09/06/28 20:18:18 a5K/iISI
─その日、桜高の集会で大会の表彰が行われていた。
一月前に行われたバンドミュージックフェスティバルの表彰だった。
そして見事、京都大会で悲願の優勝を勝ち取ったのは「放課後ティータイム」 私たちだった。
学校のみんなからの拍手を浴びれる。
賞賛の声をたくさんかけてもらえる。
そんな想いが交差して私はとにかく色んな意味で緊張して、楽しみで仕方が無かった。
遠からずして起きる惨劇など、予想もせずに。
アナウンス「─続いて、優勝校の表彰へ移りたいと思います。 優勝高、桜高軽音学部「放課後ティータイム」
一斉にわあっという歓声と、それに重なる拍手が送られた。桜高の生徒はもちろん、出場した他校の生徒も来ていた
ため、その歓声は物凄い迫力だった。
アナウンス「”放課後ティータイム”を代表して、軽音楽部部長、田井中律さん」
律「はいっ」
意外な事に、律はふざけることなく至って真面目、それでもやはり勢いよく返事をし、私の右隣で立ち上がった。
律は一瞬私のほうを向き、満足そうな笑顔を向けてくれた。それを返すように、私も笑顔で返した。
”─カタッ”
誰かがイスから立ち上がったような、そんな音がした。それでも私は知らぬふりをして壇上を見つめていた。
律が左側の階段から壇上へ上り、審査員長の前で直立した。
「──。─。──」
員長の長い祝辞の言葉に、私はあくびが出そうになるが決して出さずに、ひたすら壇上を見つめていた。
その刹那。
壇上に設置されている左カーテンから何かがのぞいてるのが見えた。唯、ムギ、梓、律、そして私は最前列に座っていたため
壇上は隅々まで見える。飛び出ている”モノ”を凝視していると・・
人間なら本能的に恐怖を覚えるであろう、それは”鋭利な刃物”だった。
祝辞が終わり、拍手が起きた所で私は我に返った。隣では唯、ムギ、梓が拍手を送っている。私だけが硬直していた。
皆の方を向き、律が喋りだした。
律「えー・・っと皆さんこんにちは!放課後ティータイムの部長の田井中律です。─」
律が喋りだした。聞いてあげなくちゃ。そう思っているのに。私の視線はカーテンに釘付けだった。
次の瞬間。
カーテンが張るような、本当に微々な動きを私は見逃さなかった。
律に向かって”それ”は突進していった。
澪「律ッッ!!!!」
私は声にならない叫びを上げ、壇上へとよじ登り・・・律を突き飛ばした。
・・・私の意識がちゃんとあったのはここまでかな。・・・律、ゴメンね。