08/09/23 22:58:25 0
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じりじりと、息が詰まって窒息死しそうな時間が過ぎていく。
だがその実感がまるでわかない、1秒が恐ろしく長い……
もちろん、そんなのはただの錯覚なのは分かってる。
でもそうだと分かってても、心身にかかる重圧が錯覚を打ち消させないのだ。
>「やるじゃん、ボウヤ。ちょっとカッコいい……ょ!?」
データを送信した直後、エルさんから通信が入った。
出だしを聞いた時点ではちょっと気持ちが楽になったはずなんだけど……
「あ、ありがとうござい……!?エルさん!?」
いきなりヘッジホッグが撃たれた!ワイヤートラップを抜けられた!?
……いや、入り口付近には“なにもいない”、それどころかレーダーにも
反応がない!ビームの射出方向にカメラを向けても、そこには何も――
[悪いけど、ちょっと体を貸してもらうよ?]
唐突に“それ”の声が頭に響いた。なんで!?今までは
戦闘になっても何も感じなかったのに、それもこのタイミングで!
「じょ、冗談じゃな」
[冗談を言ってる場合じゃないんだよね。さっきの襲撃とは危険度が違う!]
初めて“それ”が声を荒げたのを見た……そのまま、今度ははっきりと
意識を保ったまま体が勝手に動き始める。
『……まったく、よくもここまでボロボロにしてくれたよ。
この状況でこれはまずい……ワイヤーを回収してエネルギーを回復……!』
ここまで切羽詰った“それ”も初めて見る……機体状況が芳しくないのもあるけど、
それ以上に今回の襲撃者が今までのは前座と言わんばかりの大物だって事を表していた。
『左右腕部へのエネルギーバイパス一時カット、エネルギーを
機体制御とウィングバインダーに……よし、なんとか2基使える。
コウキ、この状況で言うのもなんだけど僕のやる事をよく覚えておくんだ。
バインダー起動、放射ネット展開!』
“それ”は僕に対してメッセージを送った後、エネルギーをクモの巣状にして
全機体に当たらない様に全方位へと撃ち出した。これは……何かに当たると消滅する、
ただそれだけの物でしかないから気にも留めてなかった。でも、考えてみれば
今はこれが必要だ。敵が見えなくても、本物の亡霊じゃなければ実体はあるはず。
エネルギーネットに接触すれば位置を特定できるはずだ!
『エルさん、今のうちに武装使用可能レンジまでなんとか距離を取ってください!
それまでは近づけさせませんよ……最悪、こいつを盾にしてでも。
……どっかのおバカさんのおかげで、こいつもスクラップ寸前ですしね。』
どっかのおバカさんは余計だけど、人を食ったような態度を取り続けてきた
“それ”がここまで感情をむき出しにするなんて……。でもヘッジホッグは
ワイバーンと言う足をもがれた状態、確かに盾にでもならなきゃ真っ先に潰されるだろう。
【そろそろ第四基地組が来るみたいなので、ワイヤートラップを外しました。
まさか気づかない事はないと思うんですけど、敵が初めから中にいる時点で
入り口に仕掛けたのは無意味ですしね。】