10/01/30 00:09:50 bek0WS7JO
◇◇◇◇◇
コンビニから出て、歩き食いする唯先輩。ちょっとだけお行儀わるい。
「はむ……美味し~♪」
本当に美味しそうに食べますね。
グルメレポーターに向いてますよ。
唯先輩ったら…にこにこしちゃって。
はぁ、まったく。
またあなたはそうやって私を困らせるんですね。
無邪気に振る舞えば振る舞うほど。
表情がころころと変わるたびに。
私は困惑してしまう。
あなたはふわふわしてるから。
「あずにゃんも食べる?」
あぁ…。
さらに、困らせる唯先輩。
「い、いいです」
そんな優しさ、やめてください。
「そんなこと言わないで~。ほら、あーん」
「あ…あーん」
…意志弱いな私。
いや、唯先輩に…弱いのか。
「美味しいでしょ?」
「はい…もぐもぐ」
美味しい。ふわふわな肉まん。
あったか、あったか。
956: ◆U0kc14QpJ6
10/01/30 00:12:56 bek0WS7JO
唯先輩は不思議な人だ。
形があるのに、触れることができるのに、目に見えているのに。
どうしてあなたはそんなにも、私の心に響くんだろう。
だから、私はさらに困ってしまう。
ずっとずっと、見ていたい。
もっともっと、知ってみたい。
…本当に困る。
肉まんを食べ終えた先輩。
ちょこっともらったお裾分け。
「寒いね~、あずにゃん」
「ですね。早く帰ってあたたまりたいです」
「帰るまでつらいよね。あ、そうだ!」
唯先輩はそう言うと。
あろうことか。
…私の手を握りだした。
「な!な!?」
「こうすれば帰るまであったかだよ」
いや。
いや…いや。
やめて、私を困らせないで。
だめ、だめです。
あってはならない。
957: ◆U0kc14QpJ6
10/01/30 00:14:56 bek0WS7JO
「や、やめてください!」
「え…?」
唯先輩は、私がとっさに言った言葉に…呆然として。
「ご、ごめんねあずにゃん」
すぐに手を離して。
それだけ言って顔を余所に向けて。
……絶対に傷つけた。
やってしまった。
今までだって多々あった困惑。
困惑したら、誤魔化せばいいと思ってた。
でも今回、私は……その誤魔化しで唯先輩を傷つけてしまった。
謝らなくちゃ…。
「…唯先輩、さっきのは間違いです」
「…無理しなくていいよ。私なんか…ばっちいよね」
な……!!
「なにアホなこと言ってるんですか!」
「あ…あずにゃん…?」
「唯先輩ほど綺麗な人なんか、存在しません!!」
一気に言ってから気づく。
なに変なこと言ってんだ、私。
958: ◆U0kc14QpJ6
10/01/30 00:18:32 bek0WS7JO
「あずにゃん…」
「…はい」
「じゃあ…じゃああずにゃん、手…繋いでいい?」
…やっぱりそうなるのですね。
唯先輩の目を見れば、何が言いたいのかわかった気がした。
唯先輩は不安なんだ。
私が突きつけた発言が、本当に間違いかどうか。
……ごめんなさい唯先輩。
私が勝手に困惑しただけです、だから。
そんな目をしないで。
「どうぞ」
◇◇◇◇◇
手を繋いで帰ると、それはあったかあったかだったから。
形があるのに。
触れることができるのに。
目に見えているのに。
どうしてあなたはそんなにも、ふわふわなんですか。
音楽みたいなあなた。
音楽が大好きな私。
……本当に、困る。
959: ◆U0kc14QpJ6
10/01/30 00:21:55 bek0WS7JO
「あずにゃんの手、小さくて可愛いね」
鏡を見たらどうですか?
あなたの方が可愛いです。絶対に言わないけど。
「あずにゃんはさ、恋人とかいたりした?もしかして、今いる?」
……恋の話をあなたからするなんて。
「…いえ。今も昔も、恋人なんかいた試しがないです」
「えぇー?こんなに可愛いのに。じゃあさ…」
一息置いて、唯先輩は言った。
「誰かを好きになったことはある?」
そ、それは。
困ってしまう私。
「…それ…は…」
「どうなのさ、あずにゃん」
ワクワクしてるんだろうな、唯先輩。
これから赤裸々体験談が聞けると思ってそう。
「ゆ、唯先輩はどうなんですか!?」
「ふぇ?」
「誰かに…恋したこと、あるんですか」
唯先輩はどうなんですか。
まさか、あるとか。
いやいや、唯先輩だもん。
あるわけ…。
「えへへ、あるよ」
私の中の時が止まった。
960: ◆U0kc14QpJ6
10/01/30 00:24:12 bek0WS7JO
ふわふわなあなたは、確かにそう言った。
ふわふわなあなたが……恋をしたことがあるんだ。
「そうなんですか…」
信じられない。失礼だけど、恋する先輩を想像できない。
…唯先輩は、どんな恋をしたんですか。
どんな人に、どんな想いを巡らせたんですか。
「片想いだけどね…恥ずかしいな、言っちゃったよ~。
あずにゃんは恋したことあるの?」
「…ノーコメントで」
「えぇー!?ずるい!私は言ったのに」
……そう言ってから、唯先輩は私の手を強く握って。
「あずにゃんみたいな人が恋人なら毎日が楽しいのかな」
…そんなこと言うから。
非常に困った。
これ以上ないくらいに、本当に…困った。
だって。
…だって、だって。
これ以上困ったら。
961: ◆U0kc14QpJ6
10/01/30 00:27:26 bek0WS7JO
「唯先輩!そう言うことは言わないでください!」
「え…?」
「これ以上そんなにされたら…」
「…されたら?」
私をもう困らせないでください。
だって、だって、これ以上何かされたら。
…これ以上、困ったら……。
「す、好きに…なっちゃうって言ってるんです!!!」
……あぁ。
言ってしまった。
ああ、言ってしまった。
「…あずにゃん…」
「だからだから…だから、もうこれ以上はやめてください!」
自分でも認めたくない感情を言ってしまった。
962:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/30 00:27:43 sNcpUm9FO
支援間に合わなかったか
サルは毎時00分に解除な
963:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/30 00:35:35 Sm5kHs/I0
同一IPから一定時間以内に書き込まれたレス数で
規制をかけるので支援レスなんて挟んでも無駄だってウ・ワ・サ
こりゃサルられるなって思ったけどアニキャラ板の規制しきい値が知りたかったからわざと傍観しちったw
964:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/30 00:38:26 Sm5kHs/I0
うむ、スレ容量がもう限界なので新スレを立てようと思ったが無理だった
さらば
965:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/30 00:52:26 S0xzZKn9O
どうにも改行多すぎな気がするけど初めてだから仕方無いか
トリは…まあ気にしないでおこう 支援
966:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/30 00:54:29 i78yVYx20
次スレ立ててくるわ
967:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/30 00:57:13 i78yVYx20
【けいおん!】唯×梓スレ 5
スレリンク(anichara2板)
よし、これで容量オーバー落の心配も無かろう
968:再開します ◆U0kc14QpJ6
10/01/30 01:02:36 bek0WS7JO
大好きなのは音楽だけでいいのに。
尊敬でもない感情。
友情でもない感情。
羨望でもない感情。
わけのわからない感情なのに。
その感情にはまだ名前をつけたくなかったのに。
…好き、だなんて。
「あずにゃん……」
何かを言いたそうな唯先輩の手を振りほどいて言った。
「か、帰ります」
…もう、困ることもないのに。
唯先輩に背を向けて、走って帰ろうとした時。
「あずにゃん!待って」
後ろにいるあなたは、私を呼び止める。
立ち止まる私。
私とあなたの距離はわずか。
「あずにゃん…」
「………」
振り返れない。
気持ち悪い後輩だと罵っても別に構いません。私なら言いそうです。
唯先輩は…何を言うんですか。
969: ◆U0kc14QpJ6
10/01/30 01:04:12 bek0WS7JO
「好きになってよ」
…唯先輩。
だめですよ…そんな。
後ろから、唯先輩が私を抱き締めてきた。
ふわふわなあなた。
音楽みたいなあなた。
あぁ…もう、だめだ。
「…もう好きになりました」
私も振り返って、唯先輩に抱き付いた。
◇◇◇◇◇
たとえば寒い中、温かいものを飲んだり。
それがココアとか、コンポタとかならなおさら。
コーヒーなら、砂糖をたくさんいれたやつ。
たとえば暑いとき、風鈴みたいに。
音だけなのに、涼しくなっちゃう。
冷たいものなんていらないんだ。
唯先輩はそういう人だ。
私にとっての音楽みたいな。
私にはそんなものはいらないはずだった。
ギターがあって、それだけでよかった。
そういう存在は、私にはつらい。
だって、恋しちゃうから。
つまり、そういう存在が私には眩しすぎた。
970: ◆U0kc14QpJ6
10/01/30 01:05:41 bek0WS7JO
「私は今まで恋したことなんてありませんでした」
帰路、二人きり。もう暗い通り道。
「そうなんだ!よかったよ」
…よかったって。
そう言って、私の手に指と指でからまりあう唯先輩の手。
今度はあなたの恋を教えてくださいね。
眩しすぎるほどのあなた。
ふわふわなあなた。
…今なら言えます、唯先輩。
「唯先輩」
「なぁに?」
名前をつけたばかりの想いを。
「大好きですよ」
冬は寒いはずだった。
971: ◆U0kc14QpJ6
10/01/30 01:06:48 bek0WS7JO
以上でした
至らない点があってごめんなさい
スレ汚し失礼しました
972:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/30 01:08:03 sNcpUm9FO
乙
973:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/30 01:53:18 nM/plX9Z0
>>951
乙!
>>967
スレ立て乙!
二期は4月スタート予定とか。
意外に早くて驚けばいいのか喜べば良いのか混乱中。
原作だと卒業式後のスタートだけど、やはりそこまでになるのかなあ。
もしくは、やはり最後の桜高祭ライブかな。
とりあえず唯梓がどんどん増えていくはずだから、楽しみ。
974:ウメネタ
10/01/30 02:29:47 nM/plX9Z0
多分丁度いいはず…
「……来ましたね」
一日分の授業を終え、一仕事終えたぞと緩んでいた気持ちがぴんと張り詰める。
部活開始時間だから、ではない。勿論練習開始となればそれ用に気持ちは持っていくけれど、そもそも私たちの部活はその名の通りティータイムから始まるのだから、この時間はメリハリ的な意味で緩めておいたほうが都合がいい。
実際、私はそれを常としてリズムを整えていたのだけれど。
半ば蹴り退けるようにして椅子を立ち、重心を低くスタンスを広く、前後左右どちらにも瞬時に動けるよう、身構える。
理想を言えば俊敏な黒猫のように。実際のところ、毎日毎日繰り返しているうちに私の動きはそれに類するくらいに研ぎ澄まされているという自覚はある。
だけども油断はできない。何故なら、私がどんなに会心の動作を見せようとも、結局私は一度たりとも―
―あの人から逃げられたためしは無いのだから。
「あーずーにゃーん!」
バーンという音と共に、私を張り詰めさせていた気配が、その形を現す。
周囲10Kmくらいの幸せを集約させたんじゃないだろうかってハッピーな笑顔を浮かべ、ふわりと柔らかくて暖かなその胸をこちらに広げたまま駆け寄ってくる。
このまま私が立ちすくんでいれば、ぎゅうっと抱きしめられてしまうだろうと、そう予想を浮べてしまう光景だ。
そう、ついこの間までなら、その予想通りにことが運んでいたのは確かだった。けれど―
その一瞬、ほんの一瞬だけ思考に意識を向けてしまったその僅かな隙。それだけで、唯先輩の姿は、気配ごと私の眼前からかき消えていた。
低くした重心を更に落とす。感覚を研ぎ澄ませる。その姿を視認できないことは、今問題にすべきことじゃない。
それに思考を囚われ失敗を繰り返した経験が、私にそう教えてくれた。そう、目的はわかっている。如何にめくらましを使おうとも、その終着点はここなのだから。
その兆しを見落とさず、最後の一瞬に対応できてしまいさえすれば、私の勝ちなんだ。
「ふふ、あずにゃん?」
耳元を打つ甘い声に、戦慄が走る。唯先輩の俊敏さは知っていた。この数日間でこれでもかというほど思い知らされていたから。
だけれども、まさかあの一瞬で背後まで取られてしまうとは思わなかった。いや、俊敏さだけではなく、この位置までその存在を感じ取らせない隠匿技術を褒めるべきなのか。
―もう、この努力を練習の方にまわしてくださいよ。
湧き出てきた突込みを、慌てて放り投げ、身を翻す。まだ終わっては無い。ここで諦めるわけには行かない。
その気になったときの先輩の運動能力を知っている私にとっては、この位置関係は最早絶望的ではあるものの、だからと言って諦めるわけには行かない。
メリットデメリットの問題ではなく、これはもう勝負として成り立っているのだから。だから、私はあっさりと負けを認めるわけには行かないのだ。
視認している時間はない。先輩の声から位置を推測し、その反対側へと体重ごと大きく利き足を踏み出す。同時にそれを支点としてぐるりと体を反転させ、前進の勢いを殺しつつ、背後へと振り返った。
いない。だけど、それは既に予想していた。唯先輩が、私に位置を知らせたまま、その場所に留まっているはずがない。
移動中、瞬きせず視界を巡らせていた。唯先輩の動きが、私の動体視力の限界を超えない限りは、背後に回りこまれていることはない。
だとすると。
「上ですね!」
確信はない。ただの消去法だ。だけど、その程度の根拠はあった。一瞬にして天井まで飛び上がった唯先輩はそのまま張り付き、私の隙を伺って―
―いや、私の中の先輩像どうなってるの。それじゃもう人外の範疇っていうか、某蜘蛛男とかそんなレベルだよそれじゃ。
そんな自動的に沸いて出たセルフ突っ込みの通り、そこには先輩の姿はなく、
「ちがうよ、こっち」
直後、私の胸元付近に突如現れたその気配に、自分の敗北を悟らされていた。
975:ウメネタ2/2
10/01/30 02:31:18 nM/plX9Z0
「あずにゃんっ!」
どうやら先輩は、体勢を低くしたまま、私の意識の死角をついて移動してきたようだ。
気がついたときには先輩の両腕は私の脇の下から背中に回っており、そのままぎゅうっと抱え上げられるようにして抱きしめられていた。
「えへへ~今日も私の勝ちだね」
「わ、ちょ、ちょっと待ってください……っ」
先輩は嬉しそうに私を抱きしめる腕に力を込める。
私の身長は、先輩よりもかなり低い。つまり、こういう抱き方をされると、私の足は地面につかなくなるということになり、そして先輩も私の体重を支えきれるほどの膂力は無い。
そして、どうなるかというと、
「わ、ととと、とっ」
「きゃ……た、たおれ……!」
私を抱えたままの唯先輩と、か変えられたままの私はもつれ合うようにどすんとソファーの上に倒れこんでいた。
そう、ソファーの上に。それも角に体をぶつけるとかそんなことも無く、柔らかいクッションの上に都合よく。
ああ、つまりはここまで唯先輩の計算どおりだったということですよね。まったくもう、これじゃ、今日も完敗じゃないですか。
「えへへ、あずにゃ~ん」
「もう……今日も私の負けです」
敗者は大人しく、その胸に抱かれる。ご褒美とばかりに先輩はまたきゅーっと私を抱きしめる腕に力を込めて、私の体からは力が抜けていく。
ああもう、これじゃ負け癖がついちゃうよ。勝つよりも、負けたほうが……気持ちがいいし。負けず嫌いという私のポリシー、あっさりと崩れ落ちてしまいそう。
というか、なんでこんなことが日常になってるのか。
発端は本当にたわいもないこと。とある日ちょっとした悪戯心から、抱きつこうとする唯先輩からひらりと身をかわしたことだったかな。
すると唯先輩もムキになっちゃって、私もなんか流れ的に本格的に防衛に入っちゃって。
いつの間にか唯先輩が抱きつくか、私が逃げ切るかの勝負に発展してしまっていた。
それから部活開始直前のこの追いかけっこが、私たちの恒例となってしまっている。本当にもう、なんでこうなっちゃったのか。
ちなみに5分逃げ切れば私の勝ち。お互い直接間接問わず、相手にダメージを与える行為は禁止。いつの間にかこんなルールまでできてるし。
まあ、勝負と言いつつも、私の全敗なんですけどね。勝負にすらなってないというか。ああもう、悔しいです。気持ちいいですけど。
先輩の方はといえば、抱きしめられるままちらりと垣間見た顔は本当に嬉しそうで、勝者への報酬を存分に味わいつくしてます!なんて表情だ。
実際に先輩のハグは、それまでのものよりずっと遠慮の無いものになっていた。それまでに遠慮があったかといわれればまた疑問なんだけど。
ぎゅーっとより強く抱きしめられるようになったし、それじゃ足りないよって言わんばかりにさわさわと撫で回されたり、ペロペロと舐められたり、むちゅーとされたり。
何で敗者にこんなにご褒美が―いやいや、違いますよ。敗者ですからね。勝者からの仕打ちに大人しく耐えているだけです。気持ちいいですけど。
まあ、そんなこんなで今日も私たちは仲良くにゃんにゃんしているわけです。
でも、明日は勝って見せますからね。唯先輩。
(終わり)