蓋を開けたことがないのう」
「開けてみるにゃー」
師範は茶釜の蓋を開けた。

【とはいったもののまだ何も考えてません。
とりあえずどんな方向にでももっていけそうでいて意味無くスルーもできるとっかかりを……。
次回までに何か考えますが適当に続けてもらってもOKです。】

184:名無しになりきれ
10/01/18 13:29:31 0
>>183
>デタントを崩そうとしている魔族
デタントが神族側に傾いてるからそれを早く元に戻そうとしている魔族じゃね?(魔族上層部はゆっくり元に戻そうとしてる)

185: ◆rdfEGE/BGM
10/01/19 00:59:55 0
【第五話お疲れ様でした!再チャレンジ制度で戻ってまいりました。
このままROMに入るとFOしそうなので、逃げられないようにまずは第六話目のゲストキャラ投下を。
本格参入は、もう少し後になるかもですが…。
GSの話なのにまたしてもGS免許持ってないイロモノで御免なさい。
原作も一部しか見ておらず、デタント状態やら何やらの詳細良く分からないのに勢いで書いて御免なさい。
最初は良く?ても書く度に劣化するのは仕様です御免なさい。
だらだら長い割にサプライズが無いのも仕様です御免なさい。
報酬の金の茶釜渡すのスコーンと忘れてて御免なさい。
思わせぶりでも結構何も考えてなくて御免なさい。
ネーミングセンスが厨ニ病なのも誤字脱字が多いのも弱音吐くのも(ry

それと過去ログを呼んできました。
実は悪霊島GS試験開始~廃校編前編は、その時期忙しくて読んでなかったのデス!何という衝撃の事実!
そして牧街「まきがい」さんの事をずっと「まきまち」と読んでいたという明かさなくて良い衝撃の事実第二弾も(ry】

186:藤津木 織羽 ◆Olha/49Xgc
10/01/19 01:02:24 0
S県の山岳地帯で起きた老婆妖怪発生事件の真相が、魔族による霊道操作だった事はGS協会に報告された。
GS免許試験開催時に起きた悪霊発生に魔族が絡んでいる可能性も。

その情報は藤津木グループの総帥、藤津木頼重(ふじつきよりしげ)にも届く。
藤津木グループとは魔法科学に傾倒する研究者、藤津木頼重が半世紀以上前に始めた企業で、
扱うのは古典的な銀の弾丸から始まり、霊視ゴーグルなどのハイテク製品まで多岐に渡る霊的物品の数々。

藤津木がGS達の多様な要望を聞けば必然的に世界各地の怪異の情報も入り、GS協会との密接な繋がりも生まれる。
協会の幹部の中には頼重個人と昵懇の者も少なくなく、
いかにGS協会上層部が情報を封鎖しようと人の口を完全に封じる事は出来ない。
世界中から様々な怪異の情報が藤津木グループの耳にも入るのはそういう事だ。
その藤津木に届く情報には、近年魔族が絡んでいると思われる事件が増えていた。
人の手で魔族退治を図ろうとも、中位以上の魔族ともなれば対抗できるほどの者は余りに少ない。
人間側に魔族と神族のデタント状態の詳細など知る由も無く、
かねてから藤津木グループには魔族に対抗できるだけの武装を開発する事が望まれていた。

藤津木の英知の粋が集まる製造工場が造られたのは、某県…海上埋め立て地帯のコンビナート。
安全の為に利便性を重んじながらも僻地に造られた工場内には、数十名の白衣の男たちが集まっていた。
彼らは、日夜新技術の開発に従事する藤津木の技術者。
その白衣で作られた人の輪の中に一人の老人が居た。
小柄ながらも眼光鋭い彼こそが、一代にして藤津木グループを創り上げた希代の怪人、藤津木頼重。
総帥たる彼がわざわざ僻地の工場を訪れたのは、新たなる退魔武装完成の報告を受けたから。
おそらくは、多大な研究費を注いで作った新製品を視察に来たのであろう。

『対魔族用の機械人形が完成したか。』
頼重が、呪によって強化された耐圧ガラス越しに実験室の中に目を向ける。
四方をぶ厚いコンクリートで固めた無機質な部屋に鎮座するのは、霊体迎撃用ロボット・Vista型。
両の手を水平に上げて無数の太いコードに支えられる様は、まるで磔の聖母。
流れるブロンドに青い眼、白い肌…機械人形は見事なまでに美しさを誇っていた。
但し…野に咲く花では無く、造花の美しさを。

「Vistaが完成したのは本当ですか!お爺様!? 私、エジプトから飛んで来てしまいました!
あ、エジプトと言うのは、南エジプトにあると言う伝説のスフィンクスの発掘を古村教授と一緒に」
『織羽か…相変わらず益体も無い道楽に耽っておるようだな?』
騒々しく入って来たのは頼重の孫、藤津木織羽。
ダークブラウンに染めたカジュアルボブに歳に似合わぬ濃紺のスーツ。
彼女の格好は、どうにも大人びた雰囲気を出そうとして失敗しているという印象を与える。

「道楽なんて…あんまりではありませんか!?
昨年に藤津木が開発した自動追尾チャクラムは、私がオリッサで発掘した呪具を元に作りました!
その前の高感度霊視モニターだって、私がロンドンのオークションで競り落とした魔術書、
“リュゼラーの魔眼”を参考に開発していたはず。
霊力が…無くても…私は充分藤津木の役に立って…ます…!」

187:藤津木 織羽 ◆Olha/49Xgc
10/01/19 01:03:20 0
藤津木織羽は霊的無能力者であった。
祖である頼重を始めとして、高い霊力を有する藤津木の血族の中でも織羽の霊力は最弱であり、
一般人以下の微弱な霊力しか持ち合わせていないのだ。
しかも魔法科学における科学の方面に於いても、別段秀でた能力を有している訳ではない。
織羽は一族の孫世代の中では最年長でありながらも、
将来の期待度や評価では霊的資質に恵まれた弟妹や従兄弟たちに大きく水を開けられていた。

そんな織羽に霊体迎撃用武装ロボット開発の話は、今までとは別の未来への眺望を見せた。
これを巧く扱えれば、弟妹にも…誰にも負けないだけの実績を残せるかもしれない…との。
「お爺様…Vistaには実戦テストが必要なはずですよね?
どうか私にVistaを貸して下さい。私が実戦で使って性能を見ます!」
『僭越ながら織羽様…Vistaは対魔族用の機械人形。使用するのは必然危険な状況となりますが?』
技師の一人が制止した。

その声音に僅かに含まれた嘲弄を敏感に感じ取った織羽の顔に朱が差す。
藤津木織羽は霊能無能力者である事にコンプレックスを持っている。
それを思い知らされるのは我慢がならない。
しかし、その口から激昂の声は放たれなかった。
織羽が口を開いて反論するより前に頼重が要求を聞き入れてしまったからだ。
『フ、まあ良い…織羽よ。持って行きなさい。』
「あ…ありがとうございます。お爺様!」
顔に喜色を浮かべて、差し出がましい事を言い放った技師を勝ち誇ったように睨みつける。

灰色の匣の中で眠れる眺望の女神は、未だ瞳を閉ざしたまま。
「うぇ…何でこんなトップモデルみたいなの作ったの…。さっきの奴らの趣味かしら…?」
『聞こえていますが?』
頼重に対した時とは全く異なる口調で一人ごちた織羽の後ろからは、先程の技師の声。
『ロボットの外観を人に模しているのは、マニピュレーターである人工霊魂を馴染みやすくするため。
霊魂とは浮遊霊などの低級霊か、高位の神霊であるかに関わらず人の似姿に宿り易いのです。
それは人工の霊魂とて同じ理屈。それに…どうせ人型に造るなら美しい造形の方が良いでしょう?』
「ふーん…そう。それでVistaはもう動くの?」
『無論ですとも…今、起動させます。システムオールグリーン――。』

技師がVista駆動の最終作業を始めると、実験室に低い重低音を響かせて眠れる人形が瞳を開く。
『Vista・起動・シマス』
機械人形の口から放たれるのは、高くて硬質な女性の声。
耳障りでは無いものの自然の生物の声とは明らかに異質。
「あ…喋った…。Vista、わたしはこれから貴方の…操縦者…でいいの?になる藤津木織羽よ。
う~ん…それにしてもVistaって名前も味気ないわね…名前の変更とかできるのかな…?」
『マスター・認識・機体名ヲ・変更・致シ・マスカ?』
「そうねぇ…アナスタシヤ…なんてどう? 目覚めた女とか復活した女って意味だけど。」
『了解・機体名変更完了・私ノ名前ハ・アナスタシヤ・デス』
「こっちの受け応えはちゃんと分かってる…のよね? ま、宜しくねアナスタシヤ。」

188:藤津木 織羽 ◆Olha/49Xgc
10/01/19 01:04:06 0
頼重の隣には鮮血色のローブの人物が影の様に佇んでいた。
人に有らざる不自然なまでに深紅の赤髪をなびかせて、紅玉の瞳を妖しく輝かせた男が。
赤い人物は、全体的に真っ赤すぎてかなり怪しかった…のだが、
何十人もの技師たちの誰もが間近の異質に気付かない。

その赤衣の男と頼重とは如何なる術によってか、周囲の誰にも気づかれずに言葉を交わしていた。
『あれは駄目だな…霊力が無ければ、機知も才も無い。ただ温い世界で甘く生きているだけだ。
半分は蝶子の血が入っているとは思えぬ………もう半分の愚かな父に似たか。
それとも生誕の際に双子の妹に全ての霊力を吸い取られたか。
いずれにせよ、まったく生きる価値も無い屑だ…ターンハリ殿も呆れた事であろう?』
『おやおや…頼重翁は実の孫にも随分と手厳しい。
ああ…それとターンハリは半世紀前に会った時の名前だったな。
今は蘇芳紅石(すおうこうせき)と名乗っている。』
『ほぅ…貴方も忙しいようだ。もしや悪霊島の件も蘇芳殿かな?』
『さて、どうだったかな…。 ところで、あの機械人形を無能な孫娘に任せてしまっても良いのかな?
それなりに労力を注いで開発したようだが?』
『実戦テストのサンプルを取るぐらいは、霊力を持たぬ織羽でも充分だろう。
むしろ、死んでもらった所で一向に構わん。
どのみち、あの機械人形もカオス卿の造り出した最高傑作に比べれば鉄屑に等しい代物よ…。』

起動したアナスタシヤの目が淡く輝き、頼重の隣に立つ赤衣の男に向けられる。
『魔族ヲ・感知・シマシタ・マスター・命令ヲ』
「えっ…!?」
『反応・消失・シマシタ』
「大丈夫…なの? いきなりバグ起こしたんじゃないでしょうね?」
眉をひそめて技師に質問を始める織羽。
しばしのやりとりの後、精密なチェックするものの結局異常は見つからず。
「特に異常は無かったみたいだけど…今のは何%かの確率でバグが出るって事?
となると、いざって時の為にアナスタシヤ以外の防御手段も確保したいわね。
戦闘中にいきなり無防備になるってのは避けたいし…。
でも、わたしは霊力が必要な呪具は使えないのよね…。
ん~…ここで考えても仕方ないし、まずは盾でも探しに行きましょっか?
お爺様の前であれだけ大見栄切っといて、今さら藤津木の霊能者貸して下さいなんて言えないし。」

アナスタシアを連れて研究所の外に出た織羽を待つのは、運転手付きの黒いベンツ。
「アナスタシヤ、その車に乗って…って、この長い槍どうやって積むのよ~!」
『マスター・シナバースピア・中折レ式・デス』
工業地域からベンツの気配が完全に消えると、研究所の中では蘇芳と名乗った赤衣の男が苦笑する。
『俺の隠身を感知しかけるとはあの鉄屑も中々やる…。
どうやら、頼重翁に人工霊魂創造の技術を渡した甲斐もあったようだな。
あの無能な孫娘には、俺が実戦の機会を与えようではないか。
丁度、白い駒に埋め尽くされた盤面を黒に塗り戻さんとする指し手に心当たりがある。
白でも黒でも無い、灰色が駒と成りうるか………見極めさせてもらおう。』

189:藤津木 織羽 ◆Olha/49Xgc
10/01/19 01:04:53 0
【名前】藤津木 織羽(ふじつき おりは)
【年齢】17
【体格】中肉中背
【容姿】濃紺のスーツ
【属性】ディレッタント(好事家)
【霊圧】0.1マイト
【装備】霊的機械人形“アナスタシヤ”
【趣味】霊的な物品の発掘と収集
【特殊能力】個人資産数億
【備考】富豪の孫娘で霊的物品のコレクター。自ら世界を飛び回って遺跡や霊的な場所を巡って収集を行う。
行動的というより無謀で危険に巻き込まれることもしばしば。


【名前】アナスタシヤ・Vista
【年齢】本日ロールアウト
【体格】長身に豊かな胸の機体フォルム
【容姿】白いコート、ロシア帽、マント
【属性】自動人形
【霊圧】期待値70~90マイト
【装備】辰砂槍/クラウドバスター/内蔵マシンガン/強化金属ネット/特殊スプレー
【特殊能力】霊体感知センサー
【備考】除霊の際にパートナーが居れば…こんな事を思った事はありませんか?
そんな貴方に、今日は藤津木グループが開発した霊体迎撃用ロボットVistaを紹介します。
絶対防御・多機能をコンセプトに重装備を施したVistaは、退魔武装による直接~遠距離攻撃から、
センサーによる悪霊の探知、さらには搭載小型モニターでの地デジの視聴まで可能と驚きの性能。
攻撃、防御、探索から娯楽まで…Vistaは貴方のあらゆる生活をサポートします。
眺望の意を持つVistaはその名の通りに人と霊の関係に新たな眺望を見せるでしょう。
さあ貴方も今すぐVistaを購入して快適な除霊ライフの実現を!



【な…何なの…功名心に逸る弱者って設定にPC昇格を狙ってそうなロボ娘。
おまけに頭使わないと死にそうなポジションだっていうのに、
わたしの守護神は、切羽詰まると容赦無く殺しにかかる邪神。
くっ…見える…見えるわ…黄泉平坂に翻る幾つものデッドフラグが…。
それとシナリオは、一応わたしも考えるけど期待はしないでね。】

>184
「あ、ホントだ。
わたしも読み違えてた…。
で、でも白70:黒30ぐらいの状態を一旦50:50にして、
それから白30:黒70ぐらいに崩し直すのが目的かも知れないし!」
『アナスタシヤ・弁明・学習・シマシタ』

190:カフェ ◆YNbEhcUF/I
10/01/22 00:38:17 0
>184
おっと、うっかりしていた! 
ついでに関係個所をウィキペディアから引用

「世界を維持するために魔族は基本的に悪として
神族や人間に負け続けなければならない役割を強制されているため
魔族の中には自分達が虐げられ続けなければならない状態に多かれ少なかれ疑念を持っいる者も多く」
だそうです

>185
ビバ再チャレンジ制度! 今回もよろしく!
―――――
>183  続き
茶釜の蓋を開けても霊が飛び出したり煙が出ておじいさんになったりすることはなかった。
師範は茶釜の中を覗き込みながら意味ありげに言った。
「こっ、これは……!」
果たして入っていたのは秘密のメッセージか宝の地図か!?

191:牧街 ◆GwyfLokZWa7/
10/01/22 22:04:17 0
>>184
ご説明ありがとうございます
自分の説明が足りませんでした
>>185
再参加ありがとーございます
また盛り上げていきませうぜーえぇ
>>190
えぇと…すんません
>>184の方が言うように、デタントは既に白側に傾いていて、それを魔族の上層部は神族や人間に負け続けなければならない兼ね合いから数万数千年かけてゆっくり元に戻下そうとしているのを、テロ魔族達は一気にに戻そうとしているというわけなのです
故に、テロ魔族は魔族正規軍にとっても敵であるわけです
説明がわかりづらくて申し訳ありませんでした
でもここからの展開で、藤津木さんの言うように、50:50を70:30や100:0にしようとする魔族が現れるかもしれませんね


続き

カフェの師匠があけた金の茶釜、その中には……
「俺、お茶菓子買ってきましょうか?」
「牧街君事務所空けといていいのかにゃ?」
「あ、今日師範が大事とって一日休めって言ってたんで」
どんな末恐ろしい物が入っているのかと思われた茶釜の中には、何だか高級な雰囲気がする茶葉が入った茶筒が入っていた
それを見た牧街は、日頃鍛えられているパシリ力で素早く気の利いた事を言う
だが、牧街は気づいていなかった
カフェの師匠にフィギアの引換券貰うのと、茶葉が微妙に霊気を帯びている事に…

一方その頃
「はい、こちら恐山流除霊道場アジア本部でございます、ご用件は何でしょうか?」
鳴り響く恐山流除霊道場の電話を、電話応対係のGS訓練生が勢いよく手に取り、言った
2階の閑古鳥が鳴く牧街GSオフィスと違い、1流GS恐山師範が率いる恐山流除霊道場には日々様々な除霊の依頼が寄せられており
2件もの緊急の出動要請があり、既に恐山師範と主力のGS見習い達は出払っていて
今道場にはGS免許を持ったGSは勿論、悪霊と渡り合うレベルに達しているGS見習いもいなかった
この場合、報酬の山分けする事で大抵暇な牧街を使うのだが、今回はその牧街も退院したばかりで1日の待機期間中にあるため、よっぽどの事で無い限り呼ばれる事はない
「へ?藤津木グループの方ですか!?わかりました、少々お待ちください。……おい!牧街さん呼んで来い!あの秋葉流のとこにいるはずだ!」
…大会社の令嬢からの電話と言うよっぽどの事に、牧街の休養期間は消滅した
いがぐり頭のGS見習いが玄関から飛び出し、すぐ近くの冥土カフェ目指して走っていく

こうして恐らく優秀なGSを呼ぶために道場に電話したのだろう織羽は、ポンコツGSを掴まされる事になるのだった
お茶のせいで牧街が死んでなければ

192:名無しになりきれ
10/01/23 08:14:57 0
もう悪役は嫌でござる
正義の味方をやりたいでござる

193:藤津木 織羽 ◆Olha/49Xgc
10/01/23 19:58:56 0
走行するベンツの中では、ノートパソコンを広げた織羽がキーボードに指を走らせていた。
無線LANでインターネットに繋がったパソコンの液晶画面には、検索の結果が即座に表示される。

インターネット“Guruguru”での『東京 レストラン』の検索結果、約27,400,000件。
「ロイヤルフォレストのチーズレモンカスタードシフォンパイ…これおいしそう…。」
『マスター・探スノ・霊能者・デハ?』
「ちょっ…ちょっとお昼食べるとこ探してただけじゃない…!
人間は貴女と違ってお腹が空くんだから……霊能者なら今探そうと思ってたとこよ…。」
アナスタシヤの質問へ返答する声は何故か小さい。

――再検索。

インターネット“Guruguru”での『GS 除霊』の検索結果、約15,000件。
「唐巣教会…小笠原エミ除霊事務所………今度はそれっぽいのが色々出てきたわね。」
検索で出てきたのは、正常な人間なら一生関わり合う事は無いであろう怪しげなサイトの数々。
今から、この無数の得体の知れないサイトの中から正解を見つけねばならないのだ。頑張れ織羽。
「んー…と、恐山流除霊道場…? 恐山って言ったら有名な霊場じゃない。
ここなら外れクジを引く事もなさそうね…えーと電話番号は…。」
携帯電話を開き、恐山流除霊道場アジア本部の番号を打ち込む。
この選択が正解だったのかどうかは、天のみぞ知る。

「もしもし…そちらは恐山流除霊道場様でしょうか?
私は藤津木グループの者で、藤津木織羽と申します。
お忙しいところ失礼しますが、少々お時間を宜しいですか。
実は仕事の依頼をしたいのですが、御都合の方は如何でしょうか?」
>GS見習い「へ?藤津木グループの方ですか!?わかりました、少々お待ちください―」

受話器の向こうで受付が去って行く気配。
ベンツはすでに東京市内に入り、恐山流除霊道場の方向に向かっている。
「対魔族戦になるなら、その前に実力を測る必要があるわね。
それに除霊シーンってまだ見た事無いし…アナスタシヤ、センサーで都内の霊障を探せる?」
『イエス・マスター・範囲5km・マデ・可能・デス』
アナスタシヤの青い瞳が淡く光を帯びる。
省エネモードから通常モードに移行したアナスタシヤが広域センサーを起動した。
『センサー・起動・南東100m・霊的反応・感知』
「100m…ちょっと混雑してるわね。 あっ…そっか、ゴーグルゴーグル。」
霊能力の無い織羽は、霊視ゴーグルを付けないと霊を見る事が出来ない。
手際良くゴーグルを付けて、アナスタシヤが反応を指示した場所を見る。

そこには、クリーチャーとしか表現しようの無い禍々しい姿の巨体。

ハイテクの霊能アイテムが映したのは――魔物と思しき異形の姿。

194:藤津木 織羽 ◆Olha/49Xgc
10/01/23 20:00:54 0
ショッピングセンター“わけありマート”は商品が安価な店として知られる。
懐の厳しい者たち御用達の店であり、商品の半額割り引きは当たり前。
この値段で買える筈が無い!というような掘り出し物も珍しくはない。
ちなみに商品の流通ルートは、一切の不明である。

折からの不況で、休日ともなれば安売り店はどこも盛況。
この日は、わけありマート駐車場で特撮物のヒーローショーが行われていた事もあって、
駐車場近辺は集まった子どもたちと同伴の親と大きなお友達たちで特に混雑をしていた。

そんな賑わいの中で、悪役怪人が『もう悪役は嫌でござる。正義の味方をやりたいでござる』
などとのたまいながら、ヒーローを打ち倒してしまったら発せられるのは無論、大ブーイング。
『かいじんのバカー!』
『わるものしんじゃえー!』
『ヨガレンジャーたってー!』
『ああ、一旦ピンチに陥らせて逆転する…梅澤監督の常套手段ですね。』
子どもたちの声が、ひたすらに喧しい。

アナスタシヤの霊体感知センサーが捉えた先は、ヒーローショー真っ只中の悪役怪人だった。

「あの着ぐるみの人、何か悪霊が取り憑いてるみたいだけど…。
よりによって何でヒーローショーの怪人に?」
『マスター・怪人・殲滅・シマスカ?』
「待って、貴女の武装じゃ怪人の中の人まで殺しかねないし………まずはGSをこっちに呼びましょ。」

電話の先に人の気配。
出たのは牧街かもしれないし他の人かもしれないが、織羽に受話器の向こうの事情など知る由も無い。
「もしもし、恐山流除霊道場の方でしょうか?
私は藤津木グループの者で、藤津木織羽と申します。
お忙しいところ失礼しますが、除霊をお願いしたいのです。
すぐにわけありマート駐車場までお越しいただけませんか?
場所は――こちらの目印ですが車のナンバーは――」

駐車場に止めた車の中から、かくかくしかじかと説明してGSを待つが、
怪人の独壇場と化したヒーローショーの混乱は野火の様に広がってゆく。

そろそろ、警備員か誰かが止めに入る頃かも知れない。

195:カフェ ◆YNbEhcUF/I
10/01/25 00:15:41 0
>191 >194
「きっと大狸さんがいつか飲もうと思って大事に大事にしまっていたお茶にゃ……!」
カフェはすてーんとひっくり返った。
牧街がお茶菓子を買いに行ったので、カフェは今出てきたお茶を入れようとする。
忘れがちだが喫茶店の娘だからカフェなのである。
そこに、いがぐり頭のGS見習いが飛び込んでくる。
「大変です!」
かくかくしかじか
例によってカフェと師範はヲタク的妄想を繰り広げ始めた。
「大企業の令嬢からの依頼とは……大きな陰謀が絡んでいるに違いないぞ!」
「魔族かもしれないにゃ!」

そうしている間に牧街が帰ってくる。
お茶を飲んでいる場合ではなくなったので、お茶を飲んでどうにかなるのはとりあえず回避された。
「牧街くん、すぐにわけありマートに行くにゃ!」
師範はすぐさま猫タクシーを召喚した。
猫タクシーは案外普通のタクシーの中に結構混ざっているのかもしれない。
そしてなぜかお茶を持って行くつもりらしく、大事そうに鞄にしまった。
猫タクシーの運転手「はいはい、ちょっとかっとばしていくよー」
猫タクシーはわけありマートに向かって疾走する。

196:藤津木 織羽 ◆Olha/49Xgc
10/01/26 22:20:48 0
かくして悪の秘密結社ダグロムの怪人“どくろハムスター”は、ついに宿敵ヨガレッドを打ち倒した!

『おま…何してんだ!? まさか…この前のロケで火薬の量、間違えたの…まだ恨んでるのか!?ぐほっ!』
圧倒的な暴力の前に、成す術も無く倒されるヨガレンジャーたち。
『攘夷でござる殿中でござるそれがしこそ正義の味方なり。』
ステージ上で高らかに己の正義を主張する怪人。
『これ演出じゃ…ないよなぁ。』
『うちの警備会社、怪我した時って労災降りるんでしたっけ?』
ステージの脇で、ただ己の無力を噛みしめる警備員の山村さんと島田さん。
『お終いだぁーーー!俺の初仕事がぁーーー!あぁうぁをあーーーちゃいこふすきーーー!』
苦悩に頭を抱え、有らぬ事を口走るヒーローショーの演出家……et cetera。

混乱の中、牧街やカフェ…GSたちを乗せた猫タクシーがわけありマート駐車場に到着。
電話の際にGSはタクシーで来ると聞いていた織羽は、猫タクの到着にベンツを降りて出迎える。
「悪霊退治を依頼したゴーストスイーパーの方ですか? 私は先程連絡した藤津――」
言い掛けて絶句。
タクシーから降りてきたのは、中学生くらいの年齢のゴスロリ少女に猫耳を付けた小学生男子だったから。

えーと…この人たちがゴーストスイーパー………な、訳ないか。
助手…かしら? と、見せて只の一般人が買い物に来ただけの可能性もあるわね。
それにしても凄い格好…こういうドレスみたいな服ってどこで売ってるのかしら?

…などと逡巡していると、続いて二十歳を少し過ぎたくらいの男性がタクシーから降りてくる。
失礼ながらパッと見、うだつの上がらない風体。有り体に言ってオーラが全く感じられない。

うん、この人も間違い無くGSじゃないわね。

「失礼しました…人違いです。」
織羽は仕事を依頼したGSが、このタクシーには乗っていなかったと確信して踵を返す。
「予定ではもう着くはずなんだけど…アナスタシヤ、霊圧センサーを起動してGSが到着したら教えて。」
『霊圧センサー・起動・範囲5m以内・霊圧70マイト以上・感知』
ベンツから降りたアナスタシヤが牧街とカフェに目を向けた。
『簡易測定・開始・シマス・60.39…・70…・此ノ方達・GSノ・可能性・確率97.28%・デス』
「こほんっ………失礼しました。 人違いでは無かったようですね。
私は藤津木織羽。こちらは藤津木の開発した霊的機械人形vista型。
実は依頼というのは、vistaの性能テストの際、万一の時の為に私をボディガードするというものですが…。
その前にここで起きた霊障を解決して、実力を証明して頂きたいのです。
もちろんボディガードの依頼をお請け頂けなくても、
ここで除霊した分は別料金としてお支払い致しますが…如何でしょうか?」

伺う様にGSたちの目を見、続いて大幅なシナリオ変更を余儀なくされたヒーローショーに視線を移す。
熱狂と興奮と無垢な子どもたちの願いとが、絶妙にブレンドされた混沌たる喜劇へと。
ヒーローショーは――今こそ真のヒーローを必要としていた。

197:牧街 ◆GwyfLokZWa7/
10/01/29 09:49:13 0
>>195
カフェ等が妄想を膨らます中、近場のスーパーでしょうゆ煎餅を買ってきた牧街が戻ってきた
「ただいま戻りやした~、ぇえ、とりあえずこれでいいっすかね?…あれ?何で白川訓練生がここにいるんだ?」
「あ、牧街さん、藤津木財閥の方から仕事の依頼があったんですが、師範いないんで牧街さんにと思って」
「へ?あぁ、はいはい」
一瞬凄く嫌そうな顔をした後、しぶしぶ受話器を受け取る牧街
休みが潰れるのは嫌だが、今回は道場の信頼に関わるので、んな事は言ってられない

>「もしもし、恐山流除霊道場の方でしょうか?~
「あ、はいわかりました、すぐ向かいますので少々お待ちください」
とりあえず仕事の依頼を了承し、道場脇の駐車場に止めてある車に戻ろうとした牧街を、カフェの師匠が引き止める
>「牧街くん、すぐにわけありマートに行くにゃ!」
どうやら送ってくれるらしい
「悪いっすね、家の道場に来た依頼なのに」
「魔族が関わってるかもしれにゃいから僕等も念のためついていきたいにゃ」
「事務所空けといていいんっすか?」
「お客さんの応対は冥土カフェの人達に任せておくから問題無いにゃ」
と言う分で、いがぐり頭の白川訓練生と別れた牧街は、カフェの師匠の猫タクシーでわけありマートへと向かう
ちなみに、牧街はすっかり忘れているが、彼は今丸腰だ

198:牧街 ◆GwyfLokZWa7/
10/01/29 10:35:42 0
その事に牧街が気づいたのは、わけありマートに到着し、藤津木嬢が出迎えてくれた瞬間だった
(やっべぇ!俺、神通杖すらもってねぇえええええええ)
頭を抱えて悶絶したくなるのを、何とか堪えながら何とか挨拶しようとする牧街だったが…
>「失礼しました…人違いです。」
「へ?あの~…」
普通にスルーされてしまった
(もしかして師範に用があったんか?)
余りに華麗にスルーされたので、車のナンバーとか間違えたかなとぽりぽり頬をかきながら考えていた牧街の前に、ベンツの中から…

これ以上無いって位牧街の心にジャストミートな美人が現れた

途端に真っ赤になり、硬直してしまう牧街
(びびびびびび美人や!大美人や!メー●ルの、メーテ●の再来だ!この白く美しい肌、さらさらと流れる金髪、物凄く落ち着いた雰囲気、冷たさを帯びた機械の様な瞳…パーフェクトだ!俺が横島忠雄だったら即座に襲いかかっている程の美人や!)
頭の中でめちゃくちゃアナスタシヤを褒めちぎっていた所に、アナスタシヤの視線が牧街の方を向いたので、慌てて視線をそらす
そんな牧街の態度など意に介さず、牧街とカフェをじっと見ていたアナスタシヤは、何だか妙な事を口走り始める
>『霊圧センサー・起動・範囲5m以内・霊圧70マイト以上・感知』
(霊圧センサー?丸腰っぽく見えたけどそんな物持ってたのか?)
不可解な台詞を疑問に思っていると、先程の藤津木嬢が再び車から姿を現した
そして、驚愕の真実が告げられる
>こちらは藤津木の開発した霊的機械人形vista型。
(えぇ!?ロボ!?メカ!?俺は…俺はロボコンに…魂の無い機械人形にときめいてしまったと言うんか!?)
あまりのショックに、少々白くなってしまう牧街
しかし、一応藤津木の言葉は届いていた様だ
>ここで除霊した分は別料金としてお支払い致しますが…如何でしょうか?」
「はい、わかりました…、やらせていただきます、えぇ」
多少元気の無い声でそう言って、牧街はため息をついた
本当は破邪札は愚か神通杖さえない状態で悪霊とやりあうなど絶対嫌なのだが、道場に来た依頼を任されている以上、戦わずに逃げる事はありえない

あぁ、せっかく怪我が治ったのになぁと憂鬱な気持ちで、とりあえず戦う相手に視線を移した牧街は、驚愕の声を上げた
「アレは…どくろハムスター!」
ステージの上で荒れ狂うどくろハムスターの姿に、思わず声が出る牧街
彼はアニメにはうとかったが、特撮物は結構見る方だったのだ
「…なる程、着ぐるみに悪霊が取り付いてるという分か……」
ここんところ空気だったり噛ませだったりとろくな事が無い牧街だったが、そこは一応プロのGS、相手の正体を一目見ただけで見抜いた
そして中にまだ人が入っている事を確認した牧街は、どうするべきか思案し始める
カフェやカフェの師匠に協力を仰ぐわけにはいかないし、まともに戦える武器も無い
また、中に人間がいるため手荒な事はできない
「…どうしようもねぇやん」
そう言って、ため息を一つつき、じーっとどくろハムスターを見つめていた牧街は、ある事に気がつき、舞台袖へと走っていった

199:牧街 ◆GwyfLokZWa7/
10/01/29 10:56:37 0
「ゴーストスイーパーです!ヨガレッドのコスチューム、ありますか!」
突然楽屋に駆け込んできた牧街に、わけありマート関係者は多少驚いたが、牧街がGS免許を見せ、作戦を話すと、快く作戦に協力してくれた


『アッハッハッハッハ、私こそ真の正義なりぃ、私にブーイングを飛ばすお前等は許さんでござる!』
舞台の上ではヨガレッドを倒し、勝ち誇っているどくろハムスターが、今まさに、ブーイングを飛ばす子供達に襲い掛かろうとしていた
子供達が怯えて泣き声とヨガレンジャーを呼ぶ声がヒートアップした、その時
「待て!どくろハムスター!勝負はここからだ!」
掛け声と共に、舞台袖から再びヨガレッドが姿を現した
『又やられに来たでござるか?正義の前に、貴様など相手にならんでござるぅ!』
そう言って、両手の爪を見せるどくろハムスターに、少したじろいだが、慌てて虚勢を取り戻し、構えを取るヨガレッド
「子供を傷つけようとするお前に、少なくとも正義何か無い!」
ビシッとどくろハムスターを指差して格好良く言ったヨガレッドだったが、いざどくろハムスターが突っ込んでくると、おわぁとか情けない声を出して飛びのいて避けるだの、間合いを取って相手の攻撃を牽制するだのと、一向にまともに戦おうとしない
その姿に、ヨガレッドの復活に沸いていた客席も、何だかどんどんクールダウンしていく
「ヨガレッドー、早く怪人やっつけて!」
「逃げるな!ぶつかっていけ!」
「頑張れぇ!早く何とかしてぇ!」
「声がさっきと違う!偽者だアイツ」
しかし、子供達の声援とは裏腹に、ヨガレッドは全く攻めに回らない
何だか情けなく、弱いその姿にどくろハムスターも調子付いたのか、攻撃が段々大振りになってきた
(そら、今だ!)
「とうっ!!」
一段と大振りな攻撃をどくろハムスターが放ったその時、ヨガレッドこと牧街は素早くどくろハムスターの後ろに回りこみ、背中の蝙蝠のような羽に手をかけた
「そりゃぁああああっとぉ!!」
渾身の力を篭めて、牧街は蝙蝠の羽を引っ張り、引きちぎる
ヨガレンジャーに登場したどくろハムスターは、劇中で羽をもぎ取られた事で体の力が萎えてしまっていた
コレはヒーローショーなのでその弱点が有効かは不明だが
どくろハムスターの口ぶりや動きが劇中の物とそっくりだった事から弱点も共通ではと思った牧街は、とりあえずその弱点を攻める事にしたのだ
はたしてその結果は如何に

200:カフェ ◇YNbEhcUF/I
10/01/29 11:32:50 0
>196
>「失礼しました…人違いです。」
「いや、間違えておらぬ。妾は秋葉原流GSのカフェでこっちは妾の師範じゃ」
>『簡易測定・開始・シマス・60.39…・70…・此ノ方達・GSノ・可能性・確率97.28%・デス』
「霊的機械人形……すごいのう!」

>「ここで除霊した分は別料金としてお支払い致しますが…如何でしょうか?」
「話は後じゃ。まずはこの状況をどうにかせねば」
「敵役だから負け続けなければいけないなんて誰が決めたでござる!
正義の味方になりたいでござる!」
そうしている間にも、負け続けなければならない運命に疑問を感じテロを起こした怪人が魂の叫びをあげている。
はて、最近似たような話をどこかで聞いたような。
「あーっ! テロ魔族に操られてるのではないか?」
カフェが師範に小声で尋ね、師範が対処法を分析する。
「直接操られてるわけではなさそうにゃ。
あの着ぐるみはきっと本当はヒーローをやりたいのに怪人しか出来にゃい事に不満を抱いていた……。
それがテロ魔族の思念の影響を微妙に受けて悪霊みたいになった可能性はあるにゃ」

>199
気づくと、牧街ヨガレッドが手際よく怪人の羽をもぎ取っていた。
「よし、あの手でやってみるとしようぞ。名づけて鞭の後に飴作戦!」
要するに痛めつけて力の差を見せ付けた後に優しい言葉をかける作戦。
「ヨガホワイトロリータ参上!」
良く分からないヒーロー名を叫びながらステージに躍り出て、怪人に語りかける。
「誰でござる! お前も拙者を痛めつけるでござるか!?」
「お兄ちゃん……いっつも負けなければいけないなんて辛かったよね……」
魅了の術はヲタ属性持ちか妹属性持ちにしか効かないことになっているが
ヒーローショーの出演者をやっているぐらいだから
ヲタク方面に少しは興味があるだろうと思っての賭けである。
「うるさいでござる。お前に何が分かるで候!」
突っぱねているように見えるが、明らかに動揺している。
続いて、ボロ雑巾のようになって倒れている当初のヨガレッドに目を向ける。
「お兄ちゃん、怪人さんの話を聞いてあげて。
話し合えば怪人とだって分かりあえるかもしれないじゃない!」
「なんだって……? 怪人と分かりあえるなんてそんなことが……」
こちらにも魅了の術が少しは効いたようで、しばし見つめ合うヨガレッドとどくろハムスター。
なんともいえない空気が場を支配し、観客が息をのんで見守る。



201:藤津木 織羽 ◆Olha/49Xgc
10/01/29 22:34:55 0
わけありマート駐車場では、織羽も観客の中に混じってヒーローショーの様子を眺めていた。
その傍ら、時折手元のノートパソコンに目を落として魔族に関わりそうな情報を探す。
「ビンゴ…これね。でも何で…こんな大事なのに誰も何も言ってなかったのはどうして?
一度、本社に問い合わせる必要があるわね………。」
携帯電話を開き、藤津木グループ本社の電話番号を打ち込む。

その頃、ステージでは偽レッド(牧街)にブチリと羽を千切られて弱った怪人と、ヨガレッドが見つめ合っていた。
しばしの迷いの後、意を決したように怪人に駆け寄って手を差し伸べるヨガレッド。
『どくろハムスター、もし正義を求めるならオレたちとお前は仲間…いや、友になれるんじゃないのか?
全てを戦いで解決していたら報復の連鎖は終わらない。それにPTAからも苦情が来る。』

差し伸べられた手を取るどくろハムスター。
背中の羽が千切られたことによって怪人の力が失われたのか、カフェが掛けた魅了の術も効果は抜群だ。
『ヨガレッド…拙者は…拙者はただ…。』
『もう良い、何も言うな………わけありマート駐車場で、僕と握手!』
レッドと固く握手すると、怪人の体から邪気が抜けてゆく。
かくしてヨガレンジャーとダグロムの怪人の和解は成った。

『ざわざわ…ざわざわ…。』
今まで固唾を飲む人々で静まり返っていた観客席の沈黙はざわめきに変わり、やがてそれは怒号へと変わる。
『ええー!』
『テレビとちがーう!』
『怪人は、ちゃんとヤラレロー!』
子どもたちのブーイングと投げられる無数の空き缶がステージ上を飛び交う。
除霊は成功したものの、どうやらヒーローショー的には失敗だったようだ。

本社への通話を終えて携帯電話をパチンと閉じた織羽は、ステージ裏に移動してカフェと牧街に声を掛けた。
「合格…ね。ヒーロー役、お見事でした。カフェさんに…まだ名前を窺っていませんが、そちらの助手…の方?
先程の護衛の件ですが、今度は本物の悪の組織と戦ってみませんか?
メルクリウス貿易――という名に聞き覚えはあるでしょうか。
前々から盗掘された物品を密輸しているという黒い噂の絶えない貿易会社です。
今年もエジプトから発掘したオーパーツを日本に運んだとか…。」

言葉を切って声をひそめ、緊張した面持ちで話を続ける。
「それで…実は藤津木の研究者が一人、メルクリウス貿易に拉致された可能性がありまして。
先日、発信器を兼ねた社員証の反応がメルクリウス貿易で消失したのです。
なぜ貿易会社が研究者を誘拐したのかは解りませんが、大事な社員は奪還したいものです。
ですが、メルクリウス貿易の社長は経歴不明の怪しい人物で、
調査では、黒魔術で魔ぞ…こほんっ…何やら悪霊…の様なものを使役するとの噂もあります。
本来はオカルトGメンに頼むような案件かもしれませんが、事を荒立てて藤津木の評判を落とすわけにはいきません。
それで…私がアナスタシヤに強襲させて弊社の社員を奪還したいのですが、その護衛をお願い頂けるでしょうか?」

織羽は、魔族に遭遇する可能性と言う点を伏せて、GSに再度の依頼を出す。

202: ◆Olha/49Xgc
10/01/29 22:36:55 0
東京都港区に聳える双色の電波塔、東京タワー。
この鉄塔は、国内海外を問わず大勢の観光客が訪れる都のシンボル的な建造物。
今日、タワーの地上施設フットタウンでは、エレベーターや階段の前で絶え間無く観光客の不満声が聞こえる。
「ええっ…せっかく来たのにぃ。」
「何も休日にやるこたないのになー。」
階段とエレベーターの前には『本日はメンテナンスの為、展望台を休業いたします』と張り紙による告知。
それを見たタワーの観光客たちは不満を述べながらも踵を返し、その場を立ち去ってゆく。
しかし、もし観光客の中に魔術の知識や霊力や秀でた者が一人でも居たならば、
告知の張り紙を見て一目でその異様さに気づいた事だろう。
そう…紙が魔力の込められた護符であり、張り紙のデザインに見える模様は人払いを意味する異国の言葉である事に。

地上250mに位置する東京タワーの特別展望室では、都内の全景を四方に一望できる。
メンテナンスの告知によって、今は無人となった特別展望室に何者かの声が響く。
「やれやれ、東京が悪霊都市として生まれ変わる記念の日になると思ったのにね。」

漫画表現での未登場の悪役の如く、フード付きの黒いマントで全身を覆った男が地上を見渡す。
あれ…人が居るのなら無人じゃないよね、という突っ込みは無用に願いたい。
都内を眼下に睥睨する彼は、人と呼ばれる存在では無いのだから。

そして無人は、タワービル5階の送信機室も同様。
今日は、メンテナンスの作業員の代わりに蝋人形たちが働いていた。
ちなみにこの蝋人形たち、当然ながら日本電波塔株式会社の職員でも電力会社の人間でも無い。
蝋人形館の人形数体が、魔術によってマリオネットの様に操られているだけである。

「しかしラルヴァ・システムによる邪霊波送信も成果が薄いね。
やっぱり核となる霊体制御装置が無ければ、駄目って事か。
まったく…せっかちなのが僕の悪いところだよね………クックック。
ああ…マリオネットたち、残業手当は出ないけど、まだまだ休んじゃだめだよ?」

特別展望室の何者かが、クスクスと笑う。
命令を受けた蝋人形たちは、怪しげな装置に取り付き、調整を始める。
今日、この電波塔で行われていたのは告知されているメンテナンスなどでは無い。

行われていたのは――魔族による放送実験。

203:牧街 ◆GwyfLokZWa7/
10/01/30 21:05:24 0
>>200
牧街の作戦は成功し、怪人は劇中どおり戦闘能力を失った
さあ、ここから悪霊怪人を颯爽とやっつけて藤津木嬢の信頼を勝ち取るぞ!
と言う所で、突如カフェがステージに現れ、突然の事に困惑する牧街の前で怪人を説得し、成仏させてしまった
「えぇ……!?ぁ…し…しまった…」
その出来事に、牧街は冷や汗を流す
今回の依頼は牧街の所属する恐山の道場に来た物で、本来なら牧街は戦うべき相手だった
なので、カフェ等は例の魔族を警戒し、慈善事業でついて来てくれた物だと思っていたが、不意打ち的に手柄をかっさらわれてしまった
この場合、牧街は報酬を貰うわけにはいかない
道場関係者ではないカフェやカフェの師匠が悪霊を倒したのでは、恐山流除霊道場が悪霊を倒しましたとはいえないからだ
その上、怪人戦滅に失敗したのが牧街除霊事務所ならば良かったが、今回失敗したのは恐山流除霊道場だ
師匠の顔に泥を塗ったので、帰った後どんな目に合うか、想像するのも恐ろしい

更に、悪い事は続く
「ぁ…ちゃぁー………」
「あちゃーじゃないよ!君!どうしてくれるんだ!」
ステージ袖近くで呆然としていた牧街を袖から伸びた手が引っつかみ、舞台裏へと引っ張り込んだ後、演出家が怒声を浴びせてきた
「ぅ…その…申し訳ありません」
「申し訳ありませんじゃないよ!君の作戦なら私のショーを台無しにする事は無いと思ったから君の交戦と着ぐるみの破損を認めたんだ!怪人を舞台袖に誘導し、そこで中のバイト君を救出して、抜け殻になった怪人を倒すんじゃなかったのかね?それをあんな風に…」
「いぇ…確かに、アレは想定外でしたが、しかし、悪霊の殲滅は早急に行う必要がありまして」
「そんな事はわかってるんだ!私が言っているのは、何故途中でこちらに通達無しに突然作戦を変更したのかって事だよ!見たまえ!あの子供達を!」
ショーの方へ目を向ければ、子供達は親に「あんなヨガレッドと握手したくない」だとか「もう帰る!」などと言って、次々とつまらなそうな顔で帰っていっている
「ああ言う道徳的な終わり方はショーにすると派手さもないし、あの年頃の子供達には受けないんだよ!大体何、あの女の子!部外者を除霊させたのかね?え?君それでもプロか?君は子供達を裏切ったんだぞ!君は社会人として恥ずかしく無いのか?」
「申し訳ありません、彼女はあの…GS資格者でして…その…こちらの不手際で…」
一気にまくし立ててくる演出家に、牧街はしどろもどろにしか答えられず、それがかえって演出家の激昂に触れたようだ
「君じゃ話しにならない!上の者を呼ぶか、でなければ君の事務所を訴えさせてもらう!」
「そんな!親は!親とかは関係ないんで!それだけは勘弁してください!」
「まぁまぁ、君落ち着きたまえ」
怒る演出家に牧街が万引きした小学生みたいな事をほざいたその時、演出家の後ろから別の人物が現れた
「主任…」
どうやら、ショーの責任者の様である
彼の登場に、息を荒げていた演出家も、多少落ち着いた
「お客様から怪我人が出る事を考えたら、悪霊が倒れただけ良かったじゃないか」
責任者の言葉にそう言われて、演出家も「まぁ…責任者がそういうなら」と黙らずにはいられない

結局、その場はショー責任者の寛大な処置で、牧街が訴えられる事無く済むのだった
ショー責任者の主任が起訴を取り消したのは、裁判沙汰になってスーパーの黒い所を探られたくなかったというのが本当の所なのだろうが
助かってほっとしている牧街には、その辺りはどうでもいい

204:牧街 ◆GwyfLokZWa7/
10/01/30 21:45:40 0
さて何とかショーの方も丸く治まり、はーっと一息ついた牧街は、舞台裏にカフェを呼び出していた
「あの…カフェさん、今回、助けていただいたのは大変嬉しかったのですが、その…」
>「合格…ね。ヒーロー役、お見事でした。
牧街がカフェに一言何か言おうと(その割にはめちゃくちゃ弱気だったが)したその時、タイミングよく藤津木嬢がその場にやってきて、牧街の言葉は肝心のところで途切れてしまう
しかし、褒められたので、あ、一応信頼は取れたのかなぁと喜ぼうとした所
>カフェさんに…まだ名前を窺っていませんが、そちらの助手…の方?
しっかり活躍も手柄も持っていかれた事がわかり、牧街は体の力が抜けてずるっとすっこけた

だが、藤津木嬢の話しの続きに、牧街の目の色が変わった
>私がアナスタシヤに強襲させて弊社の社員を奪還したいのですが、その護衛をお願い頂けるでしょうか?」
(……明らかに犯罪の臭いがするじゃん)
すなわち、恐怖と怯えの色に…

(え?そ…そういう誘拐されたとかって警察に頼むべきで…と言うか、他人の会社をロボで襲撃したら犯罪だよ…な?
あ、そうか、向こうも犯罪やってるから…
でも、これ俺関わると間違いなくイザという時トカゲの尻尾きりで人生終わらせられるよな…?
だけど断って帰ると道場に泥塗っておめおめ帰ってきたって事で師匠にえらい目に合わされるだろうし…
ヤバイ!色々ヤバイ!ってか断ると帰り道で黒服にさらわれそうだし…
アカン!マジアカン!に…逃げなければ…
駄目だ!どっちからも逃げる自信が無い
………どうすれば…どうすれば生き残る事ができる……)

戦いが始まる前から絶体絶命の大ピンチに陥った牧街はふっとある事に気がつくと、がしっとカフェの師匠の手を取り、藤津木から見えないところまで引っ張って行き、言った
「今回の事件は大事の予感がします!できれば、大勢の人の平和と安息のために、力を貸してください!無論、報酬は山分けで!」

牧街のライフセーブプランはこうだ
まず、カフェとカフェの師匠の力を借りて藤津木の依頼に挑む
こうすれば、消される時は皆一緒なので、お互い協力せざる得なくなるだろう
そして、もしそんな風に消されそうになる事無く無事依頼を達成できれば、師範への汚名返上もできて、人生は安泰だ
更に、カフェ等の協力があれば、本来の依頼の方の達成率も格段に上がる

まぁ、要するに危ない目に一人で合うの嫌なのでカフェ等を巻き込もうという人としてどうかと思う行為なので、カフェ等が納得してついてきてくれるかは怪しい
報酬は山分けどころか9;1でも構わんだろう

205:カフェ ◇YNbEhcUF/I
10/01/31 23:27:58 0
>201 >203-204
>「えぇ……!?ぁ…し…しまった…」
「なにがしまったのじゃ?」
>『ええー!』
>『テレビとちがーう!』
>『怪人は、ちゃんとヤラレロー!』
飛んできた無数の空き缶が当たる。
「あいた! あいたたたたた!!」

逃げるようにステージから降りてきたカフェを師範が出迎える。
「よくやったにゃ!」
「全く……あれで怒るとは最近の子どもは分かりやすい勧善懲悪しか知らぬのか!
そんな世の中だからテロ魔族も出てくるのだ」
「まあまあ。今は分からなくてもきっと将来分かってくれるにゃ。
ショーの主催者も怪我人が出ずに済んで感謝しているはずにゃ。
牧街くんは今頃裏で感謝状の一枚でももらっているにゃ」
二人には、牧街が理不尽な大目玉をくらっていることなんて知る由も無い。

しばらくして牧街が出てきた。
ちなみに、秋葉原流の師範は、まともなGS流派達の縄張り争い等等とは無縁の位置にいるので
決して自分が除霊したと主張して報酬を横取りしようとか深い事を考えている訳ではない。
考えていたとしても手伝い賃をちょっと分けてもらえたら嬉しいかなー程度なので
よもや牧街が何に怯えているかに気付くはずもないのであった。
>「あの…カフェさん、今回、助けていただいたのは大変嬉しかったのですが、その…」
「うむ。なんじゃ?」
>「合格…ね。ヒーロー役、お見事でした。」

思いもしなかった織羽の依頼に、目を輝かせる。
「悪の組織と戦うじゃと!?」
「すごいにゃー!」
ヲタクは悪の巨大企業に潜入して奪還作戦とか社長が黒魔術師とかいう設定だけでご飯三杯はいけてしまうのです。
が、隣で怯えている牧街を見て、さすがに現実に引き戻される。
「でもこれってタイーホされる可能性も……」
そう思っていると、牧街が師匠の手をとってどこかに連れていく。

>「今回の事件は大事の予感がします!できれば、大勢の人の平和と安息のために、力を貸してください!無論、報酬は山分けで!」
「もちろんにゃ! 世界の平和と安全のために共に頑張ろうにゃ!」
牧街の心配とは裏腹に、師匠はあっさり承諾した。
まあ色んな意味で俗世を超越したこの師匠ならそう言うだろう。

「はて、なにしに行ったのかのう」
その時、カフェの携帯が鳴った。
カフェの母「ちょっと! お父さんが借金して1000万もする怪しげな壺を買ってきたんだけど!」
「うむ。そうか」
カフェの母「このままじゃ店が潰れちゃう! 大きい依頼でドカーンと稼ぎなさい!」
カフェの父は要するに初期から登場している喫茶店のマスター。
そして怪しげな壺はこの人の持ちネタなのだ。
事務所は店の二階であるからして借金で店が潰れたら事務所も潰れることになるだろう。

「うーむ、なんでまた……」
もしかしたら邪霊波の影響を受けて「奥さんの尻に敷かれた亭主は嫌でござる。好きな物を買うでござる!」と
つい羽目をはずしてしまったのかもしれないが、そんなことは知る由もない。
そこに師範が戻ってくる。
「ぼくちん達も協力することになったにゃ。もちろんカフェも受けてくれるにゃ?」
「もちろんじゃ! 必ずや成功させようぞ!」


206:藤津木 織羽 ◆Olha/49Xgc
10/02/02 21:06:02 0
依頼内容を聞いて表情を変えた牧街が、慌てて秋葉原道場の師範を引っ張って袖口に消えた。
何事かをヒソヒソと…でなく割と大声で相談しているので声が漏れ聞こえてくる。

>牧街「できれば、大勢の人の平和と安息のために、力を貸してください!」
>師範「もちろんにゃ! 世界の平和と安全のために共に頑張ろうにゃ!」

んー…何か、かなりの気合が入ってるみたいね。
こんなに燃えている所に護衛だけを任せるっていうのは、かえって悪いかしら…?
それはそうと内緒話をする時に!を付けるのは、わたしも気を付けた方が良さそうね…。
などと思っていると引っ込んだ牧街たちが帰ってきて、師範とカフェが力強く依頼を承諾する。
「――話も纏まったようですね。詳しい説明は移動中に致しますので、まずは車にお乗りください。」
と言い放つと、彼らを連れて駐車場に向かい、ベンツのドアを開けてサッと乗り込む。
ベンツの車内は広く、向かい合った前部と後部の座席には軽く7~8人は乗れそうだ。

――しばらく車が走った所で織羽は口を開く。
「メルクリウス貿易本社は“隙間区”にあるそうですが…ええと、隙間区…ニュースなどで御存じですよね?
今年になって東京23区に新しく加わった区域です。
昨年の事業仕分けで行政が土地開発の計画を見直した所、書類に不備が多くて無駄な土地が割と余っていたそうなので、
思い切って区画整理をしてみたら一区画出来てしまったとか…。
ちなみに最近新たに造られた区域なので、まだネットなどにも正確な地図はありません。」

そして手元のノートパソコンを全員に見えるようにクルリと動かす。
「まずは奪還すべき研究員のデータをお見せしておきますね。」
画面には長い黒髪をオールバックに撫で付けた男の顔。その下には略歴が映し出される。
俣旅ゼルダ(またたび ぜるだ)32才、日本人男性。藤津木に入社して10年のベテランで独身。

「次にメルクリウス貿易社長のデータなのですが…防犯上の理由なのでしょうか?
神田呑任太(かみだのみ まかせた)との名前くらいしか分かっていません。
vistaの性能テストを兼ねていなければ、手っ取り早く眉毛の太いスナイパーに依頼をするのですが…。
………あ、もう隙間区内に入ったようですね。
襲撃は夜間に行いますので、偵察や逃走ルートの確保などは今のうちに済ませておきましょう。
備えあれば憂いなしと言いますし…アナスタシヤ、メルクリウス貿易はどこ?」
『メルクリウス貿易ノ・地図データ・ウェブ内ニ・登録・サレテ・イマセン』
「運転者、カーナビは?」

黙って首を振る運転手――この所作が指し示す答えは一つ。
「どうやら道に迷った様ですね。」

207:藤津木 織羽 ◆Olha/49Xgc
10/02/02 21:07:59 0
窓の外、隙間区はビジネス街として数多くのビルが所狭しと林立する。
隙間産業センター・レギオンビル・FO倉庫・隙間セントラルタワー・神藤デルタホテル………et cetera。

ベンツがグルグルと何度も同じ道を往復していると、
突然車の下からチュン…パスッ!と微かに音がして、座席に軽い衝撃。
即座にブレーキを掛けた運転手が、車を降りて車体の下を覗き込むとタイヤのパンクを告げる。

「こんな時に間が悪いったらないわね………済みません、タイヤがパンクしたようです。」
運転手は車を動かして路肩に止めると、トランクを開けて工具を取り出す。

タイヤの修理って何分くらいかかるのかしら…。
あ…そういえばお昼まだ食べてなかった…。
でも、仮にも仕事の最中にご飯食べに行きましょうか、なんて言えないし…ここは…。

「どうでしょう…今のうちに偵察を兼ねて周囲の地理を把握して置くというのは?
襲撃は夜間とはいえ、ここでただ修理を待ってるというのも時間の無駄だと思いますし。」
努めて冷静を装い、織羽は手分けしての付近の探索を提案する。
ぞろぞろ連れ立って歩くには、若干目立つメンバーであるから…との理由で。

まあ、別行動の真の目的は探索などではないのだが。

ベンツを止めた道路の近くには、ビルの間を縫うように作られた細長い公園。
公園入り口のプレートには、隙間風公園と刻まれている。
「…そうですね。一時間後にここに合流するという事で宜しいでしょうか?
もし携帯電話の持ち合わせが無いようでしたら、こちらで連絡用の物をお貸しできますが?」

【現在地・隙間風公園前】

208:名無しになりきれ
10/02/04 02:09:45 0
通りを歩いていると"ホシュ"と書かれた看板があって、店構えは何やらレストランっぽい。
ホシュとはウイグル語で乾杯の意味だからして、おそらくウイグル料理の店であろう。

209:牧街 ◆GwyfLokZWa7/
10/02/05 15:45:28 0
カフェ及びカフェの師匠は、快く牧街の協力要請に答えてくれた
しかも!あの腹黒い成瀬とは違い、その応答からは全く邪気を感じさせない
(う…な…何か……すっっっっごく罪悪感が……)
今からでも遅くないからやっぱりいいですと言おうか言うまいか
牧街がおろおろと迷おうとする前に、藤津木が出発を促してしまった

敗色濃厚な中最前線に弾除けに行かされる兵士のような表情で車に乗り込んだ牧街が、ふと顔を上げると、向かいの席にあのアナスタシヤが座っていた
今までの状況も忘れて思わずドキっとして少し赤くなる牧街
(…い…いやいや、ロボなんだって、彼女)
しかし今度は相手が機械だとわかっているので、今まで程うろたえず
冷静になった所で、全員が乗り込んだので車が走り出した

(しかし…よくできてるなぁ…………)
走る車の中で、アナスタシヤをしげしげと見つめる牧街
肌は柔らかそうで白く、髪はさらさらと流れ、牧街の好みジャストミートの顔にはどこか……
(………何か…成世っぽい雰囲気が……)
ここで牧街は、現在はタローや神藤の様に激務に追われているのだろう最近連絡の取れない同期のGSにして、生きた仮面、牧街が雄一タメ口で話す女性、成世阿弥の事を思い出す
成世は無機物であったが、あの免許更新事件のために体が大破するまで、生身の人間と変わらない、しかしどこか変わった雰囲気をしていた
彼女からは、そのどこか変わった雰囲気の部分だけがする
しかし、そのどこか変わった雰囲気と言うのは、決して助手時代に師範について除霊に行った会社の地下で見た人間そっくりのロボット、すなわち人の形をした無機物とは違う
言うならば…作られた魂の雰囲気、とでも言うのだろうか……
(………//////い、いや、まさか、ね、んなわけないって、ええ)
そんな事を考えながらアナスタシヤを見ていた牧街は、何だか照れくさくなり、視線をアナスタシヤからそらした
本人は気づいていないが、牧街は明瞭快活で面倒見の良い成世に魅かれている所がある
確かに成世は多少金に汚かったり人使いが荒かったりするが、基本的には牧街にちょくちょく世話をやいてくれる良い姉貴分であり
だからこそこの小心者でへたれの牧街がタメ口で話す事ができる数少ない人物なのだ
しかし、まだまだ若い牧街はそれが何だか照れくさかったのだろう
その辺りの感情と、アナスタシヤの美しさが相成って、牧街をアナスタシヤから視線を外させたのである

210:牧街 ◆GwyfLokZWa7/
10/02/05 16:19:24 0
そんな風に牧街はアナスタシヤに戸惑っていると、そろそろ目的地が近いのか、藤津木が仕事の話を出してきた


……素直に言おう、受けるんじゃなかった!と
(ふ…太い眉毛の方に頼まなけりゃならないんじゃ100%犯罪じゃねえか!や…ヤバイ!どうする?ここで逃げようとしてもあの美人ロボが俺を殺しにくるだろうし…。成功したとしてもその場で八つ裂きにされてしまう)
一瞬カフェの師匠なら互角に戦えるのではとも考えたが、武装した美女アンドロイドと小学生の姿した猫仙人ではどちらが強そうかは明白だ(個人差はあるかもしれないが)
ゆっくりと人生に幕が下ろされようとしていたその時、天の神が牧街に味方した

車のタイヤがパンクし、1時間の休憩と相成ったのだ!
藤津木は1時間後に近くの隙間公園で落ち合う事を告げ、携帯電話の貸し出しを呼びかける
依然牧街は携帯を持っていないのでここで名乗り出るべきなのだが、牧街はそこで首を横に振った
「あ、俺の携帯の番号は………」
要は1時間後にここに戻って来ていればよいのだから、ここで教える番号は何でもいい
そう思った牧街は、親友、阿湖野青年の携帯の番号をつげ、携帯を受け取らなかった
携帯に発信機とかついてるとまずい!
そう思ってビビッて浅はかな考えでついた嘘なのだが…
……色々まずい+阿湖野まで巻き込んでいると史上最悪の行為である
(そ…そうだ、それはそうとして、これからどうしよう……そうだ!一度道場へ戻ろう!カフェさんの師匠のあの魔法のタクシーを借りれば道場まで10分以内につくだろうから往復20分。首が飛ぶ覚悟で師匠の武器を失敬してくれば今回の戦いを行きぬく事だって…)
しかし、本人はどんどん泥沼に沈んでいっているとも知らず、更に泥沼に沈むような事を考えていく
良い子の皆はこんな時、すぐに交番に駆け込んで助けてもらおう

211:カフェ ◇YNbEhcUF/I
10/02/06 01:32:12 0
>206
>俣旅ゼルダ(またたび ぜるだ)32才、日本人男性。
誘拐された研究員のデータを見た師範の表情が変わる。
「マタタビ……もしかしていやまさか……!」
「知り合いなのか!?」
カフェが問いかけるが、師範はそれ以上は語らなった。

「眉毛の太いスナイパーはさすがにまずかろう。勢い余って殺してしまうからな」
「サックリ暗殺して終わりにゃんて許さんにゃ! 締め上げて悪事を白状させるにゃ!」
こころなしか師範のやる気度数がアップしたのは気のせいだろうか。

>209
(惚れておる……ロボ娘に惚れておる……!)
(ロボ萌え属性があるみたいにゃ……!)

>207 >210
「はっ。まさかメルクリウス貿易の工作員が道路にマキビシを巻いたのやも。
我々が動いているのがもうバレておるのかもしれぬ。ゆめゆめ侮るなかれ!」

>「あ、俺の携帯の番号は………」
「おお、ついに牧街殿も携帯を買ったか」

師範は公園に入って、ニボシをまきながら野良猫達と話している。
「にゃー、にゃにゃにゃーにゃー」
「にゃにゃにゃんにゃん」
ニボシによって偵察の任を引き受けた野良猫達は隙間区内に散って行った。

>208
偵察に出ると、変わったレストランらしきものがある。
「美味しそうじゃ! 入るか?」
「んにゃ。腹が減っては戦はできぬというからにゃ」
師弟はいそいそと入っていってしまった。侮るなかれと自分で言っておきながら警戒心皆無な人達である。




212:藤津木 織羽 ◆Olha/49Xgc
10/02/06 19:09:15 0
牧街とカフェの電話番号を控えると、偵察の名を借りたお昼時間を開始。
こういった時にバラバラになって行動するのは、通常死亡フラグであるのだが。
アナスタシヤを連れて歩道を進むと、目の前にエキゾチックな感じの店構え。
店内から仄かに漏れてくるスパイシーな香りが、織羽の足を半強制的に止めさせた。
「ここで良いわね…ウイグル料理って聞いた事も無いけど、今から他の店を探す時間も無いし…。」

看板からすると、ここはウイグル料理のレストランのようである。
ウイグルとは現在のトルキスタン地域東部。
シルクロード交易の中心地として栄えた土地で、料理にも東西の味が入り混じる。
店内を覗くと写実的なタペストリの数々が壁を飾っていた。
偶像崇拝を禁じるイスラム圏の客層が多いのかもしれない。
『ホシュ!! イラッシャイマーセー!』
フレンドリーな店員に案内されて席に着くと、メニューを見ながら注文を出す。
「えーと、このスープにミートパイとサラダを。」
『そちらのお客様は?』
『充電器・オ願イ・シマス』
程なく店員が料理を乗せた器と律義に充電器を手に持ってくる。

「まずはミートパイから…あひゅい!」
サクサクしたパイ生地を噛み砕くごとに鼻孔をくすぐる芳香が、肉体の奥底からさらなる食欲を喚起する。
そしてパイ生地に閉じ込められていた熱くスパイシーなラム肉は、一噛みごとに口の中に浸み渡ってゆく。
「あふっあふっ…。」

「何かスープが赤いんだけど…これ、辛いのかしら?」
赤いスープはトマトベース。
鮮やかな赤色から、辛みを思わせるものの意外にサッパリとした味。
深紅の海を泳ぐ白鯨にも見えるのは羊肉をくるんだ小さいワンタンたち。
スパイスを効かせて絶妙な味付けをされたワンタンはスープと共に口中に入る事により、
薄味のスープの刺激的なアクセントとなって舌の充足を満たす。
「ふーん、これもなかなか良い感じゃない。」

「サラダはイタリアンっぽいわね…。」
レタスと胡瓜、トマトで構成されたサラダの森に粉チーズの雪が降り積もる。
日本人好みに味付けされたドレッシングは、サラダに美しい味の調和を齎していた。
「うん…悪くない…やっぱり野菜もとらないと。」

――どうやら、一話につき一回は食事シーンを入れないと気が済まない様である。

そこでドアの鈴がカランと鳴ると店内に入って来る猫耳ショタとゴスロリ。
「こほっ…けほっ…うっがっぐっむっ!」
偵察に行ったはずのGSの姿を確認して、驚嘆のあまり飲んでいたスープが気管へと進路変更。
「カ、カフェさんに秋葉原師範…こんな所へ何をしに!?」
ハンカチで口元を拭いながら二人に問いかける。

213:牧街 ◆GwyfLokZWa7/
10/02/07 15:52:02 0
(そうだ!小笠原だ、小笠原諸島まで漁船を借りて逃げていこう!そしてどこかの島で島雄一のゴーストスイーパーであり、若い力として第二の人生を送ろう
そこで平凡に暮していれば追っ手も手を引くかも出し…
いや、駄目だ、師匠なら追いかけてきかねない
それならどっかの田舎の山中に逃げ込んで……駄目だ、山で生活するなんて流石に…
いや、死ぬよりましだ!15年間逃げれば時効が成立して助かるはずだ…)
公園のブランコで、これからの事をぶつぶつ言いながら考える牧街
何だか犯罪を犯して自責の念に駆られているように見えなくない
(………何にしても、まず一度帰って準備を整えよう、そのためにカフェさんの師匠にタクシーを…)
色々考えていた牧街だったが、とりあえず行動しない事には始まらないと立ち上がり、カフェの師匠を呼ぼうとした



「アレ?カフェさん達は?」
ぐだぐだと泥沼思考を働かせてる間に、皆どこかへ行ってしまった
(ゲゲ!み…皆どこへ行ったんだ!?さ…探さなければ、探さなければ死……まてよ…)

************

藤津木「1時間たっても戻ってこない所を見ると、牧街さんは逃げたようですね」
カフェ師匠「僕等を裏切ったにゃ!ゆるさんにゃ!」
カフェ「牧街殿…性根までヘタレておったか…」
藤津木「アナスタシヤ、テスト内容を変更、1時間以内に機密保持のために牧街を抹殺しなさい」
アナスタシヤ「了解」

必死に逃げる牧街の後ろから飛んできて、目の前に着陸するアナスタシヤ
牧街「ひっ……助けてくれえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
アナスタシヤ「対象補足、証拠を残さないために完全に消滅させます。人体溶解ガス噴射」
牧街「ギャアアアアアアアアアアアアアア」
アナスタシヤの口から放たれた緑色のガスがかかり、苦しみ悶えて倒れ付し、どろどろに溶けていく牧街……

************

「ぁ…ぁ…ぁ……」
いろいろな意味で恐ろしい想像にガタガタ足を震わせ、硬直する牧街
(だ…駄目だ、制限時間内にここに戻って来れない可能性のある「探しに行く」は駄目だ…)
最早絶望、牧街の瞳から一筋の涙が零れ落ちようとした、その時

(!!)

ある事を感じた牧街は、電気が走ったようにその場でブルりとと一つ震え、そして、ぼそりと呟いた
「……トイレ行こう」
風のふく中でぼーっとしていたために体が冷え、尿意を感じた牧街は、そそくさとトイレへと向かう
何と言うか……とことん運命とかそういうものに対して無力な男である

214:牧街 ◆GwyfLokZWa7/
10/02/07 16:44:05 0
「ふぃ~~」
男子用トイレで立小便をしながら、幸せそうな表情をする牧街
「寒いところでたまった小便を排出するのは何ともいえないなぁ~」
よっぽど気持ちが良かったのか、先程までの絶望はどこへやら幸せそうな表情を浮かべた牧街は、溜まった尿を出し終え、洗面所へと向かう
「ふぅー……」
鏡で身だしなみを一度確認し、水を出して手をぬらし、石鹸をつけて泡立て、水で石鹸を落す
簡単に言うと手を洗い、水を手を軽く振って飛ばし、「洗面所が濡れ無いように、水を飛ばすのは排水溝にもっと手を近づけてしろ」おっと失礼最もだ、水が周りに飛ばないように気をつけて水を飛ばし、ハンカチで手を拭く
さて、これからどうしよう
と顔を上げ

牧街は恐怖に固まった

鏡の中、牧街の後ろに、真っ黒いフードを目深に被った髪の長い女性が立っていたのだ
その存在を知った瞬間、牧街の足ががくがくがくがくと振るえ、汗がだらだらとながれ、喉が痙攣して動かなくなる
「……やっぱり事前に報告なんかすべきでは無い、不必要に怖がらせるだけだ…」
恐れおののき今にも泣きそうな牧街を見据え、フードの女はぼそりと呟いた
「ぁ…ぁ……ぁわわ…わ…」
わけのわからない女の台詞に、しかし、牧街は恐怖のあまり気にしている余裕が無い
「…私が怖いか?」
女の問いかけに、牧街は震えながらとりあえず素直に頷く
「そうか……、だが」
そう言って、フードの中に手を入れた女は、中から掌程の大きさで、うごめいている蜘蛛に似た蟲を取り出した
「これから君が体験するのはもっと恐ろしい恐怖だ。これから君にこの蟲を寄生させる。
コレに寄生されれば寄生される直前の記憶を失い、外部からでは神族でもこの蟲を発見する事はできない」
そう言って、蟲を近づけてくる女、尻餅をついて後ずさる牧街
「そ…そそそそそそそそん………そんんんんーーーんーーーん」
「そんな蟲を俺に取り付かせてどうすると言いたいのか?我々の役に立ってもらうに決まっているだろう。周囲に悟られる事無く寄生させるには今しかチャンスが無い。速く終わらせる。激痛が走るから歯を覚悟を決めろ」
女が一気に距離を詰め、素早く牧街の上着の首筋を引っ張って、中に蟲を入れた
「ひぎ…」

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」
すさまじい絶叫がトイレから響き渡るが近くを通る散歩中の男性も、車を治しているのだろう運転手も、その叫びに反応しない
恐らく、あのフードの女が何か特殊な音響壁を張ったのだろう

やがて、トイレの中から再びこれからどのように逃げるかを必死に考える先程と何ら変わらない牧街が出てきた

215:カフェ ◇YNbEhcUF/I
10/02/09 20:30:15 0
>212
「んにゃ。変わった店だから偵察に入ってみたにゃ」
偵察といいながらいそいそと織羽&アナスタシヤの隣に座る師弟。
「なんといっても悪の巨大企業。
出来たばかりの区を丸ごと支配しておらんとも限らぬ。念のために毒見をせねば」
とかなんとか言いながら“今日のお勧め”を注文。

すぐに料理が運ばれてきて、お食事タイムが始まるが、唐突に事件は起こった!
「美味しいにゃー」
「うむ。美味しいのう……なぬう!?」
師範が猫化しつつあった。
「師匠、あまりの美味しさに正体が現れ始めておるぞ!」
「きゃふーっ!」
師範は興奮状態に陥っている。不審に思ったカフェは、師範の料理をのぞきこんだ。
「いかん、マタタビじゃ! 落ち着け!」
ただのマタタビではなく化け猫の正体を現す霊力付きのマタタビなのかもしれない。
騒いでいると、辺りがもくもくと煙幕に包まれる。
「なんじゃこりゃー!?」
煙の中でパニックになっている間にドタバタと慌ただしい音が聞こえたが何が起こったのかは分からない。

思ったより早く煙幕は晴れた。
「げほっ、げほっ。一体なんだというんじゃ……!」
なぜか周囲の客は平然と食事を続けている。
「何かありましたか?」
「どうもこうもないわ。のう、師匠……師匠がいない!」
なんと、師範が忽然と姿を消していた。慌てて店員につめよる。
「妾と一緒に入った猫耳美少年を知らんか!?」
「ナニモヘンナコトオコッテマセンヨー。ワタシナニモシリマセンヨー!」
フレンドリーな店員の答えは非情だった!


216:藤津木 織羽 ◆Olha/49Xgc
10/02/10 20:13:46 0
>215
>師範「んにゃ。変わった店だから偵察に入ってみたにゃ」
「そ、そうですか…確かにウイグル料理店は珍しいかもしれないですけど…。」
彼らも普通に食事を始める。
「ところでメルクリウス貿易本社への侵入ルートですが、か――ッ!」
隣席の秋葉原師範に、今後の作戦について話しかけようとして絶句。
師範の顔は白毛に覆われた異貌。目は大きく見開かれている。
織羽は動転しながらも、咄嗟にテーブルから飛び退って距離を取った。

織羽は師範が化け猫である事は聞いておらず、今まで妖怪や変化の類に遭遇した事も無い。
また、ゴーストスイーパーにダンピールやら化け猫やら人外の者たちが居る事などは夢想だにしていない。
従って、変化しかけている秋葉原師範に対する織羽の認識は――魔物。

>師範「師匠、あまりの美味しさに正体が現れ始めておるぞ!」
>カフェ「きゃふーっ!」

「アニャ…!」
即座にアナスタシヤに化け猫への攻撃命令を下そうとする………のだが不意の目眩で気が遠くなった。
一瞬の朦朧から晴れると、目の前にいたはずの化け猫の姿が忽然と消えている。
店内を見回しても平然と食事を続ける来客の姿が有るだけで、師範の姿も化け猫の姿も無い。
「ええと…い、今のは………師範様はいったいどちらに!? それに猫の魔物が!」
どうやら織羽は、他の来客同様に謎の煙を認識しなかったようである。

>カフェ「妾と一緒に入った猫耳美少年を知らんか!?」
何が起こったのか訳が分からず問いかけるも、逆にカフェは店員に師範の行方を問いかけている始末。

「もうどうなってるの! アナスタシヤ…霊圧センサーを起動してっ!」
『特殊霊圧感知・周囲5km・255箇所デ・同時発生・個々ノ・特定ハ・不可能・デス』
「255って…何がそんなにいるっていうの!?」
『回答不可・データ・ガ・足リマセン』
「あ…そう…分析とかはしてくれないのね…。」

仕方ないので、自分で推理。

まずは…ええと何でいきなり師範が猫に?
訳分からない……いや待って、もしかしたら別行動をしている間に秋葉原師範がさっきの猫魔物にすり替わった…?
そういえば、さっきカフェさんが正体が現れ始めるてるとか言ったような…。
と言う事は……あの師範は猫の魔物が化けていた偽物だったっていう事なの?
なら――それを知っていたカフェさんも本物じゃない…。

「なるほど、そういう事ね……フリーズ! アナスタシヤ、こっちへ。」
織羽は冷静かつ透徹した状況判断で正確な分析結果を出すと、強い語調でカフェに制止の警告を出す。

217:アナスタシヤ ◆1D.Vistars
10/02/10 20:17:07 0
『アナスタシヤ、極力周囲に被害の出ないように制圧を。目標カフェ。』
「了解・マスター」

織羽はカフェを警戒しつつも、登録した牧街の電話番号に電話を掛けていた。
『牧街さんですか…こちら藤津木です。すぐにこちら…ええと、正確な住所は…。』
『ジュウショ? カクカクシカジカネー!』
フレンドリーな店員がフレンドリーに、しかも簡潔に店の住所を答える。
『可及的速やかに隙間区42丁目、隙間風通りのレストラン“ホシュ”まで来て下さい!』
『あ~、それは良いけど僕は牧』
織羽は了解の確認が取れた瞬間に電話を切って、警戒態勢に入った。

「ターゲット・捕捉」
アナスタシヤは、コートの内側に収納されていた制圧用ネットガンを0.5秒で取り出してカフェに向ける。
次の瞬間、カフェの視界いっぱいに、迫り来る網目模様が広がった。

この捕縛用の兵器は空気圧で射出され、強化金属糸の網が五メートル四方に一気に広がり、
約五メートル先までの相手を捕捉するのだ。
金属製の網は重く、捕縛した対象の動きを容易に封じる。
一旦、囚われれば自力で抜け出すのは困難であろう。

【戦闘ターンは、アナスタシヤ◆1D.Vistarsが担当】

アナスタシヤの後ろから織羽が声を掛ける。
『貴方は本物のカフェさんじゃないわね。 秋葉原師範に化けていた猫型の魔物の仲間…そうでしょ?
違うって言うなら、そうね…ここに来る前にわけあ―シスターマックスの駐車場で起こった事を言えますか?』

218:カフェ ◇YNbEhcUF/I
10/02/12 00:45:06 0
「知らないはずはないぞ。料理に特殊なマタタビを入れたであろう!」
「ワタシナニモシラナイネー」
フレンドリーな店員と押し問答していても埒があかない。
それに師範の追跡が先だ。今すぐ追いかければ追いつけるはず。
「師範は誘拐されたようじゃ! 今すぐ追わ……」

>217
>『アナスタシヤ、極力周囲に被害の出ないように制圧を。目標カフェ。』
「ほげえええええええ!?」
アナスタシヤが制圧にかかってきた。
フレンドリーな店員は相変わらずフレンドリーな笑みを浮かべながら見ている。
「待て、いくらなんでもおかしいとは思わんか! ほら、この店員とか!」
>「ターゲット・捕捉」
ぽすっ。カフェは捕らわれた!

>『貴方は本物のカフェさんじゃないわね。 秋葉原師範に化けていた猫型の魔物の仲間…そうでしょ? 』
「逆逆! 化け猫が秋葉原師範をやっておるのじゃ!」
といっても、にわかには信じられまい。
『違うって言うなら、そうね…ここに来る前にわけあ―シスターマックスの駐車場で起こった事を言えますか?』
「あばばばば。怪人の気ぐるみが悪霊化して暴れておったので牧街殿が羽をもぎ取った所を
妾が説得して除霊を……そうだ、牧街殿が来れば師匠が化け猫だと証言してくれるはずじゃ!」
そんな中。入口のドアに野良猫が張り付いてだんだんだん!と叩く。
師範によって偵察を依頼された猫の中の一匹だ。
「ウルサイネー、アッチイクネー」
フレンドリーな店員がドアを開けて追い払おうとした瞬間。
猫が店内に滑り込み、素晴らしい瞬発力で店員の頭部に猫パンチを放った。
すると店員の髪の毛……というかカツラが宙を舞う。
「コラー」
カツラを飛ばされた店員は怒っているようだがいまいち棒読みである。
そして、頭は禿げ頭ではなく、金属的なトサカのようなものがある!
カフェはそれを見逃さなかった。
「あれを見い、機械人形じゃッ!」
「タダノ猫ダト思ッテ油断シテイタネ。バレテシマッテハ仕方ガナイネ。ジュワッ!」
元フレンドリーな店員は怪しげな掛け声と共に、片腕を直角に立て、もう片手を肘のあたりにあてる独特なポーズをとる。
某特撮系ヒーローに似ているぞ!
「セブンよ、カルシウム光線はいかああんん!!」

――――――――――
>214
逃げる方法を必死に算段している牧街に野良猫がまとわりつく。
ただの猫にしては妙に勘が良くて気が効いているが
師範にやとわれた複数の野良猫の中には将来化け猫になる素質のある者もいたのだろう。
「にゃにゃにゃんにゃん!」
猫は猫語で必死で訴えながら、牧街を料理店の方に連れて行こうとする。


219:牧街 ◆GwyfLokZWa7/
10/02/12 06:01:41 0
>>217
藤津木からの連絡を受けた阿湖野青年だったは、ため息一つつくと、リダイアルのボタンを押した
(ま~~た牧街か……)
と内心呆れ果てながら……

しかし、電話は藤津木の携帯に繋がる事無く、呼び出し中にもならずに切れてしまった
(……何かあったな…)
そう思った阿湖野青年は、今度は恐山流除霊道場へとかけてみる
「はい、こちら恐山流除霊道場アジア本部でございます」
「阿湖野です、そちらに牧街は?」
恐山流除霊道場の面々とは今に始まった中ではない阿湖野青年がいつもの事と言った調子で訪ねると、電話の向こうの白川訓練生はあ、電話の事ですねと即座に応対する
「牧街あてにかかってきた電話の件でしたら、こちらで把握してありますので、ほっといて構いませんよ」
その言葉に、あー大丈夫なんだなと思った阿湖野青年は、お礼を言うと、電話を切った
幾度と無くためらい無く自分を巻き込んでくる親友に、深い深いため息をつきながら
>>218
(俺はパスポートは持っていない…だから国外逃亡は難しいな…ならやっぱ山の中を…)
「にゃにゃにゃんにゃん!」
(やっぱレンタカーをぱくって……いや、警察にまで追われるのは…)
「にゃーにゃーにゃんにゃんにゃん!」
(…そういえば藤津木財閥が俺の実家に手を伸ばさないとは限らないよな…。じゃまず実家に戻ってチハル達を連れて…)
「にゃー!にゃー!」
(…何か猫が集まってきて五月蝿いな……ここで集会か何かやるのか?)
自分の近くに集まってくる猫達に、何か邪魔になってるのかなぁ?と思った牧街は
座っていたブランコから立って、公園の敷地の外まで歩み出た
が、猫はついてくる
(何だ?餌が欲しいのか?………いや、体から妖気を感じる…カフェさんの師匠の使い魔か何かか?じゃあ、あの人達に何かが!!)
猫の必死な姿から、カフェの師匠達のピンチを察した牧街は、公園を離れようとする、が
(あ…そうだ、けど公園から離れると藤津木さん等来るかもだし……)
待ち合わせの件を心配した牧街の肩を、誰かが叩く
「何やってんだ?お前?」
「……やぁ…阿湖野、何故ここに?」
振り向くと、そこには例の大きなマスクをした阿湖野青年が、完全に呆れきった表情で立っている
「何か携帯にお前を呼ぶ電話があったんだけど、アレ、何?」
ジト目で尋ねてくる阿湖野青年に、うっと声を漏らして後づさる牧街
「えーと…その……あの…」
「……とりあえずこの先にあるレストラン「ホシュ」へ行けとさ。ここに何か用があるなら俺がここにいてやるよ」
素晴らしく物分りがいい阿湖野青年に、牧街の顔がぱっと明るくなる
「阿湖野~~~~心の友よ~~~~~~~」
「あ~~~うっとおしい」
言って、阿湖野に抱きつこうとして、片手で止められ…牧街の顔が一瞬きょとんとした
(…阿湖野の奴、石鹸でも変えたのか?妙に肌がすべすべだな……)
「…どうした?」
「いや、別に、んじゃちょっくら行って…何これ」
我に返り、ホシュへと走っていこうとした牧街に、阿湖野青年が収納された状態の特殊警棒の様な物を差し出している
「お前、見たとこ丸腰だから、よ。来る時お前の師匠のとこでレンタルしてきたんだ、責任はお前が取れよ」
思わず目元が潤む牧街
「阿湖野!!結婚してくれえええええ」
「…ヴァカ!さっさと行け!!木っ恥ずかしい!!」
何故か多少顔が赤くなった阿湖野青年から神通棍を受け取った牧街は、猫達に先導され一路ホシュへと走っていく


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