08/12/16 00:17:49 O
午後8:30。
夜景が瞬く貳名市を一望出来る特等席、ナガツカインテリジェンスビル最上階のテラスで、城栄金剛は手の上に何やら図式を浮かび上がらせ、それを凝視していた。
図式にはアルファベットや数字が一定の法則のもと並べられている。
彼以外が見ればそれはただの暗号にしか見えないが、その正体は彼自身の『記憶』。
彼はまるでスーパーコンピュータのようにこうして自分の記憶を数式化して圧縮し、自分の中に貯蔵している。
こうすることで一度に入る膨大な情報を一言漏らさずすべてを頭の中に入れることが出来るのだ。
無論、この技術は彼自身の人外じみた異能の才覚に基づくものであるのだが。
どうやら彼は今、『計画』について次の段階を考えているらしかった。
「申し上げます。」
背後のドアが音もなく開く。中から現れたのは、側近、桜庭だ。
依然振り向かずに掌を凝視する金剛に向けて、桜庭は起伏のない声で言葉を続ける。
「臨時報告がふたつ入りましたのでご報告いたします。
まず第一、街に放っていた虐殺部隊隊長、スティクス・ガノスビッチが異能者に敗北しました。」
金剛お抱えの虐殺部隊。その隊長の敗北という報告を受けても、金剛の表情は変わらなかった。
「生命反応は断絶してはおりませんが、位置情報が不明です。ただいま位置特定に急いでおります。」
計算のうち―…そう言わんばかりに、金剛は動じない。
しかし、次の報告を受けて金剛の眉が初めてピクリと動いた。
「第二の報告です。
多方面に潜伏させた諜報部隊からの報告によりますと、反抗勢力『殲滅結社』が、明日我社への一斉攻撃を企てている模様。」
「ほォ…。」
金剛はそこでニヤリと笑い振り返った。
その表情にはかすかに怒気が含まれている。
「明日の煌神リンの『搾取』に併せて来たな…。
そろそろ来るころだとは思ってはいたが、どうも連中はとことん俺の邪魔をしたいものらしい…。」
口元は笑ってはいるが、その目には静かな怒りが篭められている。
その様子に桜庭は幾分か身を強張らせた。
「まず機関内の内応者、諜者を洗い出して俺の前に引っ立てろ。尋問して情報を搾り出す。
そしてファーストナンバーをビルに呼び戻して外側を固めろ。
ビル内は対異能者迎撃要塞形態に転換。臨戦態勢に入るぞ。
それを全部くぐり抜けた奴には……この俺が直々に『ご褒美』をくれてやる…!」
金剛は苛立っていた。
計画が大詰めに迫って来たこのタイミングで、外敵が進攻してきたのだ。
許せない。抗うものは完膚無きまでに叩き潰す。
その怒り狂う巨獣を前にして、戦慄した桜庭は逃げるようにその部屋を出て行った。
254:クロノ ◆SoGLnhQ8WY
08/12/16 18:31:29 0
>>249
クロノは自分に刺さった2つの矢が消えたのに気付くと姿勢と息を整える。
自分達の襲撃する目的地であり、矢の飛んできた方角であり、銃弾を向けた方角である
ナガツカインテリジェンスビル屋上に視線を向けたまま、電柱に隠れている闇の解析者に問いかける。
「当たりましたカ?」
「ふふふ!闇の解析者の俺には判る。撃ってきたのは異能者だ。性別は女性、歳は10代、スリーサイズは80,60,75」
「私には当たっているのかわかりまセン」
「弾は外れたようだ。しかしスリーサイズには自信が―」
「貴方がそう言うのなら間違いないのデ―オヤ、この臭いハ」
新たに飛んできた存在が視認できる距離まで迫った時に嗅ぎ取った臭い。
彼は自分よりも確実に判るであろう仲間に確認を取ろうとして電柱に目を向けると、既にその仲間はいなくなっていた。
斜め前方より飛んできた槍に対して先程のようには受けずに、今度は前方に手を付くように跳んで避ける。
クロノは逆立ちの体勢になり、槍は股の間を抜けて彼の目の前で地面を打つ。
しかし今回はそれで終わらない。地面を打った槍は、瞬く間に周囲の酸素を奪い、広範囲に亘って地獄の業火で焼き尽くす。
当然彼も業火に巻き込まれ、その影は踊り狂う間もなく消滅した。
「酷い臭いデス。鼻が曲がってしまいマシタ」
闇に包まれた下水道をひたひたと歩く音。
「これでは機関の人の臭いも判りまセン」
相も変わらずにやけた口元と金髪、そして白い肌。
しかし今そこに存在している白き肌は、地上で燃え尽きた黒き布で隠される事なく全てを曝け出していた。
その曝け出された身体を見た者がいれば、特徴的に思うところは男性特有の局部でも、手足の長さでも全身の肌白さでもない。
―大抵の者はその全身を覆うように存在する無数の傷跡に目を奪われるだろう。
戦いの勲章などと呼ぶにはあまりに異常な数が全身を覆っているのだ。当然恋島との戦いや姫野の撃った矢や炎による火傷でこんな傷はできない。
「まあ仲間の顔は知っていますシ、それ以外にビルにいる人は機関の人と判断してかまいませんよネ?」
クロノの独り言に応える者は存在しない。ただひたすらに裸足で歩く音にクロノはさらにニヤケ面になる。
しばらく歩いてるうちにふと身体中の傷跡が疼き出すのを感じる。
「オヤ、異能力を使い過ぎたでしょうカ?それとモ…」
両腕にも存在する疼いた傷跡を擦るようにするその姿は、寒さに震えているとも何かに恐怖しているとも見える。
しかし彼の顔は相変ニヤケ面を崩していなかった。
【クロノ:飛んできた槍を避けた後、異能力で地面を全身すり抜け貫通、下水道に出てそこからビルの方向へ向かう】
【炎に巻き込まれたのは武器を含めた身に纏っていたもの全て、その為現在全裸で下水道を歩いている】
【国崎を連れてナガツカインテリジェンスビルに向かっていた『オマエ』がナパーム弾による火災に気付いて一般人の洗脳により隠蔽を行う】
255:神重智&敬 ◆6eLTPQTFGA
08/12/16 20:54:01 0
>>229
こちらの問いかけに七草は答える。
「言ったでしょ、貴方を倒すのはこの私だって…
でも今のアナタを倒しても意味が無いわ…だからアナタが私以外の奴に倒されないように
力が戻るまで私が……、守ってやるって言ってるの…、アナタにだって悪い話じゃないと思うけど?
分かった?、じゃあ行くわよ!」
こちらが返事をする前に背を向けて七草は歩き出した。
(…………)
(……なぁ兄弟…これが俗に言う…トンデレってやつか?)
(……ツンデレの間違いだろうが……敬)
こちらの面食らった様子にも気づかず、少し距離が離れた時点で振り返り
「ホラ!早く来ないと置いていくわよ!」
と、こちらを呼んでいた。
(なぁ…男…いや男なのかはわからんが…ツンデレって実際見るとアレなんだな…)
(うむ…恐らくこれが現実というものなんだろうな…とはいっても私がツンデレに興味は無いが
まぁ恐らく彼…いや彼女…?に敵意は無いでしょう…多分…?)
精神世界で会話を続けているうちに七草の呼び声が大きくなってくる。
さすがにこの時間にこの大声は近所迷惑ではなかろうか、などと一般人の考えをする神重だった。
「わかりました、すぐ追いつきますので…。そう大声を出さないでもらいたいですね」
【神重:七草についていく】
256:姫野 与一 ◆LuqsQs0P4w
08/12/16 22:42:12 0
着弾して火は燃え上がっている。命中した…かな
確かに炎の中心でアイツは燃えていた。
「ふう…面白かった…けどぉ私の…勝ち…フフ」
与一の顔は僅かにだが微笑んでいるようにも見えた。
安心しきって最後にもう一度アイツの方を見ると――
火の中心には燃え盛っているアイツの衣服だけ。
にやけた顔の男も一緒にいた男もそこにいなかった
「消えたぁ…?骨が残らないのはおかしいし、もしかしてぇ逃げられた…?ということは…私の…負け…」
顔を引っ込めてその場に膝を突く。その仕草は機関の狙撃者ではなく、ただの少女の仕草だった。
「私の負けだよ…アイツらには逃げられたし…」
四つん這いの状態からもう一度地上を見下ろす。
すごい光景だった。お互いに顔も知らない者同士なのに火を消す為に団結して消化している。
与一の頬を涙が濡らしていく。一人の少女の泣き声は夜空に響いた。
―10分後
弓を片手に夜食のメロンパン(カスタード)を頬張りながらグルグルと歩き回っている。
「地上は面白いねぇ…私の想像を上回るくらい面白い…」
なのに…私は偉い人の指示でただ誰もいない屋上から一方的に打っているだけ。
ここはつまらない。私も地上に帰りたい。暖かい布団で寝たいな。戦いたいなぁ…
「…私をここから連れ出してくれる人来ないかなぁ…」
それにしても…おまけの方…私の事をすごくえっちな目で見ていたなぁ
次、あの顔見たら飛竜使わないで素手でぶっとばそうと思う。うん
【ナガツカインテリジェンスビル屋上】
【クロノに逃亡される】
【オマエには気付いていない】
257: ◆SoGLnhQ8WY
08/12/16 23:33:25 0
>>112の後―
その男の横を走りすぎようとした時、バイクを運転する香坂が驚愕の表情をその男に向けたのに翠は気が付いた。
次に気付いたのは銃声、そしてバイクがバランスを崩して転倒した事。その時に香坂が身体を打って気絶した事。
翠は香坂を抱えてバイクから飛び降りると、落下の衝撃と爆発による衝撃から自分達を包んで護るように、柔らかくも頑丈な箱を出現させる。
その時レオーネから預かっていたハンカチが爆風で飛ばされているのに気付きそのハンカチも汚さないように箱を出現させて包む。
そして箱の中から見える先程の男。金髪で黒いタキシードを着て、嫌なニヤケ面をしている。
この男も近くで爆発に巻き込まれたように見えた。しかし服はボロボロになっているものの、顔には焼け跡一つ見当たらない。異能者だ。
そしてこの男が敵だと確信させたのはその手に持っていた銃。香坂を撃とうとしたのか、バイクのタイヤに撃ったのかは知らないけどそれが原因で転倒したのは確か。
翠はその男の周りを包み込むように箱を出現させて閉じ込める。そして上空にさらに硬質の箱を作り出して角から落とす。
敵は倒した。香坂が撃たれた可能性もあった為にその場で確認する。外傷は見られなかった。
ほっと息をするその隙に倒したと思っていた男は落とした箱も、その身を包む箱もすり抜けてこちらに来た。やはり無傷。いくつも箱を出現させて相手に当てるが、どれもすり抜けて貫通していってしまう。
男が自分達の箱の前まで来る。翠は自分達を護っている箱の硬度を強める。しかしそれが無いものかのようにその男は手を入れてくる。寄り添う二人。そして―
二人を包む透明な箱は中から大量の血で塗りつぶされた。
―病院のベッドで翠は目覚める。
「……織重ちゃん、どこ?」
【永瀬翠:現在地病院】
258:梓川 博之 ◆acBW5xlTro
08/12/16 23:40:22 0
>>230>>234>>250-252
>「……先輩、無理に明るく振舞わなくても良いんだぞ?」
開口一番、それが飛び出るか。
予想以上に廻間は鋭かったようだ。それも恐ろしいほど。
>「……まあ先輩なら自分の事は自分でなんとかするよな、大人なんだし」
「先輩にそういう口の聞き方は無いんだろ?『モテ男』君め」
苦笑交じりに混ぜ返す。
それから女性の話が始まり、数十分かけてじっくりと情報を話していった。
驚愕に驚愕が続く話の内容…。
「…………機関がそこまででかい組織だったとは…」
そして、女性は手を貸さないと殺すと言った。
廻間はそれに快く了承している。
(だけど、それだけでかい組織となると構成員もかなりの数の筈……異能者も沢山。
幹部を一人一人闇討ちでもしないとリスクがでかすぎる。さて…)
そう考えていると、後ろから会話に乱入する無礼者が来ていた。
>「─店長は戻らず、店内では殺人か……。いよいよこの店の未来は暗くなってきたな」
「……その声は、またあの礼儀知らずかよ」
後ろをちらりと見れば、あの灰色の髪の男。
何を言うかと思えば、力を貸すなどという。
だが、俺は信用できない。一方的に情報を寄越せと言う奴だ、そのうち裏切るかもしれないしな。
と、ふと廻間が入り口に突進し、扉を開く。
>「アニキ!?」
…今度は廻間のお兄さんか。
この数日、色んな人と出会うな。
【梓川:幻十の話を聞くつもり。屡霞達の協力の要請に対してはまだ返答せず】
259:久坂 闇 ◆AcGOOYOwno
08/12/17 19:49:28 0
弱った……
勢い込んで出てきたのはいいけど、何処に行くべきなのか……
あれから、主催者側からの連絡はない
異能者の気配を感知出来る程の感覚も持ち合わせてない
……つまり、行くあてはゼロだ……
とにかく、街全体の様子を把握出来る所―
―たとえば、大きな建物の上などに移動してみた方が良いかもしれない
此処から、一番近くて、大きな建物といえば……
「ナガツカインテリジェンスビル……」
【久坂 闇:ナガツカインテリジェンスビルに向かう】
260:アルト ◆Jm4vxzroP6
08/12/17 19:57:54 0
>>240
いつのまにか振り向いた私が見たのは、小村禅夜だった。
……不可解で、不愉快だ。何者かの精神干渉かなにか、か?
「全く……無駄に時間を使わされましたね。」
妙に疲れた感じで、なにかを知っている風なことを言う。
「あら、なにかあったんですか?」
尋ねるが、その疑問は無視される。
「それじゃあ、私は急いでるので。」
そのまま手を振り、彼は立ち去った。――ハハ、不愉快だ。
一体なにがどうなっているのかを把握することができない、というのは。
「……いけない、一度休んだ方がよさそうね」
この場に留まる理由もなくなった。私は、一度ナガツカインテリジェンスビルに戻ることにした。
「これを解析してもらえば、なにか分かるかもしれませんしね」
機連送、だったか。音声を記録する機能もあるらしい。
その記録した音声を調べれば、何があったかを知ることもできるだろう。
「ああ、もう。やれやれね。――本当は、暴れたい気分なんだけれど」
気分で暴れるのは、趣味じゃない。趣味趣向を無視するほどのストレスはない。
精神攻撃の類か。なんらかの干渉があったのは事実だろう。
私の心を害するというのなら―殺さねばならない。
この殺意は、その時まで取っておこう。
【アルト:ナガツカインテリジェンスビルに戻る】
261:折川雅司 ◆acBW5xlTro
08/12/17 21:39:32 0
>>256
ガンガン!
ナガツカインテリジェンスビルの屋上に、乱暴なノック音が響く。
その後に入ってくるのは金髪ツンツン頭の男。
ビルの上の強い風にも怯まず、手に持っていたホットコーヒーを姫野に投げ渡しながら挨拶をする。
「よぉ与一ぃ、数ヶ月振りぃ。元気だっただろーなぁ?ヒャッハッハ」
何気に笑顔を浮かべながらやってきた男は――折川雅司。表ではミュージシャンとして活動している青年だ。
機関のNo.77であり、姫野とは共同任務の際に知り合い、気が合って友人となった。
反対そうな性格が逆に気に入った!とは折川の談。
「本当は連絡入れようと思ったんだがよぉ、機連送が不意打ちで壊れちまったんでなぁ。
新しいの貰おうと思って来たら、丁度良いだろーってことで直接会いに来たっつーわけだぁ!
いつもどおり眠そうで元気そうでなによりだぜぇ!
しっかし、てめぇはきちんとしたところで寝て…………なさそーだなぁ。ゴミ塗れじゃねーかぁ。
それぐらいきちんとしろよぉ?」
呆れた表情を作りながら、自らの手に持っていたコーヒーを飲み干して。
からからと笑っているが、人の事が言えるような立場ではなさそうだ。
だが、急に何か思い出したらしく。
途端に真剣な顔になると、姫野の目を見据えながら話す。
「…あぁ。そういえば、ウエからてめぇに仕事があるって言ってたぜぇ。
簡潔に言うとだなぁ…地上に降りろ、だそうだ。
なーんか雑魚が大勢やられたりとか、厄介な奴らが押し寄せるとかでなぁ。
それにセカンドナンバーの上位の奴らも殺られたらしく、ファーストナンバーも出てるが人手が足りないそうだ。
其処でてめぇに前線に出てもらおーってことらしい」
【場所:ナガツカインテリジェンスビル屋上】
【折川雅司:姫野に新しい任務を言い渡す】
262:鳳旋 希一 ◆sJZQ9grsuk
08/12/17 21:42:35 0
>>245
「ク、クリムゾ…ン…」
なんとか主婦王の異能力から逃れることが出来た。
近くで松水伸子は倒れていた。自分の能力を扱いきれていなかったのか
自分の欲望に飲み込まれたのだ。
松水の能力は他人に欲望の多いほど、重さを与える精神攻撃。
だが、自分の圧倒的な欲望に能力が反応して自滅してしまった。
奴がてこずっている間に気合で押し返し、なんとか肉を手に入れることが出来た。
「わしの初戦が主婦王でしかも自身が自滅してしまうとは…
ふむ、誰が異能者か分からんからの…油断できん」
じゃが…わしは…ステーキ肉の置いてある台の前である事に気付いてしまった。
か、金を持ってなかったのじゃ…
ステーキ肉が右手に二つ、左手に一つとサイコロステーキ。
無断で持って帰るのはここの者達全員を敵に回しかねない。
光龍を探すかの…
タイムサービスは終了し、店内の人々は半分以下程度しかいなかった
とりあえず光龍を探そうと歩き回っていると、鮮魚コーナーに人だかりが見えた。
たかが商品を捌いているだけなのに何を騒いでおるのじゃ?
気になり、人ごみを避けて原因の場所を覗くと――
いた。光龍。彼奴は何をやっておるのじゃ…
ふむ、しかしここで、彼奴を止めて拗ね始めたらこっちが困るからのぉ…
ここは一つ、彼奴の実力を見させてもらおうかの。
【スーパー唯能】
【肉を確保】
【光龍の解体を見ている】
263:姫野 与一 ◆LuqsQs0P4w
08/12/17 23:12:17 0
ナガツカインテリジェンスビルの屋上に、乱暴なノック音が響く
「んん…うる…さいなぁ…ムニャムニャ…」
私としたことが、また寝ていたようだ。まさかこんな短時間で何回も寝るなんて。
今のは扉が開いた音。入ってきたのは…金髪ツンツンの男。
確か以前に任務で出会って仲良くなった人。まさかこんなところに来るなんて。名前は…たし…か…
「折…川君?あ…」
突然コーヒーが飛んでくる。私はこれを白羽取りの如く両手で…
…イタイ。取れなかったぁ…
>「よぉ与一ぃ、数ヶ月振りぃ。元気だっただろーなぁ?ヒャッハッハ」
ウッ…笑われた…少し悔しい…かな
>しっかし、てめぇはきちんとしたところで寝て…………なさそーだなぁ。ゴミ塗れじゃねーかぁ。
それぐらいきちんとしろよぉ?」
「え?あ、こ…これは…その…仕事の後はすぐに…ネムッチャ…」
最後まで続かなかった。恥ずかしい…同僚で友人でも相手は異性だ。こんな所を見られるなんて
ある意味一生心に残ってしまう傷が…
>呆れた表情を作りながら、自らの手に持っていたコーヒーを飲み干して。
コーヒー飲むの速いなぁ…
ちびちびと飲みながら彼を見ていると途端に真顔になった。
>「…あぁ。そういえば、ウエからてめぇに仕事があるって言ってたぜぇ。
簡潔に言うとだなぁ…地上に降りろ、だそうだ。
なーんか雑魚が大勢やられたりとか、厄介な奴らが押し寄せるとかでなぁ。
それにセカンドナンバーの上位の奴らも殺られたらしく、ファーストナンバーも出てるが人手が足りないそうだ。
其処でてめぇに前線に出てもらおーってことらしい」
「え?うそ…折川君、ホントに?」
これには驚いた。まさにぐっどたいみんぐ。地上に降りれば、アイツとも戦える。あの変態もぶっとばせる。
こんなに良い事はない。彼には感謝しないと。
「…分かった。偉い人の命令なんだよね?じゃ、行こう」
小さく鼻歌を歌いながら散らばっているコンビニ製品を集め大きなヴァイオリンケースのような大きな黒いカバンに弓と一緒に詰め込む。
カバンの中には既に物が入っており、生きるために必要な貴重品も入っている。
さらには分解されている長身のライフルまで入っていた。ちなみにカバンの中もとてつもなく散らかっている
真っ白なコートを着て、片手にバッグを持ち、片手で折川の手を引いてせっせと階段に向かう。
こんな所早く離れたい―その一心のみで動いていた
【ナガツカインテリジェンスビル屋上→移動】
【折川と地上へ】
264:織宮京 ◆9uPeCvxtSM
08/12/18 15:02:23 0
>>246
目の前の人影はもの凄い勢いでこちらに走ってくる。
やはり、俺を倒すために送られた刺客か、そう思い身構えると。
「早く逃げろ! 矢の雨が降ってくるぞ!」
その人影はそう叫んだ、距離が近づくにつれて顔がはっきりと分かってくる。
年は二十代くらいの眼鏡をかけたどこにでも居そうな若者だ、何か幸の薄そうな顔をしている。
「やのあめ?何ですかそれ、おいしいのですか?」
青年は俺の言葉を聞く前に走り去っていく、何となく俺もそれに従い走る。
一向に青年が言った『やのあめ』と言うものは降ってこない、いったい何んだ。
青年は走り疲れたのか立ち止まり息を整えている。
「はぁはぁ……どうしたのです?やのあめなるものは降ってきませんが?」
俺も走り疲れて息を整える、年は取りたくない物だこの程度で疲れるとは。
青年は上の方をきょろきょろと見渡して安心したように息を吐いた。
それにしてもこの青年は俺を狙っている訳ではないのか、少し残念だ。
この街の平和を脅かす物はこの神の子織宮京が成敗してやろうと思っていたのに。
などと思っていたら、いつの間にか目の前に教会への近道がある廃ビルがあった、何という幸運、これも神の導きだな。
【織宮京:恋島と一緒に走る 現在地 河川敷付近の廃ビル】
265:戦場ヶ原&屡霞 ◆u5ul7E0APg
08/12/18 15:42:24 O
>>232
戦場ヶ原は、聞き覚えのある声を聞き、目を醒ました。
見知らぬ天井、壁、畳に囲まれた部屋の中。
おそらく倒れている間に屡霞が運んでくれたのだろう。しかし、体の痛みは依然として彼の肉体を蝕む。
ふと顔を上げると、襖の向こうには屡霞と、昨日戦ったスピード小僧こと廻間と、知らない弱気そうな少年が座っていた。そして―……
「池上……燐介ッ!」
夕べ死闘を演じた氷使いが立っているではないか。
「ぐッ…!」
戦場ヶ原は急いで立ち上がろうとしたが、体が思うように動かず、肘をつく。
「戦場ヶ原ッ!」
突然部屋に現れた未知の訪問者に不審な目を向けていた屡霞は、池上から目を離して、目を醒ました相棒に駆け寄った。
その凄まじい怪我を見て梓川は怯み、廻間は相変わらず睨み付けている。
戦場ヶ原は屡霞に支えられながらも、池上の前まで足を踏み出した。
「手を貸す…だと?なんのつもりだ、池上燐介。…ふざけるな!貴様に手伝ってもらうほど―」
「戦場ヶ原!」
池上に食ってかかる勢いの戦場ヶ原を、屡霞は窘めた。
「つまらん意地を張るな!キミも虐殺部隊と戦って分かっただろう。
物量がケタ違いだ。もう我々二人で立ち向かえる相手ではない。
我々が喧嘩を売ったのは、そういう相手なんだ。」
「クッ……」
屡霞の説得に、戦場ヶ原は納得の行かない様子でそっぽを向いた。
「すでにそこの異能者二人、廻間には了承を貰った。彼とキミの間に何があったか知らないが、彼は快く承諾してくれたぞ。
キミもいい加減大人になったらどうだ。」
戦場ヶ原は傍らに座る廻間と睨み合う。その眼の奥に眠る闘志に、戦場ヶ原は気がついた。
(コイツ……昨日よりも成長してやがる…)
梓川は依然進退を考えているようだった。しかし、話を聞いた以上、選択肢は一つしかない。
彼にも闘ってもらわなければならない……そういった思惑が、屡霞の中にはあった。
その時、廻間が突然何かに気がついて、表の店へ駆け出した。
何事かと一同もそれに続く。するとそこには、廻間によく似た風貌の青年が立っていた。
「アニキ!」廻間がそう呼んだ青年は、不敵な笑みを浮かべて、一同を見渡すと、話があるから聞け、と言った。
屡霞は戦場ヶ原をまた投げ捨てて、素早く禍ノ紅を抜き放つと青年に刃を向けた。
「何者だ…貴様ッ!」
【戦場ヶ原:目を醒ます。】
266:池上 燐介 ◆qqu0tZFsYU
08/12/18 21:38:59 0
>>251>>258>>265
─俺の言葉が意外だったのか、霧男は憮然とした表情を一向に崩そうとせず、
山田に至っては俺を真っ向から拒絶し、この場で再戦しようかという勢いでいる。
が、俺と彼らは元々敵同士だったのだから、彼ら二人の反応は当然とも言えるだろう。
むしろ俺にしてみれば、彼ら二人より『廻間』とかと呼ばれたあの剣使いや
黒髪の女の随分とあっさりと了承した態度の方が意外であった。
まぁ、それだけ二人も自身に差し迫った状況を存分に理解してきたということなのだろう。
傷だらけの体を引きずりながら今にも俺に掴みかかろうとする山田に対し、
黒髪の女がなんやかんやと言葉を並べて諫めると、やがて山田はしぶしぶと引き下がっていった。
「フッ……阿呆が」
俺はそんな山田を見て、冷笑気味にそう呟いた─そんな時だった。
鋭さを増していた俺の感覚が、不意に一つの異能力を捕らえたのは。
既に廻間はその気配に気がついていたのか、彼はいち早く店の出入り口に駆け寄ると、ドアを開けた。
と、そこには、一人の男が立っていた。廻間が思わず「アニキ」と叫んでいたことから、ここは廻間の兄と
思うしかないのだろう。彼は俺達に何かを話そうとしたが、それは彼に警戒して刀を抜いた黒髪の女に
よって制止させられていた。
俺は「やれやれ」といわんばかりに溜息をつくと、彼女の横に立ち静かに口を開いた。
「最近、この町では女が刀を振り回すのが流行っているのか?
……こいつは俺達に何かを話したいようだから、まずはそいつを大人しく聞いてやろう。
五対一を覚悟で喧嘩を売りに来たとも思えんし……な」
【池上 燐介:話を聞くことにする】
267:レオーネ・ロンバルディーニ ◆GWd4uIuzU6
08/12/19 00:03:28 0
>>248
フランス製の蒼い高級車は、向かい風を切り裂きながら疾風の如くひた走る。
許されざる魔性の城ナガツカインテリジェンス本社ビルへ。
乗っている男―レオーネ・ロンバルディーニの表情は何処か険しく、
そしてまた何処か嬉しそうにも見える。既にセカンドナンバーにも多数の犠牲が出ている中、
ファーストナンバーであるレオーネにも、その異能を存分に発揮しろとの通達が届いていた。
彼らファーストナンバーといえば、機関の方針決定を司る最高幹部にして機関最高の戦力だ。
それすらも実戦に投入する程の一大事にしては、街は静かであった。
いや―静か過ぎるのが一大事の証拠なのかも知れない。
昨日までの異能者同士の戦いの音は勿論、生活の雑踏すらも街には響いてはいない。
まるでこの街がゴーストタウンにでもなったかの様だった。
本部を狙うとなれば、その混乱に乗じて不安定要素が必ず入ってくる。
親友の、そしてレオーネ自身の計画を最も憎悪する男が、この絶好の好機を逃す筈が無い。
―そういえば、アイツはこんなアップテンポ調の賑やかな歌は好きではなかったな……。
レオーネは車内に響く流行歌手の歌を聞きながら、
これから確実に訪れるであろう"宿敵"との思い出に思いを馳せた。
レオーネと宿敵―長束誠一郎が初めて出会ったのは何時の頃だったか。
それを思い出すのには、先ず自分が機関に入った頃を思い出す必要が在った。
何故ならば、レオーネを機関に入れた人物は誠一郎の実の父親であったから……。
それは酷く懐かしい記憶。しかし同時に、
彼にとっては思い出す事も躊躇われる程苦痛に満ちた記憶でもあった。
物語とはかくも悲劇的なラストで終わる物なのか……。
一度湧き出た記憶の奔流は、今更塞き止める事を叶わずレオーネの心を苛んで行った。
268:レオーネ(回想) ◆GWd4uIuzU6
08/12/19 00:06:39 0
頭は暗く冷たいアスファルトの上、瞳は天を見上げている。
憎悪の目で見る空の色は、オレの心と同じく真っ黒だった。
違いがあるとすれば、そこに星が在るか無いかの違いだ。
家が燃え落ちてから、オレはずっとこうやって天を睨みつけていた。
ただただ呆然と、神に対する呪詛の言葉を吐きながら……。
こうしているのも、後四十分で四日目に入ろうとしている。
ここミラノの街が存在する北イタリアの冬は寒く、
辺りはすっかり白銀に満たされている。
深々と降りしきる白い妖精が、オレの顔を、体を覆っていく。
いっそこのまま永久の眠りに身を委ねたら、また皆に逢えるのだろうか?
涙は既に涸れ果てた。オレにはその事が堪らなく悲しかった……。
「おい、兄ちゃん。おめぇ誰に断っておれさまの縄張りに入ってきてんだ?」
不意に頭上から降って来たしゃがれた男の声に返す言葉を発する力は、
最早オレには残されていなかった。
天を見上げている視界の中に薄汚れたと言う言葉は生易しく思えるほど、
ボロボロになった衣服を纏った男が入ってきた。
アルコールの臭いが鼻につく。
「誰に断ってここで寝そべっているんだ、このクソガキが!」
体が吹っ飛ぶかと思えるほどの衝撃の後に腹に強烈な痛みを覚えた。
すぐさまオレは自分が蹴られたのだと理解した。
一発、二発、三発―。繰り返し蹴り上げられる男の足を防ぐだけの力はもう無い。
これでいい、このままにしていれば内臓が破裂して死ぬ事が出来る。
男の激昂は留まる所を知らず、無抵抗なオレの姿に気を良くしたのか、
腹を痛めつける足は益々力がこもって来た。
もうすぐ皆にまた逢える。そう思うと、不思議と枯れた筈の涙腺から暖かい滴が流れ出た。
「な…なんだっ、てめぇは! やろうってのか?」
不意に止まる男の足。なんだよ、何で死なせてくれないんだ?
霞んだ目に、闇夜を貼り付けたような黒いリムジンが映った。
最近の死神はリムジンに乗ってきてくれるようだ……。
「異能者の気配に感づいてここまで来たが、
こんな裏通りなど普段なら気にも留めなかったな」
そっと差し出された大きな手の持ち主は、
言葉はイタリアの言葉を話しているが明らかに東洋人だった。
そいつは長身で黒い頭髪に高そうなネクタイをしていた。
なによりも、純白色の世界に漆黒のスーツがオレには異様に見えた。
オレからの反応が無い事を見るや、男は強引にオレの手を取り抱きかかえた。
「ここで遇ったのも何かの縁。みすみす見殺しにする訳にもいかないだろ」
―男が滞在していると言うホテルへ向う車の中で、
オレはこの男の名前がコウセイ・ナガツカという事を知った。
269:レオーネ・ロンバルディーニ ◆GWd4uIuzU6
08/12/19 00:12:50 0
ナガツカインテリジェンス本社ビルの脇に在る立体駐車場、
私はここに車を止める事にした。
本来ならば地下駐車場に停めるべき所だが、近間で済ます事にしよう。
排気音とエンジン音であれ程煩かった車内は、エンジンを切った事で途端に静寂に包まれた。
それにしても、思い出してしまったな。師との出会いを……。
そうだ、浮浪者によるリンチと寒さで弱りきった私を介抱してくれたのは、
他でもないあの誠一郎の実父長束公誠その人だった。
あの時差し出された大きな手……。私は一生忘れる事は無いだろう。
師は冷たく凍りついた私の心を溶かしてくれた。
彼は私にとってこの世でただ一人の、尊敬に値する人物だった……。
車から降りてキーケースをジャケットの内側にしまい込むと、
正面玄関を目指して歩いていく。この距離は楽ではないな。
私は若干急ぎ足で正面玄関のドアを開けた。
一階ロビーは無駄に広く、無駄に豪勢な造りをしている。
大理石で出来た床に観葉植物や虎の剥製などが置かれている。
奴の―城栄の趣味全開といった所か。まぁ、第一印象が重要なのは確かだが。
40階にある作戦会議室にでも行ってみるか。
何か情報が得られるかも知れない。
早速エレベータに向うが、他の階をウロウロしていて全く降りてくる気配が無い。
―私は自分のアンラッキーさに、盛大に舌打ちをした
【レオーネ:現在地 ナガツカインテリジェンス本社ビル ロビー】
【エレベーターを待っている。回想は残り6回】
270:七草 ◆O93o4cIbWE
08/12/19 00:27:49 0
>>255
「コラ―!―ハヤク―!!」
あれから此方が何度も呼んでいるが来ない
「わかりました、すぐ追いつきますので…。そう大声を出さないでもらいたいですね」
そう言って、しばらくしてやっと此方に歩いてきた。
「ぅむぅ………」
手を口元に当てて黙る
確かに少し声が大きすぎた、この辺りには虐殺部隊がうろついてると言うのに、あまり目立つことはしたく無かった。
此処に来る前に虐殺部隊を始末しておいたが、所詮氷山の一角に過ぎない、やはり叩くのなら幹部クラス、それさえ叩けば。
「あ、アハハ…そうね、ちょっとうるさかったわね、
ああそう、この辺は――!」
刹那、七草は服の下に隠してあった短刀を腰から取り出し神重に向かって投げつけた、
短刀は風を切る音と共に神重の頬を掠め、背後の物陰にいた黒ずくめの男の肩に刺さり銃を落とし蹲っている。
一瞬の出来事で硬直していた神重が状況を把握したのか此方を向き直し問い詰めて来た、彼女はそれを無視し
「お客さんの登場ね、やれやれ、誰のせいかしら?」
此方を凄い形相で見てくる先生を無視し、黒づくめの男に一気に駆け寄る、
至近距離まで近づいた辺りで蹲っていた男が銃を拾い直し此方へ構えた、
それに合わせ姿勢を低くし男の懐に潜り込む。
「…の……を邪魔する奴は―…」
この男には聞えているだろう、だが神重からは聞き取れていないようだ、そして
「馬に蹴られて死んでしまうといいわ―」
男の胸部へ向けて強力な背面蹴り、いや馬蹴りと形容した方がいいのかもしれない
蹴りを食らった男は吹き飛び倒れこむ、彼女は身を翻し腰から更に短刀を取り出し男の首目掛け投擲した、
短刀は正確に男の急所を穿ち、男は首から血を流し絶命した。
271:恋島達哉 ◆KmVFX58O0o
08/12/19 00:29:05 0
>>264
走りながら思った。流石に矢の雨は無いわ。どんな表現だよ。何となくやばそうな感じを伝えたかったのだが……。
背後を窺うと、神父さんがポカンとした表情を浮かべていたが、俺の様子から察したのか俺の後ろを走り出した。
どうにか神父さんをココから移動させる事が出来そうだ。俺は心の中で安堵した。
しかしどこまで走ればいいのやら。とにかく喫茶店とは違う方向が良いだろう。俺はさっき来た道とはとにかく違う方向に走った。
周囲の風景が物悲しいゴーストタウンに変わっていく。結構この町って広いんだなぁと、どこか他人事のように思う。
――ここまで来れば大丈夫なのか……な? それにしても見た事も来た事も無い場所だ。結構この町を歩いた筈なのに。
立ち止まって荒い呼吸を徐々に静めていく。っと安心は出来ない。耳鳴り。
『生体反応は無いな。熱源反応も掛けてみたけどそれらしき物は見られない。それに……その男からも殺意は感じられない』
頭上のビルらしきビルを見回るが、特に変な奴はいない……と思う。神父さんもその様子から見るに悪人では無さそうだし。
改めて神父さんに振り向くと、神父さんは息を整えながら俺に聞いてきた。
>「はぁはぁ……どうしたのです?やのあめなるものは降ってきませんが?」
ニュアンスからして、俺の矢の雨発言を不思議に思っているようだ。まぁそりゃあそうだ。
けど一緒に河川敷から逃げてくれてよかった。もし神父さんが俺を頭のおかしい人だと思ってスルーしていたら、どんな事態になっていたか。
つか弁明しないと。どっちにしろ神父さんに俺の事を誤解させたままになってしまう。
「ごめんなさい、突然連れ出してしまって」
俺は神父さんに頭を下げながら謝罪した。神父さんの反応が微妙に怖くて顔を上げられない。
「けど、あのままだと貴方に命の危険が迫ると思い、ああいう行動に出るしかなかったんです。で・・・…」
まずい、言い訳が見つからない。目の前でボーっとしてたらおじさんの頭に矢が刺さって川に落ちたんです!
……なんて言える訳無いじゃん。物凄くヤバイ上に逃げざるおえない状況だと頭の中では理解しているが、口で説明できる光景じゃない。
このままじゃマジで神父さんに連れ出した理由を分かってもらえなくなる。それだけは避けたいが、どう説明すれば分かってもらえるだろう。
俺がチラリと目線を上に上げると、神父さんが凄く不審そうに俺を見ていた。あぁ・・・・・・まずい、すげぇまずい。
っつ! 俺は反射的に首筋を掌でふさいだ。たらりと、生暖かい血が指の間を伝った。同時に服に胸の辺りの血が滲んだ。
そうか、クロノとの戦いの時の傷が今になって・・・…。戦ってる最中はアドレナリンとやらが脳みそに流れてるせいで痛覚が鈍るんだよな。
一息ついた途端、クロノから食らった攻撃による傷がズキズキと疼きだした。いや、これは結構……痛い。
血を止めようと掌を押し付けるが、細々と流れる血は止まろうとしない。あ、そういやさっきから偉く寒いな……。
あ! そういやジャンパーはクロノが地面に埋めやがったんだ! ちくしょう、あの野郎トンでもない事を……。
寒い……。冗談じゃなくて凄く、凍えそうなくらい寒い……。俺は両肩の震えを両腕で押さえた。歯がカタカタ震える。
なんか世界で一番不幸な気分だ。全部自業自得なのが救えねぇ。気づけば両膝が地面に落ちていた。
痛みと寒さと空しさとどうしようもなさが混然一体となって、今の俺を包み込んでいた。一言で言えば死にたくなってくる。
あれ? 視界が、視界がぼやけていくぞ? 顔を上げて神父さんの表情を見ようとするが、すればするほど顔が下がる。
駄目だ、倒れちゃ神父さんに迷惑を掛け……上がれ、上がれよ、オイ……
そうだ、倒れる前に……。倒れる前に何か伝えなきゃ、な……。
「あ、あの・・・…」
「フラン……ダースの……犬っぽく、ないっすか? 今の俺……て……」
薄れ行く意識の中で放った台詞に、俺はただただ悲しくなった。だって何言っても……もう……いいや……。
【疲労がピークに達して行き倒れ。ギリギリ意識はある状態】
272:七草 ◆O93o4cIbWE
08/12/19 00:29:27 0
「―ふう、」
彼女はため息をつきながら、男の肩と首に刺さった二本の短刀を抜き取る
「うわっ、きったなぁ~い」
不満そうに短刀に付いた血を払いながら神重の方を見る
「あ~あ見つかっちゃったわね~、え?こいつ等は何者かって?
知らないの?それよりもこれからいっぱい来るわよ」
そう言ってるうちに道の向こうからぞろぞろとやって来た、
私の眼は暗闇でも獲物を確実に捕える、距離はおよそ600メートル先、数は4…5…6人か
「4…5…6人ってとこね」
振り返り先生に聞こえる様に呟く、先生には見えてるのかしら?
「それじゃあ、行くわよ先生、何か作戦は在る?
無ければこのまま殺っちゃうわよ?」
【七草:虐殺部隊が接近中、七草は虐殺部隊を目視可能・神重に作戦は無いか聞く】
273: ◆KmVFX58O0o
08/12/19 00:33:06 0
――頭上高く、ナイフを逆手持ちしていた男が、ハッと我に帰る。同時にするりと、男の手からナイフが落ちる。
仁王立ちしている男の真下には、空ろな表情で首辺りに血の水溜りを作った女性の死体が居た。男の視線が女性の視線と合う。
瞬間、男は声にならない声を出して腰を抜かすと、その場から逃げる様に地を這った。すると・・・…。
「お疲れ様です。ちゃんと殺せましたね」
抑揚の無い冷めた声がして、男が顔を上げると――四角いメガネを掛けたスーツの男が、にこりともせず男を見つめていた。
「ひ、ひぃぃ!」
「何を驚いているんです? 貴方自身が望んだのではないですか。彼女を――殺したいと」
男が怯えながら、傍らのナイフを右手で握ろうとする。だが、スーツの男は男の近くに歩むと、冷静に男の右手を革靴で踏んだ。
「ち、違うんだよ! 俺はただ、妻を戦いに巻き込みたくないと・・・…」
「その思いが今の行動です。しかし良かったではありませんか。他人に奥さんを殺される前に、自分で殺すことが出来たのですから」
スーツの男がそう言いながら、掛けていたメガネを取って男の視線を自分の両目に合わせる。
スーツの男が見つめる事数秒、男の目に覇気が無くなり、次の瞬間、男はナイフを握ると、自分の喉元を裂いた。
非常に耳心地の悪い音がするが、スーツの男は微動だにしない。
男が息絶えるのを確認すると、スーツの男は胸元のポケットから携帯を取り出した。
「もしもし、曾壁です。被験者の死亡を確認。処理班を派遣してください」
それだけ伝えると、スーツの男――曾壁は足元に転がる二つの死体を一瞥すると、部屋を後にした。
『機関』の構成員である曾壁に与えられた任務は、戦闘を放棄したと思われる異能者の排除だ。
実際バトルロワイヤルに巻き込まれた異能者の中には、戦う事が出来ない者や、戦う意思が無い者が存在する。
その様な者に対して行われる行為は唯一つ――排除だ。
上層部の意思によって選ばれた異能者以外の非力な異能者に、生存理由など存在しない。
曾壁は商店街での戦い以降(梶原への精神強化は臨時任務であった)、この任務に付きっ切りだった。
曾壁は不満だった。不満というより欲求不満かもしれない。
商店街での戦いは、曾壁自身の戦歴の中でははじめて自らの力を、最大限発揮できた戦いだった。
しかし今はどうだ。自分の異能力に逆らう事も、抗う事も出来ない弱者を甚振り、殺すだけではないか。
別に曾壁には正義感や倫理観は無いが、もう一度あの白衣の男――国崎のような強敵の異能者と一線交えたい。
その様な思いが常に頭の片隅にこびり付いては離れなかった。
今回手に掛けた被験者は、今年結婚する予定だった男女だった。男の方が何の能力だが不明だが、異能力を授かっていた。
しかし彼女が異能力を持ちえぬ一般人で、男は自らを迎えに来た曾壁に、その事を説明したのだ。
その末が、最初の惨状である。男は戦う気がないとはっきり公言した上、持っていた異能力が不幸にも戦闘向きでは無かったのだ。
曾壁の独断ではなく、上の命令である。曾壁は上の命令に何ら疑問も不満も持たず、何人もの異能者を自らの異能力で殺害した。
だがいい加減、曾壁は霹靂していた。非力な異能者を殺しても何も面白く無い。それもドイツもコイツもあっさりと死んでしまう。
このままバトルロワイヤルに大きな動きが無ければ、永遠とこの任務を続けなければならない――その事が曾壁を苛立たせていた。
男女が住んでいた部屋を出て、アパートを降りると迎えの乗用車が来ていた。曾壁はゆったりとした動作で、車に乗った。
「曾壁様、社長から緊急指令です」
乗り込んだと同時に、運転手が曾壁に声を掛けた。仮眠を取ろうとしていた曾壁は閉じかけた目を開く。
「対「機関」組織による本社への襲撃が行われるとの連絡です。至急本社に向かうようにと」
運転手の話を聞いた途端、無意識に曾壁の口元が小さく微笑んだ。無論運転手はその事には気づいていない。
ポケットにしまった携帯を再度取りだし、曾壁は携帯を開いた。そこには、排除対象の異能者のリストが写っている。
「この男とこの男は使えるな……他は…・・・壁役にでもするか」
「曾壁様?」
曾壁が小声で独り言を呟いたが、運転手には聞こえていない。運転手は曾壁にこのまま本社に向かって良いのか問いた。
「このまま本社に向かいますが、他に御用はございますか?」
「いや、ありません。本社に戻ってください」
【曾壁:ナガツカインテリジェンスビルに向かう】