【けいおん!】唯×梓スレ 4at ANICHARA2
【けいおん!】唯×梓スレ 4 - 暇つぶし2ch868:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/18 14:45:55 MWgIG3mN
唯梓ピンナップが評判良いので
にアニメージュ買って来たけど
記事も唯梓でわろす

869:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/18 20:32:29 CRwUPBqA
>>861
GJ!
ノリノリなあずにゃん可愛いwデートの内容も見たいです

>>868
あの記事担当はよく分かっている奴だと思ったw
「実は梓、「あずにゃん」というあだ名が気に入ってたと判明する一幕でありました。」
とかはっきり書かれてて嬉しい
アンケート送ろうかな

870:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/19 03:59:14 8x2fWDrk0
マジで?記事読んでくるわ

871:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/19 17:32:37 e1GkJjB50
ネタバレっぽいから暗号化する ヒントは「たぬき」

たたたた愛たたたしたたたてたたるたたよってたたたた
かたたたたなたたりたたたたたストたたたレたたートだよね

872:【軽音部熱愛スクープ】
10/01/19 22:57:37 1L8yvQ3AO
部員同士の絆が深い事で知られる桜高校軽音部だが、その間でにわかに友情を越える愛が育まれつつあることが取材で明らかになった。

問題のカップルは、ギター担当のHさん(2年)とNさん(1年)。出会って間もない先輩後輩の間に何があったのか。関係者に詳しく話を聞いた。

K・Tさん「あの二人は最初からお互いを意識していたと思います。
 YちゃんはAちゃんによく抱きついてましたし、Aちゃんも口では嫌がってましたがまんざらでもなさそうでした」

出会った時から過激なスキンシップを行っていた二人。互いを知るのに言葉はいらない。その肉体があれば十分―
二人の関係は我々の予想以上にアダルティなものだった。しかしその関係はさらに進展を見せる。

K・Tさん「あれは絡み付くように蒸し暑い夏のこと。合宿に来ていた軽音部で、あの二人は異様な雰囲気を見せていました」

Kさんの話によれば、皆がいるにも関わらず、NさんはHさんの水着姿を舐めるように見つめていたという。
そして皆が寝静まった深夜、ギターの練習にかこつけて別室で体を重ねていたというのだ。

楽器を傍らに、互いの肉体の音色を確かめるチューニングに励んでいたというのだろうか…

873:【軽音部熱愛スクープ】
10/01/19 22:59:38 1L8yvQ3AO
さらに、こんな証言もある。

T・Rさん「YはAにAにゃんだなんてあだ名付けて、自分一人だけ呼んでたんだ!」
A・Mさん「Aもその呼び方を普通に受け入れてました。あんなあだ名、好きじゃなきゃ文句言うはずです!」

周囲に対して隠そうともせず特別なあだ名を用いていたHさんと、自分に対しての特別な呼び方に悦びを感じていたNさん。

これらの事実を総合すれば、二人の間にあるのは愛以外に考えられないだろう。

我々は意を決して当事者にコンタクトを取った。以後の文章は、その際のやり取りである。

担当「すいません」
Hさん「はい」
担当「少々お時間をいただきたいのですが」
Hさん「いいですよ。なんですか」
担当「Nさんとの仲について…」
Nさん「ちょっと、私のY先輩に何してるんですか!」(担当を突き飛ばす)
Hさん「暴力はダメだよAにゃん」Nさん「だって…Y先輩を取られちゃうって思ったんだもん」
Hさん「私は誰にも取られないから大丈夫だよ。さ、ごめんなさいしようね」
Nさん「ごめんなさい」
担当「いえ…それであなたたちの関係は」
Hさん「じゃあ行こうか、Aにゃん」
Nさん「はい!」
担当「あ、ちょっと…」

874:【軽音部熱愛スクープ】
10/01/19 23:03:13 1L8yvQ3AO
以後、二人は我々のコンタクトに応じてくれることはなかった。
だが我々は諦めることなく二人の関係の全容解明に努めていく所存である!

桜高校新聞部


次号掲載予定『放課後ティータイム顧問が赤裸々に語るHさん・Nさんのプラトニックな関係』

875:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/19 23:34:59 Sw+z7CDg0
定期購読を頼みたい…が
取材陣に悩まされることなく、二人には愛を育んでほしいという心情もw
でも次の記事は気になるw

876:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/19 23:36:22 mljxm4mG0
>>871
何があった

>>874
なんぞこれwGJ

877:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/21 02:10:33 qW8DHntw0
ライブハウス!
今観ました。唯梓的に言うならそんなに見所は無いですが。
(コタツで寝るとき梓が唯に抱きついてたくらい?)
なかなかいい感じでしたよ。
初めてのライブハウスの、初々しい感じがいかにもで。
最後は、ああ、この後二期だなって感じで終わっていました。

待ち遠しすぎる…

878:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/21 20:11:45 eUDRrsB30
14話観たら
他のバンドの人と仲良くしまくって気に入られる唯を見て
梓がモヤモヤするって展開を妄想した

879:想い
10/01/21 23:00:29 RtT7utgkO
「あずにゃーん♪」

今日も放課を告げるチャイムが鳴り終えないうちに、唯先輩は教室の入り口から私を呼ぶ。
頼まれているわけでもないのに、毎日私を迎えに来るのだ。

「お姉ちゃん最近どうしたの?ここのところ毎日来てるよね」
「えへへー♪どうしてもあずにゃんと一緒に部活に行きたいんだー♪」

憂の問いに満面の笑みを浮かべて答える唯先輩は、嘘をついているようには見えない。心の底から、私と一緒にいたいと思ってくれているんだ。
自分のことをそんな風に言ってくれるのは、とても嬉しい。そして同時に、辛くもあった。

だって、どんなに唯先輩が私のことを想ってくれていても…私はその気持ちに答えないから。

「今日英語のテストが返ってきたんだけどね、こないだよりいい点取れたんだ♪」
「…そうなんですか」
「でもムギちゃんは私より20点も高かったんだよ!すごいよねー」
「…そうですね」

部室に向かう途中にも、唯先輩は色々と私に話をしてくれる。けど私は、それにただ相づちを打つだけだ。
愛想笑いすら浮かべずに、ただ一方的に唯先輩の言葉を受けとるだけ。

それでも唯先輩は、私のそばにいてくれる。

…ごめんなさい、唯先輩。

880:想い
10/01/21 23:00:44 RtT7utgkO
数日前、私は澪先輩に告白した。そして、フラれた。はっきり断られて、可能性なんてこれっぽっちもないって思い知った。
それでも、私はどうしても吹っ切ることができなかった。

「澪ちゃん、もう来てるかな」
「…どうでしょうか」
「今日もいっぱいお話できるといいねー」
「…はい」

そして唯先輩は、そんな私を応援してくれた。
私のことを好きだって言ってくれたのに、私の背中を押してくれたのだ。

ガチャ

「やっほー♪」
「…こんにちは」
「おいーす唯、梓!…でさ、そのバンドったらさぁ」
「へー、でもやっぱり…」

澪先輩と律先輩は、二人きりの部室で音楽の話をしていた。
それを見て、唯先輩はすぐに律先輩に抱きつく。

「りっちゃーん♪」
「わ、なんだよ唯?」
「昨日言ってたマンガ見つかったんだー♪読む?」
「おーでかした唯!読む読む!」
「あ、律!唯!もう…しょうがない梓、ムギが来るまで練習してよう」
「あ…はい!」

唯先輩はこんな風に、私と澪先輩が話をする時間が増えるようにしてくれていた。
時には強引な方法を使いながら、私のために一生懸命になってくれていたのだ。

881:想い
10/01/21 23:00:58 RtT7utgkO
「あ、そこはもう少しゆっくりの方がいいぞ」
「こうですか?」
「そうそう、いい感じいい感じ。やっぱり梓は上手だな」
「い、いえそんな!」

澪先輩は、フラれたことなんて忘れさせてくれるような優しい笑顔を私に向けてくれる。
最初はお互いに気を使ってギクシャクしてたけど、毎日話しているうちにそんな雰囲気も消えて、話も前以上に盛り上がるようになっていた。
もしかしたら…そんな希望も、私の心に芽生え始めていた。

でも…

私は視線を横へやった。すると、私たちを見つめる唯先輩と目が合う。

「……えへへっ」

あずにゃん、がんばれ!そう言わんばかりに微笑む唯先輩。そんな姿を見て、私は言い様のない罪悪感に駆られるのだった。

…私は、何をしているんだろう。
いつも笑っている唯先輩に、あんな顔させて。今にも泣き出しそうな、悲しそうな顔させて…

「梓?どうした?」
「いえなんでも…続き、やりましょう」

…関係、ない。
私は澪先輩のことが好きなんだ。澪先輩と一緒にいられれば、ただそれだけでいいんだ。

「あ、そうだ梓、今度の日曜暇か?」
「日曜ですか?な、なんでですか…?」
「もし暇なら、二人で出かけないか?」
「え…」

882:想い
10/01/21 23:01:09 RtT7utgkO
澪先輩の言葉を聞いた時、私は不思議な違和感を感じていた。
あれ?どうしたんだろ私。全然、ドキドキしない…

「今度楽器屋でレフティフェアやるんだけど、律は家の用事で行けないらしくてさ。だから梓と一緒に行けたらなって。大丈夫か?」
「あ…はい」
「そっか。じゃあ決まりだな」
「…はい」

澪先輩とお出かけ。こんな嬉しいことないはずなのに、なぜかあまり嬉しくない。
…き、緊張してるからだ。うん、きっとそうだ。緊張のせいで実感が湧かないだけなんだ。

「…あれ?」

ふと私は唯先輩の姿がないことに気付いた。

「あの、律先輩…唯先輩は?」
「んー唯?なんかトイレ行くってさー」
「そう…ですか」

…なんで私、こんな気持ちになるなんだろう…唯先輩がいないからって、なんで…
私には澪先輩がいる。デートに行ってもう一度気持ちを伝えたら、もしかしたら結果だって変わるかもしれない。
そしたら、澪先輩と付き合える。好きって言ってもらえる。抱きしめてもらえる。教室まで迎えに来てもらえる。…キスしてもらえる。

だったら、それで…

「そうだ梓、日曜は何時に待ち合わせする?」
「…よく……ない……」
「梓?」

883:想い
10/01/21 23:01:20 RtT7utgkO
―あの日、私にはわかっていた。
どんなに頑張ったって、律先輩と澪先輩の間に割って入るなんてできない。そうはっきりわかっていた。

じゃあ、私はどうすればいい?自分の気持ちを納得させて、綺麗にふっ切るためにはどうすればいい?
私の頭にあった選択肢は、一つしかなかった。

澪先輩から、離れよう。

一緒にいれば辛くなる。ましてや律先輩と仲良くしているところなんて見たら、私は二人のことを妬んで、嫌いになってしまうかもしれない。
だからそうならないように軽音部を辞めよう。私はそう考えていた。

でも…それは嫌だった。大好きな先輩たちや、大好きな場所から離れなければならないのは嫌だった。
そんなあまりに自分勝手な考えが情けなくて、馬鹿みたいで…どうしようもなくなっていたところで、唯先輩が手を差し伸べてくれた。
そばにいてあげるって言ってくれた。大好きだよって言ってくれた。いつだって想ってるって言ってくれた。

その言葉に、私はどれだけ救われただろう。
あなたの笑顔が、どれだけ頼もしく感じられただろう。
唯先輩のおかげで、私は救われたんだ。今までのままでいることかできるんだ。

だから…このままでいいわけ、ないんだ。

884:想い
10/01/21 23:01:33 RtT7utgkO
「梓、どうした?具合悪いのか?」
「…ごめんなさい澪先輩。私、今度の日曜日やっぱり無理です」
「え?」
「失礼します!」
「な、ちょっと…」

私は駆け出した。澪先輩の声も律先輩の声も、私の耳には届かなかった。
ただ、唯先輩に会いたかった。唯先輩のそばにいたかった。唯先輩に謝りたかった。

「……!」
「梓ちゃん?どうしたのそんなに急いで…」
「ムギ先輩…あの、唯先輩見ませんでした?」
「唯ちゃんなら教室の方に行ったけど…なにかあったの?
 顔色悪かったから保健室に連れていこうと思ったんだけど、何でもないって言うばかりで…」
「…失礼します」
「梓ちゃん…?」

私はまた走り出した。走りながら、唯先輩のことを考えていた。
…私は、どれだけ唯先輩を傷つけてしまったんだろう。あの日唯先輩の裾を掴んでしまったばっかりに、すがってしまったばっかりに。

ガチャ

「…唯…先輩……」

夕日に染まる教室の床に、その人は座っていた。いや、座るというよりは、倒れ込む一歩手前という表現の方がふさわしいかもしれない。
小刻みに肩を震わせて、小さく嗚咽を漏らす唯先輩の姿が、そこにはあった。

885:想い
10/01/21 23:01:53 RtT7utgkO
「うぅ……っ…う…うぇぇぇぇ……」

私が流すべき涙を、今唯先輩が流している。好きな人が自分以外の誰かの側にいるのを見て流す涙。好きな人を諦める時に流す涙。
きっと、あの日私が流した涙の何倍もの涙を、唯先輩は流したんだ。

私のことを絶対に泣かせたりしない。あの日唯先輩は言った。
私はその意味をよく考えなかったけど、それはこういうことだったんだ…

「…唯、先輩」
「……!」

私の呼び掛けにビクッと体を震わせて、唯先輩はゆっくりと振り向いた。

「…あずにゃん」

充血した目と、赤く染まった頬を伝う涙。鼻水を拭うために擦ったのか、赤くなった鼻。
その顔を見た瞬間、私は耐えられなくなる。自分に対する憤りと、唯先輩に対する想い。その二つが溢れ出て…
私は唯先輩を抱きしめていた。

「ごめんなさい…!」
「あず…にゃん?」
「ごめんなさい…ごめんなさい…!私…こんな、こんな……」
「どしたの、あずにゃん…?澪ちゃんとデートの約束は…?」
「いいんです…もういいんです…」
「よくないよ、あずにゃんは澪ちゃんのこと好きなんでしょ?だったら…」
「違う…違うんです…」
「違う…って…?」

886:想い
10/01/21 23:02:22 RtT7utgkO
どんなに謝ったって、どんなに抱きしめたって、私がしてしまった罪は消せない。
自分に嘘をついて、唯先輩を傷つけてしまったことを、なかったことになんてできない。

だったら、だったら私は…

「あずにゃん…?」
「聞いてください、唯先輩」
「……?」

伝えよう。私の、本当の想いを。

「私、唯先輩のことが好きです」
「……!」

私の言葉を聞いた唯先輩は、大きく目を見開いて私を見つめる。
その表情には、驚き、そして悲しみの色が浮かんでいた。

「なに…言ってるの…?あずにゃんは澪ちゃんのことが…」
「違うんです。私、ただ逃げてただけなんです。澪先輩を諦めることから」
「諦める…?」
「私、本当は澪先輩のこと諦めてたんです。なのにそれを認めたくなくて、傷つくのが嫌で、唯先輩にすがっ…」

パシッ…

一瞬、何が起きたのか分からなかった。
時間が止まったんじゃないかっていうくらいの静寂と左頬の鈍い痛みが、唯先輩が私を叩いたという事実を教えてくれた。

「ぶって…ごめん。でもそんなこと言っちゃダメだよ。そんな簡単に好きな人のこと諦めちゃうなんて、そんなの私が好きなあずにゃんじゃないよ」
「唯先輩……」

887:想い
10/01/21 23:02:52 RtT7utgkO
…確かに私は、澪先輩にフラれた後、すぐに背を向けた。
澪先輩、そしてそのそばにいる律先輩に向かって行こうだなんて、考えもしなかった。

「好きって言ってくれたのは嬉しいよ。でも…自分に嘘ついちゃダメだよ」

…それでも。
それでも、今は違う。
今は逃げない。絶対に、逃げない。唯先輩から、私自身から、絶対に逃げない。

「…嘘なんか、ついてません」
「え…?」

私は唯先輩を力の限り抱きしめて、唇を重ねた。あの日、唯先輩が私にしたように。

「……」
「……あず…にゃ…な、なんで…?」
「…唯先輩」
「わか…わかんないよ…わ、私……っ……うぅっ…」
「…私、唯先輩にどう思われてもいいです。フラれたから乗り換えたって思われても、勝手だって思われても、嫌いだって思われたっていいです」
「…うぅっ……」
「だから…もう一回言います」
「あじゅ、あずにゃ……うぅぅ……」
「私は、唯先輩のことが大好きです」
「うぅっ…うぇぇぇ……」
「…ずっとそばにいてくれて、ありがとうございます」
「うぁぁぁぁぁ…!!」

泣きじゃくる唯先輩を、私はさらに強く抱きしめた。
あの日私がもらったぬくもりを、今度は唯先輩にあげるために。

888:想い
10/01/21 23:03:23 RtT7utgkO
「…あずにゃん」
「はい?」

落ち着いた唯先輩が口を開いた頃には、すっかり辺りは暗くなっていた。
先輩たちが探しに来ないのは、多分気を遣ってくれているんだろう。

「ホントに、澪ちゃんのこと…いいの…?」
「…はい。言い訳みたいになっちゃいますけど、私よりも律先輩がそばにいた方が、澪先輩は幸せだと思いますから」
「…そっか」
「それに、なにより…私が唯先輩のそばにいたいから」
「…あのね、あずにゃん」
「は、はい?」
「私ね、最初はあずにゃんに好きになってもらえるように頑張ろうって思ってたんだ」
「…はい」
「好きになってもらえるまでは、そばにいられるだけでいいって思ってたの。あずにゃんのそばにいられるだけで幸せだって思ってたの」
「…はい」
「でも、そううまくいかないんだよね。あずにゃんが澪ちゃんと一緒にいるの見てたら、どんどん胸が苦しくなって…今日みたいに、一人で泣いてばっかいたの。…焼きもち、焼いちゃったんだね」
「…ごめんなさい」
「謝んなくていいんだよ。私があずにゃんのこと応援するって決めたんだから、文句なんて言えないよ」
「でも、私のせいで…」
「だから…ね?」

889:想い
10/01/21 23:04:44 RtT7utgkO
唯先輩は私の胸に顔を埋めると、甘えるように言った。

「ずっと、私のそばにいてくれる?私のことだけ、好きでいてくれる…?」
「あ…あ、当たり前です!私、散々唯先輩にひどいことして…んむっ…」

唯先輩は、私にキスをした。甘くて、今にもとろけるような、幸せな味のするキス。
そうだ、考えてみたら…これは本当のキスなんだ。
最初と二回目はどちらかの想いが一方的に向いたものだった。だけど三回目は、私と唯先輩の想いが通じ合っている本当のキスだ。

「…唯先輩」
「ん…?」
「私…これからは唯先輩のこと、絶対に泣かせません。だって…」
「私のこと大好きだから、だよね」
「…やっぱり、覚えてましたか」
「当たり前じゃん。あずにゃんのために言ったことだもん」
「私、絶対唯先輩のこと幸せにします。だから…ずっと一緒にいましょうね。ずっと、ずっと」
「…うん♪」


END


何レスもすいません
前に書いたやつの続きです

長くなってしまいましたが、もし読んでいただけたらありがたいです

890:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/21 23:23:07 ji2bJGel0
>>889
おまえが来るのを待っていた…

グッジョーブ!

891:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/21 23:34:17 KyXipiiR0
力作乙
良かったよ

892:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/22 00:24:54 w5qhbJHN0
ヤバ……マジに泣きそうになった…GJだ

893:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/22 00:35:46 pQtVssC10
言い方悪いけど最近なんか梓が澪から唯に乗り換える話増えたね
や、唯×梓スレだからそれは正解なんだろうけどなんか軽い気がしてさ

894:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/22 00:40:16 ssCI6Joo0
まあ甘甘なのが多いから
たまにこういうのがあっても良い

895:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/22 01:28:07 4Xx0LVeR0
>>889
超GJ…!
実はこっそりハッピーエンドにしようと勝手に続き書いてたんだけど
先走らずに待っていたよかった…!

>>893
広い範囲ででけいおん!SSあさってると、結構そういうのに会うかな
紆余曲折して本当の気持ちに気づく、的なパターンとか
個人的には情動の振幅が大きくて楽しめるけど
…まあ、矢印が逆になるとかなりへこむ…って、スレチな話題ですね、これは

896:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/22 17:59:28 rf83DqVq0
tes

897:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/22 18:04:24 rf83DqVq0
久しぶりに書き込めた
14話見たけど寝てる時にあずにゃんが唯の背中に張り付いてるのが良いね
ライブハウスで唯が他のバンドの人と仲良くしてて寂しくなったのかな

898:その背中
10/01/23 04:24:00 Lovg7Djn0
>>897を観て、なんか浮かんだので書いてみた。
眠気眼こすりながらなので、いろいろおかしかったらすみません。

 ―みんな、ありがとー!
 歓声と拍手と照らしあげるライトの中、先輩は大きく手を振りながら叫んでいた。
 本当にうれしそうに、楽しそうに。
 初めてという言葉を差し置いても、成功といえた演奏の最後に。
 私の視界の左半分で、本当に嬉しそうに、楽しそうに、両手をいっぱいに広げながら、笑っていた。


 夜。
 私たちはコタツを囲んで、のんびりとトランプへと興じていた。
 憂の作った年越しそばを食べて、年末のテレビ番組を流しながら、ぼんやりと年の切り替わるその瞬間を待ちながら過ごしている。
 さっきまでの緊張感がうそみたいな、のんびりした時間。
 唯先輩は私の横でトランプを繰りながら、楽しそうにお喋りに興じていた。ほんにゃりと、すっかり力の抜けた笑みを浮かべながら。
 不意にその目が少し細まったかと思うと、先輩は小さなあくびをする。そして、それをじっと見ていた私に気づいて、えへへと照れ隠しの笑みを浮かべて見せた。

「眠いですか?」
「んー、そうかも…」

 無理も無い、と私は思う。初めてのライブハウスでのライブ演奏。何もかも初めてだったそれをこなし、そのまま唯先輩の家になだれ込んで今まで騒いでいたのだか

ら。
 実際のところ、私の方もさっきから眠気と格闘していたりするし。
 その余韻じみた興奮状態で何とかそれをしのいでいたけれど、それももう限界みたい。私も、そして唯先輩も。
 ぱらり、と先輩の手からトランプが落ちそうになり、そのままふにゃりと先輩はゆっくりと崩れ落ちていく。

「う~ん…もう、だめぇ……」

 そう、最後に呟きだけを残して、先輩の体はぽすんと音を立ててクッションの上に倒れこみ、間髪いれずすやすやと寝息が聞こえ始めた。
 その寝付きのよさに感心と、そして半分くらいの呆れを交えて、私もそれに追随するようにその隣、カーペットの上へと倒れこんだ。
 やはり冷たい空気は下に、暖かい空気は上にということなのだろうか。
 コタツに突っ込んだままの下半身は暖められているけど、腰から上はひんやりと肌寒かった。

「寒い……かな」

 ぽそり、と私は思わずそう呟いてしまう。
 呟いたからといって、それは変わらない。変わるはずが無い、なんてそんなことはわかっていたことだけど。
 だけど―きっとそうならないって、私は期待していた。

「すぅ……すぅ」

 視線を横に向ければ、そこには小さな寝息を立てながら眠る唯先輩の背中が見える。
 だから、私はコタツ以外には自分を暖めてくれるものが得られないまま、小さく肩を震わせている。

「ゆい、せんぱい……」

 小さく、その耳にぎりぎり届くか届かないか、その程度の声量で、私は先輩に呼びかける。
 けれども返事はやはり、返ってこない。私の目に映るのは、変わらない先輩の背中だけ。
 いつもなら、あずにゃーんなんていいながらぎゅーっと抱きついてくるのに。
 だから今も、この瞬間も、きっとそうされたまま私は眠りにつくんだと。そう思っていたのに。

899:その背中
10/01/23 04:24:38 Lovg7Djn0
「……」

 ほんのちょっとだけ、恨みがましさをこめた視線を、その背中にぶつけてみた。それで何かしようというつもりは欠片も無かったけど、とりあえず抵抗のような何か。本

気なんて半分も、どころかおそらく一割程度にもこもっていない。

 だって、本当のところ、きっとこうなるだろうってことはわかっていたから。

 まるで習慣のようにそうするから、きっと私をはじめ、私を取り巻く人たちはそれが当たり前のことだと思っているかもしれないけど。先輩は、いつも私にくっついてい

るわけじゃない。先輩が私にそうするのは、この人の周りに私より興味を引くものが存在しないときに限られる。
 そう、例えばこのところ。初めてのライブハウスにすっかり興味を惹かれてしまった先輩が、私に抱きつくことが無かったように。

 先輩はいつもそう。
 傍にいる近くにいてくれると思ったら、いつの間にかすごく遠くまで歩いて行っていたり。
 それでもまた気が付けば、びっくりするほど近くまで来てくれたりもするんだけど。
 思うが侭、大好きを振りまいて、楽しいよって笑って、いつだってにこにことしてる。
 本当に、この人は無邪気で、無垢で、憂の台詞じゃないけどまるで生まれたての天使のような人で―そして残酷だ、と思う。
 先輩たちは私のことを、唯のお気に入りだな、なんて言ってくれるけど。それはときに皮肉のように聞こえてしまう。
 つまりはそういうことで、私は唯先輩のお気に入りにしか過ぎない。私がその目に入ったときだけ、ぎゅっと抱きしめて可愛がって、そしてまたふいっと次のお気に入り

に行ってしまう。
 ずっと私だけ、なんて、そんな素振りは微塵も見せてくれない。
 今もこうして、寒さに震える私のことなんてぜんぜん知らないよなんて、私に背中を向けて気持ちよさそうに寝息を立てているように。
 距離的にはこんなに近くなのに、すごく遠くに感じてしまう。
 それはとても苦しくて、胸がぎゅうっと締め付けられるように痛くなって、辛い。辛くて、苦しくて、泣き出してしまいそうなほど。
 本当に、残酷だと思う。私を、これをそう思わせるまでにしてしまったくせに。

「……仕方ないけど、ね」

 だけど、それを先輩のせいにはできないこともわかっていた。
 だって、それは全部、私が勝手に思っていることだから。
 抱きしめられても、素直にそれに甘えられない。先輩にはついつい小言ばっかりになってしまう―まあこれは先輩にも問題はあると思うんだけど。
 いつもそれを受け取るばかりで、私は先輩に何も返してあげられてないから。
 そんな私が、そんな状態でいながらそう望んでしまうこと自体が、間違っているんだと思う。

「ゆいせんぱい……」

 だから、いつも私は後悔ばかり。いったいそれをいくつ重ねれば、私は素直になれるんだろう。
 越えるべきハードルは、たくさん目の前に転がっているのに、私は全然足を踏み出せずにいる。
 燃料になるべき想いを、まるで錘のように胸に抱え込んで、その重さに膝を震わせているだけ。

 そして。
 後いくつ後悔を重ねている間、私はこの場所にいられるのだろう。
 まだ先輩が、私の傍にいてくれるこの場所に。

 先輩は、いつも思うままに歩いていく。そして、思いのままに歩いていける力を、その胸にちゃんと抱え込んでいる。
 先輩が思うよりもずっと、先輩は強いってことを、私はよく知っているから。
 だからきっと、先輩はいつかずっとずっと遠くに進んでいってしまうんだろう。
 足踏みしたままの私なんて置き去りにして、この手の届かないずっと遠くまで。
 それは予想でも想像でもなくて、予言じみた何か。
 このままなら、いつかきっとそれは実現してしまうとはっきりと瞼の裏に、夢の中に浮かべられる。


900:その背中
10/01/23 04:25:17 Lovg7Djn0
「……あ」

 ふと気が付けば、私は先輩の背中、その服をきゅっと掴んでいた。
 逃がさないように、離れないように、遠ざかってしまわないように。
 それが嫌だと、そんなシーンなんて絶対に来てほしくないと、そう願うように。

 それは普段の私らしくない、自分でも驚いてしまうくらいに素直な行動で、思わず小さく苦笑してしまう。
 そんな素直な行動を、こんなに簡単に取れてしまった自分が、なんだかおかしい。
 唯先輩が寝ているから、それに気付かれないという前提があるからだとは思うけど。
 だけど、それでもそれはびっくりするほど簡単な行為だった。
 今まで思い悩んでいたことが、そんな自分が馬鹿みたいに思えてしまうほどに。

「……はぁ、もう」

 せっかくだから、とその勢いのまま、私はそうっと唯先輩の背中に寄り添う。掴んだ手をおなかの方まで回して、肩をきゅっと寄せて、頬を背中に当てて。
 まるで、いつも唯先輩がしてくれるみたいに―なんてそこまでは積極的にはなれないけど。

「あったかい……」

 背中越しの先輩のぬくもりは、やはり暖かかった。いつものそれには、少しだけ及ばないけど、だけどそれでもちゃんと暖かい。暖かい、先輩のぬくもり。このシーンで

は諦めていたものが、今確かに私の胸の中にあった。
 つまりは、私はずっと踏み出せなかったその一歩目を、踏み出せたということなんだろう。

「せんぱい、あったかいですよ……?」

 浮かべた苦笑は微笑に変わって、それに押されるように私は小さく、でも甘えた声で先輩に囁く。
 いまだ眠ったままの先輩は、それには応えてはくれないけれど。だけど、いなくなったりなんかしないまま、私を暖めてくれている。
 私は先輩に抱きしめられていないのに、今こうしてそのぬくもりに暖められている。それは先輩に会ってから、そんな想いを抱くようになってから初めてのことで、それ

が嬉しくて私はくすくすと笑った。
 ぎゅっともう少しだけ、先輩を起こさないほどの強さを右腕にこめて、その背中に顔を摺り寄せたまま、私は目を閉じる。
 この幸せに浸ったまま、寝てしまおう。きっとそれは、ささやかだとは思うけど、とても幸せなことだから。さっきまでの私には決して味わえなかった、その一歩を踏み

出せたからこそ、得られたもの。
 そして起きたら、またいつか次の一歩を踏み出せたら、と思う。
 起きている先輩相手に、顔をあわせながらは難しいとは思うけど。
 例えば寒くて震えている先輩を、後ろから抱きしめるくらいなら……くらいなら、なんていえる難易度じゃないとは思うけど、がんばってみようと思う。

 それができたら。ねえ、先輩。先輩は、私にどんな顔を見せてくれるのかな。

 それを楽しみにさえ思えている自分に小さな驚きを浮かべながら、私はゆっくりと先輩のぬくもりの中、意識を沈めていった。

(終わり)

901:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/23 04:33:32 HZXKzPh00

..∧_∧
( ;´∀`)
人 Y /
( ヽ し
(_)_)


902:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/23 05:17:35 Wjye7zX80
ああ、ここから例の滑り台に繋がる訳ですね
つーことでGJでした

903:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/23 15:49:45 npjfXmIrO
そういえば、あの滑り台は本編ででないのかなぁ
2期で期待しちゃっていいのかな?

904:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/23 18:02:33 jsIxRpEqO
乙過ぎて鼻血出て来た

905:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/24 16:02:16 o2nwW2R80
>>903
唯と梓が2人で帰ってる途中で、唯が滑り台滑りたがって、最初はしぶしぶ付き合ってた梓だけど、
だんだんと楽しくなってきて、2人で密着して滑りながらはしゃぎまくる、とかあればいいな
あと、滑り台の上で、ギターのこととかちょっと真面目に語り合うってシチュもいいかも

906:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/24 20:04:05 C0RQB6BJ0
ギターのメンテナンスにかこつけて、休日デートに誘う梓
的な展開とかあるといいね
代えの弦を購入したはいいけど、張替え方がわからなくて
仕方ない振りをしつつ、自宅に招いて弦の張り替え方を教えて
折角だからと、その他の手入れ法まで教え始めて
確信犯的に代えるにはもう遅い時間まで引き止めて
なし崩し的にお泊りに持っていく梓とか。
これでメンテナンスは完璧ですね、うん、完璧だよ!なんて答える唯に
それじゃ今度は私のメンテナンスを(ry なんて言う梓とかね!

何ですぐエロ妄想に行くか、自分を問い詰めたい

907:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/24 22:40:01 U3jED9/20
それじゃ今度は私のメンテナンスを(ry 

それでお願いします

908:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/24 23:32:26 lyeSqmCn0
ギー太メンテナンス→じゃあ次は唯先輩をメンテナンスってのもありですよね!?

909:私の方こそ数えきれないほどのものを貰っています
10/01/25 01:15:08 ZpZcKqWX0
突然ですが中野梓、もう頬がゆるみっぱなしです。
表情筋が馬鹿になって一生笑顔しか作れなかったらどうしようと本気で心配しています。
しかしそれもしかたの無いことです。
なぜなら私の正面にはそれはもう太陽よりもまぶしく、どんな草花よりも可愛らしいお方が座っているからです!
そのお方の名前は平沢唯。
唯一無二の私のパートナーとなる人です!
どういった意味でのパートナーですかって?
あえてみなまで言いません。
けれどそんなの決まっているじゃないですか!

現在唯先輩も私に負けず劣らずのニコニコ顔です。
その表情を見るだけで私もより笑顔になるのです。
そう、私が唯先輩を想ってニコニコしているように唯先輩も私を想ってニコニコしているのです。
つまり私たちは両想い。
私たち二人でならどこまでも羽ばたいていける!
手と手をつないでいればどんな苦難も些細なことへとなるのです!

910:私の方こそ数えきれないほどのものを貰っています
10/01/25 01:15:54 ZpZcKqWX0
・・・ごめんなさい嘘です。
いえ、私の気持ちに嘘はありません。
未来永劫唯先輩と共に歩んで行きたいです。
そのためにはすべてを投げ出しても厭いません!

嘘と言うのは唯先輩のニコニコな原因。
実は今私たちは小腹を満たすためにお店へと足を運んでいたのです。
お店の前に飾られていた蝋で作られた食品サンプルに唯先輩のくりくりとした可愛い目に止まるものがあったのです。
唯先輩から熱い視線を送られている憎たらしいやつは普通のパフェの何倍あるのでしょうかというほどの特大パフェでした。
当初私はパフェのくせに生意気なと子供みたいに対抗意識を燃やしていました。
唯先輩を一瞬で虜にしたやつを許すほど私は大人になってはいなかったのです。
しかし店員にやつを頼んだときに言われた一言で私に衝撃が走ったのです。

「スプーン二つお付けしますね」

こっ、こっ、こっ、これは・・・!!
つまりは唯先輩と同じものが食べられるというわけです!
甘くて蕩けるような間接キス、素敵じゃないですか!

911:私の方こそ数えきれないほどのものを貰っています
10/01/25 01:16:57 ZpZcKqWX0
世間で言えば他愛の無い雑談を、しかし私にとっては何よりも大事な唯先輩の可愛らしい声を堪能していると思ったより早くやつが運ばれてきました。
なんというか圧巻です。
存在感をでーんと主張して、賑々しい色とりどりの果物がまるで贅沢に宝石を散りばめているかのようです。
常識的に考えてみればいくら唯先輩と言えどこの量を一人で食べるのは至難の業。
一方的に嫉妬の炎を浴びせてごめんなさいとやつに向かって心のなかで謝ります。
唯先輩のことを想うばかり正常な判断と思考ができなくなっていました。
冷静になれと心を落ち着かせようとします。
しかし、『あずにゃんと半分こ~♪』などと愛しの彼女がおっしゃっているので早くも理性がさよならしようとしています。
そうです、今から一緒に食べるのです。
それはまるでウェディングケーキに対する初めての共同作業のよう。
歓喜のあまり震える手ではスプーンを上手く持つことができず、手からこぼれ落ちたスプーンは奈落の床へと落ちてしまいました。

チャリーンというまるでコインが落ちたかのようなスプーンにしては陳腐な音でしたがめくるめく妄想ワールドから我に返るには十分でした。
『あっ・・・』と私の口から惚けた音が発せられます。
すぐさま店員呼びボタンを一押しし、スプーンを取り替えて貰えばよかったのです。
しかし私は軽いパニックでどうしていいのかわかりませんでした。
おそらく泣きそうな表情をしていたのでしょう。
するとそこに女神の声が降りかかってきたのです。

「も~しかたないなぁ あずにゃんあ~ん」

あれ、今なんと?

も~しかたないなぁ あずにゃんあ~ん
あずにゃんあ~ん
あ~ん

・・・!!!!!

差し出されるスプーンとその奥に見える唯先輩の慈愛に満ちた表情。
ぎこちない動きで口をスプーンまで持って行き、そのままパクリと口に入れます。
沸騰していく頭と真っ赤になっていく顔を自覚します。
正直味なんて感じられませんでした。
それでも『おいしいでしょ?』の問いかけには頭をコクコクと何度も振ることで返事をしておきました。
感極まったあまり私はまるで借りてきた猫のように萎縮してしまい、言葉を発することも忘れてしまったかのように唯先輩から供給されるスプーンを只々口にと運ぶのでした。

912:私の方こそ数えきれないほどのものを貰っています
10/01/25 01:17:58 ZpZcKqWX0
不肖中野梓、何たる失態のことでしょう。
これじゃヘタレと後ろ指をさされても文句を言えません。
せっかくあ~んをして食べさせてもらったのですから次は唯先輩を食べたいですと言うべきだったのです!
それなのに私ときたら固まってしまって不甲斐ありません!
過去の自分をぶん殴ってやりたい気分です。
タイムマシンが実在するならばもれなく使うことでしょう。
そして入れ替わった暁には・・・。
いけないいけない、頭の中がピンク色で染まるところでした。
かぶりを振って雑念を頭から吹き飛ばします。

現在私たちは当初の目的であった楽器屋へと向かっているところです。
そしてここが重要なのですがなんと現在私と唯先輩は手をつないでいるのです!
お店を出たところでおずおずと唯先輩に手を差し出してみたところ、愛しの彼女はギュッとしっかり握りしめてくれたのです!
その際の唯先輩のはにかんだような表情は絶対に忘れることはないでしょう。
ええ私、親の顔は忘れても唯先輩を頭に残し続けることでしょう。

ふんふんと気分の紅潮からついふわふわ時間のフレーズがもれてしまいました。
するとそこで唯先輩、私にあわせて口ずさんでくれたのです!
二人で奏でるハーモニーはそれはそれは美しく、ここは雑踏まみれた道路にも関わらず、まるで私と唯先輩しかいないのではないかと錯覚するほど一体感を得られました。

そんなこんなで楽器屋へとたどり着いてしまいました。
目当ての場所へと着いたのだから、唯先輩はキラキラと輝いた目でお店の中へと入ってしまいます。
とすれば当然私と唯先輩の手は離れてしまい、私は寂寥感と温もりの残響が残った私のお手手をしばし眺めてしまいます。
しかし何時までも引きずっていてはいられません。
そうです私たちは手を繋ぐよりも遥かに進んだハグまで行っているのです!
それにまた手と手を繋ぐ機会はあるでしょう。
ひとまず今日は手を洗わないことを決心し、先にいった唯先輩のところに向かいました。

913:私の方こそ数えきれないほどのものを貰っています
10/01/25 01:19:05 ZpZcKqWX0
キョロキョロと店内を見渡すまでもなく唯先輩のいる方向がわかります。
たとえ人ごみ押し寄せるスクランブル交差点に唯先輩が紛れていたとしても、一瞬で正確な位置を特定することでしょう。
気配や匂いや愛や乙女電波もろもろのなせるわざの賜物です。
その場所に行ってみると唯先輩はちょこんとしゃがんでなにやら熱心にご覧になっているところでした。
ぽわぽわしている唯先輩も可愛くて大好きですが、真剣な唯先輩も格好良くて大好きです。
何を見ているのかと私も視線を向けてみるとそれはギターのピックでした。
唯先輩が私に気づき、おいでおいでと手招きしたのでお隣にしゃがませてもらいました。

しばらくうんうん言いながら品定めをした後、意を決したように唯先輩は立ち上がりました。
その手には二つのピックを持っていて、『これ買ってくるね』と私に言い残し駆け足気味でレジまで行ってしまいました。
あいにく私はずっと唯先輩のことしか見ていなかったのでどのピックを買ったのかわかりませんでした。
髪の毛一本欲しいななんて思っているうちに選んでしまったようです。

やがて唯先輩は戻ってきて、『それじゃあ行こっか』と私を店の外へと連れ出しました。
内心もっとここで唯先輩といたかったので寂しい気持ちを感じていました。
今日の目的は楽器屋に行くこと、つまりはこのデートの終わりを迎えてしまうからです。
そんな様子が顔に出ていたのか、唯先輩は『どうしたの?』と私を案じてくれています。
唯先輩を心配させるわけにはいかないと下がった視線を上へと戻すと目の前にずいと今いたお店のロゴが入った紙袋が差し出されました。
『あずにゃんにプレゼント』と紙袋を私の好きな唯先輩の笑顔と声とともに受け取ります。
唯先輩の顔が赤く見えたのは柔らかく包み込んでくれる夕日のせいだけだったのでしょうか。

『開けて良いですか?』『いいよ~』と許可を得て、紙袋を逆さにしてみると私の手元にひとつのピックがコロンと乗りました。
そして『お揃いなんだ』と唯先輩もポケットから色違いのピックを取り出します。
それらはハートの形をしたピックでした。

「いつもありがとうね そしてこれからもよろしく!」

いいえ違いますよ唯先輩。
私の方こそ数えきれないほどのものを貰っています。
私は本当にこの人のことを好きになってよかったと心の底から思います。
早速このピックを明日から使わせていただきましょう。
私と唯先輩の愛の力で聞くものすべてを幸せにしてみせましょう!
そう心に誓い、私と唯先輩は『また明日ね』と各々家へと向かって足を進めたのでした。

~fin~


というわけで『愛しのあの人とデートなのですから』の続きでこれで終わりです。
何レスにもわたってお目汚し失礼しました。
それではおやすみなさいませ。


>>906
期待しております

914:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/25 02:35:02 ZpZcKqWX0
はなまるに唯と梓が出演したようで
思わぬところで唯梓分補給できたなw

915:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/25 02:38:02 6yNVqBxw0
夜の街に二人きりだなんて

>>913
ふむ、実によい

916:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/25 02:40:30 /JpFtLxj0
これだね
URLリンク(uploda.tv) 

917:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/25 02:40:32 BxhoelfW0
続編を心よりお待ちしておりました
超GJです!
相変わらず飛ばしているあずにゃんw

918:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/25 02:43:25 gClwX0rg0
見てなかったから似てるキャラでもでてたのかなーて思ってたら
ガチじゃねぇかwww

919:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/25 03:12:20 wCo4l9FK0
>>913
おつでした。あずにゃん、よかったねぇ

>>916
おう・・・。おう?

920:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/25 03:25:37 BxhoelfW0
>>916
これは妄想が膨らむww

梓「唯先輩、そろそろ帰りませんか?もう真っ暗ですよ」
唯「もうちょっとー、あ、ほらほら、見てあずにゃん!あそこなんか面白そうだよ!」
梓「居酒屋じゃないですか…言っておきますが、入れませんよ?」
唯「ええー…」
梓「当たり前じゃないですか、未成年なんですから」
唯「そ、それじゃ、あっち!あれ何かなー」
梓「…先輩、さすがにそろそろ帰らないと、私もまずいです」
唯「あ…うん、ごめんね…」
梓「何かあったんですか?…憂とけんかして、家に帰りたくないとか…」
唯「ううん、それはないよ~私たち仲良しだもん!」
梓「まあ、知ってますけどね」
唯「でも、帰りたくない…ってのはあってるかも…」
梓「そうなんですか?」
唯「うん、なんかね…変だなって思うんだけど…」
梓「なんですか?」
唯「あずにゃんと離れたくない…って」
梓「…え?」
唯「…家に帰らずにこのままもうちょっともうちょっとって言ってれば、ずっと一緒にいられるかなって…あはは、変だよね私」
梓「唯先輩…」
唯「ごめんね、こんな遅くまで連れ回しちゃって…そろそろ、かえろっか」
梓「…いやです」
唯「え?」
梓「先輩が悪いんですよ、そんなこと言うから…今度は私が、先輩を帰したくなくなりました」
唯「あ、あずにゃん…」
梓「とりあえず、あそこに入りましょう。さすがにこの時間に制服でうろつくのは、いろんな意味で危ないですから」
唯「う、うん…って、あそこラブh(ry」
梓「せ、先輩、声が大きいです!」
唯「ご、ごめんね…だ、だって」
梓「…駄目ですか?」
唯「…ううん、あずにゃんがいいなら…いいよ」

以下自重

921:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/25 04:00:06 6yNVqBxw0
男1人だとラブホ入れないって聞くけど女の子二人でも入れるのかな

922:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/25 04:02:40 sdc1iMas0
入れるよ、よって>>920のように唯梓はよろしくやるわけだ
ちなみに空いてる日とかなら男一人でも入れてくれるとこはある

923:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/25 13:08:17 3/wEfPXK0
                 ,. x= '".:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: `ヽ、    ,.x='": : : : : : /: : : : : : :ヽ : : : : : : : :`丶、
              /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:`ヽ、/: : ,: : /: : :/: : : : | :| : : : : : : : : : : : : : : :\
              /.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::::::..:.:.ヽ :.::..:.:.:.ヽ,:.:.:.:.i./: :/:/: : :::;:/: : : : : i: :|::: : : : : :ヽ,: : : : : : : : : ヽ
           /.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.i.:.:.:::::::::::.:.:ヽ:.:::::.:.:.:.:i.:.:./: :/ /: : : //: : : : : : : :i::::: : : : : : ハ : : : ヽ : : : : :`.
          , へ:.:.:.:.:.:.i.:.:.:.:i.:.:.:|.:.:.:::ヘ;:::::::.:.:.ヽ::::::.:.:.|.:///: :ヾ / /: : : : : : :i :i::::::. : : : : : : :',: : : :ハ: : : : : :ハ
           ハ:.:.:|.:.:.:.:.:.:.|.:.:.:.:|.:.:.|.:.:.:::|. ヽ;::::::.:.:.:::::::i.:.:.:}': :/:ヾ: :/,. -=,: i : : : : : |:/:::::::: : : : : : : : i : : : :i: : : : : : :i
        .f.:.:.:.:.|.:.i.:.:.:.:.ハ:.:.:.:.:.:.:!.:.::::|  \:::::.:.:::::|:.:/: :/. : :.〉 '"   l:/| : : : : :l/.l::::::::i : : : :::. : : | : : : | : : : : : : |
        j:.:.:.:.:.i.:.|.:.:.:.:i V :.:.:.:.:.:.::::| ̄ ̄\::.::: |:::{ : l : : /       |' V: : : :,'ヽ',:::::::| : : : :::::. : | : : : | : : : : : : |
       /:|.:.:i.:.:.:.::|.:.:.:.i   V.:.:|.:.:.:.:::l     V::i:ト::l: :| : /| -ミ;、ヽ`.l   V : ;'  ',::::::|: : : : :::::l :i : : : i::.: : : :i: : :i
       ,':.:.i.:.:|.:.:.:.::|.:.:.:| / V:.|.:.:.:.:::| ..     ',:.::| 〉:'ハ:/ :| :んヾ.      V.:i、   ',:::j : : : :.:::::i.: : : : :i:::: : : ::i: : :l
        i.:.:.:i.:.:i.:.:.:.:::!.:.:.|   V ヘ:.::::|  /,.≦.'Vy}:./: | : ;|  V::::l'     .,V.、丶 V: : : : :::::::i.: ; : :.,'::::. :i :::| : i:.l
        |:.:.:.:i.:.:',:.:.:.:::l.:.:|  .,,_ヽ V::|  .ん.゚::ol j'|:.:| : : /:j   `-'      `とミ;、 ハ: : : ::::::::|: ハ: /::::::: :.l::::|: :.|:ハ
        |:.:.::::i.:.:.l'.,:.:.:::l.:|  ,,......,,_  V    V;='"  l: |: :/: / ''' ,      :{::.゜.:ハヾ/: : : :.:::::::::|/:::レ::::::::::i: :|::i : :.i: :ゝ、
       j:.::::::|',:.:|:.:ヽ;.::'.{ イiて.゚::ハ`;       ,,,,,  |:.:.l/.::::l            `v_rノ〃: : : : :::::::::|-.、:::i::::::::|: :|/.: : :|`‐-`-
      ,':.::::::i. Vi.:.:.:::ヽ. ヘ`ヽ:::,ソ          |:i:.:|: :::::ヘ       '''    〃x-‐―-...、ソ.::::|::::::::|: :| : : : |  あずにゃ~んいっしょに
      ,'.:.:::::::|  |.:.:.:::::::::ヽ.ヘ  ,,,,  '        |l|.:.| : :::::.ヘ   ` -   ,.x '".:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.` 、:l::::::::l : |: : : ,'    よそのアニメにでちゃったね~
     ,'.:.::::::::|.  |:.:.::::::::::::::i:| ',       , -     i |.:|/|: :::::,x`=‐--―‐= .:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.V.:::::::|:.,'| : :/
     ,'.::::::::::::|.  |.:.:.i::::::::::::|:|. ゝ., _    _,.;⌒l,-.,/ ' '"".:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.'.:.‐.-:.:.::::;::_:::::::::.:.:.:.:.:.:.:.',::::: ノ:/.|:./
     ,'.:.:.::::::!::|  |:.:.:i::::::::::::::}_,x-='`>γ`'     V"Y, :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::::|/|:/  レ
.     ,:.:.:.::::::|i::|  |.:.:.|:::::::::::::| ::: ,,..{'         |  {;',:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:::|  '
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   l.:.:.:.:::::::|.||  ,':.Vi:.:.:.:.:/    |           /;:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::::|
     そ、そうですね、とりあえず帰りましょーか、きょうはまっすぐ帰りますよ
         ホテルはなしですよ…



924:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/25 21:16:08 xrUA6noj0
いろんなものが膨らむ・・・

925:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/25 22:18:01 qD163+G50
そうか今日は自宅でか……

926:飲み過ぎは禁物です
10/01/26 03:53:54 Zp745EjWO
※この物語では未成年の飲酒シーンがあります。よい子は真似しないでください

「こんにちはー♪」

その日も愛しの唯先輩とラブラブ時間を過ごすべく部室にやってきた私。
ですがその日の唯先輩はなにかが違っていました。

「……」
「唯先輩?どうしたんですか突っ伏しちゃって。居眠りですか?」
「…あずやん……?」
「ど、どうしたんですか唯先輩!?顔が真っ赤です!風邪ですか?」
「かじぇ…?えへへ、ちがうよー…ひくっ、わたしは元気百倍らよー♪」
「元気って…」
「それよりー♪」ガバッ
「きゃあ!?」
「あずにゃん遅いよも~!私待ちくた、ひくっ、待ちくらびれちゃった~♪♪」
「唯先輩…お酒臭い!?」

真っ赤な顔、おかしなテンション、酒の臭い…間違いない、唯先輩、酔ってる!
ふと机の上を見ると、チューハイらしき缶が。まさか、これを…?

「えへへ~♪さわちゃんがねぇ、ひくっ、会議らから唯ちゃんに預けるって言ってね、ひくっ、らからね、ちょっと味見したの~♪」
「ちょっとって…あ、半分しかないじゃないですか!とにかく顔洗って酔いを…きゃああ!!」ガターン!
「ん~♪あじゅにゃ~ん♪」

927:飲み過ぎは禁物です
10/01/26 03:55:00 Zp745EjWO
「ゆ、唯先輩、何を…」
「えへへ~ん♪あ~ず~にゃ~ん♪」
「に゙ゃ…!ん……」

唯先輩に頭を思い切り抱きしめられ、私の顔は先輩の胸に押し付けられます。
普段なら極上の幸せを噛みしめるところでしょうが、酔っているせいか力が強すぎです。い、息ができません……

「…ぐ……ぎ、ぎぶ……」
「あ!あずにゃん苦しそう!ひっく…たいへんだぁ…人工呼吸しなきゃぁ…」
「うぇ!?ちょ、ちょ……」
「んちゅ~♪」
「ん…!!」

今度は遠慮なくキスをする唯先輩。人工呼吸というか、これはもうただのディープキスです……
さ、酒臭い……でも唯先輩の唇、柔らかくて気持ちいぃ……って私なに考えてんの!?

「ぷはぁ…ねぇあずにゃーん…私なんかあっつい……」
「はぁ、はぁ…え?ちょ!ダ、ダメですよ脱いじゃ!唯先輩!!」
「はー、すっきりー♪」

私の静止を振り切ってブレザーを脱ぎ捨てた唯先輩は、ブラウスのボタンを全て外してしまいました。
間からかわいらしい下着がちらほら覗くのを下のアングルから見るのは、な、なんというか……

「い…いくら酔ってるからってまずいです…!もし皆に見られたら……」
「えー…ひっく…大丈夫らよぉ……そうだ♪」

928:飲み過ぎは禁物です
10/01/26 03:56:45 Zp745EjWO
唯先輩はチューハイの缶を掴むと、満面の笑みを浮かべ私に差し出しました。

「はい♪あずにゃんも飲もー♪」
「ダメですよ未成年が飲んじゃ!と、とにかく離れて服を……!」
「ひっく……そっか、あずにゃんはまだ一人じゃ飲めらいのかぁ…大丈夫だよ、私が飲ましてあげるからぁ♪」
「な、ちょ…唯先輩……まさか」
「口移しならあず、ひくっ、あずにゃんも大丈夫れしょ~?

く、口移し!?いくらなんでもそれは…と唯先輩を引きはなそうとしましたが時既に遅し。
チューハイを含んだ唯先輩の唇は、んちゅーっと私の唇に…

「んっ……ん…んく…んく…」

あ…やば……チューハイ、おいしい……かも……ゆ、ゆい…せん…だ、ダメ……あたま、ぼんやり……して……き……もち…いい……

「えへへ、どう~?」
「…れんれんらめれす」
「ほぇ?らに言ってるのあじゅにゃん」
「こんらんじゃらえれす!ゆいしぇんぱいははらかになってくらさい!」ガバッ
「え?はらか?わ…ひゃあぁっ……!!」

929:飲み過ぎは禁物です
10/01/26 03:59:35 Zp745EjWO
私の名前は田井中律。個性派揃いの軽音部を華麗にまとめる美少女部長だ。
今日も澪や梓をからかったり唯と絡んだりムギの入れるお茶を飲んだりがんばるぞ!

ガチャ

「おーっす!」

「んんっ、あ、あじゅにゃ…はふぅ…」
「ゆーいしぇんぱい♪」

バタン

律「……」

えーと、待て。落ち着け。まずは気持ちを落ち着けよう。私の名前は?―田井中律。私の誕生日は?―8月21日。
…よし、大丈夫だ。私は平気だ。変な幻覚なんて絶対に見ない。友達と後輩が半裸で絡み合っている光景なんてあるはずがないんだ。

ガチャ

「おーっす!」

「…あ…じゅ…にゃん……」
「あっ…ん、んん……唯…しぇ……気持ち…いいよぅ……」

バタン

「……」

「よ、律!」
「そんなところでどうしたの?」
「澪、ムギ。今日の部活は中止だ。3人でハンバーガーでも食べに行こう。今日は私のおごりだ」
「え、唯と梓は?…ていうかなんで泣いてるんだ…?」
「わ…私だって泣きたい時くらいあるんだよぉぉ!うわあぁぁぁん!」
「わ、わかった!わかったから!わかったから泣くな!」

「…なにか、部室から強烈かつ甘美な雰囲気がするわ……ゴクリ」


―終幕―

930:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/26 04:02:53 Zp745EjWO
カッとなって書いた。
最初はごく普通のイチャイチャを書こうとしてたのに…反省はしています

931:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/26 05:48:01 B87eOQjS0
かまわん、実によい

932:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/26 12:28:12 gdd+dDcv0
よく考えたら一番飲ませたら駄目な二人だw

933:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/26 18:53:54 TKNjuIsO0
幼児並のアルコール耐性のなさだ
実に良…けしからん。

934:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/27 19:52:53 9AoYEPDc0
14話で梓が唯に
「シップか!?」ってツッコんでるの
何かすごく良い

935:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/27 20:07:46 oSXsHV6h0
ツッコミなれてない感じが良く出てるよね

936:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/28 17:18:42 bk7L1Mu70
梓も少なくともHTTとしては初めてのライブハウスでハイになってたんでしょうね
それでも、いつもと変わらない唯に他のみんな同様緊張をほぐされていたんだろうなあ。
やっぱり唯はなんだかんだでみんなの中心にいるんだなと思った回でした。
というまともな感想で終わるはずなのに

―ライブハウス、個室内
唯「あずにゃん、緊張してるの?」
梓「そ、そんなことは……ないです」
唯「ほんと?」
梓「……唯先輩にごまかしても仕方ないですね。ほんとは、緊張してるみたいです」
唯「そっかぁ……なんか様子おかしいなって思ってたんだ」ギュ
梓「ひゃっ!な、何でそこで抱きつくんですか」
唯「ん~あずにゃんの緊張をほぐしてあげようって」
梓「こ、こんなんでほぐれるわけが…」
唯「…ない?」
梓「うぅ…あるみたいです…」
唯「ふふっ」
梓「…唯先輩は、緊張とかしないんですか?」
唯「もー、私だって緊張くらいするよ?」
梓「だって、ぜんぜん平気そうじゃないですか」
唯「今は平気だからね!…こうしてあずにゃんをぎゅっとできたから」
梓「…せんぱい」
唯「もう大丈夫?」
梓「…まだ緊張してるみたいです…だから」
唯「…もっと、だよね」
梓「はい…あ…」
唯「安心して、あずにゃんの緊張がほぐれるまで…してあげるから」
梓「はい…お願いします、唯せんぱ…い…」

なんでこう、唯先輩に身も心もほぐされました的な妄想に発展するのかもう

937:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/28 18:11:40 44f7gMUA0
URLリンク(u.upup.be)

おお・・・

938:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/29 03:04:27 oWpNIQK60
アニメのラストらへんだと肝心なときは梓は唯寄りになるけど
基本は澪に付和雷同って感じですか
ライブハウス回とかことあるごとに澪に賛同する梓が多くて
それにものほほんとマイペースな唯だったけど
少しだけ複雑さを感じたりすると面白いかもですね
「あずにゃんはやっぱり澪ちゃんにべったりだなあ…」とか
まあ、表層には出なくてもそういうのが積み重なって無視できなくなってきて
どうしてこう思うのかなと考えるようになって
その間こなしたイベントで、梓が唯の方により寄ってくるようになって
そんなことに幸せを感じたりして
そうしてふと、ひょっとしたら私、と気付くのもいいかなあ

939:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/29 07:39:09 f5ucBppi0
ライブの日の夜にはもう梓からくっついてきてるぞw

940:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/29 13:26:07 X6iMvydiO
久しぶりに書き込める
唯梓最高だなやっぱ

941:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/29 14:21:07 oWpNIQK60
なんか妄想を続けていたら思いついたので
投下するか迷ったけど…
悲恋ものなので注意

942:おくれてきたもの
10/01/29 14:25:20 oWpNIQK60
最近澪先輩との距離が近いと思う。
気のせいかなと思うものの、だけど確かかもしれないとも思う。
今こうして、一緒に部活へと向かっているのがその良い例なのかもしれない。
偶然近くにいたから、とは言っていたけど。毎日とは言わないものの、最近よく起きるイベントだ。
勿論、それに何らかの拒否反応を示している、なんてことはない。
尊敬する澪先輩と一緒にいられること、それは喜びこそすれ嫌がる理由なんてないし。
部活でも合わせる機会を多く取ってくれるから、有意義に過ごすことができているし。
以前よりティータイムの切り上げを早くするよう、強く言うようになってくれたし。
帰り道も、わざわざ私に合わせてくれたりしてくれて、他の人にはできない音楽面の相談にも乗ってくれたりした。
そう、これが軽音部だよ、なんて思えたりもしている。
―多少の戸惑いを感じたりはしていたけど。

思えば、そのときの私がそれをもう少し深く考えていれば―
なんて、いまさら後悔しても何か変わるわけではないけれど。
それはまさしく、意味のないことだと思う。

あの日の出来事も、よくよく些細な出来事だった。
特別なことは何もなく、日常のワンシーンのその範疇に収まるくらいのこと。
教室にまた澪先輩が迎えに来てくれて、それに浮かれていた私は、ワックスのかけすぎで滑りやすくなっている廊下に気が付かず、まるで絵に描いたシーンのように鮮やかに転んでしまった。
勿論、それは私の運動神経が云々という話ではなく、滑ったその瞬間に自分をかばうか背負ったギターをかばうか迷ってしまったからで。
まあつまり、反射的な何かが不足していたということだ。

廊下で転ぶなんてことは、まあそんなに起こることじゃないけれど、四葉のクローバーを見つけることよりは高確率だろうから。
特別なことなんてない、ということにしておきたい。自分の名誉とかプライドとか、そんなもののために。
だから、その後のことが問題だったのだと思う。そのときしたこと起こったことではなくて、ただ純粋にタイミングの問題として。

結局はギターをかばうことにしたけれど、そのときには既に手を突くとか、そういう受身的な何かをとる猶予はまったく残ってなかった。
地面にたたきつけられるのを覚悟した私だったけど、その瞬間はいつになっても訪れなかった。
澪先輩が、その寸前に私を抱き上げてくれていたからだ。それも、本当に鮮やかな手並みで。
それは自分は小柄で、先輩は立派なスタイルだと思ってはいたものの、こうされてしまったときそれがこんなに顕著になるとは思っていなかった。
「大丈夫か」なんていつもより真剣さを交えた声をかける姿は、もうかっこいいとしか言いようもない。
おそらく傍から見れば、まるで劇画のワンシーンのように私たちの姿は映っていたことだろうと思う。それは主に、澪先輩のせいで。
まあ、澪先輩がかっこいいなんてことは、既にわかっていたことだけど。
唯先輩なら、きっと私を助けようとして、一緒に転んじゃってたかな。
なぜそこで唯先輩のことを浮かべたのかわからなかったけど、それを契機にして私は澪先輩から身を離した。
澪先輩も特にその動きを拒むことなく、手を離してくれる。当たり前、といえばそうなんだけど。
ありがとうございます、と少し赤くなった頬を隠すように、小さくうつむきながら視線を巡らしたときに、私はそれに気が付いた。
床に落ちている小さな手帳。見慣れたその表紙は、すぐに私にそれが生徒手帳であることを気付かせる。
落し物かな、と拾い上げ、その持ち主を確かめようと表紙をめくる。
そのとき私の中に生じたものを、そのときの私は言い表すことができなかった。
おそらくは硬直して見えただろう私に怪訝そうに問いかけてくる澪先輩に、知り合いのものだから預かっておいて後で渡すことを答えた。
そのまま澪先輩から隠すように、自分でもその存在を忘れてしまうようにと鞄の中に入れる。
その可能性に気付かないように。これがもし、ほんの今落とされたものだとしたら、先ほどのシーンをその人は目にしていたということになってしまう。
なぜそれを忌避してしまうのか、自分でもわからないけれど。
そう、今すぐじゃなくていい。いずれ返せばいい。それを忘れてしまったころに、さりげない振りをして。

どうせ、これを落としたあの人は、しばらくは自分がそれを落としたなんてことに気が付かないだろうから。



943:おくれてきたもの2
10/01/29 14:26:03 oWpNIQK60
「やっほー」なんていつもどおりの挨拶で、本当にいつもどおりにあの人は音楽室に現れた。
逆に私のほうが戸惑ってしまって、「どうしたの?」なんてきょとんとされる始末。
いつもどおりのティータイムに、いつもどおりの練習、いつもどおりの帰り道。
澪先輩は今日は付いてこなかったから、最後はこの人と二人きり、お喋りしながら帰る。
本当にいつもどおりで、だから私はすっかり安心してしまっていた。
私がそこで、もう少し用心していたらひょっとした何か変わっていたのかもしれないけれど。
だけど結局ばいばいって別れるその瞬間をもって、私はいつもと何も変わらない日だったと結論付けていた。
そう、信じ込んでしまっていた。
何故なら、それは私の望む状況だったから。

それからの日々も、特に何も変わらなかった。
澪先輩との距離も近いまま。時々部活に行くとき迎えに来てくれるのも、たまに帰り道を共にするのも変わらない。
あの人も、相変わらずにこにこといつもどおりの笑顔で、いつもどおりに私に笑いかけてくれていた。
本当に、それはいつもと変わらない日常。それが、本当に驚くほど順調にカレンダーの日付を埋めて行っていた。
私の鞄の中の生徒手帳、その存在を私自身が忘れてしまうくらいに。
だからそれを見つけたときは、私はすっかりそれはあのときじゃなくてその前に落としていたものだろうと思い込めるようになっていた。
だから、安心だと。それを返してしまっても大丈夫だと。そう思えていた。
そうしてしまっても何も変わらないと。
あの人は変わらずににこにこ笑いながら、あずにゃんって私を呼びながら、私の傍にいてくれると。
そう思っていた。
そう思ってしまっていた。

きっと私は馬鹿だったんだと思う。
気付くべき全てに気付かず、それでも何も変わらないでいられると妄信していた。
いわば、全てに甘えていたんだと思う。
だって私は部活の中では最年少で、みんなの後輩で。
あの人の可愛い後輩で。
だからきっと、私は許されると思っていたのかもしれない。

だからその日もいつもどおり、音楽室の扉を開けた。
唯先輩が私より先にそこにいるのはわかっていたから。
教室を訪れた私に、私の知らない唯先輩の友人が、先輩がもう部活に行ったことを教えてくれたから。
いつもどおり挨拶して、そして生徒手帳を返してしまおう、なんてそう思っていた。
そこまでは本当にいつも通りだったから。
だから私は。

その瞬間私の目に映った光景を、どう捉えれば良いのか全くわからなかった。

そこには唯先輩と律先輩がいた。そこまではいい。澪先輩は私の後ろにいるし、ムギ先輩はきっと用事で遅れているんだろう。
だから、この二人だけが音楽室にいることには、何の不思議も感じない。
ただ、それがいつもと違ったのは。それも決定的に違ったのは―

その二人が口付けを交わしていたということ。


944:おくれてきたもの3
10/01/29 14:27:47 oWpNIQK60
その言葉を、その様子を表すに足る言葉をようやく頭に浮かべられた瞬間に、私の思考は真っ白く塗りつぶされた。
そのとき何をしたかわからない。何を言ったかわからない。
ただ気付けば、私は廊下を全速力で走りぬけ、人目に付かない場所を探し続けるままに、屋上へとたどり着いていた。
そのまま倒れこむように、いや実際倒れるようにして私は地面に崩れ落ちていた。
コンクリートは容赦なく私のひざを削ったけれど、跳ね上がった鼓動と呼吸は文字通りマラソン直後のような気持ち悪さを与えてきたけれど。
そんなものはどうでもよかった。
そんなものとは微塵も関係ないところから、次から次へと涙があふれ出てきていた。
そのまま声を上げて私は泣く。まるで子供みたいに、声をはばかることなく、泣きじゃくる。
そこでようやく私は気が付いていた。
私が本当に抱いていたものは、何だったのかを。
私が本当に望んでいたものは、何だったのかを。
そして。
あの人が、その笑顔の奥で、望んでいたものが何だったのかを。
私の記憶に最後に残る、駆け出すその一瞬前に垣間見えたあの人の表情が、何よりも明確にそれを私に教えていた。

もっと早く気が付くべきだった。
もっと早く、気が付いてあげるべきだった。
その材料なんて、たくさんあった。生徒手帳なんて、そのひとつに過ぎない。
逆に、あそこまでわかりやすいヒントを与えられても、私は何も動けないままだった。
変わったことはいくつもあった。
ただ私が、それを変わらないと思い込んでいただけ。
澪先輩との距離もそう。澪先輩に何があったかまではわからないけど、それ以前に比べて明らかにそれは変わったものとすべきだった。
あの人に関してもそう。確かにあの人の笑顔は変わらないままだったけど。
だけど、思い返してみればそうだった。以前は毎日のように抱きついてきたあの人は、澪先輩と私の距離が変わってからそうしなくなっていた。
澪先輩が私と帰り道を共にしようとするとき、あの人はいつも妹から頼まれた買い物のことを思い出していた。
それでもあの人はいつものように笑うから、私はそれに気が付かなかっただけ。
どうして先輩がそうしていたか、私はそれに気が付かなかった。
だって、私は妄信していたから。
たとえ何があっても、この人は私のことを好きでいてくれて、私の傍にいてくれるんだって。
それは、なんて残酷なことだったんだろう。
私はそれを思い知らされるまで、全くそのことに気付かなかった。
今私の胸を切り裂いているこの痛みを、あの人はきっとずっと抱え続けていたんだろう。
それでも、いつもどおりの笑顔のまま私の傍にいてくれたんだろう。
私がそう望んでいることを、きっとあの人は気付いていたから。
だから、あの人はそうしていてくれた。
私にそれを悟らせないように、本当にそれまでどおりに。

私は、そんなあの人のことがずっとずっと好きだった。
そう、好きだった。
出会ったときから、とは言わないけど。
あの人のことを一つ一つ知るようになってから、どんどん好きになっていたんだろう。
私はそれに気付かなかったけど、気付けなかったけど。
確かに私は、あの人のことが大好きで、そして今も大好きでいる。
中野梓は、平沢唯の事が大好き―

それをどうして、私は―


945:おくれてきたもの4
10/01/29 14:28:47 oWpNIQK60
もう、何もかも遅いのだろう。
あの人はもう、私の傍にはいないのだから。
どんなに手を伸ばそうとも、届かない場所に行ってしまったのだから。
そう思いかけて、自分の愚かさに心底呆れた。
今まで全くそうしようとしなかったくせに、何をいまさら手を伸ばそうとも、なんて言えるのだろう。
あの人はいつでも私の傍にいてくれたのに。
手を伸ばせば触れられたのに、捕まえることができたはずなのに。
私は、そうできたのに。

だけど本当に、もう何もかもが遅かった。
遅すぎた。
本当に、もう少しでも早ければ―そんな後悔すら、今の私には抱く権利はないのだろう。
胸の痛みは消えない。
いくら涙を流そうと、消える気配すらない。
深く刺さった棘は、幾重にもその切っ先を広げ、私の胸に根付いていた。
それはきっと、いつまでも消えることはないんだと思う。
だけど、それでいいと思う。
きっとそれは罰だから。
それくらいじゃないと、きっと割に合わないと、私は思う。
少なくとも、あの人が抱いたものよりも、ずっと強いものじゃないといけない。
それで私が許されるなんて欠片も思わないけど。

だからもう、泣くのをやめよう。
もうきっと、私にはそれすら許されないから。

嗚咽をかみ殺し、弛緩する体に無理やり力を込めて、私は立ち上がる。
それでも丸まってしまおうとする背筋を伸ばして、私は空を見上げた。
いまだあふれる涙も、そうしていればやがて止まってくれるだろうから。
そして、いつもの私に戻ろう。
いつもに見える私に戻らないといけない。
もうあの人の重荷にならないように。
それを背負うのは、もう私だけで十分だから。
今まであの人がそうし続けていたことを、今度は私が引き継ごう。
あの人がそう望む限りは、あの人の傍にい続けようと思う。
いつもの、私のままで。

だって、この状態になってもまだ、本当に浅ましいとしか言う他にないけれど。
それでもやはり、私は。
あの人のことが好きだから。

唯先輩のことが、好きだから。

―ねえ、だから。
それくらいは、許してくれますよね。
許されてもいいんですよね。

ああ、もう―本当に私は―

946:おくれてきたもの5
10/01/29 14:29:29 oWpNIQK60
視界を埋める青。
何もかもをそこに預けてしまうように、私は一度目を瞑る。
そして、ゆっくりと目を開けた。
涙はもう止まっていた。
もう、いつもの私。いつものように音楽室に戻って、そして。
きっとそこはいつもじゃない様相になっているかもしれないから、それをいつもになるよう頑張って。
そしていつものように過ごしていこう。
それがきっと私のすべきことで、そして望める唯一の選択肢だから。

ガチャリ、と私の背後から音がする。
そして、キィと金属のきしむ音。立て付けの悪い、屋上の扉が立てるその音。
直後、あの人の気配が現れる。それを、感じ取れる。
きっと、飛び出した私を心配して追いかけてきてくれたのだろう。
本当に、こんな私のことなんて放って置いても良いのに。あの人は、本当にどこまでもあの人なんだ。
苦笑する。
本当に小さいけれど、そう私はできていた。
そのまま振り返ってしまおう。おそらく涙で腫れてしまった目元はどうしようもないけれど、それはきっといつもの私の表情だから。

私はきっと、大丈夫。
だから、心配ないってちゃんと伝えよう。
私なんか心配しなくてもいいんだって、そう教えてあげないと。

だから私は、精一杯の笑顔を浮かべて振り返った。
唯先輩、って。本当にいつもどおりに。
きっと数え切れないほどの―文字通り、万感の思いを込めながら。

(終わり)


947:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/29 15:40:38 WUJL49JJ0
泣いたけどスレチ

948:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/29 15:47:17 nanfQGzMO
悲恋も嫌いじゃないよ

甘いのが好きは当然として

949:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/29 22:43:43 CgJnOBZp0
2期が決まってまだまだ唯梓を見ることができるんだな♪

950:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/29 23:11:02 nanfQGzMO
楽しみだよな

951: ◆U0kc14QpJ6
10/01/30 00:00:07 bek0WS7JO
唯梓SS書いてみました
初めて唯梓書いてみたから不安だけど、スレ汚しながら投下します

952: ◆U0kc14QpJ6
10/01/30 00:02:41 bek0WS7JO


たとえば寒い中、温かいものを飲んだり。

それがココアとか、コンポタとかならなおさら。

コーヒーなら、砂糖をたくさんいれたやつ。


たとえば暑いとき、風鈴みたいに。

音だけなのに、涼しくなっちゃう。

冷たいものなんていらないんだ。



つまり、そういう存在が私には眩しすぎた。




【 MUSIC GIRL 】




寒い。今日はとにかく寒い。

冬はやっぱり寒いのです。

部活が終わって、学校帰り。
ギターを背負った私とあなた。

澪先輩や律先輩、ムギ先輩とは別れたあとのこと。

私とあなたの二人きり。

別に嬉しいわけじゃない。
だからって嫌なわけじゃない。


一緒にいると困っちゃうから。
となりにいて、ほんわかほんわかな…唯先輩が私を困らせるから。


「ねぇねぇ、あずにゃん!コンビニ行こうよ~」

「いいですよ。お供します」


日は傾きつつあって、それでも人通りはあって。





953: ◆U0kc14QpJ6
10/01/30 00:05:24 bek0WS7JO



私はギターが大好きだ。

恋人、とまでは言わないけれど。

ギターさえあればそれでいい。

そう思った日も多々あった。


音楽が全て、とまでは言わないけれど。

没頭した。

形のない、手に取れない、目に見えない。
なのに心に響いちゃう。
感動させたり喜ばせたり。


そんな音楽が大好きなんだ。



「あー、新しいのが出てる!」


コンビニに入るやいなや、本のコーナーに行って。
ファッション雑誌を手に取る先輩。


「これいいなぁ…欲しいなぁ~」


雑誌を広げてしばらくして、ピンク色の可愛いTシャツに目が止まった唯先輩。


「唯先輩が好きそうですね」

「うん…わかる?」

「はい」


可愛いものが好きな人。

あなたに言わせれば、私は可愛いみたい。

…少しだけ、嬉しい。少しだけです。


しばしの間、雑誌を二人で見ていた。
買えばいいのに。




954: ◆U0kc14QpJ6
10/01/30 00:06:24 bek0WS7JO


そんなときに。



ぐぅー。



となりにいて、耳に入った音。


「お腹すいちゃった」

「唯先輩ったら…」


女の子なんですから、ちょっとは恥ずかしがってもいいのに。

いや、恥ずかしがるのは澪先輩で足りているのか。

…どうでもいいとこでバランスがとれてる軽音部。


「ねぇ、なんか食べ物買ってきていい?」

「いいですよ。私はここで続き見てます」

「おっけー♪」


ふわふわと歩き出す唯先輩。

擬音は絶対、ふわふわが一番似合ってる。

私はさっきの雑誌の続きをよむことにした。
すると暫くして、唯先輩が本が並んだ雑誌売り場に戻ってきた。


「えへへ、肉まん買っちゃった~」


…いい匂い。美味しそう。





955: ◆U0kc14QpJ6
10/01/30 00:09:50 bek0WS7JO
◇◇◇◇◇

コンビニから出て、歩き食いする唯先輩。ちょっとだけお行儀わるい。


「はむ……美味し~♪」


本当に美味しそうに食べますね。
グルメレポーターに向いてますよ。

唯先輩ったら…にこにこしちゃって。

はぁ、まったく。

またあなたはそうやって私を困らせるんですね。

無邪気に振る舞えば振る舞うほど。
表情がころころと変わるたびに。

私は困惑してしまう。

あなたはふわふわしてるから。



「あずにゃんも食べる?」


あぁ…。

さらに、困らせる唯先輩。


「い、いいです」


そんな優しさ、やめてください。


「そんなこと言わないで~。ほら、あーん」

「あ…あーん」


…意志弱いな私。
いや、唯先輩に…弱いのか。


「美味しいでしょ?」

「はい…もぐもぐ」


美味しい。ふわふわな肉まん。

あったか、あったか。



956: ◆U0kc14QpJ6
10/01/30 00:12:56 bek0WS7JO


唯先輩は不思議な人だ。

形があるのに、触れることができるのに、目に見えているのに。

どうしてあなたはそんなにも、私の心に響くんだろう。


だから、私はさらに困ってしまう。

ずっとずっと、見ていたい。

もっともっと、知ってみたい。


…本当に困る。


肉まんを食べ終えた先輩。
ちょこっともらったお裾分け。


「寒いね~、あずにゃん」

「ですね。早く帰ってあたたまりたいです」

「帰るまでつらいよね。あ、そうだ!」



唯先輩はそう言うと。

あろうことか。

…私の手を握りだした。



「な!な!?」

「こうすれば帰るまであったかだよ」



いや。

いや…いや。

やめて、私を困らせないで。

だめ、だめです。

あってはならない。



957: ◆U0kc14QpJ6
10/01/30 00:14:56 bek0WS7JO



「や、やめてください!」


「え…?」



唯先輩は、私がとっさに言った言葉に…呆然として。


「ご、ごめんねあずにゃん」


すぐに手を離して。

それだけ言って顔を余所に向けて。


……絶対に傷つけた。

やってしまった。

今までだって多々あった困惑。

困惑したら、誤魔化せばいいと思ってた。

でも今回、私は……その誤魔化しで唯先輩を傷つけてしまった。


謝らなくちゃ…。



「…唯先輩、さっきのは間違いです」

「…無理しなくていいよ。私なんか…ばっちいよね」


な……!!


「なにアホなこと言ってるんですか!」

「あ…あずにゃん…?」

「唯先輩ほど綺麗な人なんか、存在しません!!」



一気に言ってから気づく。

なに変なこと言ってんだ、私。




958: ◆U0kc14QpJ6
10/01/30 00:18:32 bek0WS7JO


「あずにゃん…」

「…はい」

「じゃあ…じゃああずにゃん、手…繋いでいい?」


…やっぱりそうなるのですね。


唯先輩の目を見れば、何が言いたいのかわかった気がした。

唯先輩は不安なんだ。
私が突きつけた発言が、本当に間違いかどうか。

……ごめんなさい唯先輩。
私が勝手に困惑しただけです、だから。

そんな目をしないで。


「どうぞ」



◇◇◇◇◇



手を繋いで帰ると、それはあったかあったかだったから。


形があるのに。
触れることができるのに。
目に見えているのに。

どうしてあなたはそんなにも、ふわふわなんですか。


音楽みたいなあなた。

音楽が大好きな私。


……本当に、困る。





959: ◆U0kc14QpJ6
10/01/30 00:21:55 bek0WS7JO

「あずにゃんの手、小さくて可愛いね」


鏡を見たらどうですか?
あなたの方が可愛いです。絶対に言わないけど。


「あずにゃんはさ、恋人とかいたりした?もしかして、今いる?」


……恋の話をあなたからするなんて。


「…いえ。今も昔も、恋人なんかいた試しがないです」

「えぇー?こんなに可愛いのに。じゃあさ…」


一息置いて、唯先輩は言った。


「誰かを好きになったことはある?」


そ、それは。

困ってしまう私。


「…それ…は…」

「どうなのさ、あずにゃん」


ワクワクしてるんだろうな、唯先輩。
これから赤裸々体験談が聞けると思ってそう。


「ゆ、唯先輩はどうなんですか!?」

「ふぇ?」

「誰かに…恋したこと、あるんですか」



唯先輩はどうなんですか。

まさか、あるとか。

いやいや、唯先輩だもん。

あるわけ…。


「えへへ、あるよ」


私の中の時が止まった。

960: ◆U0kc14QpJ6
10/01/30 00:24:12 bek0WS7JO


ふわふわなあなたは、確かにそう言った。

ふわふわなあなたが……恋をしたことがあるんだ。


「そうなんですか…」


信じられない。失礼だけど、恋する先輩を想像できない。

…唯先輩は、どんな恋をしたんですか。

どんな人に、どんな想いを巡らせたんですか。



「片想いだけどね…恥ずかしいな、言っちゃったよ~。
あずにゃんは恋したことあるの?」

「…ノーコメントで」

「えぇー!?ずるい!私は言ったのに」


……そう言ってから、唯先輩は私の手を強く握って。




「あずにゃんみたいな人が恋人なら毎日が楽しいのかな」




…そんなこと言うから。


非常に困った。

これ以上ないくらいに、本当に…困った。



だって。

…だって、だって。

これ以上困ったら。





961: ◆U0kc14QpJ6
10/01/30 00:27:26 bek0WS7JO



「唯先輩!そう言うことは言わないでください!」

「え…?」

「これ以上そんなにされたら…」

「…されたら?」



私をもう困らせないでください。

だって、だって、これ以上何かされたら。

…これ以上、困ったら……。




「す、好きに…なっちゃうって言ってるんです!!!」




……あぁ。
言ってしまった。

ああ、言ってしまった。



「…あずにゃん…」

「だからだから…だから、もうこれ以上はやめてください!」


自分でも認めたくない感情を言ってしまった。




962:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/30 00:27:43 sNcpUm9FO
支援間に合わなかったか
サルは毎時00分に解除な

963:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/30 00:35:35 Sm5kHs/I0
同一IPから一定時間以内に書き込まれたレス数で
規制をかけるので支援レスなんて挟んでも無駄だってウ・ワ・サ
こりゃサルられるなって思ったけどアニキャラ板の規制しきい値が知りたかったからわざと傍観しちったw

964:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/30 00:38:26 Sm5kHs/I0
うむ、スレ容量がもう限界なので新スレを立てようと思ったが無理だった
さらば

965:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/30 00:52:26 S0xzZKn9O
どうにも改行多すぎな気がするけど初めてだから仕方無いか
トリは…まあ気にしないでおこう 支援

966:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/30 00:54:29 i78yVYx20
次スレ立ててくるわ

967:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/30 00:57:13 i78yVYx20
【けいおん!】唯×梓スレ 5
スレリンク(anichara2板)

よし、これで容量オーバー落の心配も無かろう

968:再開します ◆U0kc14QpJ6
10/01/30 01:02:36 bek0WS7JO
大好きなのは音楽だけでいいのに。

尊敬でもない感情。
友情でもない感情。
羨望でもない感情。

わけのわからない感情なのに。

その感情にはまだ名前をつけたくなかったのに。

…好き、だなんて。


「あずにゃん……」


何かを言いたそうな唯先輩の手を振りほどいて言った。


「か、帰ります」


…もう、困ることもないのに。

唯先輩に背を向けて、走って帰ろうとした時。


「あずにゃん!待って」


後ろにいるあなたは、私を呼び止める。
立ち止まる私。
私とあなたの距離はわずか。


「あずにゃん…」

「………」


振り返れない。

気持ち悪い後輩だと罵っても別に構いません。私なら言いそうです。

唯先輩は…何を言うんですか。



969: ◆U0kc14QpJ6
10/01/30 01:04:12 bek0WS7JO



「好きになってよ」



…唯先輩。

だめですよ…そんな。


後ろから、唯先輩が私を抱き締めてきた。

ふわふわなあなた。

音楽みたいなあなた。


あぁ…もう、だめだ。


「…もう好きになりました」


私も振り返って、唯先輩に抱き付いた。


◇◇◇◇◇


たとえば寒い中、温かいものを飲んだり。

それがココアとか、コンポタとかならなおさら。

コーヒーなら、砂糖をたくさんいれたやつ。


たとえば暑いとき、風鈴みたいに。

音だけなのに、涼しくなっちゃう。

冷たいものなんていらないんだ。



唯先輩はそういう人だ。

私にとっての音楽みたいな。

私にはそんなものはいらないはずだった。

ギターがあって、それだけでよかった。

そういう存在は、私にはつらい。


だって、恋しちゃうから。

つまり、そういう存在が私には眩しすぎた。

970: ◆U0kc14QpJ6
10/01/30 01:05:41 bek0WS7JO
「私は今まで恋したことなんてありませんでした」


帰路、二人きり。もう暗い通り道。


「そうなんだ!よかったよ」


…よかったって。

そう言って、私の手に指と指でからまりあう唯先輩の手。

今度はあなたの恋を教えてくださいね。


眩しすぎるほどのあなた。

ふわふわなあなた。


…今なら言えます、唯先輩。


「唯先輩」

「なぁに?」


名前をつけたばかりの想いを。


「大好きですよ」


冬は寒いはずだった。


971: ◆U0kc14QpJ6
10/01/30 01:06:48 bek0WS7JO
以上でした
至らない点があってごめんなさい
スレ汚し失礼しました

972:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/30 01:08:03 sNcpUm9FO


973:名無しさん@お腹いっぱい。
10/01/30 01:53:18 nM/plX9Z0
>>951
乙!

>>967
スレ立て乙!

二期は4月スタート予定とか。
意外に早くて驚けばいいのか喜べば良いのか混乱中。
原作だと卒業式後のスタートだけど、やはりそこまでになるのかなあ。
もしくは、やはり最後の桜高祭ライブかな。
とりあえず唯梓がどんどん増えていくはずだから、楽しみ。

974:ウメネタ
10/01/30 02:29:47 nM/plX9Z0
多分丁度いいはず…

「……来ましたね」
一日分の授業を終え、一仕事終えたぞと緩んでいた気持ちがぴんと張り詰める。
部活開始時間だから、ではない。勿論練習開始となればそれ用に気持ちは持っていくけれど、そもそも私たちの部活はその名の通りティータイムから始まるのだから、この時間はメリハリ的な意味で緩めておいたほうが都合がいい。
実際、私はそれを常としてリズムを整えていたのだけれど。
半ば蹴り退けるようにして椅子を立ち、重心を低くスタンスを広く、前後左右どちらにも瞬時に動けるよう、身構える。
理想を言えば俊敏な黒猫のように。実際のところ、毎日毎日繰り返しているうちに私の動きはそれに類するくらいに研ぎ澄まされているという自覚はある。
だけども油断はできない。何故なら、私がどんなに会心の動作を見せようとも、結局私は一度たりとも―
―あの人から逃げられたためしは無いのだから。
「あーずーにゃーん!」
バーンという音と共に、私を張り詰めさせていた気配が、その形を現す。
周囲10Kmくらいの幸せを集約させたんじゃないだろうかってハッピーな笑顔を浮かべ、ふわりと柔らかくて暖かなその胸をこちらに広げたまま駆け寄ってくる。
このまま私が立ちすくんでいれば、ぎゅうっと抱きしめられてしまうだろうと、そう予想を浮べてしまう光景だ。
そう、ついこの間までなら、その予想通りにことが運んでいたのは確かだった。けれど―
その一瞬、ほんの一瞬だけ思考に意識を向けてしまったその僅かな隙。それだけで、唯先輩の姿は、気配ごと私の眼前からかき消えていた。
低くした重心を更に落とす。感覚を研ぎ澄ませる。その姿を視認できないことは、今問題にすべきことじゃない。
それに思考を囚われ失敗を繰り返した経験が、私にそう教えてくれた。そう、目的はわかっている。如何にめくらましを使おうとも、その終着点はここなのだから。
その兆しを見落とさず、最後の一瞬に対応できてしまいさえすれば、私の勝ちなんだ。
「ふふ、あずにゃん?」
耳元を打つ甘い声に、戦慄が走る。唯先輩の俊敏さは知っていた。この数日間でこれでもかというほど思い知らされていたから。
だけれども、まさかあの一瞬で背後まで取られてしまうとは思わなかった。いや、俊敏さだけではなく、この位置までその存在を感じ取らせない隠匿技術を褒めるべきなのか。
―もう、この努力を練習の方にまわしてくださいよ。
湧き出てきた突込みを、慌てて放り投げ、身を翻す。まだ終わっては無い。ここで諦めるわけには行かない。
その気になったときの先輩の運動能力を知っている私にとっては、この位置関係は最早絶望的ではあるものの、だからと言って諦めるわけには行かない。
メリットデメリットの問題ではなく、これはもう勝負として成り立っているのだから。だから、私はあっさりと負けを認めるわけには行かないのだ。
視認している時間はない。先輩の声から位置を推測し、その反対側へと体重ごと大きく利き足を踏み出す。同時にそれを支点としてぐるりと体を反転させ、前進の勢いを殺しつつ、背後へと振り返った。
いない。だけど、それは既に予想していた。唯先輩が、私に位置を知らせたまま、その場所に留まっているはずがない。
移動中、瞬きせず視界を巡らせていた。唯先輩の動きが、私の動体視力の限界を超えない限りは、背後に回りこまれていることはない。
だとすると。
「上ですね!」
確信はない。ただの消去法だ。だけど、その程度の根拠はあった。一瞬にして天井まで飛び上がった唯先輩はそのまま張り付き、私の隙を伺って―
―いや、私の中の先輩像どうなってるの。それじゃもう人外の範疇っていうか、某蜘蛛男とかそんなレベルだよそれじゃ。
そんな自動的に沸いて出たセルフ突っ込みの通り、そこには先輩の姿はなく、
「ちがうよ、こっち」
直後、私の胸元付近に突如現れたその気配に、自分の敗北を悟らされていた。

975:ウメネタ2/2
10/01/30 02:31:18 nM/plX9Z0
「あずにゃんっ!」
どうやら先輩は、体勢を低くしたまま、私の意識の死角をついて移動してきたようだ。
気がついたときには先輩の両腕は私の脇の下から背中に回っており、そのままぎゅうっと抱え上げられるようにして抱きしめられていた。
「えへへ~今日も私の勝ちだね」
「わ、ちょ、ちょっと待ってください……っ」
先輩は嬉しそうに私を抱きしめる腕に力を込める。
私の身長は、先輩よりもかなり低い。つまり、こういう抱き方をされると、私の足は地面につかなくなるということになり、そして先輩も私の体重を支えきれるほどの膂力は無い。
そして、どうなるかというと、
「わ、ととと、とっ」
「きゃ……た、たおれ……!」
私を抱えたままの唯先輩と、か変えられたままの私はもつれ合うようにどすんとソファーの上に倒れこんでいた。
そう、ソファーの上に。それも角に体をぶつけるとかそんなことも無く、柔らかいクッションの上に都合よく。
ああ、つまりはここまで唯先輩の計算どおりだったということですよね。まったくもう、これじゃ、今日も完敗じゃないですか。
「えへへ、あずにゃ~ん」
「もう……今日も私の負けです」
敗者は大人しく、その胸に抱かれる。ご褒美とばかりに先輩はまたきゅーっと私を抱きしめる腕に力を込めて、私の体からは力が抜けていく。

ああもう、これじゃ負け癖がついちゃうよ。勝つよりも、負けたほうが……気持ちがいいし。負けず嫌いという私のポリシー、あっさりと崩れ落ちてしまいそう。

というか、なんでこんなことが日常になってるのか。
発端は本当にたわいもないこと。とある日ちょっとした悪戯心から、抱きつこうとする唯先輩からひらりと身をかわしたことだったかな。
すると唯先輩もムキになっちゃって、私もなんか流れ的に本格的に防衛に入っちゃって。
いつの間にか唯先輩が抱きつくか、私が逃げ切るかの勝負に発展してしまっていた。
それから部活開始直前のこの追いかけっこが、私たちの恒例となってしまっている。本当にもう、なんでこうなっちゃったのか。
ちなみに5分逃げ切れば私の勝ち。お互い直接間接問わず、相手にダメージを与える行為は禁止。いつの間にかこんなルールまでできてるし。
まあ、勝負と言いつつも、私の全敗なんですけどね。勝負にすらなってないというか。ああもう、悔しいです。気持ちいいですけど。
先輩の方はといえば、抱きしめられるままちらりと垣間見た顔は本当に嬉しそうで、勝者への報酬を存分に味わいつくしてます!なんて表情だ。
実際に先輩のハグは、それまでのものよりずっと遠慮の無いものになっていた。それまでに遠慮があったかといわれればまた疑問なんだけど。
ぎゅーっとより強く抱きしめられるようになったし、それじゃ足りないよって言わんばかりにさわさわと撫で回されたり、ペロペロと舐められたり、むちゅーとされたり。
何で敗者にこんなにご褒美が―いやいや、違いますよ。敗者ですからね。勝者からの仕打ちに大人しく耐えているだけです。気持ちいいですけど。

まあ、そんなこんなで今日も私たちは仲良くにゃんにゃんしているわけです。
でも、明日は勝って見せますからね。唯先輩。
(終わり)


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