09/05/05 16:11:37 l6cj/l1g
アリシア退職の後、アリアカンパニーの経営状態は一気に悪化した。
そもそもプリマデビュー直後で無名の灯里に仕事がそうそう舞い込むわけでもない。
また案内業していると社内業務が疎かになり、
「電話しても誰も出ない。潰れちゃったのかな?」
そんな噂が立って仕事は更に減った。
一番ショックだったのは、アリシアが自分の給与を相当な高額に設定していたことを
帳簿からみつけてしまった事だ。
その額は、シングル時代の灯里のおよそ20倍。わずかだった会社の資金も、
退職金名義で大半が消えていた。
ショックのせいか、灯里は自然に笑う事ができなくなった。せっかく来た客も、不自然な灯里の笑みを
気味悪がってキャンセルが相次いだ。
不幸はさらに続く。ARIA社長が行方不明になったのだ。ある朝、アリアカンパニーの
目の前の水路に愛用の帽子だけが浮かんでいた。
「こりゃ事故だな。可哀相に。でも泳げなくなるまで太らせた飼い主にも責任がある」
警察官は灯里に説教をして立ち去った。慰めの言葉の一つも、そこには無い。
電気も止められて薄暗い事務所の中で、灯里は鳴らない電話を何日も、何日も待ち続けていた。