07/11/19 23:57:04 0
姫様、家を整理していたら変な日記の一部を見つけましたよ。
2155年、9月。私は残された僅かな寿命と、正気を投げ打ち警告する。
アペニン山脈に対する大規模な調査を即刻中止させよ。
かの山脈の地下には、触れてはならないものが封印されている。
あの濃密な狂気に触れて無事な人間など、一人もいないのだから。
私は3年前、学者としてアペニン山脈へ鉱物資源の実地調査に携わっていた。
我々が向かった先は、アペニン山脈の中でも特に標高の高いモンス・ハドレーである。
入念な機材のチェック、体力的・精神的な鍛錬、緻密な計画……。
しかし、意気揚々と調査に向かった我々を襲ったのは様々なトラブルである。
通信機器の不調から始まり、計測機器が狂いだし、早くも仲間達からも不調の声が上がりだした。
だが我々はプロである。ここで引き下がる訳には行かなかった。
機械や仲間達の不調をなだめすかし、ようやく到着した我々を歓迎したのは、
仕事に取り掛かれる事に対しての高揚感ではなく、大小様々な岩巧妙に隠された洞窟だった。
学者としての興味に心を奪われなかったのは、本能が私に対して警告してきたからだ。
ここは未だ人類が踏み入れた事の無い未踏査地区である。
しかし人類を嘲笑する様に、洞窟からは聞こえる筈の無い声が聞こえてくる。
おぞましい、水で濁った様な声が洞窟から漏れているのだ。
「テケリ・リ?」
仲間の一人が辛うじて聴き取れた言葉らしい声を口に出した時、洞窟から聞こえる声が止んだ。
私の中で圧倒的な破局の予感が膨らんでいく。
(ここで日記は破り取られている)