08/11/22 13:36:59 0
「………」
トアル街に突如その侍は現れた
紅の甲冑に身を包み、よたよたと身を左右に振りながら歩く様はゾンビである
その外見の奇異さと行動の不審さから、すぐさま住民の注目を浴びる
が、誰もその人物に近寄ろうとはせず、遠巻きに見つめているのみである
「拙者…、前島…新衛門と…申す…
この近くに…飯屋は…ござらぬか…?」
男「ひええっ!
こ、こっちに寄るなあぁぁっ!」
「うぐっ…」
近くに居た男に近寄り、不気味な目で問い尋ねる
がしかし、その異様さに恐怖した男は侍を蹴飛ばし、逃げ去っていった
侍は地面に転げ、無様にうつ伏せに倒れてしまう
「………」
男は刀の差された鞘を杖にして立ち上がると、無言で再び歩みだす
そのふら付きはより一層悲惨さを増していた
人々は次々と避けるように道の端により、侍は黙々と進んでいく
いつしか侍は、街の公園に辿り着いていた
そこには、一般人とは違う出で立ちの連中が何人か屯している
「拙者…、前島…新衛門と…申す…
この近くに…飯屋は…ござらぬか…?」
先ほどと同じ質問を目の前に居る者たちに尋ねる
侍の後ろからは、好奇な住人たちが距離を取りつつも着いて来ていた
皆、不安そうながらも楽しそうな感じで野次っている