09/07/18 20:14:59 cvOptC+d
>>263勝手に続き
京太郎が麻雀部を去ってからだいぶ経った。
その日以来、京太郎は麻雀部に顔を出していない。
「彼、やっぱり戻る気はないんでしょうか……」
「もうあんな奴、知らないんだじぇ」
京太郎が去っても、麻雀部の活動はいつも通り行われている。
少しずつだが、以前の活気も少しずつ戻ってきた。
しかし、京太郎がいた時に比べるとどことなく寂しさが漂っている。
そして京太郎がおかしくなった原因を、咲だけは知っている。
ツヨナール。飲むと麻雀が劇的に強くなるという薬。
自分の弱さにコンプレックスを抱いていた京太郎は、この薬に手を出した。
そして彼は、悪魔の力を手に入れた。
ツヨナールの力で部長達をボロボロに負かし、彼はツヨナールの力に心酔した。
弱者が突然強い力を手に入れれば、次にやることはすの力の誇示。
「風越も、京太郎にやられたそうじゃな……」
「やっぱりあのお姉さんでも、ダメだったじぇ」
京太郎は麻雀部を去ってから、県内のあちこちの強豪校へと挑戦をし始めた。
そして千曲東や東福寺など、麻雀で有名な高校に乗り込んでは圧勝を続けた。
彼は先の大会で好成績を残した鶴賀学園すらも破り、そして風越女子も彼の毒牙にかかった。
最近では、藤田プロをも完膚なきまでに叩きのめしたという噂もある。
彼がまだ戦ったという話を聞かない高校といえば、龍門渕くらいのものだ。
「ごめんなさい、私のせいでこんなことになっちゃって。皆にも……須賀君にも、申し訳ないわ」
久は現状を作り出した最も大きな原因となっている人物だ。
そのことを久は、ずっと気に病んでいる。
「そんな、部長のせいじゃ……」
「そうじゃ、気にせんとき」
「と、とりあえず、麻雀しようじぇ!」
タコスの一声で、皆が麻雀の準備を始める。
まるで、京太郎のことを忘れようとしているかのように。
そんな中、咲だけは動かず喋らず、ずっと窓の外を見続けていた。
「宮永さん、どうしたんですか?」
「え……あ、ごめんなさい」
慌てて咲も卓に向かう。
しかし咲の心には、ずっと京太郎のことが引っかかっていた。
(京ちゃん……京ちゃんは今、何をしているの……)