09/06/29 23:10:46 K5wJ6sbl
>>450
「九字・・・これは、ヒフミショウモン・・・咲、あなたの言っていたことは案外あたっているかもしれないわ」
部長が綺麗なひたいにシワを寄せて呟いた。
「当って・・・ほしくないものです。京ちゃん。コレ、随分古いよね」
咲は淡々としている。糊付けしてあるお札はすべて、かなり年代モノのようだった。
午前中から昨日の件について話をしているうち、咲といっしょに見つけた隠し扉の件に思い当たったのだ。
部長が興味を示したので案内したところ、壁に貼り付けてある一枚の紙に注目していた。
「ヒフミ・・・なんですかそれ」
「呪文ね。ここに書いてあるのは全部呪文だわ。九字っていう、一般に九文字十文字の、簡単に言うと悪霊
を封じ込めるためのものね」
「悪霊って・・・」
京太郎は絶句する。たしかに禍々しいなにかを感じるたたずまいだ。
「一二三四五六七八九・・・これ確かに九文字ですけど、だたの数字ですよ? 何かに効くんですかね」
「数字は魔術の基本だわよ」
笑って部長は手を振った。その意味するところは京太郎にはわからない。
「そうだ。部長、コレ見てください」
京太郎はお札の中の一枚、先日見つけた「荒神元」というものを指し示した。
「コウジン・・・これって『コウジモト』ってことかしらね」
「で、それが一体なんになるんです?」
イマイチはっきりしない。京太郎と咲は首をひねっていた。
「え? 何って・・・そっかそういうことか・・・だんだん読めてきたわ」
突然部長は何かを思いついたようにひとりごちた。
「宮永さん! 大変ですっ」
京太郎がさらに質問しようとすると、こんどは廊下のむこうから和の叫び声が聞こえた。
「和、どうしたの? そんなに走って」
息をきらせて走りよる和を見て、今度は部長が首をひねる。確かにいつもの和はそこまで騒がしく動くことはない。
「それが・・・・・また死体が・・」
「なんだって!」
おもわず京太郎は大声をだす。昨日の今日でまた殺人・・・。不吉にも程があるとは思いはしたが、昨日殺された
とすれば京太郎のアリバイは成立していることになる。昨夜部長は本気で京太郎の手足を縛って同室で寝た
からだ。もっとも、命の心配というよりも女だらけの部屋で男が寝るのは困る、ということらしい。
「あの・・・お婆さんが」
和の言葉をそこまで聴くと咲はまっさきに走って行ってしまった。
「あいつ・・・やけに元気だな」
正直な感想だった。
「宮永さん。心配です」
和も、いつもと違う咲の様子に戸惑っているようだ。
「心配ないじぇ。咲ちゃんは巷で有名な麻雀探偵なのだ。彼女の行く先々では毎夜毎晩不幸な事件が続くと
言う・・・咲ちゃん、恐ろしい子・・・」
「嘘つけ初めて聞いたわっ。あいつを拘束したほうがいいんじゃないか・・・」
拘束、という言葉でなぜか和が頬を赤らめたのを京太郎は見逃さなかった。
「私たちも行きましょう。また・・・同じような死体なのかしら」
部長の心配は見事に的中することとなる。
京太郎たちが見た老婆の死体は、こんどは肩まで地中に埋められて首を切り落とされていた。