09/06/15 19:18:12 3+Di/zeu
>>154
>>149
~あれから8年。澪が扉を開けると、そこには純白のドレスに身を包んだ律が、立っていた。
澪「…きれい、だな。」
律「ふふっ、旦那に言われるより嬉しいかも。」
澪「普通、新婦控え室には親族しか入れないだろ。私なんかが入っていいのか?」
律「いいんだよ。澪は親友だから、特別。
すっかり売れっ子になっちゃって、忙しいのにわざわざ来てくれてありがと。」
高校3年の学園祭の直後、律は交通事故にあった。
命に別状は無かったが、左腕が車の下敷きになってしまったため、
二度とドラムスティックを持つことは出来なくなった。
澪は、大学で入った軽音サークルでバンドを結成し、CDの自費製作やライブハウス出演など
精力的に活動していたのだが、それが運よくスカウトの目に留まり、メジャーデビューを果たした。
まだまだ日本の音楽シーンに名を残せるほどの実績があるわけではないが、
デビューシングルは、深夜の情報番組のエンディングテーマに抜擢されている。
澪「ホントは、お前と一緒にやっていきたかったんだけどな。」
律「あの時は、一緒にめいっぱい泣いてくれたもんな。」
そういってニカッと笑う。強がりじゃない、律の本当の笑顔だ。
澪「あの時は、一生こんな悲しい気持ちが続くのかと思ってたよ。」
律「私もそうだった。でも、悲しみはいつかは消える。現に、私は今、最高に幸せだからさ。」
澪「ふふっ、まさかお前みたいな奴をお嫁に貰ってくれる物好きがいたとはね。」
律「な、何を失礼な!…まぁ、確かにアイツは物好きな奴だけどな。ははっ。」
そういって窓の外を眺める律。あのおてんば娘が、こんな大人っぽい表情をするなんて。
8年という月日の大きさを、澪は改めて感じた。
律「あの事故があって分かったよ。全てが思った通りに、上手くいくわけじゃないって。」
澪「うん。…そうだな。」
律「あの頃思っていた未来に、私たちは立っていないのかもしれないけど…」
澪「…しれないけど?」
律「それでも、私は今、こうして過ごしている。それに澪もいる。それだけで十分だよ。」
澪「…変わってないな。律。お前のそういう所が素敵だと思うよ。」
律「な、何だよ急に。照れるじゃないか…。」
真っ白なマリアヴェールのせいで、紅潮した律の頬が余計に目立つ。
そんな律を見て、澪は優しく微笑んだ。
終わり