08/08/13 10:07:03 BMs/KOou
舞台の上では妖艶な美女でも、素顔は厳つい俺の親父。
どうしたらあんなに変われるのか?と、その演技には感動を覚える。
その点、オレの顔は100%、亡くなった母親似。それだけで、女形としちゃ有利だ。
でも、それに甘える事なく、芸だって、親父から厳しく教えを受けた。
小さな頃は、稽古に熱中するあまりに殴られたりもしたけど、
15才を過ぎて、オレが亡くなった母にますます似てくると、親父の様子が変わってきた・・・
飯どき、ちょっと顔を会わせても、
「母さんに瓜二つだ、有人・・・」
俺が離れでうとうと昼寝中、庭を通りかかったときも、
「そこで寝ていると、美代が帰ってきたようだ・・・」
極めつけは衣装合わせの時、娘役の着物を着ていると、
「みっ、みよおおぉぉぉっ!!!」
「うぜぇ!親父っ!!息子にセクハラすんなっ!!!」
こうしてオレは、歌舞伎を捨て、家を出た・・・
そんなオレも、一人の時には、そっと鏡に向かって話しかける。
「母さん、アルトだよ。今日はヒドい目にあったんだよォ」
長い髪は、まだ切れない・・・