09/07/22 18:46:59 s0RD2TGd
「……下らぬ。須賀京太郎とは、この程度か」
衣は失望していた。
須賀京太郎とは、自分を満足させ得る力の持ち主なのかと思っていた。
噂を聞くたび、戦いへの期待がどんどん膨らんでいった。
だが、今目の前にいる男は、自分が想像していたような厄介な打ち手ではない。
何のオーラも感じない、ただの普通の打ち手でしかない。
「東場が終わって36000点差では、もうどうしようもないですわね」
「ま、いくら他所で勝っていても、衣には敵わないってことだよ」
透華と一も、もう決着が着いたと思った。純も智紀もそう思った。
だが、そのような空気の中、京太郎は静かに語りだした。
「……俺は最近まで、滅茶苦茶弱かった」
いきなり何事か、と皆が京太郎に注目する。
「周りは咲とか和とか、化け物揃い。そんな中、ド下手の自分は見下されていてね。
俺は強い奴が憎かった。自分に無い、圧倒的な力を持っている奴が羨ましかった。
だが、俺は力を手に入れた。もう誰も、俺を見下すことなどできはしない」
ニヤリと笑った京太郎を見て、衣は背筋が震えた。
この男は、これほどの力を見せ付けられながら、全く臆していない。
今も、ただただ勝つ気でいる―――
「天江先輩、確かに大した強さだ。今まで俺が倒してきた連中の中でも最強かもしれない。
だがな……それでこそ、わざわざ乗り込む価値がある。壊しがいがあるってもんだよ。
さぁ、続けようぜ。南場突入だ」
夜のとばりが降りてくる。
須賀京太郎VS天江衣、まだまだ戦いは終わらない。