09/07/29 21:41:33 7fANjYr7
南2局1本場。
衣の手はタンヤオドラドラ、ツモれば1本場も含め4000オールの良形だったが。
「チー!」
ほぼ唯一といっていいくらいのピンポイントで京太郎から透華が鳴き、次巡。
「ロン!タンヤオドラ1、2000は2300ですわ」
透華は京太郎から和了り、衣の親番を流した。
ミエミエの差し込みである。
衣:74000
一:12500 透:11800
京:1700
残すは2局。衣と京太郎との点差は、72300。
親役満ツモでもひっくり返らない、絶望的な大差である。
だが、それでもなお……京太郎の表情は変わらない。まるで、予定通りというように。
「なぜだ……」
ぽつりと、衣が呟いた。
「なぜ貴様は満身創痍ながら、意気軒昂でいられるのだ……」
70000点以上の差と、たった2局という残り局数。しかも相手は、あの天江衣。
衣と戦った相手は皆、世界の終焉を見るような顔をする。
誰もが衣を恐れた。だが、京太郎は全く心がぶれていない。
「天江先輩……あんたは、自分が勝つと思っているのかい?」
「……当然だ」
「それは違う」
ぴしゃりと京太郎は言い放った。
「そんな風に思っていたら、そんな言葉は出てこない。あんたは、負けるかもと思っている。
俺を……恐れているから」
それは、衣の確信を突く言葉。
衣が京太郎に抱いていた、何やら分からぬ不気味さの正体。それは、恐怖。
この男には、殺されるかもしれないという。
「たとえ何点リードがあっても、昔の俺はあんたや咲には勝てなかっただろうさ。
だがな、今の俺は違う。今の俺から見れば、あんたも咲も昔の俺も変わらねぇよ。
点差は72300、残り2局……十分だ。あんたの息の根を止めるには十分だ」
凄まじい圧迫感が皆を襲う。
衣はガタリと音をたてて立ち上がった。その体は、小刻みに震えている。
「さあ、追うぜっ……天江先輩!」