「泉こなたを自殺させる方法」を考える33at ANICHARA2
「泉こなたを自殺させる方法」を考える33 - 暇つぶし2ch150:グレゴリー
09/12/04 23:22:42 Njnrj8UM
グロはいかかでしょ?
今書いてるssは全編を通して、信じられないくらいのグロですw

なんとかクリスマスまでに圧倒的な残虐グロスプラッターの血の雨を
降らせたいぜ

151:名無しさん@お腹いっぱい。
09/12/05 16:19:14 BVgqz57O
楽しみにしているよ、 Mr.グレゴリー ?

152:名無しさん@お腹いっぱい。
09/12/05 19:28:07 8mTo3/1g
>>147
体液フェチって感じなのか

153:名無しさん@お腹いっぱい。
09/12/05 19:32:36 L7cuihLW
殺す方法
1、う●こを食わす
2、らきすたをグロアニメにする
3、からだのあかを食わす

154:名無しさん@お腹いっぱい。
09/12/05 23:23:25 BVgqz57O

自動小銃で目と目の間を撃ち抜く

155:名無しさん@お腹いっぱい。
09/12/06 00:08:01 22NVoz7p
痛い


156:名無しさん@お腹いっぱい。
09/12/06 11:53:12 uLqNYQ/Y
一瞬で死ぬからつまらん
誰かに見せつけるならともかくも

157:師匠
09/12/06 12:19:00 9cdczN26
皆さん、こんにちは。
懲りずにまた書いたので今夜、投下させていただきます。
よろしくお願いします。

158:名無しさん@お腹いっぱい。
09/12/06 12:50:23 zKw2oBKw
いらんわボケ

159:名無しさん@お腹いっぱい。
09/12/06 15:13:25 zx4nfcjj
>>157
うざ
黙って投下すればいいのに
懲りずにとか前置きが必要なら投下する必要ないんじゃない?

160:名無しさん@お腹いっぱい。
09/12/06 17:33:37 jBgYZ99A

>>156

お、 何か暗殺術に詳しそうだな。

161:名無しさん@お腹いっぱい。
09/12/06 21:40:54 KPseZcKX
師匠さんって何書いた人だったっけ?


162:名無しさん@お腹いっぱい。
09/12/06 22:54:22 y/IvbUy9
たぶん幸せのゴールASの人

163:並行世界1
09/12/06 23:11:32 9cdczN26
《1》
1月14日(月曜日)夕方
 1月もなかば、やっと年明けのドタバタも落ち着いてきた。そんなある日の出来事だった。
 私は、担任の桜庭先生に頼まれ、遅くまで手伝いをしていた。
「受験生なのに遅くまで悪かったな」
「いえ、私の事は気にしないで下さい。今のところ、志望校も合格圏ですし」
「おお、そうだったな。じゃ、また近々頼むわ」
「えっ! は、はい……」
 し、しまった。
 桜庭先生の性格を考慮に入れて、ヘタな事は言わない方が良かったと私は思ったが、後の祭りだった。
「んじゃな、柊。気をつけて帰れよ」
「は、はい……」
 桜庭先生が去った後、教室で私は1人、帰り支度をしていた。
「ったく、口は禍のもととは、良く言ったもんよ」
 その時だった……私以外、誰もいない教室の空気が張り詰めた感じがした。
 なんなのよ、この感じ……。教室に今まで感じた事のない、異様な空気が漂う。
「誰?」
 私は、人の気配を感じ辺りを見まわす。
 そして、教室の出入口に目を向けた瞬間、信じられない人物が目に映った。
「わ、私……?」
 そこに立っていたのは、紛れもない自分自身だったのだ。
 もう1人の私は、ゆっくりと私に近づいてきた。
「驚いているようね? ま、自分がもう1人いるんだから無理もないけど」
「な、なんなのよアンタ……なんで、私がもう1人いるわけ?」
 私は、突然起きた異常な出来事に少し気が動転していた。
「落ち着いて聞いて、私は正真正銘のあなたであって、あなたではないの」
「はっ? 言ってる意味が、わかんないんだけど?」
「立ち話もなんだから、座って話しましょ」
 そう言って、誰かの席に腰を降ろすもう1人の私。
 私も警戒しながら、それに倣(なら)う。
「順を追って、話すわね……」
 私は、思わず唾を呑む。
「並行世界は、知ってるわよね?」
「並行世界? ……ああ、パラレルワールドの事ね?」
「そう……ある時空から分岐し、それに並行して存在する別の時空、もしもの世界……。」
「要するに私の存在する世界も現実で、アナタの存在する世界も現実って事よね?」
 私は、もう1人の私の話を素早く理解した。
「その通りよ。私は、この世界の時間で見て、1年後の並行世界から来たの」
「アナタは、この世界とは別世界の私だけど、未来の私ってわけね?」
 1年後の自分。未来から来た私は、なんだか悲しい目をしている。
 私なのに私ではないような……そんな悲しい目。
「信じてくれるかしら?」
「にわかには信じ難いけど、実際に私の目の前にいるんだから、信じられなくても信じるわよ」
「助かるわ。今度の私は、話がわかるようで……」

164:並行世界2
09/12/06 23:12:18 9cdczN26
 未来から来た私……あーなんか、ややこしいから未来から来た私の事は『未来かがみ』でいいわね! 
 未来かがみは、これが初めての並行世界ではないような口振りだった。
「今度の私?」
「ええ、この世界で6回目よ」
「な、6回目って……」
 未来かがみは、一体なにが目的なのよ?
「そ、それでアナタの目的は、なんなのよ?」
 目的を聞かれた未来かがみの頬には、一筋の涙が伝っていた。
「こなた……」
「え?」
「私はこなたの……こなたの『自殺』を止める為に並行世界を彷徨っているの」
 私は、耳を疑った。
「こなたが、自殺? あはははは、冗談にも程があるわよ。あのこなたが自殺なんてするわけないでしょ?」
 私は、未来かがみの話しを笑い飛ばした。
 しかし、未来かがみの目は真剣だった。
「本当よ。今から1週間後、こなたは……自殺する」
 私は、未来かがみの真剣な眼差しに悪寒が走った。
「う、嘘よ! そんなの絶対に嘘に決まってる」
「私が、嘘を言っているように見える?」
「うっ……」
 嘘は、言っていない……。それは、未来かがみの眼を見ればわかる。
「私は、こなたの死を目(ま)の当りにしたショックで、時空を移動できる力を手に入れたの」
「見たの……こなたが、死ぬところを?」
「……ええ」
 その問いに答えた未来かがみは、悲しく……そして寂しい眼をした。
「ごめん……嫌な事、聞いて」
 しまったぁ! 今の質問は、未来かがみに対して無神経だったわね。
「いいわよ……別に」
 その言葉とは、裏腹に未来かがみの表情は最悪だった。
 うわっ、空気重! 話、変えなきゃ……。
「でも、なんで5回も失敗するのよ?」
「それは『時間』が私を邪魔するからよ」
「時間?」
「そう……時間は、物事を変えようとしても本来の出来事に近い形に戻そうとする力が働くみたいなの」
 私は、それを聞いて1つの疑問が頭に浮かび上がった。
「ちょっと待ってよ! アンタの話、根本的におかしくない?」
「何がよ?」
「だって、それぞれ違う並行世界なのに、なんで毎回こなたが自殺するのよ? こなたが自殺しない並行世界
だって存在するはずでしょ?」
「ダメなのよ……」
「ダメ?」
「どうも私が移動できる並行世界は、こなたが自殺する世界だけみたいなの……。そこに行き着くまでの過程は
違うけど、最終的には自殺の結末が待っているのみ」

165:並行世界3
09/12/06 23:13:04 9cdczN26
 私は、驚愕した!
 未来かがみの言う通りであれば、この世界でもこなたの自殺がほぼ確定してしまった事になる。
「じゃあ、この世界でもこなたは自殺しちゃうの?」
「恐らくは……だから、どうしてもこの世界の時間に逆らうしかない」
「ど、どうすればいいのよ?」
「時間の力は、強大な物……それを変えるのは、並大抵の事では不可能!」
「私、こなたを救えるなら、なんだってするわ!」
「その言葉、本当ね?」
 私は、未来かがみの問いに無言で頷いた。
「じゃあ、自分の気持ちに素直になりなさい。私が言えるのは、ここまでよ」
「えっ、何よそれ?」
「悪いけど、核心は教えてあげられないの」
 なるほど、この世界の時間のせいね……。
 未来かがみは、この世界においてはイレギュラーな存在!
 あまり干渉し過ぎれば、時間がそれを排除しようとする力が働く恐れがある。
「わかった。出来る限りの事は、やってみるわ」
「たのむわ……。こなたの自殺を止める鍵は、あなたが握っているはず」
「うん……」
「あなただけが頼りよ。そして、私にこなたが自殺しない未来を見せて。私の世界では、もうそれは叶わない事
だから……」
 そうよ、そうなのよ! 如何に、この世界でこなたの自殺を止められたとしても未来かがみの世界には、
なんら影響はない。それが、並行世界の悲しい因果……。
 それでも、それを実現しようとする未来かがみ……なんだか、心(むね)が痛い。
「ませてよ、私は柊かがみ! こなたの1番の親友よ」
「ふふ、頼もしいわね」
 未来かがみは、初めて私に笑みを見せた。
「アンタも沈んだ顔より、笑った顔の方がカワイイよ」
「ぷっ、それって自分で自分を褒めてるのと一緒よ?」
「え、まぁ……そうなるわね」
 私は、頬をポリポリと掻く。少し、顔が赤くなっていたかも知れない。
「それじゃ私は一旦、自分の世界に戻るけど……くれぐれも、行動の選択には気をつけて!」
 そう言いながら、未来かがみは椅子から立ち上がった。
「ええ……わかってるわ」
 返答しながら、私も立ち上がる。
 不意に未来かがみが、左手を差し出してきた。
「健闘を祈るわ」
「ええ、まかせて」
 私と未来かがみは、誓いの握手を交わして別れた。
 自分の左手で、自分の左手に握手するのは、何か変な感じだった。
 別れ際、携帯電話の番号を聞かれたので教えてあげた。
 さて、まかせてとは言ったもののどうすればいいのよ?
 私は色々な思考を巡らせながら家路についた。

166:並行世界4
09/12/06 23:13:44 9cdczN26
《2》
「あ、お姉ちゃん。お帰りぃー、遅かったね?」
 帰る早々、玄関で妹のつかさとバッタリ出くわした。
「お、つかさ。ただいまぁー」
「何かあったの? むずかしい顔して」
 普段、お人好しで、天然キャラの傾向があるつかさだが、結構気がつくところがある。
 私も感情が顔に出やすいというのもあると思うけど……。
「んー、大した事じゃないの。桜庭先生にまた、頼まれ事されそうでね」
 私は、つかさに本当の事を言わなかった。
 あまり他言すれば、この世界の時間に影響する可能性があったからだ。
「ふーん、お姉ちゃんも大変だね」
「まあねー」
 私は、軽い返事をしながら自分の部屋に向かう。
 制服から部屋着に着替えながらも、こなたの事が頭に浮かんできてしまう。
 あのこなたが、本当に自殺なんてするのかしら?
 着替え終わった私は、ベッドに身を投げ、頭を悩ませていた。
「お姉ちゃん、入るよぉー」
 つかさが、部屋に入ってきた。
「えへへっ、ご飯できたよぉー」
「あ、もうそんな時間? すぐに行くよ」
「うん、今日はね。お姉ちゃんの大好物のパスタだから早く来ないと伸びちゃうよ」
 つかさは、そう言って部屋を出て行った。
 帰宅時間が、夕飯近くになっていた事すらも気づかなかったわ。
 あーもう! 悩んでたって、どうする事もできないし……。
 明日、こなたの様子を見てからじゃないと。
 とにかく何があっても私が、なんとかするっきゃない!
 私は、こなたの一番の親友なんだから。
 それにしても私、パスタって大好物だったかしら……?
 その夜は、夕飯を食べた後、お風呂に入って早々に眠りに就いた。

《3》
1月15日(火曜日)朝
 私とつかさは、糟日部駅前で、こなたが来るのを待っていた。
 いつもの事ながら、こなたのヤツは遅い! もう遅刻ギリギリじゃない。
 ヤキモキしている私の横で、つかさは携帯電話をイジくっている。
「こなちゃん、遅いねぇ?」
「まったくよ! いつもの事ながらアイツは……」
 そう言いかけた時、私のツインテールがギュッと後ろに引っ張られた。
 犯人はわかっている……。こんな事をするのはアイツぐらいしかいない。
「やほー。つかさ他1名」
「略すな! つーか、むしろ文字数多いし」
 やっぱり、こなただ。
「ったく、子供みたいな事すなっ!」
「おぉ、朝からツンが全開ですな、かがみん」
「うっさい!」
 なんの変哲もない、いつもの日常。
 バスの中でも、3年B組の前で別れるのも、いつもと一緒、何も変わらない……。
 ますます、未来かがみの話が信じられなくなってくるわ。

167:並行世界5
09/12/06 23:14:25 9cdczN26
《4》
 そして、昼休み……。
 私は、いつものようにお弁当を持って、こなた達のいる3年B組に向かう。
「おーすっ、こなたー」
「めーすっ、かがみん。嫁が、なかなか来ないから寂しかたよぉー」
「誰が嫁だ!」
 私は、左手に持っていたお弁当をこなたの頭上にトスッと置いて軽くツッコミを入れる。
「いやいや、かがみは俺の嫁! これは、今や常識なのだよ」
「バカッ! 恥ずかしい事、言ってないでサッサとお弁当食べるわよ」
「恋人との会話より、食欲を優先する強欲なかがみんであった……」
「なんだそれ、イヤミかぁ? んー?」
 私は、後ろから右腕でこなたの首を絞め、左の拳を蟀(こめ)谷(かみ)にグリグリと押しつけてやった。
 こなたの後頭部に顔を近づけたので、あの長い髪が私の鼻を擽(くすぐ)る。
 なんか甘くて良い香り……あ、チョココロネの匂いか……。
「ギブギブッ、かがみん、ギブだってばぁ!」
「あ、ごめん」
 私は、こなたからパッと手を離した。
 甘い香りに気をとられ、左の拳をこなたの蟀谷に押しつけいるのをすっかり忘れていた。
「痛いよぉ、かがみん」
「ごめんごめん。ボーッとしてたわ」
「ううぅ、かがみん凶暴伝説は本当だったのか!」
「だから、謝ってるだろ! 大体、変なナレーションをつける、アンタが悪いんじゃない」
 その時、私のお腹がグウゥッと鳴った。恥(はず)っ……!
「かがみんの腹時計は、正確であった……」
「貴様、懲りんヤツだな! また、やられたいのか?」
「はわぁ、嘘うそ」
「そう言えば、つかさとみゆきは、どうしたのよ?」
 私は、2人でトイレにでも行っているのかと思っていたが、それにしては戻って来るのが遅い。
「今頃、気づいたのかね? かがみんや」
「いや、トイレにでも行ってるのかなぁって、思ってたんだけど」
「みゆきさんは、黒井先生にお手伝いを頼まれて職員室なのだよ」
「つかさは?」
「つかさは、お手伝いを頼まれたみゆきさんのお手伝い」
「それでアンタは、その2人を手伝わずにココでボーッとしてたわけか?」
 私は、すかさずイヤミを言う。さっきのお返しよ! にひひっ。
「失敬な! 最初、私が手伝おうとしたら、つかさが『昼休みにこなちゃんが、いなかったら、お姉ちゃんが
寂しがるから……』って、言ってね」
 我が妹、やはり妙なところに気がつく。
「ふぅーん。っていうか、そのつかさのモノマネ、妙に似てるからやめろっ」
 そんな私のツッコミに、えへっと舌を出して戯(おど)けるこなたが、ちょっと可愛く見えたりする。

168:並行世界6
09/12/06 23:15:11 9cdczN26
 ふと、こなたがチョココロネに、まったく手をつけていない事に気づく。
 はは~ん……さては『代わってくれたつかさに悪いし、かがみが来るまでこれは食べられないよ』って感じ?
 結構、カワイイとこあるじゃない。
「あ、これは2つ目だよ。今なんか、勝手な想像してたみたいだけど?」
 はいはい、そうですね! ……ってコイツ、人の心が読めるのか?
 こなたの場合、本当にそれがありそうだから怖い。
「うっさい! 何も想像しとらんわ。それより、ホントにお腹空いたわよぉ早く食べましょ?」
「そだね」
 私は、こなたの机にお弁当を広げ食べ始めた。
 でも、つかさとみゆきがいないのは今の私にとって好都合だった。
「ねぇ、こなた……」
「んー、何?」
「アンタさぁ……この頃、なんか悩みとかない?」
 私の質問に、こなたは首を傾げている。
「うぅーん、……特にないけど、なんで?」
「いや、何かあるかなぁって、思っただけだけど」
「ふぅーん。……あっ! 1つあるかも?」
「えっ、なになに?」
 私は、身を乗り出してこなたに顔を近づける。
 危な! 顔、近づけ過ぎてキスするとこだったわ……。
「それがさ、この間ゲ〇ズでポイントを何に交換しようか迷っちゃってさぁ。まだ悩み中なんだよねぇー」
 なんだ、そんな事か……。
「あ! 今、『なんだ、そんな事か』って思ったでしょ?」
 だから、心を読むなっつーの!
「いや、思ってねぇーよ」
 本当に悩みとかないのかぁ? じゃあ、何が原因なのよ? これから、何かが起こるって事?
 私は、そう思いながら、お弁当の焼き鮭を口に運んだ。うん、美味しい。
 その後、黒井先生の手伝いを終えたつかさとみゆきが戻って来て、一緒に昼食に加わった。
 放課後、帰宅時もいつもと変わらない。
 でも、何かあるはず! そう、こなた風に言えば、『こなた自殺フラグ』ってヤツが。
 それは、絶対に立ててはいけないフラグ……私は、それを見極めなければならない。
 一体、どんな選択肢が待っているのか……それは、まったくの未知だ。

つづく

169:並行世界7
09/12/07 20:10:43 /h8TFquy
《5》
 刻み行く時間に、こなただけ足りない。
 失った心の欠片を探して、時空を彷徨う……逢いたい。

 こなたに逢いたい……。

1月17日(木曜日)夕方
 私は、また来てしまった……過去の世界に。
 この過去の世界において、私は柊かがみであって、柊かがみではない。
 なぜなら、この世界は過去とは言え、私の世界とはリンクしていない別世界。
 要するにこの過去の世界は、無数にある『並行世界』の1つにしか過ぎない。
 時空を飛び越え、過去を改変しても私の世界には、なんの影響も及びはしない。
 それでも私は、見たい! こなたが、自殺しない未来を……。

 過去かがみに会ってから、この世界の時間で3日が経っている。
 何か、進展はあったのだろうか? 学校も終わっている時間。
 とりあえず私は、過去かがみの携帯電話に連絡をしてみる事にした。
 公衆電話の受話器を取り、10円を入れてボタンをプッシュしようとしたその時、いきなりムギュゥッと私の
ツインテールが後ろに引っ張られた。
 えっ? これって犯人、わかってるけど……ヤバイッ、絶対にヤバイッ!
 バッ、と振り返ったそこには……。
「やほー、かがみん」
 あちゃー、やっぱりこなた。
 違う時空の私が、この時空のこなたに会っちゃダメでしょぉぉぉぉ!
 マズイッ、なんとか誤魔化さないと。
 私は、咄嗟(とっさ)にポケットから一応用意していた変装用の眼鏡を取り出して装着した。
 そして、ド○フの替歌と変な踊りで、この場をやり過ごそうとした。
「め、め、めがねの大爆笑ぅー」
 気が動転していたのかも知れない……いつもの私なら、こんな事は絶対にやらない。
「何やってんの? かがみん」
「わっ私は、ただの通りすがりで、かがみんなんかじゃ……」
「いや、どう見てもかがみんじゃん。それに何その替歌と踊り? つまんないけど」 
 ガーンッ、はずしたぁ。しかも、誤魔化しきれてない!
 寒い、私の周りだけ気温が絶対零度近くまで下がったようだわ。
 くっ……こうなったら、この世界のかがみになりきってやるわ!
「バレちゃ、しょうがないわね。何を隠そう、私はかがみだったのよ」
「いや、それは最初からわかってるし」
「うっさい! で、あんたこそこんなところで何してんのよ?」
「私は、今からゲ○ズに行くとこだーよぉ」
「なんだぁ? また、フィギュアかぁ?」
「今日は違うよ。ほらぁ、この前、言ってたポイント」
「ポイント?」
 この前って言われても、全然わかんないわよ。
 察するにこなたは、ポイントを何かの景品と交換しようとしてるのかしら?
 それとも、ポイント2倍の日とか……。

170:並行世界8
09/12/07 20:11:17 /h8TFquy
「ああ、あれね?」
「そうそう、交換する景品がやっと決まってさ」
 ビンゴ! 適当に話、合わせればイケそうね。
 なんとかやり過ごして、早くこなたから逃げないと。
「へぇ、良かったじゃない。じゃあ、私はこれで……」
 私は、この場を立ち去ろうとした。
 だが、こなたは私のツインテールをまたしても引っ張った。
「なっ、いいかげんにしろよ」
 私のツインテールは、馬の手綱か?
「かがみん、冷たいじゃん。付き合ってよ」
「私、用事あるし……」
「かがみん、かがみん」
「何よ?」
 こなたは、私に寄り添って、耳打ちしてきた。なんなのよ、そのニヒヒッな目は?
「なんか、新しく大宮にスイーツ食べ放題のお店がオープンしたらしいよ」
 スゥウィィィィィィィィィィィィッツ。
 スイーツ、食べ放題、それは女のロマン! 行きたい。
 いやいや、それはダメでしょ。行ったらマズイでしょ。
「ス、スイーツ?」
「そ、行きたくない?」
「え、まあ、行ってみたいかも……」
 ええっ! ちょっと私、何言ってるの?
「じゃあ、決まりだね」
 結局、私は女のロマン方程式に勝てなかった。
 これは、女の子限定で無敵の方程式……抗う術はない。
 私は、自分にそう言い聞かせてこなたに付き合う事にした。って、ダメダメじゃん私!

《6》
 そして、ゲ○ズに到着した私達……。
 こなたは、早速ポイントを景品に交換するのかと思いきや、悠長に店内を物色し始めた。
 まったく、この悠長戦隊め!
「おい、ポイントを景品に交換する為に来たんじゃないのか?」
「いいじゃーん、別に。せっかく、来たんだから見てっても」
「ったく、しょうがないわね」
 私は、ボヤキながらも、実は久々にこなたとふれ合えて嬉しかったりする。
 さっきから、胸のドキドキが止まらない。こなた……やっぱ、カワイイよ。
「あ、かがみん。ラノベの新刊、出てるよ」
「え?」
 ああ、これ持ってるし、ラスト知ってるし。
 しかも、めちゃくちゃつまんなかったのよね。
「買わないの?」
 こなたは、そのライトノベルを私に差し出してきた。
「あーいや、今日はやめとくわ」
「あれ? かがみ、これすっごく楽しみにしてたよね?」

171:並行世界9
09/12/07 20:11:50 /h8TFquy
「えっ、そうだっけ?」
「うんうん、昨日もこれ、欲しがってたよね?」
 やばっ、そんな話になってたわけぇ!
 これは、買わないといけないような雰囲気……。


「ありがとうございましたー」
 結局、私は買いたくもない、つまらないライトノベルを買うハメになってしまった。
 レジスターのチンッという音が、妙にムカついた。
「よかったね、かがみん」
「う、うん……」
 全然、嬉しくなかった……。
「で、あんたは、何を買うのよ?」
「えっ? 私は、何も買わないよ。ポイントを景品に交換しに来ただけだし」
 こ、こいつは……。ちっくしょう! この怒りは、何処へぶつければ……。
 私が、震える左の拳を右手で押さえているのを余所に、こなたはポイントを景品に交換していた。
「お待たせ、かがみん」
 ポイントを景品に交換したこなたは、どこか嬉しそうに見えた。
 そんなにいい物なのか? ちょっと、中身が気になるかも。
「んじゃ、かがみ様の本命にレッツゴー」
「な、な……それじゃまるで、私が食い気しかないみたいじゃない」
「えぇー、だって、それに釣られて来たんじゃん」
「う、うるさいっ」
 私は、まったく否定できなかった。
 でも、こなた……本当の所は、あんたと一緒にいたいってのもあるんだぞ。

《7》
 そうこうしている内に、スイーツ食べ放題の店に到着した私達……。
 オープンしたてという事もあり、店内は中々混雑していた。
 メニューも豊富で、スイーツだけで50種類以上はある。
 例によって、1時間の時間制限と非常識な食べ残しは別途料金。こういう店じゃ常套ルールね。
「かがみん、準備はいい?」
「ええ、よくってよ」
 スーパーイナズマ……んじゃなくてぇ! これは、スイーツ食べ放題でしょ……これは。
 しかし、ショーケースに並んでいる50種類以上のスイーツは、見ていて圧巻だ。
 私は、それを片っ端から皿に乗せてゆく。
 ふと、こなたの皿を見ると私と同じくらいスイーツが乗せられていた。
「ちょっと、そんなに取ってあんた食べられるの?」
「ええー、かがみだって人の事、言えないじゃん」
「この程度なら、普通でしょ普通」
「かがみんの胃袋は、底なしの胃袋であった……」
「うっさい! 私と同じくらい取ってるあんたに言われとぉーないわっ」
 席に戻った私とこなたは、早速スイーツを口に運んだ。
 はむっ……パアァァッと、口の中にレモンの香りと甘さが広がって、至福が脳を満たす。
 美味しい! この、ひとことに限る。

172:並行世界10
09/12/07 20:12:32 /h8TFquy
 あれだけあった皿の上のスイーツも、あれよあれよの内に全て平らげてしまった。
 そして、私は勢いにまかせて2皿目を取りに行こうと立ち上がった。
 が、しかし……こなたが、私の腕を掴んだ。
「かがみん、やめた方がいいんじゃない?」
「なんでよ?」
 なぜか、こなたは私の2皿目を阻止してきた。
「ほら、ずっと前の話だけどさ……1皿目の勢いで取ったら最後、キツくなったじゃん」
「えっ、そんな事あったかしら?」
「もお、かがみん覚えてないの?」
 この世界のこなたとかがみは、前にもこういう店に行った事があるのか?
 とりあえず、話を合わせておいた方が良さそうね。
「ああ、あれね。でも、今日は大丈夫よ」
「ホントにぃー?」
「大丈夫、大丈夫」
 私は、心配するこなたを尻目に2皿目を強行した。
 取ってきた量は、1皿目と変わらない量だ。これくらい余裕よ。
「げっ、またそんなに取ってきたの?」
「もお、こなたは心配性ね。大丈夫よ」
 私は、スイーツを1つ、また1つと口に運ぶ。
 余裕だと思っていた……しかし、そんな思いも次第に遠い過去の物となった。
 そう、私の考えは甘かったのだ。
 如何に美味しいとはいえ、こうも甘い物が続くと流石(さすが)に辛い物があった。
「うぐっ……」
 辛そうにスイーツを口に運ぶ私をニヤニヤとこなたが見ている。
「だから、言ったじゃーん」
「うるさいっ、底なしの胃袋とか言ってたあんたにも責任があるんだから食べなさいよ」
「な、なんで私が!」
「問答無用! くらえ! グルメ・○・フォアッグラ」
「うぐっ」
 私は、嫌がるこなたの口にスイーツをいっぺんに2つ、無理矢理ねじり込んだ。
 こなたは、それを悪戦苦闘しながら必死に飲み込んだ。
「ひっ酷いよ、かがみん。しかもネタ古いし」
「お、結構余裕そうじゃん? ほれっ」
 私は、こなたのスキをついて、またしてもスイーツを2つねじり込んだ。
「むむっ……むぅごごっ」
 咽喉に閊(つか)えたのか、水でスイーツを流し込むこなた。ちょっと、調子に乗ってやり過ぎたわね。
「ぜぇーぜぇー……これは、新手のイジメですか? かがみさん」
「ごめん、ごめん。調子に乗り過ぎちゃった」
 こなたには悪いけど、これでなんとかイケそうだわ。ホントにごめんね……こなた。
 なんとか完食した私達は、別途料金なしで店を後にした。

173:並行世界11
09/12/07 20:13:07 /h8TFquy
《8》
 こなたは先程行なった私の暴挙により少々ご機嫌ナナメの様子だった。
「こなたー。機嫌直してよぉ」
「かがみんが、あんなヤツだと思わなかったよ」
「だから、ゴメンて謝ってるじゃない」
 こなたは、私の謝罪を無視してズカズカと前を歩いている。
 私は、その後を申し訳なさそうについて行く。その時! 急にこなたが、立ち止まった。
 あまりに急な事だったので、すぐ後ろを歩いていた私はこなたにぶつかってしまった。
「わっ! ちょっと、いきなり止まらないでよ」
 こなたは、そんな私の抗議を無視して、スッとどこかを指差した。
「プリクラッ」
「えっ?」
「プリクラ、一緒に撮ってくれたら許したげる」
 こなたの指差した方向は、ゲームセンターだった。
 えっ? そんなので許してくれるならお安い御用よ。
「プリクラ撮る! だから許して、こなた様」
「ふふぅーん、よかろう。ただし、もう1つ条件がある」
「条件、どんな?」
「それは、プリクラでのお楽しみ」
 こなたのヤツ……なんか企んでるわね。すっごく、嫌な予感がしてきた。
 私は、不安な気持ちを残したままプリクラの幕をくぐってカメラの前に立った。
「さあ、教えてもらおうかしら? その条件とやらを」
「ふふぅーんっ」
 こなたは、私の質問に答える気がないのか、プリクラにお金を投入している。
「ちょっと、いいかげん教えなさいよっ!」
 答えを言わないこなたに、シビレを切らした私が少し強い口調で問い質した。
 すると、こなたは自分の頬を指差してこう言った。
「ほっぺにチュウして」
「えっ?」
 なになに……今、なんと言いましたか? こなたさん。
「だからぁ、かがみんが私のほっぺにチュウしたプリクラが撮りたいの!」
「ちょ、ちょっと何、言ってんのよあんたは?」
「嫌なら許してあげないけど、いいのかなぁ?」
 いや、私は全然いいんだけど、むしろ私が望んでいる事だし。
 でも、過去かがみの手前……ねぇ。
 しかし、ここで、こなたの機嫌をとっておかねば、過去かがみとこなたの関係も悪くなってしまうわけで……。
「でぇーい! 南無三っ」
 私は、勢いにまかせてプリクラの撮影ボタンを押した。

 3、2、1……私は、意を決してこなたの『唇』にキスをした! 
 あれっ……ほっぺでいいんじゃなかったっけ? しまったぁ! 地金が出てしまった……。
「んむむっ? んー、んーっ!」
 予想外の出来事に始め、こなたは目を丸くしていたが、それはやがて切な瞳に変わった。
 とっくに撮影は終わっているのに私は、キスをやめなかった。
 こなたとずっと、こうしていたい……。

 好き……こなたが好きなの……。

「んっ……」
 重ねあった唇が、ゆっくりと離れる。
 どちらのとも言えない、唾液が糸を引て妖艶に光っている。

174:名無しさん@お腹いっぱい。
09/12/07 20:13:11 5NWihP/O
こなたを坊主にするのも良いかもなー

175:並行世界12
09/12/07 20:13:58 /h8TFquy
「かがみん……キス、上手いね」
「そ、そかな? 初めてだったんだけど……」
 私は、自分でも顔が真っ赤だとわかるくらいドキドキしていた。
 それは、こなたも同じようだ。
「プリクラ……そろそろ出てくるね」
「そ、そうね……」
 暫くして、印刷されたプリクラが出てきた。
 こなたは、それをハサミで切って半分を私にくれた。
 改めて見ると、かなり恥ずかしいプリクラだ。
「じゃあ……帰ろっか?」
「そ、そうね……」
 なんか、会話がぎこちない。
 帰りの電車の中でも、特に会話のないまま時が進んだ。
 キスの余韻で、未だに頭がボーッとしている……。

《9》
 気づくと私達は、駅のベンチに並んで座っていた。
 いつの間にか、乗り換えの駅に到着していたようだ。
 不意に隣に座っているこなたが、私に凭(もた)れ掛かってきた。
「ねぇ……なんであの時、ほっぺじゃなくて口にしたの?」
 好きだから! こなたの事が好きだからよ。……なんて、言えるわけもなく。
「わからない……身体が勝手に動いたから」
「へぇ、そんな不思議な事ってあるんだ……」
 暫しの沈黙が、流れる。何番線かに到着した電車の音が、酷く耳障りだった。
「……もっかいして」
「えっ?」
 私は、予想していなかったこなたの台詞に一瞬、耳を疑った。
「だって、あんな不意打ちが私のファーストキスなんて嫌だもん」
 そうだよね。あれは、ホントいきなりというか……キスの押し付けみたいな感じだったし。
 あれじゃ、こなたが納得しないのも無理ないよね。
「うん、わかった。もう1回……しよっか?」
 こなたは、その問いに無言で頷いた。
 ホームには、たくさんの人がいたが、そんな事はどうでもいい。
 あの時の二の舞は、もう嫌だ!
 私は、人目を気にせずこなたに口づけた……。
 さっきよりも長く……長く…………時間が止まったかの如く。
 ホームの雑音も聞こえない……ここは、私とこなただけの世界……。

 の、はずだった! キスをしている私の目に彼女が映るまでは……。

176:並行世界13
09/12/07 20:14:42 /h8TFquy
「かがみっ!」
 私は、思わずその名を口に出してしまった。
 過去かがみは、私の呼びかけに反応すらせず全力で走り去った。
 こなたの前で私達がはち合わせるのは、マズイッ!
 過去かがみの判断は、それで合っている……でも、過去かがみは泣いていた。
 くっ、どうする? ……追うしかないっ! 
「こなた、ごめん! 私、急用が出来た」
「ほへぇぇ?」
 私は、キスの余韻でまだボケボケしているこなたに一応謝ってからその場を後にした。
 中途半端だけど、ごめんね……こなた。

 駅を出た私は、脳をフル回転させ自分が行きそうなところを予測する。
 私の行きそうなところ……こっちか! 必ず、見つけてみせるわ。過去かがみ!

つづく

177:名無しさん@お腹いっぱい。
09/12/08 02:37:23 x8W5AglF
早急に続き希望
平行もの大好き

178:名無しさん@お腹いっぱい。
09/12/08 04:10:46 LzAS2bHr
そして私は閉口した

179:名無しさん@お腹いっぱい。
09/12/08 18:35:20 GdQ+ir9E
続きが楽しみです!
こなかが展開ですかw

180:並行世界14
09/12/08 19:31:38 l1SdaMIM
《10》
1月17日(木曜日)夜
 あれは、どういう事よ? こなたと未来かがみ……キス……してた。
 走って逃げて来ちゃったけど、私……何、やってんだろ?
 それになんで……なんで、さっきから涙が止まらないの?

 気づくと私は、誰もいない公園のベンチに座っていた。
 こんな事なら桜庭先生の手伝い断って、早く家に帰れば良かったなぁ……。
 そんな事を考えながら夜空を見上げてみる。
 ああ、星々が眩いばかりに輝いている……綺麗。

「こんなところにいたら、風邪ひくわよ」
 未来かがみ! ……追って来たのね。
「なんでここが……?」
「私は、あなたよ。あなたの行先を予測するなんて容易い事よ」
 何よそれ……。ふざけんじゃないわよっ! アンタに私の何がわかるっていうの?
「時間の力が、どうのって言ってたわりに随分な御身分じゃない? ……こなたとなんか遊んじゃってさっ」
 私は、なんか不貞腐れていた。
「…………」
 未来かがみは、何も言わなかった。それがまた、私を逆上させた。
「なんか、言いなさいよっ!」
 夜の公園にバチーンッという音が響き渡った。
 私は、思わず未来かがみに手をあげてしまったのだ。
「……私を殴りたければ、気の済むまで殴るがいいわ」
「うるさいっ!」
 私は、もう1度、未来かがみの頬を張った。
 やりたくてやったわけじゃない……身体が勝手に動いた。
 ジワジワと意味のわからない感情が湧き上がってくる。
「んぐっ……ふぐぅ……」
 涙が出てきた……。
 私、なんで怒ってるんだろ? なんで泣いてるんだろ?
「……かがみ」
 未来かがみが、泣いている私を優しく抱擁してくれた。
「ひぐっ……何よ、アンタに優しくされる覚えはないのよ」
「いいから……このままになさい」
 未来かがみは、悪態をつく私をさらに強く抱きしめてくれた。
 
 あったかい……。
 
 私は、未来かがみの胸に顔を埋めながらそんな事を思った。
「泣きたい時は、泣けばいい……我慢しないで泣きなさい」
 それを聞いた私は何かが、ふっ切れたように大声で泣いてしまった。
「うっうわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ」
 あんなに大声で泣いたのは、幼稚園か小学生以来かも知れない。

181:並行世界15
09/12/08 19:32:14 l1SdaMIM
《11》
 どれだけ泣いたのか、泣き疲れた私はベンチに座っていた。
「少しは、落ち着いた? はいっ、コーヒーで良かったかしら?」
 未来かがみが、すぐそこの自動販売機で、温かい飲み物を買って来てくれた。
「あ、ありがとっ」
 私は、それをすぐには開けず、かじかんだ手を温めるように手の平で転がした。
 さっき、未来かがみを平手した手が、まだジンジンする。
「さっきは、その……殴ってゴメン」
「いいわよ……悪いのは、私の方だもの」
 そうは言ったものの、未来かがみの右頬は真っ赤に腫れ上がっていて痛々しい。
「隣……いいかしら?」
「あ、うん……」
 私の隣に座った未来かがみは、徐(おもむろ)に話出した。
「私ね、こなたの事……愛してたの」
「…………」
 私は、それを無言で聞いていた。
「でも、しょせんは女の子同士……叶わない恋だと思ってた。そんな私にもある日、転機が訪れた……こなたが
私に告白してくれたの。嬉しかった……私は、世界一の幸せ者だと思った。でもね、私がこなたにした返事は、
その気持ちとは真逆だったの」
「な、なんで!」
 私は、思わず声を荒げてしまった。
「自分の気持ちに素直になれなかったから……」
 未来かがみは、静かに言い放った。
「女の子同士、おかしい、普通じゃない……そんな世間の体(てい)が、私を曇らせたの」
 そう言った未来かがみの瞳は、酷く悲しそうだった。
「それをきっかけに、こなたとの距離も遠くなって。そして、こなたはそれを気に病んで、ついにこなたは……
こなたは……」
「もう、いいよっ!」
 私は、大声で未来かがみの話を制止した。
「もう……いいよ。そんな辛い話、しなくってさっ」
 未来かがみの気持ちはわかった。そして、私自身の気持ちも……。
 私、こなたの事……好きなんだ……愛してるんだ。
「今やっと、わかった。私もこなたの事、愛してるみたい」
 自分の気持ちに気づいた私は、なんだか未来かがみに対して、またムカッ腹が立ってきた。
「でもさっ! だからって、こなたとキスしたのは許せない」
 だから、だから……返してもらうわよ! 私は、思いっきり未来かがみの唇を奪った。
「んんぅーっ? んぅー……っ!」
 未来かがみがこなたにしたキスより長く……長く…………。


「……ぷはっ」
「けほっ、けほっ……ちょっと! あなた、何考えて……?」

182:並行世界16
09/12/08 19:32:55 l1SdaMIM
 私は、口元から垂れる唾液を手で拭いながら。
「返してもらったわよっ! こなたを」
 それを聞いた未来かがみは、ハッとして……その後、微笑した。
「ふふっ……なるほどね」
 続け様に私は、未来かがみに右の頬を突き出す。
「アンタ、私の頬を2回張りなさいよっ!」
「えっ、なんで?」
 私が、やった事への私のお返し……。
「いいから! じゃないと、私の気が済まないっ」
 始め未来かがみは躊躇していたが、私の気持ちを酌んでくれたのか、左手を振り被った。
「……わかった。でも、1発でいい……殴るこっちの手も痛いんだから!」
 次の瞬間、未来かがみの手が空を切る音、続いて手と頬がぶつかる音が響いた。
 いっ痛ぅぅーっ! 私、こんなに強く殴ったかしら?
 でも、そんな痛みとは裏腹に私の心は、清々しい気持ちでいっぱいだった。
 サンキュー……未来かがみ。
「ありがと、これで気持ちが楽になったわ」
「どういたしまして……ふふっ」
「えへへっ……」
 私達は、互いの気持ちを整理して、思わず笑みが零れてしまった。
 その後、私達はベンチに座り他愛もない話で笑い合った。
「あれ、やっぱ臭いよねぇ?」
「うんうん、臭い臭い」
 二人で大笑い……すっごく楽しかった。
 そんな話の途中、未来かがみは星空を指差して私に質問してきた。
「ねぇ、あそこの星が3つ並んだ星座、なんだかわかる?」
 3つ? ……ああ、オリオン座ね。
「オリオン座よ。誰でも知ってるわよ」
「正解、その左下で一際輝く星は?」
 これも初歩的な問題ね。
「シリウス、おおいぬ座の1等星」
「正解、じゃあ、シリウスの右にある星座はわかる?」
「えっ? シリウスの右……うぅーん」
 あんな所に星座なんてあったかしら?
「わからない?」
「ちょっと、覚えがないわ」
「マイナーな星座だからね」
「で、なんなのよ?」
「……うさぎ座」
「うさぎ座?」
「そう、あの星はまるで私……1人だと寂しくて死んじゃうの」
 未来かがみは、どこか寂しい眼をしていた。
「だから、私は並行世界を彷徨っているのかもね」
「1人じゃないわよ……」
 私は、未来かがみのそれを否定した。そして、星空を指差して……。
「こいぬ座の上、あの星座を忘れてない?」

183:並行世界17
09/12/08 19:33:33 l1SdaMIM
「ふたご座? それが何と……っ!」
 そこまで言いかけて、未来かがみも気づいたようだ。
「ふたご座は、こなたの生まれ星座……星になってアナタを見ているんだよ」
 それを聞いた未来かがみは、少しだけ笑っていた。
「あなたって、本当にポジティブね」
「まあね、差し詰め、あのふたご座はアナタのラッキースター……なんてね」
「略して『らきすた』ね……ふふっ」
 良かった……少しは、元気を取り戻してくれて。
 やっぱ未来かがみは、沈んだ顔より笑った顔の方がカワイイわよ。
「そうだ、これを渡しておくわ」
 未来かがみは、ポケットから包みを取り出して私に差し出した。
「何、これ?」
「あなたが、楽しみにしてたラノベよ」
「うそ、もしかしてあのラノベ? 貰っていいの?」
「うん、私それ、持ってるから……」
 ラッキー! あのふたご座は、私のらきすたでもあったのね。
 でも、このライトノベルを渡した時の未来かがみの苦笑がちょっと気になったけど……。
 ま、いっか! ラッキーは、ラッキーよ。
「そ、それとね……これ、なんだけど」
「んっ、何?」
 未来かがみが、ポケットから取り出したもう1つの物を見て私は、私は……。
 な、な、なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!
「な、なんなのよぉぉぉぉ! これはっ?」
「プ、プリクラ……」
「プ、プリクラは、わかってんのよ! なんで……」
 なんで、こなたとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!
「なんか、成り行きでこうなっちゃって……えへっ」
 えへっ……じゃないわよぉぉぉぉっ!
 な、なんだその舌出して、おでこにコツンッはぁぁぁぁ!
「あ、あのね……落ち着いて聞いてね。実は……」
 私は、未来かがみに事の経緯(いきさつ)を聞かされた。
「……と言うわけで。これは、その、不可抗力というか……」
 いやいや、不可抗力じゃないですからっ。ただ、アンタが暴走しただけですからっ。
「ったく、何が不可抗力よ。アンタが暴走しただけじゃない」
 私は、呆れて怒る気力も失せていた。
「いや、暴走というか、なんというか……」
 未来かがみは、恥ずかしそうに両手の人差し指を互いにチョンチョン突き合っている。
 なんかムカツクぞ! それっ。
「ああっ、もうこんな時間! 私、帰らないとっ」
 タイムトラベラーの未来かがみに時間はあまり関係ないのでは? と、私は思ったが呆れて何も言えなかった。
「じゃ、そんな事だから、話合わせといて」
 何がそんな事なのか……。
「はあぁ……」
 私は、額に手を当て、大きな溜息をついた

184:並行世界18
09/12/08 19:34:15 l1SdaMIM
「ちょっと、待ちなさいよっ」
「えっ……まだ、何か?」
 私の呼び止めにビクッとする未来かがみ。ちょっと、カワイイかも。
「これ、写ってんのアンタでしょ?」
 私は、プリクラを未来かがみの眼前に突き出した。
「そ、そうだけど……」
「だったらさっ、1枚くらい持って行きなさいよ」
 未来かがみは、思いがけない私の台詞にキョトンッとしている。
「ほら、どうしたのよ?」
「……かがみ」
 未来かがみは、嬉しそうにプリクラに手をかけた。次の瞬間……!
「1枚なんてケチくさい事、言ってないで! もっと、よこしなさいよっ」
 私からプリクラをひったくろうとする未来かがみ。
 しかし、私もプリクラを力の限り掴んでそれを阻止する。
「ふ、ふざけなさいよっ……」
「半分! いや、むしろあなたが1枚で十分よ」
「な、なんだとぉ! て、手を離しなさいよぉ」
「あ、あなたこそ離しなさいよっ」
 私達は、互いに引こうとしなかった。
 私達の背中には、闘志が炎となってあらわれていたに違いない。……多分。

《12》
 結局、プリクラが破れそうになったので、互いに引いて半分で折り合いがついた。
「サンキュー、またね」
 嬉しそうに自分の世界に戻る未来かがみ。
 あのプリクラを眺めてニヤける未来かがみが容易に想像できて、なんか腹が立つ。
 何はともあれ、今日は散々だった。

 ふと、プリクラを眺めてみる。
 しかし、改めて見ると、つくづく恥ずかしいプリクラだ。
 目を覆いたくなる……っていうか明日、こなたに会うのが気マズイ。
「どうするのよぉ、これぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
 私の悲痛にも似た叫びが、夜の公園にこだました……。

つづく

185:名無しさん@お腹いっぱい。
09/12/08 23:43:07 GdQ+ir9E
乙です!
明日も楽しみですな~

186:名無しさん@お腹いっぱい。
09/12/09 12:30:22 C7OsODsj
作者のレベルが格段に向上している



187:名無しさん@お腹いっぱい。
09/12/09 18:37:22 0wp4vv2a
神奈川版「麾く煉獄」でココが分からないんだけど

①、凛は示談金目的でそうじろうを脅したのか?それとも復讐しに来ただけなの?
②、ゆい姉さんは示談が成立しかかっていたのに、警察に通報したの?
③、伸江は信用金庫を襲撃し、こなたの金を奪い、ヤクザを皆殺しにしたなぜ?
④、そうじろうは結局、自殺したの?
⑤、こうはこなたとは顔見知りなのに「汚い!あっちに行け!」と言ったの?

誰か詳しく教えてくれ

188:並行世界19
09/12/09 20:46:14 AaN2A3Bs
《13》
1月18日(金曜日)朝
 朝が来てしまった……。
 私は、つかさと一緒に糟日部駅前でこなたが来るのを待っていた。

 どんな顔してこなたに会えばいいのだろう?
 はあぁっ……と、ただブルーな溜息が出るばかりだった。

 確かに私は、自分の気持ちに気づいた。
 でも、昨日の出来事は私じゃなくて未来かがみのした事。
 プリクラも駅でのキスも……私ではない。そう考えると、なんか憂鬱。
「お姉ちゃん。なんか元気ないけど、どうしたの?」
 浮かない顔をした私を心配したのか、つかさが声をかけてきた。
「ううん、なんでもないよ。ちょっと、寝不足なだけ」
 嘘ではない。実は昨日の夜、色々考えてしまって眠りに就いたのが4時頃になってしまった。
「寝不足? なんか、こなちゃんみたいだね」
「ははっ……そ、そうね」
「あっ! お姉ちゃん、こなちゃん来たよ」
 こなた! 改札口からこなたが出て来るのが見えた。
 顔が、カアァッと熱を帯びるのが自分でもわかる。
 あぁっ、どうしよう、どうしよう……。
「ホントに大丈夫? お姉ちゃん」
 ソワソワする私を見て、つかさが心配してきた。
「だ、大丈夫よ。ホントになんでもないから」
 そ、そうよ。普通よ、普通でいいのよ! いつものように自然に振る舞えばいいじゃないっ。
「おはよう。こなちゃん」
「おっはよう。つかさ」
「あっ……こなた、おはよっ」
 声が上擦ってしまった。普通に普通にという気持ちが、裏目に出てしまったらしい。
 こなたは、私の方をチラッと見てすぐにプイッと目を逸らした。
 そして、そのまま私を無視して歩き始めた。あれっ? え、えっ……私、何かやったか?
「ちょ、ちょっと……こなっ」
「あ、かがみ。……いたの?」
 なっ! い、いたのって……。どうやら、こなたは機嫌が悪いようだ。
「こ、こなちゃん。どうしたの、怒ってるの?」
 つかさは、こなたの態度に驚いている様子だった。
「大丈夫だよ。つかさの事は、全然怒ってないから」
 という事は、やはり、私には怒っているのか?
「ちょっと、こなた。朝から何、怒ってんのよ?」
 私は、冗談混じりにこなたの背中をポンと叩いて聞いてみた。
「自分の胸に聞いてみたら?」
 私の方を見もしないで答えるこなた。
 一体、私が何をしたというのか……。
 私は、身に覚えのないこなたの仕打ちに困惑していた。

189:並行世界20
09/12/09 20:46:46 AaN2A3Bs
「お姉ちゃん。こなちゃんになんかしたの?」
「わ、私は別に……」
 身に覚えがないので、私はつかさの質問に答える事ができなかった。
「でも、こなちゃん怒ってたよ」
「いや、ホントに心当たりがないのよ……」
「じゃあ、なんで……あっ! こなちゃん、待ってよぉ」
 つかさは、私を置いて、先を行くこなたを追って行ってしまった。
 こなたのヤツ……一体、私が何したってのよ?
 バスの中でつかさは、私達をなんとか仲直りさせようと苦闘していたが、それも上手くはいかなかった。
 いつもは、休み時間になれば毎度の如く行っていた3年B組も今日は、なんだか行きづらくて行かなかった。

《14》
 そして、昼休み……。
「おうっ、柊ぃー。今日は、ちびっ子のところに行かねぇのか?」
 ほとんどの昼休みを3年B組で過ごす私が、今日はそこへ行かないのを不思議に思ったのか、日下部が話し
かけてきた。その隣には、いつものように峰岸もいる。
「う、うん……今日は、ちょっとね」
「どうしたの? 泉ちゃんとケンカでもしたの?」
 日下部の隣にいた峰岸が心配そうに聞いてきた。
 どうやら、峰岸には見透かされているようだ。
「いや、そんなんじゃないって」
 否定は、してみたもののバレバレだ。
「なんだぁ、柊ぃー。ちびっ子とケンカしたのかぁ?」
「う、うるさいっ。日下部には、関係ないだろっ」
 私は思わず、日下部を怒鳴ってしまった。
「うぅー、あやのぉ。柊が冷てぇよぉ」
 峰岸に泣きつく日下部。
 峰岸は、そんな日下部の頭をよしよしと撫でてなだめている。
「まぁまぁ、柊ちゃん。みさちゃんも悪気があって言ったわけじゃないから」
 確かに今のは、少しムキになり過ぎたかも知れない。
 峰岸はこういう時、良いストッパー役になってくれて助かる。
「そ、そうね……私が大人げなかったよ。日下部、怒鳴ったりして悪かったわね」
「うぅー……柊凶暴伝説」
 コイツ、言い返しづらい時によくもそんな事をっ!
「柊ちゃん……」
 峰岸は、私の肩にポンと手を置いて首を左右に振った。怒るなって、言いたいんでしょ?
「わかってるわよ。今のは、怒鳴った私が悪いんだし」
「だよなぁー」
 コイツ! 日下部は、基本的に友達思いのいい奴なのだが、こういうところがたまに癪にさわる。
「でも、柊ちゃん」
 峰岸が、真面目な顔で話を切り出した。
「泉ちゃんと本当にケンカしたなら、早く仲直りした方がいいんじゃないかしら?」
「そうだ、そうだぁ」
 私だって仲直りしたいけど、原因がわからないんじゃ……。
 それに日下部。『そうだ、そうだぁ』とか、いちいちいらんわっ。

190:並行世界21
09/12/09 20:47:20 AaN2A3Bs
「大体、柊は自分の気持ちに素直じゃねぇんだよ」
 自分の気持ちに素直……? そうか、わかった。
 未来かがみ! こなたが怒っている理由は、あの事だったんだ。
「日下部、峰岸。サンキュー」
 日下部と峰岸は、なんの事かわからないという顔をしていた。
 だが、今はそんな事を説明している余裕はない。一刻も早く、3年B組に行かなければ。
「こなたぁー」
 3年B組に到着した私は、昼食の真っ最中だったこなたの手を引いた。
「ちょ、ちょ、かがみっ?」
「お、お姉ちゃん。どうしたの?」
「か、かがみさん?」
 みんな驚いていたが、そんな事はおかまいなしだ。
「ちょっと、付き合ってもらうわよっ」
「ど、どこへ……?」
「いいから、ついて来なさいよっ」
 私は、嫌がるこなたの手を引いてズンズン歩き出した。向かった先は、屋上だ。
「ちょっ痛いよ、かがみ。離してよぉ」
 屋上に到着したところで、こなたは私の手を振り払った。
「一体、どういうつもり? かがっ!」
 こなたは、何かを言いかけていたが私は、それを自分の唇を重ねる事によって塞いだ。
 始め、私の唇から抗おうとしていたこなただったが、それも途中からしなくなった。
 このやり方は、少しズルイ方法だったかも知れない。
 でも、こなたと面と向かった時、自分の気持ちが抑え切れなかった。
「……こなた」
「ず、ズルイよ。かがみんは……ズルイよ」
 こなたは、私に抗議してきたが、その表情と言動に朝のようなトゲはない。
「昨日、駅に置いてけぼりにした事……怒ってるんでしょ?」
「う、うん……」
 やっぱり。昨日、未来かがみは一応謝ってから私を追って来たと言っていたが、置いてけぼりをくらった
こなたが、納得していないのでは? ……と私は、さっき思ったのだ。その考えは、間違ってはいなかったようだ。
「ごめんね、こなた。昨日の事は、なんかで埋め合わせするから許してよ」
「ホントに?」
「もちろんよ」
 それを聞いたこなたは、ニンマリと笑みを浮かべた。なんか嫌な予感。
「じゃあ今日さっ、私ン家に来てよ」
「別にいいけど……なんで?」
「ほら、テストも近いし。家でべんきょー……なんて」
 私は、こなたの額に手を当て、熱がないか確かめてみた。
「な、なんのつもり? かがみん」
「いや、めずらしくアンタがまともな事を言ってるから」
「ひどっ!」
「日頃が日頃だから。ごめん、ごめん」
 こなたは、こなたなりにちゃんと考えているようだ。
「そういう事ならいいわよ」
「さっすが、かがみん。心の友よ」

191:並行世界22
09/12/09 20:47:56 AaN2A3Bs
「じゃあ、教室に戻ってお昼にしましょうか?」
「って、かがみん。お昼休み、後10分もないよ」
 なぬぅー! 私、まだ全然お昼食べてないじゃないっ。
 その後、急いで教室に戻って掻き込む様にお弁当を食べたのは言うまでもない。

《15》
 放課後になり、私は帰り支度をしていた。
「かがみ様ぁー」
「だから、その呼び方やめろって」
 こなたが、私の教室まで迎えに来てくれた。
「あれ、つかさとみゆきは?」
「なんか、みゆきさんがつかさに用があるとかで、2人で先に帰ったよ」
 私は、すぐにピンときた。
 恐らく、2人の行動はつかさから事情を聞いたみゆきの計らい。
 昼休みに仲直りした私とこなたに気を遣っての事だ。
 みゆきが、つかさを連れて行かなければ、つかさもこなたの家に来ていたかも知れない。
 私とこなた。2人きりで仲を深めろという事だ。もちろん、変な意味ではなく……。
「そっか。じゃあ、私らだけで帰るか」
「ラーサー」
「また、古いネタを……。それわかる人、あんまりいないと思うぞ」
「ふっふっふっ、JとかWの活躍によって、結構知れ渡っているのだよ。かがみん」
「そ、そうなのか?」
 些(いささ)か疑問は残るが、私達はそんなこんなでこなたの家に到着した。
「あれっ?」
 戸を開けようとしたこなただったが、どうやら鍵が閉まっているようだ。
「お父さんもゆーちゃんもいないみたい」
「誰もいないの?」
「そうみたい。……ま、いいか」
 仕方なくこなたは、持っていた鍵で戸の鍵を開けた。
「お茶入れて来るから、先に私の部屋に行っててよ」
「あいよー。おじゃましまーす」
 私は、靴を脱いでこなたの部屋に向かった。
 こなたの部屋に入ってまず目に付くのは、棚に所狭しと並べられたフィギュア、漫画本、アニメDVDなどだ。
「相変わらずの部屋ね……」
 恐らくこなたは、この中の全てには目を通していないであろう。
「ったく、見もしないDVDや漫画なんて買って、どうするのかしら?」
「そんな事ないよ。一応、ひと通りは見てるよ」
「ヒャッ!」
 いきなり背後から声をかけられたので、驚いた私は思わず飛び退いて転んでしまった。
「いったぁー。ちょっと、脅かさないでよぉ」
「別に脅かしたつもりはないよ。それよりかがみん」
 なぜかこなたは、ニヤニヤしている。
「な、何よ。私が転んだのが、そんなにおかしいわけ?」
「いや、そうじゃなくて。パンツ、丸見えだよ」

192:並行世界23
09/12/09 20:48:32 AaN2A3Bs
 ハッ! 私は、あわてて乱れたスカートを直した。
「そんなところでドジッ子をアピールとは、かがみんもやるもんじゃのぉ」
「ば、ばかっ! アピールなんぞしとらんわっ」
 まったく、本当にコイツは女子高生なのか? ただの中年セクハラおやじにしか思えんっ。
「まあ、これでも食べて落ち着き給へ」
 こなたは、テーブルの上にお茶とお饅頭らしき物を置いた。それは、良く見ると埼玉銘菓だった。
「お、サンキュー。このお饅頭、美味しいよね」
 私は早速、そのお饅頭に手を出してみた。
「いただきまーす。はむっ」
 うまい、うますぎる! 十〇石饅頭。……なんてね。
「んじゃ、糖分も補給したし。始めるわよ」
「ええーっ」
「ええーっじゃない! 文句言わずにやれっ」
「うぅー」
 渋々、勉強を始めるこなた。
 しばらくしてこなたが、わからないところを聞いてきた。
「かがみ、ここわかんない」
「んー、どれどれ。あー、これはここをこうして……こうすればできるわよ」
「すごーい! かがみんは、天才だね」
「天才なんかじゃないわよ。これは、日々の努力」
「じゃあ、かがみんは努力の天才だね」
 私は、少し困った顔をしてこなたにこう切り返した。
「私だって、わからない問題ぐらいあるわよ。でもね、それは日々の努力で克服できるものなのよ。こなた
だって努力次第で、やればできる子なんだから……」
「えーっえ、え、え! そんなー。お姉様」
「なんだそれ? また、ゲームか漫画のネタかぁ? ふざけてないで、ちゃんとやれっ」
 丸めたノートでこなたの頭を軽く叩いてやった。
 頭のてっぺんからちょこんと出たアホ毛が、ポヨヨーンと揺れてちょっと可愛い。
「うぅー、ノリ悪いよぉ。かがみん」
「うっさい! 今は勉強中だ。勉強をやれっ」
「ぶぅーっ」
 文句をブツクサ言いながら勉強に打ち込むこなたも、これまた可愛かったりする。

《16》
 そして時間は過ぎ……。
「かがみ。今日は、これくらいにしない? 私、もう……」
「はいはい。アンタにしては、頑張った方ね」
 私は、教科書とノートを閉じ、重ね合わせた上でトンッと端を合わせた。
 こなたはというと、いつものように『疲れたぁー』とか言って、その場に寝そべるのかと思いきや、机の引き
出しをアサっていた。
「何してんのよ? こなた」
「んっ、ちょっとね」
 こなたは、引き出しから何か袋を持ち出してきた。そして、それを私に差し出した。
「はい、かがみにプレゼント」
「えっ、私に?」

193:並行世界24
09/12/09 20:49:08 AaN2A3Bs
 私は、キョトンとして唯々(ただただ)それを受け取った。
「それ昨日、ゲ〇ズで交換した景品なんだけどさっ」
 そうだ! 未来かがみが話していた。
 この景品を手に入れたこなたは、すごく嬉しそうに見えたと。
 だから、中身が少し気になったとも話していた。
「ちょっと、いいの? アンタこれ交換して、すごく嬉しそうにしてたじゃない」
「うん、いいの。だってそれ、かがみにプレゼントしようと思って交換したから」
 こなたぁ……。嬉しくて今すぐ、こなたを抱きしめたかった。
「開けていい?」
「うん」
 ドキドキしながら袋の中身を出してみた。
 えっ……。な、何これ?
 中身は、セーラー服を着たブタ? と思わしきキャラクターのストラップだった。
 でも、誰かに似ているような……どこかで会った事があるような?
「な、何かのキャラクターかな? これっ」
「私もよくわかんないんだけど。そのツインテールのところとか、かがみに似てるなと思って」
 私かいっ!
「それは、どういう意味かな? こなたさん」
 私は、ブタって事かぁ?
 私は、ふつふつと込み上げる怒りをポキポキと指を鳴らす事によって表現してみた。
 顔には、微笑みを絶やさない。
「いや、深い意味は……」
「ほほう、深い意味は……ねぇ。っていうか、いっぺん死んでみる?」
 こなたのアホ毛を右手でムンズと掴んで、左の拳に力を溜める。
 その間(かん)も微笑みを忘れてはならない。
「いや、ぼっ暴力は、いかんよ! 暴力は……」
「問答無用! 今日という今日は、頭きたっ」
 私は、こなたを殴ると見せかけてチュッと軽くキスをした。
「ほへぇ?」
「にひひっ、騙されたぁー」
 こなたは、面食らった顔をしていたが、我に返って……。
「よくも騙したなぁー。かがみのくせにぃー」
「やぁーい、やぁーい」
 こなたは、私の胸をポコポコ叩いて、恥ずかしさを紛らわせているようだった。
 それは、だんだん力なくなり最後、右手をポンと私の胸に置いたままこなたは……。
「ねえ、かがみ……」
 こなたの声は、少し震えている。
「何……?」
「私達ってさぁ……」
「…………」
 私は、自然と無言になってしまった。
「その……付き合ってるの……かな?」

194:並行世界25
09/12/09 20:49:43 AaN2A3Bs
 確かにそれは、微妙で曖昧なところだ。
 未来かがみの分も合わせれば、4回もこなたとキスをしている。
 本来の告白(かてい)をすっ飛ばしているのは、目に見えてわかっている。
「そう……だよね。ちゃんと、告白しないと……ね」
 声が上擦っている。私は、なんて臆病なのだろう。
 ここぞという時に心(あし)が竦んで動けないっ! キスは、できるくせに……。
 そんな自分がどうしようもなく嫌になる。勇気を出せっ! 自分(かがみ)!
「こ、こなた……私っ」
 ダメェ、やっぱり言えない。
 私のバカァ! 柊かがみは、こんなに情けない女だったのか?
 踏ん切りがつかない、そんな私を見兼ねたのか、こなたは私の手を取って……。
「大丈夫……かがみなら言えるよ。私もかがみの気持ちにきっと答えるから……ね!」
「う、うん……」
 私の手をギュッと握るこなたの手は、柔らかくて優しい。
 ありがとう、こなた。……私は、意を決する。
 そして、私の気持ち、想いの全てを次の言葉に託す。
「こなた! あなたが好きです。私と付き合って下さいっ!」
 い、言えたぁ……。ついに私は、こなたに告白する事ができた! 想いを伝える事ができた!
 でもまだ、こなたの返事を聞いていない。さあ、答えてこなた。

 こなたぁぁぁぁぁぁっ!

 暫しの沈黙を経て、こなたは優しく、そして微笑みながら……。
「こんな私で良かったら……よろしくね。かがみ」
「こなたぁぁぁぁぁぁっ」
 私は、思わずこなたに抱きついた。
「私達、これで恋人同士だね。かがみん」
「うん」
 満面の笑みで返事をした。いつも、こなたに『子供かっ』などと言っている私だが、なんだか今は、私の方が
子供のような……そんな幼さを含んだ『うん』だった。
「ねぇ、こなた。記念のキス……しようよ」
「うん」
 こなたは、照れたように笑って頷いた。そんなこなたが愛おしくて、愛おしくてたまらない。
 そして、私とこなたの唇はゆっくりと惹かれ合う……ゆっくり、少しずつ時間をかけて。


「ただいまぁー」
 私とこなたは、その声に思わず飛び跳ねた。今の声は、ゆたかちゃん?
「ゆーちゃんだ」
「そう……みたいね……」
「ちょっと、行って来るね」
 と言って、立ち上がるこなた。

195:並行世界26
09/12/09 20:50:15 AaN2A3Bs
「う、うん……」
 私は、ちょっと残念な気持ちを押し殺して返事をする。
 こなたが、部屋を出て数10秒後……今度は、男性の声で『ただいまぁー』が聞こえた。
 あの声は、こなたのお父さん。それを聞いた私は、帰り支度をして立ち上がった。
「えっ、かがみ、帰るの?」
 こなたが、戻って来た。
「うん、もう遅いし……」
「明日、学校休みなんだから泊まってけばいいじゃん」
 確かにその選択肢もあるが、それはそれでヤバイッ。
 この勢いだと、キス以上の事に発展し兼ねない。それは、今の私にはまだ早いと思う……。
「ううん、今日は帰るよ。迷惑かけちゃうし……」
「そんな事ないよっ」
 こなたは、食い下がってきたが、私の決定は変わらない。
 だって、泊まったら絶対にやっちゃうもん……キス以上の事。
「ダァーメッ! 明日、また来るから」
 私は、ブゥーブゥー文句を言うこなたを適当にあしらう。
 そして、階段を降りて玄関に向かう。
「じゃあ、駅まで送るよ」
「それもダメッ! こなたは、これから夕飯作らないといけないでしょ?」
「うぅー」
 私は、つま先でトントンと床を打ち鳴らして靴を履く。
「じゃあ、また明日ね」
 私は、膨れっ面のこなたに軽くキスをした。
「もぉ! かがみんは、いつもそれで誤魔化す」
「文句言わないの。……お邪魔しましたぁ」
 私は、こなたの家を後にした。
 帰り際『絶対、明日来てねっ』と、こなたに念を押された。……わかってるって。
 しばらく歩いたところで、私の携帯電話が鳴った。
 こなたかな? 携帯電話の着信窓を確認してみる。『公衆電話』と表示されていた。
 誰だろ? 私は、通話ボタンを押して電話に出る。
「はい、柊です」
『かがみ? 私よ、かがみよ』
 電話の相手は、未来かがみだった。
 かがみが2人いるとややこしいなぁ……と思いながら返事をする。
「かがみだけど、どうしたのよ? かがみ」
 やはり、ややこしい。って、今のはワザとやったんだけどね。
『今から会えないかしら?』
「いいわよ。話しておきたい事もあるから……場所は?」
『〇×公園は、知ってる?』
「ああ、その公園なら私ン家の近所だし、知ってるわよ」
『じゃあ、そこで待ってるから。よろしくね』
「はいよー」
 私は、通話終了ボタンを押して電話を切り、指定された場所に向かった。

つづく

196:名無しさん@お腹いっぱい。
09/12/09 22:48:58 NSq8AU02
最近vipでポケモンのとんでもないグロSSを見掛けて何かが目覚めた
今までグロいのは敬遠してたけどwikiでグロ注意のSSとかイラストとか漁ってみた、良いもんだな!

197:名無しさん@お腹いっぱい。
09/12/10 12:30:37 1/UwPOsR
ハッサムのやつか?

198:名無しさん@お腹いっぱい。
09/12/10 19:34:54 T8iyOQ91
こうやって数多の職人を自殺スレは育ててきた

199:名無しさん@お腹いっぱい。
09/12/10 19:46:02 cfPIDdT4
>>197
そうそれ、あれかなりエゲつなかった
どっかのブログが載せてるかと思ったけど無いんだよな
大人のポケモンとかいうやつ

200:並行世界27
09/12/10 19:57:11 8rGiakXO
《17》
1月18日(金曜日)夜
 私は、未来かがみに指定された公園に到着した……。
 狭い公園。未来かがみを見つけるのに然程、時間はかからなかった。
 私は、ベンチに1人座っている未来かがみにゆっくりと近づく。
 ベンチの直ぐ横にあるこの公園で、ただ1つの電灯が未来かがみの顔を鮮明に映し出してゆく。
「待った?」
 と、聞きながら私は、辺りを見回す。
 どうやら、この公園には私と未来かがみ以外、誰もいないようだ。
「ううん、私もさっき着いたばかりよ」
「こんな時間に会いたいなんて、何かあったの?」
「それより、話したい事って……何?」
 未来かがみは、遠くを見つめながら質問を質問で返してきた。
 口調は怖いくらいに落ち着き払っている。
「あ、いや……こなたの事なんだけど」
「こなた?」
「うん。私達、付き合う事になったの」
 それを聞いた未来かがみは、驚きを露にして立ち上がった。
「うそ! ホントに?」
「本当よ。もしかしたら、こなたの自殺を止められるかも」
 未来かがみは、泣いて喜んでくれた。
 そして、私を優しく抱きしめてくれた。私もそんな未来かがみを抱きしめ返した。
 抱きしめ合いながら、私は感じた……。
 未来かがみの嬉し涙に嬉しさだけではない、複数の感情が入り混じっている事を。
 しかし、私はそれがなんなのかまでは、読み取る事ができなかった。
 喜びを分かち合った後(のち)、未来かがみは最後まで油断してはダメと釘を刺してきた。
 未来かがみの言う事は、もっともだ。確かに今の状況は、こなたが自殺しない未来に進んでいるように見える。
 しかし、未来かがみの能力は、こなたが自殺する並行世界しか行く事が出来ない。
 もしかしたら、自殺しない未来に進んでいるように見えているだけで、本当は自殺する未来に進んでいるの
かも知れない。
 そして、時間の力を忘れてはならない。自殺しない未来に進んでいたとしても、時間が本来の出来事に近い
形に戻そうとするはず。だから、1月21日月曜日が終わるまで油断は出来ないのだ。
「わかってるわよ。最後まで気は抜かない」
 その返事に未来かがみは、神妙な面持ちで頷いた。そして……。
「じゃあ、私は帰るわ……」
 えっ?
「ちょっとアナタ、私になんか用があったんじゃないの?」
 未来かがみは、その問いに対し首を横に振る。
「ううん、ちょっとあなたの顔が見たかっただけよ」
 そう言って、未来かがみは去って行った。……一体、何がしたかったのだろうか?
 今日の未来かがみは、全く以って不可思議だった。

201:並行世界28
09/12/10 19:57:48 8rGiakXO
《18》
1月19日(土曜日)10:00頃
「うんうん……」
 私は、自室のベッドに腰掛け電話をしていた。
「それじゃ……」
 ボタンを押し通話を終了した。
「さて、準備準備」
 と、ベッドから立ち上がると同時に携帯電話が鳴った。
 誰だろ? 着信窓には『公衆電話』と表示されていた。
 未来かがみ? 私は、通話ボタンを押して電話に出た。
「はい、柊です」
『かがみっ! こなたが大変なの』
 やはり、未来かがみ。
「こなた?」
 こなたが大変って……どういう事?
『何度も電話してたのに! 誰と電話してたのよ?』
「あ、いや、みゆきと……」
『まぁ、いいわ。急いで今から言うところに来て!』
 未来かがみは、だいぶ取り乱している様子だった。
「ちょっと、落ち着きなさいよ。こなたが、どうしたのよ?」
『どうしたも、こうしたもないわ。どうやら、時間軸がズレていたらしいの!』
「ど、どういう事よ?」
 私は、未来かがみの言っている事がわからなかった。
『こなたが、自殺しちゃう。早く来て、場所は……』
 場所を聞いた私は、電話を切った。
 そして、一呼吸おいて……そんな、バカな! と、心の中で叫んだ。
 未来かがみは、時間軸を取り違えこなたの自殺する日を見誤ったという。
 でも、それは……いや、とにかく未来かがみもそこへ向かっているらしい、私も急いで行かねば!

《19》
 そして私は、未来かがみに聞いた糟日部のとあるビルに到着した。
「このビルの屋上ね……」
 どうやらこのビルは、不況の波を受け蛻(もぬけ)の殻……使われていないようだった。
 テナント募集中の看板。不動産屋の意向か、中を見られるように鍵も掛かっていない。
 電気も通っているようで、エレベーターが使えた。私は、そのエレベーターで最上階に向かった。

 最上階に到達したエレベーターの扉が開く。ここからは階段で屋上に向かう。階段を一段、また一段と踏み
しめる度に心臓の鼓動が早くなる。
 そして、私は屋上に続く扉の前で、立ち止まった。……おかしい! ここで、未来かがみと落ち合う手筈に
なっていたのだが、彼女の姿がない。仕方なく、私は屋上へ続く扉を開いてみた。
 風が吹き荒んでいた……そして、彼女は1人佇んでいた。
「遅かったわね……」
 未来かがみの雰囲気が、何か違う。

202:並行世界29
09/12/10 19:58:19 8rGiakXO
「こ、こなたは、どこよ?」
「こなた? バカね、あなた……。こんなところにこなたがいるわけないじゃない」
「なっ! ど、どういう事よ? アンタが、このビルでこなたが今にも飛び降り自殺しそうだから急いで
来いって……」
「そんなの嘘に決まってるじゃない」
 未来かがみは、キッパリと言い切った。
「なっ、嘘って……なんで、そんな嘘を?」
「あなたを……殺す為よ!」
 はっ? 未来かがみは、冗談を言っているつもりなのだろうか?
「な、何それ? 悪い冗談は、やめてよ。ははっ」
 私は、未来かがみに歩み寄ろうとした。
「動かないでっ!」
 未来かがみは、懐から何か黒い物を取り出して私に向けた。
 それは、銃! セミオートマチックのハンドガン『ベレッタM92FS』だった。
 その先端には、御丁寧に減音器(サプレッサー)まで装着してある。
「ベレッタM92FS……本物? モデルガンでしょ? それっ」
「あら、詳しいのね。本物よ」
 そう言って、M92FSのスライドをシャキンと得意気に引いてみせる未来かがみ。
「最近まで、本格的なガンシューティングのゲームにハマッててさ。っていうか、ホントに良くできたモデル
ガンね。ちょっと見せてよ」
 私が1歩踏み出そうとした次の瞬間、足元のコンクリート床に穴が空いた。
 コンクリート片が、私の頬を物凄い勢いでかすめていった。
「動かないでって、言ったでしょ?」
 一瞬、何が起こったのかわからなかったが、コンクリート床のヒビと頬を伝う血でようやく理解した。未来か
がみが、発砲したのだと。そして、あのM92FSは本物なのだと。
 銃声は、なかった! 銃声は、2つの大きな要素で構成されていて、1つは発射ガスの破裂音。もう1つは、
弾が音速以上で進む際に生じるソニックウェーブ。そして、サプレッサーは前者にしか効果がない。通常の
9mmパラベラム弾(9パラ)なら後者のソニックウェーブによって銃声がする。しかし、今の発砲は銃の機構が
作動する音しか聞こえなかった。だとすると、あのM92FSは弾の初速が音速を超えず、亜音速に留まるよう
に弾頭の重さや火薬の量を調節した所謂(いわゆる)サブソニック弾を使用していると思われる。これは、厄介だ。
なぜなら、これで銃声によって誰かがこの状況に気づいてくれる事は、皆無になったのだから。
「ほ、本物! そんな物、一体どこで……?」
「簡単よ。私は、時空を超越しているのよ。……その意味がわかる?」
 なんとなくだが答えはわかる……。でも、ここは敢(あ)えてわからないふりをした。
「な、何よ! そんなのわかんないわよっ」
 未来かがみは、首を左右に振って困り顔をする。
「私のくせに意外とバカね、あなた」
「な、なんだとぉ! 勿体ぶってないで、教えなさいよ」
 未来かがみは、ニヤリと口元に笑みを浮べる。
「私が、思い描いた場所に銃が落ちている世界に行けばいい……」
「ま、まさか!」

203:並行世界30
09/12/10 19:58:50 8rGiakXO
 未来かがみは、話を続けた。
「私は、この世界に来るまでにこなたの死を6回も見ているの。その度に、私の力は増大していった。今では、
私の思い描いた世界とほとんど遜色ない並行世界に行く事が出来るのよ。だから、銃を手に入れる事も簡単」
 並行世界の数は、無限! なかには、そういう世界もあるかも知れない。いや、実際にあるのだ。
 それは、未来かがみが証明している。しかし、それなら……。
「それなら、こなたが自殺しない世界だって……」
「それは、出来ない……いくら、やってもそれだけは出来ないのよっ!」
 未来かがみは、目に涙を浮べて私を睨みつける。その目には、悔しさが滲み出ている。
「でも、この世界ならもしかしたら希望がある。だから、あなたを殺して私がこなたと……」
「ふ、ふざけんじゃないわよっ! それは、アンタの勝手でしょうが」
「そうかもね。でも、もう、こなたが死ぬところを見るなんて私は、まっぴらごめんなのよっ!」
 激昂してM92FSを構え直す未来かがみ。今にもトリガーを引きそうな勢いだ。
「あなたには悪いけど、死んでもらうわ」
 未来かがみが、トリガーを引くか引かないかの刹那!
「もう、やめてぇぇぇぇぇぇ」
 その叫びに、未来かがみの動きが止まった。
「こ、こなた。なぜ、あなたがここに?」
 叫びの主は、こなただった。
 未来かがみは、この場にこなたがいる事を酷く驚いていた。
 一方、私は驚かない。なぜなら、私がこなたをここまでつれて来たのだから。
「かがみ! あなた、まさかっ」
「ええ、話したわ。アンタの事も全部ね」
「なんて事をしてくれたのよ! っていうか、なんでどうして? よくも私の計画を台無しにしてくれた
わねっ!」
 逆上した未来かがみは、物凄い剣幕で捲(ま)くし立てる。
 私は、そんな未来かがみを冷静に往なす。
「実は、さっき掛かって来たアンタの電話で気づいちゃったのよね」
「さっきの電話? なっなんで、たったあれだけの会話で」
 私は、困惑する未来かがみを鼻でフフンと笑って、得意気に言ってやった。
「だって、アンタから電話が掛かってくる直前まで私は、こなたと電話してたから。しかも、私はこなたの家の
固定電話に掛けていたのよ!」
 だから、私は釈然としなかった。未来かがみの『こなたが大変なの』を聞いても。
「なっ! そ、それじゃ、みゆきと電話していたというのは……」
「咄嗟に思いついた嘘よ」
「くっ、なんて事よ。よくも、よくも……」
 ワナワナと震えだす未来かがみ。実は、種明かしをしたところで、これはこれでヤバイッ!
 追い詰められた未来かがみが、M92FSのトリガーを引いてしまうかも知れないから。
 しかし、そんな事をされては堪ったものではない。私は、なんとか未来かがみの説得を試みる。
「だから、もうやめようよ。こんな事は、さっ」
「うるさいっ! だまれっ」
 次の瞬間、凄まじい衝撃が私の胸を叩く。
 私は、状況が理解できないまま仰向けに倒れる。息ができない。力が抜ける。
 こなたが私の名前を叫んでいるようだ。それも途切れ途切れにしか聞こえない。
 
 そうか……私、撃たれたんだ!

 錯綜(さくそう)する意識の中、私はやっとの事で状況を理解した。

204:並行世界31
09/12/10 19:59:16 8rGiakXO
「かがみぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ」
 こなたが、駆け寄ってきて私に死ぬな、死ぬなと叫んで泣きじゃくっている。
「しぶとい奴ね。まだ生きてる」
 いつの間にか、未来かがみが倒れている私の前に立ってM92FSを構えていた。
 止めを刺すつもりなのだろう。
「こなた、安心して。私達の幸せを邪魔する、このかがみは殺すから」
 未来かがみは、こなたの死を何度も見過ぎて、狂ってしまったのかも知れない。
 しかし、今更それに気づいたところでどうしようもない。私は、死を覚悟した。

 だが……。

「もう、終わりにしよう……」
 こなたが、ポツリとつぶやく。
 徐に立ち上がったこなたは、未来かがみのM92FSに手を添える。
 そして、銃口を自分の胸に押し当てた。まさかっ! それは、ダメよこなたっ。
 私は、こなたの行動を阻止しようと腕に力を入れ、起き上がろうとする。
 しかし、痙攣するかのような心臓の鼓動。呼吸もままならない。
 苦痛だけが先行し、身体はまったく起き上がろうとしない。
「何してるの? こなた」
 未来かがみは、予想していなかったこなたの行動に脅えだした。
 その間も私は、なんとか起き上がろうと必死だ。
「これでいいんだよ。私さえいなければ良かったんだ……私さえいなければ」
「だ、だめよ! やめなさいっ、こなた」
 一瞬の出来事だった。私の顔に飛び散るこなたの熱い鮮血。口から血反吐(ちへど)を吐いて倒れ行くこなた。
 時がスローモーションのように感じられた。私は、それを唯々見ている事しか出来なかった。
 次の瞬間、私の心(なか)で何かが弾けた! 爆発した!

「――――――――――!」

 私は、声にならない声でこなたと叫ぶ。
 目の前が真っ白になる! いや、この真白(ましろ)なる光は私から……?
 私は、薄れゆく意識の中、世界(すべて)が白になるのを見た…………。

《20》
 気づくと、いつの間にか私の目の前に美しいヴァーミリオンが広がっていた。
 徐々に薄れていた五感が機能し始める……。
 背中にゴツゴツした感触。両腕を動かし、それが何か確かめる。それは、無機質なコンクリート。
 目に映るヴァーミリオンは、夕映え。首を傾けると夕映えは、鉄柵とコンクリート床に変わった。
 鼓膜には、下の方からざわめきが飛び込んでくる。
 ここは、学校? 陵桜学園。私は、その屋上に横たわっているのか。
 なぜ? 私は、まだ完全に機能していない脳(あたま)を使って考えてみる。

205:並行世界32
09/12/10 19:59:49 8rGiakXO
 ……思い出した。私、この間の返事をする為に、アイツを屋上(ここ)に呼び出したんだった。
 それでアイツ、なかなか来ないから待ちくたびれて眠ってしまったんだ。
 状況を理解した私は、ムクリと起き上がり鉄柵の方に歩み出す。
 そして、鉄柵に身体を前のめりに預ける。私は、虚ろな目で夕映えを見つめながら考えた。
 あれは、なんだったのだろうか? 私は、悪い夢でも見ていたのだろうか?
 そんな事を考えていると、手の中に先程までなかった違和をふと感じる。
 それは、あの時こなたからもらったストラップだった。
 次の瞬間、胸にズキンと痛みが走る。痛む箇所を確認してみるが、なんともなっていない。
 だが、そこは未来かがみに撃たれた箇所だった。それが、私をさらに困惑させる。
 あれは、夢じゃなかったのか? 思考が、ごちゃ混ぜになる。
 わけがわからなくなった私は、そのストラップを大空へ向かって投げつけた。
 その時、強い風が吹いてストラップを遥か彼方に連れ去った。
「時空の風……」
 なぜか私は、そうつぶやいた。
 そして、不思議な事に胸の痛みもいつの間にか消えていた。
 時空の風が心(キズ)を癒してくれたのかも知れない。
「かがみ……」
 不意に名前を呼ばれた私は、振り返る。
「遅い! 待ちくたびれちゃったじゃない」
 彼女の顔がヴァーミリオンに染まって眩しい。
「ごめん……」
「べ、別に謝る程の事でもないわよっ」
 そう言って、私は彼女に背を向ける。
 私は、HRの後も彼女が1人で教室にいたのを知っている。
 心の準備? そんな幼気(いたいけ)な彼女を想うと胸がキュンとなる。
 彼女は、そんな私のすぐ後ろまで歩み寄り、か細く心もとない声で……。
「返事……聞かせてくれるんだよね……?」
 私の脳裏には、彼女が自殺するあの瞬間がフラッシュバックしていた。
 あれが夢ではなく本当の未来だとすれば、どうする事も出来ないのか……。
 いや、こんな私でも1つだけ……たった1つだけ出来る事がある。

 ……それは、今の自分を信じる事。

 もしも、私が自分を信じて、今日を変える事が出来るのなら未来だって変わるはず。
 だからさ、受け止めてよ。私のこの心、想いを……。

 気づくと、私は彼女を抱きしめていた。
 そして、私は彼女の耳元で囁く……。

「好きだよ、こなた……」

 今、私は未来へ向かって歩き出す。
 こなたの全てを抱きしめて…………。

《了》


206:名無しさん@お腹いっぱい。
09/12/10 23:23:25 9UQURUxe
イイハナシダナ~
GJ!

207:名無しさん@お腹いっぱい。
09/12/11 01:19:22 Yfebb3Z4
乙!

208:名無しさん@お腹いっぱい。
09/12/11 08:35:53 5FHMjpE1


209:名無しさん@お腹いっぱい。
09/12/11 09:44:18 Sf/skwkR


210:名無しさん@お腹いっぱい。
09/12/11 12:57:01 N079qnAl
>>199
ブログでは取り上げられてないね、内容が内容だから
スレリンク(news4vip板)

211:師匠
09/12/11 18:28:25 l2VCp/2m
GJ、乙……私は、皆さんからその言葉が聞きたくて、これを書いたようなもの。
感無量とは、まさにこの事! 本当に書いて良かった。作者冥利に尽きます。
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。

212:名無しさん@お腹いっぱい。
09/12/11 22:16:31 EZa5a3Vk

まだこの スレ も 212 までしか存在しない・・・。 まだまだ時間はありますので、
これからも色々な作品の登場、 楽しみにしています。


 >>211 : 師匠

本当にお疲れ様でした。 とても面白いお話で良かったです。 銃関係に詳しいとは
なかなか素晴らしいご趣味をお持ちのようで・・・。 私も同じです。

次回作は Beretta M92FS の他にも様々な口径の銃も登場させて下さい。


213:名無しさん@お腹いっぱい。
09/12/12 09:45:24 9T27Rcf+
乙ー

214:名無しさん@お腹いっぱい。
09/12/13 00:25:45 F8PrRaPf
うにゃ

215:名無しさん@お腹いっぱい。
09/12/13 13:49:45 Ae6MFnPT
銃か

216:名無しさん@お腹いっぱい。
09/12/13 14:04:32 KHlAclts
>>210
横レスだがそれ俺も見てた
専ブラだからレスも全部残ってるよ
どっか指定してくれたらコピペするけど

217:死ね死ね団のテーマ
09/12/13 18:22:37 Opf5AViB
こう「今日は君のために名曲をうたってあげる」
「八坂さんと永森さんが私のために歌うなんて、さて聞くか(≡∀≡.)」
やまと、こう「死ね!死ね!死ね死ね死ね死ね、死んじまえ~♪」
やまと、こう「き~もいコナ虫やっつけろ~♪」
「酷いよ~ヽ(T皿T.)ノ」

「かがみ~ん、二年のくせに私のことを死ね死ねいうんだ(T皿T.)」
かがみ「・・・」
「うっうっうっ、かがみん、わたしたち親友だよね?助けてくれるよね(TωT.)」
かがみ「殺意で心を汚してしまえ!死ね!死ね!死ね死ね~♪」
「かがみんまで!」

「うわぁぁぁぁぁぁぁん!ヽ(T皿T.)ノあ、祐一くんに名雪ちゃん、かがみたちが
 いじめるんだよ~助けて~(TωT.)」
祐一、名雪「青虫共は邪魔っけだ!! 」
「祐一くんまで~ヽ(T皿T.)ノ」

「あれ?あれは伸恵たちだ?公園で何歌っているんだろう?(≡ω≡.)」
伸恵「きもいコナ虫ぶっ潰せ!」
美羽「死ね死ね死ね!」
千佳「死ね死ね死ね!」
アナ「死ね死ね死ね!」
茉莉「死ね死ね死ね!」
「伸恵たちまで・・・(TωT.)」

「あの軽トラに乗っているのはキョンだ・・・おーい!キョン!ヽ(≡ω≡.)」
DJ「次は、シブタクさんのリクエストでコナ虫への思いを込めた
   「コナ虫、死ね死ね団のテーマ」です」
キョン「おっベストチョイスキタコレ!この曲聴いていると、あのコナ虫は早く死んでほしいよな」
「もうまっすぐ家に帰ろう(TωT.)」

218:死ね死ね団のテーマ
09/12/13 18:23:33 Opf5AViB
「ただいまーヽ(≡ω≡.)ノ」
そうじろう「埼玉の地図から消しちまえ!死ね!死ね死ね死ね 死ね死ね死ね!」
「みんな酷いよ・・・そっか埼玉には私の居場所がないんだ・・・(TωT.)」

竜崎「どうやら、泉の野郎、秋葉原に向かっているようです」
兄沢「そうか、こっちは準備万端だ、いつでもあのキモゴミをあの世に送れる手はずは整った」
竜崎「わかりました。今からそっちに行きます」ピッ
大石「んっふっふ、やっと死ぬのですか、あいつには同人以下のみずの版ハルヒの単行本、七冊買わされ
   ましたからね、三万五千も無駄にお金を使われましたよ」
竜崎「僕なんか、この前、胸を蹴とばされた。まぁ、あいつにされたことは気にするなってことよ。
   僕なんて三万どころか毎月、三十万近くの金を使わされてましたよ。あいつのグッズやフィギュアの
   購入金にね。僕はこの日が来ることをまっていたんですよ」

「秋葉原・・・ここにいれば安心だ(≡ω≡.)」
凛「店長、泉の野郎が着やがりました」ザザー
兄沢「わかった、いつでも撃ち殺していいぞ」ザザー
凛「ああ、俺はコルトパイソンとパレットM2の手に入れをしておく、逃げてきたら教えてくれ」
「一生ここに住もう・・・それなら安心だ(≡ω≡.)」
兄沢「死ね!死ね!死ね死ね死ね死ね、死んじまえ~♪」
これを見ているお前ら「き~もいコナ虫やっつけろ~♪」
「ここもだ!ヽ(T皿T.)ノ」
ドゴ―ン
凛「チッ、当たったのはアホ毛だけか・・・ん、あのマセラティビトルボは・・・竜崎の車だ
  まてよ、面白いこと考えたぜ」
ドゴ―ンドゴ―ンドゴ―ン
「うっうわー(≡д≡.;) 」
キキードゴッグシャパギッ
大石「んっふっふ・・屑ゴミ野郎を引き殺してしまいましたよ」
竜崎「それは違います、泉の野郎は事故死したんじゃなくて自殺したんです」
大石「たしかに、そっちの方がいいですがね」

つかさ「エヘヘへ、ゆきちゃんが考えてくれた作戦でこなちゃん死んじゃったよ~」
みゆき「うふふふ、計画通りですね」
つかさ「のぶちゃんや竜崎さんや相沢君たちが協力してくれるのはみんな私のことが好きだからだよ~
    あれ・・・ゆきちゃん、何笑っているの?」
みゆき「いや、なんでもありません・・・(プププ、皆がつかささんのことが好きだから、今回の計画に
    参加したんじゃなくて、みんな、泉さん恨みがあるから、参加したんです。それをつかささんのため
    だなんて・・・笑わせやがる、ウププププ)」

めでたし めでたし

219:名無しさん@お腹いっぱい。
09/12/13 21:19:06 ATjdoj/v
Gewehr 22 だせや !!

220:名無しさん@お腹いっぱい。
09/12/14 00:49:21 1rF5OuGS
本物の神奈川は何処に行った?

221:名無しさん@お腹いっぱい。
09/12/14 08:42:00 zZ/vIXl/
読んで考えてみたんだが、もしも、伸恵やこう、竜崎、祐一とかは昔から
自殺スレのSSに登場していたら、かがみと同様、こなたの味方になっていた
かもしれない。

アニメ店長や大石は中立の立場をとりそうだが。

222:名無しさん@お腹いっぱい。
09/12/15 06:12:57 moBVWBOH
Jは死ね

223:名無しさん@お腹いっぱい。
09/12/17 04:58:17 8moDQ8RD
URLリンク(orz.2ch.io)
ワロタ

224:名無しさん@お腹いっぱい。
09/12/17 23:01:54 0hvrU91R
>>222

J ( ヨット ) って誰 ?

225:名無しさん@お腹いっぱい。
09/12/19 22:36:47 JB1QE0Cf
ブララグ×らき☆すた

こなた「私は、みさきちの馬鹿とは違う。
     かがみの妹がなんとかできるとは露とも思ってない。
     だから、何か面倒事が起きた場合、最後の頼りは自殺だけ」
かがみ「自殺じゃない。この期に及んでなんとかできるのは、つかさと…
     精々みゆきと峰岸だけよ」
こなた「ここで救済になるのは希望や愛じゃない。
     電車か手首か紐か………高い所だけだよ」
かがみ「あんたは自殺で、この状況をなんとかできると思ってるんだね?」
こなた「だったら何?アンフェタミンでも持ってくるべきだった?」
かがみ「…違うのよ、あんたはやっぱり…わかってない。
     ひとつ。もうこの局面じゃ、自殺は救いにならない。仮に死んで意識が消えたとしても。
     そして二つ目。私とあんたは、本当は同じものを見てない」
こなた「何を思い出すと思いや、下らない。
    自殺しようが這い蹲ってでも生きようが、私もかがみも、社会から見ればどうでもいい存在だ」
かがみ「そんなのは知ってるわよ。社会が変わったわけじゃない。
     変わったのは、つかさよ」
こなた「ふん、またつかさか。誰も彼もつかさつかさ、末おっそろしい女だよ、つかさは。
     ビッチになってれば、史上最強の売春婦になれたんじゃないの?」
かがみ「ああそう分かった。これ以上話してもしょうがない。あんたに話しても無駄だ」
こなた「吹くじゃん、かがみん。ツンデレのクセして、世の中がお花畑に見えて、デレて媚びる気になった?
     かがみが妹をエホバ呼ばわりするのは勝手だけど、
     つかさが黄金を捻り出せると思ったら大間違いだよ?」
かがみ「……そうかもね。もういいよ、話はおしまい。ひょっとしたらと思ったけど、
    あんたやっぱ、ただのバカだ」
こなた「ちょっと待ってよ。かがみんどういう」
かがみ「馬鹿に馬鹿って言って何が悪いのよ、この馬鹿。心底あほらしくなってきたわ。
     不毛だけど、最後に一つだけ、話相手になってあげる。
     世の中にお花畑があると思ってるのは私じゃない、本当は、あんたのほうだろ?」
こなた「……」
かがみ「自分だけがお花畑から追い出されてると思ってるから、
     なんでもかんでも嫉んで見るんだ。私が言いたかったのは、私とあんたの違いはそこだって事」
こなた「……」
かがみ「私はね、この世をお花畑とも糞溜めとも思ってない。この世はね、溝鼠みたいな灰色だ。
     良くも悪くも無いわ。 何でそんなにつかさを悪く言うか、私は分かる。
     言ってあげるわ、あんたはああいう人がこの世界に居るって事を認めたくないだけよ。
     どんな絶望的な状況下でも希望を決して捨てない人が居るって事、認めたくないだけよ。
     何故なら、嘘になるから。あんたが言う、絶望しかない世界がね」
こなた「ほうかい。じゃせいぜい、清く正しく希望を持って生きな。
    豚小屋の寝室でくたばった後には、天国が見つかるかもよ?
    かがみと仲良くするちょっとした理由も消えうせた事だ。つかさ共々、嘲られてな、お嬢ちゃん」
かがみ「あんたはそうやって、小馬鹿にするみたいによく笑うわね。その顔、鏡で見たことある?
     あんたの笑いは、まるで、死者の日の骸骨よ」
こなた「ハハ、ハハハハハ!
    ああそうさ、よく気付いたねえ、お嬢ちゃん。
    死者の国から遥遥と」
かがみ「っ」
こなた「うすっ暗い墳墓の底から、憤怒を担いでやってきたんだよ。
     私も、書き手も、アンチも、ロムも、みぃぃぃぃんな。
     だからよお嬢ちゃん、私達の死体処理で電車が遅れても許してくれよ、お嬢ちゃん。
     そしたらよ、こおんなアジアの極東で地に這い蹲って生きる予定の、
     哀れなお嬢ちゃんには、せめてチョコレートを備えてあげるから。
     かはっははははは」

226:名無しさん@お腹いっぱい。
09/12/19 23:04:17 8D9Y578o
そんなに言い争わなくても 800 m 先から目と目の間を狙撃してやるよ。

227:名無しさん@お腹いっぱい。
09/12/20 16:01:53 CJkpRh00
中尉は引退しました

228:名無しさん@お腹いっぱい。
09/12/20 19:35:34 3/9qYxSS
おいおい……

229:名無しさん@お腹いっぱい。
09/12/21 01:16:58 emz0iUiW
こなた「聖者は十字架に張付けられました」
かがみ「こなたは十進法を初めて知りました、っていうポーズにしか見えないわ」

230:名無しさん@お腹いっぱい。
09/12/21 09:53:49 r+v/bslW
寒いから自殺

231:名無しさん@お腹いっぱい。
09/12/21 19:20:00 0/IfQlST
最高値でベッド

232:名無しさん@お腹いっぱい。
09/12/21 21:13:59 fRFj0N5j
>>231

こなた はベッドの上で一体何をすると言うのかね ?


答え   Geschlecht


是非ドイツ語翻訳で意味を確かめてみてね ☆

233:グレゴリー
09/12/21 21:19:21 I/GboDCh
とりあえず、糞忙しいので、もうssの第一弾を投下したい。
クリスマスなんて糞くらえだし、挿絵も描いたがヤケクソになっちまった。
挿絵とssの二本立てがこれほど苦痛だとは。

*とりあえず、超激グロなので注意すべし

234:グレゴリー1
09/12/21 21:31:06 I/GboDCh
「男たちの復讐」

延々と続く人の列。灰色の囚人服に身を包んだそのどんよりとした行進は、まるで川の流れのようだ。
ここは東京都の外れにある港。

急造で作られたこの港は、まるでかつてそこにあったものを恐るべき規模で無理やり壊し、取り除き、平らにしたみたいだ。
船の接岸設備だけは立派で大規模であるものの、その周りはむき出しの岩肌と褐色の土が無機質な風景を作っていた。
そして途切れることなく続く囚人たちの行進。
ここで積み込まれた囚人たちの行き先はそれぞれ違っている。
あるものは強制労働に向かい、あるものは人体実験のドナーとして、あるものは未だにダッチワイフを
持たない男たちの肉便器として。

世界最古にして最大の秘密結社”女性”の一員として、男達を搾取し、利用し、ボロボロにしてきた
その罪を彼女たちは償わされようとしていた。
延々と続く女性たちの行進。その真ん中あたりに、彼女達を見下ろすように味気のないコンクリート製の建物があった。
行進が続く道の端にちょっとした丘があり、その上に2階建ての箱のような単純な形をしたビルが建っているのだ。
 
「グレゴリーの小屋」

その建物は恐怖をもってそう呼ばれていた。しかも、そう呼んでいるのは目の前を行進する女性たちではなく、
ここの施設を管理する側の男性の警備兵たちなのだ。

そして文字通り、グレゴリーの小屋には恐怖があった。
小屋の前を通るとき、まずはすさまじい匂いが鼻をつく。
これは明らかに人体の腐食した匂いだ。やがて蝿のたかった何かが目につく。
その何かは小屋の前で串刺しにされていたり、吊るされていたりしていた。
そして、目の前を通ってようやく分かるだろう。それが人間であるということに。
串刺しにされたそれは全身の皮を剥がされていた。どす黒さと赤さにまみれたその人型のプロポーションは
股間の秘部を串で貫かれ、まるで杭の上に座っているのかのような格好だった。
胸の膨らみと貫かれた秘部から見て、それは明らかに女性だった。

URLリンク(iup.2ch-library.com)

おどろくことにそれはまだ生きていた。目の前を足早に通り過ぎる灰色の群集に向かって、力なく同じ言葉をつぶやいている。

「水....水...」と

むき出しの歯茎を弱弱しく動かし、もはや瞼が無いゆえに閉じることができず、カラカラに乾いてしまった眼球を
虚空に漂わせながら、この赤黒い物体は生かされ晒し者にされていた。

その恐怖の小屋の中。

こなたは人類統治機構軍の真新しい制服に身を包み、コンクリートの段差の上に腰掛けてリンゴを齧っていた。

URLリンク(iup.2ch-library.com)

目の前のグレゴリーは、両手両足を縛られ、フックに掛けられた中年女性に話かけている。
本来は人類統治機構軍の輝かしき上級士官として、ピカピカの制服に身を包まなければいけないのだが、
彼はまるで肉屋の親父のような格好だ。ビニール製の前かけと長靴。
それは血でまみれており、両手にノコギリと包丁を持っている。
グレゴリーの小屋の中ではすでに日常的な光景。

人類統治機構が設立され、男性の勝利が明らかになった頃、グレゴリーは九州から東京にやってきた。
傍らにこなたを連れて..
彼にはあまりにも強力な後援者が居た。
いまや、先進国の首相や大統領よりもはるかに強い権力を持った、かつてのダッチワイフ会社の社長と技術者。
この2人による推薦で、グレゴリーはこの小屋の主人となった。


235:グレゴリー2
09/12/21 21:33:09 I/GboDCh
彼の仕事は、名目上は最後の防波堤だ。かつて、世界最古にして最大の秘密結社”女性”の主要構成員たちは
裁判によって即座に処刑されていた。この港に運ばれる囚人たちは比較的軽罪の一般女性であるものの、
もしかしたら身分を隠したかつての主要構成員が裁判を逃れ、紛れ込んでいるかもしれない。
それを発見して処分するのがグレゴリーの仕事だった。
だが皆、分かっていることだった。グレゴリーは何の根拠も取り調べもなく、単に気分で女性を選び、気ままに
小屋の中で残虐行為にふけっているということを。
しかし、楽しんでいるのはグレゴリーだけではなく、こなたも心から楽しんでいた。
リンゴを齧るこなたの前で、グレゴリーは吊り下げられた女性に何やら話かけている。グレゴリーは不意に
横の壁に向かって指差した。壁には2人の若い女性が磔のような格好でつなぎとめられていた。

「この二人はお前の娘だな。見るからにヤリマンのビッチだなおい」

吊り下げられた中年女性と、壁に磔にされた若い女性の3人は、もはや恐怖で何も答えることができなかった。
グレゴリーは後ろのこなたに向かって楽しげに話しかける。

「おーい、こなた。ヤリマンの中古ビッチのガバマンに何を入れたら満足すると思う?」

こなたは食べかけのリンゴをポイっと地面に捨てると、しばらく口をもごもごして咀嚼していたが、リンゴを飲み込むと
人差し指をアゴに当て、上に視線を彷徨わせながら迷っていた。

「うーん、ドリルは前にやったし、焼いた鉄棒もやったしなー。そういえば、おなかすいちゃったんだけど。
 リンゴだけじゃ足りないよ」

グレゴリーは無邪気なこなたの仕草に愛おしい視線を向けていたが、こなたの空腹に気がつかなかった自分に気がついた。
そういえば、昼飯も抜きで没頭してしまっていた。なんてことだ!

「ごめんな、こなた。俺も何か食べたいわ。んじゃあ、こいつらを食べるか」

グレゴリーの言葉にこなたは歓声をあげた。

「わーい!!肝臓と脳みそは私に残しておいてよ!それと、こいつら、中絶経験が絶対にあると思うから
子宮はNGね。中絶経験者の子宮ってなんか腐った匂いがするんだよね」

こなたの言葉にグレゴリーは肩をすくめた。

「こんなヤリマン中古ビッチの子宮なんて何人殺してるか分からないからな。そうだ!この母親にこいつらの子宮を食べさせよう。
 この母親の目の前で、ヤリマン娘たちを解体して、母親は出来るだけ長生きさせてやろうぜ!食料の娘たちが尽きるまでな」

二人はまるで子供のように無邪気にはしゃいでいた。
気絶しないように、意識を保つために注射を打った後、グレゴリーは壁に繋がれたヤリマン娘の解体を行った。
もう手馴れたものだ。熟練調理人のように、できるだけ死に至らしめないように人体を解体する方法をグレゴリーは
体得していた。腹を包丁で引き裂いたとき、勢いよく噴出する腸とともに飛び散った血が、後ろのこなたにかからなかったか
心配して振り向いた。しかし、すでにこなたは積んであった木箱の後ろに避難済みだった。
(ほんとうに俺達って一心同体だな。息がピタリと合ってる。ダッチワイフの性能がこれほどとはな)
グレゴリーは目の前の愛おしいダッチワイフ、軍服に身を包んだクールな表情の青い長髪の小柄な少女の姿を見つめた。
人類統治機構の軍服は皮肉にも、前世紀に世界を震撼させたナチス.ドイツのSSの軍服に酷似していた。
そのクールで機械的で迷いのないデザインの軍服は、同じくクールで機械的で迷いのないこなたの表情とあまりにも
ベストマッチしていた。見つめるたびに恋に落ちるその愛おしい少女を作ってくれた、かつてのダッチワイフ会社に
対する感謝と忠誠は尽きることがないだろう。これは全世界のダッチワイフを所有する男たち全員が思っている。
だが、こなただけは特別なのだ。あらゆる意味で。
もはや雲の上の人となってしまった、かつてのダッチワイフ会社の社長と技術者と、グレゴリーを
結びつける永遠の絆のような存在なのだ。
人類が、世界最古にして最大の秘密結社”女性”からの支配を逃れることになったとある事件の永遠の記念碑のような
存在でもある。

236:グレゴリー3
09/12/21 21:34:38 I/GboDCh
それに、こなたはほとんど初期ロットのダッチワイフくらいに古い。しかし、次々とバージョンアップしていく
最新型のダッチワイフ以上の性能を、こなたは持っているに違いないのだ。
こなたがグレゴリーのために特別に作られたダッチワイフであるのは間違いないだろう。
もちろん、旧式のダッチワイフは拡張という形で最新型の性能を手に入れるのは容易なことなのだが
こなたはまだ一度も拡張したことはなかった。

「さてと、食事も終わったし、次の獲物を狩りに行くとするか」

グレゴリーは拳銃のぶら下がったベルトを締め、軍服の上着を羽織った。
テーブルの椅子の背もたれにダラリと身を落ち着け、ピカピカのブーツをテーブルの淵に投げ出したこなたは、
蟹股で外へ向かうグレゴリーに対して敬礼した。

「御武運を!...クックック」

そのまま上機嫌にグラスのウイスキーを喉に流し込むのだった。
小屋の外に出たグレゴリーは大きく伸びをした。周りは無機質な茶色の荒地。ちらりと横を向くと、串刺しにされた
皮剥ぎ女が首をうなだれピクリとも動かなくなっていた。今度はあの母親を串に刺しておくか。
そして眼下の尽きること無い灰色の流れを見渡す。囚人たちはふいに小屋から現れた、人類統治機構軍の
将校に気がつくと、あからさまな早足になった。どんどん小屋の前の行進に混乱が生じてくる。
いまやグレゴリーの小屋の前はパニックだった。押しつぶされる者、それらを踏み越えて走り去ろうとする者。
グレゴリーはベルトのホルスターから拳銃を取り出すと、空に向けて一発撃った。
ふいに、遠くの物見やぐらや警備兵の詰め所からも同時に銃声が響く。長い行進はピタリと止まった。
グレゴリーの目の前の囚人たちは、ピクリとも動かずに顔をうなだれ視線を下に向けている。
流れの止まった灰色の群集の元にグレゴリーは降りていく。下を向いたまま小刻みに震える囚人たちをしばらく
眺め回すと、グレゴリーは目の前の1人の腕をつかみそのまま横に投げ出した。そして目の前の囚人たちを
どんどん同じように跳ね除けながら、列の中にズンズンと入り込んでいく。
やがてグレゴリーは立ち止まった。目の前には3人の囚人が寄せ合うように身をちぢこませながら下を向いている。
見たところ、まだ20前後の若い娘たちだ。
背の高い女と地味なメガネ女にはさまれるようにして両脇の二人よりもずっと年下に見える女がいた。
グレゴリーは手を伸ばすと、その女の赤い髪を乱暴につかんだ。うつむくその顔をむりやりあげる。
囚人服の胸元には「肉便器」と書いてあった。ニヤリと笑うと、髪をつかんだまま引きずり出そうとした。
ふと、なにか強い力に阻まれたのを感じた。僭越にも背の高い女が、グレゴリーの間に割って入り、
必死で小柄で赤い髪の女を押さえつけている。

「待ってください、私達は裁判を終え、すでに刑が決まったのです。今からそれぞれの服務地へと向かう途中なのに..」

背の高い女の囚人服の胸元には「ドナー」と書かれていた。人体実験や臓器提供のドナーには、身体的に優秀な囚人が選ばれ
それなりに貴重な存在ではある。だが、そんなことは関係なかった。
グレゴリーは心底うんざりしたようなめんどくさそうな表情をすると、ホルスターから再び拳銃を取り出し、
そのまま銃口を女の頭部に向け引き金を引いた。
乾いた銃声とともに、女の額にぽっかりと9ミリの穴が空いた。銃弾は頭部を貫通することなく、頭の内部に留まり
中の脳をめちゃくちゃにした。額の穴から血と内容物を撒き散らし、撃たれた女の体はまるで糸が切れた人形のように
ぐにゃりと地面に崩れ落ちた。
赤い髪の小柄な女は、悲鳴を上げると倒れた女の元にひざまずき絶叫した。

「みなみちゃん!そんな!!みなみちゃ」

しかし、その叫びは、伸びてきた手が乱暴に髪をつかんで引っ張りあげたことで中断された。
グレゴリーは再び、赤い髪をつかむと無理やり立たせた。そして、そばに居る地味なメガネの女に死体を端に持っていくように
命令し、そのまま引きずっていった。
グレゴリーが赤い髪の女を引きずって小屋に入っていった後、地味なメガネの女は無表情で、倒れた死体を道の端に持っていった。
その胸元には「腐女子」と書かれていた。

237:グレゴリー4
09/12/21 21:35:56 I/GboDCh
グラスに注いだスコッチウイスキーを飲み干す頃、グレゴリーは帰ってきた。
こなたは振り向くと、グレゴリーの手は小柄な女の赤い髪を引っ掴んでいた。

「おお、我が姫よ!!退屈召されたか!!!だが、これからはじまる阿鼻叫喚空前絶後のショータイムをご覧あれ!」

グレゴリーは大げさな身振りで両手を広げこなたに一礼すると、赤い髪の小柄な女を後ろから蹴り飛ばした。

こなたはぼんやりと、目の前の血と臓器でまみれた床に転げ落ちていくその女を見つめた。
ヌメヌメとした床に無様に倒れた女は反射的にヨロヨロと起き上がろうとする。涙と泥にまみれたその顔をこなたは注視していた。
女はキョロキョロとあたりを見回すような動作をしているが、もはや涙で曇ったその目に映った風景はぼんやりと霞んでいるだろう。
こなたは女の顔から目を離すことができなくなった。こなたの体は小刻みに震え始めた.....
そして、不意にこなたはすべてを思い出したのだった。 

...私の名は泉こなた....

この世に生まれてまだ5年程度しかたっていないはずのこなたに、泉こなたとしての17年の記憶が舞い込んできたのだった。

///////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////

....私の名は泉こなた...
.....私の目の前には、懐かしいゆうちゃんがいた。身長と体格はあまり変化がないみたいだ。
小早川ゆたか。年下の従姉妹だけれども、姉妹のいない自分にとっては妹と言ってよかった。
もう20歳くらいになるのかな? かわいそうに、ひどく怯えて絶望している。
なんでこんな世界になっちゃったんだろう。
私の中には、あの、ダッチワイフ工場で自爆した瞬間がまるでついさっきのことのように思い出せる。
それと同時に、ダッチワイフとして生み出されてからの5年間の記憶もある。
なんてひどいことをやらされてきたんだろう。なんてひどいことをやってきたんだ。
私は壁に立てかけてあった鉄パイプを手にもった。グレゴリーはゆうちゃんの手を縛り、天井のフックに引っ掛けようとしている。
やめろ!汚らわしい手でゆうちゃんを触るな! 
わたしは制御できない怒りとともにグレゴリーの背後に回り鉄パイプを振り上げた。
そのまま思い切り鉄パイプを振り下げる。ゴツンとした手ごたえを共にグレゴリーは崩れ落ちる。
その後は怒りにまかせてめちゃくちゃにその物体を殴り続けた。私は足元に転がっている鋭利な刃物のような道具を
拾って、今度はその物体を滅多切りにする。グレゴリーは赤くまみれたボロ雑巾のようになった。確実に死んだだろう。

手を縛られたゆうちゃんは床に倒れていた。急いで駆け寄ってゆうちゃんの体を抱きかかえる。どうやら失神しているみたいだ。
私はゆうちゃんを抱きかかえて自分の部屋に向かった。これからのことを考えなければならない。
バスルームでゆうちゃんの身体を洗い流した後、私はゆうちゃんをそっとベッドに寝かせた。
まだ意識は朦朧としている。ゆうちゃんの頭を優しくなでて、私はグレゴリーの残骸を片付けに行く。
大部屋の端のロッカーにそのボロ雑巾のような肉の塊を押し込んだ。

ふと壁を見ると、瀕死の母親が壁に磔にされ放置されていた。私はナイフを取ると、うなだれている母親の顔を持ち上げ、
その首をナイフで速やかに切り裂いた。「ぷひゅー」と空気を漏らすような声を立てるとそのまま静かに絶命した。
私が出来る精一杯の慈悲だ。
自分の部屋に戻り、血で汚れた制服を脱ぎ捨てたとき、
ゆうちゃんは目を覚ました。わたしは急いでゆうちゃんの元に駆け寄ると、その上半身をしっかりと抱きしめた。

238:グレゴリー5
09/12/21 21:38:16 I/GboDCh
「こなた...おねえちゃん。あれ?こなたおねえちゃん...なんで」
ゆうちゃんの言葉に私は涙を流した。とめどなく流れて頬を伝う。
「ごめんね、ゆうちゃん。私があんなことをしなければ、私が世界を変える気にならなければ」
「こなたおねえちゃん、どうしてここに?」
ゆうちゃんの質問にどう答えたらいいのだろう?私自身、分からない。
「私にも分からないんだ。私は5年前からダッチワイフだった。でも、ついさっき、思い出したんだよ。
 私の名前は泉こなた。ゆうちゃんの従姉妹だよ」
私はゆうちゃんの身体を離した。その顔は不思議そうに私を見ていた。
そして、彼女の顔に刻まれた恐怖と疲労と絶望....なんていたたまれない!
私はゆうちゃんをしっかりと見つめて決意する。
「ゆうちゃん。あなただけは私が守る。絶対に!だから私についてきて」
まずはここを脱出して助けを求めに行こう。私はダッチワイフの記憶をたどっていく。数日前の軍事ニュースを思い出し
私は行く先を決めた。洗った囚人服を急速乾燥機で乾かすと、ゆうちゃんに服を着るようにうながす。
私は小屋を出て関門ゲートのほうに向かう。ゲートの警備兵たちは私達の姿に気がついた。
彼等はビシッと姿勢を正すと、指揮官である軍曹が前に進みでてくる。私はちらりと周りを見渡した。
開いたゲートの下を、灰色の囚人たちが延々と列を成している。ゲートの脇は土嚢が積み上げられた機関銃陣地と
高い物見やぐらがある。別に見慣れた風景だ。警備兵たちも顔なじみだし。
軍曹は私の前に進み出てくると、大業なしぐさで敬礼を決めた。
「ご苦労であります、大尉どの!後ろの囚人は一体?」
私の後ろのゆうちゃんは顔をうつむかせ、その身体は小さく震えていた。
私は手を後ろに組み慄然と軍曹に命令を下した。
「軍曹、車を一台用意しなさい。私は今から、この囚人を連れて行く。グレゴリー中佐の命令で、
この囚人は特別人体実験のドナーとして、研究所本部に連行されることになった」
軍曹は答えた。
「了解しました!運転手と護衛兵つきのジープをすぐに用意させます」
「いや、運転手と護衛兵はいらない。私が自らこの囚人を連れて行く」
「しかし、こなた大尉!囚人の護送は護衛兵と合わせて最低2人で行う規則です...」
とまどう軍曹に私はあくまで冷静に返した。人類統治機構軍大尉らしく、冷たい機械的な目で
彼を見つめ、淡々と話すことを心がける。
「その規則は私のような特別任務に就任しているダッチワイフには適応されない。
 心配しなくとも、この囚人は脱走する危険はないのだ。
 グレゴリー中佐がそうさせた。運転手と護衛兵なしのジープを一台手配したまえ」
私の説明に軍曹は従った。彼等にとって私とグレゴリーは特別なのだ。「グレゴリーの小屋」は
この施設の司令官の権限すら及ばない、独立した部署なのである。
私達が何を行っていようと、彼等は追求するつもりはないのだろう。
車が来る間、私は目の前の警備兵達を見つめた。ふと、彼等の1人と目が合った。彼はにやりと愛想笑いを浮かべた。
彼らの被っている鉄兜は、頭頂に男性のペニスをかたどった飾りが突き出ている。
一台のジープがやってきた。運転手は降り、私はゆうちゃんを後ろに座らせ、運転席に乗る。
去り際に、軍曹に言っておく。
「グレゴリー中佐は、これからしばらくお取り込みになる。数週間ほど建物に篭りっきりになるかもしれない。
 邪魔はしてくれないように。私も、研究所に用があるのでしばらくは帰ってこないだろう。
 それでは、しっかりとな」
「了解しました、大尉どの!」
軍曹は大声で答えると、その他大勢の警備兵とともに、カチリと軍靴を合わせ敬礼した。


次ページ
最新レス表示
レスジャンプ
類似スレ一覧
スレッドの検索
話題のニュース
おまかせリスト
オプション
しおりを挟む
スレッドに書込
スレッドの一覧
暇つぶし2ch