10/02/20 23:29:48 6//oGOH00
>>422
きゅっ。 きゅきゅっ。
冷え切った朝。居間にある大きなガラスはお姉ちゃんのキャンパスです。結露したガラスに向かって、お姉ちゃんが白い息を吐きながらどんどん描いていく。花、ウサギ、ネコ、お姉ちゃん、私、お父さん、お母さん。お姉ちゃんが大好きなものばかりです。
憂「ココア入れたよ」
唯「もうちょっ…と……できたっ!」
小さい頃、家族みんなでピクニックに出かけたときの絵です。赤くなった手をもじもじさせながらコタツに潜り込んできます。
唯「お父さんたち帰って来るからね」
と、カレンダーを見ました。今日の日付と、明日に花丸。
唯「憂の誕生日だもんね!」
憂「うん!」
お姉ちゃんが作ってくれた飾り付けや、絵が部屋にたくさんぶら下がって、とってもにぎやかです。
唯「あっ」
ギターの練習をしていたお姉ちゃんが窓をむいて声を上げて、編み物をしていた私も顔をあげる。いつの間にかキャンパスが消えて、その奥にふっと浮かび上がるオレンジ色。
唯「きたっ!」
お姉ちゃんが庭の枝に刺した、輪切りのみかんを二羽のメジロがついばんでます。
唯「今日は寒いから来てくれないかと思ったよ~」
憂「良かったね、お姉ちゃん」
ピピッ、ピッ。
唯「……エスパー戦士、唯!」
突然こちらに両手を向けて、みかんを突き出してきました。あっけに取られて、思い出しました。そう言えば去年、みかん食べるたびにこれしてたっけ。あの時と同じように、ちょっと自慢げなお姉ちゃんです。
憂「食べ物で遊んじゃダメだよ」
唯「む~、わかってるよー」
と、皮をむくと実をひとつひとつ取り出して、テーブルの上に小さい房から大きな房に順番に並べだしました。
唯「はい、あーん」
最初の一番小さい実を私にくれました。次はお姉ちゃん。その次は私……。
最後に大きい実が残りました。
憂「お姉ちゃん食べていいよ」
唯「憂はいつもがんばってるから、はい、あーん」
編み物してる私の口に入れてくれました。
唯「なに編んでるの?」
憂「お父さんとお母さんにプレゼントしようと思って」
唯「プレゼント?」
憂「前にお姉ちゃんが結婚記念日にギター演奏して二人が喜んでるの見てさ、私も何かできないかなーって…それに」
憂「お父さんとお母さんに感謝したいなって。産んでくれて、ありがとうって」
唯「私もそう思うよ」
憂「うん?」
唯「妹作ってくれて、ありがとうって。とってもとっても大切な宝物だよ」
ピンポーン。
唯憂「来たっ!!」
お姉ちゃんと一緒に駆け出す。今度こそ、私が最初にお母さんに抱き付くんだもんね。
おしまい。こんな感じかな?