【けいおん!】唯×梓スレ 3at ANICHARA2
【けいおん!】唯×梓スレ 3 - 暇つぶし2ch800:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/24 15:50:54 46uSR2UX
キスでもダメとかきびしすぎじゃね

801:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/24 15:57:47 fg1gI3h8
公式はハグくらいに留めて欲しい
そのほうが妄想が広がる

802:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/24 16:22:25 JKjGWdQk
>>779
を読んだら
>>772
俺が書いたのが、しょぼいなと余計思えてきたな・・・

803:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/24 16:25:49 lmZjagai
あんまりSS作者が自己主張すると叩かれっぞー気をつけろー

804:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/24 17:17:25 Dex+Do9c
色々なことを考えたら公式でキスはしないほうがいいだろうな
それでも頬くらいになら…と期待してしまうw

>>802
別に比べることもないんじゃない?
続きがあるなら読みたいと思うよ

805:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/24 17:32:16 46uSR2UX
公式での話だったらキスはないなぁ…
二人とも同意の上でのハグとか?

806:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/24 17:47:36 lmZjagai
あずにゃんの方からハグだろ

807:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/24 18:43:50 H3/R6c6L
あずにゃんが恋人マフラーを巻こうとするけど
唯の背が高すぎて必死に背伸び
唯がそれを見て抱きつきながら巻いてと言う

まで俺のテンプレ

808:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/25 01:51:32 bJilL96c
あずにゃんが恋人マフラーを巻こうとするけど
唯の背が高すぎて必死にヒザかっくん
唯がそれを見て巻きつけながら抱いてと言う

までが新たなるテンプレ

809:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/25 02:12:32 F8LHccYb
梓「唯先輩、こないだギターの練習に付き合ってほしいって言ってましたよね」
唯「うん、なかなかできないとこがあるのー」
梓「…じゃあ今日、私の家でどうですか?今日は親が帰るの遅いし、ゆっくり練習できますよ」
唯「ホント!?行く行くー♪」

唯先輩と二人きりでギターの練習…それも私の家で。私は頬がゆるみそうになるのを必死にこらえる。

梓「あの、何時ごろまでいられるんですか?」
唯「うーんと…」
律「ゆーいー♪帰りに皆でお茶してくんだけど、お前も来るよな?」
唯「え!お茶?」
梓「な、ちょっと待ってください!唯先輩は今日私の家でギターの練習するんです!」
律「そんなのいつでもできるだろー?今日はケーキが割引なんだよ!」
梓「でも唯先輩はやる気出してるんです!それを邪魔するなんてやめてください!」
律「いいからいいから、ほら唯、行くぞー」
唯「うお…!」
梓「ダメです!さあ唯先輩、私の家に行きますよ!」
唯「うあ…」
律「離せ梓!唯はケーキを食べるんだ!」
梓「律先輩こそ離してください!唯先輩はギターの練習するんです!」
唯「い、いたい…」


澪「…ムギ、あいつらは何を遊んでるんだ?」
紬「うふふ…うふふふ…」

810:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/25 02:15:58 F8LHccYb
すったもんだの末、なんとか私と唯先輩は律先輩たちと別れ、私の家へとやってきた。

唯「はぁ…ケーキ食べたかったなぁ…」
梓「お菓子ならありますよ。…それともなんですか、律先輩と一緒にいたかったんですか?」
唯「そ、そういうわけじゃ…きゃっ!」

私は唯先輩をソファーに押し倒すと、覆い被さるようにして先輩に顔を近づける。

唯「あず…にゃん?」
梓「私言いましたよね、浮気は許さないって」
唯「う、浮気なんて…しないよ」
梓「どうだか…お菓子に釣られてほいほいついていっちゃいそうです」
唯「ほ、ホントにしないよ!」
梓「信用できません…なので、二度と私以外の子に目がいかないようにしてあげます」

私は唯先輩の顔を両手で挟むようにして、さらに顔を近づけた。
そうすると、唯先輩の吐息と鼓動が徐々に速まるのが手に取るように分かる。

唯「あ…あず…」
梓「ふふ…こんなにドキドキしちゃって…唯先輩、かわいいですね」
唯「うぅ…」
梓「いつもキスする時は唯先輩からでしたね…どうですか?こんな風にされる気分は」
唯「どうって…」
梓「ドキドキします?それとも嬉しい?」
唯「りょ、両方…かな…」
梓「そうですか…じゃあ…」

811:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/25 02:22:56 F8LHccYb
唯「ねぇ、あずにゃ…!!」

私は唯先輩の言葉を遮るように、唇を重ねる。重なる胸を通して、先輩の鼓動が最高潮に速まるのが分かった。

梓「…ぷは」
唯「……」

十数秒後、先輩の唇から自分の唇を離すと、唾液が糸を引いた。なんだかとてもいやらしい感じだ。
唯先輩はというと、顔を真っ赤にしてうつむいている。

梓「ふふ、なんだか新鮮ですね」
唯「…うん」
梓「唯先輩、もう私以外の子にたぶらかされないって誓えますか?」
唯「…うん」
梓「ならいいんです。さ、お菓子でも食べて、ギターの練習始めますよ」
唯「…やだ」
梓「え…?」

次の瞬間、唯先輩は信じられない力で私を押し退けた。たちまち、私と立場が逆になる。

梓「なっ…?」
唯「あずにゃん…ごめんね。ちょっとでもりっちゃんの方に気持ちがいっちゃって。
 でももう大丈夫。私あずにゃんしか見えないや」
梓「ちょ…唯先輩?目が変です!」
唯「だから…あずにゃんにも、私以外の子に目がいかないように証明してもらわなきゃね」
梓「な、ちょ…や、やめ…」
唯「あずにゃん、大好きだよ♪」
梓「……!!」


―結局その日、私たちはギターに触れることはなかった。

おわり

812:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/25 02:24:51 F8LHccYb
以上です
テンションが上がって書きました

813:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/25 02:59:16 OO8eO2am
>>812
あなたのおかげで唯梓は最強だと証明されました

814:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/25 04:16:02 T8AMol10
>>812
GJすぎる

815:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/25 04:38:32 KdL0Pzu1
唯ちゃんはこうでなくっちゃね*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:*・゜゚・* !!!!!

816:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/25 08:18:38 PDUlXSkD
練習しろってばw

817:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/25 11:09:39 FQ+2nZdP
>>816
次の朝、梓が目を覚ますと、真剣な顔してギターの練習している唯がいて
やがて梓が起きたことに気がついた唯は、
「おはようあずにゃん。ごめんね、起こしちゃった?」
とか言って、にこりと笑ったりして。
そんな唯に惚れ直すエピソードとかが待ってるんですよ、きっとw

818:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/25 12:59:00 yf3nEDAj
>>812
電車の中でニヤニヤしちまったじゃねぇか!

GJ!!

819:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/25 20:58:57 5zn27uUq
>>817
惚れ直したところで、
唯「ところでCってどうやって押さえるんだっけ?」
だな

820:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/25 23:15:15 eJ2NKTrr
ニューヨークポリスデパートメントはいらねんだYO!

821:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/25 23:16:21 eJ2NKTrr
誤爆しました

822:1
09/10/25 23:53:35 qKx1TgOa
梓「唯先輩、また変なTシャツ増えましたね…ニューヨークポリスデパートメントってまた際立って意味不明なものを…」
唯「な、なんか響きがカッコ良かったから、つい…」
梓「そんな唯先輩の為にこんなものを買ってきました」
唯「お、Tシャツだ…。なんかアフロの人がプリントしてあるよ?」
梓「ジミ・ヘンドリックスっていう、言ってみればギターの神様です」
唯「私たちの大先輩なんだねっ」
梓「せ、先輩だなんて恐れ多い…」
唯「これからはジミちゃん先輩って呼ぶよっ!」
梓「やめましょうよ、大昔の芸人さんみたいなニックネーム…この人がさわ子先生お得意の歯ギターの元祖なんですよ?」
唯「じゃあ、余計にジミちゃん先輩だね」
梓「だからよしましょうって」
唯「え~、可愛いのにぃ―って、あり?」

823:2
09/10/26 00:03:23 qKx1TgOa
唯「あずにゃんあずにゃん、このジミちゃんTシャツ、同じのが二着あるよ?」
梓「はい、このうち一着を唯先輩に着てもらって、残りを私が預かって…」
唯「…あっ、もしかして、あずにゃん、これって!」
梓「は、はい。ペアルック…です。律先輩と澪先輩に対抗してみました」
唯「合宿のとき、ふたりしてペアルックだったもんね~」
梓「えと…よ、よかったですか? 私とペアルックで…」
唯「もっっっちろん!嬉しいよ、あずにゃん」ぎゅ~
梓「喜んでもらえて嬉しいです」照れ照れ
唯「よぉ~し、じゃあ張り切って練習しよっか!」
梓「珍しくやる気出てますね」
唯「どうせならジミちゃん先輩に負けないくらい上手くなりたいもんねっ!CD聴いてことないけど」
梓「今度、CD持ってきますよ。…うん、目標は高く! やってまりましょう、唯先輩っ」
唯「ふたりで神様に挑戦しよ~っ、おーっ!」ジミちゃん先輩に負けないくらいにねっ

824:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/26 02:04:13 iqE/5L7V
素晴らしいじゃない

825:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/26 03:01:40 vb2DVGtN
キ~ンコ~ン…

待ちかねていた放課のチャイムが鳴ると同時に、私は荷物をまとめて教室を飛び出す。走って向かう先は、もちろん部室だ。

部室に着くと、ドアの前に立ってその人がやってくるのを待つ。他の先輩たちは今週掃除当番らしいから、一人でくるはずだ。

唯「あるふぁるふぁ~♪」

ほどなくして、階段を上がる唯先輩の鼻歌が聞こえてきた。私は高鳴る鼓動を抑えながら、今か今かとそのタイミングを伺う。…よし、今だ!

ガチャ

唯「こん…」
梓「唯先輩!こんにちはっ!」
唯「わぁっ!」

私は部室に入ってきた唯先輩に勢いよく抱きつく。先輩は驚きつつも、しっかりと私を受け止めてくれる。

唯「あずにゃん!?びっくりしたぁー」
梓「ふふ、遅いですよ先輩!待ちくたびれちゃいました」
唯「えー?まだチャイム鳴って5分しか経ってないよ?」
梓「5分も経ったんです!私はチャイム鳴ってから1分で来たんですよ?」
唯「はやっ!すごいねあずにゃん!」
梓「当たり前です!唯先輩に一刻も早く会いたかったんですから♪」

私は唯先輩に力いっぱい抱きついて、その胸に顔を押し付けた。鼻に甘い匂いがいっぱいに広がって、とても幸せな気分になる。

826:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/26 03:06:59 vb2DVGtN
唯「ふふ、あずにゃんくすぐったいよ~♪」
梓「そうですか?私は柔らかくていい匂いがして、すごく気持ちいいです」
唯「それはあずにゃんだけでしょー?もー」

唯先輩は私の頭をポンポンと叩くと、椅子の方へ向かった。まだまだ、こんな程度じゃ終わらないんだから…

唯「よっこらしょっ…あずにゃん、皆が来るまでのんびりしてよう?」
梓「そうですね、のんびりしてましょうか…」
唯「あずにゃん?なに…?」
梓「唯先輩、失礼します」
唯「えっ…?あ、ちょ!」

私は椅子に座る唯先輩の膝の上に、静かに腰を掛けた。

梓「ふふふ、こうすると視線が高くなりますね。なんだか新鮮です」
唯「あ、あずにゃん?ちょっと…」
梓「あ!これじゃあ唯先輩が見えませんね。逆に向かなきゃ」
唯「ぎゃ、逆?あずにゃん、それは…」

問答無用で、私は逆側、つまり唯先輩に向き合って、跨がるようにして座る。
その時、私の素肌の太ももと先輩の黒タイツの太ももが擦れて、なんともいえない感覚に襲われる。
私は唯先輩を優しく抱き締めて、その耳元に問いかけた。

梓「唯先輩…今の、気持ちよかった?」
唯「う…うん…」
梓「じゃあ…もっとしてあげよっか。こんな風に」

827:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/26 03:13:34 vb2DVGtN
私は、唯先輩の太ももにゆっくりと手を這わす。すると、先輩は小さな喘ぎ声を発した。

唯「あっ…」
梓「唯先輩、ここが弱いんですね。また一つ、新発見です」
唯「も、もう…」

それにしても…唯先輩に股がって抱きついているこの状況、誰かに見つかったらと思うと、相当スリリングだ。

唯「ねえあずにゃん、そろそろやめないと、皆が…」
梓「いいじゃないですか見られたって。それとも、見られたくないようなやましい関係なんですか?私たち」
唯「そうじゃ…ないけど…」
梓「じゃあ、まだまだやめません。それに私、こういう状況の方が燃えるんですよね」
唯「も、燃えるって?」
梓「あ、今エッチなこと想像しましたね?」
唯「し、してないもん!」
梓「顔真っ赤ですよ?そういう反応するってことは、したんですね」
唯「う、うぅ…」
梓「じゃあお望み通り、してあげちゃおうかな?なーんて」
唯「あ、あずにゃんこそエッチじゃん!」
梓「そんなことないもーん♪」
唯「もー、ばか!」


おわり

ちなみに、その後律先輩たちはいつもより30分ほど遅れて部活にやってきました。

828:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/26 03:15:18 vb2DVGtN
以上です
本日も真夜中の投下失礼しました

829:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/26 03:39:22 s9FFbTt1
これはけしからんw
GJ!

830:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/26 03:41:09 osNKoRvI
眠れなくなっちゃったじゃないか・・・GJ
部活が終わったら唯か梓ん家で
続きが始まるんですね

831:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/26 04:31:23 vCony/n4
>>794
URLリンク(nagamochi.info)
ペプシあずさ味と聞いて
汚くてすまん


832:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/26 09:19:17 MiZumZKK
>>831
素晴らしいとしか言いようがないw 甘すぎるぜ

833:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/26 13:19:46 4HY5k3e7
みんなGJ!
最後のコマ、律が悟りを開いてるw

834:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/26 13:38:44 gNIuFzjj
>>831
おま・・・
俺の脳内ほぼそのまま再現してくれやがって
GJと言わざるを得ないぜ

835:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/26 14:33:02 GdjBkw2A
一文字違いじゃなくて二文字違い・・・
なんていらんツッコミ入れたらもう描いてくれないかもしれないので言わない

836:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/26 16:20:03 vCony/n4
>>835
うわぁあああああ今気付いた俺恥ずかしすぎるwwwwwwww
寝起きの頭で描くもんじゃないwwwちょっと頭冷やしてくるwwwww

837:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/26 16:50:30 osNKoRvI
>>835
バカヤロー気づいてたけど黙ってたのにww

>>836
どんまい
気にすんな

838:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/26 17:35:29 h9LAynfN
>>827
おいもっと続き書いてくれ!!お願いします!!



839:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/26 20:07:59 K4U+Ao4k
>>831
お前は素晴らしい、胸を張って生きろ
二文字違いなど気にするな

840:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/27 03:15:13 OGilvgkU
ちょっと長いので、投下するか迷ったのですが、折角なので。
今月号のラストを見て思いついたネタです。
次の号が出る前に終わってよかった…
またタイトルが思いつかない…適当にやくそくゆいあずとかで。
多分、10レスくらいです。

841:やくそくゆいあず1
09/10/27 03:18:06 OGilvgkU
小さなため息の音。
今日何度も耳にしたそれが、自分のものだと気付き、私は再び、今度は大きくため息をついた。
考えてみれば当たり前のこと。今この部屋の中で生まれる音は、そのほとんどが私発祥のもの。
何故なら、今ここにいるのは私だけなんだから。
抱えていたギターを脇に下ろし、腰掛けていたソファーの背もたれに背中を預け、天井を仰ぐ。
しばらくその姿勢を続けた後、身を起こし、自らのギターに目を落とした。
ずっと一緒だった私の相棒。普段は無口だけど、爪弾けばすぐに応えてくれる。
練習して上達すれば、それをちゃんと教えてくれて、それが嬉しくて私はずっと弾き続けてきた。
今もそう。ずっと練習していたフレーズ、それをようやく弾きこなせるようになった私に、また新しい音を響かせてくれた。
いつもの私なら、それに満足げな笑みを浮かべていたはずなのに。
今の私はそうじゃない。とても、そうとはいえない。仮にそうだと強がって見せても、それはすぐ自己否定に遮られてしまうだろう。
ううん、満足感も嬉しさも確かにある。ただ、それより強い何かが自分の中に居座ってて、その邪魔をしているだけなんだ。
ああ、昔の私ならこんなの全然平気だったのに。平気だって笑っていられたのに。
「寂しい、か」
呟く。本当にそのまま。その言葉が今の私の全て。
1人で練習することが、じゃない。それだけなら、普段の殆どがそれに当てはまる。
でもそれは、本当は1人じゃない。皆と演奏をするための単独練習。だから、その先には皆がいるから、1人じゃない。
だけど今は、いつもなら皆と一緒にいる時間。その空間に今、1人でいるということ。
本当なら、やるなあってドラムの向こうで笑いかけてくれる人がいて。
こちらもうかうかしてられないななんて微笑を浮かべて見せる人がいて。
それまでの私の努力を労う様な優しいまなざしを向けてくれる人がいて。
そして、すごいねあずにゃんって自分のことのように喜んでくれる人が隣にいるはずなのに。
だけど今は私1人。目を閉じればすぐ傍にあるように浮かんでくる光景は、どこを探しても見つからない。
ただ、がらんとした、こんなに大きかったのかと疑問を抱いてしまうほど広く感じる音楽室の風景だけが視界を埋め尽くしている。
それは本当に、もうどうしようもないほどの寂しさをこの胸に湧き上がらせている。
ぎゅうっと絞り込まれるような、そんな感触が心臓の下あたりに居座っていて、痛覚と錯覚しかねないほどの不快さを与えてくる。
それはとても苦しくて、苦しくて。私が得られてきた楽しさを、根こそぎ奪い去ってしまうほどの、感覚。
だけど、と私は続ける。今のこれは、そんなに深刻なものじゃない。そんなはずはない。何故なら―
ふと、私の目が扉に目を向けられる。そこに生まれたかすかな気配が、くいっと私の視線を引っ張る。
普段ならたやすく見逃してしまうそれを、今の私は鋭敏に感じ取っていた。
「あれ、あずにゃんだけ?」
直後、がちゃりと音を立てて生まれた隙間からひょっこり現れたのは、私の予想通りの顔だった。
そう、予想通り。だって先輩がここに来ることはわかっていたこと。部活中止の連絡があったわけではなかったから。
学園祭での劇の練習のため、先輩たちが遅れてくることはあらかじめ知っていることだったし、その中で比較的作業量の少ないこの人が真っ先にここに現れることも、想定の範囲内のことだった。
「唯先輩」
私の口から零れ落ちたのは、その名前。
流れ的には質問への返事を返すべきだと思ったが、何故か私の口はそう動いていた。
扉の影からその全身を現したその人の名前を、口にしていた。
ほんわりとした柔らかな笑顔と、のんびりとしたそれでもひょこっとした軽快さを見せる仕草と、私より手のひらくらい高い背を持った先輩。
ほんの2年にも満たないくらいの付き合いのはずなのに、もう随分長い間近しい関係を続けていたような、そんな錯覚を思わせる人。
私の先輩。そう、まだ今は。この人が先輩で、私が後輩。この限られた時間の中で、私たちはその関係でいられている。
そう、だから今は深刻じゃない。そのはずがない。いずれ訪れるそのときに比べれば、そう言える筈がない。
何故なら、こうして待っていさえすれば、この人は必ずここに来てくれるのだから。今、こうして向かい合っていられるように。

842:やくそくゆいあず2
09/10/27 03:19:17 OGilvgkU
「……?」
返事も返さず、目を向けたまま停滞している私に、唯先輩はその笑顔を維持しながら小さく首を傾げて見せた。
そこで私は初めて自分の俯瞰的な状態に気付き、慌ててたたずまいを直す。
「ボーっとしてるなんて珍しいね」
小さく笑い声を上げると、唯先輩はとすんとケースを肩から下ろし、その愛用のギターを取り出した。
私はといえば、いくら軽音部がゆるい部活とはいえ、先輩が来たと言うのに挨拶すらしなかったことに自己嫌悪を覚えたりしつつ―
唯先輩が、ティータイムも抜きで練習しようとしていることに驚きを覚えていた。
「ん~ムギちゃんもいないからお菓子もないし。それに遅くなっちゃったから、時間もあまりないからね」
何度か爪弾き、何度かペグをひねるだけのチューニングを済ませ、唯先輩はギターに落としていた視線をこちらに向けた。
ふんわりとした眼差しと柔らかな笑顔。向けられる者を容赦なく優しい気持ちにさせてしまう佇まい。
それはひょっとしたら、私の贔屓目かもしれないけど。それでも、彼女を取り巻くほとんどの人が私と同じ感想を抱いてるだろうと半ば確信していた。
知らず浮かべていた笑顔を、その不覚を僅かに悔しく思いながら、それでもあっさりとそれを上回る暖かさに押されるように、私は腰を上げた。
ギターを持ち上げ、ストラップを肩にかけ、いつでもいけますよ、と先輩に視線を送る。
いつもならまるで習慣のように―たぶんきっと先輩にとっては本当にそうなんだろうけど―きゅっと私に抱きついてくるのに、今日は、先輩にしては本当に珍しく、すぐにギターに向かっていたから、それはお預け。
それが習慣になっているほうがおかしいんです、なんて普段の私なら思っていたのだろうけど。
今の私は素直にそれを寂しいことだと感じ、思い浮かべていた。
「アレいこっか」
「アレですね」
一度だけうなずき、特に合図の声を交わすでもなく、唯先輩は眼差しに確かな真剣さを灯し、小さく、でも踊るような軽やかさでピックを振り下ろす。
それに合わせて、自然と私の手も動き出す。拍合わせなんていらない。もう何回も何十回も重ねたものだから。その音が、その気配が、その存在があるだけで、私はきっと目を瞑っていたとしても演奏できるだろう。
何時もの私たちのナンバー。そういえば、始まりはいつもこの曲だった。先輩たちにとっては、初めてのライブで演奏した曲。それだからかもしれない。
そのいつものタイミングで、先輩の声が響く。やわらかくて、包み込まれるようで、それでも確かな芯を持った歌声。
唯先輩の声。そしてその奏でる音色。それは私の大好きな―
それに飲み込まれてしまわないように、それを更に高められるように、それに負けない輝きを放てるように、私は嵐の海の上懸命にマストにしがみつく船乗りのような必死さを持って紡ぐべき音を奏でていく。
実際、そうでもしないと置いていかれそうだった。私の心情に依存するものだけではなく、先輩は掛け値なしに私が初めて出会ったときよりもずっと上に登っているから。
そして予感するまでも無く、これからもずっと登り続けていくのだろうと確信できる。
この音を聞けば、きっとそれは私だけの感想ではなくなることだろう。そう思えるくらいに。
それに触れられることは、今の私にとって至上の幸せだった。勿論そう言うべきなのは、それだけではないのだけど。
その音に包まれること。それと共に奏でられること。
優しく笑いかけられること。
ぎゅっと強く時に優しく抱きしめられること。
放課後音楽室を訪れれば、やっほーあずにゃん、なんて出迎えてくれて。
練習しますよと促しても、もう少しだけーとお茶とお菓子と椅子にしがみついたりして。
めっと怒ると、懐柔しようとケーキ付きのフォークを差し出してなんか来たりして。
その癖に奏でる音は、やはり私の大好きな音だったりして。
私の風景の中に、先輩はいつも存在していた。四六時中一緒というわけでは当然のことながら無かったけど。
だけど、私が引き出せる思い出という名のページには、いつも先輩がにっこりとした笑顔を見せてくれていた。
それはきっとこれからも私のページに刻まれていくのだろう。いまだ白いそのページに。
そして―次の春が来れば、そこにその姿が刻まれることはない。
演奏が止む。映画のワンシーンのようにぴたりと、ではなく。歪んだ私の音を合図にして、不揃いの余韻を残しながら、ゆっくりと。
「珍しいね、あずにゃんが間違えるなんて」
「すみません」

843:やくそくゆいあず3
09/10/27 03:20:43 OGilvgkU
とすんと音を立てて、先輩のギターがソファーの淵にに立てかけられる。少し遅れて、私のギターもその隣に立てかけられる。
練習は中断ということらしい。折角乗ってきたと思ったのに、と私は自分のミスを悔やむ。
本当に何をやってるんだろう。練習中にそれを浮かべてしまうなんて。動揺してしまうことなんて、わかっていたことのはずなのに。
ちゃんとしていかないといけない。だって、もうすぐ学園祭なんだから。そこで、自分にできる最高のパフォーマンスで、最高のライブにしないといけないのに。
振り返ったとき、最高の思い出だって胸を張れるほどの。これを逃せば、もうチャンスはないんだから。
だって、それが先輩たちとできる最後の―
それがキーワードだった。
考えるまでも無く、それは当たり前のこと。私は二年生で先輩は三年生。この年が終われば、先輩たちは卒業してしまう。
今年になってから先輩たちと過ごしたこと。梅雨のじめじめしたあの日も、夏の日差しにうんざりしたあの日も、夏合宿でライブを見に行ったあの日も。
先輩たちと、という言葉を頭につければ全て、その後に最後のという言葉が続いてしまう。
最初は、だから頑張ろうなんて思えていた。だからこそ最高のものにしようって。最高の思い出にしようって。
そう無邪気に考えられていた。だけど、それらを一つ一つ終えて行き、あと「最後の」は幾つ残ってるんだろうって考えたときに、私は気付いてしまった。
気付かないように蓋をしていたものを、開けてしまった。
この「最後の」が全て終わってしまったら、もう私の傍に先輩たちはいないんだ、と。
さっきの私みたいに、一人きりの音楽室でギターを抱えるしかなくなるんだと。そして、いくら待ってもそこに先輩たちが訪れることはない。
ひょっとしたら、一人じゃないかもしれない。今年は入らなかったけど、来年の春になれば新入部員がどっと来たりして。
そしてまた新しい桜高軽音部が作られて。その賑やかで楽しそうな音が、私を包み込んでくれるのかもしれない。
だけど、そこには先輩たちはいない。先輩は、いない。
当たり前のことだとも、仕方がないことだとも、それが普通だということも、全てわかっている。
自分がそれを受け入れて、先に進まなければいけないことも全てわかっている。
だけど、それはどうしようもなく寂しい。寂しくて、切ない。切なくて、苦しい。
そう、それをこうして明確な形で思い浮かべてしまうだけで、そのときまでずっと零さないと決めていたものが溢れ出してしまいそうになるほどに。
慌てて、堪える。それが耐え難いものだとしても、今は我慢しないといけない。だって、私の目の前には今、ふんわり笑う先輩がいるんだから。
今ここでそうしてしまえば、きっとそれを崩してしまう。それは、嫌だ。先輩には、笑っていて欲しいから。
それが在るだけで、そのシーン全てが私にとって最高の思い出になるんだから。
「あーずにゃん♪」
ぎゅうっと先輩が私を抱きしめてくる。今日初めての、そして初めてそうされてから今までずっと、習慣になってしまった行為。
そのぬくもりは、あっさりと私を溶かしてくれる。この人のぬくもりに私は弱い。どんなものを抱えていたとしても、抱え込んでいたとしても、この瞬間だけはふわりとそれは何処かに行ってしまう。
今も、この気持ちをあっさりと消し去ってくれるに違いない。先輩には、その魔力が在るから。
そう思ったのに―やはりというか、それは消えてくれなかった。
先輩にこうされること、それも時間制限つきなんだと、そんな意識が湧いて来てしまう。暖かいのに、いつもどおりの先輩のぬくもりなのに、今はそれが切ない。
きっと、ナーバスになってるのだろう。「最後の」学園祭のライブが近付いてるから。
そして、それが近付いていると言うのに、先輩たちはクラスでの出し物である劇の練習に時間を割かれていて、部活で練習する時間をほとんど取れない。
さっきみたいに、一人でギターの練習をしているのがこのところの私の部活時間の過ごし方になっている。
本当なら、もっともっとみんなで練習したいのに。みんなでいっぱい練習して、これなら最高のライブに出来るなって笑い合いたいのに。
その最高の思い出を、一緒に作ってるんだって実感したいのに。
だけど、それが独りよがりな物だってことは分かってる。
先輩たちにとっては、どの瞬間も最後のということになる。放課後ティータイムのライブも、クラスでの出し物も、その他の学園行事に類するもの全て。
だからどれにも一生懸命。演劇の練習を頑張っているのは、話を聞いていれば分かるし、短くなってはいるけどライブの練習もちゃんとしていることもわかってる。

844:やくそくゆいあず4
09/10/27 03:24:30 OGilvgkU
それでも、今の私にとっての「最後の」は、先輩たちと学園祭の舞台に立つということ。
だからなんとしても最高のライブにしたい。最高の思い出にしたい。私にとって、最高の思い出を作って欲しい。
来年が来て、先輩たちがいなくなっても、それに耐えられるくらいの最高の思い出を作って欲しい。
私がそう思って、なのに先輩は劇の練習に時間を割いていることを切なく寂しく思っていることを、わかって欲しい。
そんな―欲しいというものばかり。私が抱いてしまっているのは。
そんなこと、言えるはずがない。ううん、言っちゃ駄目なことだと思う。だから、私は泣かないと決めた。そうしてしまえば、それはきっと押し付けがましいものになってしまうから。
最後の最後、その瞬間まで取っておかないといけない。それまでは、笑っていないといけない。
私だけじゃなくて、先輩たちにも沢山の最高の思い出をあげたいから。あげないと、いけないから。
「あずにゃん」
耳元で響く先輩の甘い声が、トンと優しく私を打つ。
直後、ぎゅうっとさらに力を込めて、強く私は先輩に抱きしめられる。
あれ?と思う。さっきまでのいつものとは確かに違うその感覚に、私は小さく首を傾げる。
「先輩?」
問いかけに、先輩は答えない。ただぎゅっと私を強く抱きしめ続けるだけ。
いつものべたーっとくっついて私を感じようとする、先輩風に言えばあずにゃん分補給というそれとは違う。
まるで、自分がここにいるよということを私に教えるような、そんな形のもの。
ああ、そう言えば一度だけこれを感じたことがあった。それを思い出す。
あれは確か、去年の今頃。学園祭のライブの直前で、ようやく現れた先輩を前に、私が泣いてしまいそうになっていた、あのときと同じだ。
それで、全てがわかってしまった。
唯先輩には、お見通しだったんだ。私が今どういう気持ちでいるのかを。
気付かれていないと思っていた。ちゃんと笑えていると思っていた。そして、それは上手く行っていたと思う。
だけど、そうじゃないと説明できない。
先輩は今こうして、こんなにも強く私を抱きしめているから。
一生懸命隠そうとする私の手をすり抜けて、先輩の手はあっさりとそこに届いてしまっているから。
「いいんだよ、あずにゃん」
そしてそんなことを、そんな状態の私に告げるものだから、もうそれはどうしても我慢できなくなって私の頬を濡らしていた。
絶対にそうしないと決めていたことだったのに。南極の氷よりもずっとずっと厚くて冷たいところに、閉じ込めていたはずなのに。
あっさりと溶かされてしまっていた。そう、わかっていたこと。唯先輩はいつも容易く、私を溶かしてしまうんだから。
一度零れてしまえば、もうその勢いは止まらない。嗚咽も慟哭も、最早私の意志に関わらず、どんどん溢れ出して来る。
まるで子供みたいに、私は先輩の胸で泣きじゃくる。そうでもしないと、この勢いと量に押しつぶされてしまいそう。
そんな私を、先輩はぎゅっと抱きしめていてくれた。私から零れるもの全てを、受け止めようとするかのように。
それがあまりに優しいから、私はまるで母猫に甘える子猫のように、全てを預けてただひたすらに泣き続けた。

ひくっと、ちいさくしゃくりあげる。それを最後にして、私の涙はようやく止まってくれた。
ゆっくりと顔を上げると、ぐしゃぐしゃになってしまった先輩の制服と、それでも先程と微塵も変わらない優しい先輩の笑顔が目に入った。
「すみません」
とりあえず、謝る。制服を汚してしまったことと、こんな醜態を見せてしまったこと、とにかく、いっぱい迷惑をかけてしまったことを。
実際、私が顔を埋めていた胸元辺りは染みになっていたし、ぎゅっとしがみついて握り締めていた部分はクシャクシャになってしまってる。
間違いなくクリーニング行きコースだろう。
なのに先輩はそんなことどうでもいいよって顔して、やっぱりにへらって笑ってる。
「いいよ~気にしなくて」
そう言って、パタパタ手を振って見せて、そのままその手を私の頭にぽんって乗せて、なでなで。
先程と同じ。この仕草も、何処か私を慰めようとするもの。普段のそれとは少し違う感覚を与えてくれる。

845:やくそくゆいあず5
09/10/27 03:25:31 OGilvgkU
それでもやはりそれは心地よくて、私はやがて喉を鳴らす猫のように、それに身を委ねて、力を抜く。
へなりとなった私を先輩はよいしょなんて掛け声を上げながら抱え込むと、ポスンとソファーの上に座り込んだ。
私もそのまま倒れこむように、どさりとソファーの上に身を投げ出され、頭はぺたりと座り込んだ先輩の太腿の上に。
丁度膝枕をされている形。ううん、正確に言うなら、飼い猫を膝の上で優しく可愛がるように、先輩の手は私の頭を撫でている。
勿論それは私の主観なのだろうけど。そう思うということは、ひょっとしたら私にはそういう願望があるのかも、なんて思ったりして。
泣くだけ泣いて、何とか落ち着きを取り戻した状態だと、この姿勢は少し恥ずかしい。
だけど、それを上回るほどの心地よさとか暖かさとか、そんな私にとってプラスなことにみっしりと包まれているから、私は顔を上げることなく、それに身を委ねている。
喉を鳴らしながら、ちらりと覗いた先輩の眼差しは、やはり量りようも無いほどの優しさに満ちていて。
私はとろんと、私というものが溶けて行く感覚を確かに感じていた。
「…なんでわかったんですか?」
「ん~、なにが?」
その熱と疼きに、身をよじるように零れた疑問。だけどそれは疑問なんてものじゃなくて。
例えて言うなら、もっと甘い言葉をくださいというおねだりみたいなもの。
もっともっと、私を溶かしてください、なんて言う。
何もかも、忘れてしまえるほどに、もっともっと熱いものをくださいなんて、そんな思い。
―それはやはり、私の寂しさを埋めて、一人になっても耐えられるほどのものを与えてくださいという気持ちからくるもの。
仕方がない。いっぱい泣いて落ち着きはしたけど、それはやはりいずれ確実に訪れるものだから、この気持ちは隠れはしても、消えてはくれない。
だけど。
今抱いているこの欲求は、その理由だけじゃなくて、ただ純粋に唯先輩のことをもっと感じたいと、そういう気持ちからも来てると思う。
だって、そうじゃなきゃ。こんなにも胸が熱くなっていることの説明がつかないから。
こんなにも、先輩が欲しいと思ってしまっている、その理由に説明がつかないから。
私は先輩の問い返しに答えることなく、ただぎゅっと、その腰に手を回し抱きしめた。
それこそが、答えだと言わんばかりに。
「わかるよ、だって」
そして唯先輩は、私を撫でる手を止めることなく
「あずにゃんのこと、ずっと見てたもん。だから、わかるよ」
そう、言ってのけた。
それは本当に、私が望んでいた言葉そのままで、だから私は嬉しくてきゅっとまた先輩にしがみつく腕に力を込める。
「こういうときはね、我慢せずに泣いちゃった方がいいんだよ。泣くだけ泣いて、全部流しちゃって、すっきりしなきゃ」
「そう、ですね……」
全部、とはさすがに言えない。ちゃんとそれは残ってて、それはどうしようもないものだけど。
だけど、それでも随分楽になってくれた。いっぱい泣いたことと、いっぱい先輩が甘えさせてくれたことで。
私の心を埋め尽くして、それがいられる場所を小さくしてくれた。これくらいなら、駄目な私でも、ちゃんと頑張れる。
全部、唯先輩のおかげ。
ああ、そうだ。こうしてとろけてるだけじゃなくて、ちゃんとお礼をしないと。
そう思って、一本だけ、手を離す。その分だけ、先輩との距離が少しだけ空いてしまったけど。我慢して。
ゆっくりと伸ばしたその手は、だけどあっさりと先輩の手に捕まえられてしまった。
頭をいっぱい撫でられてる分、こちらも撫で返そうと思ったのに。私の左手は、先輩の右手の中。
そのままぎゅうっと、胸に抱え込まれる。そしてぴたりと、私の頭を撫でていた先輩の手が止まった。
「あずにゃん」
先輩の声が私を呼ぶ。少しだけ、真面目な声。それに釣られるように、私は埋めていた顔を上げ、それに必要なだけ状態をひねって、先輩の顔を見上げた。
合わせた瞳は、やはり柔らかだけど、その声色の通り少しだけ真剣さを灯していた。
「最後の学園祭だから、って思ってた?」
ぴくりと私の体が震える。私が埋め込んでしまおうと思っていたもの、それを先輩はスパッと切り出そうとしていた。

846:やくそくゆいあず6
09/10/27 03:28:49 OGilvgkU
反射的に逃げようと私の体は動こうとしたけど、私の左手は先輩の胸に、頭は右手に、そして何よりもその視線が一番的確に私を絡め取って、動きようがない。
「そうだよね?」
続く言葉。返事を促す、先輩の声。私はそれに頷くしかない。仮に首を横に振って見せたとしても、今この瞬間の私には、先輩を誤魔化せる気なんて欠片もし無かったから。
「それが終わるともうライブの予定も無いし、春が来れば私たちは卒業しちゃうから……一人になっちゃうって思ってたんだよね」
「……はい」
目を逸らし、確認するような二つ目の問いかけに、返事を返す。
予想はしていたけど、やはりそこまで知られていたんだ。そう、先輩は嘘をつかない。ずっと見てたって言ってくれた。わかるよって言ってくれた。
だから、ここまで読み取られていても、全然不思議じゃなかったんだ。
だけど、怖い。そこまであけすけにされて、そして今それを認めて、そんな私を今先輩がどんな目で見ているのか。それが、怖い。
なんでだろう。先輩には出来れば自分のいいところだけを見ていて欲しくて、こんな弱くて醜いところなんて見せたくないって思ってる。
どうして―
「てい」
「あいたっ」
額の真ん中、その少し右側に走った衝撃に、私は思わず声を上げた。
何ごとと、顔を上げて、ぴたっと視線が合ってしまう。折角逸らして、隠していたのに。
だけど、先輩の目は柔らかなままで、だけどその顔は少し怒ったようにその分だけほっぺたを膨らませていた。
そのいつもどおりに、私は心底安堵し、そして首をかしげた。
先輩の左手はチョップの形。それが私の額を打ったのだろう。声は上げたけど、肩をぽんと叩く程度の力。
怒ってるよって合図の、表情と行動。でも、なんで、どれに対して、何のために。
「な、何するんですか、唯先輩」
「なにするんですか、じゃないよ、もう」
先輩は表情を苦笑に切り替え、チョップ型の手から力を抜いて、また私の頭を撫でる。
「あずにゃん、卒業したらもうそれまでって思ってた?」
「…え?」
その言葉に、私はぽかんと口をあけていた。
「ダメだよ、そんなの。私はね、卒業してもずっと変わらないって思ってたんだよ」
先輩の言葉が続いていく。私は、ただそれを聞いているしかない。だって、それは私にとって、奇跡のような魔法の言葉。
何故なら、それは今まで私がずっと抱えてきたものを、悩んできたことを、苦しんできたことを全て、本当に魔法のように無かったことにしてくれる言葉だから。
それが今、私の目の前にある。それでも私はまだそれを信じられない、夢じゃないのかな、なんて思ってしまっている。
「私たちは変わらない。だって、こんなにすごくて、あったかくて、気持ちよくて、楽しいの、私他に知らないもん」
だって、それはあまりに私にとって都合のいい言葉。あまりにそうだから、そんなはずないって反射的に蓋をしてしまっていて。
そう、蓋をしてしまっていたんだ。それを望んでしまえば、それが裏切られてしまったときに私は酷く傷ついてしまうだろうから。
酷く傷ついて、そしてひょっとしたら先輩たちを恨んでしまうかもしれない。そんなのは絶対に嫌だったから。
だから私は望むのをやめて、それが叶わない世界こそ当たり前なんだって決め込んで、そして一人で悩んで苦しんで辛い思いをしている気になっていた。
「きっと、澪ちゃんもりっちゃんもムギちゃんも同じ気持ちでいるんだって思ってる」
私はそこではじめて、自分の本当の弱さに気がついた。本当に弱くて、どうしようもなくて、駄目な自分に。
本当に臆病で、嫌になる。逃げ出した癖して、その痛みに耐えることが強さなんだって勘違いして。
「あずにゃんも、同じ気持ちだったって思ってた。だから私、今とっても悲しいんだよ……」
ただ、信じられなかっただけなのに。先輩たちを、こんなにも真っ直ぐに私を見つめてくれる唯先輩のことを。
「確かにね、卒業しちゃうとここではもう一緒にいられなくなる。でも、私たちは、放課後ティータイムはね、それでも続いていくんだよ。
あずにゃんを一人にしたりなんてしない。私ももう、みんなと離れるのはいや。だから、ずっとずっと一緒だよ」

847:やくそくゆいあず7
09/10/27 03:30:01 OGilvgkU
強く、確かな意思を込めて、先輩は私に視線を落とす。それは、じゅっと音を立てて私の中に在るものを溶かしてくれる。
「唯先輩……私も、そう思っていいんですか」
「もちろん!」
間髪いれず、先輩はにこっと笑ってそう返してくれた。本当に嬉しいって、そんな笑顔で。
本当は、ずっと一緒なんて難しいってこと、わかってる。今は一緒でも、進む道がずっと重なってる保証はない。
例え今、どんなにそれを強く信じていても、どんなに強くそれを望んでいたとしても。私たちそれぞれの道を決める要素は、それだけではないのだから。
でも、先輩は今言ってくれた。ずっと一緒だって。私を一人にしたりしないって。
それだけで、それをもらえたから、私はもう大丈夫。
例え、この先離れ離れになったとしても、その想いはずっと私の中にあるだろうから。
それが在る限り、どんなに離れていても私たちは、そして放課後ティータイムはずっと私の中に存在するんだから。
勿論、そうと決めたからには、そんな例え話、絶対に実現させたりはしないけど。
「いいんですね、もう絶対、離さないですよ。例え先輩が、もういやって言ってもです」
ぎゅうっと、その意思を伝えるようにしがみつく腕に力を篭める。
「もー、いやなんていわないよ」
先輩はまた少し膨れて、そしてまたにこっと笑って見せた。
目を閉じても、瞼に焼き付いてしまいそうな眩しい笑顔。
それを離したくない。離れたくない。もうずっと、離さない。
だから私も、とびっきりの笑顔を浮かべて見せた。ずっと傍にいますって、約束するように。
願わくば、それに負けないくらいの眩しさを先輩に与えられるように。
先輩は微かに目を細め、私がその目論見が満たされたことに満足を覚えるのと同時に、きゅうっと力いっぱい、その胸に抱き寄せられていた。
抱き寄せられ、膝枕の状態から持ち上げられた上体を、膝を立てて安定させ、私は先輩に重心を預ける。
背中に両手を回し、そのままくいっと抱え込むように軸を傾けると、唯先輩はあっけなくポスンとソファーの上に倒れこんだ。
床に落ちてしまわないように支点の位置を調整しつつ、私は覆いかぶさるようにぎゅうっと強く先輩を抱きしめる。
もっと強く抱きしめたい。もっともっとぎゅーっとしてあげて、私の中に先輩を閉じ込めてしまいたい。唯先輩の中に、私を閉じ込めてしまいたい。
そんな思いのまま、ただひたすらに、強く、強く。
私の想いを、気持ちを、余すところなく伝えられるように。
「ずっと一緒だよ、あずにゃん」
先輩の声が耳元で囁かれる。言葉だけじゃ足りなくて、動作だけでもやはり足りなくて、だからまた言葉を重ねようと紡ぎ出された言葉。
だから私もそれに重ねる。今の思いを集約して、形にしたもの。それが同じなんだと、確かな形としてこの記憶に残せるように。
「ずっと一緒です、唯先輩」

848:やくそくゆいあず8
09/10/27 03:30:52 OGilvgkU
「先輩、知ってたんですね?」
「まあね~」
帰り道、私はすたすたと先輩の前を歩く。私のほっぺはいかにも不機嫌ですという思いを隠すことなく膨らんでいた。
だけど先輩は、そんなこと気にも留めることなく、ふんふん鼻歌を歌いながら、私の後を上機嫌に歩いていた。
「もう、だからあの日、あんなに自信満々だったんですね」
「ふふーん」
「得意げにならないでくださいっ」
「えへへ」
くるりと振り返ると、先輩は私に笑顔を見せる。得意気というよりは、本当に嬉しそうなそんな笑顔。
少しだけ拗ねていた私から、あっさりとそれを奪い去ってしまう。
「りっちゃんが、驚かせるから内緒だぞーって言うからさ」
「もう、律先輩らしいですけど」
それを読み取らせないように、私ははぁとため息をついて見せた。尤も、唯先輩がそれくらいで誤魔化されるとは思わなかったけど。
「それにしても、びっくりしましたよ」
今日律先輩が、みんなを集めて口にした重大発表。
それは、放課後ティータイムが卒業後プロとして活動して行くことだった。
さわちゃん先生が勝手に送ったデモテープから、とんとん拍子で話が進んで行ったらしい。
事務所の意向で、デビューは高校を卒業してからということで。
だから、先輩たちも卒業後のデビューになるし、私は更に一年後卒業してからの加入となる。
一年も待たないといけないのはやっぱり辛いと思うけど、だけど逆に一年待てば私はまたそこに飛び込んでいける。
そしてその間も、ずっと放課後ティータイムは文字通り存在し続ける。
まさしく、先輩が口にしたとおりの展開。先輩はそれを知っていたからこそ、あんなに強く一緒だよっていえたんだ。
―でも、それだけじゃないと思う。
「でもね、あずにゃん」
「…なんですか?」
私の思考を遮るように、そして私の期待通りの笑みを浮かべて、唯先輩は私をじっと見つめた。
「もしね、この話が無かったとしても。例え私一人になってたとしてもね。私はあずにゃんを一人にしたりはしなかったよ」
「…っ」
そして、私の期待通りの言葉を続けてくれる。本当にこの人は、いつもそんな奇跡みたいなことを容易く形にしてくれる。
そしてそれには欠片すらも嘘は混じってないのだろう。
「大好きなあずにゃんだもん!」
そう言って、ぎゅうっと私を抱きしめてくれたのだから。そう、その例えどおりになっていたとしても、先輩はこうして私を抱きしめ、一人にはさせなかったに違いない。
「もう…唯先輩は。そういうこと、簡単に言ってくれるんですから」
「えへへ」
「それにきっと、そうだったとしたら、私から離しませんでしたよ」
「えへへー、あずにゃん寂しがり屋だもんね」
「そんなんじゃありませんけど…ね」
だって、大好きな唯先輩ですから、なんて簡単に返せたらいいんですけど。
私がその勇気を振り絞るか否か迷っている間に、先輩はふいっと私から身を離した。そのままとんとんとスキップするように前へと歩を進めていく。
少し肩透かし。だけど、確かに考えれば通学路で長時間抱き合ってるわけにも行かない。寂しさを素早く胸の中にしまいこむと、その後に着いて歩き出す。
先輩はやはり上機嫌で、鼻歌なんか歌ってたりして。
ひょっとしたらと、私は思う。この事実を知って、嬉しかったのは先輩も同じだったんじゃないかと。
先輩も多少なりとも私と同じような思いを抱いていて、そしてもうその心配をすることはないと知って、嬉しくて。
だから、あんな風に私の気持ちを読み取ることができたんじゃないかって。
なんて、確かめたりはしないけど。それに意味があるとは思えないし、きっとそれは必要がないこと。
だってもう、私たちはお互いの気持ちを確かめ合えたのだから。
ちゃんとその約束を、交し合えたのだから。
それに、そんなことより先に確かめないといけないことがある。だって、先輩の鼻歌は、私の知らないメロディーだったから。
「それ、新曲ですか?」
「うん、まだ完成には遠いけど、タイトルは決まってるよ」
「なんてタイトルなんですか?」
先輩はそこで言葉を区切り、くるりと振り返って、そして最高の笑顔を浮かべながら私にピースして見せた。

「CagayakeGirls!」

849:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/27 03:33:18 OGilvgkU
以上となります。
10行かなくて良かった…

850:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/27 04:59:05 OGilvgkU
そういえば、梓ってさわ子先生のことなんて読んでましたっけ。
仮打ちした「さわちゃん先生」のままでやっちゃってましたが…
違ったらすみません。脳内変換お願いします…

851:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/27 11:35:50 IFGlQJPs
>>850
なんだ、ただの神か・・・
GJすぎて目からムギが溢れてきた

852:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/27 12:20:02 BhH4/XQB
良いねぇ

853:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/27 20:35:26 B0BAp4Rq
汚いあずにゃんを見つけたので虐待することにした。
他人の目に触れるとまずいので家に連れ帰る事にする。

嫌がるあずにゃんを風呂場に連れ込みお湯攻め。
充分お湯をかけた後は薬品を体中に塗りたくりゴシゴシする。
薬品で体中が汚染された事を確認し、再びお湯攻め。
お湯攻めの後は布でゴシゴシと体をこする。
風呂場での攻めの後は、全身にくまなく熱風をかける。

その後に、カステラ生地の中にあんこを入れて鉄板で焼いた不味そうな魚型の食べ物を食べさせる事にする。
そして私はとてもじゃないが飲めない白い飲み物を買ってきて飲ませる。
もちろん、温めた後にわざと冷やしてぬるくなったものをね。

その後は棒の先端に無数の針状の突起が付いた物体を左右に振り回して
あずにゃんの闘争本能を著しく刺激させ、体力を消耗させる。

ぐったりとしたあずにゃんに干したばかりで日向くさい布団を掛けて
寝るまで監視した後に就寝。

854:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/27 22:03:08 88tzGB+7
>>853
憂「お姉ちゃん、無理して難しい言葉使うからかなり間違ってるよ!それ虐待じゃなくて愛護だよ!」

855:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/27 23:11:21 WutBPkL4
ルッキーニ虐待コピペ思い出した
猫キャラの定番だな

856:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/27 23:59:14 zshroHa/
>>850
GJなんです

857:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/28 03:49:46 tV44fwJn
>>853
久しぶりに見たw
というか、むしろ何故今まで無かったのかのかとw

858:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/28 06:55:41 EbmlUQJ/
「私もあずにゃん飼いたいよぉ~」
「冗談でもやめてくださいよ。唯先輩がご主人様で、私がそのペットだなんて」
(え…?梓ちゃんがお姉ちゃんのペット!?)


(憂の妄想開始)


『ふふふ…首輪がとっても似合ってるよ、あずにゃん』
『ゆ、唯先輩…こんなのひどい…ひどいですっ』
『先輩じゃないでしょ?』
『え?』
『ご主人様、だよ。あずにゃんは私のものなんだから』
『ご…ご主人様…』
『よくできました。…じゃあ、ご褒美をあげるよ、あずにゃん』
『ふぁっ??やっ…そ、そんな強く激しくされ…たら…私っ、私ぃ…!』
『ふふふ…いい子いい子…私のあずにゃん』(あたまなでなで)
『ふにゃぁ~…』(溶けた)
『じゃあ次はねぇ…』
『にゃっ!?ま、まだ続くんですか?』
『もちろん。あずにゃんが身も心も私のペットになるまでたっぷりしつけてあげるからね』
『唯先ぱ…ご主人様ぁ』
『次は甘噛みだよ。私の指を柔らかく噛んで…舐めて』
『んっ、んんっ…ちゅっ…ぴちゃ…ぺろぺろ…』
『うまくできたら次はミルクをあげるよ。その次はお風呂だね…身体の隅々まで私のものにしてあげる…』
『ご主人様の指…おいひいよぉ…』

(憂の妄想終了)


「これはこれでヨシ!私にも梓ちゃん分けてっていうか、私もしつけてお姉ちゃ………んんっ?」

「ごめんね、梓。梓の気持ちも考えずに飼いたいなんて言って…」
「ぐすっ…本当ですよ…。確かに私は唯のものですけど…でも、それはぁ……」
「うん、梓…梓は私のもので、私は梓のもの…結婚しよう、梓っ」
「唯…唯っ!」

「ほっほぅ…さすがはゆいあずッ!妄想の遥か上を行ってくれるッ!見つめるキャットファイトッ!百合色に光るッ!」
「キタシタワー!」(天井裏から)

859:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/28 08:07:40 iuA769G0
>>858
笑ったwwww

860:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/28 14:16:59 tV44fwJn
何処にでも潜んでるムギw

861:ハロウィンの前に[1/2]
09/10/29 00:11:47 ZkvIWA+3
 ある日、いつものように部活へ向かうと、

梓「こんにち―」 バタン!

 唯先輩の席にカボチャ人間が座っていたのでとりあえず閉めた。

梓「……」

 意味がわからない。
 改めて、扉を僅かに開けて、隙間から様子を窺う。

 巨大なカボチャの目の部分をくり貫き、それを被って佇む少女。
 カボチャの大きさと体の大きさが致命的なまでに合っていない。
 頭がでかすぎるだろう。紛う方無きミスマッチである。
 なによりカボチャ人間、口元の部分をくり貫くのに失敗したのか、鼻から下の部分が丸見えになっている。
 あれではライダーマンだ。

梓「ん?」

 よく見ればカボチャ人間、うちの制服を纏ってるではないか。
 そして、切り取られた鼻から下の部分から覗く、茶色い髪の毛。
 そしてスカートから覗く可憐な御御足を包む、黒のストッキング。

 テンションがギュインってなって扉を開けた。

梓「なにやってんすか、唯先輩」

唯「とっ、トリックアンドトリック!!」

梓「悪戯ばっかりですね」

 悪戯したあと更に悪戯しちゃうぞ!
 一切の拒否権なし。相手涙目。

 唯先輩相手なら望むところとは思いつつも、トリートはどこいった、と突っ込んでから自分の席へと着く。

唯「やっほーあずにゃん。どうして私って分かったの?」

梓「こんにちは、唯先輩。分かりますよ、服装とか動きとかその他諸々で……っていうか、他の先輩たちはどうしたんですか?」

唯「りっちゃんと澪ちゃんは掃除当番だね」

梓「ムギ先輩は?」

唯「空気を読むって言ってた」

梓「……」

 絶対どこかで見てるな、あの人。

梓「で、なんなんですかその他国の文化を間違った形で輸入した胡乱な被り物は」

唯「えー、可愛いじゃんこれ」

梓「ええまぁ可愛いですけどそれはそのワケのわからん被り物を被ってるのが唯先輩だから可愛いのであってその被り物自体は微塵も可愛くないですけどね」

 一息で言いのけた。
 我ながらなかなかの肺活量だ。梓ご満悦。

862:ハロウィンの前に[2/2]
09/10/29 00:13:41 ZkvIWA+3
唯「あずにゃん、被る?」

梓「遠慮しときます」

 明らかに人の話聞いてないなこの人。

唯「そっかぁ、可愛いのに……」

梓「あのですね、唯先輩」

唯「なぁに?」

梓「確かにハロウィンといえばカボチャで、ジャックランタンは有名なんですけど、
  ハロウィンの仮装といえば、魔女とか吸血鬼とか幽霊とかであって、ジャックではないんですよ」

 まぁ、ジャックの仮装をする輩も中には居るだろうけれど。
 私としてはどうせ唯先輩に仮装していただけるなら、もっと可愛らしい方が好みだ。

梓「日本の場合、ハロウィンという名のコスプレ祭りになってたりもしますけどね」

唯「へぇ、そうなんだー」

梓「ていうか、ハロウィンってまだ先ですよね?」

唯「今週だよ、土曜日」

梓「土曜日……というと、やっぱり」

唯「うん、うちでやるんだー、ハロウィンパーティー! あずにゃんも来るよね!?」

 ああ、やっぱり。大方、唯先輩にカボチャの被り物吹き込んだのも律先輩あたりだろう。

梓「別にいいですけど、何やるんですか?」

唯「仮装したり、お菓子食べたり、悪戯したり」

梓「……」

 ハロウィン定番の台詞を連呼しながら、街中を闊歩してお菓子を強請る仮装集団。考えただけで頭痛がしてくる。

 ―いや、待て。
 唯先輩の家でやるのなら問題は無い。寧ろ……

 私「Trick or Treat!!」
     ↓
 唯先輩「お菓子はあげないもん」
     ↓
 私「じゃあ悪戯します」
     ↓
 にゃんにゃん

 わぁ、薔薇色だぁ。


梓「喜んで行かせていただきます!」

 私は最高の笑顔で答えた。

863:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/29 00:16:26 ZkvIWA+3
PC規制されたよちくしょう!!

はい、オチなし百合なし続きなしです
最悪ですね、書かなきゃいいのにww

もうすぐハロウィンってことでこんな話を考えてみたけど、
そもそも彼女達はハロウィンパーティーとかやるんだろか?

ではでは駄文失礼しました

864:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/29 00:19:53 xAnnaDLM
>>863
薔薇色?
百合色だろGJ

865:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/29 01:23:34 ePMYcN88
>>863
俺も最高の笑顔になったわ、GJ

866:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/29 01:54:17 0VLwOcuO
>>863
これは頬が緩む、GJ!

867:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/29 03:59:31 /27j3lf6
その日私は、誰もいない部室の扉の横で身を潜めていた。
なぜこんなことをしているのかというと、あずにゃんに抱きつくためである。
最近は抵抗してなかなか抱きつかせてくれないし、こういう方法でないと存分にあずにゃんの感触を味わえないのだ…
身を潜めて5分ほどして、階段を昇るあずにゃんの足跡が聞こえてきた。いよいよだ!

ガチャ

梓「こんにちはー」
唯「あーずにゃーん!」

私は影からあずにゃんに抱きつくべく腕を広げた。
この距離なら、もう逃げられない…はずだったが、ここであずにゃんは思わぬ行動に出た。

なんと、あずにゃんから私に抱きついてきたのだ。
私はあまりの驚きに、上手く言葉を発することができない。

唯「あ、あ、あずにゃん…?」
梓「どうしたんですか唯先輩。うれしくないんですか?」
唯「そりゃ…うれしいけど…」
梓「だったらもっと喜んでくださいよ。それとも、もっと色々されたいんですか?」
唯「い、色々って…?」
梓「例えばこういうこととか…」

そう言うと、あずにゃんは私の頬をぺろり、と舐めた。その瞬間、私の体はピクッと跳ねる。

唯「ひゃっ!あ、あずにゃん!?な、ななな…」

868:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/29 04:02:55 /27j3lf6
梓「ふふふ、そんな声出しちゃってかわいい…でも、そんなのじゃ済みませんよ?」

さらに、あずにゃんは私の耳たぶをくわえて、ぺろぺろと舐め回す。
私は全身の力が抜け、あずにゃんに寄りかかってしまう。

唯「あっ…あじゅ…にゃ…あうぅ…」
梓「…ふふふ…そんなに気持ちいいですか?唯先輩」
唯「う…うん…気持ち…いい…もっと…やって…?」
梓「じゃあ…もっと気持ちよくしてあげます。
 もう二度と私に逆らえないくらいに、私無しじゃ生きられないくらいに、気持ちよくしてあげますよ、唯先輩」

そう言うとあずにゃんは、私のブレザーのボタンに手をかけた。


終わり



ムラムラしてやった。反省はしていない

869:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/29 07:05:05 ZkvIWA+3
>>864
ばらいろ 0 【〈薔薇〉色】

(2)(比喩的に)しあわせや希望に満ちている状態。輝かしい未来などを象徴する色。
「―の人生」「―の未来」

百合色でも良いんだけどね(ビアン的な意味で)


>>868
唯は間違いなく誘い受け
お前のせいで朝からムラムラしたGJ

870:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/29 08:08:54 iptLeXH9
>>868
GJ
よくやった

871:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/29 09:01:55 i0kXS49Y
わっふるわっふる

872:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/29 13:56:26 /27j3lf6
あずにゃんはブレザーを脱がせて、タイをほどいたところでピタリと手を止めた。

唯「あずにゃん…?どうしたの?」
梓「考えてみると…このまま唯先輩の思い通りにするなんて、なにか癪にさわります」
唯「え?そんな、いまさら…」
梓「やーめた!もうしません!さぁ、ギターの練習しましょう」
唯「ま、待ってよあずにゃん…」

私は突然目の前のごちそうを取り上げられたような、そんな感覚に襲われる。
あんなに気持ちよかったこと、もうしてもらえないの?そんなの、嫌だ…

唯「あずにゃん…お願いだから…もう一回…してよぉ」
梓「嫌です」
唯「お願い!一生のお願いだから!」
梓「そこまで言うなら…誠意を見せてください」

そう言うとあずにゃんは、目を閉じて唇をつきだした。これって…?

梓「大好きだよって言って、キスしてください。そしたら、続きしてあげます」
唯「で、でも…」
梓「嫌ならいいんです。私は別に構いませんよ?」
唯「わ、わかった!わかったよ…あずにゃん、大好き」

私はおそるおそる、あずにゃんの唇に自分の唇を重ねた。あずにゃんの唇は、柔らかくて、とても甘い味がした。
もうそろそろ離してもいいかな。そう思った時だった。

873:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/29 14:01:04 /27j3lf6
梓「んっ…」

あずにゃんの小さなうめき声が、私の中の何かを呼び起こした。
私は体の奥から、激しい衝動がわき上がるのを感じた。

唯「……」

私は思い切りあずにゃんを突き倒した。当然あずにゃんは床に倒れ込む。

梓「い…いた…なにするんですか!」
唯「あずにゃん、さっきから先輩に向かってずいぶんな態度だよね…おしおきしなくちゃだね♪」
梓「ゆ…唯先輩?な、なにを…んん…」

私はあずにゃんに馬乗りになると、再びキスをする。あずにゃんは息が苦しいのか、よだれをタラリ、と垂らす。

梓「ぷはぁっ…ゆ、ゆい…せ…」
唯「うふふ…あずにゃん、よだれでぬるぬるだよ?きれいにしてあげなきゃね」
梓「あ…や、やめ…ひゃ、ひゃあぁ…」
唯「ぺろぺろ…ねぇ、あずにゃん」
梓「……?」
唯「もう二度と私に逆らえないくらい、私無しじゃ生きられないくらいに気持ちよくしてあげるからね♪」
梓「ひぃ…や、やめ…にゃあああああああ!!」

―――

律「ん、なんだ今の?」
澪「さぁ…ん、ムギ?なにやってんだそんなとこで…っておい!は、鼻血が…」
紬「きょ、今日の部活は…はぁ、はぁ…休みに…しましょう…」

(今度こそ)終わり

874:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/29 18:59:08 iptLeXH9
>>873
久しぶりに勃起したわ
GJ

875:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/29 19:32:37 xAnnaDLM
>>873
さあ具体的にどんなことをしたのかテキストファイルにしてうpするんだ

876:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/29 22:54:24 /27j3lf6
絵を描いてみたりしてみました
上手くないのは分かってるけど!この熱い想いを形にしたかったんです!

URLリンク(imepita.jp)

877:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/29 23:37:34 9gnY30HB
>>876
UMEEEEEEEEE

さぁ、今すぐ色を塗る作業に入るんだ

878:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/30 01:23:32 dVGT1pBk
>>876
自信を持て
お前は俺を悶えさせた

879:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/30 03:30:13 rpYqj+cR
いちゃらぶしてる二人はやはりいいですな

880:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/30 04:42:10 C71IxKeG
梓唯こそ至高、>>876GJ!

881:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/30 07:26:00 +fz9muwc
困るよ~

882:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/31 01:17:02 RyO2xnNS
ゆいあず、ハロウィンネタやろうと思ったら>>863とちょっと被ったでござる

「トリック、オア、トリート!」
 今日はハロウィン。
 「相手に食べさせたいお菓子をひとつ、持ってきて、二人で食べよう!」とあずにゃんを誘ったのが二日前。
会場となる私の家の扉を開けたあずにゃんに、私はハロウィンらしいあいさつをした。それが、今さっき。
当のあずにゃんは、豆鉄砲でも食らったようにポカンとしている。
「お菓子くれなきゃ、いたずらしちゃうぞー!」
 しょうがないから和訳してみる。
「いや、別に二回も言わなくていいですから」
 大事なことなので。
「大事って……」
「まま、とりあえず入って入って」
「あ、お邪魔します」
 丁寧に自分の靴(ありがたいことに私の脱ぎ散らかしちゃった靴も)を揃えて、あずにゃんが我が家に入る。
両親はハロウィンにかこつけて二人でスイーツ巡り。憂はほかの友達と遊びに。
要するに、今、この家には私とあずにゃんだけってこと。
 ……ふふふー、たーのしいなあー♪
「なんですか、突然ニヤニヤして」
「しーてなーいーよぉー♪」
「……やれやれ」
 ホントはリビングとか、なんか飾ったりしたかったけど、カボチャのくり抜きなんてできないし、仮装もしたいけど服がないので、結局いつも通り。
それでもあずにゃんは、「別に構いませんよ」といつものクールな反応。
「よし、それじゃあお菓子ターイム♪」
 今日はハロウィン。ハロウィンといえばお菓子。お菓子といえば女の子の主食。
「唯先輩は、お菓子食べたいだけでしょう」
「えー、そんなことないよー。私は、あずにゃんともおいしさを分け合いたい!!」
「……。ありがとうございます」
「どーいたしましてー♪ てわけで、私のオススメお菓子はこちら!じゃん!」
 ずらりと出しましたは、いつでもおいしい棒状のアレ!!
 …………。
「……なんで、う○い棒?」
「え?おいしーじゃんう○い棒。しかもコーンポタージュ味!!うわあーいきいろーい!!」
「コーンなんだから、黄色いのは当たり前でしょう」
 今日もあずにゃんのツッコミがきらりと光ります。
「まーまー♪まろやかでおいしいから、食べてみなって。はいっ!」
 10本以上あるうま○棒コーンのうち、1本をあずにゃんにフォーユーする。
なにか納得いかないのか、あずにゃんは渋々と袋を開け、○まい棒をガブリと一噛み。
 ……と、あずにゃんの頭上に猫耳がピコン、と立った。気がした。
「おいしい……」
「でしょ!おいしーよね。さすがう○い棒!!」
「おいしいですけど、でも……」
「でも?」
 何か変なこと言ったかな、そう思いながらも、あずにゃんの伏せてる両目を見つめて、言葉を待つ。
「同じ味ばっか、買ってくるのは……。このお菓子、バリエーションが多いのも売り?なんですから」
「飽きちゃう?」
「……てゆうか、こんなには買い過ぎですよ、先輩」
「あう」
 だって、好きなんだもん……。安いんだもん……。お得なんだもん……。だからあずにゃんにも、それを知ってもらいたくて……。
…………てゆうか、『食べさせたいお菓子を“ひとつ”』だよね。種類は確かにひとつだけど、量的には……。あずにゃん、ごめん。
「あっ、でも、本当においしいですから。新発見でした。こういうの、あんま食べないんで」
「そう?……えへへ。ありがと」
 あずにゃんの言葉は、お世辞も何もない、ホントの気持ち。ホントの心。だから、注意されても、怒られても、あまり苦痛とは思わない。そこには『愛』があるから。
……まぁ、本当に嫌いだったら、怒ったりはしないと思うけどね。
 あずにゃんの優しさにしばらくぽわぽわしてると、ふと、あずにゃんのそばにある、見慣れない小さな紙袋に気付く。
「あずにゃん、それなーに?」
「へ?ああ……。お菓子ですよ。私も、持ってきました。ごめんなさい、今まで忘れちゃって」
「んーん、いいよ。持ってきてくれたんだ。ありがとう!」
「そりゃあ、誘ってもらいましたし、約束ですし。当り前ですよ」


883:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/31 01:21:47 RyO2xnNS
「えへへ、そだね」
 私の言葉に微笑んでくれたあずにゃんは、そのまま袋の中からまたまた小さな袋を出す。
頭をオレンジ色の紐で結ばれているその袋は、中を見ると星やら音符やら様々な形のクッキーが、「やぁ」という風に顔を出した。
それは、見てるだけでこちらまで楽しくなってくるようで。
「クッキー、焼いてきました。パンプキンと、ココア味です」
 もうひとつ、今度は茶色の紐で結ばれている袋を出す。
「わー、おいしそう!食べていい?食べていい?」
「ふふ、もちろん。どうぞ」
「わーい!」
 紐を解き、クッキーを掴んで口に運ぶ。その過程がもやもやもどかしい。
  アムッ  もぐもぐ    ……うまーい!!
「ホントですか?よかった」
「すごいあずにゃん!パティシエ!パティシエなれるよ!……いや、女の子だからパティシエール?パティシール?」
「大袈裟ですよ、唯先輩」
 あずにゃんの笑顔が花咲く。
「……でも、持ってきてくれちゃったんだねぇ」
「え、な、何かマズかったですか?」
「ううん、そうじゃなくて」
 つと、あずにゃんのそばに腰かける。
肩と肩が触れ合うと、あずにゃんは少し強張った顔をした。
「お菓子くれなかったら、いたずらしようと思ったのに―」
 小悪魔っぽい笑顔であずにゃんに話しかける。
「……それを言うなら、唯先輩だって。お菓子、忘れると思ったのに」
「ふふん、甘いねあずにゃん!言いだしたのは私なんだから、忘れるわけないよ!それに、ハロウィンは大好きだしね!」
「大好き、ですか」
「うん!だって、お菓子もらえるし~」
「……そんなことだろうと思いましたよ」
 やれやれ。あずにゃんは呆れたように首を振る。いや、実際呆れてるのかも。
「むぅ。……だけど、だからこそ、あずにゃんと一緒に過ごせて、すごく嬉しい。ありがとっ、あずにゃん」
 私はいつものようにあずにゃんに笑いかけた。そうすると、あずにゃんはいつも、照れたのか顔をそらす。う~ん。かわいい。
このままいつものようにぎゅ~ってしちゃおうか……。
「と、ところで唯先輩」
 急にあずにゃんが振り向く。
「うぇい!?」
 抱きつこうと手をわきわきさせてた私は、素早くその手を後ろに隠す。
「……まぁ、いいです。ところで、ここに来るまでにお店とかチラ見してきたんですけど、なんか意外と、ハロウィンフェアとかやってるみたいですよ」
「へぇ!ハロウィンフェアか~。いいね、楽しそう」
「でしょう?お菓子を食べれるかは分かりませんが、一度見に行ってみるのも、おもしろいと思いますよ」
「そだね~」
 おもしろい、とは思うが、それにあずにゃんを付き合わせるのは、どうにも……。楽しいの、私だけかもだし。
でもでも、今年のハロウィンは今年しかない。それはもったいない。うーん。どうしよう。うーん…………。
「……デート、なのに。行かないんですか」
 一瞬耳を疑ったが、確かに、私の絶対音感と名高い耳はそのセリフを聞き逃さなかった。
……ああ、そっか。なるほど。
「あずにゃん、デートしたいんだ?」
「なぁ!?ち、ちちちち違っ……」
「んもう、それならそうと、言ってくれればいいのに~」
「だ、だから……!」
 赤くなりながらも必死に否定するその様は、まさしくトンデレ。……タンデレ?あれ、りっちゃんに教えてもらったのに忘れちゃった。……まぁ、いいや。
「よし!じゃあ早速行こう!デート!!」
「も、だからデートなんて……、って唯先輩!手ぶらで行くんですか!?あと上着!!今日、寒いですよーー!!」
 あずにゃんの声が、リビングに響いた。
――
「ハロウィンデート、だね」
「……そ、そうですね」
「まぁ、ハロウィンじゃなくても、あずにゃんとのデートならいつでも大歓迎だけどね~」
「……っ。は、はい……」

おわり
皆様、よいハロウィンを

884:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/31 02:56:30 tAvuEHmb
なんという素晴らしいハロウィン!
GJです!

885:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/31 03:34:55 X8nFm0/4
ピンポーン…

唯「はーい…」

ガチャ

梓「トリックオアトリート!」
唯「きゃあ!」

ジャックランタンの被り物を被った私を見て、唯先輩は驚いたように後退りをする。
まさかここまで驚くとは思わなかった。これで日頃の恨み、少しは晴らせたかな?

唯「だ…だれ…?」
梓「クス…私ですよ、唯先輩」
唯「あ…もしかして、あずにゃん?」
梓「正解です。唯先輩、驚きすぎですよ?」
唯「う…さ、最初からわかってたもん!あずにゃんのためにびっくりしたふりしてただけだよ!」
梓「はいはい、そういうことにしときましょう」
唯「もー!バカにしないでよー!」

10月31日、ハロウィン。今日は唯先輩の家でパーティーが開かれるようになっていた。
それぞれが家に来るたびに仮装して唯先輩を驚かせる…ということになっているのだが、この分だと唯先輩は、皆の期待通りのリアクションを見せることになりそうだ。

梓「他の皆さんはまだなんですね。憂はどうしたんですか?」
唯「憂はスーパーにジュース買いに行ってくれてるんだー
 多分そのうち帰ってくると思う!」
梓「そうなんですか…ところで、唯先輩?」
唯「ん?なあに?」

886:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/31 03:42:19 X8nFm0/4
梓「さっき私が言ったこと、忘れたんですか?」
唯「へ?何のこと?」
梓「だから…トリックオアトリート、ですよ」
唯「トリ…どういう意味だっけ?」

呆れた。どうやらこの人にとってハロウィンは、仮装よりもお菓子の方が大きな比重を占めているらしい。

梓「トリックオアトリート…つまり、お菓子をくれなきゃいたずらするぞって意味です」
唯「ええ、お菓子?うーん…ムギちゃんが持ってくれることになってたからなぁ…今ないや…」
梓「くれないんなら…いたずらしちゃいますよ?」
唯「わっ…!」

私は唯先輩を後ろから抱き締めた。唯先輩は最初こそ抵抗したものの、すぐに観念したように力を抜いて私に身を委ねた。
まったく、こういうところもかわいいんだから…

唯「えへへ、あずにゃん、ちっちゃいけど柔らかいねぇ」
梓「ちっちゃいは余計です…ねぇ唯先輩、皆が来るまで二人きりでハロウィンしませんか?」
唯「いいね!あ、ちょっとこっち来て?」
梓「はい?なんですか?」
唯「ふふふ…ちょっとこれ、着けてみて!」
梓「な…」

唯先輩の手に握られていたのは、お馴染みのネコミミ…なぜこんなものが唯先輩の家にあるのだろうか?

887:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/31 03:48:38 X8nFm0/4
唯「さわちゃんにもらったんだー♪ささ、あずにゃん着けてー?ハロウィンの仮装だよー!」
梓「嫌です!…って普段は言うところですけど…特別ですよ?」
唯「わーい♪」

私はいつものようにネコミミを装着した。…なんとなく落ち着くのは気のせいだと思いたい。

梓「どうですか?」
唯「うん、最高だよ!とってもかわいいよ、あずにゃん♪」
梓「い、いざ言われると、なんだか恥ずかしいですね…」
唯「ホントだよ。あずにゃん」
梓「…唯先輩」

唯先輩は優しい微笑みを浮かべて、私を抱き締めた。今度は唯先輩の温かさが私を幸せにしてくれる。

唯「あずにゃんは世界で一番かわいいよ。私が言うんだもん、絶対だよ」
梓「そ、そう…ですか…?」
唯「うん、そうだよ…あずにゃん、大好き」

チュッ…

唯先輩は優しく私にキスをした。その唇は、砂糖よりも甘い味がした。

梓「唯先輩…おいしいお菓子、ありがとうございます」
唯「えへへー♪どうせならいたずらもしてもらっちゃおうっかなあ?」
梓「もう…バカ!」


終わり

888:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/31 03:51:58 X8nFm0/4
以上です
>>383に触発されて書いてみました
…あまりハロウィンぽくないのはご愛嬌ということで

889:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/31 08:03:40 6Quk3jhR
>>888
朝からいいものを見せてもらいました

890:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/31 08:40:18 7InWRqZI
↑こいつムギじゃね?

891:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/31 09:04:18 p7sZM4qf
>>888
ハァハァ
つ、続きは?

892:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/31 10:08:17 AdL0q5IE
↑こっちがムギかもよ?

893:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/31 11:10:08 xKJwSbwx
私だ

894:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/31 12:06:00 LCcNeed5
お前か

895:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/31 12:13:17 74yGo+Xj
騙されるな少年
この俺だ

896:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/31 16:50:14 Vs+tZmYj
お前だったのか

897:名無しさん@お腹いっぱい。
09/10/31 23:03:37 pRw/arpg
>>889-896
以上沢庵様の自演でお送り致しました

898:名無しさん@お腹いっぱい。
09/11/01 03:31:12 CJ8fPe1q
みんなGJ!素晴らしいハロウィンでした。
遅ればせながら、というか見るまでハロウィンのこと忘れてました。
別件で使ったネタの再利用ですが、とりあえず。
ハロウィンゆいあず!
3レスくらいです。

899:ハロウィンゆいあず1/3
09/11/01 03:31:57 CJ8fPe1q
「とりっくおあとりーと!」
なんですか、そのひらがな発音は。覚えたての言葉を嬉々として連呼する子供みたいですよ。
まあ、そこがかわいいところではあるんですけどね、唯先輩は。
「えへへ~あずにゃーん。お菓子くれないといたずらしちゃうよ?」
そう言って、じりじり私ににじり寄る唯先輩。その両手は、今にも私に抱きつこうと、うずうず動いてる。
にっこりと、本当に子供みたいな笑顔を浮かべた唯先輩は、思う存分「あずにゃん分補給」ができる口実を見つけたってそんな顔。
だけど、甘いですよ、唯先輩。
ひょいっと手を伸ばし、その右手を捕まえる。ほよっと表情を変えた唯先輩に、にこりと出来得る最高の笑顔を浮かべてみせた。
「はい、お菓子です」
そして、ぽんとその手のひらに、あらかじめ用意しておいた飴玉を置いてあげる。
オレンジ味の大玉のキャンディー。それを目にして、唯先輩はがくぜん!とでも言いたげな表情を浮かべた。
ふふ。先輩の考えることなんて、お見通しなんですから。
「食べないんですか?」
「うぅ、食べるよぅ。あずにゃんの意地悪~」
これくらいで、意地悪呼ばわりは心外ですね。
「美味しいですか?」
「おいしいけど、涙の味がする……」
先輩はそういいながら、本当に少し涙目になってる。先輩の目論見では、本来なら今ぎゅーっと私を抱きしめられてるはずだから。
だけど今はお預け状態。それが悲しいよ、寂しいよ、ってそんな表情。
別に駄目って言った訳じゃないんですから、かまわず抱きついてくれてもいいんですけど。
だけど、先輩は私がちゃんとお菓子をあげたから、悪戯できないってそう思い込んでいる表情。
本当に先輩は、可愛い。本当に可愛すぎて、そう、食べちゃいたくなるくらいに。
「それじゃ先輩、次は私の番ですね」
「ほぇ?」
声をかけると、先輩はきょとんとその様相を変化させた。私の番ってどういうこと?って首を傾げてる。
さっき先輩が使った手ですよ。まさか、自分だけが使えるなんて―そう思っていたんですよね、唯先輩のことですから。
む~と考え込み始めた唯先輩に、その言葉を投げかけてあげる。その、とびっきりの魔力を持った魔法の言葉を。
「Trick or Treat?」
ぴたり、とのその動きを止める唯先輩。一瞬の間を置いて、サーっとその顔から血の気が引く音が聞こえた。
「あ、あいべぐゆあぱーどぅん?」
無理して英語で返さなくてもいいんですよ。つまりは、ちゃんと聞こえてるということですよね。
「さあ、お菓子ですよ、お菓子。なければ悪戯しちゃいますからね?」
「うぅ、お菓子なんて持ってないよ…あ、かばんの中に」
「手元にないと駄目です。猶予期間は無しですから」
「うー!あずにゃんのおにーあくまー!」
酷い言われようだ。
まあ、なんとでも言ってください。負け犬の遠吠えをいくら聞こうとも、痛くも痒くもありませんから。
先輩はしょんぼりと肩を落とす。くーんとうなだれる子犬みたいで、その様子も可愛い。
ああもう、それは食べていいってことなんですよね。
「じゃあ、悪戯ですね」
「うぅ、本当なら私があずにゃんにいたずらするはずだったのにー」
「往生際が悪いですよ?」
「ふーんだ!いたずらするなら、すればいいもん!」
先輩はぷーと膨れて、すねましたって表情。
もう、そんなにすねないでくださいよ。それに、そんなに膨らましたら伸びちゃいますよ?
両手を伸ばして、そのほっぺたに両手を当てる。膨れた分だけきゅっと押して、先輩が頬を膨らませるのを阻止してみる。
先輩はそれでも頑張って頬を膨らませようとするけど、さすがの先輩の肺活量でも、私の両腕の力には及ばない。
むーむーと唸り声のような声を上げるだけ。
さあ、そろそろ大人しくしてください。これからは悪戯時間ですから。

900:ハロウィンゆいあず2/3
09/11/01 03:33:52 CJ8fPe1q
「え?」
再び頭上にきょとんを浮べた唯先輩に、私はゆっくりと顔を近づけた。
両手を先輩の頬に当てたのは、別に膨れ顔阻止のためだけじゃない。ただ、その角度をあわせるため。
私より背の高い先輩は、少し下を向けて。先輩より小さい私は、少し上を向けて。そのベクトルが、丁度ぶつかり合うように。
何を、とか。何のために、とか。そんなの考えるまでもないこと。
例えば、この光景を傍観者的視点に切り替えたとしたら、まるでドラマのワンシーンの、まさにその一歩手前そのものだろうから。
きっとそんな絵になっている。それくらいに、私の動きは自分でも驚くほどにスムーズで、淀みがない。
先輩がそれに気付いて、何らかの行動を起こす前には、既にそれは触れ合えていると確信できるほどに。
当たり前ですよ、そんなの。だって、この光景は、この瞬間は、今まで何度も何度も夢見て、そして恋焦がれていたものですから。
実践するのは、これが初めてですけど、ね。
その寸前、ようやくそれに気付いた先輩の目は大きく見開かれ、私はそれに微笑みかけるような一瞥を残して、最後の距離をゼロにした。
瞬間、まるでマシュマロのようにふわりと柔らかくて、ほんのり甘くて、やさしく包み込まれるような感触が、一瞬にして私の意識を白く塗り潰してしまう。
私がずっと思い描いていたのと同じ、ううん、それよりもずっと気持ちよくて心地よくて素晴らしくて。
どんな言葉や表現を尽くしても、この感動を表す術なんて、私は思い浮かべられない。
そもそも、そんな余裕なんてどこにもない。冷静に分析できる私なんて、もうどこにも残ってない。
私に残るのは、真っ白に埋め尽くされた世界の中、それでも鮮やかに浮かび上がる唯先輩だけ。
触れあっているのは唇、ほんのちょっとの面積のはずなのに。
きゅっと手を繋いだときよりも、ぎゅーっと強く抱きしめられたときよりも、その他今まで先輩から与えられたどんなスキンシップだって、この瞬間には敵わない。
こんなに鮮やかで深くていっぱいな唯先輩を、私は他に知らない。
「あ、あずにゃ…んぅっ…」
何か言おうとした唇を、啄ばむようにして遮る。
その刺激に少しずつ慣れてきた唇が、貪欲さを帯びていく。
もっと、唯先輩を感じていたい。これくらいじゃ、まだ全然足りない。もっともっと、強く、深く。もっと―
唯先輩を感じたい。そして、私を唯先輩に感じて欲しい。
背中に手を回し、ぎゅっと抱きしめる。
太腿の間に太腿を差し入れ、ぎゅっと絡めとる。
くたりと先輩の体から力が抜け、床に崩れ落ちそうになのを確認して、私は一度唇を離した。
ほわ、と先輩の唇から声が漏れる。至近距離、だけど少し距離を得たその顔は、おそらくは無意識にもう終わり?という言葉を浮べていた。
大丈夫ですよ。心配しなくても、まだ悪戯は終わってませんから。もっともっと、してあげますから。
とんとソファーの淵に右手を着いて、倒れる方向を調整し、丁度覆いかぶさるような体勢で、二人してふかふかのクッションの上に倒れこんだ。
支えに立てた肘と二の腕の長さ分だけ下にある唯先輩を、そのままじっと見下ろす。
いつもの見慣れた顔。だけど、これからもずっと見飽きることはないだろうと予感できる、先輩の顔。
それはほんのりと赤くなって、とろんと熱を帯びた瞳で私を見上げていた。
「あ、あずにゃ…」
何か喋ろうとしたその口に、ぺしと人差し指をのっけて遮る。
「まだです」
「はわ…ぁ」
私の短い返答、その意図を察したのか先輩は更に赤くした顔で、更に熱をこめた眼差しで私を見上げた。
正解です、なんて小さくつぶやいて、再び唇をあわせる。
ソファーに強く押し付けるような強さで、ぎゅうっとその体を抱きしめる。
強く、強く、壊してしまうくらいに強く。それが私と先輩の境界をなくして、一つになってしまえばいいのにと願うように。

901:ハロウィンゆいあず3/3
09/11/01 03:34:26 CJ8fPe1q
「は…んぅ…」
耳を打つ、甘くかすれるような声。薄く開けた瞳に移る、熱にうなされるような切なげな先輩の目元。
息苦しさからか先輩の口が僅かに開かれて、まるでそれに導かれるような自然さを持って、それをこじ開けようと私の舌が動く。
くいっと上あごを押し上げると、一瞬の硬直の後、それを受け入れようとするかのようにふわりとその力が抜けてくれた。
ゆっくりと差し入れられた私に、先輩のそれが触れる。おそらくは反射的に、絡めあうように私を捉えてくる。
その感触は、与えられるその感覚は、私を何度溶かしつくしても冷め切らないほどの高熱。
声にならない声が喉の奥からあふれそうになって、だけど私は懸命にそれを押し殺した。
絡みつく舌をゆっくりとおびき寄せ、ぱくりと唇で挟み込んで吸い上げる。私の中に引っ張り込まれたそれを、ツンツンと舌先でなぞってあげる。
瞬間、先輩の体がぴくんと跳ね上がり、だけど覆いかぶさる私はその動きを許さないようにぎゅうっとまたクッションへと沈み込ませて、封じ込めた。
堪えるように、ぎゅうっと私の背中、ブレザーを握り締める先輩の手。ふるふる震えて、ぴくぴく震えて、それでも私を離さないその手。
だから私も離さない、離してあげない。生まれた嗜虐心に忠実に、私は先輩を貪っていく。もっと強く、もっともっと深くまで。
そう、まだ終わりません。これくらいじゃまだ駄目ですよね。先輩が本当に満足するまで、終わらせてあげませんから。
ですよね、唯先輩―

完全にその体から力が抜けたのを確認してから、私はひょいっと舌先でそれを掬い上げ、口に含むと、唇を離した。
漏れる吐息と、細い光の糸を一瞬だけ作った唾液に、最大限の名残を残しつつも、私はソファーの上身を起こして、まだ横たわる先輩を見下ろす。
私の口の中には、先輩とのキスの味―今先輩から奪い取ったオレンジキャンディーが転がっていて、私はそれを見せびらかすように舌先にひょいっとのっけて小さく開けた口元から覗かせて見せた。
「お菓子、もらえたから、悪戯は終わりです」
ぐったりと、呼吸を整えながら私を見上げていた先輩の目が、きょとんと丸くなる。
その顔は、すっかりそれを忘れていたと言う顔。あんなにしちゃったから、無理もないですけど。
「もう、こんな悪戯、反則だよぅ」
「いやでしたか?」
「まさかぁ」
そう言うと、先輩はむくりと上体を起こして、私と同じ高さ、視線を合わせてきた。
「だけど、やられっぱなしは嫌だよ」
先輩はふわりと両手を伸ばして私を抱きしめると、押し倒すように私ごとソファーに倒れこむ。丁度、さっきとは正反対の体勢。
そして耳元で小さく、優しく囁いた。もう既に、答えの分かっているその言葉を。

ええ、次は先輩の番ですから。
だから、ちゃんと悪戯してくださいね、唯先輩。

(終わり)

902:名無しさん@お腹いっぱい。
09/11/01 11:19:11 ZTgiS640
>>901
GJ
えっちぃな!

903:名無しさん@お腹いっぱい。
09/11/01 14:06:29 VR8PbKYH
GJ

904:名無しさん@お腹いっぱい。
09/11/01 21:26:35 NmtnZsMO
エロす

905:名無しさん@お腹いっぱい。
09/11/02 00:18:53 WTJlYfxj
>>901
これはGJ


これちょっと真面目な話なんだが、唯って梓が生理中でも体求めそうだよな。
最近妄想しながら思った

906:名無しさん@お腹いっぱい。
09/11/02 00:25:41 Z10UgKfm
いや、構わないけども、お前は唯をなんだと思ってんだw

907:名無しさん@お腹いっぱい。
09/11/02 03:27:06 IAURUxDY
唯「ねぇねぇあずにゃん、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」

放課後、二人きりの部室でギターの手入れをしていると、唯先輩がなにやら話しかけてきた。
一体なんだろう。珍しく演奏の質問だろうか。

梓「なんですか?なにかわからないとこでも…」
唯「あずにゃんはきのこの山とたけのこの里、どっちが好き?」
梓「…なにを聞くかと思えば…」
唯「いやいや、結構重要な問題だと思わない?意外にきのこたけのこ議論は深いんだよ!」

確かに言われてみれば、この二つのお菓子の好みは結構別れるのかもしれないけど…

唯「で、どっちが好き?」
梓「まぁ…私はきのこの方が好きですね」
唯「えー?私はたけのこの方が好きだけどなぁ」
梓「たけのこって、チョコが多すぎてしつこいじゃないですか。
 きのこはあのサクッとした部分がよりチョコのおいしさを引き出してると思うんですよ」
唯「ちっちっ、あずにゃんはわかってないなー。確かにたけのこはチョコのイメージはあるけど、
 噛んだときのあのサクッとした感じはきのこには絶対ないと思うよ!?」
梓「わかってないのは唯先輩です!だいたい食べる前のことを考えてもきのこの方が良いんです!」

908:名無しさん@お腹いっぱい。
09/11/02 03:30:04 IAURUxDY
唯「…どういうこと?」
梓「きのこのスナックの部分はすべすべしてて、粉がつくことはあまりありません。これはわかりますね?」
唯「まぁ…」
梓「でもたけのこはスナックの部分がざらざらしてて粉がつきやすいし、持つ時もチョコの部分を持たなきゃ取りにくいんです。
 当然指にチョコの油がついてぬるぬるするし、粉もついていいとこないんですよ」
唯「う…」
梓「こういうことを踏まえて、私はきのこの方がたけのこよりも上回っていると思うんです」

唯先輩は何か言い返そうとしているようだったけど、私の熱弁の前にお手上げのようだった。
…しかし我ながら、無駄に熱くなってしまった。今さらだけど、少し恥ずかしい…

唯「ね、ねぇあずにゃん、やっぱりこういうことは、食べて検証した方がいいと思わない?」
梓「先輩が言い出したんじゃないですか!」
唯「というわけで、じゃーん!きのこの山にたけのこの里だよー♪」
梓「…なんで持ってるんですか」
唯「いやぁ、学校の途中で買ってさ、皆で食べようかと思ったんだけど…」
梓「いつの間にか私と論争になってかなわないからいっそ食べさせて分からせよう…ですか」
唯「えへへー♪わかるー?」

909:名無しさん@お腹いっぱい。
09/11/02 03:32:53 IAURUxDY
唯「さ、あずにゃん食べて食べて?たけのこの里ー♪」
梓「じ、自分で食べられま…!…パク」

唯先輩に無理矢理口に運ばれたたけのこの里は、確かにサクッとした噛みごたえが心地よかった。
久しぶりに食べたからか、特別に甘く、おいしく感じた。

唯「どうー?おいしいでしょー?」
梓「まぁ、そこそこ…ていうか、私は別に嫌いだとは言ってないです」
唯「あずにゃん、今の負け惜しみ?」
梓「ち、ちがいます!そういう唯先輩も食べてみてくださいよ」

私はきのこの山を一つ取って差し出した。唯先輩はそれをパクンと頬張ると、とろけるような表情を見せた。
確かこれはムギ先輩のケーキを食べる時の表情…きのこの山って、そこまでおいしいかな?

唯「んん~♪やっぱりおいしいね~きのこもたけのこも、両方大好き!」
梓「…結局そうなるんですね。まぁ私もそう思いますが」

結局、両方食べてしまえばどちらが好きかなんていう問題はあまり意味がなかったのだ。
どっちもおいしいんだから、それでいいよね。それが唯先輩との議論の末に導き出された結論だ。

910:名無しさん@お腹いっぱい。
09/11/02 03:36:39 IAURUxDY
唯「じゃああずにゃん、皆が来る前に全部食べちゃおう?内緒内緒♪」
梓「多いですね…ムギ先輩のお菓子、残さないようにしてくださいよ」
唯「はーい♪」

二人でお菓子をつついていると、私は一体何をやってるんだと思う。
けれど、以前の私なら受け入れることのできなかったこのひとときも、今はかけがえのない時間に感じられた。
その変化のはっきりした要因はわからない。
だけど確かなのは、今目の前にいる唯先輩もまた、私にとってかけがえのない存在である、ということだ。

梓「ほら唯先輩、急いで食べてください!皆さん来ちゃいます!」
唯「う、うん…ねぇあずにゃん」
梓「はい?」
唯「なんだか、楽しいねっ♪」
梓「…そうですね。楽しいですね、唯先輩」


おしまい



キスも抱きしめもないですが、たまにはこういうのもいいかと思って書いてみました

911:名無しさん@お腹いっぱい。
09/11/02 05:00:58 G7gZ1Zgj
GJ!
こういう日常いいですよね。
心が洗われます!
自分もこういうの書きたいと思いつつ
何故か書いてるうちに際限なくイチャイチャし始めてしまうのは何故か…

912:名無しさん@お腹いっぱい。
09/11/02 09:39:37 nRQZSf1h
GJ!
おかしの事で唯はともかく梓まで熱くなってるのが可愛いな
読んでる途中に梓がたけのこの里の手にした後に指先のかすかについたチョコとか粉を唯が舐めるんじゃないかと思ってた自分は邪かも…

913:名無しさん@お腹いっぱい。
09/11/02 18:37:44 Y0x8i1Wa
>>910
GJ!
仲良い先輩後輩のやりとりって感じでいいね


けいおんのプロッププラスプチ買ったら唯出たけど梓は出なかった
早くあずにゃんを連れてきて2人を並べたいぜ

914:名無しさん@お腹いっぱい。
09/11/03 02:02:24 vkV0TgDv
ライブ唯は二人も出たのに、制服唯は出なかった…
並べてもなんかしっくりこないです…

今日すごく寒かったおかげで、さむいー!と言いつつ
ずっと梓にぴとっとくっついて離れない唯がずっと脳裏にこびりついてました。
梓もいい加減離れてくださいと言いつつ、満更でもないと。
そこで律が、ムギの方が暖かいんじゃないかとか言って
そっか!とムギのほうに唯が行ってしまい、密かに寂しがる梓とか。
そんな梓の様子を見て、寒がってると勘違いして戻ってくる唯とか。
別に寒がってなんて、と強がりながら今度は素直にそのぬくもりに浸る梓とか。

色々末期か…

915:名無しさん@お腹いっぱい。
09/11/03 02:12:37 RdPZ9NlY
>>914
いい、すごくいい妄想

916:名無しさん@お腹いっぱい。
09/11/03 03:47:53 nLIgd4yY
ここは凄く癒されるスレですね。
今日みたいな寒い夜に読むと暖かい。

917:私たちの帰り道1
09/11/03 07:37:42 AW5TkijA
今日は本当に寒いね。はい、凍えちゃいます―そんなことを話しながら手を繋いで帰る。

今はふたりきりになったけど、唯先輩は皆さんの前でも構わずくっついてくるから困る。
いや、本当はとっても嬉しいんだけど。
だけどもやっぱり恥ずかしくて。全身が熱くなってしまう。

律先輩にもからかわれたけど、自分の顔がリンゴみたいになってたことは、
誰より私本人が一番わかってたんだ。

(でも律先輩だって十分恥ずかしい人でしたよ)

私と唯先輩がくっついてると律先輩は決まって冷やかすけど、あの人、自覚はないんだろうか。
24時間澪先輩に付きっきりで、隙あらば「りつー」「みおー」「キマシタワー」してるのに。
律先輩と澪先輩のほうがよっぽど恥ずかしい人だ(それにムギ先輩も人間としてかなり恥ずかしいです)。

それに比べたら私たちは可愛いものだと思う。
手を繋いで帰る―ただそれだけで心が満たされて、ほんのり温くなれる。
唯先輩が側にいてくれると感じられて、世界で一番幸せになれるんだ。

918:私たちの帰り道2
09/11/03 07:39:24 AW5TkijA
―うん、私は世界一幸せな娘かもしれない。

今夜は家族がみんな外出していて家に一人だって話したら、

「じゃあ、私ん家に泊まりなよ~♪」

…間髪入れずにそう言ってくれた。
お邪魔しますって答えた瞬間に見せてくれた、極上の笑顔。
全身で喜びを表現するかのようにハグまでして貰った。

私は本当に大事にされてるんだな―しみじみ噛み締めるように唯先輩の体温を、
もっと言えば愛情の深さを感じたら、冬の日の寒さなんてどこかに飛んでいっちゃった。

ほんの少し冷たさが残って赤くなってた鼻先も、寒いの寒いの飛んでけって唯先輩に撫でられたら、それだけで温くなる。
代わりに別の意味で赤くなっちゃったんだけどね。

「あっ、お姉ちゃん、梓ちゃん」

ふたりで歩く帰り道―その途中で憂と落ち合った。
こう言う場合、ムギ先輩だったらまた「(三角関係)キマシタワー」してワクワクするんだろうけど、
現実は妄想のようには行かないものですよ。

私たちが手を繋いでいたって、……お付き合いをしていたって憂は憂だ。
唯先輩と私の幸せを心から喜んでくれて、とろけるような笑顔を見せてくれる。

919:私たちの帰り道3
09/11/03 07:41:17 AW5TkijA
そんな憂の優しさが本当に嬉しくて―私はほらってもう片方の手を憂に差し出した。

「え、私もいいの?」
「悪い理由なんかどこにもないよ。ね、唯先輩」
「もちろんっ。憂も一緒にあったかあったかしよ~」
「えへへ…じゃあ、お言葉に甘えて」

嬉しそうにはにかみながら憂は私の手を握り返してくれた。
右手に恋人の温もりを、左手に親友の温もりを同時に感じられて―私は宇宙一幸せな娘なのかもしれない。

ううん、私は間違いなく宇宙一の幸せ者だよ。

…だから、「あずにゃん、捕まった宇宙人みたいだね」ってのはいらなかったです、唯先輩…。

「あ、そ~だ。ねぇ、憂。今晩なんだけど、あずにゃんのこと―」
「うん。梓ちゃん、今夜一人なんだよね。だから泊まってって誘いたかったんだ」

一歩遅かったみたいだねって唯先輩と笑い合う憂の手には、ちょっと大きめの買い物袋。
中には色々な食材が詰め込まれてるみたいで、唯先輩と憂ふたりで食べるには明らかに量が多かった。
それは三人目を―私の分を計算に入れた買い物なんだって考えるのは自惚れ過ぎ?

ほら、平沢家のご両親ってばいつも家にいないしさ。

「今日は冷えるし、お鍋にしようね。梓ちゃんもいっぱい食べてね?」
「…うん、ありがと、憂」

きっと自惚れだって決め付けてた予想は、憂のその一言で幸せ色に塗り替えられた。

ふたりきりの帰り道から、三人の帰り道へ。
大好きな人たちとの帰り道は、こんなに幸せでいいのだろうかって驚くくらい。

温もりに包まれた今夜は、きっと最高に素敵な夢が見られるはずだ。

920:名無しさん@お腹いっぱい。
09/11/03 08:36:46 g9nkN2nh
唯「あずにゃ~ん!今夜は寝かさないよ!」

921:名無しさん@お腹いっぱい。
09/11/03 09:37:35 FI2bh1OE
3Pですね

922:名無しさん@お腹いっぱい。
09/11/03 11:22:17 vkV0TgDv
>>920-921
ほんわかが台無しだw
だがそれが(ry

>>919
GJ!
妄想を形にしてくれてありがとう!
唯梓憂三姉妹は、やはり頬が緩みますね

923:名無しさん@お腹いっぱい。
09/11/03 11:29:27 3vsADTyi
唯と梓をくっつけられるフィギュアっていつ発売だっけ?
早くこの二人を飾りたい

924:名無しさん@お腹いっぱい。
09/11/03 17:29:18 a66ZotTX
>>923
09’12月下 SR けいおん!2時間目
URLリンク(img04.shop-pro.jp)

先に出る夏制服のSummer Specialじゃなくて12月に出る水着の2時間目のほう。

925:名無しさん@お腹いっぱい。
09/11/03 17:44:07 /qPfEfm0
合体させられるなんて気がきくフィギュアだ
これもいいけどぬいぐるみの唯梓セットにも期待している

926:名無しさん@お腹いっぱい。
09/11/03 18:29:01 3vsADTyi
>>924
thx
12月か・・・楽しみだ。

927:名無しさん@お腹いっぱい。
09/11/03 21:21:19 soV95WLj
まさに

梓「ゆいぃ……電気消して」

だな

928:名無しさん@お腹いっぱい。
09/11/04 02:08:00 g9SgOKqO
唯「だめだよ、あずにゃんのかわいいとこが見えなくなるから」
とナチュラルに続いた自分は駄目だと思った

あまりに寒すぎて、学校帰りにラーメンを食べに行く二人が浮かんだり。

梓「女二人でラーメン食べに来るなんて、色気ない話ですよね」
唯「ん、そかなあ…あつっ、でも美味しいね~」
梓「まあ、先輩は美味しいラーメンがあれば幸せそうですけど」
唯「それだけじゃないよ~。あずにゃんと一緒だから、ってことだよ」
梓「…それはまあ、私もそうですけど…でも、ラーメン屋ですし」
唯「そうだねー…例えばさ」
梓「なんです…んむっ!」
唯「ん~~…」
梓「~~っ…ぷはっ…い、いきなり何するんですか!」
唯「えへへ、あずにゃんはネギ味噌味だね」
梓「そういう唯先輩は塩バターコーン味…じゃなくて!」
唯「ほら、こうしてラーメン味のキスができるの、ここだけだよ!」
梓「いやそういう問題じゃ…ああもう、なんかもうどこから突っ込んだらいいかわからなくなりました…」
唯「明日は牛丼味のキスをしにいこー!」
梓「また色気のないところに…まあ、付き合いますけど」
唯「えへへ、あずにゃん、大好きだよ」
梓「もう…私もです、唯先輩」

寒いせいか脳がおかしい

929:名無しさん@お腹いっぱい。
09/11/04 02:14:17 wVnwfX19
>>928
もっとこう人目とか気にしろよ
ラーメン屋だったら一本の麺を両端からちゅるちゅるだろ

930:名無しさん@お腹いっぱい。
09/11/04 02:22:47 OVReLYJh
>>928
はぁはぁ・・寝れなくなりました

931:名無しさん@お腹いっぱい。
09/11/04 03:00:04 ZJSl3uGr
>>930
ムギちゃん早く寝ようよ

932:名無しさん@お腹いっぱい。
09/11/04 03:59:45 Z8QZK6UF
休日、唯の家にて

梓「唯先輩、それじゃ私そろそろ帰りますね。最近帰りが遅くて親がうるさいんですよ」

唯「まだ帰る時間には早いんじゃない?…あずにゃん♪」

梓「きゃ…」

唯先輩は私をベッドの上に押し倒した。
私はあわてて立ち上がろうとするも、先輩は私を押さえつけて離そうとしない。

梓「ちょ、ちょっと唯…」

唯「あずにゃん…今日はまだ、してないよ?」

梓「あ…」

唯先輩は私にキスをした。いつもより優しく、そしていつもよりちょっとだけ激しく。
ずるいよ唯先輩、そんなことされたら抵抗する気力なんて失せちゃうじゃない…

梓「ゆっ…唯…憂がきちゃうよ…」

唯「別に大丈夫だよ。私たち恋人なんだもん」

梓「理由になってないよ…?」

唯「じゃあ、あずにゃんは気持ちよくないの…?」

梓「それは…気持ち…よかったけど…」

唯「じゃあいいじゃん♪もっと二人で色々しよう?あずにゃん」

梓「い、色々ってなん…んっ…んんー…」

こうして私の帰りは今日も遅くなるのだった…

終わり


お、俺は悪くない!>>928が悪いんだ!

933:名無しさん@お腹いっぱい。
09/11/04 09:05:47 EyaR85vx
梓のセリフは丁寧語にしてください(><


934:名無しさん@お腹いっぱい。
09/11/04 10:47:06 sXxGLCnf
唯「恋人同士なんだから唯先輩じゃなくて唯って呼んで?」

定番かつお約束

935:名無しさん@お腹いっぱい。
09/11/04 11:36:52 g9SgOKqO
>>932
人のせいにw
だがGJ!

冬は人肌が恋しい季節ですね。

マフラーコート手袋と重装備してきて
今日は寒くないよ~と、昨日みたいにくっついてこない唯に
寂しさを覚える梓と、それをいち早く察して
マフラーを外して、コートの前を開いてその中に梓を抱え込んで
その上からマフラーをくるりと巻いて
これなら二人ともあったかいよね、という唯と
恥ずかしいですよこんなの、と言いつつも満足そうな笑みを浮かべる梓。

とか浮かびましたけど、自分のせいじゃなくて冬が悪いんだ!
とかw

936:名無しさん@お腹いっぱい。
09/11/04 19:07:59 Dr0NmPua
>>935 はやく!

937:名無しさん@お腹いっぱい。
09/11/05 02:29:47 4W+q4Klf
唯の部屋で2人っきり…。

唯「あずにゃん、つぎココ…お願い」

梓「そこ…ですか。ふふっ、今日の唯先輩積極的ですね。それじゃ…いきますよ?」





唯「いたっ」

梓「ああっ大丈夫ですか!?」

唯「う、うん。皮、剥けちゃった…」

梓「ご、ごめんなさい。速かったですよね…」

唯「ううん、大丈夫だよ。でも…最初はもうちょっとゆっくりがいいな、あずにゃん」

梓「はい。ゆっくり…じっくりやりましょう。時間はたっぷりありますし…」

唯「えへへ…ありがと、あずにゃん」



>>928>>932が悪いんであって、これはただのギターの練習ですよ!
これでいいでしょうか、お嬢様


938:名無しさん@お腹いっぱい。
09/11/05 04:05:05 xETI3J6K
と思わせておいて、実は……なんですね
わかります
屋根裏ではムギと憂が鼻血を吹いているに違いないw

そして以下、何か寒いのにアイスネタ…寒々しいことこの上ないですが…
きっと眠くて寒いせいw

939:名無しさん@お腹いっぱい。
09/11/05 04:06:17 xETI3J6K
「あずにゃん、アイス食べたくない?」
「は?」
今まで何度かその機会はあったけど、この瞬間ほど唯先輩の正気を疑ったことは無い。
外気温は約10度程度。吹き抜けていく風は、真冬のそれほどではないとは言え、寒風というに相応しい様相で容赦なく体温を奪い去っていく。
さっきまで焼け石に水程度の暖を与えてくれていたお日様も、今はもう地平線の下にもぐりこんでしまい、僅かなオレンジを空に残すのみ。
そんな中、この人は一体何を言い出すのか。
「先輩に自殺願望があるなんて知りませんでした」
「もー、そんなのないよ!ただ、アイス食べたいなーって思っただけだもん」
この寒空の下でそんなことを言い出す辺り、そうとしか思えないんですけど。
それともなんですか、実はマゾっ気があるとか言い出すつもりなんですか。先輩がその気なら、少し頑張ってもいいですよ。
なんて言ってみても、所詮私は猫なんですけど。ええ、あずにゃんですから。でもいつか下克上して見せます。
と、思いっきり話が逸れた。それもあらぬ方向に。
とりあえず、アイスは却下です。間違いなく風邪を引きますから。そうなると苦労するのは憂と私なんですよ。
だからやめてくだ―ってもういない!?
「あずにゃーん!」
遠くから聞こえてくる声。つい一瞬前まで私の前であいすーあいすーと言ってた唯先輩は、いつの間にかはるか先、両手にアイスを持ってこちらに駆け寄ってきていた。
これは、唯先輩の行動力と素早さに驚愕するべきなのか、考えに没頭するあまりその行動を看過してしまった自分の迂闊さを呪うべきなのか。
ああ、もう。どっちだっていい。どっちにしたって、目の前の現実は変わらないから。
「はい、あずにゃんの分」
そう言いながら、満面の笑みで左手のアイスを私に差し出してくる唯先輩が私の目の前にいるということは。
「…ありがとうございます」
こう差し出されてしまっては、受け取るしかない。受け取ったからには、食べるしかない。
ナイスタイミングで吹き抜けていく風。寒い。掛け値なしに寒い。そしてそれよりも確実に冷たいであろう白い塊が、今は私の手元に握らされている。
なんて拷問ですか、これは。
そんな私の心情なんて露も知らないって笑顔で、先輩ははむっとアイスにかじりついてる。
「おいしいよーあずにゃん!」
ええ、見ればわかりますよ。そんな幸せそうな笑みを浮かべてるんですから。
はあ、と溜息一つ。食べればいいんでしょう、食べれば。何でこんな寒い中アイスなんて食べなきゃいけないんだか、全然わかりませんけど。
親の仇のようにそれを睨みつけ、その冷たさに最大限の覚悟を固めつつ、私はぺろりとその表面に舌を這わせた。

940:名無しさん@お腹いっぱい。
09/11/05 04:07:14 xETI3J6K
「…おいしい」
「でしょ~」
うかつにもそう口にしてしまった私に、唯先輩はにこっと笑ってみせる。
本当にうかつ。だけど、仕方がない。だってそれは、自分でも驚くほどに美味しかったのだから。
「寒い中で食べるアイスって、かくべつだよね!」
「……そうですね」
はむっともう一口、今度は大きくかじりながら、そう答える。実際、認めるしかない。自分でそう口にしたことだし、それに本当にこれは美味しいから。
確かに、冬に食べるアイスは美味しいって聞く。私も、コタツで食べるアイスは別格だと思っていたし。
でも、なんかそれだけじゃない。それだけじゃ、自分はここまで思えない。
「えへへ~」
じゃあどうしてかなって思ったとき、隣で幸せそうに笑う唯先輩が目に入った。
私にこの美味しさを伝えられたってことが嬉しいんだろう。ちらちらとこちらを見てきて、目が合うとにこっと笑って、またアイスをかじってる。
そして、私はその理由がわかった気がした。
「なんかしあわせ~」
そう言って、くすくす笑う唯先輩。
きっとそれは、アイスが美味しいからだけじゃない。確かに、このアイスはとても美味しいと思うけど。
だけど、これがこんなに美味しいのは、寒さのスパイスってだけじゃなくて、きっと唯先輩と一緒だから。
美味しいって思うことを私に分けてくれて。唯先輩はそれを、私に分けることができて。
そして、今それを分け合って、一緒に味わってるってことがそうなんだ、ってことだと思う。
だって、今の私がまさにそんな気持ちだから。
「私もですよ、先輩」
空いている手で、きゅっとその肘にしがみつく。すると唯先輩は、慣れた仕草でするりと腕を絡めてきた。
さっきよりも近いその距離で、少しだけ見つめあって、くすりと笑い合う。
そしてまた、はむっと二人並んでアイスを口にする。本当に、本当に美味しくて、そして幸せ。
冷たくて凍えそうだけど。実際私の唇は冷え切ってしまっていて、きっと青みがかってしまっているのだろうけど。
だけど、そんなのたいした問題じゃない。だって。
もう少ししたら、先輩が優しく暖めてくれるだろうから。今口にしたアイスより、もっと、ずうっと甘い方法で。
そうですよね、唯先輩?

(終わり)


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