09/05/25 19:37:25 fmrr5cV5
やがて、京太郎は目を開くと切なそうに笑う。
「咲、お前には分からないだろうな……負け続ける人間の気持ちは」
「えっ…?」
「お前達は特別な力を持っている……けど、俺は違う。 俺は何の力を持たない……ただの凡人だ。
どんなに頑張っても、お前達と一緒に歩く事が出来ないんだよ。
そんな俺が強くなるためには……ツヨナールに頼るしかないのさ」
自分には何の力もない。その現実がずっと京太郎に重くのしかかって来た。
だからこそ、京太郎はツヨナールの力を使う事に決めたのである。
「咲、全国大会……頑張れよ……。 お姉ちゃんに会えると良いな……じゃあな」
京太郎はスッと振り返ると歩みを進める。もう、あの頃には戻る事はないだろう…。
「行かないで京ちゃん!」
咲は京太郎へと手を伸ばす。しかし、その手は京太郎には届く事はなかった。
(俺は……一人で戦う…一人で勝ち続ける……ツヨナールを使って…)
京太郎は歩く。咲達とは違う―光の当たる事のない、闇の道を。
一人、残された咲はその場で泣き崩れる。
そして責める……京太郎をとめられなかった自分自身を。
「京ちゃぁぁぁぁぁぁん!」
咲の悲痛な叫び声が、校舎内に響き渡った。