09/09/01 16:43:49 QLNVTiX7
>>608からインスピレーションを得て。
何か最近こんなネタばっかりだけど…
…アイスゆいあず
「うい~アイス~」
唯先輩の部屋の方から、間延びした声が聞こえてくる。
ようやく起きたんだ、と談笑していた私と憂は顔を見合わせる。
「はーい、ちょっと待って~」
憂は、そっちに顔を向けて返事をすると、しょうがないなあという笑みを浮べて見せた。
「憂も大変だね」
「そうでもないよ、アイス持って行ったときのお姉ちゃんの顔、ホントに可愛いんだから」
あー、それはそうかも、と浮かんできた唯先輩スマイルビジョンに私は納得する。
「…梓ちゃんも、随分お姉ちゃんに素直になってきたね」
そんな私の様子を見て、憂がくすっと笑った。
「な、ちがっ!別に今のは、唯先輩のことを可愛いと思ったわけじゃなくて―なくて、ええと…」
「はいはい」
憂は私の抗議を笑い流すと、席を立って台所へと向かって行った。
「もう…」
抗議する相手もいなくなり、私はせめてもと溜息をついてその代わりにしてみる。
確かに―ちょっとは可愛いかなーと思わなかったわけじゃないけど―でも別にそんなあっさり読み取られるほど露骨には思っていなかったはず。
でも、私がそう思ってただけで別にそうでも無かったのかな。
「あーもう、いいけど、別に」
大きく伸びをして、思考を振り払う。振り払ったところで、どうせ消えてくれないんだけど。
それより、話し相手がいなくなったせいで、何となく暇になってしまった。
さすがに台所まで着いて行くのは失礼だし、暇つぶしにと勝手に部屋を漁るのはもっと失礼だし。
そういえば憂のことだし、アイスを持っていったら、なんだかんだで暫く向こうにいついちゃいそう。
ううん、というより唯先輩が起きてきたからには、三人ってことになるだろうし。
先に唯先輩の部屋に行っておこうかな。今日はまだ全然話せてないから―
―確かに憂と遊びに来たって名目だったけど、まさか寝てるとは思わなかったから―なんか物足りない。
―いや、別に禁断症状とかじゃないですよ。
聞こえもしない突っ込みにそう返して、私は溜息をつく。ひょっとしたら本当にそうなのかもしれない。このなんともいえない感覚は、そういってしまえばあっさり説明が付く。
「そうしよう…」
席を立ち、憂の部屋を後にする。勝手知ったる他人の家、唯先輩の部屋は確かこっちだ。時間的に、憂ももう着いている頃だろうから、向こうで合流しよう。
「うーん」
そんなとき、不意に憂の声が聞こえた。発生源は台所の方。おかしいな、まだそんなところにいるなんて。
「どうしたの、憂?」
ひょいっと首だけ突っ込んで、尋ねる。見ると憂は冷蔵庫の前、お盆にグラスを載せたままうーんと唸っていた。
「うん…アイス切らしちゃってたの忘れてて…どうしようかなって」
「そうなんだ…」
冷凍庫の前で思案気な顔の憂。うんうん悩んでる。だって、アイスがないと知ったときの唯先輩は、それこそ悲しそうな顔をするに違いない。
それを目にするのは、唯先輩スキーな憂にはとても辛いことだろうから。
―私も、それはちょっと嫌かも。
出来れば先輩には笑っていてほしいし―って、だんだん思考が憂に侵されているなあ…