09/09/28 23:02:52 8Xymdldh
今にもその人の名前を言おうとしていた唯先輩を無理やり止める。こんな心の準備もなしに聞かされたらその人のことを一生恨み続けてしまうかもしれないし、止めてくださいよ。
唯先輩はすっかりその気だったみたいでぶーたれてたけど、「名前以外なら何でも喋っていいですから」と言うと、あっさりと機嫌を直してくれた。
「そのいち、その人は私の後輩です」
「後輩、ですか……」
唯先輩と面識のある後輩だと、憂と純と、そして私ぐらいかな。
……当てはまったからってほっとしている私が恨めしい。
「そのに、その人は私と個人的に親しいです」
純はあんまり親しく無さそうだから除外。憂は親しいってレベルじゃない。私は……どうなんだろう。
「そのさん、その人は可愛いです」
そりゃ唯先輩が好きになるんですから当然でしょう。
「そのよん、その人はもう世界を滅ぼせるぐらい可愛いです」
何だか雲行きが怪しくなってきたような……。これじゃただの惚気話じゃないですか。
「そのご、その人はとってもちっちゃくて可愛いです」
また惚気……、でもちっちゃいってことが解ったしいいか。
というか、ちっちゃいってことは憂は違うのかな? それじゃ、残ったのは私―いや、そんなこと無いよね……。
「そのろく、その人はギターがとっても上手です」
どくん、と私の心臓が大きく脈打った。
まさか、まさか、まさか……。
「そのなな、その人のあだ名は―」
「もういいです唯先輩! それ以上言わないでください!」
恥ずかしさで死んじゃいます。
「解ったでしょ? 私の好きな人」
「……はい」
まさか、唯先輩の好きな人が私だったなんて思わなかった。その事実に嬉しさがこみ上げてくる。
「それじゃ、今度はあずにゃんの好きな人を教えて欲しいな」
「解ってるくせに……」
「直接、あずにゃんの口から聞きたいの」
本当に、唯先輩は卑怯です。でも、そういうところも全部含めて好きなんだから、これぐらいは大目に見てあげます。
「私の好きな人は―唯先輩、です」
やっと言えた。ずっと言う機会が無いだろうと思っていた言葉。
その言葉を聞いて、唯先輩はにっこりと笑い、そして私を優しく抱きしめてくれた。
「これからもよろしくね、あずにゃん」
「―こちらこそ、よろしくお願いします」
Fin
お目汚し失礼した
それでは