【らき☆すた】泉かなた&そうじろう6【泉家総合at ANICHARA2
【らき☆すた】泉かなた&そうじろう6【泉家総合 - 暇つぶし2ch407:名無しさん@お腹いっぱい。
09/05/10 00:23:53 IcUPMc2H
>>406
 そうじろうはそう言って瞳を閉じた。
だが、彼の夢の中にかなたがその姿を表す事はないだろう。
無意識下の防衛本能が、悲しみから精神を守る為に彼女の姿を映す事を強く拒むのだから。
彼の願いは皮肉な事に、自己を守ろうとする本能的欲求により閉ざされていた。
それでも彼は、明日も明後日も願うのだろう。
「今夜もかなたさんと夢で逢えますように」と。
一度も夢に出てきた事がないにも関わらず、彼は常に「今夜も」と言っていた。
今まで何度も夢に見ていると、自分を騙したかったのだ。
一度もかなたの姿を夢で見たことが無いという現実を、受け入れる事ができないから。
 かなた”さん”と敬称を付けるのは、彼なりの回帰願望だった。
付き合う前までは、そう呼んでいたのだから。
その頃に帰りたい、という願望はつまり、「付き合わなければ良かった」という後悔の裏返しとも言える。
付き合わなければ、かなたは死なずに済んだのではないか。
今もなお、彼はその罪悪感に苦しめられている。
だが、付き合わなければ愛娘こなたは居ない。
「妻を取るか、娘を取るか」という残酷な二択は、今宵も彼を甚振り、容赦の無い悪夢へと誘った。
かなたなど出てこない、ただひたすらに地獄を表現し尽くす悪夢へと。

 またかなたも、敢えてそうじろうの夢枕に立とうなどとは思わなかった。
彼女はそうじろうの再婚を望んでいた。
そうじろうを愛しているからこそ、何時までも自分という”過去の人”に拘束され続ける姿を見るのは辛かった。
だからこそ、夢枕に立つのは避けてきた。
自分がその姿をそうじろうの前に晒せば、
思い出が風化せずにいつまでもそうじろうを過去に縛り続ける事になるかもしれない。
それが、怖かったから。
 だがその一方で、そうじろうが何時までも自分を想い続けている事に安堵の念を抱いてもいた。
そうじろうに何時までも愛されている幸福感、それを確かに感じていた。
「嫌な女ね、私」
 かなたは憎悪を込めて、己を罵った。
愛する人が過去に拘束され苦痛を味わい続ける事に対して安堵を覚えている自分が、
どうしても許せない。
「こんな嫌な女、そう君に愛される資格なんてないのに」
 涙を滴らせ、かなたは自虐気味に呟く。
「いっその事、私の事嫌いになってくれたらいいのに。
そうすれば、そう君は解放されるのに」
 そうなれば、かなたの精神は完膚なきまでに破壊され尽くされる事だろう。
そうじろうから愛されなくなるという事、それが何よりの地獄なのだから。
それでもかなたは、
「そう君が私の事を、嫌いになってくれますように」
祈りを捧げた。
「だってこんな嫌な女、心切り裂かれ精神苛まれてしまえばいいのだから。
ごめんね、そう君。許してなんて言わないよ。
でもね、私の事…」
─忘れないでね─
 口を衝いて出そうになるその言葉を、溢れ出そうになる涙と共に堪えた。
代わりに
「嫌いになってね」
そう言った。
だが、言葉を堪える事は出来ても、涙を堪える事までは出来なかった。
頬を伝う悲しみの滴をそっと袖で拭った。
 かなたの袖は、永遠に乾く事は無いだろう。
果てる事の無い悲しみが、水へと変化し続けるのだから。


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