09/06/29 22:00:02 K5wJ6sbl
>>449
「まずいことになったわね・・・」
部員全員で部屋にあつまり、眠ることもできずポツポツと情報を整理している。
マコが確認したところ、島の入り口にある電柱がチェーンソーのようなもので切断され、電話の集合線が断たれて
いたそうだ。そのほか、モーターボートをはじめ港の装備はすべて放流されていた。
これで島の住人は外部からの通信手段をすべて失ったことになる。
「形だけでもアリバイが無いというのが俺だけですか・・・」
就寝時ひとりで過ごしていた京太郎には、いわゆるアリバイというものがなかった。
「まさか俺を疑ったりしませんよね?」
「しないわよ。そのかわり今日から寝るときはロープで手足を縛るから」「疑ってんじゃないですか!」
「そんなことよりも部長」
タコスに付き添っていた咲が戻ってくるなり口を開いた。
「なんであんな死体なんでしょうか・・・」
「何でって・・・なんでかしら」部長はアゴの下に指をあて、うーんと考えていたが、やがて「首なし死体のセオリーかな」
ともらした。
「セオリーって・・・そんなモンがあるんすかね」
京太郎は疑問を挟む。こういうときに女というのは肝がすわっていると感心することしきりだった。
「まずは死体の入れ替わり。頭が無いってことは顔がわからないわけだから・・・つまり殺されているのは船頭さん
じゃなくて別の人かもしれない」
「それは無さそうです。竹緒さんが確認していましたし」
咲の受け答えは堂々たるものだった。
「単純に狂ってるからじゃないすかね・・・」
もう既に京太郎は常識では考えられないと思っていた。
「それは早計だわ。殺すだけなら頭を切り取る必要が無いもの。重労働よアレは。入れ替わりじゃないとすると、
単純に邪魔だから。持ち運びに不便な頭部を切り落とした。頭部が邪魔で・・・いやそれはないわね。咲はどう
思うの?」
私は・・・と、言葉を一瞬飲んで咲は語り始める。
「必要だったから・・・ではないかと思っています」
「宮永・・・さん?」
突然なにを言い出すのかと和がつぶやく。
「原村さん聞いて。人間の体を切るなんて普通はできないよ。ノコギリだってそう簡単には切れないもの。だから
犯人は、部長もさっき言ったとおり、かなりの重労働をして切り取ったってことになる。それはやっぱり、そうしなけれ
ばならなかったんだと思うんだ。狭いスペースでもないから死体を切り取って細かくするなら手足も切ると思う。
じゃあ、なんで頭だけ切り取ったかって考えると・・・」
頭が何かに必要だったから、じゃないかな。
咲は短くそう呟いた。
「誰が!? 何のために? 咲、お前ちょっとおかしいぞっ、いま俺たちでそんなこと話し合っても埒があかない!」
「京ちゃんおちついて」「落ち着いてられるか! 黙ってたって明後日には警察がくるんだぞ!?」
「だってそれまでに誰か死んだらどうするんだよ京ちゃん!」
「あ・・・」
「そう。私たちは考えなくてはならないわ。だってこの島から脱出法がないんだもの。それは同時に」
犯人もまだ居る可能性がある、ということよ。
部長の声を京太郎は遠くで聞いていた。