09/07/03 01:15:20 wC9C65fa
>>468
「やってやろうじゃないの。神様と徹麻!」
腕まくりをして髪をしばり、部長は老人のあとに続く。そのあとに京太郎たち部員もおっかなびっくり続いた。
「部長の本気モードだじぇ!」タコスが言うと「必ずみんなで帰りましょうね」と和も応じた。
わかっているのだろうか。と京太郎は思う。
ここは明らかに異界なのだ。ただのゲームではない。長年にわたり一つの一族を縛りつづけたけた怪物
と一戦交えるということを。
「大丈夫だよ京ちゃん」
京太郎の心中を察したように咲が言った。
「大丈夫って・・・」
「大丈夫。私たちが先輩をつれて帰るんだよ」
なぜかそのひと言が頼もしかった。
「手積み・・・望むところだわ」
部長が呟く。
卓を囲むのは部長、タコス、和、そして先ほどの老人だった。
案内された部屋は薄暗く、しかしドコからともなく光が届いている。時刻はすでに深夜のはずだったが、
それでも全員の顔をうかがえるくらいには明るいのだった。
板張りの床に相当の大きさの卓がある。部屋の中央に位置するそれは堅牢な作りで、ある種の調度品
のように威風堂々としていた。
「これは・・・」
和が言う。
卓の中央には鳥居のマークが描かれている。卓の四辺にはそれぞれ「犬」の一字が中央へ向かって描か
れていた。盤上には縦に五つ、横に四つの線。それぞれが格子状になるように引かれている。
「蠱毒の呪符だわ。本来なら鳥居の部分は狐の文字。四方の犬は狐を逃がさないように見張る役目よ。
これは、この卓は既に呪いのシステムに取り込まれている。かつてコウジモトの家ではこれを使って呪い
を行使していたのね」
呪いを。
「蠱毒とは本来、封じ込めた壷のなかで虫を殺し合わせる呪い。この狭い卓上がまさに壷になぞらえられて
いるわ。殺し合うのは─さしずめ私たちよ」
部長の声は重く、そして暗い。
「はじめます」
老人が席に座る。
「落ち着いて、いつもと同じよ。そうね、いつもと違うのは自動卓じゃないくらい。和、平気?」
「大丈夫です」
親を決めるべくサイコロが振られる。
親番はタコス。まだ実力不十分の京太郎は卓を囲むメンツを後ろで眺めていた。
「西は金也―」
タコス正面の老人は何事か呟くと、五筒を捨てた。
一打目からの捨てる牌ではない。続く巡目も迷うことなく筒子を切っていく。
(なんだよコレ・・・染め手か)
京太郎の思いとは裏腹に、老人は薄く笑っていた。
「金は幣、幣は兵也―自西自東、自南自北、服せざるもの、これなかりけり」
老人は止まらない。ゆっくりと、六巡連続の筒子を捨てると同時に牌を横に曲げた。