10/05/08 03:15:22 yvmRMBCX0
「忘れてたんだ。つい、さっきまで」
彼女の細い肩を透かして僅かに覗けたのは、窓の中の小さな風景。
大きな入道雲が真ん中に居座って、夏の日差しで街は白く光っていた。
青い空はいつもより大きく、遥かに遠い。蝉の声は街中に響き渡っている。
私たちの存在はとても小さくて、頼りなくて。
それでも二人で、生きているんだって。
そんなことばかり、彼女と二人でいるときは、考えてしまう。
私の変な、癖だった。
「やっと思い出せたから、行こうよ」
少し強引な彼女の掌に引っ張られて、一歩ベッドの外に出る。
初めて一人で外に飛び出した子供みたいに、不安な気持ちに駆られた。
「だいじょうぶ」
情事の後の私が子供みたいになってしまうことを、彼女は知りすぎるくらい知っていた。
私は彼女に抱きついた。そうしないと、気が違ってしまいそうだったのだ。
風が柔らかく忍び込む。それに揺られた風鈴の透明な音色が、部屋に澄み渡っていく。
私の背中に回った手が、少しだけ私を愛撫するみたいにいやらしく動いたけれど、本
来の目的を思い出したのか、彼女はすぐに私の顔を向き直して、しらじらしく年相応な
笑みを溢すばかりだったのだ。
おしまい
かなりわかりにくいけど、紬視点。
そして少しエロい。事後だからセーフだと思いたい。