GS美神世界の、三流GSのスレat CHARANETA2
GS美神世界の、三流GSのスレ - 暇つぶし2ch116:惣介 ◆Sl.qrwsKik
09/11/29 01:35:53 0
都会の排ガスに馴れた肺に、山から降りて来る清涼で澄み切った冷気が入り込む。
かくして双神山の入口に着いた一向の前に、ひたすら長い石段が現れた。
「では、行きましょう。この階段は全部で2222段あるそうですよ。」

さすがに霊山だけあって森厳な雰囲気。
石段に足をかけると静電気に打たれたような、微かにピリッとした感覚が背筋を走る。
これは霊気で満ちた場所に特有の現象で、霊能者でなくとも感覚の鋭敏な人間なら感じる事であろう。

赤と黄色に色づいた葉の茂る樹陰が晩秋を知らせ、静謐な空気が山の一切を包む。
ふと見上げれば、何処かより湧き出る霧が山の頂きを霞ませる。
――端的に表現するとNHKで深夜に放送されている風景番組の様な光景だ。

やがて道はΨ字路となり、行く手が三つに分かれる。
「階段をまっすぐ登ると双見家です。僕は行った事無いけど巫女の一族が住んでるそうです。
そういえば前に大狸様が、双見家は当主がぽっくり逝って後継ぎを誰にするか迷ってるって言ってたなあ。
僕たちから向かって右の道は東峰に続いてて、反対側が西峰になります。」

西峰の入り口からは、林道の奥に鮮やかな朱の鳥居が建っているのが見える。
「僕たちも何度か西峰の狐たちに仕返しに行こうとしたんですけど、
あいつら“惑わしの九つ鳥居”とかいう仕掛けを作ってて、何度行っても迷ってしまうんです。
いきなり西峰に行くのは危険だから、まず東峰の中腹にある“狸大岩”まで行って作戦を練りましょう。
何だかお腹も空いてきたし、あったかい、バ、バ肉鍋も食…ふぇ…べた、た…い…ふぇ…ふぇくしゅ!」

最後の方は、くしゃみで何を言ったか明瞭としない。

「ここからは東峰です。」
四つ辻を右手に曲がると太いしめ縄が檜に張り渡されるのが見え、そこから先が霊獣の領域である事を示す。
石段も途切れており、でこぼこした獣道はハイキングシューズでないと厳しいかもしれない。

無数の青竹が生える竹林まで歩は進み、辺りは一面くすんだ青みの緑。
「ここは、僕たちがよく腹鼓の練習をしている所で“狸囃子の竹林”なんて呼ばれてます。」
言っているそばからポンポコポンポコ軽快な音が聞こえてくる。

「ここまで来れば、もういいや。ずっと人間の姿だと、ちょっと肩が凝るんだよね。」
ボンッ!と煙を上げて惣介の姿が人間から狸に変わり、軽やかに走り出す。
そのまま竹林の中を分け入ると、開けた場所に鎮座しているのは寝そべった狸の形をしている大岩。

「この岩屋が狸大岩です。こう見えて中は八百八十八匹の狸がくつろげるほど広いんですよ。
とりあえず、戦いの前にあったかい鍋でも食べて元気を出しましょう。
化け狸の作る鍋物はとってもおいしいですから、ぜひ食べて行ってください。」
岩屋の中に入ると、たちまち何十匹もの化け狸が現れて忙しく歓待の準備を始める。
いそいそと座布団を出したり、火鉢を持ってきたり、足湯を用意したり、肩を揉んだりもしてくれる。
やがて二匹の狸によって、湯気が立ち上り、芳醇な香りを放つ、何とも美味しそうな鍋が運ばれてきた。


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