【咲 -Saki-】 京太郎×咲スレ 3 【いい夫婦の日】at ANICHARA2
【咲 -Saki-】 京太郎×咲スレ 3 【いい夫婦の日】 - 暇つぶし2ch996:名無しさん@お腹いっぱい。
10/03/01 01:35:18 cVr6mA/Q0
バケツに、水の入る音がする。
周りに木こそないが、草と石を村にしている虫が高い声で鳴くその中で、二つの影がゆっくりと呼吸していた。
かたや背の高いほうのそばには、ビニール袋とその中身が、自ら最も美しく輝けるその時を待っている。
今、柔らかな手がその一つをとる。黒の中ではあまり意味が無いといえばそうだが、その棒は握り手が鮮やかな七色に染められており、虹を閉じ込めたかのようだ。
「京ちゃん」
「ああ、ちょっと待っていな……ライター……どこに落とした?」
地を手探りで探す彼とは対照的に、咲の目は天へと向いていた。真珠を砕いて流したようなやさしい輝きを空は放ち、雲は一つもない。それは、咲の心を反映しているかのようであり、地を照らす唯一の光でもあった。
「――あった」
火をともすと同時に、咲の口からあっという声が出た。
棒の先から白みがかった淡い緑色の光が迸ったからだ。
咲はそれを斜め上に向け、京太郎に見せるようにしてゆっくりと振り回す。
「花火を持つと、どうしてそう振り回したくなるんだろうな」
京太郎も、自らの持つそれに火をつけた。彼の持つそれを地に下ろすと、螺旋を描いて走り回っていく。
京太郎も咲も、明るい笑いを空に飛ばしていった。
しばらくそこは優しげな炎に包まれて、夜のしじまに切なくその光を溶かしていく。
やがて一本、また一本と燃え尽きていく中、最後に咲が手に取ったのは線香花火。
京太郎にそれを渡すと、先ほどまでの雰囲気が嘘のように、しん、とした世界を作り始める。
「……つけるぞ」
「……ええ」
暖かな火が、微かにパチパチと音を立てる。二人の呼吸と同じように小さいそれを愛しげに見て、咲が漏らした。
「私……空に咲く大輪のような花火も好きだけど、線香花火みたいにひっそりするのも好き……」
「――そうだ、な。こっちはこっちで趣深いよ」
「ねえ、京ちゃん。さっきから気になっているんだけど、いつからそんな趣深いとか言葉を話すようになったの?」
「これでも、お前やお前の見ている世界に少しでも近づきたいとおもって、本は読んでいるんだ。その影響だろうな」
「えっ……」
――初耳であった、そしてとてもうれしい事であった。同時に線香花火の光に照らされて、咲の頬に体温を持った水が流れていくのを京太郎はしっかりと確認した。
京太郎はその光景に驚愕こそすれ、涙を拭いてやるという考えは出なかった。


997:名無しさん@お腹いっぱい。
10/03/01 01:48:33 cVr6mA/Q0
「咲……」
「あ、あははは……煙が眼に入っちゃった」
「そうか……俺もだ」
確かに考えは出なかったが、幾ら盆暗と言えどもさすがにその意を汲み損ねる彼ではない。
すぐに苦い顔をして、そのままそらした。咲も京太郎の顔が赤くなっている事を気がつくのに少しかかったが、やがて愛おしさがこみ上げてきて、彼の近くに腰を下ろし、頭を彼に寄りかからせる。
「線香花火って、彼岸花のようだけど縁起が悪いものには思えないんだ……」
「――確かにな、縁起の悪いものを逆さにしたような形だから、むしろいいものではないかとも思うときがある」
花火は名の通り華に似ている、しかし同時にそれは人生にも似ていると咲は言う。打ち上げ花火のような、大きくはじける人生よりもこうして仄かに輝いていく人生が自分にはあっていると言った。
口調に、どことなく悲しさが見える。
「自分を卑下するなよ」
「うん、でもね――地味だ地味だといわれ続けても、それを変えられない自分も嫌だったんだ」
「でも、俺は好きだ。お前の全てが……」
「嫌だった、嫌だったけれども私、だんだんと自分を好きになっていったんだよ。――京ちゃんのおかげで!」
京太郎の言葉をさえぎり、満面に朱を注ぎながら咲は言う。
京太郎が麻雀部に連れてきてくれなかったら、今自分はどうなっているだろうか。この線香花火も、嫌いなままだったかもしれない。
「線香花火もさ、こうやってくっ付ければそれなりに……あれ」
何かを思いついた京太郎が線香花火の先同士をくっつけた瞬間に、咲が体をよじり花火の先は落ちてしまう。
それでも京太郎は諦めずに新しい花火に火をつけて、今度は動かないように彼女の肩を抱いてゆっくりと近づける。
すると二つの珠は大きな一つの珠となり、先ほどよりもまばゆい光を放ちはじめる。
「動くなよ?」
――動けないよ!
と口には出せないが、京太郎の体温、肉質、力、それらを全てを全身で感じている彼女に他の事を考えるという余裕は無い。
風が止み、虫の声も消えた。時がそこから去ったような感覚の中で、それでも現実なのだと知らせる花火の音が、光が消えた。
――しばらくの間、二人すらも動かなかった。
「見てみろ、咲」
京太郎が指し示す先には、一つの珠で繋がった二股の棒があった。
こんなことはめったに無い、京太郎の執念がなした業だといわざるを得ない。
「線香花火が落ちるさまは、まるで彼岸花の種が地に落ちて時代を超え、次代へと繋がるような、そんな気がしないか?」
「京ちゃん……彼岸花は球根だよ?」
「――マジで?」
「うん」
「……かっこわりーな! 畜生、せっかくいいこと考え付いたのに!」
頭を抱えた京太郎を、朗らかに笑う。だが、確かにそれでもいいかもしれない。
潔く何も残さず散るよりも、時代へ脈々と続くものを残すのもいいかもしれない。
「なあ……咲――一緒に住まないか」
二股の片方を握りながら、ポツリと京太郎がいいはなつ。
「え?」
「一緒に、………住まないか?」
それは、同棲という事でいいのだろうか。それを聞く前に、京太郎は続ける。
「あと二年すれば、俺も十八になる。――結婚できる年になる、俺はお前以外と添い遂げるつもりは……なんだ……その……」
ぷらぷらとゆれる二股の片方が、咲に握ってほしそうな表情を向けていた。
それを、躊躇無く掴んだ咲は、面食らった京太郎に一度口付けをし、深呼吸を一度する。
「私も、貴方以外には考えられない。京ちゃん……いいえ京太郎、私は……」
「ありがとう、でも……何も……今は言わなくて良い。――そうだろ?」
「うん、そうだね……」
言葉は交わさずとも、二人の間に何か暖かいものが流れ始める。
それを二人は絆ともいい、また愛とも言うのだろうと確信していた。
天の川が、二人を祝福しているようであった。
今夜、綺麗に二つの支流が一本の本流へと合流をし、やがて一つの海へと流れ着いた。
海は名の通り次の時代を生み出し、連綿と命を続けていく――。


998:名無しさん@お腹いっぱい。
10/03/01 01:49:17 cVr6mA/Q0
そんなわけで、途中から何やってるかわかんなくなったけどこれで終わり。
いろいろすまんかったorz

999:名無しさん@お腹いっぱい。
10/03/01 02:10:22 WJciXlF10
>>998 
gj

1000:名無しさん@お腹いっぱい。
10/03/01 02:12:32 WJciXlF10
1000なら原作、アニメ2期ともに咲京か京咲エンディング

1001:1001
Over 1000 Thread
このスレッドは1000を超えました。
もう書けないので、新しいスレッドを立ててくださいです。。。


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